(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の極細繊維製造装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、各図面は模式図であり、必ずしも実際の構成要素の寸法や位置関係を厳密に反映したものではない。
【0024】
1.実施形態1に係る極細繊維製造装置1の構成
まず、実施形態に係る極細繊維製造装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態1に係る極細繊維製造装置1の構成を示す図である。なお、紡糸部30については、後述する
図2(b)に相当する断面図として表示している。
図2は、実施形態1における紡糸部30を説明するために示す図である。
図2(a)は紡糸部30を長手方向に沿う平面で切断したときの縦断面図であり、
図2(b)は紡糸部30を
図2(a)のA1−A1に沿う平面で切断したときの断面図である。
【0025】
図3は、実施形態1における先端側ブロック44を説明するために示す図である。
図3(a)は先端側ブロック44の上面図であり、
図3(b)は先端側ブロック44を長手方向に沿う平面で切断したときの横断面図であり、
図3(c)は先端側ブロック44を
図3(b)のA2−A2線に沿う平面で切断したときの断面図であり、
図3(d)は先端側ブロック44を
図3(b)のA3−A3に沿う平面で切断したときの断面図である。
【0026】
図4は、実施形態1におけるノズル用ヒーター48を説明するために示す図である。
図4(a)はノズル用ヒーター48を長手方向に沿う平面で切断したときの縦断面図であり、
図4(b)はノズル用ヒーター48の上面図である。
図4においては、紡糸部30及び金属製ノズル40とノズル用ヒーター48との位置関係をわかりやすくするために、紡糸部30及び金属製ノズル40を破線で表示している。また、
図4(a)においては、図面をわかりやすくするために、紡糸部30の後側に位置するノズル用ヒーター48については図示していない。
【0027】
実施形態1に係る極細繊維製造装置は、
図1に示すように、溶融槽10と、押出装置20と、紡糸部30と、ノズル用ヒーター48と、気流供給装置50と、コレクタ電極60と、電源装置62と、気流吸引部70と、回収装置80と、保温ジャケットJとを備える。以下、各構成要素について説明する。
【0028】
溶融槽10は、樹脂原料を溶融させて溶融樹脂原料を押出装置に供給する。溶融槽10は、ヒーター11により加熱することができる。また、溶融槽10には、真空ポンプ12及び窒素ライン13が接続されていて、溶融樹脂原料に含まれることがある空気を脱気して窒素に置換することができる。また、溶融槽10は、溶融樹脂原料を混練するための混練機構14を有する。
【0029】
押出装置20は、溶融樹脂原料を押し出す装置であり、溶融槽10から供給された溶融樹脂原料を押し出す。押出装置20はピストンシリンダー式の押出装置であり、ピストン押出部26により溶融樹脂原料を押し出すことができる。なお、
図1中、符号22は押出装置本体部を示し、符号24はピストン駆動部を示す。
【0030】
押出装置20と紡糸部30とは、溶融樹脂原料流路28により連結されている。
なお、押出装置20と紡糸部30との間には、押出装置20から押し出された溶融樹脂原料を紡糸部30に向けて所定の速度で送る定量ポンプや、メッシュフィルター等が配設されていてもよい。定量ポンプとしては、例えば、ギアポンプを好適に用いることができる。
【0031】
紡糸部30は、複数の金属製ノズル40及び気流流路47を有する。さらにいえば、紡糸部30は、
図2に示すように、複数の金属製ノズル40以外にも、絶縁ブロック32と、基端側ブロック36と、気流流路47が形成された先端側ブロック44とを有する。以下、紡糸部30の構成要素について説明する。
【0032】
絶縁ブロック32は、基端側ブロック36の基端側に位置し、溶融樹脂原料を基端側ブロック36に導く第2導入路34が形成されている。なお、
図2の符号37は溶融樹脂原料を導入する導入口を示す。
絶縁ブロック32においては、溶融樹脂原料が送られる方向に沿った厚さが10mm以上であり、30mm以上であることが好ましく、50mm以上であることが一層好ましい。
絶縁ブロック32は、絶縁性セラミックス又は絶縁性樹脂からなる。
【0033】
絶縁性セラミックスとしては、アルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコン(酸化ジルコニウム)、ステアタイト、スピネル、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア(酸化ベリリウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、ムライト、フォルステライト、磁器を好適に用いることができる。また、アルミナ(酸化アルミニウム)を特に好適に用いることができる。
【0034】
絶縁性樹脂としては耐熱性のある樹脂を用いることができ、PBI樹脂(ポリベンゾイミダゾール樹脂)、PI樹脂(ポリイミド樹脂)、芳香族ポリアミド、PBO樹脂(ポリベンゾオキサゾール樹脂)、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂を好適に用いることができる。また、PBI樹脂(ポリベンゾイミダゾール樹脂)を特に好適に用いることができる。
【0035】
基端側ブロック36は、溶融樹脂原料を分配して複数の金属製ノズル40に導く第1導入路38が形成されている。基端側ブロック36は、金属製である。第1導入路38は、
図2(a)に示すように、溶融樹脂原料を各金属製ノズル40に供給するため、基端側ブロック36中で分岐する構造を有する。
基端側ブロック36には、電源装置62からの電源ラインが、電源ライン接続端子42を介して接続されている。
基端側ブロック36を構成する材料には特に制限はないが、ステンレス鋼(具体例としては、SUS304及びSUS316)を好適に用いることができる。
【0036】
複数の金属製ノズル40は、押出装置20から押し出された溶融樹脂原料を吐出して極細繊維を製造するためのものである。複数の金属製ノズル40は、基端側ブロック36と接触した状態で第1導入路38の末端に配置されている。
本明細書においては、「複数の金属製ノズルが基端側ブロックと接触した状態」とは、複数の金属製ノズルと基端側ブロックとが電気的に接触した状態(通電可能な状態)であることをいう。実施形態1における金属製ノズル40は、基端側が太く先端側が細い形状からなり、太い基端側が基端側ブロック36と接触している。
金属製ノズル40の先端には、1つの吐出孔41のみが形成されている(後述する
図12(a)参照。)。吐出孔の直径(内径)は、例えば、0.4〜0.8mmとすることができる。
金属製ノズル40は、例えば、基端側ブロック36と同様の材料で構成することができる。
【0037】
先端側ブロック44は、基端側ブロック36の先端側に位置し、
図3に示すように、複数の金属製ノズル40それぞれの周囲に気流流路47が形成されている。気流流路47は、溶融樹脂原料の吐出方向に沿う方向に向けて高温気流を流すものである。
先端側ブロック44には、気流供給装置50からの気流を気流流路47に導く気流導入路46も形成されている。また、気流導入路46は、
図3(b)に示すように、気流供給装置50からの高温気流を各気流流路47に供給するため、先端側ブロック44中で分岐する構造を有する。
【0038】
先端側ブロック44を構成する材料としては、ステンレス鋼(具体例としては、SUS304、SUS316)等の金属、アルミナ等の耐熱性セラミックス、PBI樹脂等の耐熱性樹脂を好適に用いることができる。
【0039】
ノズル用ヒーター48は、第1方向D1に対して垂直な側(金属製ノズル40の側面側)から複数の金属製ノズル40を加熱する。さらにいえば、ノズル用ヒーター48は、金属製ノズル40だけでなく、基端側ブロック36、基端側ブロック36、先端側ブロック44及び絶縁ブロック32を加熱する。
第1方向D1とは垂直な方向から見たとき、
図1及び
図4(a)に示すように、ノズル用ヒーター48の基端は、複数の金属製ノズル40の基端よりも第1方向D1逆方向側にある。また、ノズル用ヒーター48の先端は、複数の金属製ノズル40の先端よりも第1方向D1順方向側にある。
【0040】
なお、本明細書において「順方向」とは、第1方向に沿う方向のことをいう。このため、金属製ノズルを基準としてみた場合、順方向側とはコレクタ電極が存在する側である。また、「逆方向」とは、上記順方向とは逆の方向のことをいう。このため、金属製ノズルを基準としてみた場合、逆方向側とはコレクタ電極が存在する側と反対の側(実施形態1でいえば、押出装置20が存在する側)である。
【0041】
ノズル用ヒーター48は、
図4(b)に示すように、上面視したときに四角形の枠のように見える形状からなり、複数の金属製ノズル40を囲むように配置されている。さらにいえば、ノズル用ヒーター48は、複数の金属製ノズル40だけでなく、基端側ブロック36、基端側ブロック36、先端側ブロック44及び絶縁ブロック32を囲むように配置されている。
【0042】
なお、本明細書においては、ノズル用ヒーターを含むヒーターと他の構成要素との位置関係とを示すときには、ヒーターにおける加熱部と他の構成要素との位置関係に着目して記載を行っている。加熱部とは、ヒーターの加熱対象となる構成要素を加熱するための部位であり、電熱線や電熱線を内蔵している部材等のそれ自体が発熱する部材からなる部位や、金属部材やヒートパイプ等発熱する部材と接続された伝熱性が高い部材からなる部位のことをいう。
また、各図面においては、ヒーターの位置として、上記した加熱部の位置を表示している。
【0043】
本明細書において「ノズル用ヒーターが複数の金属製ノズルを囲む」とは、上面視したとき(第1方向に沿ってみたとき)にノズル用ヒーターが複数の金属製ノズルを囲むことをいうが、隙間なく配置したノズル用ヒーターにより複数の金属製ノズルを囲むことのみをいうのではない。ノズル用ヒーターは、上面視したときに金属製ノズルをおおよそ囲んでいればよく、例えば、一定間隔又は任意の間隔で配置した複数のノズル用ヒーターにより複数の金属製ノズルを囲むようにしてもよい。ノズル用ヒーターが、基端側ブロック、先端側ブロック及び絶縁ブロックについて加熱する場合も、上記と同様である。
【0044】
気流供給装置50は、気流流路47に気流を供給する装置である。気流供給装置50は、
図1に示すように、気流を発生するブロアー52と、ブロアー52からの気流を加熱する加熱部54と、加熱部54の周囲に配設されたヒーター56とを有する。
気流供給装置50からの高温気流は、紡糸部30の先端側ブロック44の気流導入路46に導入されることとなる。気流供給装置50は、気流流路47の位置における高温気流の温度が120℃〜500℃の範囲内にある温度になるようにヒーター56の出力を調整可能である。
【0045】
コレクタ電極60は、紡糸部30から見て第1方向D1の側に位置する。コレクタ電極60には、電源装置62の一方の端子が接続されている。
【0046】
電源装置62は、複数の金属製ノズル40とコレクタ電極60との間に電圧(例えば、5〜100kV)を印加する装置である。
【0047】
気流吸引部70は、コレクタ電極60における紡糸部30との反対側の位置に配設され、気流を吸引する。気流吸引部70は、気流吸引装置74(例えば、ポンプやファン)と接続されている。
【0048】
回収装置80は、製造された極細繊維を回収する装置である。回収装置80は、コレクタ電極60における紡糸部30の位置に配設され、気流通過用の多数の孔が形成されているコンベア機構を有する。
回収装置80は、不織布などの基材を繰り出す繰り出しローラー81と、基材を送る送りローラー82と、基材を巻き取る巻き取りローラー83と、コレクタ電極60における紡糸部30側に位置し、気流通過用の多数の孔が形成されているコンベアメッシュ84とを有する。
【0049】
保温ジャケットJは、押出装置20及び紡糸部30を覆うように配置されている。
【0050】
2.実施形態1に係る極細繊維製造装置1を用いた極細繊維製造方法
次に、実施形態1に係る極細繊維製造装置1を用いた極細繊維製造方法について簡単に説明する。
【0051】
まず、適量の樹脂原料(例えば、ペレット状のポリプロピレン)を溶融槽10に投入する。その後、真空ポンプ12で溶融槽10の中を減圧した後、窒素ガスを導入して溶融槽10の中の空間を窒素ガスで置換する。その後、混練機構14により樹脂原料を混練しながら、溶融槽10を所定温度(例えば150℃〜290℃)に加熱することにより、樹脂原料を溶融させる。このとき、押出装置20、ノズル用ヒーター48を所定温度(例えば150℃〜290℃)に加熱するとともに、気流流路47に気流供給装置50から高温気流(例えば120℃〜500℃)を流すことによって、紡糸部30、特に金属製ノズル40近辺を十分に加熱する。
【0052】
次に、開閉バルブ18を開いて、溶融樹脂原料を押出装置20に供給する。
次に、押出装置20により送り出された溶融樹脂原料を、溶融樹脂原料流路28を通じて所定速度で紡糸部30に向けて送る。
【0053】
次に、溶融樹脂原料を、絶縁ブロック32の導入口33及び第2導入路34並びに基端側ブロック36の導入口37及び第1導入路38を介して複数の金属製ノズル40に送る。このとき、複数の金属製ノズル40それぞれの周囲に形成された気流流路47には気流供給装置50から高温気流が流された状態であり、かつ、基端側ブロック36とコレクタ電極60との間に所定の電圧(例えば、5〜100kV)が印加された状態であるため、溶融樹脂原料は勢いよく複数の金属製ノズル40から吐出され、枝分かれして極細繊維になりながらコレクタ電極60に向かう。
【0054】
このとき、コレクタ電極60における紡糸部30側のメッシュ上においては基材110が送られた状態にあるため、基材110上に極細繊維が堆積し、これにより、極細繊維が基材110上に回収されることとなる。
【0055】
3.実施形態1に係る極細繊維製造装置1の効果
実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、複数の金属製ノズル40それぞれの周囲に高温気流を流すことが可能となるため、従来の極細繊維製造装置900と同様に、ノズルから吐出された溶融樹脂原料が冷却される速度を遅くすることが可能となる。その結果、溶融樹脂原料の粘度が上昇する速度を遅くすることが可能となり、溶融静電紡糸法により細径の極細繊維を製造することが可能となる。
【0056】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、第1方向D1に対して垂直な側から複数の金属製ノズル40を加熱するノズル用ヒーター48を備えるため、金属製ノズルを重点的に加熱することが可能となり、金属製ノズル近辺で溶融樹脂原料が温度低下を起こしてしまうことを防止することが可能となる。このため、実施形態1に係る極細繊維製造装置1は、従来の極細繊維製造装置900よりも極細繊維を安定して製造することが可能な極細繊維製造装置となる。
【0057】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、溶融樹脂原料の吐出方向に沿った方向に向けて気流を流すため、溶融樹脂原料を金属製ノズルからスムーズに吐出させることが可能となる。
【0058】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、第1方向D1とは垂直な方向から見たとき、ノズル用ヒーター48の基端は、複数の金属製ノズル40の基端よりも第1方向D1逆方向側にあるため、高温気流により加熱することが難しい金属製ノズルの基端側を加熱することが可能となり、金属製ノズルの基端側における溶融樹脂原料の詰まり等を抑制することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、第1方向D1とは垂直な方向から見たとき、ノズル用ヒーター48の先端が複数の金属製ノズル40の先端よりも第1方向D1順方向側にあるため、金属製ノズルの先端まで加熱することが可能となり、かつ、金属製ノズルの先端付近の空間についても加熱することが可能となる。このため、ノズルから吐出された溶融樹脂原料が冷却される速度を一層遅くすることが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、ノズル用ヒーター48は、複数の金属製ノズル40を囲むように配置されているため、金属製ノズルを比較的均等に加熱することが可能となり、金属製ノズル近辺で溶融樹脂原料が部分的に温度低下を起こしてしまうことを防止することが可能となる。
【0061】
ところで、溶融樹脂原料を分配して複数の金属製ノズルに導く箇所、つまり、基端側ブロック36の第1導入路38においては、溶融樹脂原料の流れが部分的に滞りやすいことから、溶融樹脂原料の温度が低下しやすい。実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、基端側ブロック36が金属製であるため、溶融樹脂原料の温度が低下しやすい第1導入路に外部からの熱を伝えやすくなり、その結果、溶融樹脂原料の温度低下に伴う樹脂原料の詰まりや製造する極細繊維の品質の低下を抑制することが可能となる。
【0062】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、紡糸部30が、気流流路47が形成された先端側ブロック44を有するため、溶融樹脂原料の吐出方向に沿った方向に向けて気流を流すことが可能となる。
【0063】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、紡糸部30が絶縁ブロック32を有するため、極細繊維を製造するために電圧を印加したときでも、紡糸部と押出装置との間で十分な絶縁を取ることが可能となる。
【0064】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、複数の金属製ノズル40と接している基端側ブロック36に電源装置62からの電源ラインが接続されているため、複数の金属製ノズルとコレクタ電極との間に電圧を印加することが可能となる。
【0065】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、絶縁ブロック32が基端側ブロック36の基端側に配置されているため、絶縁ブロックが基端側ブロックの先端側に配置されている場合と比較して、溶融樹脂原料の温度が低下しやすい箇所を有する基端側ブロックを、金属製ノズルと近い位置に配置できる。このため、ノズル用ヒーターを用いて金属製ノズルとともに基端側ブロックを加熱することで、溶融樹脂原料の温度低下に伴う樹脂原料の詰まりや製造する極細繊維の品質の低下を高い確度で抑制することが可能となる。
【0066】
ところで、分配された後の溶融樹脂原料は、分配される前と比較して1つの流れあたりの流量が減少するため、外部の温度の影響を受けやすくなる。実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、絶縁ブロック32が基端側ブロック36の基端側に配置されているため、絶縁ブロックが基端側ブロックの先端側に配置されている場合と比較して、外部の温度の影響を受けやすくなる部分を短くすることができる。この観点からも、溶融樹脂原料の温度低下に伴う樹脂原料の詰まりや製造する極細繊維の品質の低下を高い確度で抑制することが可能となる。
【0067】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、ノズル用ヒーター48は、基端側ブロック36、先端側ブロック44及び絶縁ブロック32を加熱するため、金属製ノズルだけでなく周囲の構成要素も十分に加熱することが可能となり、その結果、極細繊維を一層安定して製造することが可能となる。
【0068】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、ノズル用ヒーター48は、基端側ブロック36、先端側ブロック44及び絶縁ブロック32を囲むように配置されているため、金属製ノズルだけでなく周囲の構成要素も比較的均一に加熱することが可能となり、その結果、紡糸部全体について溶融樹脂原料が部分的に温度低下を起こしてしまうことを防止することが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、気流流路47の位置における気流の温度は、120℃〜500℃の範囲内にあるため、ノズルから吐出された溶融樹脂原料が冷却される速度を十分に遅くすることが可能となる。
【0070】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、押出装置20及び紡糸部30は、保温ジャケットJにより覆われているため、押出装置20及び紡糸部30に至る領域で溶融樹脂材料の温度が低下するのを抑制することが可能となる。
【0071】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、気流吸引部70を備えるため、紡糸部から流れ出す高温気流の流れを安定化することが可能となる。
【0072】
また、実施形態1に係る極細繊維製造装置1によれば、回収装置80は、コレクタ電極60における紡糸部30側の位置に配設され、気流通過用の多数の孔が形成されているコンベア機構であるコンベアメッシュ84を有するため、気流吸引部の働きを阻害することなく極細繊維を回収することが可能となる。
【0073】
[実施形態2]
図5は、実施形態2に係る極細繊維製造装置2の構成を示す図である。
図6は、実施形態2における紡糸部30Aを説明するために示す図である。
図6(a)は紡糸部30Aを長手方向に沿う平面で切断したときの縦断面図であり、
図6(b)は紡糸部30Aを
図6(a)のA1−A1に沿う平面で切断したときの断面図である。なお、
図6(b)においては、絶縁ブロック用ヒーター49の位置を破線で表示している。
【0074】
実施形態2に係る極細繊維製造装置2は、基本的には実施形態1に係る極細繊維製造装置1と同様の構成を有するが、紡糸部の構成が実施形態1に係る極細繊維製造装置1の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る極細繊維製造装置2は、
図5及び
図6に示すように、紡糸部30Aにおいて、絶縁ブロック32Aに接触し、絶縁ブロック32Aを加熱する絶縁ブロック用ヒーター49を備える。
また、絶縁ブロック32Aには、絶縁ブロック用ヒーター49の形状(実施形態2においては棒状の形状)に対応するヒーター用凹部35が外表面に露出するように形成されている。絶縁ブロック用ヒーター49は、ヒーター用凹部35に挿入されている。
【0075】
このように、実施形態2に係る極細繊維製造装置2は、紡糸部の構成が実施形態1に係る極細繊維製造装置1の場合とは異なるが、第1方向D1に対して垂直な側から複数の金属製ノズル40を加熱するノズル用ヒーター48を備えるため、実施形態1に係る極細繊維製造装置1と同様に、金属製ノズルを重点的に加熱することが可能となり、金属製ノズル近辺で溶融樹脂原料が温度低下を起こしてしまうことを防止することが可能となる。このため、実施形態2に係る極細繊維製造装置2も、従来の極細繊維製造装置900よりも極細繊維を安定して製造することが可能な極細繊維製造装置となる。
【0076】
また、実施形態2に係る極細繊維製造装置2によれば、絶縁ブロック用ヒーター49を備えるため、材料の性質上熱伝導率が低い場合が多い絶縁ブロックを重点的に加熱し、絶縁ブロックにおいて溶融成形材料の温度が低下してしまうのを抑制することが可能となる。
【0077】
また、実施形態2に係る極細繊維製造装置2によれば、絶縁ブロック32Aにはヒーター用凹部35が外表面に露出するように形成され、絶縁ブロック用ヒーター49はヒーター用凹部35に挿入されているため、絶縁ブロック用ヒーターと第2導入路とを近づけることで、絶縁ブロック用ヒーター49からの熱を第2導入路に伝わりやすくすることが可能となる。
【0078】
なお、実施形態2に係る極細繊維製造装置2は、紡糸部の構成以外の点については実施形態1に係る極細繊維製造装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る極細繊維製造装置1が有する効果のうち該当する効果を有する。
【0079】
以上、本発明の極細繊維製造装置及び極細繊維製造方法を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0080】
(1)上記各実施形態においては、押出装置としてピストンシリンダー式の押出装置20を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7は、変形例1に係る極細繊維製造装置3の構成を示す図である。
図8は、変形例1における押出装置90を説明するために示す図である。
図8(a)は押出装置90の横断面図であり、
図8(b)は押出装置90の縦断面図である。変形例1に係る極細繊維製造装置3は、溶融槽10の代わりにホッパ100,102を備え、ピストンシリンダー式の押出装置20の代わりに二軸式の押出装置90を備える。押出装置90は、内部空間93に2つのスクリュー95が配設されている。なお、
図8中、符号101,103は開閉バルブを示し、符号92は導入部を示し、符号94は導出部を示し、符号96モーターを示し、符号98はヒーターを示す。ホッパ100は主原料(主樹脂原料)を供給するホッパであり、ホッパ102は副原料(例えば添加物)を供給するホッパである。本発明の極細繊維製造装置においては、
図7及び
図8に示すように、ピストンシリンダー式以外の押出装置を用いてもよい。
【0081】
(2)上記各実施形態においては、回収装置80のような回収装置を採用して説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。
図9は、変形例2に係る極細繊維製造装置4の構成を示す図である。変形例2に係る極細繊維製造装置4の回収装置80Aは、不織布の送り速度に同期して回転する回転式のコンベアドラム85を有する。コンベアドラム85には、気流通過用の多数の孔が形成されている。
図10は、変形例3に係る極細繊維製造装置5の構成を示す図である。変形例3に係る極細繊維製造装置5の回収装置80Bは、紡糸部30と対向する領域86のみに気流通過用の多数の孔が形成され、紡糸部30と対向しない領域87には気流通過用の孔が形成されていない固定式のコンベアドラム88を有する。
図11は、変形例4に係る極細繊維製造装置6の構成を示す図である。変形例5に係る極細繊維製造装置6の回収装置80Cは、巻き取りローラー83の巻き取り速度に同期して循環する循環式のコンベアベルト89を有する。コンベアベルト89には、気流通過用の多数の孔が形成されている。本発明の極細繊維製造装置においては、例えば、上記の
図9〜
図11に示すような回収装置を採用してもよい。
【0082】
(3)本発明の極細繊維製造装置においては、気流導入路は、高温気流が金属製ノズルから極細繊維が吐出される方向ベクトルをもって、かつ、金属製ノズルを挟んで両側から高温気流流路に導入されるよう構成されていてもよい。
【0083】
(4)上記各実施形態においては、極細繊維からなる不織布を、不織布が基材110上に堆積された形で回収しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、極細繊維からなる不織布を、基材から引き剥がした形で回収することとしてもよい。また、極細繊維からなる不織布を、基材と一部一体化された形で回収することとしてもよい。
【0084】
(5)上記各実施形態においては、例えば
図1に示すように、紡糸部30から鉛直下方向に位置するコレクタ電極60に向けて紡糸部30から溶融樹脂原料を吐出する、いわゆる縦型の構成を有するが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、紡糸部から水平方横方向に位置するコレクタ電極に向けて紡糸部から溶融樹脂原料を吐出する、いわゆる横型の構成を有するものであってもよい。
【0085】
(6)上記各実施形態においては、金属製ノズル40の先端には1つの吐出孔41のみが形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図12は、実施形態1における金属製ノズル40及び変形例5における金属製ノズル40a,40bの先端を示す拡大模式図である。
図12(a)は金属製ノズル40の先端を示す図であり、
図12(b)は金属製ノズル40aの先端を示す図であり、
図12(c)は金属製ノズル40bの先端を示す図である。なお、
図12は、各金属製ノズルの先端を、溶融樹脂原料の吐出軸に沿って、第1方向D1逆方向側に向かって見た図である。
図12における符号41,41a,41bで示すのは、溶融樹脂原料を吐出するための吐出孔である。
図12においては、各金属製ノズルの最先端部のみを表示する。
【0086】
例えば、
図12(b),(c)に示すように、金属製ノズルの先端には、複数の吐出孔が形成されていてもよい。このような構成とすることにより、吐出される溶融樹脂原料の流れを金属製ノズル先端で細分化することが可能となり、その結果、溶融樹脂原料を一層均一に吐出することが可能となり、かつ、溶融樹脂原料を一層細く吐出することが可能となる。
なお、上記のような構成とすると、金属製ノズルの先端において溶融樹脂原料が滞留して温度が下がりやすくなることが考えられる。しかし、本発明の極細繊維製造装置は金属製ノズルを加熱するノズル用ヒーターを備えるため、金属製ノズルの先端に複数の吐出孔が形成されている場合であっても、金属製ノズルの先端において溶融樹脂原料が滞留して温度が下がるのを抑制することが可能となる。
【0087】
複数の吐出孔の数及び形状は
図12(b),(c)に記載したものに限定されるものではない。複数の吐出孔は、例えば、金属製ノズルの先端を一度塞いだ上で穿孔を行うことにより形成することができる。また、複数の吐出孔は、例えば、1つの吐出孔のみが形成されている金属製ノズルの先端に網状の部品を取り付けることによっても形成することができる。
【0088】
(7)本発明の極細繊維製造装置は、ノズル用ヒーターの先端側に配置され、複数の金属製ノズルから吐出される溶融樹脂原料を加熱する先端側ヒーターをさらに備えていてもよい。
図13は、変形例6における先端側ヒーター120を説明するために示す図である。
図13(a)は先端側ヒーター120及びノズル用ヒーター48を長手方向に沿う平面で切断したときの縦断面図であり、
図13(b)は先端側ヒーター120及びノズル用ヒーター48を
図2(a)のA1−A1に相当する平面で切断したときの断面図であり、
図13(c)は先端側ヒーター120及びノズル用ヒーター48の上面図である。
図13においては、紡糸部30及び金属製ノズル40と先端側ヒーター120及びノズル用ヒーター48との位置関係をわかりやすくするために、紡糸部30及び金属製ノズル40を破線で表示している。また、
図13(a),(b)においては、図面をわかりやすくするために、紡糸部30の後側に位置する先端側ヒーター120及びノズル用ヒーター48については図示していない。
【0089】
先端側ヒーター120は、
図13に示すように、ノズル用ヒーター48の先端側に配置されている。先端側ヒーター120のヒーターとしての構成は、ノズル用ヒーター48と同様である。先端側ヒーター120は、ノズル用ヒーター48と直接接するように配置されていてもよいし、スペーサー等を介して配置されていてもよいし、完全に離隔して配置されていてもよいが、ノズル用ヒーター48の先端と先端側ヒーター120との間の隙間(加熱部ではない部分)は小さい方がよい。この観点からは、先端側ヒーター120は、ノズル用ヒーター48と少なくとも1点において直接接するように配置されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、吐出された溶融樹脂原料を直接加熱することが可能となり、その結果、ノズルから吐出された溶融樹脂原料が冷却される速度を一層遅くすることが可能となる。
【0090】
また、ノズル用ヒーター120は、複数の金属製ノズル40から吐出される溶融樹脂原料を囲むように配置されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、複数の金属製ノズルから吐出される溶融樹脂原料を比較的均等に加熱することが可能となる。
【0091】
また、先端側ヒーター120は、複数の金属製ノズル40から溶融樹脂原料が吐出されるときにおける溶融樹脂原料が拡散する範囲には干渉しないように、角度を付けて配置されていることが好ましい。
このような構成とすることにより、先端側ヒーターを吐出される溶融樹脂原料に全体的に近づけることが可能となり、その結果、ノズルから吐出された溶融樹脂原料が冷却される速度をより一層遅くすることが可能となる。