特許第6762764号(P6762764)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762764
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】イオン伝導性膜
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20200917BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   C08J5/22CER
   C08J5/22CEZ
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-107330(P2016-107330)
(22)【出願日】2016年5月30日
(65)【公開番号】特開2016-225297(P2016-225297A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2019年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2015-113333(P2015-113333)
(32)【優先日】2015年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 弘子
(72)【発明者】
【氏名】小川 賢
(72)【発明者】
【氏名】徳島 大貴
(72)【発明者】
【氏名】高澤 康行
(72)【発明者】
【氏名】菊池 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】芥川 寛信
【審査官】 式部 玲
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−502471(JP,A)
【文献】 特表2010−502472(JP,A)
【文献】 特開2000−248088(JP,A)
【文献】 特開2000−081218(JP,A)
【文献】 特開2015−095286(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119663(WO,A1)
【文献】 特開2002−200670(JP,A)
【文献】 『化学大辞典8 縮刷版』,共立出版株式会社,第19刷,第742頁、表II
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
C08J 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【数1】
(式中、Tは、透気度値(s)を表す。Fは、突刺強度(N)を表す。ρは、密度(g/cm)を表す。Lは、平均膜厚(μm)を表す。)で表されるX値が200以上であり、
ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とを含み、
該化合物は、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、リン酸化合物、及び、硫酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である
ことを特徴とするイオン伝導性膜。
【請求項2】
前記ポリマーは、ハロゲン原子含有ポリマー、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー、及び、(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含むことを特徴とする請求項に記載のイオン伝導性膜。
【請求項3】
複数の層が積層された構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン伝導性膜。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のイオン伝導性膜を含んで構成されることを特徴とする電池構成部材。
【請求項5】
請求項に記載の電池構成部材を用いて構成されることを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性膜に関する。より詳しくは、特に亜鉛負極を含む蓄電池(二次電池)等の電池構成部材として好適に適用できるイオン伝導性膜、該イオン伝導性膜を用いて構成される電池構成部材、該電池構成部材を用いて構成される電池に関する。
【背景技術】
【0002】
溶液中でイオンを選択的に透過できるイオン伝導性膜は、種々の産業分野において広く用いられている。例えば、携帯機器やノートパソコン等の電子機器の分野はもちろん、自動車や航空機等の分野も含め、様々な分野で蓄電池の使用が広がっている。これら蓄電池に用いられる材料としては、蓄電池の正極と負極との間に配置されるセパレータや電解質、電極用保護膜が挙げられ、例えば、このセパレータや電解質、電極用保護膜としてイオン伝導性膜を使用することができる。
【0003】
従来のイオン伝導性膜としては、電池のセパレータとして用いられる多孔性膜等が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。また、水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体からなるセパレータが開示されている(例えば、特許文献4参照)。更に、アニオン伝導性を有する材料であって、該アニオン伝導性材料は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とを含むアニオン伝導性材料が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201298号公報
【特許文献2】特開2001−135295号公報
【特許文献3】特開2001−2815号公報
【特許文献4】国際公開第2013/118561号
【特許文献5】特開2015−15229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の負極活物質に亜鉛を用いると、充電時に亜鉛表面で形成されるデンドライトによって正極と負極とが短絡し、電池が頓死する。上記特許文献1〜3に記載の多孔性膜等は、貫通孔があるため、電池のセパレータとして用いた場合に、セパレータによりデンドライトの成長を抑制して電池を長寿命化するうえで工夫の余地があった。また、特許文献4には、水酸化物イオン伝導性の無機固体電解質体からなるセパレータが開示されている。上記無機固体電解質は、柔軟性が無く、形態の自由度が低いものであった。また、デンドライトの成長をより充分に抑制して電池を長寿命化するうえでやはり工夫の余地があった。
【0006】
本発明者らは、電池反応に関与するイオンを充分に透過して電池性能を阻害せず、デンドライトの形成・成長を完全に抑制することを目的としてアニオン伝導性膜等のイオン伝導性膜を開発し、亜鉛負極を含む蓄電池等の電池の実用化を目指してきた。しかしながら、これまで提案してきたイオン伝導性膜(例えば、特許文献5に記載のアニオン伝導性材料等)においても、デンドライトの成長をより充分に抑制するうえで工夫の余地があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、電池構成部材として用いた場合に電池性能を阻害せず、デンドライトの成長をより充分に抑制して電池を長寿命化できるイオン伝導性膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、亜鉛負極を含む蓄電池等の電池において、デンドライトの成長をより効果的に抑制して電池を長寿命化することを目指し、セパレータ、電解質、電極等の電池構成部材に使用されるイオン伝導性膜について種々検討した。そして、本発明者らは、電池構成部材がデンドライトの成長をより効果的に抑制するためには、膜の厚みに対しての透気度値、突刺強度、密度が所定の関係を満たすことで、電池性能を阻害せず、緻密で強固な膜として、電池構成部材として使用した場合に亜鉛デンドライト等のデンドライトの成長をより効果的に抑制できる膜が得られることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、このようなイオン伝導性膜は、デンドライトの課題が無い電池(例えば、空気亜鉛電池やアルカリマンガン電池等の一次電池)においても、セパレータ、電解質、電極用保護膜等に使用されることで、電極に含まれる添加剤であって対極と反応して自己放電を誘発するものが対極へ移動することを防止して自己放電を抑制することができる。本発明者らは、これらの利点を見出し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、下記式(1):
【0010】
【数1】
【0011】
(式中、Tは、透気度値(s)を表す。Fは、突刺強度(N)を表す。ρは、密度(g/cm)を表す。Lは、平均膜厚(μm)を表す。)で表されるX値が200以上であるイオン伝導性膜である。
本発明はまた、本発明のイオン伝導性膜を含んで構成される電池構成部材である。
本発明は更に、本発明の電池構成部材を用いて構成される電池である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0012】
<イオン伝導性膜>
本発明のイオン伝導性膜は、上記式(1)で表されるX値が200以上であることを特徴とする。上記式においてTで表される透気度値は、気体の通過しやすさを表す指標であり、値が大きいほど気体を通しにくい。デンドライトの成長抑制のためには、気体が容易に通過できるような貫通孔がないことが最も重要な要素である。また、膜の強度や膜厚もデンドライトの成長抑制に関係する要素である。上記式(1)は、これらデンドライトの成長抑制に関係する膜の透気度値、膜の強度に関係する突刺強度及び密度、並びに、膜厚の関係式であり、この中で最も重要な要素である透気度値の値を2乗することで重みづけをしている。
上記X値は、デンドライトの成長をより充分に抑制する観点から、220以上であることがより好ましく、300以上であることが更に好ましく、500以上であることが一層好ましく、1000以上であることがより一層好ましく、2500以上であることが更に一層好ましく、5000以上であることが特に好ましく、7000以上であることが最も好ましい。また、上記X値は、例えば230000以下であることが好ましく、220000以下であることがより好ましく、200000以下であることが更に好ましいが、電池反応に関与するイオンを透過する限り特に限定されず、同種の膜材料を用いた場合に本発明の効果をより発揮できる点で、特に好ましいのはその上限値が無限大であると言える。
【0013】
本発明のイオン伝導性膜は、平均膜厚Lが5μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることが更に好ましく、80μm以上であることが特に好ましい。これにより、トータルで性能が変わり、結果的に上記X値がより大きなものとなり、デンドライトの成長を抑制する効果がより高くなり、電池寿命をより長くすることができる。
上記平均膜厚Lの上限値は特に限定されず、イオン伝導性膜の用途に応じて適宜設定することができるが、薄膜とすることでより緻密な膜を構成する観点、及び、薄膜としてその分活物質量を多くし、電池容量を確保することができる観点からは、例えば該平均膜厚Lは10000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることが更に好ましく、120μm以下であることが特に好ましい。
上記平均膜厚Lは、本発明のイオン伝導性膜が複数の層が積層された構造を有する場合は、複数の層の合計の平均厚みである。
なお、上記平均膜厚Lは、後述する実施例の方法により測定されるものである。
【0014】
本発明のイオン伝導性膜は、透気度値Tが600s以上であることが好ましく、800s以上であることがより好ましく、1100s以上であることが更に好ましく、4000s以上であることが一層好ましく、5500s以上であることがより一層好ましく、8000s以上であることが特に好ましい。
上記透気度値Tの上限値は、電池反応に関与するイオンを透過する限り特に限定されず、同種の膜材料を用いた場合に本発明の効果をより発揮できる点で、より好ましいのは無限大であると言える。なお、透気度値Tが無限大である場合、上記X値も無限大となる。
なお、上記透気度値Tは、後述する実施例の方法により測定されるものである。
【0015】
本発明のイオン伝導性膜は、突刺強度Fが0.1N以上であることが好ましく、0.3N以上であることがより好ましく、0.7N以上であることが更に好ましく、1.5N以上であることが特に好ましい。
上記突刺強度Fの上限値は特に限定されないが、突刺強度Fは10N以下であることが好ましく、7N以下であることがより好ましく、5N以下であることが更に好ましい。
なお、上記突刺強度Fは、後述する実施例の方法により測定されるものである。
【0016】
本発明のイオン伝導性膜は、密度ρが0.1g/cm以上であることが好ましく、0.3g/cm以上であることがより好ましく、0.5g/cm以上であることが更に好ましく、1.5g/cm以上であることが特に好ましい。
上記密度ρの上限値は特に限定されないが、密度ρは10g/cm以下であることが好ましく、5g/cm以下であることがより好ましく、3g/cm以下であることが更に好ましい。
なお、上記密度ρは、後述する実施例の方法により測定されるものである。
【0017】
本発明のイオン伝導性膜は、上記式(1)で表されるX値が200以上であるとともに、イオン伝導による各種の電池において電池構成部材として用いて電池反応に関与するイオンを透過するものであればよく、例えば不織布;微多孔膜;ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物(本明細書中、無機化合物とも言う。)とを含むアニオン伝導性材料を用いて形成されるアニオン伝導性膜;その他の後述するセパレータとして使用される膜等が挙げられる。
中でも、上記イオン伝導性膜は、アニオン伝導による電池に適用する観点からは、微多孔膜、又は、上記アニオン伝導性膜であることが好ましく、当該電池をより長寿命化する観点からは、該アニオン伝導性膜であることがより好ましい。言い換えれば、本発明のイオン伝導性膜は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物を含むことがより好ましい。上記ポリマー及び上記化合物については、後述する。
【0018】
本発明のイオン伝導性膜は、複数の層が積層された構造を有することが好ましい。複数の層が積層された構造とすることにより、本発明のイオン伝導性膜が微多孔膜等の貫通孔を有する膜であっても、層毎に貫通孔の位置がずれることになり、透気度値及び突刺強度が大きくなるため、上記X値が大きくなり、デンドライトの成長を抑制する効果が向上する。
本発明のイオン伝導性膜は、3つ以上の層が積層された構造を有することがより好ましく、4つ以上の層が積層された構造を有することが更に好ましい。
【0019】
以下では、上記アニオン伝導性膜について説明する。
【0020】
本明細書中、上記アニオン伝導性膜は、電池反応に関与する水酸化物イオン等のアニオンを透過する膜であって、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物を含むものである。上記アニオン伝導性膜は、後述する無機物等の作用により、透過するアニオンの選択性を有する。当該アニオンの選択性は、上記式(1)中のTを無限大まで大きくしてガスを透過しなくしても発揮されるものであり、例えば、水酸化物イオン等のアニオンは透過しやすく、アニオンであってもイオン半径の大きな、活物質に由来する金属含有イオン(例えば、Zn(OH)2−)等の透過は充分に防止する。本明細書中、アニオン伝導性とは、水酸化物イオン等のイオン半径の小さなアニオンを充分に透過すること、ないし、当該アニオンの透過性能を意味する。金属含有イオン等のイオン半径の大きなアニオンは、より透過しにくいものであり、全く透過しなくても構わない。
このようなアニオン伝導性膜は、水酸化物イオンが電池反応に関与する電池(例えば、亜鉛負極を含んで構成される電池)の電池構成部材に好適に適用することができ、デンドライトの成長を抑制して該電池を長寿命化させることができる。
【0021】
上記アニオン伝導性膜は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物を含む。言い換えれば、本発明のイオン伝導性膜は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物を含むことが好ましい。
【0022】
<周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物>
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、及び、Brからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることが好ましい。中でも、周期表の第1族〜第15族から選ばれる少なくとも1種の元素が好ましく、Li、Na、K、Cs、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、及び、Biからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素がより好ましい。更に好ましくは、Li、Mg、Ca、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、及び、Tlからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素である。
【0023】
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物としては、例えば、酸化物;複合酸化物;層状複水酸化物;水酸化物;粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;硫酸化合物;スルホン酸化合物;ヒドロキシアパタイト等のリン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩等が挙げられる。上記化合物は、酸化物;複合酸化物;ハイドロタルサイト等の層状複水酸化物;水酸化物;粘土化合物;固溶体;ゼオライト;フッ化物;リン酸化合物;ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;塩が好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、上記化合物は、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、リン酸化合物、及び、硫酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましく、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、及び、硫酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが更に好ましく、層状複水酸化物及び/又は酸化物であることが特に好ましい。例えば、上記化合物が層状複水酸化物であることにより、上記アニオン伝導性膜をセパレータや、電極用保護膜等として用いた場合に、膜中に電解液を取り込み、アニオン伝導性を向上することができる。
【0024】
上記層状複水酸化物は、下記式;
[M1−x(OH)](An−x/n・mH
(Mは、Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mnのいずれかである二価金属イオンを表す。Mは、Al、Fe、Mn、Co、Cr、Inのいずれかである三価金属イオンを表す。An−は、OH、Cl、NO、CO2−、COO等の1価以上、3価以下のアニオンを表す。mは0以上の数である。nは、1〜3の数である。xは、0.20〜0.40の数である。)に代表される化合物である。なお、An−は、2価以下のアニオンであることが好ましい。
このような層状複水酸化物は、天然産のもの(例えばハイドロタルサイト(Hydrotalcite)、マナッセイト(Manasseite)、モツコレアイト(Motukoreaite)、スティッヒタイト(Stichtite)、ショグレナイト(Sjogrenite)、バーバートナイト(Barbertonite)、パイロアウライト(Pyroaurite)、イオマイト(Iomaite)、クロロマガルミナイト(Chlormagaluminite)、ハイドロカルマイト(Hydrocalmite)、グリーン ラスト1(Green Rust 1)、ベルチェリン(Berthierine)、タコバイト(Takovite)、リーベサイト(Reevesite)、ホネサイト(Honessite)、イヤードライト(Eardlyite)、メイキセネライト(Meixnerite)等)の他、人工的に合成されたものであってもよく、150℃〜900℃で焼成することにより、脱水した化合物や、層間内の陰イオンを分解させた化合物、層間内の陰イオンを水酸化物イオン等に交換した化合物であってもよい。これらの層状複水酸化物の中でも、ハイドロタルサイト等のMg−Al系層状複水酸化物が好ましい。上記層状複水酸化物には、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。
【0025】
上記酸化物としては、例えば酸化セリウム、酸化ジルコニウムが好ましい。より好ましくは、酸化セリウムである。また、酸化セリウムは、例えば、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ビスマス等の金属酸化物がドープされたものや、酸化ジルコニウム等の金属酸化物との固溶体であってもよい。上記酸化物は、酸素欠陥を持つものであってもよい。
上記水酸化物としては、例えば水酸化セリウム、水酸化ジルコニウムが好ましい。
上記硫酸化合物は、例えばエトリンガイトが好ましい。
【0026】
上記リン酸化合物は、例えばヒドロキシアパタイトが好ましい。
上記ヒドロキシアパタイトとは、Ca10(PO(OH)に代表される化合物であり、調製時の条件によりCaの量を減らした化合物や、Ca以外の元素を導入したヒドロキシアパタイト化合物等を上記化合物として使用しても良い。
【0027】
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は、平均粒子径が1000μm以下であるものが好ましい。より好ましくは、200μm以下であり、更に好ましくは、100μm以下であり、特に好ましくは、75μm以下であり、最も好ましくは、20μm以下である。一方、該平均粒子径は、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
上記平均粒子径は、実施例に記載の方法に従い、レーザー回折法により測定されるものである。
【0028】
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の粒子の形状としては、微粉状、粉状、粒状、顆粒状、鱗片状、多面体状、ロッド状、曲面含有状等が挙げられる。なお、平均粒子径が上述のような範囲の粒子は、例えば、粒子をボールミル等により粉砕し、得られた粗粒子を分散剤に分散させて所望の粒子径にした後に乾固する方法や、該粗粒子をふるい等にかけて粒子径を選別する方法のほか、粒子を製造する段階で調製条件を最適化し、所望の粒径の(ナノ)粒子を得る方法等により製造することが可能である。
【0029】
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物は、比表面積が0.01m/g以上であることが好ましく、より好ましくは、0.1m/g以上であり、更に好ましくは、0.5m/g以上である。一方、該比表面積は、500m/g以下であることが好ましい。
上記比表面積は、窒素吸着BET法で比表面積測定装置により測定されるものである。
【0030】
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物の割合は、アニオン伝導性膜100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが一層好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。また上記化合物の割合は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、70質量%以下であることが一層好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。
【0031】
<ポリマー>
上記アニオン伝導性膜が含むポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに代表される炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等に代表される芳香族基含有ポリマー;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のアルキレングリコール等に代表されるエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコールやポリ(α−ヒドロキシメチルアクリル酸塩)、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)等に代表される水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンやN−置換ポリアクリルアミド等に代表されるアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド、ポリイミド等に代表されるイミド結合含有ポリマー;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位を主成分として含む(メタ)アクリル系重合体;ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、ポリマレイン酸(塩)、ポリイタコン酸(塩)、ポリメチレングルタル酸(塩)、カルボキシメチルセルロース等に代表されるカルボキシ基含有ポリマー(カルボキシ基の金属塩(アルカリ金属等)やアンモニウム塩等を含む);ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリメチレングルタル酸塩等に代表されるカルボン酸塩含有ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー;エポキシ樹脂等のエポキシ基が開環することにより結合したポリマー;スルホン酸(塩)部位含有ポリマー;ARB(Aは、N又はPを表す。Bは、ハロゲンアニオンやOH等のアニオンを表す。R、R、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜7のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボキシル基、芳香環基を表す。R、R、Rは、結合して環構造を形成してもよい。)で表される基が結合したポリマーに代表される第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;天然ゴム、人工ゴム等の主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー;酢酸セルロース、キチン、キトサン、アルギン酸(塩)等に代表される糖類;ポリエチレンイミンに代表されるアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
なお、これらの重合体は、公知の有機架橋剤化合物により、架橋されていてもよい。
これらの中でも、上記ポリマーは、ハロゲン原子含有ポリマー、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー、及び、(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含むことが好ましい。中でも、上記ポリマーは、ハロゲン原子含有ポリマー、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー、及び、(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含むことがより好ましい。
【0032】
<ハロゲン原子含有ポリマー>
ハロゲン原子含有ポリマーとは、後述する(メタ)アクリル系重合体や主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー以外のポリマーであって、ハロゲン原子を含有するものを言い、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素原子含有ポリマー;ポリ塩化ビニル等の塩素原子含有ポリマー;臭素原子含有ポリマー;ヨウ素原子含有ポリマー等が挙げられ、中でも、フッ素原子含有ポリマーが好適なものとして挙げられる。
【0033】
<(メタ)アクリル系重合体>
本発明における(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位を主成分として含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位を主成分として含むとは、(メタ)アクリル系重合体において(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位が占める質量割合が、後述するその他の不飽和単量体それぞれに由来する単量体単位の質量割合のいずれよりも大きいことを言う。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、これらを1種以上使用することができる。
上記(メタ)アクリル系重合体は、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体のみで構成されていてもよいが、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位を主成分として含み、かつ、その他の不飽和単量体由来の単量体単位を含む(メタ)アクリル系共重合体であることが好ましい。そのときは、電池の長寿命化の観点から、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位の質量割合が(メタ)アクリル系重合体の単量体単位全体の50質量%以上であることが好ましい。該単量体単位の質量割合が60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。また、該単量体単位の質量割合の上限は特に限定されず、100質量%であるが、膜の機械的強度を向上する観点から、例えば該単量体単位の質量割合が99質量%以下であることが好ましい。
【0034】
上記その他の不飽和単量体としては、例えば、カルボキシ基含有単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、オキソ基含有単量体、窒素原子含有単量体、フッ素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アジリジニル基含有単量体、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体等の単官能単量体及び多官能単量体が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの不飽和単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
上記カルボキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、ビニル安息香酸等のカルボキシ基含有脂肪族系単量体等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのカルボキシ基含有単量体の中では、膜の機械的強度を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸がより好ましい。なお、カルボキシ基は、カルボキシ基の金属塩(アルカリ金属等)やアンモニウム塩等の塩の形態であってもよい。
【0036】
上記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
上記オキソ基含有単量体としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキソ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
上記窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
上記フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのフッ素原子含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
上記エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
上記カルボニル基含有単量体としては、例えば、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリルオキシアルキルプロペナール、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
上記アジリジニル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸2−アジリジニルエチル等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアジリジニル基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのスチレン系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert−ブチル基等のアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等の官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、膜の機械的強度を高める観点から、スチレンが好ましい。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸メチルベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチルメチル等の炭素数が7〜18のアラルキル基を有する(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸アラルキルエステル単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
中でも、好適な単官能単量体としては、例えば、カルボキシ基含有単量体、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体、オキソ基含有単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体、スチレン系単量体等が挙げられ、これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0046】
上記多官能単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の炭素数1〜10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2〜50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の炭素数2〜4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2〜50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート等の炭素数1〜10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の炭素数1〜10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレート等の炭素数1〜10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の炭素数1〜10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2−(2’−ビニルオキシエトキシエチル)(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの多官能単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
上記(メタ)アクリル系重合体におけるその他の不飽和単量体由来の単量体単位の質量割合は、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。該その他の不飽和単量体由来の単量体単位の質量割合の下限は、特に限定されず、0質量%であるが、該質量割合が0.1質量%以上であることが好ましい。
【0048】
上記(メタ)アクリル系重合体が、その他の不飽和単量体由来の単量体単位としてカルボキシ基含有単量体由来の単量体単位を有する場合、カルボキシ基含有単量体由来の単量体単位の質量割合は、作製される電池を長い寿命とする観点から、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。また、該カルボキシ基含有単量体由来の単量体単位の質量割合が、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
上記(メタ)アクリル系重合体が、その他の不飽和単量体由来の単量体単位としてスチレン系単量体由来の単量体単位を有する場合、スチレン系単量体由来の単量体単位の質量割合は、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。また、該スチレン系単量体由来の単量体単位の質量割合が、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、45質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0050】
上記(メタ)アクリル系重合体が、その他の不飽和単量体由来の単量体単位として多官能単量体由来の単量体単位を有する場合、多官能単量体由来の単量体単位の質量割合は、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましい。また、該多官能単量体由来の単量体単位の質量割合が、(メタ)アクリル系重合体を構成する全単量体単位100質量%中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
<主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー>
上記アニオン伝導性膜は、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマーを含むことが好ましい。主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマーとしては、例えば共役ジエン系重合体が挙げられる。
上記共役ジエン系重合体は、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等の共役ジエン構造を有する単量体(共役ジエン系単量体)由来の単量体単位を有するポリマーであり、例えば、天然ゴム;イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等の人工ゴムが好適なものとして挙げられる。上記共役ジエン系重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、無機化合物がアニオン伝導性膜中で均一に存在しうることや膜の機械的強度の観点から、芳香族ビニル単量体由来の単量体単位を更に有する共役ジエン系共重合体であることがより好ましい。また、上記共役ジエン系重合体の組成を以下に示すような組成とすること、例えば、官能基を導入したり、酸基等を有するその他の不飽和単量体に由来する単量体単位を含むものとしたり、公知の乳化剤を用いて調製したりすることにより、アニオン伝導性膜の透気度値、突刺強度、密度を好適に調節することができる。
【0052】
上記共役ジエン系単量体は、脂肪族共役ジエン系単量体であることが好ましい。脂肪族共役ジエン系単量体としては、上述したように、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン等が挙げられ、中でも1,3−ブタジエンが好ましい。共役ジエン系単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
なお、共役ジエン系重合体は、エステル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の官能基が導入されていてもよい。これらの官能基が導入されていることにより、共役ジエン系重合体と無機化合物粒子との親和性が上がり、材料の均一性が向上する。
【0053】
上記共役ジエン系重合体としては、上述したように、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体、共重合体等の1種又は2種以上を用いることができるが、例えば、芳香族ビニル単量体由来の単量体単位を更に有する共重合体であることが好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−エトキシスチレン、o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、o−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、
p−tert−ブトキシスチレン、o−tert−ブチルスチレン、m−tert−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらの中でも、アニオン伝導性膜の耐熱性や機械的強度が高くできる点でスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
上記共役ジエン系重合体は、脂肪族共役ジエン系単量体由来の単量体単位と、芳香族ビニル単量体由来の単量体単位との質量比が、例えば1/9以上、9/1以下であることが好ましく、2/8以上、8/2以下であることがより好ましく、3/7以上、7/3以下であることが更に好ましい。
【0055】
上記共役ジエン系重合体としては、膜の成形性の観点から、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。これらの中で無機化合物がアニオン伝導性膜中で均一に存在しうる点や膜の機械的強度の観点から、スチレン−ブタジエン系共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体等の共役ジエン系共重合体がより好ましく、特にスチレン−ブタジエン系共重合体が好ましい。
上記共役ジエン系重合体は、脂肪族共役ジエン系単量体由来の単量体単位、芳香族ビニル単量体由来の単量体単位以外の、その他の不飽和単量体由来の単量体単位を有していてもよい。
【0056】
その他の不飽和単量体としては、例えば、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩等の酸基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸
ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、イソプロピレングリコールジアクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート等の二官能ビニル単量体;3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコシシラン基含有ビニル単量体を挙げることができる。
【0057】
上記共役ジエン系重合体にエステル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の高極性官能基が導入されていることにより、共役ジエン系重合体と無機化合物粒子との親和性が向上し、無機化合物粒子の分散性が上がり、材料の均一性が向上する。
上記共役ジエン系重合体100質量%中、その他の不飽和単量体由来の単量体単位の質量割合は、40質量%以下であることが好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
なお、その他の不飽和単量体由来の単量体単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位を含む場合、共役ジエン系重合体中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体由来の単量体単位の質量割合は、共役ジエン系単量体由来の単量体単位の質量割合よりも少ない値である。
【0058】
<その他のポリマー>
上記アニオン伝導性膜がハロゲン原子含有ポリマー、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー、及び、(メタ)アクリル系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体を含む場合、その他のポリマーを含んでいてもよい。その他のポリマーとしては、アニオン伝導性膜が含むポリマーとして上述したもののうち、ハロゲン原子含有ポリマー、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマー、及び、(メタ)アクリル系重合体以外のものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このようなその他のポリマーを添加することで膜の均一性や膜の強度を向上する等の効果を得ることができる。
これらのポリマーは、公知の有機架橋剤化合物により、架橋されていてもよい。
【0059】
なお、上記ポリマーとして主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム状ポリマーや(メタ)アクリル系重合体を用いた場合は、気体を通しにくいアニオン伝導性膜が形成され、透気度値を非常に大きくすることができると考えられる。なお、後述するとおり、アニオン伝導性膜を製造する際には、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とポリマーとを混練する方法を用いる。このとき、アニオン伝導性膜がフッ素原子含有ポリマーを含むものであると、圧延時にフッ素原子含有ポリマーに強い力がかかることでポリマーの繊維化が促進され、その結果、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する効果がより高くなる。
【0060】
<ポリマーの調製方法>
上記ポリマーはその単量体単位を形成する単量体成分より、ラジカル重合、ラジカル(交互)共重合、アニオン重合、アニオン(交互)共重合、カチオン重合、カチオン(交互)共重合、グラフト重合、グラフト(交互)共重合、リビング重合、リビング(交互)共重合、分散重合、乳化重合、懸濁重合、開環重合、環化重合、光、紫外線や電子線照射による重合、メタセシス重合、電解重合等により得ることができる。これらの方法の中でも、簡便に製造できる観点から、乳化重合法を用いることが好ましい。上記単量体成分の重合方法として乳化重合法を用いる場合には、単量体成分、界面活性剤及び水を主成分とする分散媒を混合した後に乳化重合を行なってもよく、単量体成分、界面活性剤及び水性媒体を撹拌することによって乳化させ、プレエマルションを調製した後に乳化重合を行なってもよく、あるいは単量体成分、界面活性剤及び媒体のうちの少なくとも1種類とその残部のプレエマルションとを混合して乳化重合を行なってもよい。単量体成分、界面活性剤及び媒体は、それぞれ一括添加してもよく、分割添加してもよく、あるいは連続滴下してもよい。
【0061】
上記界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらの界面活性剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート、ナトリウムアルキルジフェニルエーテルジスルホネート等のアルキルスルホネート塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩;ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレートスルホネート塩、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩等のアリル基を有する硫酸エステル又はその塩;アリルオキシメチルアルコキシエチルポリオキシエチレンの硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0062】
ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合体、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ベタインエステル型界面活性剤等が挙げられる。
【0063】
上記乳化重合法における界面活性剤の使用量としては、ポリマーの原料として用いられた全単量体成分100質量%に対して、重合安定性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。また、電池を長寿命化させる観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0064】
上記各単量体成分の重合には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては通常用いられているものを使用することができ、特に制限されず、熱によってラジカル分子を発生させるものであればよい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0065】
上記重合開始剤の使用量としては、重合反応に供する単量体成分の総量100質量%に対して、0.02質量%以上、2質量%以下が好ましい。より好ましくは、0.05質量%以上、1質量%以下である。
【0066】
上記ポリマーを製造する重合反応の温度は、重合反応が進行する限り特に制限されないが、20℃以上、100℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは、40℃以上、90℃以下である。また、重合反応の時間も特に制限されないが、生産性を考慮すると、0.5時間以上、10時間以下が好ましい。より好ましくは、1時間以上、5時間以下である。
【0067】
上記単量体成分の重合方法として水を媒体とした乳化重合法を用いた場合、ラテックス粒子として得られた上記ポリマーの水分散液中における体積平均粒子径は、均一な膜を形成する観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、膜中の結着材(ポリマー)部分への水やイオンの浸透を抑制する観点から、好ましくは5000nm以下、より好ましくは1000nm以下、更に好ましくは500nm以下である。
上記体積平均粒子径は、実施例に記載の方法に従い、粒度分布測定器を用いて測定することができる。
【0068】
これらポリマーが官能基を有する場合には、それを主鎖及び/又は側鎖に有していても良く、架橋剤との結合部位として存在しても良い。これらポリマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
上記ポリマーは、上記層状複水化合物や、それ以外の有機架橋剤化合物により、エステル結合、アミド結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、アゴスチック相互作用、水素結合、アセタール結合、ケタール結合、エーテル結合、ペルオキシド結合、炭素−炭素結合、炭素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、カルバメート結合、チオカルバメート結合、カルバミド結合、チオカルバミド結合、オキサゾリン部位含有結合、トリアジン結合等を介して、架橋されていてもよい。
【0069】
上記ポリマーの重量平均分子量は、200〜7000000であることが好ましい。これにより、上記アニオン伝導性膜のアニオン伝導性、可とう性等を調節することができる。該重量平均分子量は、より好ましくは、400〜6500000であり、更に好ましくは、500〜5000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算された重量平均分子量として測定することができる。
装置:東ソー株式会社製 HCL−8220GPC
カラム:TSKgel Super AWM−H
溶離液(LiBr・HO、リン酸入りNMP):0.01mol/L
なお、上記「200〜7000000」との範囲記載は、範囲の上端、下端の数値を含む範囲を意味する。すなわち、「200〜7000000」は「200以上、7000000以下」と同じ意味である。
本発明において記載される「〜」を用いた範囲記載は全て同様に、範囲の上端、下端の数値を含む範囲を意味する。
【0070】
上記ポリマーの質量割合は、アニオン伝導性膜の強度及びイオン伝導性の観点から、アニオン伝導性膜100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以上であることが一層好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、上記ポリマーの質量割合は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以下であることが一層好ましく、70質量%以下であることが特に好ましい。
ここでは、アニオン伝導性膜中におけるポリマーの好ましい質量割合を記載したが、アニオン伝導性膜を形成するためのアニオン伝導性膜形成材料中におけるポリマーの好ましい質量割合も同様である。
上記質量割合は、ポリマーが2種類以上である場合、2種以上のポリマーの質量割合の合計である。
【0071】
上記アニオン伝導性膜における、ポリマーと周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物との質量割合は、5000000/1〜1/100000であることが好ましく、2000000/1〜1/50000であることがより好ましく、1000000/1〜1/10000であることが更に好ましい。
【0072】
<その他の成分>
上記アニオン伝導性膜は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とを含む限り、その他の成分を更に含んでいてもよい。また、その他の成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0073】
上記その他の成分は、特に限定されないが、例えば、亜鉛含有化合物、アルミナ、シリカ、導電性カーボン、導電性セラミックス等が挙げられる。その他の成分は、アニオン伝導性を補助する等の働きが可能である。
【0074】
<アニオン伝導性膜の製造方法>
上記アニオン伝導性膜を製造する際には、アニオン伝導性材料を混練・圧延する工程を含む方法を用いることができる。アニオン伝導性材料とは、アニオン伝導性膜を形成するのに用いられる材料であり、ポリマー及び周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物と共に、必要に応じて、上記その他の成分を含むものを言う。
【0075】
上記アニオン伝導性膜は、アニオン伝導性材料を混練する工程を経て得られたものであることが好ましい。
例えば、ポリマー、及び、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物等と共に、必要に応じて、上記その他の成分を混練する。混練には、ミキサー、ブレンダー、ニーダー、ビーズミル、レディミル、ボールミル等を使用することができる。混練の際、水や、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサノール、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等の有機溶剤、又は、水と有機溶剤との混合溶剤を加えても良い。上記混練においては、ポリマーを水等に分散させたディスパージョンとすることが好ましい。これにより、得られるアニオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなるため、上記X値がより大きなものとなる。これによりデンドライトの成長を阻止する効果がより高くなる。
【0076】
上記混練の時間は、適宜設定できるが、2分以上であることが好ましく、4分以上であることがより好ましく、6分以上であることが更に好ましく、8分以上であることが特に好ましい。特に、高温条件下(例えば、40℃以上)で混練時間が長くなることが好ましい。これにより、得られるアニオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなるため、上記X値がより大きなものとなる。
上記混練の時間の上限は、特に限定されないが、例えば混練の時間を30分以下とすることが好ましい。
【0077】
上記混練の温度は、適宜設定できるが、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましく、50℃以上であることが特に好ましい。これにより、得られるアニオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなるため、上記X値がより大きなものとなる。
上記混練の温度の上限は、ポリマーと周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が分解しない限り特に限定されないが、例えば混練の温度を200℃以下とすることが好ましい。
【0078】
上記アニオン伝導性膜は、アニオン伝導性材料を混練する工程を経た後、更に圧延する工程を経て得られたものであることが好ましい。
上記アニオン伝導性膜を電極用保護膜として用いる場合は、電極の活物質層上でアニオン伝導性材料を圧延してもよい。
アニオン伝導性材料がフッ素原子含有ポリマーを含むものであると、圧延時にフッ素原子含有ポリマーに強い力がかかることでポリマーの繊維化が促進され、その結果、上記アニオン伝導性膜の透気度値、強度が大きくなるため、上記X値がより大きなものとなる。
【0079】
上記アニオン伝導性膜に代表される本発明のイオン伝導性膜は、電池性能を阻害せず、デンドライトの成長をより充分に抑制できることから、電池のセパレータ、電解質(膜)や電極用保護膜等として用いることができ、例えばエネルギー密度が高く安全かつ安価な負極を含んで構成される二次電池(例えば、マンガン・亜鉛(蓄)電池、ニッケル・水素(蓄)電池、ニッケル・亜鉛(蓄)電池、亜鉛イオン(蓄)電池、銀・亜鉛(蓄)電池、亜鉛・ハロゲン(蓄)電池等)を長寿命化することができ、これを広く普及させることができる可能性がある。また、このようなイオン伝導性膜は、アルカリ(イオン)(蓄)電池、アルカリ土類(イオン)(蓄)電池、ニッケル・水素(蓄)電池、ニッケル・カドミウム(蓄)電池、鉛蓄電池、燃料電池、キャパシタ等の電気化学デバイス用途や、空気亜鉛電池やアルカリマンガン電池等の一次電池の構成部材、イオン交換材料、微量元素吸着剤等としても使用可能である。
【0080】
<電池構成部材>
本発明はまた、本発明のイオン伝導性膜を含んで構成される電池構成部材でもある。上記電池構成部材としては、セパレータ、電解質、電極等が挙げられる。
【0081】
本発明の電池構成部材が電極である場合、本発明のイオン伝導性膜は、電極の活物質層を被覆する電極用保護膜として用いられる。
【0082】
上記電極は、活物質層内に、活物質及び結着剤を含み、更に、導電助剤、その他の成分等を含んでいてもよい。
【0083】
上記活物質は、正極の活物質でもよく、負極の活物質でもよい。
本発明の電極が負極である場合は、該負極の活物質としては、炭素種・カドミウム種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・シリコン含有材料・水素吸蔵合金材料、白金等の貴金属材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを用いることができる。これらの中でも、本発明の電極における上記活物質は、亜鉛種又はカドミウム種を含有することが好ましく、亜鉛種を含有することがより好ましい。これにより、本発明の効果が顕著なものになる。なお、例えば亜鉛種とは、亜鉛の金属単体又は亜鉛化合物を意味し、カドミウム種とはカドミウムの金属単体又はカドミウム化合物を意味する。リチウム種、ナトリウム種、マグネシウム種、鉛種、亜鉛種、及び、錫種についても同様である。
【0084】
本発明の電極が正極である場合は、上記正極の活物質としては、一次電池や二次電池の正極活物質として通常用いられるものを用いることができる。例えば、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル、コバルト含有水酸化ニッケル等のニッケル含有化合物;二酸化マンガン等のマンガン含有化合物;酸化銀;コバルト酸リチウム等のリチウム含有化合物;鉄含有化合物;その他のコバルト含有化合物等が挙げられる。
本発明の電極の活物質層に含まれる活物質は、負極の活物質であることが好ましい。
【0085】
上記結着剤としては種々の公知のポリマーを用いることができるが、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー、ポリオレフィン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ポリアクリルアミド等のアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩等のカルボン酸塩基含有ポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;イオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等の人工ゴム;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;ポリウレタン等が挙げられる。なお、上記結着剤は、1種でも2種以上でも使用することができる。
【0086】
上記導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0087】
上記その他の成分としては、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物、有機化合物、有機化合物塩の1種又は2種以上を用いることができる。
【0088】
本発明に係る活物質層の平均厚みは、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、本発明のイオン伝導性膜を電極用保護膜として用いる場合、活物質の脱落等を抑制して大量の活物質を搭載したエネルギー密度の高い電池を構成できる観点から、1mm以上であることが特に好ましい。該活物質層の平均厚みは、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることが好ましい。
上記活物質層の平均厚みは、マイクロメーターにより任意に5点を測定して算出することができる。
【0089】
本発明の電極は、更に、集電体を含む。
上記集電体としては、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;アルカリ(蓄)電池や空気亜鉛電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
【0090】
本発明の電池構成部材が電解質である場合、本発明のイオン伝導性膜を固体電解質として用いることができる。
また本発明の電池構成部材がセパレータである場合、本発明のイオン伝導性膜をセパレータとして使用できる。
【0091】
<本発明の電池構成部材を用いて構成される電池>
本発明は、本発明の電池構成部材を用いて構成される電池でもある。
本発明の電池は、本発明のイオン伝導性膜を含んで構成されるセパレータ、正極、負極、電解液(電解質)のいずれかを備えるものであればよい。
本発明の電池が備える正極及び負極の活物質層、集電体は、上述したものを使用できる。
【0092】
上述したように、本発明の電池に用いる負極は、亜鉛種又はカドミウム種を活物質とすることが好ましく、亜鉛種を活物質とすることがより好ましい。したがって、本発明の電池が、亜鉛種又はカドミウム種(より好ましくは、亜鉛種)を活物質とする亜鉛負極として本発明の電極を含む電池であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、本発明の亜鉛負極を含んで構成される電池の形態としては、一次電池、充放電が可能な二次電池、メカニカルチャージ(亜鉛負極の機械的な交換)の利用、第3極の利用(正極として、充電に適した電極と放電に適した電極をそれぞれ用いる)等、いずれの形態であっても良い。
【0093】
本発明の電池に用いる電解液としては、本発明のイオン伝導性膜からなる固体電解質を使用する場合以外は、蓄電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられる。上記有機溶剤系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等が挙げられる。これらの中でも、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性電解質が好ましい。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、上記有機溶剤系電解液を含んでいてもよい。
【0094】
本発明の電池においては、本発明のイオン伝導性膜がセパレータ以外の電池構成部材(電解質及び/又は電極)に用いられる場合、そのイオン伝導性膜がセパレータの役割を果たすため、別途セパレータを使用しなくてもよい。なお、一般的に使用されるセパレータを1種以上使用しても構わない。セパレータは、正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材であればよく、不織布、濾紙、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン部位含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン部位含有ポリマー、セルロース、フィブリル化セルロース、ビスコースレイヨン、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール含有ポリマー、セロファン、ポリスチレン等の芳香環部位含有ポリマー、ポリアクリロニトリル部位含有ポリマー、ポリアクリルアミド部位含有ポリマー、ポリハロゲン化ビニル部位含有ポリマー、ポリアミド部位含有ポリマー、ポリイミド部位含有ポリマー、ナイロン等のエステル部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩部位含有ポリマー、ポリイソプレノールやポリ(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ポリマー、ポリカーボネート等のカーボネート基含有ポリマー、ポリエステル等のエステル基含有ポリマー、ポリウレタン等のカルバメートやカルバミド基部位含有ポリマー、寒天、ゲル化合物、有機無機ハイブリッド(コンポジット)化合物、イオン交換膜性ポリマー、環化ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマー、環状炭化水素基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、セラミックス等の無機物等が挙げられる。セパレータを使用する場合、セパレータはこれらのうちの1種であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明のイオン伝導性膜と別のセパレータを積層した積層構造としては、一体化した積層構造であってもよいし、互いが独立して重ね合わされた積層構造であってもよい。互いの膜が密着した積層構造である場合には、明確な界面を有する積層構造となっていてもよいし、これらの成分が混合された混合層を有する積層構造を形成していてもよい。
【0095】
本発明の電池は、公知の方法を適宜用いて製造することができる。例えば、負極を電池セル中に配置し、電解質溶液を電池セル中に導入し、更に、正極、参照極、セパレータ等を必要に応じて配置して電池を作製することができる。
【発明の効果】
【0096】
本発明のイオン伝導性膜は、上述の構成よりなり、電池構成部材として使用した場合は、電池性能を阻害せず、デンドライトの成長を充分に抑制することができ、電池を長寿命化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0098】
実施例における各種測定は、以下の方法により行った。
<透気度値の測定>
実施例において、透気度値T(s)は、JIS P8117(2009)王研式試験機法に準じて、王研式透気度平滑度測定装置 KY−55(旭精工株式会社製)で測定し、測定値の平均値を算出した。また、測定時間の上限を30000sとし、測定上限値を超える場合には透気度値を30000sとした。すなわち、実施例において、透気度値30000sとは、少なくとも30000sであることを意味し、これから求められるX値は、最も少なく見積もった場合のX値の値である。
【0099】
<突刺強度の測定>
突刺強度F(N)は、JIS Z1707(1997)に準じて、デジタルフォースゲージ ZTA−50N(イマダ社製)で測定した。試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針状治具を毎分50±5mmの速度で突き刺し、治具の先端が貫通するまでの最大応力を測定した。試験片の数は5個以上とし、その平均値として算出した。
【0100】
<密度の測定>
密度ρ(g/cm)は、イオン伝導性膜の試験片について、質量と体積を測定し、質量を体積で除すことにより算出した。試験片の体積は、試験片の縦方向の長さ、横方向の長さをノギスを用いて測定、膜厚を下記膜厚測定方法に基づき測定することにより算出した。また、試験片の質量は、体積を測定した試験片について小数点4桁の精密天秤を用いて測定した。
【0101】
<膜厚の測定>
平均膜厚L(μm)は、株式会社ミツトヨ製 デジマチックインジケータ 543−394を用いて任意に5点を測定し、その平均値として算出した。
【0102】
<X値の算出>
X値は、上記測定方法により算出した透気度値T(s)、突刺強度F(N)、密度ρ(g/cm)、膜厚L(μm)を用いて、下記式(1)により求めた。
【0103】
【数2】
【0104】
<無機化合物粒子の平均粒子径>
無機化合物粒子の平均粒子径は、無機化合物粒子を下記の分散媒に分散させた分散液を用いて、レーザー回折法によって計測した(装置名:HORIBA社製レーザー回折/散乱式 粒子径分布測定装置 LA−950、分散媒:0.2質量%ヘキサメタりん酸ナトリウム含有イオン交換水)。
<ポリマー水分散体の体積平均粒子径>
ポリマー水分散体の体積平均粒子径は、ポリマーの水分散液を蒸留水で希釈し、得られた希釈液約10mLをガラスセルに採取し、これを動的光散乱法による粒度分布測定器〔パーティクルサイジングシステムズ(Particle Sizing Systems)社製、商品名:NICOMP Model 380〕を用い、測定した。
【0105】
<ガラス転移温度>
ポリマーのガラス転移温度は、ポリマーをガラス板に塗布し、120℃で1時間乾燥することにより、ポリマーフィルムを形成し、得られたポリマーフィルムについて、示差走査熱量計(装置名:熱分析装置DSC3100S、BRVKER)を用いて測定した。
【0106】
<吸液率>
アニオン伝導性膜の任意の場所から25mm×25mm角に切り出した試験片10枚に対して、それぞれ乾燥状態の質量(M)及び、酸化亜鉛を飽和させた6.7mol/L濃度のKOH水溶液に1晩浸漬させたときの質量(M)から各々算出し、有効数字2桁としてこれらの平均値を得ることにより吸液率とした。
【0107】
<膨潤度>
アニオン伝導性膜の任意の場所から25mm×25mm角に切り出した試験片10枚に対して、それぞれ乾燥状態の膜厚(T)及び、6.7mol/L濃度のKOH水溶液に1晩浸漬させたときの膜厚(T)から各々算出し、有効数字2桁として平均値を得ることにより膨潤度とした。
【0108】
<抵抗値>
以下の条件で抵抗値(Ω)を測定した。
・仕込みセル数:5セル(平均値を記載)
・セル構成
作用極:Ni板
対極:Ni板
電解液:酸化亜鉛を飽和させた6.7mol/L濃度のKOH水溶液
測定サンプル:上記電解液に1晩浸漬
有効面積:φ15mm
・交流インピーダンス測定を行う。25℃の恒温槽内で30分静置した後、下記条件で測定した。
印加電圧:10mV vs.開回路電圧
周波数領域:100kHz〜100Hz
インピーダンスによって得られた切片成分(Ra)と測定サンプルを入れない場合の切片成分(Rb)から下記式により抵抗値(R)を算出した。
R=(Ra−Rb)
【0109】
<化合物粒子と化合物以外のアニオン伝導性膜形成材料成分との面積比>
面積比はアニオン伝導性膜を膜の表面に対し、垂直に切断して得られた膜断面(膜断面はアニオン伝導性膜の短辺側中央部10mm×10mmの範囲を用いて作製した)について、走査型電子顕微鏡を用いて断面の7割以上がアニオン伝導性膜形成材料部分となるように任意の場所の5カ所の1万倍拡大写真を撮影した。得られた断面拡大写真における任意の厚さ方向8μm×平面方向12μmの領域をMicrosoft社の画像作成用ソフトであるペイントVer.5.1に取り込み、更にアニオン伝導性膜形成材料部分の領域を抽出して、該材料部分を白黒表示に変換した。かかる画像では、無機化合物粒子以外の部分は黒色で表示され、無機化合物粒子部分は白色で表示される。得られた画像をImage metrology社製のイメージ解析ソフトを用いて、画像に占める無機化合物粒子部分の面積合計と無機化合物粒子以外の部分の面積合計との比率を求めた。なお、処理時には黒色部分と白色部分とのコントラストを明確にし、粒子が明確に分別できる点とした。
【0110】
<空隙の割合>
上記面積比と同様にアニオン伝導性膜を膜の表面に対し、垂直に切断して得られた膜断面(膜断面はアニオン伝導性膜の短辺側中央部10mm×10mmの範囲を用いて作製した)について、走査型電子顕微鏡を用いて断面の7割以上がアニオン伝導性膜形成材料部分となるように任意の場所の5カ所の1万倍拡大写真を撮影した。得られた断面拡大写真における任意の厚さ方向8μm×平面方向12μmの領域をMicrosoft社の画像作成用ソフトであるペイントVer.5.1に取り込み、更にアニオン伝導性膜形成材料部分の領域を抽出して、該材料部分を白黒表示に変換した。かかる画像では、空隙部分は黒色で表示され、その他の成分部分は白色で表示される。得られた画像をImage metrology社製のイメージ解析ソフトを用いて、画像に占める空隙部分の割合を求めた。なお、処理時には黒色部分と白色部分とのコントラストを明確にし、空隙部分が明確に分別できる点とした。
【0111】
<膜中の無機化合物粒子の断面粒子径>
上記面積比と同様にアニオン伝導性膜を膜の表面に対し、垂直に切断して得られた膜断面(膜断面はアニオン伝導性膜の短辺側中央部10mm×10mmの範囲を用いて作製した)について、走査型電子顕微鏡を用いて断面の7割以上がアニオン伝導性膜形成材料部分となるように任意の5カ所の1万倍拡大写真を撮影した。このとき、以下の画像処理によって無機化合物粒子部分のみが白色で表示できるようにコントラストを調整して保存した。得られた断面拡大写真における任意の厚さ方向8μm×平面方向12μmの領域をMicrosoft社の画像作成用ソフトであるペイントVer.5.1に取り込み、更にアニオン伝導性膜形成材料部分の領域を抽出して、該材料部分を白黒表示に変換した。その画像中で無機化合物粒子部分は白色で表示され、得られた画像をImage metrology社製のイメージ解析ソフトを用いて、画像における白色部分の大きさを無機化合物粒子の粒子径として求めた。なお、処理時には黒色部分と白色部分とのコントラストを明確にし、粒子が明確に分別できる点とした。測定は100個の粒子に対して行い、平均した値を断面粒子径とした。なお、観察された粒子が楕円状粒子である場合には、長径となる側と短径となる側をそれぞれ100個測定し、それぞれの平均値を平均した値を膜中の粒子の断面粒子径とした。
【0112】
<(メタ)アクリル系重合体の調製例>
[調製例1]
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水64質量部を仕込んだ。一方、滴下ロートに、脱イオン水26質量部、10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液4質量部、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1.5質量部、メタクリル酸メチル46.5質量部、メタクリル酸ドデシル50質量部、アクリル酸2質量部からなるプレエマルションを調製した。次に、上記調製したプレエマルション6.5質量部をフラスコ内に添加した後、フラスコ内にゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら、撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液2質量部を添加して重合を開始した。次いで、上記調製したプレエマルションの残分123.5質量部と5%過硫酸アンモニウム水溶液6質量部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6質量部とを2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間維持し、pHが約8となるように25%アンモニア水を添加した後、反応液を室温まで冷却することにより、不揮発分が48.2%、pHが7.8、体積平均粒子径が190nmの(メタ)アクリル系重合体の水分散液を得た。
【0113】
[調製例2]
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水64質量部を仕込んだ。一方、滴下ロートに、脱イオン水26質量部、10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液4質量部、メタクリル酸メチル54質量部、メタクリル酸ドデシル44質量部、アクリル酸2質量部からなるプレエマルションを調製した。次に、上記調製したプレエマルション6.5質量部をフラスコ内に添加した後、フラスコ内にゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら、撹拌下で80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液2質量部を添加して重合を開始した。次いで、上記調製したプレエマルションの残分123.5質量部と5%過硫酸アンモニウム水溶液6質量部と2.5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液6質量部とを2時間にわたって均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間維持し、pHが約8となるように25%アンモニア水を添加した後、反応液を室温まで冷却することにより、不揮発分が47.8%、pHが7.6、体積平均粒子径が175nmの(メタ)アクリル系重合体の水分散液を得た。
【0114】
(実施例1)
酸化亜鉛とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を96:4の質量割合で混練した活物質をパンチングニッケルに貼り付けて作製した亜鉛負極と、セパレータとして平均孔径100nmのポリオレフィンを用いて構成される微多孔膜(平均膜厚25μm)を4枚重ねて形成したイオン伝導性膜を配置し、対極としてニッケル正極、参照極としてAg/AgO電極を用いた電池セルを構成した。対極と負極との間に、電流密度30mA/cmの電流を流し負極容量に対して25%の電気容量の充放電試験を行った。結果、300サイクルの寿命を観測した。
【0115】
(実施例2)
無機化合物としてハイドロタルサイトと、ポリマーとしてPTFEのディスパージョン(商品名:ポリフロンD−210、ダイキン工業株式会社製)を4:6の質量割合で用い、30℃で3分混練し、平均膜厚100μmのイオン伝導性膜を作成した。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、300サイクルの寿命を観測した。
【0116】
(実施例3)
実施例2のイオン伝導性膜を構成する際に、ハイドロタルサイトとPTFEのディスパージョンとの混練について、30℃で5分混練し、平均膜厚300μmのイオン伝導性膜を作成した。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、400サイクルの寿命を観測した。
【0117】
(実施例4)
実施例2のイオン伝導性膜を構成する際に、ハイドロタルサイトとPTFEのディスパージョンとの混練について、50℃で5分混練し、平均膜厚300μmのイオン伝導性膜を作成した。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、450サイクルの寿命を観測した。
【0118】
(実施例5)
実施例2のイオン伝導性膜を構成する際に、ハイドロタルサイトとPTFEのディスパージョンとの混練について、50℃で10分混練し、平均膜厚300μmのイオン伝導性膜を作成した。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、500サイクルの寿命を観測した。
【0119】
(実施例6)
実施例2のイオン伝導性膜を構成する際に、ハイドロタルサイトとPTFEのディスパージョンとの混練について、50℃で10分混練し、更に圧延しながら平均膜厚100μmのイオン伝導性膜を作成した。実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、500サイクルの寿命を観測した。
【0120】
(実施例7)
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径0.20μm)100質量部、スチレン−ブタジエン系共重合体の水分散液(製品名:TRD−2001、JSR社製、固形分量48%)100質量部、PTFE水分散体(商品名:D210C、ダイキン工業社製、固形分60%)5質量部とカルボキシメチルセルロース(商品名:ダイセル1380、ダイセルファインケム社製)3質量部、及び、純水15質量部を計り取り、ニーダーを用いて均一な状態になるまで混練を行った後、得られた混練物を厚さ100μmになるまでロールプレスし、イオン伝導性膜を得た。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして得られたイオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、420サイクルの寿命を観測した。
【0121】
(実施例8)
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径0.20μm)100質量部、調製例1で調製した(メタ)アクリル系重合体の水分散液100質量部、カルボキシメチルセルロース(商品名:ダイセル1380、ダイセルファインケム社製)3質量部、及び、純水10質量部を計り取り、ニーダーを用いて均一な状態になるまで混練を行った後、得られた混練物を厚さ100μmになるまでロールプレスし、更に120℃で10分間の加熱処理を行うことでイオン伝導性膜を得た。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして得られたイオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、490サイクルの寿命を観測した。
【0122】
(実施例9)
実施例8において、調製例1で調製した(メタ)アクリル系重合体の水分散液を調製例2で調製した(メタ)アクリル系重合体の水分散液に変更した以外は実施例8と同様にして、イオン伝導性膜を得た。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして得られたイオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、520サイクルの寿命を観測した。
【0123】
(実施例10)
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径0.20μm)100質量部、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体の水分散液(製品名:NA−13、日本エイアンドエル社製、固形分量47%)100質量部、PTFE水分散体(商品名:D210C、ダイキン工業社製、固形分60%)5質量部とカルボキシメチルセルロース(商品名:ダイセル1380、ダイセルファインケム社製)3質量部、及び、純水15質量部を計り取り、ニーダーを用いて均一な状態になるまで混練を行った後、得られた混練物を厚さ100μmになるまでロールプレスし、イオン伝導性膜を得た。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして得られたイオン伝導性膜を用いたところ、440サイクルの寿命を観測した。
【0124】
(実施例11)
実施例7において、スチレン−ブタジエン系共重合体の水分散液100質量部を35質量部に、及び、純水15質量部を28質量部にそれぞれ変更した以外は実施例7と同様にして、イオン伝導性膜を作成し、充放電試験を行った結果、370サイクルの寿命を観測した。
ここで、得られたアニオン伝導性膜の吸液率は10%であり、膨潤度は0.6%であった。
得られたアニオン伝導性膜のアニオン伝導性膜部分の断面における、ハイドロタルサイト粒子の面積合計とその他の成分の面積合計との比率は、69/31であり、膜断面全体に対する空隙の面積の割合は4.8%であった。また、このときのアニオン伝導性膜中でのハイドロタルサイト粒子の断面粒子径は0.39μmであった。
更に、得られたアニオン伝導性膜の抵抗値(R)は0.19Ωであった。
【0125】
(実施例12)
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径0.20μm)100質量部、調製例1で調製した(メタ)アクリル系重合体の水分散液80質量部、及び純水15質量部を計り取り、ニーダーを用いて均一な状態になるまで混練を行った後、得られた混練物を100μmのロール間隔でロールプレスし、イオン伝導性膜を得た。
実施例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして得られたイオン伝導性膜を用いて実施例1と同様に充放電試験を行ったところ、380サイクルの寿命を観測した。
ここで、得られたアニオン伝導性膜の吸液率は18%であり、膨潤度は1.5%であった。
得られたアニオン伝導性膜のアニオン伝導性膜部分の断面における、ハイドロタルサイト粒子の面積合計とその他の成分の面積合計との比率は、59/41であり、膜断面全体に対する空隙の面積の割合は5.2%であった。また、このときのアニオン伝導性膜中でのハイドロタルサイト粒子の断面粒子径は0.43μmであった。
得られたアニオン伝導性膜の抵抗値(R)は0.20Ωであった。
【0126】
(比較例1)
酸化亜鉛とPTFEを96:4の質量割合で混練した活物質をパンチングニッケルに貼り付けて作製した亜鉛負極と、セパレータとしての不織布(平均膜厚:1000μm)を配置し、対極としてニッケル正極、参照極としてAg/AgO電極を用いた電池セルを構成した。対極と負極との間に、電流密度30mA/cmの電流を流し負極容量に対して25%の電気容量の充放電試験を行った。結果、5サイクルで正極と負極とが短絡した。
【0127】
(比較例2)
比較例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして平均孔径100nmのポリオレフィンを用いて構成される微多孔膜(平均膜厚:25μm)1枚で形成したイオン伝導性膜を配置し、同様の充放電試験を試みたところ、100サイクルで短絡した。
【0128】
(比較例3)
無機化合物としてハイドロタルサイトと、ポリマーとしてPTFEディスパージョン(商品名:ポリフロンD−210、ダイキン工業株式会社製)を4:6の質量割合で用い、30℃で3分混練し、50μmのイオン伝導性膜を作成した。比較例1と同様の負極及び正極を用い、セパレータとして上記イオン伝導性膜を用いたところ、250サイクルで短絡した。
【0129】
上記実施例及び比較例のイオン伝導性膜について、透気度値T(s)、突刺強度F(N)、密度ρ(g/cm)、平均膜厚L(μm)、上記式(1)で表されるX値と、測定結果を表1に示す。なお、表1中、〇は、300サイクル以上の寿命が観測されたことを表し、×は、300サイクル未満で正負極が短絡したことを表す。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例の結果から、以下のことが分かった。
上記式(1)で表されるX値が200以上であるイオン伝導性膜は、例えば亜鉛負極を含んで構成される蓄電池のセパレータ、電解質、電極用保護剤等として好適に用いることができ、当該蓄電池を長寿命化できることが実証された。
なお、上記実施例においては、イオン伝導性膜として、4枚重ね合わせた微多孔膜を用いたり、特定のフッ素原子含有ポリマー、共役ジエン系重合体、又は、(メタ)アクリル系重合体と、特定の層状複水酸化物とを混練等して得られたイオン伝導性膜を用いたりしているが、本発明のイオン伝導性膜が、上記式(1)で表されるX値が200以上であるものとし、セパレータ、電解質、電極用保護剤等に用いれば、上述したイオン伝導性能及びデンドライトの成長を抑制する性能を発揮できる。
【0132】
実施例1は、比較例2と比較して、微多孔膜を1枚だけ用いる代わりに4枚重ねて用いたものである。このように微多孔膜を積層構造とすることにより、層毎に貫通孔の位置がずれることになり、透気度値及び突刺強度が大きくなる。その結果、上記X値が200以上となり、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する本発明の効果を発揮でき、電池が長寿命化する。
【0133】
実施例2は、比較例3と比較して、イオン伝導性膜の平均膜厚を50μmから100μmとしたものであり、このように平均膜厚を厚くすることにより、トータルで性能が変わり、結果的に上記X値が200以上となり、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する本発明の効果を発揮でき、電池が長寿命化する。
実施例3は、実施例2と比較して、30℃での混練時間を3分から5分とし、平均膜厚を100μmから300μmとしたものであり、このように混練時間を長くすることにより、PTFEの繊維化が促進され、得られるイオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなる。平均膜厚を厚くしたことと相まって、上記X値がより大きくなり、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する本発明の効果がより顕著なものとなって電池が長寿命化する。
【0134】
実施例4は、実施例3と比較して、混練温度を30℃から50℃としたものであり、このように混練温度を高くすることにより、PTFEの繊維化が促進され、得られるイオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなる。その結果、上記X値がより大きくなり、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する本発明の効果がより顕著なものとなって電池が長寿命化する。
【0135】
実施例5は、実施例4と比較して、50℃での混練時間を5分から10分としたものであり、このように混練時間を長くすることにより、PTFEの繊維化が促進され、得られるイオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなる。その結果、上記X値がより大きくなり、デンドライトの成長による電極間の短絡を防止する本発明の効果がより顕著なものとなって電池が長寿命化する。
【0136】
実施例6は、実施例5と比較して、混練後に圧延しながら平均膜厚100μmのイオン伝導性膜を作成したものであり、このように圧延工程を行ったことにより、PTFEの繊維化が促進され、得られるイオン伝導性膜がより緻密なものとなり、透気度値及び突刺強度が大きくなる。その結果、薄い平均膜厚で大きなX値が達成されて電池が長寿命化する。
【0137】
実施例7は、イオン伝導性膜中のポリマーとして、主としてスチレン−ブタジエン系共重合体を用い、また、PTFE、及び、カルボキシメチルセルロースを用いる。実施例10は、イオン伝導性膜中のポリマーとして、スチレン−ブタジエン系共重合体の代わりにアクリロニトリル−ブタジエン系共重合体を用いた以外は実施例7と同様である。このように共役ジエン系重合体を用いることにより、気体を通しにくいイオン伝導性膜が形成され、透気度値が非常に大きくなる。その結果、大きなX値が達成されて電池が長寿命化する。また、実施例11は、イオン伝導性膜の調製において、配合割合を変更した以外は実施例7と同様であるが、上記X値が200以上となることで、電池が長寿命化する。
【0138】
実施例8は、イオン伝導性膜中のポリマーとして、多官能単量体を用いて調製した(メタ)アクリル系重合体を用い、その他のポリマーとして、カルボキシメチルセルロースを用いる。実施例9は、イオン伝導性膜中のポリマーとして、多官能単量体を用いて調製した(メタ)アクリル系重合体の代わりに単官能単量体のみを用いて調製した(メタ)アクリル系重合体を用いた以外は実施例8と同様である。このように(メタ)アクリル系重合体を用いることにより、気体を通しにくいイオン伝導性膜が形成され、透気度値が非常に大きくなる。その結果、大きなX値が達成されて電池が長寿命化する。また、実施例12は、イオン伝導性膜の調製において、その他のポリマーとしてカルボキシメチルセルロースを用いないこととし、また、配合割合を変更したり混練物の処理方法を変更したりした以外は実施例8と同様であるが、上記X値が200以上となることで、電池が長寿命化する。
【0139】
以上のように、X値が200以上である実施例ではすべて、300サイクル以上の寿命が観測されており、X値が200未満である比較例ではすべて、300サイクル未満(250サイクル以下)で正負極が短絡した。実施例のように300サイクル以上の寿命を達成できれば、例えば電池を交換することなく長期間使用する(例えば、1日に1回充電して約1年間使用する)ことが可能となり、工業製品として顕著に優れたものとなる。
【0140】
従って、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。