特許第6762866号(P6762866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762866
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】タンク解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   E04G23/08 J
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-249663(P2016-249663)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-104911(P2018-104911A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】安永 正道
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−324544(JP,A)
【文献】 特開平10−061214(JP,A)
【文献】 特開2000−255681(JP,A)
【文献】 特開平10−008740(JP,A)
【文献】 米国特許第04965922(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
B65D 88/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と前記底板から上方に延在する側壁とを備えるタンクを解体するタンク解体方法であって、
前記側壁が前記底板から切り離された状態で、前記底板を含む基礎部と前記側壁との間に設置された楔部によって、前記側壁の重量による荷重を支持する支持工程と、
前記楔部を前記基礎部と前記側壁との間から抜き出す方向に移動させ、前記側壁を降下させる降下工程と、を備え
前記降下工程では、
前記側壁に沿って延在し前記基礎部に固定されるガイド材が設置され、
前記楔部の傾斜面と前記ガイド材との間に前記側壁の下端部が位置する、タンク解体方法。
【請求項2】
前記支持工程は、
前記側壁の下端部に切欠きを形成する切欠き形成工程と、
前記切欠きの縁部と前記基礎部との間に前記楔部を挿入する楔部設置工程と、
前記側壁の前記下端部のうち前記切欠き以外の部分を除去する下端部除去工程と、を有する請求項1に記載のタンク解体方法。
【請求項3】
前記支持工程では、
前記側壁が前記基礎部から離間した状態になり、
前記降下工程では、
前記側壁が前記基礎部に到達するまで下方に移動する、請求項1又は2に記載のタンク解体方法。
【請求項4】
前記支持工程では、
前記側壁の少なくとも一部が前記基礎部に接触した状態になり、
前記降下工程では、
前記側壁の重量が前記基礎部で支持される状態になるまで前記側壁が前記基礎部との接触部位を中心として傾倒方向に回動する、請求項1又は2に記載のタンク解体方法。
【請求項5】
前記支持工程と前記降下工程とが交互に繰り返し実行される、請求項1〜4の何れか1項に記載のタンク解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンク側板を解体するタンク解体工法が記載されている。このタンク解体工法では、タンク側板の下端部分における複数箇所を門型に切断して撤去することでタンク側板に切欠部を形成し、その切欠部にジャッキを配置してタンク屋根及びタンク側板を支え得るようにジャッキアップして初期状態を準備する。その状態で、タンク側板の残存部を切欠部の上端より高い位置まで切断して撤去することにより、ジャッキに支えられている部分を新たな残存部とし、ジャッキダウンした上で新たな残存部の間に別のジャッキを配置する。新たな残存部の間に配置した別のジャッキを、タンク屋根及びタンク側板を支え得るようにジャッキアップし、これ以降は初期状態からの作業手順を繰り返してタンク側板を解体する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−324544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなタンク解体工法では、初期状態において複数の切欠部のそれぞれにジャッキを配置し、当該ジャッキにより支えられている部分のそれぞれを新たな残存部としたときには新たな残存部の間にもジャッキを配置する。そのため、多数のジャッキを用いることとなり、作業に用いる装置全体が大掛かりである。また、初期状態では、多数のジャッキのうちの一部によってタンク屋根及びタンク側板を支えており、初期状態でジャッキに支えられている部分を新たな残存部としたときには、多数のジャッキのうちの残部によってタンク屋根及びタンク側板を支えている。そのため、タンク屋根及びタンク側板の荷重を安定して支持するためには、一部のジャッキのみで当該荷重を支持し得るように、各ジャッキが十分な能力を備えていることが求められる。したがって、装置全体が一層大掛かりとなる。
【0005】
そこで、本発明は、大掛かりな装置を用いることなくタンクを解体することが可能なタンク解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るタンク解体方法は、底板と底板から上方に延在する側壁とを備えるタンクを解体するタンク解体方法であって、側壁が底板から切り離された状態で、底板を含む基礎部と側壁との間に設置された楔部によって、側壁の重量による荷重を支持する支持工程と、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁を降下させる降下工程と、を備える。
【0007】
本発明に係るタンク解体方法によれば、基礎部と側壁との間に設置された楔部によって側壁の重量による荷重を支持する。また、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させることで側壁を降下させる。したがって、側壁の重量による荷重を支持した状態で、側壁を降下させることができる。これにより、例えばジャッキによって側壁の荷重を支持する場合と比較して簡易な構成でタンクの解体作業を行うことができ、大掛かりな装置を用いることなくタンクを解体することが可能となる。
【0008】
本発明に係るタンク解体方法において、支持工程は、側壁の下端部に切欠きを形成する切欠き形成工程と、切欠きの縁部と基礎部との間に楔部を挿入する楔部設置工程と、側壁の下端部のうち切欠き以外の部分を除去する下端部除去工程と、を有していてもよい。この場合、楔部設置工程では切欠きによって楔部を設置する場所を確保でき、下端部除去工程では側壁の下端部のうち切欠き以外の部分を除去するため、除去作業を簡易に行うことができる。したがって、一層簡易な構成によってタンクの解体作業を行うことができる。
【0009】
本発明に係るタンク解体方法は、支持工程では、側壁が基礎部から離間した状態になり、降下工程では、側壁が基礎部に到達するまで下方に移動してもよい。支持工程では、側壁の重量全体が楔部によって支持され、側壁が基礎部から離間した状態となる。また、降下工程では、上記の状態から楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁が基礎部に到達するまで、側壁の重量による荷重を支持した状態で側壁を降下させる。
【0010】
本発明に係るタンク解体方法は、支持工程では、側壁の少なくとも一部が基礎部に接触した状態になり、降下工程では、側壁の重量が基礎部で支持される状態になるまで側壁が基礎部との接触部位を中心として傾倒方向に回動してもよい。この場合、基礎部と楔部とによって側壁の重量による荷重を支持することができ、側壁と基礎部とが接触していない場合と比較して楔部の負担する荷重を低減することができる。したがって、楔部の数量を少なくすることができる。
【0011】
本発明に係るタンク解体方法は、支持工程と降下工程とが交互に繰り返し実行されてもよい。この場合、側壁の下端部の除去と側壁の降下とが繰り返されることで、側壁が下端から少しずつ解体されていく。
【0012】
本発明に係るタンク解体方法は、降下工程では、側壁に沿って延在し基礎部に固定されるガイド材が設置され、楔部の傾斜面とガイド材との間に側壁の下端部が位置してもよい。この場合、側壁がガイド材に沿って降下する。
【0013】
本発明の別の側面に係るタンク解体方法は、底板と底板から上方に延在する側壁とを備えるタンクを解体するタンク解体方法であって、側壁が底板から切り離された状態で、交互に繰り返し実行される支持工程と降下工程とを備え、支持工程は、側壁の下端部に切欠きを形成する切欠き形成工程と、切欠きの縁部と底板を含む基礎部との間に楔部を挿入する楔部設置工程と、側壁の下端部のうち切欠き以外の部分を除去することによって側壁が基礎部から離間された状態とする下端部除去工程と、を有し、降下工程は、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁を基礎部に到達するまで下方に移動させる。
【0014】
本発明に係るタンク解体方法によれば、支持工程では、側壁の下端部に形成された切欠きの縁部と基礎部との間に挿入された楔部によって側壁の重量による荷重を支持する。また、降下工程では、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁を基礎部に到達するまで降下させる。したがって、側壁の重量による荷重を楔部が支持した状態で側壁を降下させることができると共に、側壁が基礎部に到達して安定した状態で側壁の下端部のうち切欠き以外の部分を除去することができる。このような支持工程及び降下工程を交互に繰り返し実行するため、簡易な構成でタンクの解体作業を行うことができる。以上により、大掛かりな装置を用いることなくタンクを解体することが可能となる。
【0015】
本発明の更に別の側面に係るタンク解体方法は、底板と底板から上方に延在する側壁とを備えるタンクを解体するタンク解体方法であって、側壁が底板から切り離された状態で、繰り返し実行される第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程、を備え、第1領域支持工程は、側壁の下端部の第1領域に切欠きを形成する切欠き形成工程と、切欠きの縁部と底板を含む基礎部との間に楔部を挿入する楔部設置工程と、側壁の下端部の第1領域のうち切欠き以外の部分を除去し、側壁の重量によって第1領域に作用する荷重が楔部で支持された状態とする下端部除去工程と、を有し、第1領域降下工程は、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁の重量が基礎部で支持される状態になるまで側壁を第1領域側へ回動させ、第2領域支持工程は、側壁の下端部の第2領域に切欠きを形成する切欠き形成工程と、切欠きの縁部と基礎部との間に楔部を挿入する楔部設置工程と、側壁の下端部の第2領域のうち切欠き以外の部分を除去し、側壁の重量によって第1領域に作用する荷重が楔部で支持された状態とする下端部除去工程と、を有し、第2領域降下工程は、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させ、側壁の重量が基礎部で支持される状態になるまで側壁を第2領域側へ回動させる。
【0016】
本発明に係るタンク解体方法によれば、側壁が底板から切り離された状態で、第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程が繰り返し実行される。第1領域支持工程では、側壁の第1領域の下端部に形成された切欠きの縁部と基礎部との間に楔部を挿入し、側壁の第1領域の下端部のうち切欠き以外の部分を除去し、側壁の重量によって第1領域側に作用する荷重を楔部で支持する。第1領域降下工程では、楔部を基礎部と側壁との間から抜き出す方向に移動させることで側壁が第1領域側の基礎部に到達するように回動させる。側壁が第1領域側の基礎部に到達した状態で、第2領域支持工程及び第2領域降下工程によって、第2領域側でもこの第1領域支持工程及び第1領域降下工程と同様の作業を行う。これにより、第1領域支持工程及び第2領域支持工程のそれぞれにおいて、基礎部と楔部とによって側壁の重量による荷重を支持することができ、側壁と基礎部とが接触していない場合と比較して楔部の負担する荷重を低減することができる。したがって、楔部の数量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、大掛かりな装置を用いることなくタンクを解体することが可能なタンク解体方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るタンク解体方法が適用されるタンクを示す部分断面側面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第1実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第1実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第1実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図5図5は、図3(a)に示す領域Vを拡大した断面図である。
図6図6は、図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7(a)は、本発明の第2実施形態に係るタンク解体方法の切断線を示す側面図である。図7(b)は、図7(a)に示すVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第2実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、第2実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、第2実施形態に係る各工程を示す側面図である。
図11図11は、第2実施形態に係る各工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当する部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るタンク解体方法が適用されるタンクを示す部分断面側面図である。タンク1は、例えば、LNG(液化天然ガス:Liquefied Natural Gas)を貯蔵する地上式のLNGタンクである。タンク1は、例えば、容量2.5万KL〜14.0万KL、内径36.0m〜79.4m、液深24.3m〜30.3mの構造を有する大型タンクである。ただし、タンクは地上式のLNGタンクに限定されない。本実施形態に係るタンク解体方法は、例えば、石油、LPG(液化石油ガス:Liquefied petroleum Gas)等を貯蔵するタンクを解体する場合にも適用することができる。
【0021】
図1に示されるように、タンク1は、コンクリート製の基礎スラブ2上に設けられている。タンク1は、基礎スラブ2を介して、地盤G及び地盤Gに先端が埋設された複数の杭3に支持されている。タンク1は、底板4と、側壁5と、屋根6と、を備えている。
【0022】
底板4及び側壁5は、LNGを貯蔵するための貯蔵空間Sを形成している。底板4及び側壁5は、例えば鋼板によって構成されている。底板4は、基礎スラブ2の上面に沿うように設けられている。底板4は、平面視円形状に形成されている。側壁5は、鉛直な筒軸をもつ円筒形状を呈し、底板4から上方に延在している。側壁5の下端部5aは、例えば、溶接等により底板4に接合されている。側壁5の上端部5bには、上方に開口する開口部が形成されている。側壁5の上端部5bの開口部は、貯蔵空間Sを覆うドーム状の屋根6によって塞がれている。
【0023】
上記の構造を備えるタンク1を解体するタンク解体方法について説明する。以下の説明において、単に「径方向」、「周方向」等と言うときは、円筒形状の側壁5の径方向、周方向を意味するものとする。図2図4は、第1実施形態に係る各工程を示す側面図である。第1実施形態に係るタンク解体方法は、支持工程と、降下工程と、を備える。
【0024】
<支持工程>
まず、図2(a)に示されるように、側壁5を底板4から切り離す(分断工程)。具体的には、底板4に接合されている側壁5の下端部5aの接合箇所を、例えば、ガス切断により切断する。側壁5は、下端部5aの全周に亘って底板4から切り離される。以下、側壁5と分断された、地盤G、基礎スラブ2、杭3、及び底板4を含む部分を基礎部7と言う。続いて、側壁5の下端部5aに切欠き51を形成する(切欠き形成工程)。切欠き51は、例えば、ガス切断により側壁5の下端部5aを切断して形成される。側壁5には、下端部5aの全周に亘って一定の間隔をおいて複数の切欠き51が配列される。複数の切欠き51は、例えば、互いに10mの間隔をおいて配列される。切欠き51は、少なくとも水平な上縁部51sをもつように形成される。切欠き51は、例えば矩形状を呈している。切欠き51の幅は、例えば、1.0mであり、切欠き51の高さは、例えば、1.4mである。ただし、切欠き51の寸法及び形状は、任意に変更してよい。
【0025】
次に、図2(b)に示されるように、切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に楔部8を挿入する(楔部設置工程)。楔部8は、切欠き51に対してタンク1の外側からタンク1の内側に向かって挿入されて、切欠き51に設置される。具体的には、楔部8は、後述する傾斜面83sが切欠き51の上縁部51sに接触するまでタンク1の中心に向かって径方向に押し込まれ、楔部8が上縁部51sと底板4の上面4sとで挟み込まれた状態になる。楔部8は、複数形成された切欠き51の全てに設置される。なお、楔部8の詳細な構成については後述する。
【0026】
次に、図3(a)及び図3(b)に示されるように、側壁5の下端部5aのうち切欠き51以外の部分である切断部分52を除去する(下端部除去工程)。切断部分52は、互いに隣り合う切欠き51同士の間の区間であって、例えば、側壁5の下端縁から一定の上下幅をもつ区間である。切断部分52の上下幅は、切欠き51の高さよりも小さく、例えば1.0mである。ここでは、側壁5の下端部5aの全周に亘って、互いに隣り合う切欠き51同士の間に位置する複数の切断部分52を除去する。具体的には、切欠き51の上縁部51sよりも少し低い位置(例えば、側壁5の下端縁から1.0mの高さ位置)において、切欠き51同士の間の側壁5を、例えば、ガス切断により周方向に切断する。また、切断された切断部分52を撤去する。
【0027】
下端部除去工程において全ての切断部分52が除去されると、側壁5の全体が複数の楔部8の上に載置され底板4から離間した状態(すなわち、基礎部7から離間した状態)になる。以上により行われる支持工程によって、図3(b)に示されるように、側壁5が底板4から切り離された状態で、基礎部7と側壁5との間に設置された複数の楔部8によって、側壁5の重量による全荷重が支持される。
【0028】
<降下工程>
続けて、図4(a)に示されるように、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出す方向に移動させる。具体的には、楔部8を底板4と側壁5との間からタンク1の径方向外側に移動させる。このとき、側壁5の全周に亘って設置された楔部8を同じ速度で径方向外側に移動させてもよい。楔部8を上記のように移動させることで、切欠き51の上縁部51sが楔部8の傾斜面83s上を摺動し、側壁5全体が徐々に降下する。そして、側壁5の下端縁が基礎部7の底板4に到達したところで、楔部8の移動を停止し、降下工程が終了する。降下工程の終了時には、残存する側壁5の全重量が基礎部7で直接支持された状態となる。なお、楔部8は、側壁5が基礎部7の底板4に到達するまで、切欠き51の上縁部51s(側壁5)と底板4とに接触している状態である。
【0029】
以上説明した支持工程、及び降下工程が行われた後に、次の支持工程が開始される。すなわち、図4(b)に示されるように、残存する側壁5の下端部5aにおいて、切欠き51が上方に延長されるように形成される。そして、当該切欠き51に楔部8が押し込まれ、切断部分52が除去されることで、再び、複数の楔部8によって側壁5全体が支持された状態となる(支持工程)。以下、降下工程と支持工程とが交互に繰り返されることで、側壁5が下端から少しずつ除去されていく。このように、同様の支持工程と降下工程とが繰り返し実行され、側壁5の上端部5bまで除去されることで、本実施形態のタンク解体方法が完了する。ただし、2回目以降の支持工程においては、分断工程は行わなくてよい。また、分断工程は、1回目の支持工程における下端部除去工程が完了する前までに行われていればよい。
【0030】
ここで、楔部8の周囲の構成について説明する。図2図4では詳細な図示が省略されているが、支持工程及び降下工程を安全に実行するために、図5に示されるような楔式治具10が用いられる。図5に示されるように、楔式治具10は、前述した楔部8とガイド材9とを有する。図5は、図3(a)に示す領域Vを拡大した断面図である。図6は、図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
【0031】
楔部8は、前述したように側壁5の重量による荷重を支持する。図5及び図6に示されるように、楔部8は、下方材81と、鉛直材82と、斜材83と、を備えている。下方材81、鉛直材82、及び斜材83のそれぞれは、例えば、鉄骨材によって構成されている。鉄骨材として、例えば、H型鋼を採用することができる。
【0032】
楔部8は、下方材81、鉛直材82、及び斜材83によって略直角三角形状に形成されている。下方材81及び鉛直材82と、下方材81及び斜材83と、鉛直材82及び斜材83とは、例えば、溶接、ボルト接合等により互いに接合されている。下方材81及び鉛直材82は、例えば直角をなすように接合されている。下方材81及び斜材83と、鉛直材82及び斜材83とは、例えば45°の角度をなすように接合されている。タンク解体方法によるタンク1の解体作業をタンク1の外側から行うことができるように、下方材81と斜材83との接合箇所がタンク1の内側に位置し、鉛直材82がタンク1の外側に位置するように、楔部8が切欠き51に設置されている。
【0033】
下方材81は、底板4上に設置され底板4上を径方向に沿って延びている。鉛直材82は、下方材81の径方向における一端部から上方に延びている。斜材83は、径方向における下方材81の他端部と鉛直材の上端部とを連結している。斜材83の上面が、前述のように切欠き51の上縁部51sに当接される傾斜面83sであり、傾斜面83sは底板4及び側壁5に対して45°の角度をなす。楔部8の傾斜面83sは、タンク1の外側からタンク1の内側に向かうにつれて下降するように形成されている。楔部8が切欠き51に設置された状態において、斜材83の傾斜面83sと切欠き51の上縁部51sとが接触し、楔部8が側壁5の重量による荷重を支持することができる。
【0034】
また、楔部8の下方材81における一端部には、下方材81に沿って延びる引抜き部材84が設けられている。引抜き部材84は、引張力を付与することで引き抜き操作を行うための部材によって構成され、例えば、ハンドル、ジャッキ等である。タンク解体方法における降下工程において、引抜き部材84により引き抜き操作を行い、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出すように径方向外側に移動させることができる。また、引抜き部材84がハンドル又はジャッキである場合には、楔部8の移動速度及び移動量を調整しやすい。
【0035】
ガイド材9は、タンク解体方法における降下工程において、側壁5の径方向への移動を規制すると共に、側壁5の下方への移動をガイドする。また、ガイド材9は、降下工程における楔部8の径方向への移動をガイドする。ガイド材9は、一対の水平材91と、一対の鉛直材92と、を備えている。一対の水平材91、及び一対の鉛直材92のそれぞれは、例えば、鉄骨材によって構成されている。鉄骨材として、例えば、H型鋼を採用することができる。また、一対の水平材91の高さは、切断部分52の高さと切欠き51の高さとの差よりも小さくてもよい。このような構成のH型鋼として、例えば、H−300を採用してもよい。これにより、タンク解体方法の降下工程において、ガイド材9を設置した状態で、側壁5がガイド材9と干渉することなく基礎部7の底板4に到達することができる。
【0036】
一対の水平材91は、底板4上に設置され径方向に延在している。一対の水平材91は、楔部8の底板4上の径方向の移動をガイドするため、楔部8の下方材81を挟んで下方材81に沿って延びている。水平材91は、例えば、溶接、ボルト接合等により底板4に接合されて固定されている。固定された水平材91の略中央部の上方に側壁5が位置する。一対の鉛直材92は、例えば、溶接、ボルト接合等によって一対の水平材91にそれぞれ接合されている。一対の鉛直材92は、タンク1の側壁5の内側に位置しており、一対の水平材91のそれぞれから上方に延びている。鉛直材92は、上方に延びると共に側壁5に沿って延びるガイド面92sを有している。ガイド面92sと側壁5の内面とは、互いに接触していてもよく、僅かな間隔(例えば、2〜3cm)をおいて互いに離間していてもよい。
【0037】
ガイド材9は、タンク解体方法の各工程のうち、少なくとも降下工程において、底板4上に設置される。ガイド材9は、タンク解体方法の全ての工程において、連続して底板4上に設置されていてもよい。切欠き51に楔部8及びガイド材9が設置された状態において、楔部8の傾斜面83sとガイド材9のガイド面92sとによってV字状の溝部11が形成される。側壁5の下端部5aのうち切欠き51の上縁部51sが、楔部8の傾斜面83sとガイド材9のガイド面92sとの間に位置している。すなわち、側壁5の下端部5aは、この溝部11に位置している。楔部8を径方向外側に引き抜く方向に移動させることにより、この溝部11は下方に移動し、側壁5の下方への移動をガイドする。
【0038】
上記のように、楔部8を周方向に挟むようなガイド材9を設置することで、支持工程や降下工程における楔部8が周方向に転倒する可能性が極めて低くなる。すなわち、ガイド材9の存在により、側壁5を支持した状態の楔部8が周方向に転倒することが防止されるので、支持工程及び降下工程を安全に実行することができる。また、側壁5の下端部5aのうち切欠き51の上縁部51sが溝部11に嵌まるようにして保持されるので、下端部5aが径方向に位置ずれしたり径方向に変形したりすることも回避される。更に、側壁5が溝部11に保持された状態で降下することにより、側壁5が鉛直に降下し、降下方向の鉛直精度が高められ、側壁5全体が転倒方向に傾くことを抑制できる。
【0039】
次に、第1実施形態に係るタンク解体方法の作用効果について説明する。
【0040】
第1実施形態に係るタンク解体方法によれば、基礎部7と側壁5との間に設置された楔部8によって側壁5の重量による荷重を支持する。また、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出す方向に移動させることで側壁5を降下させる。したがって、側壁5の重量による荷重を支持した状態で、側壁5を降下させることができる。これにより、例えばジャッキによって側壁5の荷重を支持する場合と比較して簡易な構成でタンク1の解体作業を行うことができ、大掛かりな装置を用いることなくタンク1を解体することが可能となる。
【0041】
第1実施形態に係るタンク解体方法において、支持工程は、側壁5の下端部5aに切欠き51を形成する切欠き形成工程と、切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に楔部8を挿入する楔部設置工程と、側壁5の下端部5aのうち切欠き51以外の部分を除去する下端部除去工程と、を有している。これにより、楔部設置工程では切欠き51によって楔部8を設置する場所を確保でき、下端部除去工程では側壁5の下端部5aのうち切欠き51以外の部分を除去するため、除去作業を簡易に行うことができる。したがって、一層簡易な構成によってタンク1の解体作業を行うことができる。
【0042】
第1実施形態に係るタンク解体方法は、支持工程では、側壁5が基礎部7から離間した状態になり、降下工程では、側壁5が基礎部7に到達するまで下方に移動する。支持工程では、側壁5の重量全体が楔部8によって支持され、側壁5が底板4から離間した状態となる。また、降下工程では、上記の状態から楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出す方向に移動させ、側壁5が底板4に到達するまで、側壁5の重量による荷重を支持した状態で側壁5を降下させる。
【0043】
第1実施形態に係るタンク解体方法は、支持工程と降下工程とが交互に繰り返し実行される。側壁5の下端部5aの除去と側壁5の降下とが繰り返されることで、側壁5が下端から少しずつ解体されていく。これにより、例えば、地上式のLNGタンクであるタンク1といった大型タンクの解体作業に適用することが可能となる。
【0044】
第1実施形態に係るタンク解体方法は、降下工程では、側壁5に沿って延在し底板4に固定されるガイド材9が設置され、楔部8の傾斜面83sとガイド材9との間に側壁5の下端部5aが位置している。これにより、側壁5がガイド材9に沿って降下する。
【0045】
すなわち、第1実施形態に係るタンク解体方法によれば、支持工程では、側壁5の下端部5aに形成された切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に挿入された楔部8によって側壁5の重量による荷重を支持する。また、降下工程では、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出す方向に移動させ、側壁5を基礎部7に到達するまで降下させる。したがって、側壁5の重量による荷重を楔部8が支持した状態で側壁5を降下させることができると共に、側壁5が基礎部7に到達して安定した状態で側壁5の下端部5aのうち切欠き51以外の部分である切断部分52を除去することができる。このような支持工程及び降下工程を交互に繰り返し実行するため、簡易な構成でタンク1の解体作業を行うことができる。以上により、大掛かりな装置を用いることなくタンク1を解体することが可能となる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、図7図11を参照して第2実施形態に係るタンク解体方法について説明する。第2実施形態に係るタンク解体方法が適用されるタンク1は、第1実施形態に係るタンク1と同様の構成を備えている。
【0047】
第2実施形態のタンク解体方法では、側壁5の下端部5aに第1領域R1と第2領域R2とが設定される。第1領域R1と第2領域R2とは、例えば、側壁5の側面視において左右対称に設定され、かつ、その対称軸の近傍で一部同士が重複するように設定される。例えば、本実施形態では、図7(a)に示されるように、側壁5の1つの直径Dに直交する方向からタンク1を見る側面視において、側壁5の下端部5aのうち右側の2/3の領域が第1領域R1であり、側壁5の下端部5aのうち左側の2/3の領域が第2領域R2である。第1領域R1と第2領域R2とは、上記のような側面視において中央のD/3の幅の領域で重複している。すなわち、図7(b)に示されるように、第1領域R1は、直径Dに直交する方向に対して、340.5°方向から199.5°方向までの領域であり、第2領域R2は、直径Dに直交する方向に対して、160.5°方向から19.5°方向までの領域である。なお、以下の説明では、上記の側面視における側壁5の下端部5aの右端部を右端部5c、左端部を左端部5dと言う。
【0048】
第2実施形態に係るタンク解体方法においては、図7(a)に示されるように、切断線L1に沿って側壁5の下端部5aの第1領域R1が除去され、切断線L2に沿って側壁5の下端部5aの第2領域R2が除去されるといった処理が繰り返し実行され、側壁5が下端から少しずつ除去されていく。このような手法を実現するために、第2実施形態に係るタンク解体方法においては、第1実施形態において説明した分断工程の後に、第1領域支持工程(支持工程)、第1領域降下工程(降下工程)、第2領域支持工程(支持工程)、及び第2領域降下工程(降下工程)、がこの順で繰り返し実行される。すなわち、第2実施形態に係るタンク解体方法は、側壁5が底板4から切り離された状態で、繰り返し実行される第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程を備えている。このうち第1領域支持工程及び第1領域降下工程により第1領域R1が除去され、第2領域支持工程及び第2領域降下工程により第2領域R2が除去される。以下、図8図11を参照しながら具体的に各工程について説明する。なお、図8図11においても、楔式治具10(図5参照)のうちガイド材9を省略し、楔部8のみを図示する。
【0049】
<第1領域支持工程>
まず、図8(a)に示されるように、側壁5の下端部5aにおける第1領域R1に切欠き51を形成する(切欠き形成工程)。切欠き51は、例えば、第1領域R1のうち右端部5cに形成される。ただし、側壁5には、下端部5aにおける第1領域R1に一定の間隔をおいて複数の切欠き51が配列されてもよい。次に、切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に楔部8を挿入する(楔部設置工程)。本工程は、第1実施形態における楔部設置工程と同様に行うことができる。
【0050】
次に、側壁5の下端部5aの第1領域R1のうち切欠き51以外の部分である切断部分53を除去する(下端部除去工程)。具体的には、切欠き51から底板4までの間の側壁5の下端部5aを、例えば、ガス切断により切断線L1に沿って斜めに切断し、切断部分53を撤去する。側面視において、切断線L1は、第1領域R1の左端において側壁5の下端縁を起点とする右上がりの直線をなし、切断線L1の右端は切欠き51の上縁部51sよりも低い位置にある。このように切断部分53を除去することによって、図8(b)に示されるように、側壁5の重量に起因する荷重が楔部8で支持された状態とする。すなわち、この状態では、側壁5を右側に傾倒させようとする力が楔部8で支持される。
【0051】
下端部除去工程において切断部分53が除去されて、側壁5の一部が底板4から離間した状態(すなわち、側壁5の少なくとも一部が基礎部7に接触した状態)になる。以上により行われる第1領域支持工程によって、側壁5が底板4から切り離された状態で、基礎部7と側壁5との間に設置された楔部8によって、側壁5の重量による荷重が支持される。
【0052】
<第1領域降下工程>
続けて、図9(a)に示されるように、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出すように径方向外側に移動させる。楔部8を上記のように移動させることで、切欠き51の上縁部51sが楔部8の傾斜面83s上を摺動し、右端部5cが徐々に降下する。これにより、側壁5が底板4との接触部位P1(第1領域R1の左端)を中心として傾倒方向(側壁5が第1領域R1側から第2領域R2側に傾く方向)に回動する。そして、第1領域R1の下端縁が基礎部7の底板4に到達したところで、楔部8の移動を停止し、第1領域降下工程が終了する。第1領域降下工程が終了した時点では、側壁5からの荷重は楔部8にはほとんど作用しておらず、側壁5の重量全体が基礎部7で支持された状態となる。また、第1領域降下工程が終了した時点では、円筒軸が傾いた状態で側壁5が底板4に支持される。
【0053】
<第2領域支持工程>
続けて、図9(b)に示されるように、側壁5の下端部5aにおける第2領域R2に切欠き51を形成する(切欠き形成工程)。切欠き51は、例えば、第1領域R1のうち左端部5dに形成される。切欠き51は、第2領域R2において、第1領域R1に形成された切欠き51に対面する箇所に形成される。次に、第1領域支持工程と同様に、切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に楔部8を挿入する(楔部設置工程)。
【0054】
次に、側壁5の下端部5aの第2領域R2のうち切欠き51以外の部分である切断部分54を除去する(下端部除去工程)。具体的には、切欠き51から底板4までの間の側壁5の下端部5aを、例えば、ガス切断により切断線L2に沿って斜めに切断し、切断部分54を撤去する。側面視において、切断線L2は、第2領域R2の右端において側壁5の下端縁を起点とする左上がりの直線をなし、切断線L2の左端は切欠き51の上縁部51sよりも低い位置にある。このように切断部分54を除去することによって、図10(a)に示されるように、側壁5の重量に起因する荷重が楔部8で支持された状態とする。すなわち、この状態では、側壁5を左側に傾倒させようとする力が楔部8で支持される。
【0055】
下端部除去工程において切断部分54が除去されて、側壁5の一部が底板4から離間した状態(すなわち、側壁5の少なくとも一部が基礎部7に接触した状態)になる。以上により行われる第2領域支持工程によって、側壁5が底板4から切り離された状態で、基礎部7と側壁5との間に設置された楔部8によって、側壁5の重量による荷重が支持される。
【0056】
<第2領域降下工程>
続けて、図10(b)に示されるように、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出すように径方向外側に移動させる。第1領域降下工程と同様に、楔部8を上記のように移動させることで、切欠き51の上縁部51sが楔部8の傾斜面83s上を摺動し、左端部5dが徐々に下降する。これにより、側壁5が底板4との接触部位P2を(第2領域R2の右端)中心として傾倒方向(側壁5が第2領域R2側から第1領域R1側に傾く方向)に回動する。そして、第2領域R2の下端縁が基礎部7の底板4に到達したところで、楔部8の移動を停止し、第2領域降下工程が終了する。第2領域降下工程が終了した時点では、側壁5からの荷重は楔部8にはほとんど作用しておらず、側壁5の重量全体が基礎部7で支持された状態となる。また、側壁5の姿勢は、第2領域降下工程が終了した時点で、円筒軸が傾いた状態から第1領域支持工程直前と同様の状態(円筒軸が鉛直方向に沿った状態)まで戻る。
【0057】
以上説明した第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程、がこの順で行われた後に、図11に示されるように、再び、次の第1領域支持工程が実行される。このように、第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程、がこの順で繰り返し実行されることで、側壁5が下端から少しずつ除去されていき、側壁5の上端部5bまで除去されることで、タンク解体方法が完了する。
【0058】
次に、第2実施形態に係るタンク解体方法の作用効果について説明する。
【0059】
第2実施形態に係るタンク解体方法によっても、第1実施形態に係るタンク解体方法と同様に、大掛かりな装置を用いることなくタンク1を解体することが可能となる。特に、第2実施形態に係るタンク解体方法は、支持工程では、側壁5の少なくとも一部が基礎部7に接触した状態になり、降下工程では、側壁5の重量が基礎部7で支持される状態になるまで側壁5が基礎部7との接触部位P1,P2を中心として傾倒方向に回動する。これにより、基礎部7と楔部8とによって側壁5の重量による荷重を支持することができ、側壁5と基礎部7とが接触していない場合と比較して楔部8の負担する荷重を低減することができる。したがって、第1実施形態に係るタンク解体方法と比較して、楔部8の数量を少なくすることができる。
【0060】
具体的には、第2実施形態に係るタンク解体方法によれば、側壁5が底板4から切り離された状態で、第1領域支持工程、第1領域降下工程、第2領域支持工程、及び第2領域降下工程が繰り返し実行される。第1領域支持工程では、側壁5の第1領域R1の下端部5aに形成された切欠き51の上縁部51sと基礎部7との間に楔部8を挿入し、側壁5の第1領域R1の下端部5aのうち切欠き51以外の部分である切断部分53を除去し、側壁5の重量によって第1領域R1側に作用する荷重を楔部8で支持する。第1領域降下工程では、楔部8を基礎部7と側壁5との間から抜き出す方向に移動させることで側壁5が第1領域R1側の基礎部7に到達するように回動させる。
【0061】
側壁5が第1領域R1側の基礎部7に到達した後、第2領域支持工程及び第2領域降下工程によって、第2領域R2側でもこの第1領域支持工程及び第1領域降下工程と同様の作業を行う。したがって、第1領域降下工程によって、側壁5の第2領域R2側が基礎部7に着地した状態となり、その状態で第2領域支持工程が行われる。また、第2領域降下工程によって、側壁5の第1領域R1側が基礎部7に着地した状態となり、その状態で第1領域支持工程が行われる。これにより、第1領域支持工程及び第2領域支持工程のそれぞれにおいて、基礎部7と楔部8とによって側壁5の重量による荷重を支持することができ、側壁5と基礎部7とが接触していない場合、例えば、第1実施形態に係るタンク解体方法によってタンク1を解体する場合と比較して楔部8の負担する荷重を低減することができる。そのため、負担する荷重の低減に応じて、楔部8の数量を少なくすることができる。
【0062】
また、第2実施形態に係るタンク解体方法においても、少なくとも降下工程(第1領域降下工程、及び第2領域降下工程)では、第1実施形態と同様に、側壁5に沿って延在し底板4に固定されるガイド材9が設置され、楔部8の傾斜面83sとガイド材9との間に側壁5の下端部5aが位置している。ここで、第2実施形態に係るタンク解体方法においては、前述したように、降下工程(第1領域降下工程、及び第2領域降下工程)において、側壁5を転倒方向へ回動させる。このとき、側壁5の下端部5aは、楔部8の傾斜面83sとガイド材9のガイド面92sとによって形成された溝部11に嵌まるようにして保持される。そのため、側壁5全体が、側壁5の第1領域R1側が基礎部7に着地した状態、又は、側壁5の第2領域R2側が基礎部7に着地した状態を越えて転倒方向に傾倒することを抑制でき、側壁5の転倒が回避される。また、下端部5aが径方向に位置ずれしたり径方向に変形したりすることも回避される。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、前述の実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な態様で実施することができる。また、前述の実施形態に記載されている技術的事項を利用して様々な変形例を構成することもできる。
【0064】
例えば、前述の実施形態においては、屋根6を備えるタンク1を例に挙げて説明したが、タンクは屋根を備えていなくてもよい。本発明の解体方法が適用されるタンクは、例えば、浮屋根タイプの原油タンク、有水ホルダーの気体ガス用貯槽等であってもよい。また、タンクは、側壁としての内槽と、内槽の外側に位置すると共に貯蔵空間Sの上部を覆う外槽と、を備えるタンクであってもよい。また、側壁としての内槽と、内槽の外側に位置すると共に貯蔵空間Sの上部を覆う外槽と、を備えるタンクであってもよい。
【0065】
また、前述の実施形態においては、側壁5の下端部5aにおける底板4との接合箇所を切断して、側壁5が底板4から切り離された状態とする構成を例に挙げて説明したが、このような構成に限定されない。支持工程において側壁が底板から切り離された状態であればよく、例えば、互いにボルト接合によって接合された側壁及び底板に対して、ボルト接合を解除すると共に底板4を撤去して、支持工程において側壁が底板から切り離された状態としてもよい。
【0066】
また、前述の実施形態においては、ガイド材9を備える楔式治具10を例に挙げて説明したが、楔式治具は、ガイド材を備えていなくてもよい。また、楔式治具10の楔部8は、H型鋼によって構成された下方材81と、鉛直材82と、斜材83と、を備えていなくてもよい。楔部8は、三角形状であればよく、例えば、木材によって構成されていてもよい。
【0067】
また、前述の第2実施形態において、側壁5の下端部5aは、第1領域支持工程において側壁5の下端縁を起点とする右上がりの直線をなす切断線L1に沿って切断され、第2領域支持工程において左上がりの直線をなす切断線L2に沿って切断されたが、切断線は任意に変更してよい。すなわち、切断線L1、L2は、切断部分53、54を除去することにより側壁5が傾倒するような形状であればどのような形状であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…タンク、4…底板、5…側壁、5a…下端部、7…基礎部、8…楔部、9…ガイド材、51…切欠き、51s…上縁部(縁部)、83s…傾斜面、92s…ガイド面、R1…第1領域、R2…第2領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11