(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762761
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ベアリング用の柔軟な絶縁ライナ
(51)【国際特許分類】
F16C 35/07 20060101AFI20200917BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20200917BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
F16C35/07
F16C41/00
F16C19/06
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-106364(P2016-106364)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-20649(P2017-20649A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2019年5月27日
(31)【優先権主張番号】14/722,971
(32)【優先日】2015年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516157418
【氏名又は名称】ケイドン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Kaydon Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン チャーチリー
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−259216(JP,A)
【文献】
特開平11−030239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56
F16C 33/00−33/66
F16C 35/00−39/06
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリであって、
内側ハウジングと外側ハウジングとの間に環状スペースを画定する、リング状の内側ハウジングと外側ハウジングとを有するハウジングアッセンブリと、
前記環状スペースに配置されるベアリングであって、金属製の内レースと外レースと、該内レースと該外レースとの間に配置された金属製の複数の転動エレメントを有するベアリングと、
前記ベアリングと前記外側ハウジングおよび前記内側ハウジングの少なくとも一方との間に配置される少なくとも1つの細長い柔軟な絶縁部材と、を備え、
前記細長い柔軟な絶縁部材は、前記転動エレメントを通る電気路の形成を阻止するために非導電性の材料を含んでおり、前記細長い柔軟な絶縁部材は、細長いベース部分と、該ベース部分から延在する第1の区切られた脚部構造と、第2の区切られた脚部構造とを有しており、前記細長い柔軟な絶縁部材はほぼU字形であって、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ、前記細長いベース部分の周りで前記細長い柔軟な絶縁部材の湾曲を可能にするように互いに分離された複数の脚部を有しており、前記内レースと外レースのうち選択された一方の少なくとも一部分は、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造との間に位置しており、
前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ、これら脚部構造の間にギャップを画定する、互いに間隔を置いて配置された複数の脚部を有し、
各脚部は内面と外面とを有しており、該内面及び外面の少なくとも一方は、凹状の湾曲を有している、
電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項2】
各脚部の外面は凹状の湾曲を有しており、各脚部の内面は凸状の湾曲を有している、請求項1記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項3】
前記脚部の前記内面と前記外面とは、これらの間の寸法を画定し、該寸法はほぼ一様である、請求項2記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項4】
電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリであって、
内側ハウジングと外側ハウジングとの間に環状スペースを画定する、リング状の内側ハウジングと外側ハウジングとを有するハウジングアッセンブリと、
前記環状スペースに配置されるベアリングであって、金属製の内レースと外レースと、該内レースと該外レースとの間に配置された金属製の複数の転動エレメントを有するベアリングと、
前記ベアリングと前記外側ハウジングおよび前記内側ハウジングの少なくとも一方との間に配置される少なくとも1つの細長い柔軟な絶縁部材と、を備え、
前記細長い柔軟な絶縁部材は、前記転動エレメントを通る電気路の形成を阻止するために非導電性の材料を含んでおり、前記細長い柔軟な絶縁部材は、細長いベース部分と、該ベース部分から延在する第1の区切られた脚部構造と、第2の区切られた脚部構造とを有しており、前記細長い柔軟な絶縁部材はほぼU字形であって、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ、前記細長いベース部分の周りで前記細長い柔軟な絶縁部材の湾曲を可能にするように互いに分離された複数の脚部を有しており、前記内レースと外レースのうち選択された一方の少なくとも一部分は、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造との間に位置しており、
前記細長いベース部分は、互いに間隔を置いて位置する複数のセグメントを有し、これらのセグメントは、これらのセグメントの柔軟性よりも高い柔軟性を有する接続部分によって互いに接続されている、電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項5】
前記脚部は前記セグメントから延在していて、隣接する脚部は、対応する接続部分に隣接してこれら脚部の間にギャップを画定しており、前記接続部分が湾曲することにより、対応するギャップの寸法が増減する、請求項4記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項6】
各セグメントは、内面と外面との間に一様の厚さを画定する内面と外面とを有している、請求項5記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項7】
前記接続部分は、前記セグメントの厚さよりも著しく小さい厚さを有しており、及び/又は、
前記細長い柔軟な絶縁部材は、環状の中心線を画定しており、前記セグメントの内面及び外面の少なくとも一方は、前記環状の中心線に対して横方向で見た断面図で見た場合に湾曲している凹面を有している、
請求項6記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項8】
前記セグメントの内面は前記外レースに接触し、前記セグメントの外面は前記外側ハウジングに接触しており、前記セグメントは、前記凹面の湾曲を減じるように曲げられる、請求項7記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項9】
前記ハウジングアッセンブリに対する前記細長い柔軟な絶縁部材の回転を阻止するように、前記ハウジングアッセンブリに前記細長い柔軟な絶縁部材を接続する固定部材をさらに備える、請求項1記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項10】
電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリであって、
内側ハウジングと外側ハウジングとの間に環状スペースを画定する、リング状の内側ハウジングと外側ハウジングとを有するハウジングアッセンブリと、
前記環状スペースに配置されるベアリングであって、金属製の内レースと外レースと、該内レースと該外レースとの間に配置された金属製の複数の転動エレメントを有するベアリングと、
前記ベアリングと前記外側ハウジングおよび前記内側ハウジングの少なくとも一方との間に配置される少なくとも1つの細長い柔軟な絶縁部材と、を備え、
前記細長い柔軟な絶縁部材は、前記転動エレメントを通る電気路の形成を阻止するために非導電性の材料を含んでおり、前記細長い柔軟な絶縁部材は、細長いベース部分と、該ベース部分から延在する第1の区切られた脚部構造と、第2の区切られた脚部構造とを有しており、前記細長い柔軟な絶縁部材はほぼU字形であって、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ、前記細長いベース部分の周りで前記細長い柔軟な絶縁部材の湾曲を可能にするように互いに分離された複数の脚部を有しており、前記内レースと外レースのうち選択された一方の少なくとも一部分は、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造との間に位置しており、
前記細長いベース部分は、前記第1の細長い脚部構造に隣接する細長い切断線を画定するように前記細長い柔軟な絶縁部材に沿って長手方向で延在する少なくとも1つの溝を有しており、前記細長い柔軟な絶縁部材は、前記第1の区切られた脚部構造を除去するように前記溝で切断することができる、電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの溝は、第1の切断線を画定する第1の溝を有しており、
前記電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリはさらに、第2の切断線を画定する、前記第2の区切られた脚部構造に隣接して、前記細長い柔軟な絶縁部材に沿って長手方向で延在する第2の溝を有しており、前記第2の切断線に沿って、前記細長い柔軟な絶縁部材を切断して、前記第2の区切られた脚部構造を除去することができる、請求項10記載の電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリ。
【請求項12】
導電性の内レースと外レースと、該内レースと該外レースとの間に配置された導電性の複数の転動エレメントとを備える形式のベアリングを電気的に絶縁する方法であって、
非導電性の材料を含む細長い柔軟な絶縁ストリップを準備し、該細長い柔軟な絶縁ストリップは、細長いベース部分と、該ベース部分から延在する第1の区切られた脚部構造と、第2の区切られた脚部構造とを有し、前記第1の区切られた脚部構造と前記第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ、これら脚部構造の間にギャップを画定する、互いに間隔を置いて配置された複数の脚部を有し、各脚部は内面と外面とを有しており、該内面及び外面の少なくとも一方は、凹状の湾曲を有しており、
前記細長い柔軟な絶縁ストリップを所定の長さに切断し、
切断された前記細長い柔軟なストリップを曲げて1つのリングを形成し、
切断された前記細長い柔軟なストリップを、ベアリングレースとハウジングとの間の環状スペース内に配置する
ことを含む、ベアリングを電気的に絶縁する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
既知のベアリングは通常、硬化鋼から成る内レースと外レースとを備え、さらにこれらのレース間に配置される鋼球等の複数の転動エレメントを備えている。レースと転動エレメントとは金属から成っているので、転動エレメントを介して内レースと外レースとの間で電気が流れることができる。いくつかの使用例では、非導電性のベアリングが求められる。既知の非導電性のベアリングは、セラミックボール、又は非導電性のその他の転動エレメントを使用することができる。しかしながら、セラミックボールは比較的高価であり、その他の欠点も有している。
【0002】
発明の概要
本発明の1つの態様は、リング状の外側ハウジングと、該外側ハウジングの内側に配置されたリング状の内側ハウジングとを有するハウジングアッセンブリを備える電気的に絶縁されたベアリングアッセンブリである。内側ハウジングと外側ハウジングは、前記両ハウジング間に環状スペースを画定している。ベアリングはこの環状スペース内に配置されている。ベアリングは、金属製の内レースと外レースと、該金属製の内レースと外レースとの間に位置する金属製の複数の転動エレメントを有する。このベアリングアッセンブリは、ベアリングとハウジングとの間に位置する少なくとも1つの細長い柔軟な絶縁ストリップをさらに有する。絶縁部材又はストリップは、ポリマ又は別の適切な非導電性の材料を含んでおり、これにより、転動エレメントを通る電気路の形成が阻止される。絶縁部材又はストリップは、細長いベース部分と、このベース部分から延在する第1の区切られた脚部構造と、第2の区切られた脚部構造とを有しており、細長い柔軟な部材又はストリップはほぼU字形であって、ベアリングレースを少なくとも部分的に収容するように構成された通路を形成している。第1の区切られた脚部構造と第2の区切られた脚部構造とはそれぞれ複数の脚部を有しており、これらの脚部は、細長いベース部分の周りで細長い柔軟な絶縁部材又はストリップの屈曲を可能にするように互いに分離されている。内レース及び外レースのうち選択された一方の少なくとも一部は、第1の区切られた脚部構造と第2の区切られた脚部構造との間に配置されている。
【0003】
本発明の別の態様は、ベアリングレースを電気的に絶縁するための細長い柔軟な絶縁ストリップである。この絶縁ストリップは、複数のベースセグメントを含むベース部分を有し、これらのベースセグメントは、これらのベースセグメントよりも高い柔軟性を有する柔軟な接続部分によって互いに接続されている。区切られた脚部構造は、ベース部分から横方向に延在する互いに間隔を置いて配置された複数の脚部部分を有し、接続部分が湾曲することにより、隣接する脚部部分間の寸法が変化する。細長い柔軟な絶縁ストリップは非導電性のポリマ材料を含み、細長い柔軟な絶縁ストリップは、所定の長さに切断されて、環状のベアリングレースに対応する環状の形状となるように曲げられるように構成されている。
【0004】
本発明の別の態様は、導電性の内レースと外レースと、内レースと外レースとの間に配置された導電性の複数の転動エレメントとを備える形式のベアリングを電気的に絶縁する方法である。この方法は、非導電性の材料を含む細長い柔軟な絶縁ストリップを準備するステップを含む。絶縁ストリップは、細長い中央部分と、対向して位置する細長い第1及び第2の縁部部分と、第1の対向縁部部分から中央部分に対して横方向に延在する、一体的に形成された少なくとも1つの脚部分とを有している。この方法は、絶縁ストリップを所定の長さに切断するステップと、それに次いで、前記絶縁ストリップを曲げて1つのリングを形成するステップとを含む。絶縁ストリップは、ベアリングレースとハウジングとの間の環状スペース内に配置されて、ベアリングレースをハウジングから電気的に絶縁する。
【0005】
これらの及びその他の本発明の特徴、利点、目的は、以下の詳細な説明、請求の範囲、添付の図面を参照することにより当業者にはさらに理解され評価されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一態様による、ベアリングアッセンブリと柔軟な絶縁ライナストリップ(「FILストリップ」)とを備えるCTスキャナ機械を部分的に概略的に示した等角図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿って断面した、
図1のCTスキャナ機械の一部を断片的に概略的に示した図である。
【
図3】本発明の1つの態様によるベアリングアッセンブリの等角図である。
【
図4】
図3のベアリングアッセンブリの一部を断片的に示した等角図である。
【
図5】
図4のベアリングアッセンブリの断面図である。
【
図6】本発明の一態様によるFILストリップの側面図である。
【
図8】線VIII−VIIIに沿って見た
図7のFILストリップの断面図である。
【
図9】本発明の別の態様による、一対のサイド・バイ・サイド型のボールベアリングを含むベアリングアッセンブリの一部を示す断片的な斜視図である。
【
図10】ベアリングレースとハウジング部材との間に位置し、FILストリップに係合して、ハウジングに対するベアリングレースの回転を阻止し、かつハウジング及び/又はベアリングレースに対するFILストリップの回転を阻止する回転防止ピンを示す、断片的な断面図である。
【0007】
詳細な説明
本明細書で説明する目的で、「上」、「下」、「右」、「左」、「後」、「前」、「垂直」、「水平」の用語、及びそれらの派生語は、
図1における向きとして本発明に関連する。しかしながら、本発明は、明らかに異なって規定された場合を除き、様々な別の向きやステップの順序を想定し得ることを理解されたい。さらに、添付の図面に示し以下の明細書で説明する特殊な装置及びプロセスは、添付の請求の範囲に規定された本発明の概念を単に例として示す態様であることを理解されたい。従って、本明細書に開示された実施形態に関する特定の寸法及びその他の物理的特性は、特許請求の範囲で明記しない限り、限定するものと考えるべきではない。
【0008】
図1及び
図2に示すように、CT又はCATスキャン機械1は、ベース6によって回転可能に支持された回転するリング状のアッセンブリ又はドラム4を有している。X線管、検出機等(図示せず)の様々な電気的構成部分がドラム4に支持されている。使用時、回転ドラム4は、可動の支持体10上に位置する患者8の周りを回転する。ドラム4と、ベース6と、可動の支持体10とは、公知の構成部分を有していてよく、これらは、明瞭さのために
図1及び
図2には部分的に概略的に示されていることがわかるだろう。ドラム4は、1つ以上のベアリングアッセンブリ15によってベース6に回転可能に支持されている。より詳しく後述するように、ベアリングアッセンブリ15は、柔軟な絶縁ライナストリップ又は部材(「FILストリップ」)40(
図4)を備えており、このFILストリップ40は、回転するアッセンブリ4をベース6から電気的に絶縁し、これにより、回転するアッセンブリ4とベース6との間の電気の流れを阻止する(
図2も参照)。FILストリップ40は、多種多様な用途で使用することができるものと理解され、本発明は、CTスキャン機械での適用に限定されるものではない。
【0009】
図3〜
図5によると、ベアリングアッセンブリ15は、内側ハウジング16と外側ハウジング18とを備える。内側ハウジング16と外側ハウジング18とはベアリングサブアッセンブリ20を支持している。ベアリングサブアッセンブリ20は、内レース22と外レース24とを有する。ボール26などの複数の転動エレメントが内レース22と外レース24との間に位置していて、保持器又はセパレータ28がボール26を内レース22と外レース24との間に公知の形式で保持している。内レース22と外レース24のそれぞれ、及びボール26は、好適には金属(例えば、硬化鋼)である。セパレータ又は保持器28はポリマを含んでいてよい。ベアリングサブアッセンブリ20は、ミシガンのマスキーゴンにあるケイドン社のベアリング部門から市販されている、公知の薄断面ベアリングを含んでもよい。
【0010】
第1のクランプは、ねじ山付き固定部材32によって外側ハウジング16に固定されている複数のクランプセグメント30を有している。第2のクランプ34は、複数のねじ山付き固定部材36によって内側ハウジング16に固定されている。細長い柔軟な絶縁ライナストリップ又は部材(「FILストリップ」)40は、外レース24の周りに位置していて、これにより、内側ハウジング16及び外側ハウジング18からそれぞれベアリングサブアッセンブリ20を通る電導を阻止している。より詳しく後述するように、FILストリップ40は成形されたポリマを含んでおり、細長い中央部分42と、横方向に延在する区切られた脚部分44A,44Bとを有する。図示した例では、FILストリップ40は外レース24に隣接して位置していて、外レース24を外側ハウジング18から電気的に絶縁している。しかしながら、FILストリップ40は代替的に、内レース22と内側ハウジング16と第2のクランプ34との間に位置し、これにより内レース22をこれらの構成部分から電気的に絶縁してもよい。FILストリップ40は明らかに、導電性の金属製レース22,24と、鋼球26のような導電性の転動エレメントとを有する従来のベアリングサブアッセンブリ20を電気的に絶縁するために利用することができる。
【0011】
さらに、
図6〜
図8に示すように、FILストリップ40は、最初に、FILストリップ40の長さに沿って延在する軸線43を規定する細長い中央部分42を有する細長い柔軟な構造体を形成するように成形される。細長い中央部分42は、ほぼ長方形の複数のプレート状セグメント46を有しており、これら複数のセグメント46はより薄い接続部分48によって互いに接続されている。接続部分48は、セグメント46よりも厚さが薄いので、接続部分48の柔軟性は、セグメント46よりも高い。FILストリップ40の細長い中央部分42は、互いに向き合う第1の縁部52と第2の縁部54とを有している。複数の第1の脚部50Aが、FILストリップ40の細長い中央部分42の第1の縁部52から横方向に延在し、複数の第2の脚部50Bが、FILストリップ40の細長い中央部分42の第2の縁部54から延在している。脚部50Aはギャップ56Aを形成するように間隔をあけて位置し、脚部50Bはギャップ56Bを形成するように間隔をあけて位置している。ギャップ56Aと56Bとにより、細長い中央部分42は曲げ・撓み可能であり、これによりFILストリップ40を、ベアリングサブアッセンブリ20の内レース22又は外レース24の形状に対応する環状リング形状となるように曲げることができる。個々の脚部50Aと50Bとは、側方から見て(
図6)ほぼ長方形の外周を有する扁平プレート状の部材を有していてよい。しかしながら、脚部50A及び/又は50Bは、実際は任意の適当な形状を有していてよい。個々の脚部50Aと50Bとは、ベアリングレース24(又は22)のための左右の支持部を提供し、これにより、レース24が第1のクランプ30と外側ハウジング18に対して電気的に絶縁されることを保証している。ギャップ56Aと56Bとは、約0.080インチの寸法「X1」を有し、脚部50Aと50Bとは、約0.300インチの幅寸法「X2」を有していてよい。脚部50Aと50Bとは、約0.300インチの長さ「L」と、約0.078インチの厚さ「T1」(
図8)を有していてよい。しかしながら、FILストリップ40の様々な特徴の形状及びサイズは、特別な適用に対する必要に応じて変化してよいことが理解されるだろう。
【0012】
図8に示すように、脚部50Aは内面58Aと外面60Aとを有している。脚部50Bは内面58Bと外面60Bとを有している。脚部50Bは脚部50Aの鏡像である。脚部50Aと50Bとは、内面58Aが軸線「C1」を中心として半径R1を有する凸面であるように曲げられる。軸線C1は、FILストリップ40の軸線43に対して平行である。外面60Aは、軸線C1を中心として半径R2を有する凹面である。脚部50Aと50Bとは、約0.078インチのほぼ一様の厚さ「T1」を有している。半径「R1」は好適には約1.003インチであり、半径「R2」は好適には約0.924インチである。
【0013】
脚部50Aと50Bの湾曲・撓みは、様々な構成部分における製造誤差に基づく変動を吸収する。
図5に示すように、脚部50Aは、外レース24と第1のクランプ30との間に位置している。ねじ山付き固定部材32が締め付けられると、クランプ30は脚部50Aの外面60Aに対して押し付けられ、脚部50Aの内面58Aは外レース24に接触する。外レース24と第1のクランプ30との間のスペースは好適には、脚部50Aの厚さT1よりも僅かに大きいので、第1のクランプ30が定置でクランプされるとき、面58Aと60Aの湾曲に基づき、脚部50Aが幾分曲げられたり、まっすぐにされたりする。同様に、第2の脚部50Bは外側ハウジング18と外レース24との間に位置していて、ねじ山付き固定部材32を締め付けることにより第1のクランプ30がクランプされるときに曲げられる。このように、脚部50Aと50Bの湾曲は、構成部分の寸法誤差が幾分変化したとしても、クランプ30の締め付け時に外レース24が確実に保持されることを保証している。
【0014】
図8を再度参照する。FILストリップ40の細長い中央部分42のセグメント46は、内面62と外面64とを有している。面62と64とは好適には、約0.079インチのほぼ一様の間隔「T2」を置いて位置している。内面62は軸線「C2」を中心とした半径「R3」を規定する凹面形状を有し、外面64は軸線C2を中心とした半径R4を規定する凸面形状を有している。軸線C2は、FILストリップ40の軸線43に対して平行である。半径R3は好適には約2.831インチであり、半径R4は好適には約2.910インチである。
【0015】
図5を再度参照する。組み立てられたとき、FILストリップ40の細長い中央部分42は外側ハウジング18と外レース24との間に位置しており、内面62は外レース24に接触し、外面64は外側ハウジング18に接触している。湾曲した面62と64とは、構成部分における寸法誤差により、外レース24と外側ハウジング18との間の環状スペースが、FILストリップ40の厚さT2よりも大きくなった場合でも、外レース24が外側ハウジング18に対して確実に位置することを保証する。
【0016】
図8を再度参照する。FILストリップ40は好適には外側の面取部66A及び66Bを有し、さらに、細長い中央部分42と脚部50Aとの間及び細長い中央部分42と脚部50Bとの間の移行領域おける内半径68Aと68Bとを有している。FILストリップ40に沿って長手方向に延在する第1の切断線72(
図7参照)を規定するために、面62と64とにそれぞれ第1の対の溝70Aと70Bとが形成されている。それぞれ面62と64とに設けられた第2の対の溝74A及び74Bは、FILストリップ40の長さに沿って延在する第2の切断線76を規定する。
図8に示したように、FILストリップ40は横断面がほぼU字形であって、ベアリングレース22及び/又は24を収容するように形成された通路38を規定している。しかしながら、後述するように、一列の脚部50A又は一列の脚部50Bを有するL字形のFILストリップを形成するために、第1の切断線72又は第2の切断線76に沿ってFILストリップ40を切断することができる。
【0017】
さらに
図9に示すように、ベアリングアッセンブリ15Aは内側ハウジング16Aと外側ハウジング18Aとを有しており、これらのハウジングは、サイド・バイ・サイド型の構成の一対のベアリングアッセンブリ20Aと20Bとを支持するように構成されている。一対の細長いFILストリップ40は、第1の切断線72及び第2の切断線76のうちの選択した一方に沿ってFILストリップ40を切断することにより、一対のL字形のFILストリップ40A及び40Bが形成されるように変更することができる。細長いFILストリップ40A及び40Bは、各ベアリングアッセンブリ20Aと20Bの外レース24A及び24Bにそれぞれ係合する。クランプ30A及び34Aは、外側ハウジング18Aと内側ハウジング16Aとにそれぞれ係合して、ベアリングアッセンブリ20Aと20Bとをクランプし、保持する。再度
図8を参照するが、第1の切断線72は、第2の切断線76から第2の脚部50Bまでの間隔よりも大きな間隔を置いて、第1の脚部50Aから離れて位置していてよい。これにより、切断線72及び74のうち選択された一方の切断線に沿って切断することによって、異なるサイズを有するベアリングアッセンブリを収容する際の必要に応じて、FILストリップ40のサイズを変更/選択することができる。
【0018】
図10にさらに示すように、外側ハウジング18の内面80には第1の面凹部78が形成されていてよく、外レース24の外面84には第2の面凹部82が形成されていてよい。凹部78と82とはほぼ円筒状であってよい。ピン86のような非導電性固定部材が外側ハウジング18と外レース24との間に位置していてよく、このピン86は、第1の凹部78と第2の凹部82とにそれぞれ接触している。ピン86は、繊維強化されたポリマ材料又はその他の適切な材料から成っていてよい。ピン86は、面78及び82に密に係合して締まりばめを形成するように構成/寸法設定されていてよい。細長いFILストリップ40は、ピン86に直接隣接して位置する端面88Aと88Bとを有していてよい。ピン86は、外側ハウジング18に対して相対的な外レース24の動きを阻止し、さらに、外側ハウジング18と外レース24とに対して相対的なFILストリップ40の回転も阻止する。
【0019】
細長いFILストリップ40(
図6及び
図7)は、最初は、細長い柔軟なストリップを形成する連続的なプロセスで、ナイロン又はその他の適切なポリマ材料から成形される。細長いストリップは、搬送、取り扱い、保管目的でボビン(図示せず)上に巻き付けられていてよい。ベアリングアッセンブリ15(
図3)の組み立て中に、FILストリップ40は、最初に、適当な長さに切断される。異なるサイズのベアリングアッセンブリ20を使用することができ、細長いFILストリップ40は、外レース24の周りに延在する・巻き付けられるのに必要な長さに切断されてよい。FILストリップ40は好適には、外レース24の周面にぴったりと対応する長さに切断され、これによりFILストリップ40の一片を、FILストリップ40の対向端部間にギャップを形成することなく、又は殆ど形成することなく、外レース24の周りに巻き付けることができる。代替的に、複数の比較的短いFILストリップを切断して外レース24の周りに巻き付けることができる。FILストリップ40は長さを切断することができるので、FILストリップ40をボビン上に貯えておき、FILストリップ40の断片を、様々なサイズのベアリングに必要な長さに切断することができる。セグメント46間の柔軟な接続部分48(
図6及び
図7)と、脚部50A間のギャップ56A及び脚部50B間のギャップ56Bとはそれぞれ、FILストリップ40を、極めて多様な直径を有するベアリングを収容できるように、曲げることを可能にする。
【0020】
上述した例では、FILストリップ40は、外側ハウジング18と外レース24との間に位置している。しかしながら、代替的に、FILストリップ40は、内レース22と内側ハウジング16とクランプ34との間に位置していてもよいことが理解されるだろう。
図5に示したように、内側ハウジング16とクランプ34とは、FILストリップ40を収容する環状スペースを提供するように形成できることが理解されるだろう。また、FILストリップ40は、多種多様な用途における極めて様々なベアリングと共に使用することができ、本発明は、ここに記載した特殊な薄断面ベアリングに限定されるものではない。さらに、FILストリップ40は、
図1及び
図2のCTスキャン機械1に加えて多種多様な用途で使用することができる。
【0021】
本発明の概念から逸脱することなく上述した構成の変更及び改良が可能であることは言うまでもなく、さらに、このような概念は、特許請求の範囲の文言によって別段明記しない限り、以下の請求の範囲に含まれることが意図されている。