(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラス成形工程では、前記成形型の凹部の深さ方向に対する交差面を研削及び/又は研磨し、前記凹部の交差面と同じ平面形状を有する前記ガラス成形品を形成するようにした請求項1に記載のガラス成形方法。
前記研削及び/又は研磨面を形成した後に、さらに前記凹部内のガラス基材を前記成形型の残留型ごと研削及び/又は研磨する付加的ガラス加工工程を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス成形方法。
【背景技術】
【0002】
脆性材料であるガラスそのものに研削及び/又は研磨などの機械加工を施す場合、その材料の脆さから、加工サイズや微細化するために限界があった。また、複雑な形状については加工そのものに限界があった。
そのような微細なガラスを形成するために、化学的な加工によって微細ガラスを形成する技術がある。例えば、特許文献1によると、ガラス成形品として時計に用いられるぜんまい形状のスプリングが開示されている。このようなスプリングはガラスを研削及び/又は研磨することによって、所定の厚さのガラス板を形成する。次いで、ガラス板の表面にぜんまい形状のマスクを覆い、ガラス表面のマスクで隠されていないガラス部分をUV照射によって変質し、変質した後に選択エッチングを行って除去し、ゼンマイ形状のガラス製成形品が化学的な加工によって形成されている。
【0003】
ガラスと同じ脆性材料であるセラミックスを、成形型を用いて微細なセラミクス成形品を形成する技術がある。例えば、特許文献2によると、圧電セラミクスを所定形状に形成するため、シリコン基材上に反応性イオンエッチング法を用いて複数の穴を開口するようにしてシリコン型を形成している。次いで、圧電セラミクス粉体とバインダーを含むスラリーを、穴内部を含むシリコン型表面上に塗布し、該塗布膜を乾燥させたのち、バインダーを除去し、圧電セラミクスの焼結温度の下で加圧して圧電セラミクス粉体を焼成し、焼成後シリコン型をエッチング除去して微細形状の圧電セラミックを所定形状に形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、UV照射によって微細ガラスが形成される技術が特許文献1に開示され、ガラスと同様に脆性材料である微細セラミックがシリコン型によって形成される技術が特許文献2に開示されている。
しかしながら、特許文献1のように、UV照射によって形成されたガラス製品をUV照射後にさらに研削及び/又は研磨が必要となる場合がある。研削及び/又は研磨の対象が腕時計用のガラススプリングのように微細である場合は、研削及び/又は研磨作業中に成形品が破損したり傷が付きやすく、加工が困難である。
また、特許文献2の焼成セラミックによって形成されたセラミック成形材をさらに成形型形状と異なる形状に形成するために、研削及び/又は研磨が必要となる場合がある。このような場合も、セラミックが脆性材料であるので、特にそれらの成形品が微細である場合は、加工が困難である。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、微細な脆性材料を従来よりも安定して、研削及び/又は研磨することが可能なガラス成形方
法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のガラス成形方法は、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない母材を用いて凹部を有する成形型を形成する型成形工程と、前記ガラスの軟化点以上の温度でガラス基材を昇温して前記成形型の凹部に軟化ガラス又は溶融ガラスを封入し、該軟化ガラスを冷却、固化して前記ガラス基材を成形するガラス成形工程と、前記成形型の凹部に前記ガラス基材を封入した状態で該成形型ごと又は前記ガラス基材のみを研削及び/又は研磨などの機械加工をしてガラス成形品を形成するガラス加工工程と、該ガラス加工工程の後に前記成形型の残留母材を消失させて、前記ガラス成形品を前記成形型から取り除く型消失工程とを含む。
前記ガラス成形方法の前記ガラス成形工程では、前記成形型の凹部の深さ方向に対する交差面を研削及び/又は研磨し、前記凹部の交差面と同じ平面形状を有する前記ガラス成形品を形成することができる。
前記ガラス成形方法は、前記母材はシリコンであって、前記型消失工程では前記成形型をエッチングによって消失することが好ましい。
前記ガラス成形方法の前記母材はカーボンであって、前記型消失工程では前記成形型を焼失によって消失することが好ましい。
前記ガラス成形方法は、前記切断面を形成した後に、さらに前記凹部内のガラス基材を前記成形型の残留型ごと研削及び/又は研磨する付加的ガラス成形工程を含むことができる。
本明細書では、前記「ガラス軟化点」とは、ガラスが自重で軟化変形する温度で、粘度が10
7.65dpa・sになる温度をいい、「成形型の母材を消失させて」とは、成形型と成形物との単なる離型による除去は含まれず、成形型の一部又は全部が物理的、化学的に消滅することをいう。また、「軟化ガラス」とはガラスの軟化点からガラスが100%溶融する前のガラスをいい、「溶融ガラス」とは、ガラスが100%完全に溶融した状態をいう。
【発明の効果】
【0008】
以上、述べたように、本発明ガラス成形方法によれば、ガラスの軟化点より高い温度で変形しない母材を用いて凹部を有する成形型を形成する型成形工程と、前記ガラスの軟化点以上の温度でガラス基材を昇温して前記成形型の凹部に軟化ガラス又は溶融ガラスを封入し、該軟化ガラス又は溶融ガラスを冷却、固化して前記ガラス基材を成形するガラス成形工程と、前記成形型の凹部に前記ガラス基材を封入した状態で該成形型ごと又は前記ガラス基材のみを研削及び/又は研磨などの機械加工をしてガラス成形品を形成するガラス加工工程と、該ガラス加工工程の後に前記成形型の残留母材を消失させて、前記ガラス成形品を前記成形型から取り除く型消失工程とを含むので、成形型がガラス基材を保持することによって、微細なガラスやガラス部分を正確な精度で研削及び/又は研磨が可能になり、ガラスのクラックや破損を防止できる。
ガラスと母材の成形型との熱膨張差を小さくすることで寸法精度のよいガラス成形をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1のAは本発明の第1の実施形態で作成する時計のゼンマイのシリコン型の平面図、
図1のBは
図1のAのシリコン型で成形したガラス製ゼンマイの平面図である。
【
図2】
図1のAのシリコン型を用いたゼンマイの成形工程の部分断面図であり、
図2のAはシリコン板の表面をレジスト膜で覆った状態の断面図、
図2のBはレジスト膜に膜溝を形成した状態の断面図、
図2のCはシリコン板をエッチングしてゼンマイ溝を形成した後レジスト膜を除去した状態の断面図、
図2のDはシリコン板の表面に軟化ガラスを封入した状態の断面図、
図2のEはシリコン型を水平方向に研削及び/又は研磨した状態の断面図、
図4のFはシリコン板を除去したゼンマイの断面図である。
【
図3】
図3のAは本発明の第2の実施形態で作成する網目ガラスのカーボン型の平面図、
図3のBは
図3のAのカーボン型で成形された網目ガラスの平面図である。を示し
【
図4】
図3のAのカーボン型を用いた網目ガラスの成形工程の部分断面図であり、
図4のAはカーボン板をダイシングソーで網目状に溝入れして表面に溝を形成したカーボン型の断面図、
図4のBはカーボンの表面に軟化したガラスを封入した状態の断面図、
図4のCはカーボン型を水平方向に研削及び/又は研磨した状態の断面図、
図4のDはカーボンを除去した網目ガラスの断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態で作成したプリズムの斜視図である。
【
図6】
図5のプリズムを形成するためのウエハーに丸孔を形成した成形型の平面図である
【
図7】
図5のプリズムの成形工程の断面図であり、
図7のAはシリコン板に孔を形成したシリコン型の断面図、
図7のBは成形型の表面に軟化ガラスを封入した状態の断面図、
図7のCはシリコン型を水平方向に研削及び/研磨した後のガラス基材と残留シリコンの断面図である。
図7のDはプリズム部の傾斜面を形成した状態を示す断面図、
図7のEはシリコンを除去したプリズムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態におけるガラス成形について、図面を参照しながら説明する。
図1のAはガラス製ヒゲゼンマイの成形型の平面図、
図1のBはそのシリコン型で成形されたヒゲゼンマイの平面図である。シリコン製の成形型10は、ガラス製のヒゲゼンマイ(以下、単にゼンマイと呼ぶ)1を成形するための型である。ゼンマイ1は腕時計の振動するテンプ(図示せず)に正確な周期を与えるものであり、時計の精度を決める役割を果たす。本実施形態では、ゼンマイ1の直径は約5mm、高さは0.1mm、肉厚は0.04mmであり、全体として微細構造である。このような微細ゼンマイ1を成形する成形型10は、本実施形態ではシリコンで形成される。
【0011】
図2のA〜Fはゼンマイの成形工程を示し、成形型10や母材のシリコン板11などの一部断面のみを示す。成形型10は
図2のAに示すように母材として厚さが一定のシリコン板11を用い、図面はシリコン板11上にレジスト膜12を形成している状態を示し、成形品としてのゼンマイ1の平面形状に適合させた部分のレジスト膜12を除去し、ゼンマイ形状の膜溝13を形成している。膜溝13は、溝の深さ方向が成形型10に対して垂直方向に形成される。
膜溝13を形成するには、レジスト膜12をシリコン板11の表面に塗布する。次いで、マスク14をレジスト膜12の上方へ配置する。マスク14は透明の石英基板14aに例えばクロム膜14bを蒸着させ、クロム膜14bの存在しない部分がゼンマイ1の平面(横断面)形状に対応する形状になる。このマスク14の上方から、例えば、紫外線(UV)を用いてレジストパターンを露光する。レジスト膜12は、紫外線の他に、遠紫外線、電子ビーム、及びX線などにより感光される。
レジスト膜12が感光されると、
図2のBに示すように、露光したシリコン板11を現像液に浸し、感光されている部分のレジスト膜を除去する。この過程でゼンマイのパターンであるレジスト膜が除去された膜溝13がシリコン板11上に現れる。
【0012】
図2のBに示す状態から異方性エッチングによってレジスト膜12の膜溝13にしたがって、
図2のCに示すように、膜溝13に沿ってシリコン板11にヒゲゼンマイ(螺旋)形状のゼンマイ溝15を形成する。ゼンマイ溝15が形成されたら、シリコン板11にはレジスト膜12が残されているので、レジスト膜12を除去する。レジスト膜12を除去することによって、
図2のCに示す成形型10が形成される。成形型10に形成されているゼンマイ溝15の幅はゼンマイ1の肉(板)厚と同じ0.04mmであり、溝の深さはゼンマイ1の高さよりも深く形成する。なお、成形型10は、ゼンマイ1を1つ形成する単体でもよく、ゼンマイ1をシリコン板の横並び若しくは縦横に複数形成するものであってもよい。複数の場合は、繰り返しパターニングにより大量に作成することができる。(型成形工程)
【0013】
成形型10を形成した後は、
図2のDに示すように、成形型10のゼンマイ溝15の表面にガラスを封入する。その方法の一つは、真空炉内に成形型を入れ、耐熱ガラス材料を成形型に載せて、真空炉内をガラスの軟化点又は軟化点以上まで昇温させ、ガラスが軟化し、自重で変形するようになったら軟化ガラスをゼンマイ溝15に自然流入又は圧入する。成形型10はガラスの軟化点で変形することがないので、ゼンマイ溝15が正確に成形される。ゼンマイ溝15にガラスを封入させた後は、ガラスを冷却、固化させる。
なお、軟化したガラスがゼンマイ溝15に入り込み難い場合は軟化したガラスに圧力を加えても良い。また、成形型10については、ゼンマイ溝15を形成したが、溝に変えて貫通孔であってもよい。ただし、軟化ガラスが貫通孔から流れ出ないように、閉塞部材(又は閉塞手段)を必要とする。ゼンマイ溝15に軟化ガラスを封入した後は、軟化ガラスを冷却、固化させる。(ガラス成形工程)
【0014】
軟化ガラス又は溶融ガラスが冷却されて固体化すると、ガラスと成形型10を離型させることなく、図示しない研削及び/又は研磨機にガラスを保持させた成形型10をそのままセットする。
次いで、
図2のDに示す成形型10の表面上のガラス基材17を研削及び/又は研磨によって取り除き、さらには成形型10の表面と裏面を研削及び/又は研磨し、ゼンマイ1の高さH1に相当する厚さになるまで成形型10のシリコン及びゼンマイ溝15の中のガラスを平面研削及び/又は研磨する。このとき、成形型10の表面に重なっているガラス層が研削及び/又は研磨され、ゼンマイ溝15の部分では成形型10のシリコン母材も一緒に研削及び/又は研磨する。この際ゼンマイ溝15内のガラスは成形型10のシリコンに密着して保持されているので、全体として一体物を研削及び/又は研磨しているのと同じであり、ガラスの研削及び/又は研磨部以外に剪断力が負荷することが殆どなく、ガラスが曲げられないので、ガラスに曲げモーメントも発生しない。したがって、ガラスのクラックや破損を防止する。この点で成形型の材質はガラスを保持でき、加工しやすい材料が好ましい。ガラスを研削及び/又は研磨するにはダイヤモンド砥石などが使用できる。
【0015】
図2のEは、高さ0.1mmに形成されたガラス成形品としてのゼンマイ1と成形型10の研削及び/又は研磨後の残留シリコン16との一体成形物18を示す。本実施形態では、成形品がゼンマイ1であるので、研削及び/又は研磨後の一体成形物18は平行(同じ厚さ)に形成されるが、成形品によっては、各部の高さが異なったり、段差を付けて研削及び/又は研磨してもよい。(ガラス加工工程)
【0016】
図2のFは、
図2のEの残留シリコンを消失させたゼンマイ1の断面図である。成形型10から残された残留シリコン(残留母材)16のみを選択エッチングによって消失させている。シリコンをエッチングによって消失させるために本実施形態では、エッチング材としてTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide)を用いて、残留シリコンを消失させて、
図1のBに示すようなゼンマイ1を形成した。(型消失工程)
【0017】
周知のとおり、ガラスは硬い素材であり割れやすく、微小部品を単体で成形の目的で研削及び/又は研磨する場合に、簡単な素材ではない。しかしながら、ガラス単体を研削及び/又は研磨するのではなく、成形型10と共にガラスを研削及び/又は研磨するので、ガラスがシリコンに一体的に保持され、研削及び/又は研磨時に剪断力が負荷しても、脆性を有するガラス素材の破損を防止できる。より精密なガラスの研削及び/又は研磨、切削加工が可能になる。
なお、時計のヒゲゼンマイを作成したが、時計の歯車や他の製品の精密部品の製造にも適応が可能である。
【0018】
次に、本発明の第2の実施形態におけるガラス成形について、図面を参照しながら説明する。
図3のAはウエハー状のカーボン板から形成された成形型の平面図、
図3のBはその成形型で成形された網目ガラスの平面図である。カーボン製の成形型20は、ガラス製の網目ガラス2を成形するための型である。網目ガラス2の一本の格子の幅は0.03mmで高さは1mmである。
図4のA〜Dは網目ガラス2の成形工程を示し、成形型20や網目ガラス2などの一部のみを示す。成形型20は母材としてカーボン板を縦横にダイシングソーなどで溝入れしたりして網目溝21を形成する。(型成形工程)
【0019】
成形型20を形成した後は、
図4のBに示すように、成形型20の表面にガラスを封入する。その方法の一つは、真空炉内に成形型20を入れ、耐熱ガラス材料を成形型に載せて、真空炉内をガラスの軟化点又は軟化点以上まで昇温させ、ガラスが軟化したら軟化ガラスを網目溝21に自然流入又は圧入する。成形型20はガラスの軟化点で変形や溶融することがないので、網目溝21が変形することがない。(ガラス成形工程)
【0020】
軟化ガラスが冷却されて固体化すると、ガラスと成形型20を離型させることなく、図示しない研削及び/又は研磨機にガラス基材24を保持させたまま成形型20をそのままセットする。次いで、
図4のCに示されるように、成形型20の表面のガラスを研削及び/又は研磨によって取り除き、さらには成形型20の表面と裏面を研削及び/又は研磨し、網目ガラス2の高さに相当する厚さH2になるまで成形型20及び網目溝21のガラス基材24を平面研削及び/又は研磨する。このとき、成形型20の表面に重なっているガラス層が研削及び/又は研磨され、網目溝21の部分では成形型20のカーボン母材も一緒に研削及び/又は研磨される。この網目溝21内のガラスは成形型20のカーボンに一体的に密着しているので、ガラスが保持されている部分には、剪断力や曲げモーメントが発生することがなく、ガラスの破損を防止する。ガラスを研削及び/又は研磨するにはダイヤモンド砥石などを使用できる。
図4のCは、ガラス成形品としての網目ガラス2と成形型20の研削及び/又は研磨後の残留カーボン23を示す。(ガラス加工工程)
【0021】
図4のDは、カーボンを消失させた網目ガラスの断面図である。成形型20から残された残留カーボン(残留母材)23のみを選択的に消失させている。カーボンを消失させるには、カーボン自体が燃えるので、カーボンを焼却炉内で焼いて焼失させることによって残留カーボン23を消失させることができる。(型消失工程)
【0022】
次に、本発明の第3の実施形態におけるガラス成形について、図面を参照しながら説明する。
図5は、微細なプリズム3を示す。プリズム3は医療用のカメラの部品として使用される。プリズム3は、ほぼ円柱形の本体4と先端のプリズム部5と本体の側面に形成された位置決め部6とから構成されている。このようなプリズムは、
図6に示すようにシリコン製のウエハーから形成される成形型30によって作成される。
【0023】
図7のA〜Dはプリズムの成形工程を示し、ウエハーからなる成形型30などの一部を示す。成形型30は母材として厚さが一定のウエハーを用い、ウエハーにプリズムを形成するための有底の丸孔31を有する成形型30が形成される。丸孔31の内径はプリズム3の本体部の外径に相当する大きさで形成される。丸孔31はウエハー面に対して直角方向に丸孔31の軸が向くように形成される。
微細な丸孔31を形成するためには、シリコンウエハーにダイヤモンドドリルによって、形成することができる。また、上記第1の実施形態と同様にフォトリソグラフィーによって、レジスト膜を形成して丸孔を形成することもできる。
なお、プリズム3を1つのみ形成する場合は、丸孔は1つでよい。(型成形工程)
【0024】
成形型30を形成した後は、
図7のBに示すように、成形型30の表面にガラスを封入する。その方法に一つは、真空炉内に成形型を入れ、耐熱ガラス材料を成形型に載せて、真空炉内をガラスの軟化点又は軟化点以上まで昇温させ、ガラスが軟化したら軟化ガラスを丸孔31に自然流入又は圧入する。成形型30はガラスの軟化点で軟化することがないので、丸孔31が変形することがない。(ガラス成形工程)
【0025】
成形型30上の軟化ガラスが冷却されて固体化すると、ガラスと成形型30を離型させることなく、図示しない研削及び/又は研磨機の固定部にガラスを保持させた成形型30をそのままセットする。
次いで、
図7のCに示されるように、成形型30の表面のガラスを研削及び/又は研磨によって取り除き、さらには成形型30の表面と裏面を研削及び/又は研磨し、プリズム3の高さに相当する厚さH3になるまで成形型30及び丸孔31を平面研削及び/又は研磨する。このとき、成形型30の表面に重なっているガラス基材32が研削及び/又は研磨され、丸孔31の部分では成形型30のシリコン母材も一緒に研削及び/又は研磨される。この際丸孔31内のガラスは成形型30のシリコンに密着、保持されているので、剪断力や曲げ応力を殆ど受けることがなく、ガラスの破損を防止する。ガラスを研削及び/又は研磨するにはダイヤモンド砥石などを使用できる。(ガラス加工工程)
【0026】
図7のCは、高さ2mmに形成された円柱形ガラスと成形型30の研削及び/又は研磨後の残留シリコンを示す。
図7のDの二点鎖線に示すように、円柱形ガラス33からプリズムを形成するため、プリズム部5の傾斜面を円柱形ガラス33の上端部に形成する。円柱形ガラス33の中心軸を通る直径を中心線にして上方から下方へ左右に広がるように、所望の角度を有する傾斜面を形成する。傾斜面は研削刃によって、円柱形ガラス33と残留シリコン34をV字形状に同時に研削する。このときも、図示しない研削機に残留シリコン34を固定して研削が可能である。こうして、円柱形ガラス33の上端部に2面のプリズム部が形成される。円柱形ガラス33の研削も円柱ガラス33は成形型30の残留シリコン34に一体的に密着しているので、剪断力や曲げ応力を殆ど受けることがなく、微細ガラスを破損することなく研削できる。
次に、プリズム3の位置決め部6を研削する。この位置決め部6の研削も残留シリコン34とともにプリズム3の本体4の外周面を軸方向に研削して平面を形成する。(付加的ガラス加工工程)
【0027】
図7のEは、シリコンを消失させたプリズム3の断面図である。成形型30から残された残留シリコン(残留母材)34のみを選択エッチングによって消失させている。シリコンをエッチングによって消失させるには、本実施形態では、エッチング材としてTMAHを用いて、残留シリコン34を消失させて、
図5に示すようなプリズムを形成した。(型消失工程)
【0028】
成形型とガラスの関係は、成形型がガラスの軟化点以上の温度で、軟化(変形)又は溶融しないことが条件であるが、成形材料となるガラスとの線膨張係数が近い材質の成形型が好ましい。
耐熱ガラスの軟化点が820℃で、ガラスの軟化点よりも高い成形型の材料として、シリコン、カーボンの他にTiやMoなどの高融点金属を用いることができる。特に金属型にした場合は、選択エッチングで型を消失させるのでガラス成形品の単体を容易に取出す利点がある。なお、種類によって差があるが、Siの溶融温度が1414℃、カーボンが3370℃、Tiが1668℃、Moが2623℃である。
また、母材として使用できるガラスの線膨張率は無アルカリガラス(テンパックス:ショット社製登録商標)が3.3×10
−6/℃、ソーダライムが9.0×10
−6/℃、D263(ショット社製)が7.2×10
−6/℃である。
成形型と使用できる材料は、Siが3.9×10
−6/℃、カーボンが3.3×10
−6/℃、Tiが8.8×10
−6/℃、Moが5.1×10
−6/℃である。
【0029】
本願発明は、ガラスを軟化点以上で成形型に軟化したガラスを流し込むことができ、成形された微細ガラスを機械加工によってガラス成形品を形成できる。
しかしながら、ガラスと母材の熱膨張係数差は精度の観点からその差が少ないほど好ましい。熱膨張係数の近いガラスと成形型を組み合わせることによって寸法精度のよいガラス成形をする効果と、熱膨張差によるガラスの破損を防ぐ効果がある。
なお、上記第1〜第3の実施形態では、ガラスを軟化点又は軟化点以上まで温度を上昇させて、ゼンマイ溝15、網目溝21、丸孔31に軟化ガラスを封入するようにしたが、溶融ガラスをゼンマイ溝15、網目溝21、丸孔31に封入しても軟化ガラスと同様の方法で、ゼンマイ1、網目ガラス2、プリズム3を生産できる。ただし、成形型が変形しない温度以下でガラスを成形する必要がある。また、軟化ガラスを封入するよりも、ガラスと成形型に熱膨張差が生じる
【0030】
以上、本発明を実施形態に基づいて添付図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく、更に他の変形あるいは変更が可能である。
例えば、上記第3の実施形態について、成形型30をシリコンによって形成したが、成形型をシリコンに変えてカーボンでも同様の形態のプリズムを形成することができ、上記第2の実施形態では成形型20をカーボンで形成したが、成形型をカーボンに変えてシリコンでも同様の形態の網目ガラスを形成することができる。
【0031】
上記実施形態では、残留型16,23,34に含まれるガラス基材17,24,32の機械加工について研削及び/又は研磨を例にあげたが、切断などの他の加工も含まれ、それらの加工を施す工作機械は、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、研削盤、歯切り盤、NC工作機械、ダイシングソーなどを用いることができる。
また、前記ガラス加工工程では、成形型10,20,30ごとガラス基材を加工したが、ガラス基材のみを加工することも可能である。