特許第6762922号(P6762922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6762922導電性コーティング液組成物および該組成物から製造された導電層を含むフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762922
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】導電性コーティング液組成物および該組成物から製造された導電層を含むフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 181/00 20060101AFI20200917BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20200917BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20200917BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200917BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20200917BHJP
   C09D 125/00 20060101ALI20200917BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200917BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20200917BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20200917BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C09D181/00
   B32B7/023
   B32B7/025
   B32B27/00 A
   B32B27/30 B
   C09D5/24
   C09D125/00
   C09D201/00
   H01B1/12 F
   H01B1/20 A
   H01B5/14 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-201038(P2017-201038)
(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公開番号】特開2019-23274(P2019-23274A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2017年10月17日
【審判番号】不服2019-7979(P2019-7979/J1)
【審判請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0092445
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】315006953
【氏名又は名称】エスケイシー ハイテク アンド マーケティング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソクジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンギ
(72)【発明者】
【氏名】キム ギョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ビン グァンウン
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 瀬下 浩一
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−43496(JP,A)
【文献】 特開2017−82187(JP,A)
【文献】 特開2015−117367(JP,A)
【文献】 特開2011−201933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D5/24
H01B1/12,1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10重量%〜70重量%の水系分散されたポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(poly(3,4−ethylenedioxythiophene)/polystyrene sulfonate;PEDOT/PSS)、1重量%〜20重量%の有機バインダー、10重量%〜80重量%の有機溶媒、0.05重量%〜1重量%のシランカップリング剤、0.02重量%〜0.4重量%の界面活性剤、および0.001重量%〜0.01重量%のpH調整剤を含み、
前記水系分散されたポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸が、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸自体を1.0重量%〜1.3重量%含み、
前記有機溶媒が、アルコール系有機溶媒とアミド系有機溶媒とを10〜30:1の重量比で含み、
前記pH調整剤が、2−ジメチルアミノエタノール(2−dimethylaminoethanol)である、導電性コーティング液組成物。
【請求項2】
前記有機バインダーが、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリアクリル樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の導電性コーティング液組成物。
【請求項3】
前記アルコール系有機溶媒が、炭素数1〜4のアルコールである、請求項1に記載の導電性コーティング液組成物。
【請求項4】
前記アミド系有機溶媒が、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の導電性コーティング液組成物。
【請求項5】
前記シランカップリング剤が、トリメトキシ系シラン、トリエトキシ系シラン、テトラメトキシ系シラン、およびテトラエトキシ系シランからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の導電性コーティング液組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、シリコン系界面活性剤またはアセチレン系界面活性剤である、請求項1に記載の導電性コーティング液組成物。
【請求項7】
透明基材フィルムおよび導電層を含み、
前記導電層が、10重量%〜70重量%の水系分散されたポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)、1重量%〜20重量%の有機バインダー、10重量%〜80重量%の有機溶媒、0.05重量%〜1重量%のシランカップリング剤、0.02重量%〜0.4重量%の界面活性剤、および0.001重量%〜0.01重量%のpH調整剤を含む導電性コーティング液組成物から形成されており、
前記水系分散されたポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸が、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸自体を1.0重量%〜1.3重量%含み、
前記有機溶媒が、アルコール系有機溶媒とアミド系有機溶媒とを10〜30:1の重量比で含み、
前記pH調整剤が、2−ジメチルアミノエタノール(2−dimethylaminoethanol)である、フレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【請求項8】
前記透明基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)または無色透明ポリイミド(PI)を含み、平均厚さは12μm〜200μmである、請求項に記載のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【請求項9】
前記導電層の平均厚さが100nm〜1000nmである、請求項に記載のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【請求項10】
前記透明導電性フィルムは、5Vの電圧を印加しながら曲げ半径(bending radius)が3mmになるように30万回曲げ処理した後、
(式1)
【数1】
前記式(1)により計算した表面抵抗の変化が−5.0%〜5.0%である、請求項に記載のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【請求項11】
前記透明導電性フィルムは、表面抵抗が100Ω/□〜200Ω/□であり、10cm×10cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後に測定したヘイズが1%未満である、請求項に記載のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【請求項12】
前記透明導電性フィルムは、可視光の透過率が80%以上であり、水に対する接触角が60°〜85°である、請求項に記載のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティング液組成物および該組成物から製造された導電層を含むフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムに関するもので、前記透明導電性フィルムは、多回曲げの後でも表面抵抗の変化が少なく光透過率が高いので、フレキシブルディスプレイへの適用が好適である。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ用として最も多く使われている透明電極の材質は、ITO(インジウム−スズ酸化物、Indium Tin Oxide)である。しかし、透明電極をITOから形成する場合、過剰なコストがかかるだけでなく、大面積を実現するのは難しいという短所がある。特に、大面積でITOをコーティングすると、表面抵抗の変化が大きく、ディスプレイの輝度および発光効率が低下する欠点がある。さらに、ITOの主原料であるインジウムは希少鉱物であり、ディスプレイ市場が拡大されることにつれ、急速に枯渇している。このようなITOの欠点を克服するために、柔軟性に優れてコーティング工程が単純である、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/polystyrene sulfonate;PEDOT/PSS)を利用して透明電極を形成するための研究が進められている。
【0003】
一方、最近では、液晶表示素子の使用が増加するにつれ、これを構成する素材の使用も増加している。中でも、高い透明度が要求される部分に、金属やガラスなどの材料の代替として様々な透明プラスチック素材が広く用いられている。このうち、液晶表示素子のパネル表面は外部に露出されるので、様々な外部刺激からパネルを保護するための透明基材が広く用いられている。
【0004】
しかし、透明電極としてPEDOT/PSSを使用し、透明基材としてポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate;PET)を使用してディスプレイを形成する場合は、熱処理工程中にPETにおいて未反応オリゴマーが表面に溶出され、ヘイズ(haze)値が上昇したり、透明電極を損傷させたりして、表面抵抗の上昇を誘発する恐れがある。また、多回曲げによる表面抵抗の変化が大きいため、多回曲げの際に高い物性安定性が要されるフレキシブルディスプレイに適用するには不適である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第2011−0095915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、多回曲げ後にも表面抵抗の変化が少なく、ヘイズが低くて光透過率が高く、フレキシブルディスプレイに適用するのに好適な導電層を製造することができる導電性コーティング液組成物および該組成物から製造された導電層を含む透明導電性フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/polystyrene sulfonate;PEDOT/PSS)、有機バインダー、有機溶媒、シランカップリング剤および界面活性剤を含む、導電性コーティング液組成物を提供する。
【0008】
また、他の目的を達成するために、本発明は、透明基材フィルムおよび導電層を含み、前記導電層が前記導電性コーティング液組成物から形成された、フレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る導電性コーティング液組成物から形成された導電層を含むフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムは、多回曲げの後も表面抵抗の変化が少ないのみならず、ヘイズが低くて光透過率が高い利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施例に係るフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムの断面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムの片面に金属層が積層されたフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性コーティング液組成物は、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/ polystyrene sulfonate;PEDOT/PSS)、有機バインダー、有機溶媒、シランカップリング剤および界面活性剤を含んでいる。
【0012】
前記導電性コーティング液組成物は、10重量%〜70重量%のPEDOT/PSS、1重量%〜20重量%の有機バインダー、10重量%〜80重量%の有機溶媒、0.05重量%〜1重量%のシランカップリング剤、および0.02重量%〜0.4重量%の界面活性剤を含むことができる。具体的に、前記導電性コーティング液組成物は、30重量%〜60重量%のPEDOT/PSS、1重量%〜10重量%の有機バインダー、40重量%〜65重量%の有機溶媒、0.1重量%〜1重量%のシランカップリング剤、および0.1重量%〜0.4重量%の界面活性剤を含むことができる。より具体的に、前記導電性コーティング液組成物は、35重量%〜50重量%のPEDOT/PSS、1重量%〜5重量%の有機バインダー、45重量%〜60重量%の有機溶媒、0.5重量%〜1重量%のシランカップリング剤、および0.1重量%〜0.4重量%の界面活性剤を含むことができる。
【0013】
前記PEDOT/PSSは、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)に、ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)がドープされた水分散導電性高分子である。前記PEDOT/PSSは、チオフェン(thiophene)の構造に、エチレンジオキシ(ethylene dioxy)基を環の形で有しており、3番および4番の位置に置換されているエチレンジオキシ基による電子供与の効果によってチオフェンより低い光学バンドギャップ(760nm〜780nmまたは1.6eV〜1.7eV)を有して、酸化/還元の電位差に応じて変色が可能であり、酸化状態で吸収バンドが赤外線領域に存在して透明性の確保が可能な利点がある。
【0014】
前記有機バインダーは、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリアクリル樹脂からなる群より選択された1種以上を含むことができる。また、前記有機バインダーは水分散性樹脂であり得る。
【0015】
前記有機バインダーの重量平均分子量は、5000g/mol〜30000g/molであり得る。具体的に、前記有機バインダーの重量平均分子量は、10000g/mol〜20000g/molであり得る。
【0016】
前記有機溶媒は、アルコール系有機溶媒およびアミド系有機溶媒を含むことができる。具体的に、前記有機溶媒は、アルコール系有機溶媒とアミド系有機溶媒とを10〜30:1の重量比で含むことができる。より具体的に、前記有機溶媒は、アルコール系有機溶媒とアミド系有機溶媒とを10〜25:1の重量比、15〜25:1の重量比、または17〜25:1の重量比で含むことができる。有機溶媒とアミド系有機溶媒との混合比が前記範囲内である場合、導電性コーティング液組成物のコーティング後の導電度が上昇して、低い表面抵抗を有するコーティング層を得ることができる。
【0017】
前記アルコール系有機溶媒は、導電性コーティング液組成物の表面張力を下げてコーティング性を向上させる役割をする。具体的に、前記アルコール系有機溶媒は、炭素数1〜4のアルコールであり得る。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはn−ブチルアルコールであり得る。
【0018】
前記アミド系有機溶媒は、製造された導電層の導電率を向上させる役割をする。具体的に、前記アミド系有機溶媒は、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N−ジメチルアセトアミド、およびN−メチルピロリドンからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0019】
前記シランカップリング剤は、導電性コーティング液組成物の付着力を向上させ、透明基材フィルム上に導電層の積層を容易にする役割をする。具体的に、前記シランカップリング剤は、トリメトキシ系シラン、トリエトキシ系シラン、テトラメトキシ系シラン、およびテトラエトキシ系シランからなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0020】
前記トリエトキシ系シランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン(2-(3,4-epoxycyclohexyl)ethyltriethoxy silane)、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxy silane)、(ペンタフルオロフェニル)トリエトキシシラン((pentafluorophenyl)triethoxy silane)、(3−グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン((3-glycidyloxypropyl)triethoxy silane)、または(4−クロロフェニル)トリエトキシシラン((4-chlorophenyl)triethoxy silane)で有り得る。
【0021】
前記トリメトキシ系シランは、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-glycidyloxypropyl)trimethoxy silane)、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン((3-chloropropyl)trimethoxy silane)、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-mercaptopropyl)trimethoxy silane)、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン((3-glycidyloxypropyl)trimethoxy silane)、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-aminopropyl)trimethoxy silane)、[3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン([3-(2-aminoethylamino)propyl]trimethoxy silane)、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン((N、N-dimethylaminopropyl)trimethoxy silane)、(3−ブロモプロピル)トリメトキシシラン((3-bromopropyl)trimethoxy silane)または(3−ヨードプロピル)トリメトキシシラン((3-iodopropyl)trimethoxysilane)で有り得る。
【0022】
前記界面活性剤は、シリコン系界面活性剤またはアセチレン系界面活性剤で有り得る。
【0023】
前記シリコン系界面活性剤は、変性シリコン系界面活性剤で有り得る。例えば、前記シリコン系界面活性剤の市販品としては、BYK社のBYK−378が挙げられる。
【0024】
例えば、前記アセチレン系界面活性剤の市販品としては、Air Products社のDynol604が挙げられる。
【0025】
前記導電性コーティング液組成物は、pH調整剤をさらに含むことができる。具体的に、前記pH調整剤は、2−ジメチルアミノエタノール(2-dimethylaminoethanol)、2,2’−イミノジエタノール(2,2'-iminodiethanol)、および2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(2,2',2''-nitrilotriethanol)からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0026】
前記導電性コーティング液組成物の総重量を基準に、0.001重量%〜0.01重量%のpH調整剤を含むことができる。具体的には、前記導電性コーティング液組成物の総重量を基準に、0.001重量%〜0.005重量%のpH調整剤を含むことができる。
【0027】
本発明のフレキシブルディスプレイ用透明導電性フィルムは、透明基材フィルムおよび導電層を含み、前記導電層がPEDOT/PSS、有機バインダー、有機溶媒、シランカップリング剤および界面活性剤を含む導電性コーティング液組成物から形成される。
【0028】
前記導電性コーティング液組成物は前述の通りである。
【0029】
前記導電層の平均厚さは、100nm〜1000nmで有り得る。具体的に、前記導電層の平均厚さは、100nm〜700nmで有り得る。
【0030】
前記透明基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリイミド(PI)もしくは無色透明ポリイミド(PI)を含むことができる。具体的に、前記透明基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)または無色透明ポリイミド(PI)から構成され得る。
【0031】
前記透明基材フィルムは、平均厚さが12μm〜200μmで有り得る。具体的に、前記透明基材フィルムは、平均厚さが15μm〜150μm、15μm〜130μm、または20μm〜130μmで有り得る。
【0032】
前記透明導電性フィルムは、5Vの電圧を印加しながら曲げ半径(bending radius)が3mmになるように30万回の曲げ処理した後、下記式(1)により計算した表面抵抗の変化が−5.0%〜5.0%であり得る。具体的に、前記透明導電性フィルムは、5Vの電圧を印加しながら曲げ半径が3mmになるように30万回曲げた後、下記式(1)により計算した表面抵抗の変化が0〜5.0%であり得る。
【0033】
(式1)

【産業上の利用可能性】
【0034】
前記透明導電性フィルムは、表面抵抗が100Ω/□〜200Ω/□、または150Ω/□〜200Ω/□であり、10cm×10cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後に測定したヘイズが1%未満であり得る。具体的に、前記透明導電性フィルムは、表面抵抗が150Ω/□〜180Ω/□であり、10cm×10cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後に測定したヘイズが0.7%未満であり得る。
【0035】
前記透明導電性フィルムは、可視光に対する透過率が80%以上であり、水に対する接触角が60°〜85°であり得る。前記透明導電性フィルムは、可視光に対する透過率が80%以上であり、水に対する接触角が63°〜84°であり得る。
【0036】
以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0037】
(実施例)
以下、実施例および比較例において用いた化合物の製造社および製品名を下記表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
(実施例1:透明導電性フィルムの製造)
水系分散されたPEDOT−PSSを42.9g、有機バインダー−1を2.524g、シランカップリング剤−1を0.9g、界面活性剤−1を0.3g、pH調整剤を0.003g、有機溶媒−1を2.6g、および有機溶媒−2を50.773gを混合して導電性コーティング液組成物を得た。以後、導電性コーティング液組成物をPET基材フィルム(製造社:SKC、製品名:TU63、平均厚さ:50μm)の片面にウェットコーティングし、80℃で3分間乾燥および熱硬化して平均厚さ620nmの導電層を形成し、平均厚さ50.62μmの透明導電性フィルムを製造した。
【0040】
(実施例2〜8)
PEDOT−PSS、有機バインダー、シランカップリング剤、界面活性剤、pH調整剤、および有機溶媒の種類や含有量を変化させたことを除いては、実施例1と同様の方法で、平均厚さ50.62μmの透明導電性フィルムを製造した。
【0041】
【表2】
【0042】
(実施例9)
基材フィルムとしてポリイミドフィルム(製造社:SKC、製品名:CtPI、平均厚さ:50μm)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で、平均厚さ50.62μmの透明導電性フィルムを製造した。
【0043】
(実験例1:透明導電性フィルムの物性評価)
実施例1〜9の透明導電性フィルムの物性を下記のように評価して、表3に示した。
【0044】
(1)表面抵抗
透明導電性フィルムを50cm×50cm(横×縦)で切断した後、三菱ケミカルアナリテック社のMCP−T370を使用して導電層の表面抵抗を測定した。
【0045】
(2)ヘイズ
透明導電性フィルムを10cm×10cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後、日本電色工業社のNDH2000Nを使用して、ISO14782規格に準拠してヘイズを測定した。
【0046】
(3)透過率
透明導電性フィルムを対象に、可視光(380nm〜780nm)に対する透過率は、日本電色工業社社NDH2000Nを使用して測定した。
【0047】
(4)接触角
透明導電性フィルムを1cm×5cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後、水滴を一滴落とし、コーティング面と水滴との間の接線をなす角度を測定して接触角として判断した。
【0048】
(5)付着性(クロスハッチカット、cross hatch cut)
透明導電性フィルムを20cm×20cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後、ISO2409規格に準拠してクロスハッチカットによる付着性を測定した。
【0049】
【表3】
【0050】
(実験例2:透明導電性フィルムの柔軟性評価)
実施例1および9の透明導電性フィルムの柔軟性を評価するために、透明導電性フィルムを15mm×50mm(横×縦)で切断した後、互いに向かい合うクランプに、切断した透明導電性フィルム(以下、「サンプル」と言う)を装着する。両側のクランプが互いに隣接しながら、その間に位置するサンプルが曲げられる(bending)構造で、曲げ半径(bending radius)が1mmまたは3mmになるように、両クランプ間のサンプル長さを50mmから13mmに調整し、30万回の曲げ処理(bending)の間にDC5Vの電圧を印加して表面抵抗を測定した。また、前記曲げ処理は、折り畳んだ時に導電層が外側(引張)または内側(圧縮)になるように行い、表面抵抗の最大値および最小値、並びに30万回の曲げ処理後の表面抵抗を測定した。実施例1のフィルムの測定結果を表4に、実施例9のフィルムの測定結果を表5に示した。
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
表4および5に示すように、実施例の透明導電性フィルムは、屈曲後の表面抵抗の変化率が少なく、屈曲後の表面抵抗が屈曲前の測定誤差の範囲内にあることが分かった。
【0054】
(実験例3:透明導電性フィルムの金属付着力の評価)
実施例1の透明導電性フィルムの導電層上に銅(Cu)または銀(Ag)を、表6の真空度、ラインスピード、前処理条件、および成膜条件に応じて、ロールツーロール金属スパッタリング法で金属層を積層した。その後、下記のように物性を評価して表7に示した。
【0055】
【表6】
【0056】
(1)比抵抗(resistivity)および表面抵抗
透明導電性フィルムを10cm×10cm(横×縦)で切断した後、三菱ケミカルアナリテック社のMCP−T370を使用して比抵抗および伝導層の表面抵抗を測定した。
【0057】
(2)付着性(cross hatch cut)
透明導電性フィルムを20cm×20cm×50μm(縦×横×厚さ)に切断した後、ISO2409規格に準拠して、クロスハッチカットによる付着性を測定した。
【0058】
【表7】
【0059】
表7から分かるように、本願発明の透明導電性フィルムは金属付着力に優れており、金属蒸着後の表面抵抗が低いだけでなく、外観が良好であり、狭額縁(narrow bezel)ディスプレイに適用するのに好適であることが分かった。
【符号の説明】
【0060】
100:透明導電性フィルム
10:導電層
20:透明基材フィルム
30:金属層

図1
図2