(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鎮痛薬、麻酔薬、止血薬、抗微生物薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、抗炎症薬、酸化防止剤、防腐剤、抗ヒスタミン薬、止痒薬、解熱薬、免疫賦活薬、皮膚科薬、抗癌薬、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種類の追加の薬学的活性物質をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の医薬陽イオン系乳剤。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、局所コルチコステロイド療法で一般にみられる望ましくない副作用を結果的に生じることのない、眼にコルチコステロイドを送達するための改良された戦略を提供する。本発明のアプローチは、特に、眼の炎症性疾患のような眼の表面に影響している眼の疾患および異常の治療に有用である。
【0007】
特に、本発明は、眼表面において化学的または生理的なプロセスを介して医薬活性のあるコルチコステロイドに変換される、かつ/または医薬活性のあるコルチコステロイドを放出する、医薬活性のない化合物であるコルチコステロイドプロドラッグの眼局所投与を含む方法および組成物を提供する。本発明の好ましいコルチコステロイドプロドラッグは、眼表面に送達された後に眼の内部組織にそれほど浸透しない、特に、角膜実質を通過せず、それによって房水に達しない化合物である。したがって、本発明のシステムは、コルチコステロイドが眼の内部に存在する結果として生じ得る、IOPの上昇、緑内障の発生、白内障の発生、および他の望ましくない副作用のリスクを制限または減少させる。その結果、より長期間にわたって投与することができ、最も強力なコルチコステロイドを含めたあらゆる好適なコルチコステロイドのプロドラッグを用いることができるために、本発明の治療方法は、局所コルチコステロイド投与に一般に伴う制約を受けることがない。
【0008】
より詳細には、一態様では、本発明は、眼への局所投与用に製剤したコルチコステロイドプロドラッグの医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、一般に、少なくとも1種類の有効量のコルチコステロイドプロドラッグ、または生理学的に許容可能なその塩、および少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体または補形剤を含有する。
【0009】
コルチコステロイドプロドラッグから放出され得るコルチコステロイドは、眼の疾患または異常、特に、眼の炎症性疾患の治療における使用に好適なあらゆるコルチコステロイドであってよい。特定の実施形態では、プロドラッグは、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、リメキソロン、メドリゾン、生理学的に許容可能なこれらの塩、これらの誘導体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるコルチコステロイドに変換されることができ、かつ/またはこうしたコルチコステロイドを放出することができる。特定の好ましい実施形態では、プロドラッグは、デキサメタゾン、生理学的に許容可能なその塩、またはその誘導体に変換され、かつ/またはこれらを放出する。より好ましくは、本発明のプロドラッグは、デキサメタゾンに変換され、かつ/またはデキサメタゾンを放出する。
【0010】
本発明の特定の好ましい実施形態では、プロドラッグからのコルチコステロイドの放出は、眼の表面における酵素によるプロセスを介して生じる。したがって、好ましくは、コルチコステロイドプロドラッグは、眼表面に酵素が存在することによって切断され得る化学基または化学官能基を含有する。このような酵素には、これらに限定されるわけではないが、エステラーゼ(例えば、偽コリンエステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ)、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、およびペプチダーゼを含む多種多様な酵素のいずれもが含まれる。特定の好ましい実施形態では、プロドラッグからのコルチコステロイドの放出は、1種類または複数のエステラーゼの作用を介して生じる。
【0011】
好ましいコルチコステロイドプロドラッグは、コルチコステロイドの親油性誘導体、特に、1と12との間、好ましくは5以上12未満に含まれるlogP(分配係数)を有する、コルチコステロイドの親油性誘導体である。
【0012】
本発明では、化合物の分配係数Pは、中立の分子としての、前記化合物のオクタノール中の濃度に対する水中の濃度の比である。
【0013】
前記比の対数をlogPという。logPは、公表された方法(Caron, J. C.およびShroot, B.、J. Pharm. Sci.、1984)に従って好適なHPLC法で決定することができる。
【0014】
詳細には、本発明は、コルチコステロイドの親油性長鎖エステルの使用に関する。親油性長鎖は、直鎖状アルキル、直鎖状アルケニル、分枝状アルキル、および分枝状アルケニルからなる群から選択されてもよく、このとき、アルキル基およびアルケニル基は、12、14、16、18個、または18個より多い炭素原子を含有する。好ましくは、該親油性長鎖は、12、14、16、18個、または18個より多い炭素原子を含有する直鎖状アルキルまたは分枝状アルキルの中から選択される。一実施形態では、該親油性長鎖は、12個または14個の炭素原子を含有する直鎖状アルキルの中から選択される。
【0015】
特定の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、有効量のパルミチン酸デキサメタゾン、ミリスチン酸デキサメタゾン、ラウリン酸デキサメタゾン、またはカプリン酸デキサメタゾンを含有する。
【0016】
本発明の医薬組成物は、眼表面への局所投与用に好適な薬学的に許容可能なあらゆる担体または補形剤を用いて製剤する。例えば、本発明の医薬組成物を、ポリエチレングリコールを含む溶液中、油性溶液中、陰イオン系乳剤中、または陽イオン系乳剤中で製剤することができる。
【0017】
本発明の医薬組成物は、例えば、鎮痛薬、麻酔薬、止血薬、抗微生物薬、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、抗炎症薬、酸化防止剤、防腐剤、抗ヒスタミン薬、止痒薬、解熱薬、免疫賦活薬、皮膚科薬、抗癌薬、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、少なくとも1種類の追加の薬学的活性物質を任意にさらに含有してもよい。
【0018】
他の一態様では、本発明は、眼の疾患および異常、特に、炎症性疾患のような眼の表面に影響する眼の疾患および異常の治療のための方法を提供する。このような方法には、一般に、有効量の本発明の医薬組成物を対象者の眼表面に局所的に投与するステップが含まれる。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明の治療方法に従って医薬組成物を投与することによって、結果的にコルチコステロイドプロドラッグの浸透および/または眼の内部で放出されるコルチコステロイドがほんのわずかとなる。
【0020】
本発明の方法は、多種多様な眼の疾患または異常、特に、眼の炎症性疾患のような眼表面に影響する眼の疾患または異常の治療のために用いることができる。眼の炎症性疾患は、外傷(例えば、外科手術、レーザー法、偶発的な機械的作用)、ならびに化学薬品、感染、アレルギー、または他の原因を含めた多種多様な原因のうちいずれによるものであってもよい。あるいは、眼炎症は、眼の疾患若しくは異常の兆候、または全身性の疾患若しくは異常の兆候であってもよい。
【0021】
特定の実施形態では、本発明の方法には、有効量の治療薬を対象者に投与するステップがさらに含まれる。こうした治療薬の投与は、コルチコステロイドプロドラッグの医薬組成物の投与前に、投与と同時に、かつ/または投与後に行うことができる。該治療薬を全身的に投与することもできる。あるいは、該治療薬を、例えば眼の表面などに、局所的に投与することもできる。
【0022】
特定の実施形態では、該治療薬は、本発明の方法によって治療中の眼の疾患または異常に対する治療的なまたは有益な効果を有する。他の実施形態では、該治療薬の投与によって、眼の炎症のような眼の副作用が引き起こされる。こうした実施形態では、これらの副作用を予防または減少させるために該医薬組成物を投与する。このアプローチは、ドライアイの局所治療に必要であり、霧視、眼の焼けつくような痛みまたは刺すような痛み、眼脂、眼のそう痒感、過剰な流涙、眼の不快感または眼痛、および眼の周りの腫脹などの副作用を伴うシクロスポリンの場合に特に有用となり得る。シクロスポリンとコルチコステロイドとの併用投与によってシクロスポリンに対する耐容性が改善されることが示されており、少なくとも併用治療の初期の眼の不快感が減少するため、シクロスポリンの投与前(例えば、1週間前)に本発明の医薬組成物を投与することによって副作用のリスクを予防または減少させることが期待される。
【0023】
本発明の上記およびその他の目的、利点、および特徴は、以下の説明を読んだ当業者には明らかとなるであろう。
【0024】
定義
便宜上、本明細書の全体にわたって用いるさまざまな用語の定義を以下に示す。
【0025】
本明細書中で用いる「コルチコステロイド」という用語は、副腎皮質内で自然に産生されるホルモンであるコルチゾールと密接に関連した多種多様な薬剤のいずれものことをいう。コルチコステロイドの例には、ベタメタゾン、ブデノシド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾリン、プレドニゾロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンが含まれるが、これらに限定されない。本発明の特定の好ましい実施形態では、コルチコステロイドは、局所投与による眼の疾患または異常の治療において有効である。
【0026】
「プロドラッグ」という用語は、本明細書中では技術分野で知られているのと同じ意味を有し、投与後に医薬活性のある薬剤に変換され、かつ/または医薬活性のある薬剤を放出する薬剤前駆体として働く医薬活性のない化合物のことをいう。変換または放出は、(例えば、生理的なpHに置かれることにより、あるいは酵素活性を通して)化学的または生理的なプロセスを介して生じ得る。変換または放出は、吸収前、吸収中、もしくは吸収後に生じてもよく、身体の特定の標的部位で生じてもよい。
【0027】
本明細書中で用いる「コルチコステロイドプロドラッグ」という用語は、化学的または生理的なプロセスによって、in vivoで代謝され、医薬活性のあるコルチコステロイドに変換され、かつ/またはそれを放出するプロドラッグのことをいう。
【0028】
「親油性」という用語は、本明細書中で化合物の特徴を表すために用いる場合には、水よりも脂肪、油、脂質、および無極性溶剤に溶解しやすい化合物のことをいう。
【0029】
本明細書中で用いる「コルチコステロイドの親油性長鎖エステル」という用語は、エステル官能基の炭素原子と酸素原子のうちの一方が、10個を超える炭素原子、例えば12個、14個、16個、もしくはそれより多い炭素原子を含有する直鎖状または分枝状のアルキル鎖またはアルケニル鎖と共有結合で結合し、その炭素原子と酸素原子のうちのもう一方が、コルチコステロイドの一部の官能基と共有結合で結合したエステル官能基―COO―を含有する化学成分のことをいう。
【0030】
「アルキル」という用語は、本明細書中では技術分野で知られているのと同じ意味を有し、直鎖状または分枝状の飽和炭化水素のことをいう。
【0031】
「アルケニル」という用語は、本明細書中では技術分野で知られているのと同じ意味を有し、直鎖状または分枝状の不飽和炭化水素のことをいう。
【0032】
本明細書中では「対象者」および「個体」という用語を互換可能に用いる。これらの用語は、眼の疾患または異常を患い得るあるいは患いやすいが、疾患または異常を有していてもよく、有していなくてもよい、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)のことをいう。多くの実施形態において、この対象者はヒトである。「個体」および「対象者」という用語は、特定の年齢を意味せず、したがって、成人、小児、および新生児が含まれる。
【0033】
「眼の疾患または異常」という用語は、緑内障、角膜炎などの炎症性の眼疾患、ブドウ膜炎、眼炎症、アレルギーおよびドライアイ症候群の眼感染症、眼アレルギー、眼感染症、癌腫瘍、角膜から生じる血管新生、網膜浮腫、黄斑浮腫、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜の変性疾患(黄斑変性症、網膜ジストロフィー)、ならびにグリア増殖に伴う網膜疾患などのような多種多様な眼の疾患のあらゆるもののことをいう。
【0034】
本明細書中では「治療」という用語を、(1)疾患または異常(特に、眼の疾患または異常)の発生を遅延させるまたは予防すること、(2)疾患または異常の症状の進行、悪化、または悪変を減速または停止させること、(3)疾患または異常の症状の改善をもたらすこと、あるいは(4)疾患または異常を治癒させること、を目的とする方法またはプロセスの特徴を表すために用いる。予防的または防止的な処置のために、疾患または異常の発生前に治療を行うこともできる。これに代えてまたはこれに加えて、治療的な処置のために、疾患または異常の発生後に治療を行うこともできる。
【0035】
本明細書中では「医薬組成物」とは、有効量のコルチコステロイドプロドラッグ、または生理学的に許容可能なその塩、および少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体または媒質を含有するものとして定義する。
【0036】
本明細書中で用いる「有効量」という用語は、その使用目的、例えば、組織、系、または対象者における所望の生物学的または医薬的な反応、を果たすために十分な、化合物、薬剤、または組成物の任意の量のことをいう。例えば、本発明の特定の実施形態では、この目的は、眼の疾患または異常の症状の進行、悪化、または悪変を減速または停止させるため、眼の疾患または異常の症状の改善をもたらすため、かつ/または眼の疾患または異常を治癒させるためであってもよい。有効量の決定は、多様な生物学的因子または個体差および治療に対する反応性に依存するため、薬学および医学の技術分野で十分に通常の技量の範囲内である。
【0037】
「薬学的に許容可能な担体または補形剤」という用語は、活性成分の生物活性の有効性を妨げず、投与する濃度で宿主に過度に毒性でない担体媒質のことをいう。この用語には、溶剤、分散媒、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤、吸収遅延剤などが含まれる。こうした媒質および薬剤を薬学的活性物質に利用することは、当技術分野でよく知られている(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E. W. Martin、第18版、1990、Mack Publishing社:Easton、PAを参照されたく、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0038】
本明細書中では「治療薬」、「薬剤」、および「薬学的活性物質」という用語を互換可能に用いる。これらは、疾患または異常の治療において有効な物質、分子、化合物、薬剤、因子、組成物のことをいう。
【0039】
数に関して本明細書中で用いる「約」および「およそ」という用語は、特に明記しない限り、あるいは特に状況から明らかでない限り、一般に、その数の両方向(その数より大きいもしくはその数より小さい)10%の範囲内に入る数を含む(そうした数が考えられる値を超えるであろう場合を除く)。
【0040】
本明細書中で用いる「生理学的に許容可能な塩」という用語は、それぞれ対応する遊離塩基または遊離酸の生物活性および特性を維持し、生物学的またはそれ以外に不適切でないあらゆる酸付加塩または塩基付加塩のことをいう。酸付加塩は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)で生成される。塩基付加塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムの塩など)および有機塩基(例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グリコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂類など)で生成され得る。
【0041】
本明細書中では「局所製剤」および「局所組成物」という用語を互換可能に用いる。これらは、組成物の活性成分を眼の表面への直接投与に適用できるように製剤した、ある量の活性成分を放出する組成物のことをいう。局所製剤の例には、ローション剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書中で本発明の組成物の送達、投与、または適用の特徴を表すために用いる場合の「局所」という用語は、局所的な効果を得るために、組成物を、目的とする部位に(すなわち、眼に)直接に送達、投与、または適用することを特定することを意味する。局所投与は、(全身性の効果を回避するために)組成物の成分が対象者の血流中に顕著に吸収されることが一切なく遂行されることが好ましい。本発明の特定の好ましい実施形態では、組成物の局所投与は、組成物の成分が対象者の房水、角膜組織、および結膜組織などの眼組織内に顕著に吸収されることが一切なく遂行される。
【0043】
本明細書中で用いる場合の「非侵襲性」という用語は、コルチコステロイドプロドラッグを送達する生体膜を(例えば、機械的手段によって)断裂または穿刺することのない投与方法または投与様式のことをいう。
【0044】
本明細書中で、組成物と接続して用いる「眼の」という用語は、眼に投与することが意図され薬効を示す組成物のことをいう。
【発明を実施するための形態】
【0045】
上記のように、本発明は、眼の疾患または異常の治療のための、眼の表面へのコルチコステロイドプロドラッグの局所投与に関する。本発明が提供する治療戦略には、局所コルチコステロイド投与に一般に伴う望ましくない副作用を生じないという利点がある。
【0046】
I−コルチコステロイドプロドラッグ
本発明の実施に用いるために好適なコルチコステロイドプロドラッグには、眼の表面への局所投与後の化学的または生理的なプロセスを介して、コルチコステロイドに変換される、かつ/またはコルチコステロイドを放出する任意の分子が含まれる。
【0047】
本発明のコルチコステロイドプロドラッグによって放出され得るコルチコステロイドの例には、アルクロメタゾン、アムシノニド、アムシナフェル、アムシナフィド、ベクラメタゾン、ベタメタゾン、クロベタゾン、クロロプレドニゾン、クロコルテロン、コルチゾール、C21−デス−メチルプロピオニル−シクレソニド、コルトドキソン、ジフルオロゾン、デスシノロン、デソニド、デフルプレドネート、ジヒドロキシコルチゾン、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、デフラザコート、ジフロラゾン、ジクロリゾン、フルアザコート、フルセトニド、フルクロロニド、フルドロチゾン、フルオロコルチゾン、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノニド、フルオシノロン、フルコルトロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、フルロアンドレノロン、フルランドレノリド、フルオラメトロン、フルチカゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルタメート、ロテプレンドール、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、モメタゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロン、生理学的に許容可能なこれらの塩、これらの誘導体、ならびにこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
特定の実施形態では、コルチコステロイドプロドラッグによって放出されるコルチコステロイドは、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、リメキソロン、およびメドリゾン、生理学的に許容可能なこれらの塩、これらの誘導体、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。特定の好ましい実施形態では、このコルチコステロイドは、デキサメタゾン、生理学的に許容可能なその塩、またはその誘導体である。
【0049】
特定の実施形態では、本発明のコルチコステロイドプロドラッグが、コルチコステロイドの親油性誘導体を含有する。親油性誘導体は、一般に低い拡散係数を示し、そのため、眼の内部に輸送されることはありそうもなく、したがって、該プロドラッグの浸透を制限し、緑内障、白内障、および他の望ましくない生理的な変化の発生を誘導し得る眼の内部組織内でのコルチコステロイドの結果的な放出を制限する。したがって、プロドラッグとしてコルチコステロイドの親油性誘導体を用いることは、望ましくない副作用のリスクを排除する、あるいは少なくとも減少させる。
【0050】
好ましくは、本発明の組成物は、1と12との間に含まれるlogPを有する、ある量のコルチコステロイドの親油性誘導体を含む。より好ましくは、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、5以上12未満(5≦logP<12)である。
【0051】
一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、6と11との間に含まれる。
【0052】
他の一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、7と10との間に含まれる。
【0053】
他の一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、8と9との間に含まれる。
【0054】
一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、5と6との間に含まれる。
【0055】
他の一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、6と8との間に含まれる。
【0056】
他の一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、7と11との間もしくは8と10との間に含まれる。
【0057】
他の一実施形態では、コルチコステロイドの前記親油性誘導体のlogPが、9と11との間に含まれる。
【0058】
好ましくは、親油性誘導体による該コルチコステロイドの放出が、眼の表面において、酵素による切断のような生理的なプロセスを介して生じる。したがって、特定の好ましい実施形態では、コルチコステロイドの親油性誘導体が、酵素のプロセスによって切断され得る化学基を含有する。本発明では、不活性なコルチコステロイドプロドラッグは、眼の表面に存在する酵素によって、眼の表面で活性なコルチコステロイドに変換される。
【0059】
例えば、親油性誘導体は、エステラーゼのファミリーに属する酵素、例えば、偽コリンエステラーゼまたはアセチルコリンエステラーゼなどの作用によって切断可能なエステルを含有していてもよい。
【0060】
本発明のコルチコステロイドプロドラッグの切断を触媒し得る酵素の他の例には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:
【0061】
供与体のCH基、CH
2基、CH−OH基、アルデヒド基、オキソ基、CH−CH基、CH−NH
2基、CH−NH基、硫黄基、リン基、ヒ素基、またはヘム基に作用するオキシドレダクターゼ;NADHまたはNADPHに作用するオキシドレダクターゼ;供与体としての窒素化合物、ジフェノールおよび関連物質、または水素に作用するオキシドレダクターゼ;オキシゲナーゼ;受容体としてのペルオキシドラジカルまたはスーパーオキシドラジカルに作用するオキシドレダクターゼ;供与体としての鉄硫黄タンパク質に作用するオキシドレダクターゼ;
【0062】
1個の炭素基、アルキル基、アリール基、窒素基、アルデヒド基、またはケトン基を転移するトランスフェラーゼ;トランスフェラーゼ;アシルトランスフェラーゼ;グリコシルトランスフェラーゼ;リン、セレン、または硫黄を含有する基を転移するトランスフェラーゼ;
【0063】
炭素−炭素リアーゼ、炭素−酸素リアーゼ、炭素−窒素リアーゼ、炭素−硫黄リアーゼ、炭素−ハライドリアーゼ、またはリン−酸素リアーゼなどのリアーゼ;
【0064】
ラセマーゼおよびエピメラーゼなどのイソメラーゼ;分子内オキシドレダクターゼ;分子内トランスフェラーゼまたは分子内リアーゼ;ならびに
【0065】
炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、炭素−窒素結合、炭素−炭素結合、リン酸エステル結合、または窒素−金属結合を形成するリガーゼ。
【0066】
好ましい酵素は、エステル結合またはエーテル結合に作用するヒドロラーゼ、炭素−窒素結合、炭素−炭素結合、ハライド結合、リン−窒素結合、硫黄−窒素結合、炭素−リン結合、硫黄−硫黄結合、または炭素−硫黄結合に作用するヒドロラーゼ;グリコシラーゼ;ペプチダーゼ;酸無水物に作用するヒドロラーゼである。
【0067】
より好ましい酵素は、エステラーゼである。
【0068】
したがって、特定の好ましい実施形態では、本発明のコルチコステロイドプロドラッグがエステル基を含有する。より好ましくは、コルチコステロイドプロドラッグが、コルチコステロイドの親油性長鎖エステルを含有する。コルチコステロイドの好ましい親油性長鎖エステルは、エステル官能基を含有し、かつ次の化学式、LLC−COO−RもしくはR−COO−LLCのうち1つを有し、このとき、LLCは親油性長鎖であり、Rはコルチコステロイドの部分である。LLCは、任意の好適な親油性長鎖であってよい。例えば、LLCは、長い直鎖状または分枝状のアルキル鎖またはアルケニル鎖、例えば、C4〜C16のアルキル鎖あるいはC12、C14、C16、C18、またはC20の飽和または不飽和のアルケニル鎖などであってもよい。
【0069】
特定の実施形態では、コルチコステロイドプロドラッグがパルミチン酸デキサメタゾンである。パルミチン酸デキサメタゾンは、きわめて低い拡散係数を有し、したがって局所投与後に眼の内部にそれほど浸透しない(C. Civialeら、J. Ocul. Pharm. Ther.、2004、20:75-84)。
【0070】
酵素切断可能な化学基を通しての親油性長鎖とコルチコステロイドの部分との共有結合は、親油性長鎖および/またはコルチコステロイドの分子上に存在する反応性の官能基を利用することによって達成させることができる。これに代えてまたはこれに加えて、反応性の官能基を、親油性長鎖および/またはコルチコステロイドの分子に付加することもできる。反応性の官能基は、これらに限定されるわけではないが、ハロホルミル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、カルボキサミド基、第一級アミン基、第二級アミン基、第三級アミン基、第四級アンモニウムイオン基、アゾ(ジイミド)基、ベンジル基、カルボキシレート基、カルボキシル基、シアネート基、チオシアネート基、エーテル基、エステル基、ハロ基、第一級ケチミン基、第二級ケチミン基、第一級アルジミン基、第二級アルジミン基、イソシアニド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ケトン基、ニトリル基、ニトロ基、ニトロソ基、ペルオキシ基、フェニル基、ホスフィノ基、リン酸基、ホスホノ基、リン酸基、ピリジル基、スルホニル基、スルホ基、スルフィニル基、またはスルフヒドリル基を含む多種多様な化学基から選択することができる。これらの官能基の各々を導入する方法は当技術分野でよく知られており、特定の目的のためにこれらを適用または変更することは当業者の能力の範囲内である(例えば、SandlerおよびKaro(編)、「Organic Functional Group Preparations」、Academic Press:San Diego、1989を参照されたい)。反応性の官能基は、保護されていてもよく、あるいは保護されていなくてもよい。
【0071】
本発明のコルチコステロイドプロドラッグは、当技術分野で知られている方法および手順を用いて合成することができ、あるいは市販の供給源から購入してもよく、製剤および/または投与の前に任意選択で精製することもできる。
【0072】
II−コルチコステロイドプロドラッグの局所組成物
本明細書に記載のコルチコステロイドプロドラッグは、それ自体で、あるいは医薬組成物の形態で投与することができる。したがって、本発明は、少なくとも1種類の有効量の本明細書に記載のコルチコステロイドプロドラッグおよび少なくとも1種類の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または補形剤を含有する医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、医薬組成物を、局所投与用、特に、眼の表面への局所投与用に製剤する。
【0073】
本発明の医薬組成物は、液体または半固体の投与製剤の形態であってもよい。例えば、本発明のコルチコステロイドプロドラッグ組成物を、液剤、分散剤、懸濁剤、乳剤、混合剤、ローション剤、リニメント剤、ゼリー剤、軟膏剤、クリーム剤、ペースト剤、ゲル剤、ハイドロゲル剤、エアロゾル剤、スプレー剤、泡沫剤などとして製剤することができる。本発明の特定の好ましい実施形態では、組成物を、親油性溶剤、陰イオン系乳剤、または陽イオン系乳剤として製剤する。
【0074】
本発明の局所組成物は、一般的な薬務に従って調製することができる(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、E. W. Martin、第18版、1990、Mack Publishing社:Easton、PAならびに「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」、1988、J. SwarbrickおよびJ. C. Boylan(編)、Marcel Dekker社:New Yorkを参照されたく、これらはいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0075】
本発明の局所組成物に組み入れるのに好適な薬学的に許容可能な担体、賦形剤、および/または補形剤は、当業者が特定の用途のために通常通りに選択することができる。こうした担体、賦形剤、および補形剤には、溶剤、緩衝剤、不活性希釈剤、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、保存剤、安定剤、キレート化剤、乳化剤、消泡剤、ゲル化剤、保湿剤などが含まれるが、これらに限定されない。考慮する補形剤特性には、投与の部位での生体適合性および生分解性、目的のプロドラッグとの適合性、および加工温度が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
溶剤の例には、水または精製水;アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール)、植物油、海洋性油、鉱油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、および液体ポリアルキルシロキサン、ならびにこれらの組合せがある。
【0077】
特定の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物を、ポリエチレングリコール(類)を含有する液剤として製剤する。
【0078】
他の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物を、1種類または複数の油性担体を用いて製剤する。好適な油性担体の例には、シリコーン、パラフィンなどの鉱油、または中鎖脂肪酸、ヒマシ油、オリブ油、トウモロコシ油、ダイズ油、パーム油などの植物油、あるいは局所投与に適する他の任意の油が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の組成物のプロドラッグ/油重量比は、約0.04と約0.3との間であってよい。
【0079】
さらに他の実施形態では、本発明の医薬組成物を、水中油型乳剤または油中水型乳剤として製剤する。該乳剤は、水中油型乳剤であることが好ましい。該乳剤は、陰イオン系または陽イオン系であってもよい。
【0080】
該担体が陰イオン系乳剤である場合の実施形態では、前記乳剤が界面膜に覆われた油性の核を有するコロイド粒子を含有し、該界面膜は界面活性剤、脂質、またはその双方を含有する膜であり、該界面膜中の界面活性剤または脂質の少なくとも一部は負に荷電した極性基を有し、該コロイド粒子は負のゼータ電位を有することが好ましいであろう。該プロドラッグが、該組成物の約0.01%〜約10%w/w、例えば約0.5%〜約3%w/w、例えば約2%w/wまたは約1%w/wの量の乳剤中に含有されることが好ましい。該油相は、該組成物の少なくとも約1重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約30重量%、または少なくとも約40重量%であってよい。例えば、特定の好ましい実施形態では、該油は、該組成物の0.5%と5%との間の重量%である。こうした実施形態では、該組成物が、好ましくは該組成物の約0.1%〜約10%w/wの量で、少なくとも1種類の界面活性剤を含有してもよい。該界面活性剤は、リン脂質、ポロキサマー、チロキサポール、ポリソルベート、およびポリエキシエチレン脂肪酸エステルから選択することができる。等張剤、例えば、グリセロールが、該組成物の約0.1%〜約10%w/wの量で該組成物中に含まれていてもよい。
【0081】
該担体が陽イオン系乳剤である場合の実施形態では、前記乳剤が界面膜に覆われた油性の核を有するコロイド粒子を含有し、該界面膜は界面活性剤、脂質、またはその双方を含有する膜であり、該界面膜中の界面活性剤または脂質の少なくとも一部は正に荷電した極性基を有し、該コロイド粒子は正のゼータ電位を有することが好ましいであろう。こうした乳剤は、上記のものと同様であってもよく、例えば塩化セタルコニウムなどの第四級アンモニウム化合物のような陽イオン系界面活性剤から選択される界面活性剤を有する。
【0082】
すでに上述したように、本発明の組成物中に含まれていてもよい他の補形剤には、乳化剤、不活性希釈剤、緩衝剤、懸濁剤、分散剤または湿潤剤、保存剤、キレート化剤、消泡剤、ゲルベース剤または増粘剤、およびこれらの任意の組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
乳化剤の例には、天然に存在するゴム、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン、モノオレイン酸ソルビタン誘導体)、ソルビタンエステル、モノグリセリド、脂肪族アルコール(例えば、セチルアルコール、オレイルアルコール)、および脂肪酸エステル(例えば、脂肪酸のトリグリセリド、セトステアリル硫酸ナトリウム)がある。
【0084】
不活性希釈剤は、ショ糖、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、デンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムであってもよい。
【0085】
緩衝剤の例には、クエン酸、酢酸、乳酸、水素リン酸、ジエチルアミン、水酸化ナトリウム、およびトロメタン(すなわち、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩)が含まれる。
【0086】
好適な懸濁剤には、例えば、天然に存在するゴム(例えば、アカシアゴム、アラビアゴム、キサンタンゴム、およびトラガカントゴム)、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アルギン酸塩、ならびにキトサンがある。
【0087】
分散剤または湿潤剤の例には、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチンまたはダイズレシチン)、脂肪酸とのまたは長鎖脂肪族アルコールとのエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、およびモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)がある。
【0088】
製剤の安定性に影響を及ぼし得る、かつ/または患者内で感染症を引き起こす微生物汚染を予防するために、保存剤を本発明の局所組成物に添加することもできる。好適な保存剤の例には、パラベン類(例えば、メチル、エチル、プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸、ブチル、イソブチル、およびイソプロピルパラベン)、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、安息香酸、安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ブロノポール、ブロニドックス、MDMヒダントイン、ブチルカルバミン酸ヨードプロピニル、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、およびベンジルアルコールが含まれる。
【0089】
キレート化剤の例には、EDTAナトリウムおよびクエン酸が含まれる。
【0090】
消泡剤は、通常、医薬組成物の製造を容易にし、気相液相界面を不安定にすることによって泡沫を消し、液体を空気溜りから流出させる。消泡剤の例には、シメチコン、ジメチコン、エタノール、およびエーテルが含まれる。
【0091】
ゲルベース剤または増粘剤の例には、液体パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイド状のシリカまたはアルミニウム、グリセロール、プロピレングリコール、炭酸プロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、親水性ポリマー(例えば、デンプン誘導体またはセルロース誘導体)、水膨潤性親水コロイド、カラギーナン、ヒアルロン酸塩、アルギン酸塩、およびアクリル酸塩がある。
【0092】
本発明の特定の実施形態では、該組成物の1種類または複数の成分の局所的な放出制御を提供するために、局所組成物を製剤する。眼への局所投与用に好適な薬学的に許容可能な任意の担体賦形剤または製剤を用いることができる。徐放製剤の例には、ポリマー製剤(例えば、小胞またはリポソーム)および微小粒子(例えば、マイクロスフェアまたはマイクロカプセル)が含まれる。
【0093】
本発明の組成物の1種類または複数の成分の放出制御を提供するために、多種多様な生分解性物質を用いることができる。該放出制御物質は、生体適合性であるべきであり、この物質が投与の部位から自然な組織のプロセスによって好適な時間内で除去されるように、薬学的に許容可能な様式でin situで安全に分解、溶解、または吸収されるべきである。該放出制御担体は、いかなる望ましくない局所組織反応も引き起こすべきでなく、あるいは全身毒性または局所毒性を誘発するべきでない。
【0094】
本発明の局所組成物の製剤に用いるために好適な放出制御生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、多糖、ポリホスファゼン、タンパク質性ポリマーおよびその可溶性誘導体(例えば、ゲル化生分解性合成ポリペプチド、アルキル化コラーゲン、およびアルキル化エラスチン)、多糖の可溶性誘導体、ポリペプチド、ポリエステル、およびポリオルトエステルを含有してもよい。
【0095】
これらの製剤の薬物動態学的な放出プロファイルは、所望の期間にわたり所望の治療効果を提供するために、1次、0次、2相、または多相であってよい。所望の放出プロファイルは、異なる放出率、および/またはコルチコステロイドプロドラッグまたは生理学的に許容可能なその塩の異なる%配合を有するポリマーの混合物を用いて達成することができる。リポソーム、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルの製造のための方法は、当技術分野でよく知られている。
【0096】
特定の実施形態では、本発明の局所組成物が、少なくとも1種類の追加の治療薬をさらに含有する。好適な治療薬には、それを眼の表面に局所投与することが該組成物を投与する対象者に有益なあらゆる薬剤が含まれる。
【0097】
好適な治療薬は、鎮痛薬、麻酔薬、弛緩薬、ホルモン、抗炎症薬、ビタミン、ミネラル、抗血管新生薬、創傷治癒薬、サイトカイン、成長因子、抗ヒスタミン薬、抗細菌薬、抗ウイルス薬、抗生物質、止痒薬、解熱薬などが含まれるがこれらに限定されない多様な種類の薬剤の中に見いだすことができる。
【0098】
例えば特定の実施形態では、本発明の組成物は、1種類または複数の抗ウイルス薬を含有する。好適な抗ウイルス薬には、イドクスウリジン、トリフルオロチミジン、トリフルオロウリジン、アシクロビル、ガンシクロビル、シドホビル、インターフェロン、DDI、AZT、ホスカメット、ビダラビン、イルバビリンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0099】
他の実施形態では、追加の該治療薬を非ステロイド系抗炎症薬から選択する。好適な非ステロイド系抗炎症薬の例には、アンフェナク、ケトロラク、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカム、および他のCOX2阻害剤;サイトカイン、インターロイキン、および成長因子上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、色素上皮成長因子、血小板由来成長因子、トランスフォーミング成長因子β、毛様体神経栄養成長因子、神経膠由来神経栄養因子、NGF、EPO、PLGF、脳神経成長因子(BNGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、およびモノクローナル抗体、またはこうしたサイトカインおよび成長因子の活性を抑制するタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0100】
さらに他の実施形態では、該治療薬は抗血管新生薬を含有する。抗血管新生薬の例には、アネコルタブ、コンブレタスタチン、血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、スクアラミン、AdPEDF、VEGFトラップ;ミコフェノール酸、ムラミルジペプチド、シクロスポリン、インターフェロン、インターロイキン2、サイトカイン、タクロリムス、腫瘍壊死因子、ペントスタチン、チモペンチン、トランスフォーミング因子β
2、エリスロポエチンを含む群から選択される免疫応答調節剤;抗新生タンパク質;抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)または抗体断片、オリゴアプタマー、アプタマー、および遺伝子断片(オリゴヌクレオチド、プラスミド、リボザイム、低分子干渉RNA(SiRNA)、核酸フラグメント、ペプチド)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
さらに他の実施形態では、該治療薬を、抗生物質(例えば、アミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリンなど);抗真菌薬(例えば、ポリエン抗生物質、イミダゾールおよびトリアゾール、アリルアミン);眼圧降下薬(例えば、αアドレナリン作動性アゴニスト、βアドレナリン作動性遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬、カンナビノイド、誘導体およびプロドラッグ);抗アレルギー化合物(例えば、オラパタジン、ケトチフェン、アゼラスチン、エピナスチン、エメダスチン、レボカバスチン、テルフェナジン、アステミゾール、およびロラタジン);生物学的製剤(例えば、抗体または抗体断片、オリゴアプタマー、アプタマーおよび遺伝子断片、オリゴヌクレオチド、プラスミド、リボザイム、低分子干渉RNA、核酸断片、ペプチドおよびアンチセンス配列);成長因子(例えば、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、トランスフォーミング成長因子β、毛様体神経栄養成長因子、神経膠由来神経栄養因子、NGF、EPO、およびPIGF);免疫調節剤(例えば、グルココルチコイド、イムノフィリンに作用する薬剤、インターフェロン、オピオイド);細胞静止薬(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、および細胞毒性抗生物質);酸化防止剤(例えば、αトコフェロール、アスコルビン酸、レチノイン酸、ルテイン、およびこれらの誘導体、前駆体、またはプロドラッグ);UVフィルター化合物(例えば、ベンゾフェノン);抗発赤薬(例えば、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、エフェドリン、およびフェニレフリン);脂肪酸(例えば、オメガ3脂肪酸)など、ならびにこれらの任意の組合せの中から選択することもできる。
【0102】
本発明の医薬組成物は、投与の容易性および用量の統一のために用量単位形態で製剤することもできる。本明細書中で用いる「単位用量形態」という用語は、患者を治療するための、(薬学的活性物質を任意選択で含有する)コルチコステロイドプロドラッグ組成物の物理的に個別の量のことをいう。しかし、本発明の組成物の1日の合計の使用は、主治医によって適切な医学的な判断の範囲内で決定されるであろうことは理解されよう。
【0103】
特定の実施形態では、本発明の組成物を、例えば接眼レンズなどの、眼に適用できる装置と結合させる、該装置にコーティングする、あるいは該装置内に組み込む。
【0104】
III−適応および投与
本発明の医薬組成物を、ヒトまたは動物の眼の治療のための方法において用いることもできる。
【0105】
一態様では、本発明の医薬組成物を、前記眼の表面への前記組成物の局所投与を通して眼の炎症性疾患を治療するための方法において用いることもできる。
【0106】
他の一態様では、本発明の医薬組成物を、眼圧のような、コルチコステロイドの局所投与に関連した副作用を減少させるために用いることもできる。
【0107】
他の一態様では、本発明は、眼の疾患または異常、特に、眼の表面に影響している眼の疾患または異常の治療のための方法に関する。このような方法には、本明細書中に記載のような有効量のコルチコステロイドプロドラッグまたはその医薬組成物を対象者の眼表面に局所的に投与するステップが含まれる。前記方法の結果として、眼におけるコルチコステロイドプロドラッグまたはコルチコステロイド、あるいは双方の浸透がわずかになる。
【0108】
本発明の方法は、眼の炎症疾患の治療において特に有用である。眼の炎症疾患は、外傷(例えば、外科手術、レーザー法、または偶発的な機械的作用)、感染症、アレルギー、化学的接触、または他の原因から結果として生じ得る。あるいは、眼炎症が、眼の疾患または異常の兆候のうちの1つであってもよい。眼炎症は、全身性の疾患または障害の兆候のうちの1つであってもよく、あるいは全身性の疾患または障害に伴ってもよい。
【0109】
眼の疾患または異常は、緑内障、角膜炎などの眼の炎症性疾患、ブドウ膜炎、眼内の炎症、アレルギーおよびドライアイ症候群の眼感染症、眼アレルギー、眼感染症、癌腫瘍、角膜から生じる血管新生、網膜浮腫、黄斑浮腫、糖尿病網膜症、未熟児網膜症、網膜の変性疾患(黄斑変性症、網膜ジストロフィー)、ならびにグリア増殖に伴う網膜疾患などのような多種多様な眼の疾患のいずれであってもよい。
【0110】
眼の症状発現を伴う全身性の疾患または障害の例には、急性後部多発性小板状色素上皮症、強直性脊椎炎、ベーチェット病、散弾状網脈絡膜症、ブルセラ症、単純ヘルぺス、帯状ヘルペス、炎症性腸疾患、若年性関節リウマチ、川崎病、レプトスピラ症、ライム病、多発性硬化症、推定眼ヒストプラスマ症候群、乾癬性関節炎、ライター症候群、サルコイドーシス、梅毒、全身紅斑性狼蒼、トキソカラ症、トキソプラズマ症、結核、フォークト−小柳−原田症候群、およびホイップル病が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本発明による治療は、単一用量またはある期間にわたる複数用量からなっていてもよい。投与は、毎日、毎週(またはその他何日かの複数日の間隔で)、あるいは周期的な日程計画で、1回または複数回であってよい。
【0112】
適正用量の最適化は、臨床試験において観察される薬物動態学的データに鑑み、当業者によって容易になされ得る。最終的な用量計画は、薬剤の作用を変える多様な因子、例えば、薬剤の固有の活性、疾患または異常の重症度および患者の反応性、患者の年齢、健康状態、体重、性別、および制限食、存在するあらゆる感染症の重症度、投与の時間、併用療法の使用(または不使用)、ならびに他の臨床上の因子などを考慮しながら、主治医によって決定されるであろう。本発明の組成物を用いて試験が行われるにつれて、適正な用量レベルおよび治療の期間に関してさらなる情報が明らかになるであろう。
【0113】
本発明の医薬組成物を、単独で、あるいは他の療法と併用して採用できることは理解されよう。本発明の方法には、有効量の治療薬を対象者に投与するステップがさらに含まれてもよい。この治療薬は、該コルチコステロイドプロドラッグの医薬組成物の投与前に、投与と同時に、または投与後に投与することができる。このような併用療法で用いる療法(治療薬または方法)の特定の組合せには、所望の治療薬および/または方法ならびに達成される所望の治療薬の効果の適合性が考慮されるであろう。
【0114】
例えば、本発明の医薬組成物を、眼の手術後に対象者に投与することもできる。こうした実施形態では、コルチコステロイドプロドラッグの投与により、術後の炎症を予防または減少させることができる。眼の手術方法の例には、レーザー手術;白内障手術;緑内障手術(例えば、カナロプラスティー)、屈折手術(例えば、角膜切削形成術、自動化された層状角膜移植術、レーザー角膜切削形成術すなわちLASIK、光学的角膜切除術、レーザー角膜熱形成術、伝導性角膜形成術、および乱視矯正角膜切開術);角膜手術(例えば、角膜移植手術、全層角膜移植術、および光線療法角膜切除術);硝子体網膜手術(例えば、硝子体切除術、網膜剥離修復術、および黄斑円孔修復術);眼筋手術;眼形成手術;眼瞼手術;眼窩手術;ならびに他の眼科手術法が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
他の一例では、眼の表面に望ましくない影響、例えば炎症、刺激、そう痒、発赤、疼痛などを引き起こす薬剤または薬剤の組合せを投与している対象者に、本発明の医薬組成物を投与することもできる。これらの影響は、その薬剤(または薬剤の組合せ)の全身投与または局所投与の結果として生じたものであってよい。こうした実施形態では、本発明のコルチコステロイドプロドラッグの医薬組成物の投与により、これらの望ましくない副作用を予防または減少させることができる。
【0116】
したがって、本発明の医薬組成物は、眼の表面への望ましくない作用を有する多種多様な薬剤のうちの任意のものと併用して投与することができる。特定の実施形態では、該医薬組成物を該薬剤と(例えば、同時または同日中に)併用投与する。これに代えてまたはこれに加えて、対象者の眼への望ましくない副作用の発生を予防または減少させるために、該医薬組成物を、該薬剤の投与前(例えば、数日前または数週間前)に投与する。
【0117】
該治療薬は、全身的に、あるいは対象者の眼表面に投与することができる。
【0118】
他剤によって引き起こされる望ましくない作用の予防または減少のためにコルチコステロイドプロドラッグを用いることは、例えば、シクロスポリンを必要とする治療の場合に特に好都合である。シクロスポリンは、ドライアイの治療で涙液産生を増加させるために必要である(シクロスポリンの眼用乳剤は、商品名Restasis(商標)のもとでAllergan社から市販されている)。こうした治療に伴う副作用には、霧視、眼の焼けつくようなまたは刺すような痛み、眼脂、眼のそう痒感、過剰な流涙、眼の不快感または眼痛、および眼の周りの腫脹が含まれる。シクロスポリンとコルチコステロイドとの併用によってこれらの副作用のリスクが低下することが示されている。
【0119】
したがって、該治療薬はシクロスポリンであってもよい。シクロスポリンの投与前、例えば、シクロスポリンの投与の2日前、5日前、または1週間前に、本発明の医薬組成物を投与することが好ましい。
【0120】
IV−医薬パックまたは医薬キット
他の一態様では、本発明は、医薬パックまたは医薬キットに関する。本発明の医薬パックまたは医薬キットには、本発明の組成物の1種類または複数の成分が入っている1種類または複数の容器(例えば、バイアル、アンプル、試験管、フラスコ、または瓶)が含まれ、対象者への該組成物の投与を可能にする。こうした容器は、ガラス、プラスチック素材、樹脂などで作ることができる。これらは透明であってもよく、あるいは、活性成分が光に直接露出されるリスクを防止または減少させるために、これらは有色または不透明であってもよい。特定の実施形態では、容器は、調節された量(例えば、一滴)の本発明の組成物の投与を可能にする形態である。他の実施形態では、容器は、調節された量の本発明の組成物の投与を可能にするシステム(例えば、スポイト)を備える。
【0121】
医薬パックまたは医薬キットの種々の成分を、液体の形態で、あるいは固体の形態で(例えば、凍結乾燥して)提供することもできる。一般に、各成分を、その各々の容器に等分して、あるいは濃縮した形態で提供するのが好適であろう。医薬パックまたは医薬キットには、凍結乾燥した成分の再構成のための媒質が含まれていてもよい。キットの個々の容器を、市販用に密封で維持することが好ましいであろう。
【0122】
特定の実施形態では、医薬パックまたは医薬キットには、1種類または複数の上記のような追加の承認された治療薬が含まれる。こうした容器には、医薬製品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制している政府機関によって規定される形態の注意書きまたは添付文書を任意選択で付随させることができ、その注意書きには、ヒト投与のための製造、使用、または販売の機関による承認が反映される。この注意書きまたは添付文書には、本明細書中に開示の方法による医薬組成物の使用についての説明が含まれていてもよい。
【0123】
識別子、例えば、バーコード、無線周波数、IDタグなどが、該キットの中または上に存在してもよい。この識別子は、例えば、品質管理、在庫管理、ワークステーション間の移動の追跡などの目的で該キットを独自に識別するためなどに用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下の実施例には、本発明を製造および実施する好ましい様式の一部を記載する。しかし、これらの実施例は単に例示目的のためのものであって、本発明の範囲を限定することを意味するものではないことを理解されたい。さらに、実施例における記載が過去形で表されていない限り、その本文は、本明細書の他の部分と同様に、実験が実際に行われたこと、あるいはデータが実際に得られたことを示唆することを意図しない。
【0125】
実施例1:0.16%のパルミチン酸デキサメタゾン局所乳剤
以下の表(表1)は、本発明のパルミチン酸デキサメタゾン(DP)局所乳剤の組成物を示す。
【表1】
【0126】
表2は、該パルミチン酸デキサメタゾン(DP)局所乳剤の規格を示す。
【表2】
【0127】
実施例2:0.05%のシクロスポリンAと併用される0.16%のパルミチン酸デキサメタゾン局所乳剤
表3は、シクロスポリンAを含有するパルミチン酸デキサメタゾン(DP)局所乳剤の組成物を示す。
【表3】
【0128】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討または本明細書中に開示の本発明の実施から当業者に明らかであろう。本明細書および実施例は、添付の特許請求の範囲によって示している本発明の実際の範囲と共に、単に例示のためのものとしてみなされることが意図される。