(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762717
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】衣料用液体洗濯洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20200917BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20200917BHJP
C11D 3/28 20060101ALI20200917BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20200917BHJP
C11D 1/62 20060101ALI20200917BHJP
C11D 3/48 20060101ALI20200917BHJP
D06L 1/12 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D17/08
C11D3/28
C11D3/26
C11D1/62
C11D3/48
D06L1/12
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-562798(P2015-562798)
(86)(22)【出願日】2015年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2015053333
(87)【国際公開番号】WO2015122360
(87)【国際公開日】20150820
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-26197(P2014-26197)
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 睦
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和彦
【審査官】
柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−060788(JP,A)
【文献】
特開平05−139918(JP,A)
【文献】
特開2001−010905(JP,A)
【文献】
特表2014−500887(JP,A)
【文献】
特開2014−028942(JP,A)
【文献】
特開2012−091409(JP,A)
【文献】
特開2007−246839(JP,A)
【文献】
特開昭63−162799(JP,A)
【文献】
特開2011−190368(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/152452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
D06L 1/12
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除菌活性剤と下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物と界面活性剤とを含有し、前記除菌活性剤が
、グアニジン化合物、イミダゾリウム塩誘導体化合物、及びビス(アミノアルキル)アルキルアミン化合物からなる群から選択される一種以上であることを特徴とする衣料用液体洗濯洗剤組成物、
成分(a):化学式1
、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、
成分(b):化学式5およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1
、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物、
成分(c):化学式6およびその塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、または化学式6およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中Xは
【化7】
から選ばれる基を表し、
R
1は水素原子、炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシル基を表し、
R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、
Z
−はハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1−3のアルキル硫酸エステルイオン、芳香族スルホン酸イオンまたはヒドロキシイオンを表し、
R
4は水素原子または炭素数1−3のアルキル基を表し、
Aは−NH
2、−OM、−OR
5または−NR
6R
7を表し、
Mは一価の陽イオンを表し、
R
5は炭素数1−24のアルキル基を表し、
R
6、R
7はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、nは1以上3,000以下を表す)
【請求項2】
前記除菌活性剤が、ポリアミノプロピルグアニジン化合物;1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジクロライド、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジブロマイド、1,12−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライド、1,12−ジ(3−オクチル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライド及び1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジクロライからなる群から選択されるイミダゾリウム塩誘導体化合物、並びにビス(アミノプロピル)ドデシルアミンより選ばれる1種類以上であることを特徴とする請求項1記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
【請求項3】
前記除菌活性剤が、ポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩、及びビス(アミノプロピル)ドデシルアミンより選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
【請求項4】
前記除菌活性剤の配合量が有効成分濃度として0.1重量%以上20重量%以下、前記成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物の配合量が有効成分濃度として0.1重量%以上20重量%以下、前記界面活性剤の配合量が有効成分濃度として5重量%以上90重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯時の衣料の除菌を効果的に行い且つ洗濯後も優れた抗菌効果を付与することができる衣料用液体洗濯洗剤組成物に関する。
【0002】
従来、洗濯の際、被洗物に対して除菌効果または抗菌効果を付与する方法としては、液体洗濯洗剤組成物に過酸化水素や水中で過酸化水素を発生する化合物を混合する方法やまた漂白活性化剤を併用する方法、第4級アンモニウム塩やポリアミノプロピルビグアナイド塩などのカチオン性抗菌活性剤や水溶性銀といった無機系抗菌活性剤を添加する方法などが知られており特許文献1―特許文献9に開示されている。
【0003】
しかしながら過酸化水素または水中で過酸化水素を発生する化合物を衣料用液体洗濯洗剤に配合した場合、その長期安定性に劣るため継続的な除菌・抗菌効果が期待できない。
またカチオン性抗菌活性剤として第4級アンモニウム塩やポリアミノプロピルビグアナイド塩などのカチオン性抗菌活性剤だけを衣料用液体洗濯洗浄剤に使用する方法の場合、洗濯の際、布地の共存下において、被洗物に直ちに吸着してしまう為、繊維内部間の水分に潜む細菌にアタックできずに除菌効果が十分に発揮できない。更に近年洗濯機の大容量化が進んでおり、洗濯物のまとめ洗いが増加している。被洗物を詰め込んだ状態で洗濯がされた場合、繊維内部までカチオン性抗菌活性剤が十分に行き届かず、除菌・抗菌効果が全く期待できない。更にカチオン性抗菌活性剤の中には、水道水中の塩素と反応して抗菌活性が低下するものや白い木綿繊維を黄変させるものがある。また水溶性銀を使用する場合は、衣料用液体洗濯洗剤組成物中の安定性に劣るという問題点がある。
【0004】
更に近年環境への配慮を意識して、風呂の残り湯を洗濯に使用する傾向が増しており、年間を通じて6割以上の世帯が残り湯を利用した洗濯を行っている実態が確認されている。それは節水という利点に加えて、洗濯時の温度が上がり洗浄効率が向上するためである。しかしながら入浴後の残り湯には人体や環境由来の微生物や汚れが多く混入し、入浴後一晩経過後の菌数は10
6〜10
7/mlにも及ぶ。残り湯を洗濯水として用いる事により、被洗物の菌数も増加してしまう。このため残り湯洗濯中の短時間において、菌数を軽減し、被洗物への付着菌数を減少させる高い除菌効果を付与する技術が求められている。
【0005】
さらに残り湯洗濯した被洗物を室内干しすることにより、被洗物は長時間高湿度条件下に置かれ、残存細菌の生育に好適な環境になるため、部屋干し臭とも呼ばれる不快な生乾き臭を生じる原因になっている。よって洗濯後の衣料における菌数の増殖を抑える為、従来よりも更に高いレベルの抗菌効果を付与する技術が求められている。
また特許文献9、特許文献10には、衣料用液体洗濯洗剤組成物として第四級窒素含有ポリマーを配合することで室内干しによる衣類の生乾き臭防止や汚れ放出効果を付与することが開示されているが、洗濯時の除菌効果付与に関しては一切説明がない。
【0006】
ここでいう「除菌」とは、洗濯の時点ですでに被洗物に付着し生育している菌を殺菌により除去することを示し、残り湯を用いた洗濯において、被洗物の菌数を軽減することも「除菌」にあたる。また「抗菌」とは、洗濯後、被洗物に活性成分が留まる事で機能が発揮され、菌の繁殖を抑制することをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−169515号公報
【特許文献2】特開2006−160822号公報
【特許文献3】特開2009−73915号公報
【特許文献4】特開2009−263812号公報
【特許文献5】特開2010−275213号公報
【特許文献6】特開2010−184987号公報
【特許文献7】特開2011−37945号公報
【特許文献8】特開2011−137112号公報
【特許文献9】特開2002−60787号報
【特許文献10】特開2007−246839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
洗濯時の除菌を効果的に行い、更に洗濯後の衣料に優れた抗菌効果を付与することができる衣料用液体洗濯洗剤組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、[1]除菌活性剤と下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物および界面活性剤を含有することを特徴とする衣料用液体洗濯洗剤組成物である。
成分(a):化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、
成分(b):化学式5およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物、
成分(c):化学式6およびその塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、または化学式6およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
(式中Xは
【化7】
から選ばれる基を表し、
R
1は水素原子、炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシル基を表し、
R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、
Z
−はハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1−3のアルキル硫酸エステルイオン、芳香族スルホン酸イオンまたはヒドロキシイオンを表し、
R
4は水素原子または炭素数1−3のアルキル基を表し、
Aは−NH
2、−OM、−OR
5または−NR
6R
7を表し、
Mは一価の陽イオンを表し、
R
5は炭素数1−24のアルキル基を表し、
R
6、R
7はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、nは1以上3,000以下を表す)
【0010】
更に本発明は下記を含む。
[2] 除菌活性剤が第四級アンモニウム塩化合物、ポリアミノプロピルグアニジン化合物、イミダゾリウム塩誘導体化合物、ビス(アミノアルキル)アルキルアミンより選ばれる1種類以上の除菌活性剤であることを特徴とする[1]1記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
[3] 除菌活性剤が第四級アンモニウム塩化合物の非ハロゲン化物、ポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジクロライド、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジブロマイド、1,12−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライド、1,12−ジ(3−オクチル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライドのイミダゾリウム塩誘導体化合物、ビス(アミノプロピル)ドデシルアミンより選ばれる1種以上の除菌剤を含有することを特徴とする[1]記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
[4] 除菌活性剤の配合量が有効成分濃度として0.1重量%以上20重量%以下、成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物の配合量が有効成分濃度として0.1重量%以上20重量%以下、界面活性剤の配合量が有効成分濃度として5重量%以上90重量%以下であることを特徴とする[1]記載の衣料用液体洗濯洗剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗濯時の除菌を効果的に行い、更に洗濯後の衣料に優れた抗菌効果を付与することができる衣料用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の衣料用液体洗濯洗浄組成物は、除菌活性剤と成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物と界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0013】
本発明に使用される除菌活性成分は、一般に除菌剤と呼ばれているものであり、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピネート、ジデシルメチルアンモニウムカーボネート、塩化ベンゼトニウムのような第四級アンモニウム塩化合物、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジクロライド、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジブロマイド、1,12−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライド、1,12−ジ(3−オクチル−2−メチルイミダゾリウム)ドデカンジクロライド、1,10−ジ(3−デシル−2−メチルイミダゾリウム)デカンジクロライドのようなイミダゾリウム誘導体化合物、ポリアミノプロピルビグアナイド(PHMB)のようなビグアナイド化合物、塩化エトキシエチルグアニジン、ポリアミノプロピルグアニジン(PHMG)のようなグアニジン化合物、ビス(アミノプロピル)ドデシルアミンなどのようなビス(アミノアルキル)アルキルアミン化合物等があげられるが、その中でもジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピネート、ジデシルメチルアンモニウムカーボネートのような非ハロゲン系の第四級アンモニウム塩化合物、ポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩(PHMG)、ビス(アミノプロピル)ドデシルアミンなどのようなビス(アミノアルキル)アルキルアミン化合物が好ましい。
【0014】
本発明に使用される成分(a)、成分(b)、成分(c)は、下記化学式1〜6で表されるカチオン性高分子化合物であり、除菌活性剤の除菌効果及び抗菌効果を付与する機能を損なうことなく、且つ、その布地に対する親水化作用により、まとめ洗いによる洗濯物が詰め込まれた使用形態、即ち布地が幾層にも重なった状態においても、除菌活性剤が内部に浸透する機能を補助し、洗濯物に万遍なく除菌効果及び抗菌効果を付与することができる。
成分(a):化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、
成分(b):化学式5およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物、
成分(c):化学式6およびその塩から選ばれる構成単位を有する高分子化合物、または化学式6およびその塩から選ばれる構成単位と、化学式1、化学式2、化学式3、化学式4およびそれらの塩から選ばれる構成単位との共重合構成単位を有する高分子化合物。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(式中Xは
【化14】
から選ばれる基を表し、
R
1は水素原子、炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシル基を表し、
R
2、R
3はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、
Z
−はハロゲンイオン、硫酸イオン、炭素数1−3のアルキル硫酸エステルイオン、芳香族スルホン酸イオンまたはヒドロキシイオンを表し、
R
4は水素原子または炭素数1−3のアルキル基を表し、
Aは−NH
2、−OM、−OR
5または−NR
6R
7を表し、
Mは一価の陽イオンを表し、
R
5は炭素数1−24のアルキル基を表し、
R
6、R
7はそれぞれ独立に炭素数1−3のアルキル基もしくはヒドロキシルアルキル基を表し、nは1以上3,000以下を表す)
【0015】
成分(a)で表されるカチオン性高分子化合物の代表例としては、ジアリルアミン塩酸塩重合体、ジアリルアミン重合体、メチルアリルアミン塩酸塩重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルメチルエチルサルフェイト重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン酢酸塩二酸化硫黄共重合体等が挙げられる。
成分(b)で表されるカチオン性高分子化合物の代表例としては、ジアリルアミン塩酸塩アクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドアクリルアミド共重合体等が挙げられる。
成分(c)で表されるカチオン性高分子化合物の代表例としては、アリルアミン塩酸塩重合体、アリルアミン重合体、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩共重合体、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩共重合体等が挙げられる。
【0016】
本発明に使用されるカチオン性高分子化合物の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量で、500〜300,000が好ましく、800〜200,000が更に好ましい。
【0017】
本発明に使用される界面活性剤としては、「界面活性剤の化学と応用」(妹尾 学著、(社)日本化学会、1995年1月30日)発行、「界面活性剤 −物性・応用・化学生態学−」(北原 文雄、玉井 康勝、早野 重雄、原 一郎 編、(株)講談社、1994年11月1日発行)、「洗浄の基礎知識」(大木 健司、八木 和久著、産業図書(株)、平成11年3月31日発行)に記載されている陰イオン系界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、陽イオン界面活性剤、非イオン系界面活性剤、両性界面活性剤から選択されるのが好ましい。これらの界面活性剤の配合割合は、洗浄性、起泡性、安定性等を考慮して任意に配合できる。
【0018】
その他、液体洗浄剤の成分として必要に応じて公知の水溶性溶剤、アルカリ剤、金属捕捉剤、再汚染防止剤、酸化防止剤、防錆剤、防腐剤などを任意に配合できる。
【0019】
水溶性溶剤としては、例えばエタノール等の炭化水素1〜5の1価アルコール、プロピレングリコール等の炭素数2〜12の2価アルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリアルキレングリコールアルキルエーテルが挙げられる。
【0020】
アルカリ剤としては例えば、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
【0021】
金属捕捉剤としては例えば、アミノカルボン酸系のエチレンジアミン四酢酸およびその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸およびその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸およびその塩、ジエチレントリアミノ五酢酸およびその塩、トリエチレンテトラミン六酢酸およびその塩、クエン酸系のクエン酸およびその塩、ホスホン酸系のアミノトリメチレンホスホン酸およびその塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸およびその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸
およびその塩、アミノ酸系のグルタミン酸二酢酸およびその塩、メチルグリシン二酢酸およびその塩等が挙げられる。
【0022】
再汚染防止剤としては例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0023】
酸化防止剤としては例えば、ブチルヒドロキシトルエン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
防腐剤としては例えば、ロンザ社製Proxel XL2(製品名)、同Proxel BDN(製品名)等が挙げられる。
【0025】
着色剤としては例えば、製品名で、アシッドレッド138、アシッドイエロー203、アシッドブルー9、青色1号、青色205号、緑色3号等の汎用色素や顔料等が挙げられる。
【0026】
本発明には香料を配合することもできる。単独の香料成分を用いてもよく、複数の香料成分を特定の比率で使用してもよい。香料成分としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学編 産業化学シリーズ 昭和58年9月16日発行)や「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社、1996年3月6日発行)等に記載されたものが挙げられる。具体的には炭化水素系香料、アルコール系香料、エーテル系香料、アルデヒト系香料、ケトン系香料、エステル系香料、ラクトン系香料、環状ケトン系香料、含窒素系香料が挙げられる。
【0027】
本発明の衣料用液体洗濯洗剤組成物において、除菌活性剤の配合量は有効成分濃度として通常0.1重量%以上20重量%以下、成分(a)、成分(b)、成分(c)から選ばれる1種類以上のカチオン性高分子化合物の配合量は有効成分濃度として通常0.1重量%以上20重量%以下、界面活性剤の配合量は有効成分濃度として通常5重量%以上90重量%以下である。カチオン系抗菌活性剤の配合量が0.1重量%以下の場合は、除菌・抗菌効果が期待できないことがある。また20重量%を超える場合は、洗浄性、低コスト性を維持することが困難になることがある。カチオン性高分子化合物の配合量が0.1%以下の場合は、カチオン系抗菌活性剤に浸透性を付与することが困難となることがある。また20%以上の場合は、洗浄性、低コスト性を維持することが困難になることがある。界面活性剤の配合量が5重量%以下の場合は、洗浄性に劣ることがあり、90%を超える場合は、除菌活性剤およびカチオン性高分子化合物とのバランスを維持することが困難になることがある。
【実施例】
【0028】
次に例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
表1に衣料用液体洗濯洗剤組成物を示す。
【0029】
【表1】
有効成分濃度
Lonzabac12 :100%
MERQUAT100 :40%
PAS-J-81 :25%
PAA-HCL-10L :40%
ソフタノール150 :30%
ニッコールBT20 :100%
【0030】
(実施例1)
除菌活性剤としてポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩(PHMG粉末)6グラム、成分(a)としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(ルーブリゾール社製、MERQUAT100)21グラム、界面活性剤(日本触媒社製、ソフタノール150)45グラムに水を加え、完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物1を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物1の1グラムに対して水3000mlを加え、3000倍希釈溶液を調製した。この希釈調製液を用いて除菌効果、抗菌効果を評価した。除菌効果、抗菌効果は以下の方法で評価した。評価結果を表2に示した。
【0031】
除菌効果の評価方法;黄色ブドウ球菌に対する除菌効果の評価
(1)菌液の調製
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)をSCD寒天平板培地にて温度36〜37℃、24時間培養し、人工汚れ(馬血清)を加えたリン酸緩衝食塩水に1白金耳移植し、菌数10
9cfm/mlレベルとなるよう調整し、試験菌液とした。
(2)スピンドルの作成
煮沸乾燥後のラップ布(綿金巾3号)をガラスバイアル(アズワン社、マイティーバイアルNo.7)に水平になるように外側に巻きつけていく。最終12巻となる様に巻き、最後にビニールテープで固定する。スピンドルはオートクレーブ滅菌後試験に供する。
(3)試験液の調製
400ml容の滅菌広口ビンに表1の各衣料用液体洗濯洗剤組成物を3000倍に希釈した調製液を250ml投入した。
【0032】
菌液接種試験
試験布への接種
上記の通り調製した試験菌液10μLを試験布に接種し、予め調湿しておいた調湿箱内に(37℃)40分静置後、取り出して上記スピンドルに挟む(最外巻より3巻目に3枚)。
模擬洗濯
上記の通り各濃度に調整済の試験試料250ml入りの滅菌広口ビンに試験布を挟んだスピンドルを入れ、蓋を固く締めて横方向ローター(40rpm)で10分間の疑似洗濯を行なう。
薬剤不活化及び抽出
10分経過後直ちにスピンドル内の試験布を取り出し、1枚ずつ10mlのSCDLP液体培地に入れ(試験管)Vortexにて十分に撹拌する。
生菌数の測定
撹拌後1ml取り出し、希釈液(リン酸緩衝液)を用いて試験懸濁液の10倍段階稀釈液列を作成しSCDLP寒天を用いて混釈培養を行う。プレートは37℃±1℃に4〜5日間保管後、プレートのコロニー数(cfu/ml)をカウントする。
コントロール試験
模擬洗濯及び菌液接種試験をポジティブコントロール、ネガティブコントロールに対して行った。ポジティブコントロールとしては、除菌マークが付いている粉末除菌洗濯洗剤であるライオン社「部屋干しトップ」もしくは花王社「アタックリセットパワー」の標準仕様条件を用いた。またネガティブコントロールとしては0.05%Tween80を用いた。
計算式
除菌活性値を下記式(i)から算出した。
除菌活性値=(a−b)/a×100・・・(i)
a=ネガティブコントロール試験の生菌数
b=試験洗濯液の生菌数
【0033】
除菌効果の評価基準
ポジティブコントロールであるライオン社「部屋干しトップ」及び花王社「アタックリセットパワー」以上の菌数が減少していた場合を除菌効果ありと判定した。
【0034】
抗菌効果の評価方法;黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果の評価
(1)スピンドルの作成
煮沸乾燥後のラップ布(綿金巾3号)をガラスバイアル(アズワン社、マイティーバイアルNo.7)に水平になるように外側に巻きつけていく。最終12巻となる様に巻き、最後にビニールテープで固定する。スピンドルはオートクレーブ滅菌後試験に供する。
(2)試験液の調製方法
400ml容の滅菌広口ビンに
、表1に示す各組成物を上述のように3000倍希釈することによって調製した希釈液250mlを入れた。
試験布の装着
試験布(0.4g)を上記スピンドルに挟む(最外巻より3巻目に3枚)。
模擬洗濯
上記の通り各濃度に調整済の試験試料250ml入りの滅菌広口ビンに試験布を挟んだスピンドルを入れ、蓋を固く締めて横方向ローター(40rpm)で10分間の疑似洗濯を行なう。
試験布を取り出し滅菌ボトルに入れ十分乾燥した(50℃乾燥機で12時間)
(3)菌液接種試験
繊維製品の抗菌性試験方法(JIS L1902―2002)の定量試験方法(統一試験方法に従った)。即ちJIS L1902に基づいて培養を行った黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 12732)を、20倍に希釈されたニュートリエント培地にて、菌数1±0.3×10
5cfm/mlとなるよう調整し、試験菌液とした。試験菌液を上記にて模擬洗濯及び乾燥を行った試験布に均一になるように試験菌液を接種し、37℃の恒温槽にて18時間培養した。その後、洗い出し用生理食塩水にて試験布から菌を抽出し、10倍段階希釈液列を作成しニュートリエント寒天培地を用いて混釈培養を行った。混釈平板は37℃の恒温槽で1〜2日培養した後、コロニー数をカウントし、生菌数を求めた。
未処理布についても試験布と同様の操作を行って菌数を測定し、これらの測定値より抗菌活性値を下記式(ii)から算出した。
抗菌活性値=Log(未処理布の菌数/試験布の菌数)・・・(ii)
【0035】
抗菌効果の評価基準
抗菌効果は下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:抗菌活性
値が2.0以上
△:抗菌活性
値が1.0以上〜2.0未満
×:抗菌活性
値が1.0未満
【0036】
(実施例2)
除菌活性剤としてポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩(PHMG粉末)6グラム、成分(b)のジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(ニットーボーメディカル社製、PAS−J−81)21グラム、界面活性剤(日本触媒社製、ソフタノール150)45グラムに水を加え完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物2を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物2の1グラムに対して水3000mlを加え希釈した。評価方法は実施例1と同様に行った。
【0037】
(実施例3)
除菌活性剤としてポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩(PHMG粉末)6グラム、成分(c)のアリルアミン塩酸塩重合体(ニットーボーメディカル社製、PAA−HCL−10L)15グラム、界面活性剤(日本触媒社製、ソフタノール150)45グラムに水を加え完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物3を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物3の1グラムに対して水3000mlを加え希釈した。評価方法は実施例1と同様に行った。
【0038】
(実施例4)
ビス(アミノプロピル)ドデシルアミン(ロンザ社製、Lonzabac12)6グラム、成分(c)のアリルアミン塩酸塩重合体(ニットーボーメディカル社製、PAA−HCL−10L)15グラム、界面活性剤ニッコールBT20(日光ケミカルズ社製)45グラムに水を加え完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物4を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物4の1グラムに対して水3000mlを加え希釈した。評価方法は実施例1と同様に行った。
【0039】
(比較例1)
除菌活性剤としてポリアミノプロピルグアニジン塩酸塩(PHMG粉末)6グラム、界面活性剤(日本触媒社製、ソフタノール150)45グラムに水を加え完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物5を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物5の1グラムに対して水3000mlを加え希釈した。評価方法は実施例1と同様に行った。
【0040】
(比較例2)
成分(b)のジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(ニットーボーメディカル社製、PAS−J−81)42グラム、界面活性剤(日本触媒社製、ソフタノール150)45グラムに水を加え完全溶解した衣料用液体洗濯洗剤組成物6を100グラム得た。衣料用液体洗濯洗剤組成物6の1グラムに対して水3000mlを加え希釈した。評価方法は実施例1と同様に行った。
【0041】
評価結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、布地の共存下において、即ちまとめ洗いの際の洗濯物が詰め込まれた状態においても、洗濯時の除菌効果、及び洗濯後の乾燥時における抗菌効果が十分に発揮できる、優れたものである。
【0044】
従って本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、衣料等の繊維製品の洗濯用洗浄剤組成物として好適に使用することができる。