特許第6762756号(P6762756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762756
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   B60R13/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-102198(P2016-102198)
(22)【出願日】2016年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-210011(P2017-210011A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】岡原 真吾
(72)【発明者】
【氏名】久保元 亮樹
【審査官】 小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−015564(JP,A)
【文献】 特開2004−256035(JP,A)
【文献】 特開2009−101841(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0142111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する板状部材と、
前記板状部材における乗物室内側の面に設けられ、模様が形成されると共に光透過性を有する第1意匠層と、
前記板状部材における乗物室外側の面に設けられ、模様が形成されると共に光透過性を有する第2意匠層と、
前記第2意匠層を乗物室外側から覆うと共に開口部が形成された遮光層と、
前記開口部に対して乗物室外側に配されると共に、前記開口部に対して光を出射可能な乗物室外側光源と、を備える乗物用内装材。
【請求項2】
前記板状部材の側面と対向配置され、前記側面に対して光を出射可能な側面側光源を備え、
前記板状部材は、前記側面から入射された光を前記乗物室内側の面から出射させる導光板である請求項1に記載の乗物用内装材。
【請求項3】
前記第2意匠層における前記板状部材側の面には、凹凸部が形成されている請求項1または請求項2に記載の乗物用内装材。
【請求項4】
前記第2意匠層には、光反射性を有する粉末が含有されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用内装材として、下記特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の乗物用内装材は、例えば、木目調の模様を有する加飾部材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−264835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記乗物用内装材においては、意匠性を高くするために、より複雑な模様を表現することが求められている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、意匠性をより高くすることが可能な乗物用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の乗物用内装材は、光透過性を有する板状部材と、 前記板状部材における乗物室内側の面に設けられ、模様が形成されると共に光透過性を有する第1意匠層と、前記板状部材における乗物室外側の面に設けられ、模様が形成されると共に光透過性を有する第2意匠層と、前記第2意匠層を乗物室外側から覆うと共に開口部が形成された遮光層と、前記開口部に対して乗物室外側に配されると共に、前記開口部に対して光を出射可能な乗物室外側光源と、を備えることに特徴を有する。
【0007】
本発明の乗物用内装材を乗員が乗物室内側から視た場合には、手前側に第1意匠層が視え、その奥方に板状部材を透過して第2意匠層が視える。これにより、第1意匠層の模様と第2意匠層の模様が重なった複雑な模様を表現することができ、意匠性をより高くすることができる。そして、第1意匠層と第2意匠層の間に板状部材を介在させることで、第2意匠層の模様の立体感をより強調することができ、意匠性をより高くすることができる。
また、乗物室外側光源から出射された光は開口部を通じて、第2意匠層、板状部材、第1意匠層の順に透過し、乗物室内に出射される。これにより、乗員は、第1意匠層及び第2意匠層の模様に加え、開口部の形状を模様として視認することができる。これにより、複雑な模様を表現することができ、意匠性をより高くすることができる。また、乗物室外側光源の点灯及び消灯によって、開口部の模様の有無を切り替えるという演出を行うことも可能となる。
【0008】
また、前記板状部材の側面と対向配置され、前記側面に対して光を出射可能な側面側光源を備え、前記板状部材は、前記側面から入射された光を前記乗物室内側の面から出射させる導光板であるものとすることができる。側面側光源から出射された光は、板状部材の側面から板状部材に入射される。板状部材の内部では、光が全反射を繰り返すことで導光される。板状部材内部において、板状部材と第2意匠層の境界で反射された光は、乗物室内側の面から出射された後、第1意匠層を通過して乗物室内に出射される。これにより、側面側光源の光によって、第2意匠層の模様と、第1意匠層の模様とを照らすことができる。
【0009】
仮に、乗物室外側からの光によって第2意匠層を照らす構成とした場合、乗員には、第2意匠層の模様を透過した光が視認される。このような光では、模様の立体感(陰影など)を表現することが難しく意匠性が低下してしまう。また、乗物用内装材に対して乗物室内側から光を当てて第2意匠層の模様を照らす構成とすれば、乗物用内装材の乗物室内側に光源を配する必要が生じ、乗物室の空間が狭くなってしまう。上記構成によれば、側面側光源を板状部材の側面と対向配置することで乗物室の内外方向における省スペース化を図りつつ、第2意匠層については乗物室内側から光を照射して模様を照らすことができる。
【0012】
また、前記第2意匠層における前記板状部材側の面には、凹凸部が形成されているものとすることができる。凹凸部に反射した光を乗物室内に出射させることができ、より複雑な意匠を表現することができる。
【0013】
また、前記第2意匠層には、光反射性を有する粉末が含有されているものとすることができる。粉末に反射した光を乗物室内に出射させることができ、より複雑な意匠を表現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、意匠性をより高くすることが可能な乗物用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係るドアトリムを示す正面図
図2】遮光層を車室内側から視た正面図
図3】加飾部材を示す断面図(図1のIII−IIIで切断した図に対応)
図4】実施形態2に係る加飾部材を示す断面図
図5】実施形態3に係る加飾部材を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1から図3によって説明する。本実施形態では、乗物用内装材として、車両用のドアトリム10(車両用内装材)を例示する。図1に示すように、ドアトリム10は、例えば、ミドルボード11と、アッパボード12と、加飾部材20(オーナメント)と、を備えている。
【0017】
加飾部材20は、図1に示すように、例えば、車両前後方向に長い長手状をなしており、図3に示すように、板状部材30と、板状部材30における車室内側の面(乗物室内側の面、図3の上側の面)に設けられた第1意匠層40と、板状部材30における車室外側の面(乗物室外側の面、図3の下側の面)に設けられた第2意匠層50と、第2意匠層50を車室外側から覆う遮光層60と、を備えている。なお、図3においては、上側が車室内側であり、下側が車室外側である。
【0018】
板状部材30は、車両前後方向に長い長手状をなしている。板状部材30は、例えば、屈折率が空気よりも十分に高く、且つほぼ透明な(光透過性を有する)合成樹脂材料(例えばアクリル樹脂やポリカーボネートなど)によって構成されている。なお、板状部材30の厚さは、例えば、2〜3mm程度で設定されるが、これに限定されない。
【0019】
第1意匠層40は、光透過性を有するものとされ、模様41(例えば色の濃淡のグラデーション模様、図1の網掛け部分)が形成されている。第2意匠層50は、光透過性を有するものとされ、ほぼ全面に亘って模様51(例えば木目調の模様、図1の網掛け部分)が形成されている。なお、模様41,51は、光透過性を有するものとされる。なお、第1意匠層40及び第2意匠層50は、それぞれ模様が印刷された加飾フィルムを用いて形成することができる。例えば、板状部材30を射出成形するのと同時に、加飾フィルムを貼り付けるインサート成形によって、第1意匠層40及び第2意匠層50を形成することができる。
【0020】
また、加飾フィルムに印刷された模様のみを板状部材30に転写することで第1意匠層40(又は第2意匠層50)としてもよい。また、加飾フィルムを用いたものに限定されず、例えば、板状部材30に対して光透過性を有する塗料を塗布することで第1意匠層40(模様41)及び第2意匠層50(模様51)を形成してもよい。
【0021】
遮光層60は、例えば、遮光性を有するフィルムや塗料によって構成され、例えば、黒色を呈する。また、図1及び図2に示すように、遮光層60において、模様41と重なる部分には、開口部61が形成されている。なお、図1では、開口部61が略V字状をなすものを例示しているが、これに限定されない。
【0022】
図3に示すように、板状部材30の側面31と対向する形で、LED21(側面側光源)が設けられている。LED21は、図1に示すように、例えば、ミドルボード11の裏面に設けられ、その光出射面21Aが側面31に向かう形で配されている。これにより、LED21は、側面31に対して光を出射可能な構成となっている。
【0023】
板状部材30は、導光板であり、側面31(光入射面)から入射された光を、その内部で導光させた後、車室内側の面(光出射面)の全面から出射させることが可能な構成となっている。具体的には、側面31から入射された光は、板状部材30の内部において、全反射を繰り返すことで導光される。そして、板状部材30における車室外側の面には、光を散乱させつつ反射させる散乱反射層(図示せず)が設けられている。これにより、板状部材30における車室外側の面(ひいては散乱反射層)に達した光の一部は、散乱反射されることで、板状部材30の車室内側の面に対して全反射されない角度で入射する光となる。この結果、板状部材30内部の光を板状部材30の車室内側の面から出射させることができる。なお、板状部材30の構成は上述したものに限定されず適宜変更可能であり、側面31から入射された光を、その内部で導光させた後、車室内側の面から出射させることが可能な構成であればよい。例えば、板状部材30の内部に光を散乱させる粒子を含ませたり、板状部材30の車室外側の面に微細な溝部(例えばV溝)や光を散乱反射させるドットパターンを設けたりすることによって、車室内側の面から光を出射させる構成としてもよい。
【0024】
また、板状部材30内部において、車室外側に向かう光の一部は、第2意匠層50に反射され車室内側に向かう光となる。これにより、板状部材30の車室内側の面から出射された光は、模様51が反映された光となる。
【0025】
また、図3に示すように、加飾部材20の車室外側(図3の下側)には、LED23が設けられている。LED23(乗物室外側光源)は、開口部61に対して車室外側から重なる形で配され、その光出射面23Aが車室内側を向く形で配されている。これにより、LED23は、開口部61に対して光を出射可能な構成となっている。LED21,23は、車両に搭載されたバッテリ等の電源装置(図示せず)に接続されており、それぞれ個別に点灯及び消灯が可能な構成となっている。LED21,23は、それぞれ可視光(例えば、白色光)を出射するものとされるが、出射光の色は白色に限定されず適宜変更可能である。また、LED21とLED23の出射光の色を異なる色にしてもよい。
【0026】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。本実施形態のドアトリム10において加飾部材20を乗員が車室内側から視た場合には、手前側に第1意匠層40が視え、その奥方に板状部材30を透過して第2意匠層50が視える。これにより、第1意匠層40の模様41(例えばグラデーション模様)と第2意匠層50の模様51(例えば木目模様)が重なった複雑な模様を表現することができ、意匠性をより高くすることができる。そして、第1意匠層40と第2意匠層50の間に板状部材30を介在させることで、第2意匠層50の模様の立体感(凹凸)をより強調することができ、意匠性をより高くすることができる。
【0027】
また、板状部材30の側面31と対向配置され、側面31に対して光を出射可能なLED21を備える。LED21から出射された光は、板状部材30の側面31から板状部材30に入射される。板状部材30の内部では、光が全反射を繰り返すことで導光される。板状部材30内部において、板状部材30と第2意匠層50の境界で反射された光は、第1意匠層40を通過して車室内に出射される(図3の矢線L1参照)。これにより、LED21の光によって、第2意匠層50の模様51と、第1意匠層40の模様41とを照らすことができる。
【0028】
仮に、車室外側からの光によって第2意匠層50を照らす構成とした場合には、乗員には、第2意匠層50の模様51を透過した光が視認される。このような光では、模様51の立体感(陰影など)を表現することが難しく意匠性が低下してしまう。また、加飾部材20に対して車室内側から光を当てて模様51を照らす構成とすれば、加飾部材20の車室内側に光源を配する必要が生じ、車室空間が狭くなってしまう。本実施形態のように、LED21を板状部材30の側面31と対向配置すると共に、板状部材30を導光板とすることで、車室内外方向における省スペース化を図りつつ、第2意匠層50については車室内側から光を照射して模様51を照らすことができる。
【0029】
また、第2意匠層50を車室外側から覆うと共に開口部61が形成された遮光層60と、開口部61に対して車室外側に配されると共に、開口部61に対して光を出射可能なLED23と、を備え、第2意匠層50は、光透過性を有するものとされる。
【0030】
本実施形態において、LED23から出射された光は開口部61を通じて、第2意匠層50、板状部材30、第1意匠層40の順に透過し、車室内に出射される(図3の矢線L2参照)。これにより、乗員は、第1意匠層40の模様41及び第2意匠層50の模様51に加え、開口部61の形状を模様として視認することができる。これにより、複雑な模様を表現することができ、意匠性をより高くすることができる。また、LED23の点灯及び消灯によって、開口部61の模様の有無を切り替えるという演出を行うことも可能となる。
【0031】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図4によって説明する。本実施形態では、加飾部材の構成が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態では、加飾部材120における第2意匠層150における車室内側の面(板状部材30側の面)に凹凸部151(シボ模様)が形成されている。これにより、凹凸部151に反射した光を車室内に出射させることができ、より複雑な意匠を表現することができる。また、LED21からの出射光は、凹凸部151に反射して車室内側に向かう。これにより、凹凸部151を透過した光を車室内に出射させる構成と比べて、凹凸部151の立体感を強調することができる。
【0032】
<実施形態3>
次に、本発明の実施形態3を図5によって説明する。本実施形態では、加飾部材の構成が上記実施形態と相違する。なお、上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態の加飾部材220における第2意匠層250には、光反射性を有する粉末251が含有されている。このような粉末251としては、例えば微小な金属片(メタルフレーク)やパール粉末などを例示することができる。これにより、粉末251に反射した光を車室内に出射させることができ、より複雑な意匠を表現することができる。
【0033】
仮に、第2意匠層250を透過した光を車室内に出射させる構成とした場合には、粉末251が影になり易い。本実施形態では、LED21からの出射光を用いることで、粉末251に対して車室内側から光を照射し、その反射光を車室内に出射させることができる。このため、粉末251を確実に照らすことができ、より意匠性を高くすることができる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、乗物用内装材として車両用のドアトリムを例示したが、これに限定されない。本発明は、ドアトリム以外の車両用内装材(例えば、インストルメントパネルやルーフパネルなど)や、車両以外の種々の乗物に搭載される乗物用内装材について適用することが可能である。
(2)模様41,51の態様は、上述したもの(木目模様やグラデーション模様)に限定されず適宜変更可能である。開口部61の形状も上述したものに限定されず適宜変更可能である。
(3)上記実施形態において、LED21,23を備えていなくてもよい。また、LED23を備えていない構成の場合には、第2意匠層50,150,250は、光透過性を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10…ドアトリム(乗物用内装材)、21…LED(側面側光源)、23…LED(乗物室外側光源)、30…板状部材、31…板状部材の側面、40…第1意匠層、41…模様、50,150,250…第2意匠層、51…模様、60…遮光層、61…開口部、151…凹凸部、251…粉末
図1
図2
図3
図4
図5