特許第6762753号(P6762753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6762753解撚長さ調節及び糸引戻しのためのループ形成器を備えたスプライサ並びにこのようなスプライサを備えた巻取りユニット及び巻取り機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762753
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】解撚長さ調節及び糸引戻しのためのループ形成器を備えたスプライサ並びにこのようなスプライサを備えた巻取りユニット及び巻取り機
(51)【国際特許分類】
   B65H 69/06 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   B65H69/06
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-82062(P2016-82062)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2016-204162(P2016-204162A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2019年3月5日
(31)【優先権主張番号】10 2015 004 779.5
(32)【優先日】2015年4月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィークフリート シャットン
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102007048963(DE,A1)
【文献】 特開平07−070847(JP,A)
【文献】 特開平08−012195(JP,A)
【文献】 特開平05−086532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 69/06
D01H 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸(4′)と下糸(4′′)とをスプライシングするスプライサ(8)であって、
・スプライシング通路(26)と、
・該スプライシング通路(26)の上に位置する上側の糸クランプ(30)及び上側の切断装置(32)と、前記スプライシング通路(26)の下に位置する下側の糸クランプ(34)及び下側の切断装置(36)と、
・前記スプライシング通路(26)と前記上側の切断装置(32)もしくは前記下側の切断装置(36)との間にそれぞれ設けられた上側及び下側の解撚管(38)と、
・前記上側の解撚管(38)もしくは前記下側の解撚管(38)における前記下糸(4′′)もしくは前記上糸(4′)のそれぞれの解撚長さを調節するために、前記上側の切断装置(32)もしくは前記下側の切断装置(36)によって前記下糸(4′′)もしくは前記上糸(4′)を切断する前に、該下糸(4′′)もしくは該上糸(4′)においてそれぞれ解撚糸ループ(50)を形成する、前記スプライシング通路(26)と前記上側の切断装置(32)もしくは前記下側の切断装置(36)との間にそれぞれ設けられた上側及び下側のループ形成器(24,40)と、を有するスプライサ(8)において、
前記上側及び下側のループ形成器(24,40)は、前記上糸(4′)もしくは前記下糸(4′′)においてそれぞれ引戻し糸ループ(51)を形成して、前記上糸(4′)もしくは前記下糸(4′′)の、前記下側の解撚管(38)もしくは前記上側の解撚管(38)においてそれぞれ解撚された糸端部を、前記スプライシング通路(26)内に引き戻すために、それぞれ前記下糸(4′′)の糸走路と前記上糸(4′)の糸走路との間に配置されていて、前記上側のループ形成器(24,40)は時間的に相前後して前記下糸(4′′)前記上糸(4′)に順次作用可能であり、前記下側のループ形成器(24,40)は時間的に相前後して前記上糸(4′)と前記下糸(4′′)に順次作用可能である
ことを特徴とするスプライサ(8)。
【請求項2】
前記上側及び下側のループ形成器(24,40)は、該上側及び下側のループ形成器(24,40)が前記解撚糸ループ(50)をそれぞれ前記解撚管(38)と前記スプライシング通路(26)との間において形成するように配置されている、請求項1記載のスプライサ(8)。
【請求項3】
前記上側及び下側のループ形成器はそれぞれ、空気力によって作動可能な押し棒又は引張り棒として形成されている、請求項1又は2記載のスプライサ(8)。
【請求項4】
前記上側及び下側のループ形成器(24,40)は、ループ形成を実施するために互いに結合されていて、かつ1つの共通の調節部材を有している、請求項1又は2記載のスプライサ(8)。
【請求項5】
前記上側及び下側のループ形成器(24,40)は、共通の回転羽根(24)として形成されており、該回転羽根(24)の回転軸線(24′)は、前記スプライシング通路(26)の中心を通りかつ当該スプライサ(8)の、前記スプライシング通路(26)が位置する表面に対して垂直に延びている、請求項4記載のスプライサ(8)。
【請求項6】
前記上側及び下側のループ形成器はそれぞれ、押し棒又は引張り棒として形成されていて、該押し棒又は引張り棒は車セグメントによって互いに結合されており、該車セグメントの回転軸線(24′)は、前記スプライシング通路(26)の中心を通りかつ当該スプライサ(8)の、前記スプライシング通路(26)が位置する表面に対して垂直に延びている、請求項4記載のスプライサ(8)。
【請求項7】
前記上側及び下側のループ形成器(24,40)は、それぞれ1つの又は1つの共通の制御可能な調節部材を、ループ形成を実施するために有している、請求項1又は2記載のスプライサ(8)。
【請求項8】
請求項7記載のスプライサ(8)と、前記上側及び下側のループ形成器(24,40)のそれぞれの調節部材又は前記共通の調節部材を制御する巻取りユニット制御装置と、を備えた巻取りユニット。
【請求項9】
請求項7記載のスプライサ(8)と、前記上側及び下側のループ形成器(24,40)のそれぞれの調節部材又は前記共通の調節部材を制御する巻取り機制御装置と、を備えた巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻取り機の巻取りユニットの上糸及び下糸の端部のような、2つの糸端部をスプライシングするスプライサに関する。本発明はまた、このようなスプライサを備えた巻取りユニット及び巻取り機にも関する。
【0002】
公知のようにスプライサは、例えば巻取り機の巻取りユニットにおいて、例えば糸切れ後又はボビン交換後に、巻取りユニットの上糸と下糸とを糸継ぎするために使用される。このとき糸端部は、スプライシングの前に、いわゆる解撚管において準備され、このとき、少なくとも、糸を形成するモノフィラメントの撚りが、糸端部において解撚される。解撚後に両糸端部は、スプライサのスプライシング通路において互いに十分にオーバラップするまで、引き戻され、その後で糸継ぎのための本来のスプライシング工程が実施される。このとき今日のスプライサでは、解撚もスプライシングも通常、圧縮空気を用いて実施される。
【0003】
さらに、最適なスプライシング結果のために、スプライサの成分とその作業パラメータとは、注意深く糸種類に合わせて選択されねばならない。特に、このとき一方では、いわゆる解撚長さが、つまり糸継ぎされる両糸の端部が解撚管において解撚される長さが、問題になり、かつ他方では、解撚された糸端部の、スプライシング通路におけるオーバラップが、問題となり、このオーバラップは、引戻し長さによって、つまり糸がその糸端部の解撚後にどれだけの長さ引き戻されるかを意味する引戻し長さによって、確定される。従って、ここで可能な限り高いフレキシビリティを保証するために、今日のスプライサは、解撚長さ及び引戻し長さを決定するために、巻取りユニットの相応に調節可能な調節機構を有している。
【0004】
この両方の機能をただ1つの作業機構において1つにまとめること、つまり、糸端部に関してスプライシング通路に向かい合って位置している側にそれぞれ位置しているいわゆる供給体(Zubringer)において1つにまとめることは、基本的に望ましくかつ多くの糸のために可能である。しかしながらこの解決策はまた、多くの糸種類のための使用を完全に禁止する大きな欠点をも有している。このような欠点は、ここでは上糸のためのその機能形式を説明することによって明らかになる。このときスプライシング通路は、ほぼ鉛直に延びていて、かつ上糸は上側のスプライシング通路の上に位置する巻取りパッケージから到来するようになっている。下糸のための状態は、鏡像的に生じる。
【0005】
上糸は、スプライシング通路内への導入に関連して、スプライシング通路の上に位置している上側の糸クランプによってクランプされ、スプライシング通路の下に位置している下側の切断装置に挿入される。次いで上側の供給体は、上糸の切断前に横方向で糸走路に進入し、これによってスプライシング通路と上側の糸クランプとの間に、糸ループを形成する。この糸ループはここでは上側の解撚糸ループと呼ばれる。下側の切断装置による上糸の切断後に、これによって生じる上糸端部は、下側の解撚管内に吸い込まれる。比較的太い糸では、糸端部を直ぐに解撚管の吸込み領域にもたらすために、必要な解撚糸ループを大きくすることができる。
【0006】
供給体の戻し移動によって、解撚糸ループは再び消滅させられ、その結果糸端部はより深く解撚管内に吸い込まれ、これによって解撚長さが調節される。糸端部の解撚後に、供給体は再びループ方向に移動し、これによっていわゆる引戻し糸ループを形成する。この引戻し糸ループの形成によって糸端部は、まず解撚管から引き出され、次いでスプライシング通路内に引き戻される。
【0007】
独国特許出願公開第4005752号明細書は、従来技術の記載において、供給体(これは該明細書では「従来技術のループ引張り体(Schlaufenzieher)」と呼ばれる)のこの二重機能を正当に批判している。なぜならば解撚糸ループの消滅時に、解撚管内への糸端部のより深い吸込みを可能にするためには、解撚管内への吸込みによって起動されて、スプライシング通路内において並んで位置している上糸と下糸とが互いに接触した状態で滑るからである。滑らかでない表面を有する糸、つまり毛羽だった、ざらざらした、フリーズ状の糸では、このとき、糸表面から突出している繊維が、擦過移動時に互いに引っ掛かるおそれがある。これによって、解撚管内への糸端部の妨げられない吸込みを阻止する、高められた摩擦力が発生する。そしてこれにより、解撚管内にそれぞれ異なった糸長さが吸い込まれ、ひいては解撚されることがあり、つまり異なった解撚長さが発生することがあり、このような異なった解撚長さは、不均一な、ひいては不満足なスプライシング結合部を生ぜしめる。
【0008】
従って独国特許出願公開第4005752号明細書は、解撚長さ及び引戻し長さの調節の両機能の分離と、巻取りユニットの異なった作業機構における割り当てとを、一貫して提案している。供給体(「従来技術のループ引張り体」)には、糸端部解撚後における、以前からこの供給体に割り当てられていた機械式の糸引戻し機能が維持されており、これに対して、解撚糸ループの形成のためには、スプライシング通路の、供給体とはそれぞれ反対の側に位置する新しいループ引張り体が、提案される。つまり上において詳しく記載した上糸の場合に、解撚糸ループは、スプライシング通路の上にもはや形成されず、スプライシング通路の下に、つまりスプライシング通路と下側の解撚管との間に形成される。このようにスプライシング通路の、所属の解撚管と同じ側に、反対側から解撚糸ループを移動させることによって、上糸及び下糸は、解撚糸ループの消滅時にもはやスプライシング通路内において互いに接触した状態で滑る必要がなくなり、両方の糸は、互いに接触することなしに、それぞれ互いに無関係に、それぞれの解撚管内に深く吸い込まれることができ、このことは、解撚長さの正確かつ再現可能な調節を可能にする。
【0009】
解撚糸ループを形成するために別個のループ引張り体を用いるというこの思想は、さらに独国特許出願公開第4420979号明細書によっても取り上げられており、この明細書は、これらの作業機構を、そこで呼称されるループ形成器に一般化することに貢献している。独国特許出願公開第4005752号明細書は、ループ引張り体のために具体的に、リフティングシリンダに固定された、糸係合のための各1つの引張りフックを提案しており、このときリフティングシリンダは、圧縮空気によって、液圧式に、電気機械式に、又はサーボモータによって操作することができる。独国特許出願公開第4420979号明細書はこれを、別のループ形成原理に一般化し、回転羽根として及び空気力式の吸込みノズルとしてのループ形成器の構成を具体的に補足している。
【0010】
つまり解撚糸ループのための別個のループ引張り体は、解撚長さ及び戻し長さの再現可能な調節に関する基本的な問題を解決しており、かつ従来技術においても良好であると見なされている。しかしながらこのような構成は、供給体の他に追加的な構成部材を意味する。このことは、追加的な構成部材の作動のために必要な調節部材もまた2倍になることにより、さらに深刻な問題となる。
【0011】
上に述べたことを背景として、本発明の課題は、再現可能性を損なうことなしに、解撚長さ及び引戻し長さの調節ための、あまり複雑ではなく、ひいては比較的安価な解決策を提供することである。
【0012】
この課題を解決するために本発明の構成では、上糸と下糸とをスプライシングするスプライサであって、
・スプライシング通路と、
・該スプライシング通路の上に位置する上側の糸クランプ及び上側の切断装置と、スプライシング通路の下に位置する下側の糸クランプ及び下側の切断装置と、
・スプライシング通路と上側の切断装置もしくは下側の切断装置との間にそれぞれ設けられた上側及び下側の解撚管と、
・上側の解撚管もしくは下側の解撚管における下糸もしくは上糸のそれぞれの解撚長さを調節するために、上側の切断装置もしくは下側の切断装置によって下糸もしくは上糸を切断する前に、該下糸もしくは該上糸においてそれぞれ解撚糸ループを形成する、スプライシング通路と上側の切断装置もしくは下側の切断装置との間にそれぞれ設けられた上側及び下側のループ形成器と、を有するスプライサにおいて、
上側及び下側のループ形成器は、上糸もしくは下糸においてそれぞれ引戻し糸ループを形成して、上糸もしくは下糸の、下側の解撚管もしくは上側の解撚管においてそれぞれ解撚された糸端部を、スプライシング通路内に引き戻すために、それぞれ下糸の糸走路と上糸の糸走路との間に配置されている。
【0013】
この解決策において発明者は、驚くべきことに、解撚長さ及び引戻し長さの調節の2つの機能をただ1つの作業機構においてまとめることが可能である、ということを認識し、ひいては従来技術における、これに関しての先入観を克服した。しかしながら以前の従来技術に基づいて公知でありかつ上において述べた、供給体の作業形式とは異なり、その代わりに、独国特許出願公開第4420979号明細書に基づく構成に対する大きな構造上の類似性に基づいてループ形成器とも呼ばれる、この作業機構を、常に、同一の糸に対して作用させるのではなく、相前後して両方の糸に作用させることが、重要である。以前の従来技術に基づく各供給体が1つの糸において解撚糸ループと引戻し糸ループとを形成するのに対して、本発明に係るループ形成器は、最初に一方の糸において解撚糸ループを形成し、次いで他方の糸において引戻し糸ループを形成する。例えば上側のループ形成器は、まず下糸において解撚糸ループを形成し、次いで上糸において引戻し糸ループを形成する。このことを実現するために、下糸の糸走路と上糸の糸走路との間にループ形成器を配置することが、好適であることが判明した。このようにすると、ループ形成器は、一方の糸に向かっての運動によって、この一方の糸を連行しながら解撚糸ループを形成し、かつ次いで行われる他方の糸に向かっての運動によって、この他方の糸を連行しながら引戻し糸ループを形成することができる。
【0014】
発明者は、これによって、従来技術においてループ形成器の運動と供給体の運動とが時間的に相前後して行われ、上側及び下側のループ形成器及び供給体はそれぞれ隣接配置されており、このことは、これらのループ形成器及び供給体を1つの作業機構にまとめることを可能にする、という事実を利用している。しかしながらこの認識は、発明者によって初めて得られたものであり、今まで従来技術においては知られていなかった。従って発明者は、驚くほど簡単に、はるか以前から存在していた要求を満たし、本発明の課題によって求められているように、調節部材を含めて構成部材の節約を達成している。
【0015】
従来技術に基づいて公知のループ形成器におけると同様に、本発明においても、解撚糸ループを解撚管とスプライシング通路との間において形成することが好適である。糸が可撓性である場合、及び/又は解撚管と切断装置とが近接している場合、糸はまず、切断装置と解撚管との間の間隔に相応する長さにおいてだけ吸い込まれ、その他の糸は、解撚管の吸込み作用を受けながら、解撚糸ループの案内された消滅によってコントロールされて、解撚管内に導入されることができる。糸が固い場合、及び解撚管と切断装置との間における間隔が比較的大きい場合には、このような糸は切断後に、直ぐに吸い込まれるのではなく、ループ形成器は、解撚糸ループをまずさらに増大させる。この増大動作は、糸端部が解撚管の引込み領域内に達し、次いで糸の糸端部が先行して、解撚糸ループを消滅させながら、吸い込まれるまで、続けられる。しかしながらすべての場合において、解撚長さは、切断装置と解撚管との間における間隔によって及び切断前に形成された解撚糸ループの大きさによって、正確に確定されている。
【0016】
いずれにせよ、糸の糸端部を先行させて解撚管内に吸い込ませることが、最適な糸端部解撚のために好適であるので、糸型式とは無関係に、切断装置と解撚管との間には僅かな間隔だけが提供されている。それというのは、解撚長さは十分にフレキシブルに、また切断前に形成された解撚糸ループの大きさによって、調節することができるからである。このことはまた、解撚糸ループの形成の制御をも簡単化し、すべての糸種類のために適宜である。
【0017】
解撚糸ループがそれぞれ解撚管とスプライシング通路との間に形成されるこの構成では、つまりいずれにせよ、切断直後に不要に大きな糸長さを直接吸い込むことが回避される。直ぐ上に述べたように、このことを切断装置と解撚管との近接によって、さらに補足すると、解撚管内への糸ループの吸込みが完全に阻止され、ひいては解撚管内における糸ループの湾曲点における糸の不都合な弱化が、完全に回避される。
【0018】
択一的に好適な態様では、解撚糸ループはスプライシング通路の一方の側において解撚管と切断装置との間に形成されてよい。これによって、スプライシング通路における解撚管の近接配置の利点を利用することができ、これにより、必要に適して準備された解撚された糸端部は、比較的僅かな影響にしかさらされない、スプライシング通路内までの比較的短い距離を進むだけでよくなる。
【0019】
ここで付言しておくと、ここでは記載を簡単にするために、多くの場合、上糸及び下糸並びに下側もしくは上側の構成部材について述べられおり、これによってスプライシング通路のほぼ鉛直な方向付けが暗示されているものとする。しかしながらこのことは、既に述べたように、単に記載を簡単にするためにだけ役立つものであり、本発明の一般性を制限するものではない。なぜならば、本発明では単に、任意に方向付けられた2つの糸を、スプライサの、相応に合わせられた構成部材の方向付けによって、糸継ぎすることが問題であることは、当業者にとって明らかであるからである。同じように、以下においては通常、両方のループ形成器の同一の特殊な構成について述べるが、このような構成は、実際において最も好ましい解決策である。しかしながら本発明は、同じように、両方のループ形成器が互いに異なった構成を有する態様をも含む。それというのは、両方のループ形成器は、それが相互に無関係であることに基づいて、互いに任意に組み合わせることができるからである。
【0020】
ループ形成器は、このとき、例えば独国特許出願公開第4005752号明細書及び独国特許出願公開第4420979号明細書に基づいて公知のように、従来技術と同様に構成されていてよい。重要な相違点は、単に、本発明に係るループ形成器は相前後して両方の糸に作用する必要があり、つまり本発明に係るループ形成器は、従来技術におけるように一方の糸のための接触手段を有するのみならず、両方の位置に対する接触手段を有する必要がある。しかしながらこのことは、従来技術から簡単に、糸の間にループ形成器を設けることによって、かつそこにおいて公知の接触手段を相応に鏡像的に配置することによって、発展させることができる。
【0021】
つまり例えば、独国特許出願公開第4005752号明細書と同様なループ引張り体であって、一端における1つの引張りフックの代わりに、場合によっては相応に延長されたリフティングシリンダの各端部に各1つの引張りフックを有するようなループ引張り体が、問題になる。しかしながらまた、独国特許出願公開第4420979号明細書に基づいて公知の回転羽根も問題になる。この回転羽根は、今やしかしながら、両方の糸のうちの一方の糸に向かってだけではなく、他方の糸に向かって逆方向にも旋回できなくてはならない。独国特許出願公開第4420979号明細書の吸込みノズルのような空気力式の解決策も、実現することができるが、しかしながらこの場合この吸込みノズルは、両方の糸に向かって方向付け可能に構成されるか、又はその数を2倍にしなくてはならない。可撓性の糸の確定された長さを吸い込むためには、そのためにさらに、例えば微細な格子として形成された、糸の確定されていない吸込みを阻止する適宜なストッパを、吸込みノズルの前に補足する必要がある。解撚糸ループの大きさは、例えば縦長の吸込みスリットの長さのようなノズル形状によって、明確に確定されるか、又は例えば吸込みノズルの、糸走路に対して横方向に変化可能な位置によって、明確に確定される。
【0022】
ループ形成器のための調節部材としては、この場合においても、空気力式の、液圧式の、電気機械式の又はサーボモータによる作動のような、従来技術に基づいて公知の原理を、使用することができる。例えば両側の引張りフックによってさらに発展された、独国特許出願公開第4005752号明細書の圧縮空気作動式のリフティングシリンダは、空気力式の引張り棒を備えた解決策を生ぜしめる。引張りフックを用いた糸の係合及び引張りの代わりに、糸に対して横方向に方向付けられた接触ピン又はこれに類したものによって、糸を押し離すことを用いると、相応に、空気力式に作動可能な押し棒が得られる。しかしながらこの場合においても、当業者には多くの択一的な解決策の可能性が与えられている。
【0023】
上側及び下側のループ形成器の鏡像的な運動のために、両方のループ形成器が1つの構成エレメントに結合されていると特に好適である。なぜならば、このように構成されていると、ループ形成器の構造を大幅に簡単にすることができるのみならず、1つの共通の調節部材を使用することも可能になり、このことは、コスト及び保守手間に対してポジティブな影響を及ぼす。このとき両方のループ形成器を結合するために、特に機械式の、しかしながらまた空気力式の解決策が問題になる。
【0024】
この思想の特に単純な構成は、既に述べた、独国特許出願公開第4420979号明細書に基づいて公知の回転羽根のさらなる発展によって、つまり両ループ形成器を共通の回転羽根として構成することによって生ぜしめられ、この回転羽根の回転軸線は、スプライシング通路の中心を通って延び、かつスプライサの、スプライシング通路が位置している表面に対して垂直に延びている。スプライシング通路の上側及び下側に解撚糸ループ及び引戻し糸ループを形成するために、この回転羽根は、その休止位置を中心にして両側に向かって1つの回転運動を実施するだけでよく、この回転運動は、ただ1つの往復動するモータ又は簡単な電磁式の装置によって生ぜしめることができる。そのために例えば、回転軸線に対して横方向に延びていてこの回転軸線を中心に回転可能な連結棒の両端部に取り付けられた、回転軸線に向かって方向付けられた連行ピンが、糸を回転運動時に押し離すことができ、かつこのときに所望のループを形成することができる。このときスプライシング通路側に設けられた位置固定の保持ピンは、一方ではループ形成をさらに強化することができ、しかしながら特に、スプライシング通路内における糸経路がループ形成によって妨げられないように働くことができる。これは、2つのループ形成器を同時に実現する極めて単純な構成部材であり、この構成部材は、複雑化されない調節部材を備えている。
【0025】
スプライサが又は巻取りユニットにおけるスプライサの周囲が、このような純然たるで回転による解決策のために、十分に自由な空間を提供することができない場合には、共通の調節部材を備えた類似の解決策は、糸に対して並進運動する接触部材によっても実現可能である。例えば再び、既に述べたような押し棒又は引張り棒を使用することが可能であり、このとき押し棒又は引張り棒は互いに結合されていて、その別個の調節部材の代わりに1つの共通の調節部材を使用することができる。具体的には、結合のために例えば車セグメントが提案され、これらの車セグメントの回転軸線は、スプライシング通路の中心を通って延びていて、かつスプライサの、スプライシング通路が位置している表面に対して垂直に延びている。車セグメント(Radsegment)というのはこのとき、一方ではその回転軸線を中心にして両方向に回転することができる部材であり、かつ他方ではスプライシング通路の上下において十分に延びる円周部分を有していて、この円周部分は、回転運動中に、糸に対して並進運動される接触部材の、当該部材に向いた側との連結状態に、留まっている部材である。具体的には、このような部材は、例えば鏡像的な円板セグメントとして形成することができる。
【0026】
純然たる回転による解決策において、上において述べたように、ここでも本来の調節部材は往復動する回転モータ又は、車セグメントを両方向において回転させることができる相応の単純な電磁式の装置であり、このような回転運動は、次いで伝動装置を介して糸に対する接触部材の並進運動に変換される。このような伝動連結装置のための例としては、車セグメントの円周部分は、押し棒又は引張り棒の、車セグメントに向けられた側の対応する歯に係合するために、例えば歯を備えていることができる。しなしながらまた、当業者にとって周知の他のすべての、回転運動から並進運動への変換原理も使用することが可能である。そして構造空間が十分な場合には、車セグメントは、完全な車として構成すること、特に完全な歯車として構成することができる。
【0027】
基本的に本発明は、制御技術的に自立したループ形成器、つまり、外部の制御装置を必要とせず、その調節部材が例えば、ループ形成器自体の中に保管された機械式又は電気式にコード化されたプログラムによって制御される、ループ形成器をも含む。しかしながらこのような構成には、巻取りユニットにおける他の糸種類への、例えば処理変化による動作変化時に、スプライサ全体を交換しなくてはならない、又は少なくとも、自立したループ形成器のプログラムを交換しなくてはならない、という欠点がある。
【0028】
従って本発明は第一に、外部から制御可能な調節部材を備えたループ形成器を挙げており、このとき両方のループ形成器は、上において述べたように、ただ1つの共通の調節部材を互いに分け合うことができる。このような調節部材はこのとき好適には、巻取り機の巻取りユニット計算機によって、又は場合によっては巻取りユニット計算機を介して巻取り機の中央制御装置によって制御される。つまり相応に操作員は、巻取りユニットの操作ユニットから又は巻取り機の操作ユニットからループ形成器の作業パラメータに、又は操作可能性をさらに高めるために、或いは両方からアクセスすること、つまり作業パラメータを認識して、場合によっては変更することも可能である。
【0029】
ゆえに本発明の課題は、上において記載した本発明に係るスプライサのうちの1つを備えた巻取りユニットによって、かつこのような巻取りユニットを備えた巻取り機によっても、解決される。このとき好適な態様は、直ぐ上に述べたように、巻取りユニット計算機及び/又は巻取り機計算機によるループ形成器の制御によって生ぜしめられる。
【0030】
上において述べたすべての態様及びこれらの態様から当業者のために生じる変化態様及び組合せは、本発明の枠内に属するものである。以下においては、図面に示した実施形態及び幾つかの変化態様を用いて、本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】回転羽根として形成されたループ形成器を備えた本発明に係るスプライサの第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示した実施形態のさらなる改造形態を示す、スプライシング通路を上から見た平面図である。
【0032】
すべての図面において、同一部材には同一符号が付されている。
【0033】
独国特許出願公開第4420979号明細書におけるとほぼ同じ図1(該明細書では図2として示されている)は、本発明に係るスプライサ8の第1実施形態を示す斜視図であり、このスプライサ8は、この従来技術の、回転羽根24として形成されたループ形成器の相応な改造によって得られた。スプライサ8の他にも、巻取りパッケージ(図示せず)から上糸4′を取ってくる旋回ノズル16、及び繰出しボビン(図示せず)から下糸4′′を相応に引き出す、吸込み開口21を備えた吸込み管20、巻取り機の巻取りユニットの可能な構成部材であるすべての構成部材が示されている。同様に上糸4′及び下糸4′′が示されている。
【0034】
スプライサ8はまず下記の残りの構成部材を有している。すなわち、ねじ43を用いて空気分配器ブロック42に固定された、スプライシング通路26及びそのスプライシング空気接続部45を備えたスプライシング角柱体25、このスプライシング角柱体25の上側及び下側において直接隣接している糸ガイドプレート27、スプライシング通路26の延長部においてそれぞれ空気分配器ブロック42に設けられた解撚管38、空気分配器ブロック42の上側及び下側に配置された、操作機構33を備えた切断装置32;36(図面において上側の切断装置32のための操作機構33は同様に認識可能)、並びにそれぞれ操作機構31;35を備えた上側の糸クランプ30及び下側の糸クランプ34。
【0035】
解撚糸ループを形成するというただ1つの課題を有していた、独国特許出願公開第4420979号明細書のループ形成器は、図面において回転羽根24として構成されていて、この回転羽根24は、スプライシング通路の中心を通りかつスプライシング通路を含むスプライサの表面に対して垂直に延びる回転軸線を備えている。回転羽根24の両端部に取り付けられていて回転軸線に対して平行な連行ピン40はそれぞれ、解撚糸ループを形成するために、常に単に糸のうちの1つにだけ向かって回転させられ、つまり例えば上側の連行ピン40は常に下糸4′′に向かってだけ回転させられる。つまり回転羽根24の回転時に連行ピン40はそれぞれ所属の糸を捕捉し、該糸を、スプライシング角柱体25におけるそれぞれ所属の凹部39内に連行する。例えば図1に示した状態では、上側の連行ピン40は、時計回り方向における回転時に、下糸4′′を右に向かって、スプライシング角柱体25において右上に設けられた凹部39内に連行する。このとき糸において、つまりここでは下糸4′′において形成される解撚糸ループは、糸がスプライシング通路側において位置固定の保持ピン41によって留められることによって、さらに増大させられる。しかしながらこのとき保持ピン41は特に、ループ形成がスプライシング通路における上糸4′もしくは下糸4′′の経路を変化させないように設けられている。
【0036】
独国特許出願公開第4420979号明細書に開示された回転羽根24を本発明に係るループ形成器へとさらに発展させるために、主として単に、回転羽根24が両回転方向において十分に大きく旋回できなくてはならないように、配慮されるだけでよい。そのために一方では、相応の駆動装置が必要であり、かつ他方では、スプライシング角柱体25に既に存在する凹部39に対して鏡像的に、スプライシング角柱体25に別の凹部39′を設けることが必要である。このような追加的な凹部39′は、それぞれ他方の糸に対する回転羽根24の十分な回転を可能にするほどに、深さが十分でなくてはならない。このように構成されていると、糸のための所望の引戻し長さをも得ることができる。
【0037】
解撚糸ループの形成後、及び解撚管内における完全な糸端部解撚のための、出発位置への逆回転による解撚糸ループの再消滅後に、回転羽根は独国特許出願公開第4420979号明細書に加えて本発明によれば、それぞれ他方の方向への回転によって糸4′,4′′をスプライシング通路26内に引き戻すという別の機能を満たす。例えばそのために上側の連行ピン40は、図面において左に向かって回転し、いまや上糸4′をスプライシング角柱体25において左上に設けられた凹部39′内に連行し、この連行動作は、上糸4′のための所望の引戻し長さが得られるまで、つまり上糸4′の糸端部が、スプライシング通路26においてスプライシングのために所望の位置を占めるまで行われる。そのためにこの側にも、保持ピン41に相応する別のピン(図示せず(しかしながら図2参照))が設けられてよく、このように構成されていると、糸をこの側においても留めること、ひいては一方では引戻し糸ループを増大させることが可能になり、かつ他方では、ループ形成による、スプライシング通路26内における糸経路に対する影響を阻止することができる。
【0038】
このとき回転羽根24の駆動は、独国特許出願公開第4420979号明細書に記載されているように、回転羽根24の周囲に設けられた駆動ユニットによって行うことができる。この場合、回転羽根24の端部における上側及び下側の連行ピン40は、その周囲においてほぼ円周形状の構造体によって互いに結合され、そしてこの構造体に駆動ユニットが連結されている。しかしながらまた択一的に、直に、回転軸に作用する駆動コンセプトも可能である。
【0039】
図2には、図1に示した実施形態のさらなる発展形態が、スプライシング通路を上から見た概略図で示されている。以下においては、図2を参照しながら、本発明の作用形式をもう一度詳しく説明する。図1とは異なり、ここではスプライシング角柱体25は丸く構成されており、これによって凹部39,39′は省かれている。さらに保持ピン40は、直に、単純な連結棒によって結合されており、この配置形態は、一体に構成することも可能である。スプライシング角柱体25内に糸4′,4′′を導入するため、及び後における糸4′,4′′の滑り出しを妨げないために、例えば回転軸線の領域及びその上側及び下側には、スプライシング角柱体25と空気分配器ブロック42との間に間隙が残されていて、そこに連結棒が設けられてよい。
【0040】
しかしながらまたここでも、択一的に、円形のスプライシング角柱体25において独国特許出願公開第4420979号明細書におけると同様に、比較的簡単に構成可能な円形リング結合部が実現可能である。
【0041】
図2の部分(a)〜(d)には、スプライシング角柱体25内への糸挿入から本来のスプライシング工程の開始直前までの、回転羽根24及び糸4′,4′′の最も重要な状態が示されている。部分(a)において糸4′,4′′は、ちょうどスプライシング角柱体25のスプライシング通路26並びに糸クランプ30,34及び切断装置36,32に挿入されている。回転羽根24はその出発位置にある。
【0042】
部分(b)において回転羽根24はその回転軸線24′を中心にして時計回り方向で回転させられており、このときその連行ピン40は解撚糸ループ50を形成するために、糸4′,4′′を保持ピン41の周面に掛けて曲げる。そのために、その間に閉鎖された糸クランプ30,34によってそれぞれパッケージもしくはボビン側において保持された糸4′,4′′は、なお開放している切断装置36,32を通って滑り戻る。このとき構成部材の幾何学的な配置形態及び回転運動の大きさは、糸4′,4′′が解撚糸ループ50の形成後に解撚管38の吸込み領域に位置するように設計されている。今や、切断装置36,32は閉鎖し、これによって、糸4′,4′′の準備すべき糸端部を形成する。このとき最も遅くてもこの瞬間に、圧縮空気が解撚管38に供給され、これによって糸4′,4′′はその吸込み領域からもはや去ることができない。
【0043】
従って可撓性の糸4′,4′′の糸端部は、いずれにせよ直ぐに、場合によっては、最初は糸ループを形成した状態で、解撚管38内に吸い込まれる。これに対して固い糸は、解撚管38が切断装置36,32の十分近くに位置する場合にだけ、直ぐに、かつ糸端部が先行して解撚管38内に吸い込まれる。そうでない場合には、回転羽根24は解撚糸ループ50の増大によって糸4′,4′′を、その糸端部が解撚管38のそれぞれの吸込み領域に達するまで、さらに大きく引き戻す。そしてこれにより、糸4′,4′′はその糸端部を前にして解撚管38内に吸い込まれる。しかしながらまた、可撓性の糸を常にその糸端部を前にして解撚管38内に吸い込み、かつ糸の経路を単純にするためには、解撚管38と切断装置36,32との常に近接した配置関係が好適であり、このとき解撚長さは、主として解撚糸ループ50の大きさによって確定される。
【0044】
解撚管38内への糸4′,4′′の糸端部の吸込み後に、回転羽根24は逆時計回り方向で再びその出発位置に戻り旋回し、このとき解撚糸ループ50は消滅させられ、糸端部は解撚管38内により深く吸い込まれ、そしてこのとき糸端部の所望の長さが解撚される。図2の部分(c)は、この状態、つまり回転羽根24がその出発位置に戻り、糸4′,4′′の全解撚長さが解撚管38に吸い込まれている状態を示している。
【0045】
糸端部の解撚が行われた後で、回転羽根24は今やさらに逆時計回り方向に回転し、引戻し糸ループ51を形成するために、回転羽根24の連行ピン40は、糸4′,4′′のそれぞれ他方を保持ピン41′の周面に掛けて曲げる。このとき、今なお閉鎖されている糸クランプ30,34によってそれぞれパッケージもしくはボビン側において保持されている糸4′,4′′の糸端部は、スプライシング角柱体25に向かって引き戻される。図2の部分(d)には、糸4′,4′′が完全に引き戻された後の状態が示されており、この状態では、糸4′,4′′の解撚された領域46′,46′′がスプライシング通路26内に位置しており、本来のスプライシング工程を実施することができる。スプライシング工程終了後に回転羽根24は、再びその出発位置にもたらされ、そして糸4′,4′′は通常のようにスプライシング角柱体25から解放される。
【0046】
さらに十分自由に組み合わせることができる、本発明の上に述べた実施形態の他に、当業者は、多くの別の変化態様を実施することが可能であり、これらの変化態様はすべて、本発明の枠内に含まれる。例えば、連行ピン40を、連結棒の端部における歯車セグメントと相応の歯を備えた押し棒とにそれぞれ交換することによって、連結棒の回転運動を押し棒の並進運動に変換することができる。
【0047】
さらに完全を期すために付言すると、不定冠詞は、それによって示された構成部材が複数存在し得ることを排除するものではない。また、1つの特定の構成部材の記載は、その機能を複数の択一的な構成部材に分けることができないこと、又は記載された複数の構成部材の機能をただ1つの構成部材にまとめることができないことを、必ずしも意味するものではない。
図1
図2