(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762903
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】リスク管理システム及びリスク管理システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20200917BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20200917BHJP
A61B 5/1171 20160101ALI20200917BHJP
A61B 5/1172 20160101ALI20200917BHJP
【FI】
A61B5/16 100
G06F21/32
A61B5/1171 100
A61B5/1171 200
A61B5/1171 300
A61B5/1172
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-86782(P2017-86782)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-183404(P2018-183404A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真紀
【審査官】
山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−293209(JP,A)
【文献】
特開平11−197136(JP,A)
【文献】
特表2008−518709(JP,A)
【文献】
特開平08−280637(JP,A)
【文献】
特開2005−137731(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0236120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/1171
A61B 5/1172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本人認証を行う本人認証手段と、
心理状態に関係する生体情報を含む心理状態関連情報を収集する心理状態関連情報収集手段と、
前記収集された心理状態関連情報に基づき心理状態指標情報を算出する算出手段と、
前記算出された心理状態指標情報を前記本人認証手段により得られた認証情報に対応付けて指標記憶手段に記憶する記憶制御手段と、
今回得られた心理状態指標情報とこの心理状態指標情報の本人の認証情報に対応付けられて前記記憶制御手段に記憶されている心理状態指標情報に基づき今回までの所定回継続する異常方向への変動を検出することにより、心理状態の異常化傾向を分析判定する異常化傾向分析判定手段と、
前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、この分析判定の結果が異常傾向にある場合に警報出力と共に、当該本人の氏名と共に各指標値の情報を出力手段へ出力する一方、前記分析判定の結果が異常傾向に無いとの判定である場合に、前記出力手段に当該本人の氏名と「正常」の旨のメッセージを出力する制御を行う出力制御手段と
を具備することを特徴とするリスク管理システム。
【請求項2】
今回得られた心理状態指標情報に基づき心理状態の都度異常分析判定を行う都度異常分析判定手段を備え、
前記出力制御手段は、前記都度異常分析判定手段の分析判断及び前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、出力制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のリスク管理システム。
【請求項3】
前記異常化傾向分析判定手段は、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に、異常傾向にありと判定することを特徴とする請求項1または2に記載のリスク管理システム。
【請求項4】
前記異常化傾向分析判定手段は、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合または異常なし状態が検出された場合であって、前回と今回の指標値の差が所定閾値を超える変動である場合に、異常傾向にありと判定することを特徴とする請求項3に記載のリスク管理システム。
【請求項5】
前記心理状態関連情報収集手段は、生体情報として、心拍、心電図波形、カメラ撮像に基づく血流振動、発汗量、声紋の少なくとも1つの情報を収集することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のリスク管理システム。
【請求項6】
前記本人認証手段は、生体的特徴としての、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、習慣的特徴としての、サイン、声紋、キーストロークの、少なくとも1つを用いて認証を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のリスク管理システム。
【請求項7】
前記出力制御手段は、前記本人認証手段により得られた認証情報に対応する人に対するリスク管理処理のための所定出力を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のリスク管理システム。
【請求項8】
コンピュータを、
本人認証を行う本人認証手段、
心理状態に関係する生体情報を含む心理状態関連情報を収集する心理状態関連情報収集手段、
前記収集された心理状態関連情報に基づき心理状態指標情報を算出する算出手段、
前記算出された心理状態指標情報を前記本人認証手段により得られた認証情報に対応付けて指標記憶手段に記憶する記憶制御手段、
今回得られた心理状態指標情報とこの心理状態指標情報の本人の認証情報に対応付けられて前記記憶制御手段に記憶されている心理状態指標情報に基づき今回までの所定回継続する異常方向への変動を検出することにより、心理状態の異常化傾向を分析判定する異常化傾向分析判定手段、
前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、この分析判定の結果が異常傾向にある場合に警報出力と共に、当該本人の氏名と共に各指標値の情報を出力手段へ出力する一方、前記分析判定の結果が異常傾向に無いとの判定である場合に、前記出力手段に当該本人の氏名と「正常」の旨のメッセージを出力する制御を行う出力制御手段
として機能させることを特徴とするリスク管理システム用プログラム。
【請求項9】
前記コンピュータを、
更に、今回得られた心理状態指標情報に基づき心理状態の都度異常分析判定を行う都度異常分析判定手段として機能させ、
前記コンピュータを、前記出力制御手段として、前記都度異常分析判定手段の分析判断及び前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、出力制御を行うように機能させることを特徴とする請求項8に記載のリスク管理システム用プログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、前記異常化傾向分析判定手段として、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に、異常傾向にありと判定するように機能させることを特徴とする請求項8または9に記載のリスク管理システム用プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、前記異常化傾向分析判定手段として、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合または異常なし状態が検出された場合であって、前回と今回の指標値の差が所定閾値を超える変動である場合に、異常傾向にありと判定するように機能させることを特徴とする請求項10に記載のリスク管理システム用プログラム。
【請求項12】
前記コンピュータを、前記心理状態関連情報収集手段として、生体情報としての、心拍、心電図波形、カメラ撮像に基づく血流振動、発汗量、声紋の少なくとも1つの情報を収集するように機能させることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載のリスク管理システム用プログラム。
【請求項13】
前記コンピュータを、前記本人認証手段として、生体的特徴としての、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、習慣的特徴としての、サイン、声紋、キーストロークの少なくとも1つを用いて認証を行うように機能させることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載のリスク管理システム用プログラム。
【請求項14】
前記コンピュータを、前記出力制御手段として、前記本人認証手段により得られた認証情報に対応する人に対するリスク管理処理のための所定出力を行うように機能させることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載のリスク管理システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リスク管理システム及びリスク管理システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高額金品や高秘密情報などの保管場所やエリアには制限された一部の人のみが出入りできるようにリスク管理システムとして本人認証を行うシステムが用いられている。ここで用いられる本人認証は、本人であるか他人であるかを識別するためのものである。
【0003】
本人認証の具体的手法としては、所持している認証カードの識別情報に対応するデータベースの情報とその時点で収集される情報との一致をもって本人であるか否かの認証を行うものがある。これより高度セキュリティーのシステムとしては、指紋や虹彩や血管を用いて本人であるかなりすましなどを行っている他人であるかを判定するものが主流となりつつある。
【0004】
上記の指紋や虹彩や血管を用いた認証システムは、高精度で本人と他人との識別が可能であり、高度セキュリティーシステムとして好的である。しかしながら、セキュリティチェックを受けた本人が不正行為を行う場合には、対応できない。
【0005】
そこで、本人の感情的特徴を示す生体情報を取得し、これにより本人の精神状態を判定し、判定結果を基に本人の意向に沿った認証操作であることを判定して、強要による不正操作を検出するシステムが特許文献1に開示されている。
【0006】
上記特許文献1のシステムは、他人からの強要による不正な操作が行われているかを検出するものである。つまり、当該認証操作のときに不正がなされたのかを検出するものであり、認証を通り抜けてその後に犯罪を実行するなどのリスクを回避することを目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−293209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来のリスク管理システムは、本人認証を通り抜けてその後に犯罪等が実行されることを未然に防止するものでなかった。従って、本人の意思でも他人による強制であっても、不正や不当行為を行う機会を狙っている者を発見し、的確にリスク管理を行うシステムの登場が期待されている。特に、長い期間をかけて潜入し、不正や不当行為の機会を狙っている者を発見し、的確にリスク管理を行うシステムの登場が期待されている。
【0009】
本発明は上記のようなリスク管理システムに対する要望に応えんとしてなされたもので、その目的は、不正を働く機会を狙う者に対して有効であり、不正を働くために長期間かけて潜入しているような者に対しても有効であり、このような不正を未然に回避することができるリスク管理システム及びリスク管理システム用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリスク管理システムは、本人認証を行う本人認証手段と、心理状態に関係する生体情報を含む心理状態関連情報を収集する心理状態関連情報収集手段と、前記収集された心理状態関連情報に基づき
心理状態指標情報を算出する算出手段と、前記算出された心理状態指標情報を前記本人認証手段により得られた認証情報に対応付けて指標記憶手段に記憶する記憶制御手段と、今回得られた心理状態指標情報とこの心理状態指標情報の本人の認証情報に対応付けられて前記記憶制御手段に記憶されている心理状態指標情報に基づき今回までの所定回継続する異常方向への変動を検出することにより、心理状態の異常化傾向を分析判定する異常化傾向分析判定手段と、前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、
この分析判定の結果が異常傾向にある場合に警報出力と共に、当該本人の氏名と共に各指標値の情報を出力手段へ出力する一方、
前記分析判定の結果が異常傾向に無いとの判定である場合に、前記出力手段に当該本人の氏名と「正常」の旨のメッセージを出力する制御を行う出力制御手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るリスク管理システムでは、今回得られた心理状態指標情報に基づき心理状態の都度異常分析判定を行う都度異常分析判定手段を備え、前記出力制御手段は、前記都度異常分析判定手段の分析判断及び前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、出力制御を行うことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るリスク管理システムでは、前記異常化傾向分析判定手段は、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に、異常傾向にありと判定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るリスク管理システムでは、前記異常化傾向分析判定手段は、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合または異常なし状態が検出された場合であって、前回と今回の指標値の差が所定閾値を超える変動である場合に、異常傾向にありと判定することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るリスク管理システムでは、前記心理状態関連情報収集手段は、生体情報として、心拍、心電図波形、カメラ撮像に基づく血流振動、発汗量、声紋の少なくとも1つの情報を収集することを特徴とする。
【0015】
本発明に係るリスク管理システムでは、前記本人認証手段は、生体的特徴としての、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、習慣的特徴としての、サイン、声紋、キーストロークの、少なくとも1つを用いて認証を行うことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るリスク管理システムでは、前記出力制御手段は、前記本人認証手段により得られた認証情報に対応する人に対するリスク管理処理のための所定出力を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムは、コンピュータを、本人認証を行う本人認証手段、心理状態に関係する生体情報を含む心理状態関連情報を収集する心理状態関連情報収集手段、前記収集された心理状態関連情報に基づき
心理状態指標情報を算出する算出手段、前記算出された心理状態指標情報を前記本人認証手段により得られた認証情報に対応付けて指標記憶手段に記憶する記憶制御
手段、今回得られた心理状態指標情報とこの心理状態指標情報の本人の認証情報に対応付けられて前記記憶制御手段に記憶されている心理状態指標情報に基づき今回までの所定回継続する異常方向への変動を検出することにより、心理状態の異常化傾向を分析判定する異常化傾向分析判定手段、前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、
この分析判定の結果が異常傾向にある場合に警報出力と共に、当該本人の氏名と共に各指標値の情報を出力手段へ出力する一方、
前記分析判定の結果が異常傾向に無いとの判定である場合に、前記出力手段に当該本人の氏名と「正常」の旨のメッセージを出力する制御を行う出力制御手段として機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、更に、今回得られた心理状態指標情報に基づき心理状態の都度異常分析判定を行う都度異常分析判定手段として機能させ、前記コンピュータを前記出力制御手段として、前記都度異常分析判定手段の分析判断及び前記異常化傾向分析判定手段の分析判定に基づき、出力制御を行うように機能させることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、前記異常化傾向分析判定手段として、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に、異常傾向にありと判定するように機能させることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、前記異常化傾向分析判定手段として、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合または異常なし状態が検出された場合であって、前回と今回の指標値の差が所定閾値を超える変動である場合に、異常傾向にありと判定するように機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、前記心理状態関連情報収集手段として、生体情報としての、心拍、心電図波形、カメラ撮像に基づく血流振動、発汗量、声紋の少なくとも1つの情報を収集するように機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、前記本人認証手段として、生体的特徴としての、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、習慣的特徴としての、サイン、声紋、キーストロークの少なくとも1つを用いて認証を行うように機能させることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るリスク管理システム用プログラムでは、前記コンピュータを、前記出力制御手段として、前記本人認証手段により得られた認証情報に対応する人に対するリスク管理処理のための所定出力を行うように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、今回得られた心理状態指標情報と記憶されている心理状態指標情報に基づき、心理状態の異常化傾向を分析判定し、この分析判定に基づき出力制御を行うので、長期間かけて潜入し不正を働く機会を狙う者に対しても有効であり、このような不正を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るリスク管理システムが適用される場所を示す概念図。
【
図2】本発明に係るリスク管理システムの実施形態の構成を示すブロック図。
【
図3】本発明に係るリスク管理システムの実施形態の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下添付図面を参照して、本発明に係るリスク管理システム及びリスク管理システム用プログラムの実施形態を説明する。本実施形態は、例えばデータセンタの高セキュリティゾーンなど、
図1に示すような場所に適用される。即ち、セキュリティゾーン200のドア210には、電子錠220が設けられおり、電子錠220は、リスク管理システムの出力制御手段14による処理により施錠開錠される。
【0027】
ドア210へ到る経路の途中には、セキュリティチェック用のゲート230が設けられている。ゲート230やゲート230の天井部などには、本人認証のための本人認証用機器や心理状態関連情報を収集するための機器など情報収集機器240が設けられている。
【0028】
情報収集機器240により収集した情報は、管理室250などのシステム本体300(
図2)に送られて、処理される。処理された結果の情報や警報は、出力端末260や警報発生器270において出力され、電子錠220の施錠開錠制御に用いられる。
【0029】
本実施形態のリスク管理システムは、
図2に示すように、コンピュータを中心として構成されるシステム本体300と、情報収集機器240と、出力端末260や警報発生器270等により構成することができる。システム本体300には、コンピュータの部分である演算処理部310と、外部記憶装置等により構成される第1記憶手段320と第2記憶手段330とが設けられている。
【0030】
情報収集機器240は、本人認証用の情報を取り込むための第1センサ241を備える。第1センサ241は、磁気センサ、イメージセンサ、周波数等の信号分析器、ストロークセンサ、DNA分析装置などから構成することができる。本人認証用の情報は、ID磁気カードなどにより書き込まれたID磁気情報、生体的特徴としての、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、習慣的特徴としての、サイン、声紋、キーストロークの、少なくとも1つとすることができる。
【0031】
情報収集機器240は、心理状態に関係する生体情報を含む心理状態関連情報を収集するための心理状態関連情報収集手段としての、第2センサ242を備える。第2センサ242は、生体情報として、心拍、心電図波形、また、カメラ撮像に基づく血流振動、更に、発汗量、声紋の少なくとも1の情報を心理状態関連情報として収集する。第2センサ242は、上記の情報を収集するための機器やセンサである。
【0032】
演算処理部310には、本人認証手段11、算出手段12、異常化傾向分析判定手段13、出力制御手段14、都度異常分析判定手段15、記憶制御手段16を備える。本人認証手段11、算出手段12、異常化傾向分析判定手段13、出力制御手段14、都度異常分析判定手段15、記憶制御手段16は、プログラムにより実現される。
【0033】
本人認証手段11は、本人認証を行うものである。ID磁気情報と、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、サイン、声紋、キーストロークの少なくとも1つを用いた本人認証では、本人のIDと、本人の、指紋、網膜、虹彩、顔、掌紋、血管、DNA、サイン、声紋、キーストロークの情報のうち、用いられているものが第1記憶手段320に記憶されている。本人認証手段11は、第1記憶手段320の情報と、第1センサ241により取り込んだ本人認証用の情報とを比較して所定以上の尤度である場合に、本人であることの認証を行うものである。本人であることの認証が得られなかった場合には、本人認証手段11の制御によって電子錠220を施錠状態のまま維持し、警報発生器270において警報音などを発生させるようにしても良い。
【0034】
算出手段12は、心理状態関連情報収集手段である第2センサ242により収集された心理状態関連情報に基づき心理状態に関する指標を算出するものである。指標としては、ストレス値、攻撃性指標、不安指標、興奮度指標などとすることができ、その他に公知の指標を用いることができる。第2センサ242により収集された心理状態関連情報を記憶制御手段16によって、そのまま第2記憶手段330へ記憶するようにしても良い。
【0035】
具体的には、収集された心拍、心電図波形の情報により、心拍数や心拍間の値を基に、所定の計算式でストレス値、攻撃性指標、不安指標、興奮度指標などを求めても良い。また、心電図波形によって公知のHFとLFを求め、このHFとLFの値から、或いはLF/HFの値から、所定の計算式でストレス値、攻撃性指標、不安指標、興奮度指標などを求めても良い。更には、カメラ撮像に基づく血流振動の周波数や振幅を所定の計算式でストレス値、攻撃性指標、不安指標、興奮度指標などを求めても良い。このようにして求められた心理状態指標情報は、記憶制御手段16によって本人認証手段11により得られた認証情報(個人に与えられた識別情報)に対応付けて指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶される。
【0036】
異常化傾向分析判定手段13は、今回得られた心理状態指標情報と指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶されている心理状態指標情報に基づき、心理状態の異常化傾向を分析判定する。具体的には、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に、異常傾向にありと判定する。所定回の数は指標値毎に適切に決定される。また、異常方向とは、指標値の値が大きくなる方向或いは指標値の値が小さくなる方向であり、この方向も指標値毎に決定される。
【0037】
また、今回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合であり、且つ、最初の異常方向への変動時の指標値と今回の指標値の差が所定値を超えた場合に心理状態の異常傾向にありとしても良い。
【0038】
更に、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合または異常なし状態が検出された場合において次の場合に、心理状態の異常傾向にありとしても良い。つまり、今回までの所定回継続する異常方向への変動が検出されなかったが、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合に適用する。或いは、前回まで所定回継続して異常方向への変動が検出されず、異常なし状態が検出された場合(例えば、変動がランダムに生じるような場合)に適用する。このときに、前回と今回の指標値が所定閾値を超える変動である場合に、異常傾向にありと判定する。ここで、前回まで所定回継続する異常方向への変動が検出された場合の所定閾値の値と、前回まで異常なし状態が検出された場合の所定閾値の値を異ならせるようにしても良い。
【0039】
異常化傾向分析判定手段13は、上記に示した以外の手法によって、今回得られた心理状態指標情報と指標である第2記憶手段330に記憶されている心理状態指標情報に基づき、心理状態の異常化傾向を分析判定するようにしても良い。即ち、指標値のトレンドグラフやその微分値のグラフを用いて心理状態の異常化傾向を分析判定するようにしても良い。また、心理状態の異常化傾向を分析判定するに際して、季節変動などを除去してより正確な心理状態の異常化傾向を分析判定するようにしても良い。
【0040】
異常化傾向分析判定手段13は、上記の各閾値を当該個人毎に算出するようにしても良い。例えば、一般的な人の閾値と心理状態指標情報の変動幅を当該システムに記憶させておき、これを指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶されている心理状態指標情報に基づき変更することができる。即ち、記憶されている心理状態指標情報に基づき当該個人の変動幅を求め、一般的な人の心理状態指標情報の変動幅と比べて、この比に応じて一般的な人の閾値を変更して用いるようにしても良い。
【0041】
出力制御手段14は、上記異常化傾向分析判定手段13の分析判定に基づき出力制御を行うものである。異常化傾向分析判定手段13が異常傾向にありと判定すると、電子錠220を施錠状態のまま維持し、警報発生器270において警報音などを発生させ、出力端末260に対象者の氏名等と共に各指標値の情報を出力することもできる。異常化傾向分析判定手段13が異常傾向に無いと判定すると、電子錠220を開状態へ移行させ、出力端末260に対象者の氏名等と「正常」の旨のメッセージを出力することもできる。
【0042】
都度異常分析判定手段15は、今回得られた心理状態指標情報に基づき心理状態の都度異常分析判定を行うものである。都度異常分析判定は、今回得られた心理状態指標情報のみを用いた異常分析判定である。具体的には、今回得られた心理状態指標情報と、都度異常分析判定用の所定閾値(上記で説明した閾値と異なるものとすることができる。)とを比較し、今回得られた心理状態指標情報が上記都度異常分析判定用の所定閾値を超えている場合に心理状態の異常と判定する。
【0043】
都度異常分析判定用の所定閾値を得るために、指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶されている心理状態指標情報に基づき、同年同月の心理状態指標情報を取り出し平均値を算出し、季節的変動を例えば年間の心理状態指標情報の平均値により除去して、これを都度異常分析判定用の所定閾値として用いても良い。季節的変動の除去は、上記2つの平均値の平均値を求めることにより行っても良い。
【0044】
上記出力制御手段14は、上記都度異常分析判定手段15の分析判断及び上記異常化傾向分析判定手段13の分析判定に基づき、出力制御を行う。上記都度異常分析判定手段15と異常化傾向分析判定手段13の一方が異常であると判定すると、電子錠220を施錠状態のまま維持し、警報発生器270において警報音などを発生させ、出力端末260に対象者の氏名等と共に各指標値の情報を出力することもできる。
【0045】
上記のように出力制御手段14は、本人認証手段11により得られた認証情報に対応する人に対するリスク管理処理のための所定出力を行う。特に、上記都度異常分析判定手段15と異常化傾向分析判定手段13の一方が異常であると判定すると、出力端末260に対象者の氏名等と共に指標値情報だけでなく、心理状態関連情報収集手段である第2センサ242により今回及びまたは過去に収集された心理状態関連情報を表示出力するようにしても良い。
【0046】
以上のように構成されたリスク管理システムは、
図3に示すフローチャートのプログラムにより動作を行うので、この
図3を参照して動作説明を行う。例えば、高セキュリティゾーン200へ到る経路に人が侵入するとプログラムがスタートとなり、本人認証用の情報収集を行い(S11)、本人認証が得られたかを判定する(S12)。得られない場合には、電子錠220を施錠状態のまま維持し、警報発生器270において警報音などを発生させるなどの進入禁止対応を実行する(S13)。
【0047】
ステップS12においてYESへ分岐すると、心理状態に関係する心理状態関連情報を収集する(S14)。更に、収集された心理状態関連情報に基づき心理状態に関する指標を算出して指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶する(S15)。
【0048】
ステップS15に続いて、今回得られた心理状態指標情報と指標記憶手段である第2記憶手段330に記憶されている心理状態指標情報に基づき、心理状態の異常化傾向を分析判定する(S16)。更に、今回得られた心理状態指標情報のみを用いた異常分析判定である都度異常分析判定を行う(S17)。
【0049】
異常化傾向の分析判定(ステップS16)と都度異常分析判定(ステップS17)の少なくとも一方において、異常となっているかを検出する(S18)。このステップS18においてYESへ分岐すると、電子錠220を施錠状態のまま維持し、警報発生器270において警報音などを発生させ、出力端末260に対象者の氏名等と共に各指標値の情報を出力するなどのリスク管理処理のための所定出力を行う(S19)。
【0050】
一方、上記のステップS18においてNOへ分岐すると、電子錠220を開状態へ移行させ、出力端末260に対象者の氏名等と「正常」の旨のメッセージを出力するなどの所定出力を行う(S20)。
【0051】
以上の通り、本実施形態によれば、心理状態の異常化傾向を分析判定し、この分析判定に基づき出力制御を行うので、長期間かけて潜入し不正を働く機会を狙う者に対して有効であり、このような不正を未然に回避することができる。また、都度異常分析判定により分析判定し、この分析判定に基づき出力制御を行うので、突然として異常行動に出る様な者に対して有効であり、このような不正を未然に回避することができる。
【符号の説明】
【0052】
11 本人認証手段
12 算出手段
13 異常化傾向分析判定手段
14 出力制御手段
15 都度異常分析判定手段
16 記憶制御手段
200 セキュリティゾーン
210 ドア
220 電子錠
230 ゲート
240 情報収集機器
241 第1センサ
242 第2センサ
250 管理室
260 出力端末
270 警報発生器
300 システム本体
310 演算処理部
320 第1記憶手段
330 第2記憶手段