(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)が、シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、合計で85重量%以上の割合で含まれる、請求項2記載のシクロホスファゼン混合体。
【発明を実施するための形態】
【0039】
1.定義
本明細書において、R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5で示される各基は、次のとおりである。
【0040】
ハロゲン原子としては、特に制限はなく、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0041】
炭素数1〜4のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0042】
炭素数1〜4のアルコキシ基としては、特に制限はなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状アルコキシ基が挙げられる。
【0043】
炭素数2〜7のアルケニル基としては、特に制限はなく、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、1−エチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基、1−メチル−3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基、1,1−ジメチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−3−ブテニル基等の任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する炭素数2〜7の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0044】
炭素数2〜7のアルケニルオキシ基としては、特に制限はなく、例えば、ビニルオキシ基、1−プロペニルオキシ基、アリルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、2−ブテニルオキシ基、3−ブテニルオキシ基、1−メチル−2−プロペニルオキシ基、1,3−ブタジエニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニルオキシ基、3−ペンテニルオキシ基、4−ペンテニルオキシ基、1,1−ジメチル−2−プロペニルオキシ基、1−エチル−2−プロペニルオキシ基、1−メチル−2−ブテニルオキシ基、1−メチル−3−ブテニルオキシ基、1−ヘキセニルオキシ基、2−ヘキセニルオキシ基、3−ヘキセニルオキシ基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニルオキシ基、1,1−ジメチル−2−ブテニルオキシ基、1,1−ジメチル−3−ブテニルオキシ基等の任意の位置に少なくとも1つの二重結合を有する炭素数2〜7の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0045】
炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、特に制限はなく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜8の環状アルキル基が挙げられる。
【0046】
炭素数3〜8のシクロアルコキシ基としては、特に制限はなく、例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基等の炭素数3〜8の環状アルコキシ基が挙げられる。
【0047】
なお、本明細書において、「n−」はnormal、「sec−」はsecondary、及び「tert−」はtertiaryを意味する。
【0048】
2.シクロホスファゼン化合物の混合体
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体(以下、「シクロホスファゼン混合体」ともいうことがある。)は、一般式(I):
【0050】
[式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜7のアルケニル基、炭素数2〜7のアルケニルオキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルコキシ基、ニトロ基及びシアノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基が1個又は2個以上置換していてもよいフェニル基を示す。]
で表される構成単位が複数個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体であって、
当該構成単位が3個、4個及び5個結合してなるシクロホスファゼン化合物を含み、
(1)前記構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物は、一般式(I−A):
【0052】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同じ。]
で表されるシクロホスファゼン化合物(I−A)であり、
(2)該シクロホスファゼン化合物(I−A)には、3個のR
1及び3個のR
2のうち、2個が下記基(II):
【0054】
[式中、R
3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。
R
4は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基を示す。
mは0〜4の整数を示す。
mが2以上の整数を示す場合、m個のR
4は、同一又は異なっていてもよい。]
であるシクロホスファゼン化合物(I−A2)、及び
3個が上記基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A3)が含まれ、かつ
(3)該シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)は、上記シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、合計で80重量%以上の割合で含まれている。
【0055】
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体は、構成単位として上記一般式(I)を複数個有するシクロホスファゼン化合物の混合体であり、該混合体中に、当該構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物、当該構成単位が4個結合してなるシクロホスファゼン化合物及び当該構成単位が5個結合してなるシクロホスファゼン化合物が含まれている。
【0056】
ここで、当該構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物は、一般式(I)で表される構成単位が3個結合して環構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(I−A)(以下、「3量体」、又は「シクロホスファゼン化合物(I−A)」ということもある)である。
【0057】
当該構成単位が4個結合してなるシクロホスファゼン化合物は、一般式(I)で表される構成単位が4個結合して環構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(I−B)(以下、「4量体」、又は「シクロホスファゼン化合物(I−B)」ということもある)である。
【0058】
当該構成単位が5個結合してなるシクロホスファゼン化合物は、一般式(I)で表される構成単位が5個結合して環状構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(I−C)(以下、「5量体」、又は「シクロホスファゼン化合物(I−C)」ということもある)である。
【0059】
シクロホスファゼン化合物(I−A)、(I−B)及び(I−C)の各構造式は、以下のとおりである。
【0061】
[式中、R
1及びR
2は前記に同じ。]
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体は、少なくとも上記シクロホスファゼン化合物(I−A)、(I−B)及び(I−C)を含んでいればよい。本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体には、上記シクロホスファゼン化合物(I−A)、(I−B)及び(I−C)に加えて、一般式(I)で表される構成単位が6個以上結合してなるシクロホスファゼン化合物が含まれていてもよく、その場合のシクロホスファゼン化合物の構成単位の数(何量体であるか)は特に制限されない。例えば、後述する一般式(I)で表される構成単位が6〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物(I−D〜I−N)(以下、「6量体〜15量体」、又は「シクロホスファゼン化合物(I−D〜I−N)」ということもある)が全て含まれていてもよいし、又は、前記シクロホスファゼン化合物(I−D〜I−N)の少なくとも1種、例えば、シクロホスファゼン化合物(I−D〜I−K)(6量体〜12量体)が含まれていてもよい。あるいは、例えば、16量体、17量体等の該構成単位が15より多い数で結合してなる多量体が含まれていてもよい。
【0062】
本発明の具体的なシクロホスファゼン化合物の混合体として、一般式(I):
【0064】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同じ。]
で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体であって、
(1)該シクロホスファゼン化合物の混合体には、一般式(I−A):
【0066】
[式中、R
1及びR
2は、前記と同じ。]
で表されるシクロホスファゼン化合物(I−A)が含まれ、
(2)該シクロホスファゼン化合物(I−A)には、3個のR
1及び3個のR
2のうち、2個が下記基(II):
【0068】
[式中、R
3、R
4及びmは前記と同じ。]
であるシクロホスファゼン化合物(I−A2)、及び
3個が上記基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A3)が含まれ、かつ
(3)該シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)は、上記シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、合計で80重量%以上の割合で含まれている、シクロホスファゼン化合物の混合体が挙げられる。
【0069】
ここで、上記「一般式(I)で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体」とは、上述の3量体から15量体、すなわち、シクロホスファゼン化合物(I−A)、(I−B)、(I−C)、(I−D)、(I−E)、(I−F)、(I−G)、(I−H)、(I−I)、(I−J)、(I−K)、(I−L)、(I−M)及び(I−N)を全て含んでいるシクロホスファゼン化合物の混合体をいう。
【0070】
上記一般式(I)で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体は、以下の組成のものが好ましい。
【0071】
一般式(I)で表される構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物(I−A)は、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、60重量%以上、好ましくは60〜80重量%含まれる。
【0072】
一般式(I)で表される構成単位が4個結合してなるシクロホスファゼン化合物(I−B)は、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、10〜30重量%、好ましくは10〜25重量%含まれる。
【0073】
一般式(I)で表される構成単位が5個結合してなるシクロホスファゼン化合物(I−C)は、シクロホスファゼン化合物の混合体中に20重量%未満含まれる。
【0074】
一般式(I)で表される構成単位が6〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物(I−D〜I−N)は、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、20重量%未満含まれる。
【0075】
上記シクロホスファゼン化合物(I−C)と上記シクロホスファゼン化合物(I−D〜I−N)とが、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、合計で20重量%未満含まれることが好ましい。
【0076】
これらのシクロホスファゼン化合物(I−A)、(I−B)、(I−C)及び(I−D〜I−N)は、それぞれ上記範囲の含有量で、且つ合計が100重量%になるように適宜選択される。
【0077】
上記一般式(I)で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体として、
上記シクロホスファゼン化合物(I−A)と上記シクロホスファゼン化合物(I−B)とが、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、合計で80重量%以上存在する混合体がより好ましく;
上記シクロホスファゼン化合物(I−A)と上記シクロホスファゼン化合物(I−B)とが、シクロホスファゼン化合物の混合体中に、合計で85重量%以上存在しているのが更に好ましい。
【0078】
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体中の上記シクロホスファゼン化合物は、上記基(II)で表されるアリルフェニル基を有しており、該アリルフェニル基は、ジエノフィルと付加的環化反応することが可能である。
【0079】
すなわち、本発明のシクロホスファゼン混合体は、該アリルフェニル基が、一般式(I)で表される構成単位を有するシクロホスファゼン化合物1分子中に、複数有することによって、該シクロホスファゼン化合物とジエノフィルとが反応し、強固な熱硬化性樹脂を得ることができる。
【0080】
特に、一般式(I)で表される構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物(3量体)は、その構造上置換可能部位は6個存在するが、その置換可能部位のうち2〜5個、好ましくは2〜4個、更に好ましくは2又は3個が基(II)で表されるアリルフェノキシ基で置換されたシクロホスファゼン化合物が、強固で且つ強靭な樹脂を与えることができる。
【0081】
また、一般式(I)で表される構成単位が4個結合してなるシクロホスファゼン化合物(4量体)は、その構造上置換可能部位は8個存在するが、その置換可能部位のうち2〜8個、好ましくは3〜7個、更に好ましくは3〜5個が基(II)で表されるアリルフェノキシ基で置換されたシクロホスファゼン化合物は、強固で且つ強靭な樹脂を与えることができる。
【0082】
特に、これらシクロホスファゼン化合物の1分子中に複数の基(II)で表されるアリルフェノキシ基が置換したシクロホスファゼン化合物は、一般式(I)で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体中に、一定以上の割合で存在することで、本発明の効果を発揮することができる。
【0083】
シクロホスファゼン化合物(I−A)(3量体)
一般式(I)で表される構成単位が3個結合してなるシクロホスファゼン化合物(3量体)は、上記シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)だけでなく、一般式(I−A)で表される3個のR
1及び3個のR
2のうち、0個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A0)、
1個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A1)、
4個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A4)、
5個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A5)、及び/又は
6個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−A6)を含むことができる。
【0084】
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体は、シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)は、シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、合計で80重量%以上の割合で含まれているが、中でも、より強靭性を有する樹脂を提供する観点で、シクロホスファゼン化合物(I−A2)及びシクロホスファゼン化合物(I−A3)は、シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、85重量%以上存在することが好ましく、さらに87重量%以上存在することがより好ましい。
【0085】
さらに、本発明のシクロホスファゼン混合体において、3量体は、上記シクロホスファゼン化合物(I−A2)、シクロホスファゼン化合物(I−A3)及びシクロホスファゼン化合物(I−A4)を含み、該シクロホスファゼン化合物(I−A2)、シクロホスファゼン化合物(I−A3)及びシクロホスファゼン化合物(I−A4)が、シクロホスファゼン化合物(I−A)中に、合計で80重量%以上存在することがより好ましく、さらに90重量%以上存在することがより好ましい。
【0086】
シクロホスファゼン化合物(I−B)(4量体)
一般式(I)で表される構成単位が4個結合してなるシクロホスファゼン化合物(4量体)は、上記シクロホスファゼン化合物(I−B3)、シクロホスファゼン化合物(I−B4)及びシクロホスファゼン化合物(I−B5)だけでなく、一般式(I−B)で表される4個のR
1及び4個のR
2のうち、
0個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B0)、
1個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B1)、
2個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B2)、
6個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B6)、
7個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B7)、及び/又は
8個が基(II)であるシクロホスファゼン化合物(I−B8)を含むことができる。
【0087】
本発明のシクロホスファゼン混合体において、シクロホスファゼン化合物(I−B3)、シクロホスファゼン化合物(I−B4)及びシクロホスファゼン化合物(I−B5)は、4量体中に、合計で80重量%以上の割合で含まれていることが好ましく、さらに、85重量%以上の割合で含まれていることがより好ましい。
【0088】
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体において、R
1及びR
2としては、上述のとおり、基(II)で表されるアリルフェニル基を有するが、該アリルフェニル基以外の置換基としては、同一又は異なって、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜7のアルケニル基、炭素数2〜7のアルケニルオキシ基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルコキシ基、ニトロ基及びシアノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基が1個又は2個以上置換していてもよいフェニル基(ただし、基(II)で表されるアリルフェニル基を除く)が挙げられ、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びシアノ基からなる群から選ばれた少なくとも1種の置換基が1個又は2個以上置換していてもよいフェニル基であり、より好ましくは無置換のフェニル基である。
【0089】
基(II)で表されるアリルフェニル基としては、フェニル環上任意の位置に基(A):
【0091】
[式中、R
3は、前記と同じ。]
が置換したフェニル基であれば、特に限定はなく、基(A)がオルト位又はパラ位に置換したフェニル基が好ましく、オルト位に置換したフェニル基が特に好ましい。
【0092】
R
3としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、中でも、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0093】
R
4としては、フェニル環上の置換可能な位置に置換する、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数1〜4のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を表す。これらの置換基の中でもメチル基又はメトキシ基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0094】
mは、R
4の置換基数を表し、0〜4の整数であり、中でもmは、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0095】
nは、R
5の置換基数を表し、0〜4の整数であり、中でもnは、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0096】
本発明のシクロホスファゼン混合体は、JIS K6751に基づき測定された酸価が、シクロホスファゼン混合体1gに対して、0.5mgKOH以下が好ましく、0.1mgKOH以下がより好ましい。
【0097】
本発明のシクロホスファゼン混合体は、JIS K7243−2に基づき測定された加水分解性塩素が、0.05%以下が好ましく、0.01%以下がより好ましい。該加水分解性塩素とは、シクロホスファゼン混合体中に不純物として含まれ、加水分解により塩酸を生成する物質の総称である。
【0098】
なお、本明細書中において、「含有する」、「含む」又は「含んでなる」との表現については、「含有する」、「含む」、「実質的にのみからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0099】
3.シクロホスファゼン混合体の製造方法
本発明のシクロホスファゼン混合体の製造方法は、
一般式(III):
【0101】
[式中、Xは前記と同じ。]
で表される構成単位が複数個、例えば3〜15個結合してなるハロシクロホスファゼン化合物の混合体(以下、「ハロシクロホスファゼン混合体」ということもある。)と、アリルフェノラート化合物とを反応させる第1工程、及び
第1工程で得られた化合物とフェノラート化合物とを反応させる第2工程を備える。
【0102】
第1工程
第1工程は、上記ハロシクロホスファゼン混合体と、アリルフェノラート化合物とを反応させる工程である。
【0103】
ハロシクロホスファゼン混合体としては、上記一般式(III)で表される構成単位が複数個、例えば3〜15個結合してなるハロシクロホスファゼン化合物の混合体である。具体的には、ハロシクロホスファゼン混合体として、例えば、
一般式(III)で表される構成単位が3個結合して環構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(III−A)(以下、「ハロシクロホスファゼン化合物(III−A)」ということもある);
一般式(III)で表される構成単位が4個結合して環構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(III−B)(以下、「ハロシクロホスファゼン化合物(III−B)」ということもある);
一般式(III)で表される構成単位が5個結合して環状構造を形成してなるシクロホスファゼン化合物(III−C)(以下、「ハロシクロホスファゼン化合物(III−C)」ということもある);及び
一般式(III)で表される構成単位が6〜15個結合してなるハロシクロホスファゼン化合物(III−D〜III−N)等を含んでいるハロシクロホスファゼン化合物の混合体が挙げられる。
【0104】
該ハロシクロホスファゼン混合体は、公知の方法により製造することができ、例えば、日本特許公開昭57−87427号公報、日本特許公告昭58−19604号公報、日本特許公告昭61−1363号公報、日本特許公告昭62−20124号公報、H、R、Allcock著、“Phosphorus−Nitrogen Compounds”、Academic Press(1972)、J.E.Mark、H.R.Allcock、R.West著、“Inorganic Polymers”Prentice−Hall International Inc.,(1992)等に記載の公知の方法に従って製造できる。
【0105】
その一例を示せば、まずクロルベンゼン又はテトラクロルエタン中で、塩化アンモニウムと五塩化リン(又は塩化アンモニウムと三塩化リンと塩素)とを、120〜130℃程度で反応させて、脱塩酸化することで製造できる。
【0106】
アリルフェノラート化合物は、一般式(IV):
【0108】
[式中、Mは、アルカリ金属を示す。R
3、R
4及びmは前記と同じ。]
で表される化合物(IV)である。具体的には、該アリルフェノラート化合物としては、例えば、ナトリウム 2−アリルフェノラート、ナトリウム 4−アリルフェノラート、カリウム 2−アリルフェノラート、リチウム 2−アリルフェノラート、ナトリウム 2−アリル−6−メチルフェノラート、ナトリウム 2−アリル−6−エチルフェノラート、ナトリウム 4−アリル−2−メチルフェノラート、ナトリウム 4−アリル−2−メトキシフェノラート、ナトリウム 4−アリル−3−メチルフェノラート、ナトリウム 4−アリル−3−メチル−2−メトキシフェノラート等が挙げられる。これらフェノラート化合物は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0109】
該ハロシクロホスファゼン混合体と一般式(IV)で表されるアリルフェノラート化合物との使用割合は、前者に対して、後者を0.1〜1当量程度、好ましくは0.3〜0.8当量程度、更に好ましくは0.4〜0.6等量程度使用する。該使用割合は、原料であるハロシクロホスファゼン混合体における上記一般式(I)で表される構成単位(ユニット)を基準に計算している。例えば、0.5当量とは、一般式(I)で表される2つの塩素原子のうち、一つがアリルフェノーラート化合物に置き換わる量を意味している。
【0110】
該第1工程は、無溶媒下又は有機溶媒中で行うことができる。
【0111】
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。中でも好ましい有機溶媒は、クロロベンゼン、トルエン、及びキシレンであり、より好ましくはクロロベンゼンである。
【0112】
これらの有機溶媒は、1種を単独で使用でき、又は必要に応じて2種以上を混合して使用できる。
【0113】
第1工程としては、ハロシクロホスファゼン化合物の混合体と、スラリー状態又は懸濁状態のアリルフェノラート化合物とを反応させる工程(1−1)を備えることが好ましい。
【0114】
第1工程において、有機溶媒を使用する場合、その使用量は、一般式(IV)で表されるアリルフェノラート化合物がスラリー又は懸濁液を形成する量であれば特に制限はなく、式(IV)で表されるアリルフェノラート化合物1重量部に対して、通常0.01〜100重量部程度、好ましくは0.1〜10重量部程度である。
【0115】
第1工程における添加方法としては、本発明のシクロホスファゼン混合体が得られれば特に制限はない。中でも、好ましい添加方法としては、
ハロシクロホスファゼン化合物の混合体を、アリルフェノラート化合物のスラリーに添加する工程(1−1A)を備える方法(添加方法1)、及び
アリルフェノラート化合物を、ハロシクロホスファゼン化合物の混合体に加える工程(1−1B)を備える方法(添加方法2)である。
【0116】
添加方法1
通常、アリルフェノラート化合物は、アリルフェノールに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物又は水素化ナトリウム等の塩基を反応させることにより製造することができる。
【0117】
スラリー状態のアリルフェノラート化合物は、例えば、該アリルフェノラート化合物の製造を芳香族炭化水素溶媒中で行い、生成したアリルフェノールを冷却及び/又は濃縮(溶媒留去)することにより製造することができる。
【0118】
工程(1−1A)は、ハロシクロホスファゼン化合物の混合体を、アリルフェノラート化合物のスラリーに添加する工程である。中でも、該ハロシクロホスファゼン混合体を上記芳香族炭化水素溶液に一度に加えることが好ましい。
【0119】
さらに、添加方法1は、工程(1−1A)で得られた溶液を撹拌する工程(1−2A)、及び該工程(1−2A)で得られた溶液を加熱する工程(1−3A)を備える方法がより好ましい。
【0120】
ハロシクロホスファゼン混合体は、その固体の状態、又は芳香族炭化水素溶媒に溶解させて得られる溶液の状態で、短時間で添加するのが好ましい。
【0121】
第1工程における上記添加工程(1−1A)の溶液の温度は、50℃以下とするのが好ましく、40℃以下とするのがより好ましい。
【0122】
工程(1−2A)の反応は発熱反応であり、徐々に温度上昇が認められる。このときの温度は、使用するアリルフェノラート化合物の種類若しくはその量、又は溶媒の種類によって異なり、通常、室温から使用する溶媒の沸点温度までの範囲内であり、好ましくは40℃〜使用する溶媒の沸点温度の範囲である。なお、安全面を考慮して、100℃以下となるよう適宜冷却しながら反応を行うのが好ましい。
【0123】
工程(1−3A)の反応温度は、反応に使用する溶媒の還流温度である。
【0124】
第1工程の反応時間は、工程(1−2A)が通常0.5〜24時間であり、好ましくは0.5〜3時間であり、工程(1−3A)が通常0.5〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0125】
添加方法2
第1工程の別法(添加方法2)としては、アリルフェノラート化合物を、ハロシクロホスファゼン混合体に加える工程(1−1B)を備える方法である。中でも、該アリルフェノラート化合物を、ハロシクロホスファゼン混合体に、滴下等の手段で徐々に、又は2回以上に分けて加えるが好ましい。分けて加える場合の回数は2回以上であれば特に制限はなく、例えば10回以下の適当な回数とすればよい。
【0126】
工程(1−1B)において、ハロシクロホスファゼン混合体を添加することで温度上昇が認められるが、このときの温度は、溶媒の沸点以下となるようハロシクロホスファゼン混合体の添加量又は添加速度を調整するのが好ましい。工程(1−1B)の温度としては、例えば、芳香族炭化水素溶媒がクロロベンゼンである場合、100℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0127】
さらに、工程(1−1B)で得られた溶液を加熱する工程(1−2B)を備える方法がより好ましい。
【0128】
工程(1−2B)の反応温度は、40℃〜使用する溶媒の沸点温度であり、より好ましくは反応に使用する溶媒の還流温度である。
【0129】
工程(1−2B)の反応時間は、通常0.5〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。
【0130】
第1工程は、密閉容器中で行ってもよい。その容器としては、特に制限はなく、ステンレス製密閉容器、耐圧仕様のガラス製密閉容器等が挙げられる。
【0131】
第1工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。反応圧力は、特に制限はなく、大気圧下で反応を実施することができ、又は加圧下で反応を行うことができる。
【0132】
第1工程によって得られる化合物は、特に精製することなく、第2工程に使用することができる。また、第1工程の反応終了後、得られる反応混合物から、過剰の試薬、原料化合物等を、蒸留、ろ過、遠心分離、シリカゲルクロマトグラフィー等の通常の分離方法により除去し、目的とする化合物を取り出すこともできる。
【0133】
第2工程
第2工程は、第1工程で得られた化合物とフェノラート化合物とを反応させる工程である。第2工程では、例えば、第1工程で得られた化合物と一般式(V)で表されるフェノラート化合物とを無溶媒下又は溶媒の存在下で加熱することで、目的とする一般式(I)で表される構成単位が3〜15個結合してなるシクロホスファゼン化合物の混合体を得ることができる。
【0134】
フェノラート化合物は、一般式(V):
【0136】
[式中、M、R
5及びnは前記と同じ。]
で表される化合物である。
【0137】
一般式(V)で表されるフェノラート化合物としては、公知のものを使用することができる。該フェノラート化合物として、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カルバクロル、チモール、4−(1,1−ジメチルエチル)フェノール、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、2−(1−プロペニル)フェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、グアイアコール、4−メトキシフェノール、グエトール、4−エトキシフェノール、4−アミノフェノール、4−(メチルアミノ)フェノール、4−(ジメチルアミノ)フェノール、4−ニトロフェノール、2−シアノフェノール等のフェノール類のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらフェノラート化合物は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0138】
フェノラート化合物の使用量としては、第1工程で使用した式(III)で表される構成単位が3〜15個結合してなるハロシクロホスファゼン化合物の混合体に対して、通常0.5〜1.5当量程度、好ましくは0.8〜1.2当量程度である。
【0139】
第1工程目で残存した塩素原子のすべてを置換する理論量を1当量とした場合、1.05から1.3倍当量のフェノラート化合物を加える事ですべての塩素を(置換)フェノキシ基に置き換えることができる。
【0140】
第2工程は、無溶媒下又は溶媒中で行うことができる。
【0141】
溶媒を使用する場合、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。該溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ブチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジエトキシエタン、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ベンゼン、ナフタレン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;オクタン、ノナン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、好ましい溶媒は芳香族炭化水素系溶媒であり、より好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼンあるいはこれらの溶媒とDMF等のアミド系溶媒又はエーテル系溶媒の混合液である。
【0142】
第2工程の反応温度は、目的とする反応の種類、生成物の熱安定性等によって異なる。通常、第2工程の反応温度は、40℃からその溶媒系の沸点までの温度である。また、無溶媒下での反応温度は、40〜200℃、好ましくは110〜190℃の範囲である。 第2工程の反応時間は反応温度等により異なり一概には言えないが、通常0.5〜24時間程度で本反応は完結する。
【0143】
第2工程は、密閉容器中で行うことができる。その容器としては、特に制限はなく、ステンレス製密閉容器、耐圧仕様のガラス製密閉容器等が挙げられる。
【0144】
第2工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行ってもよい。反応圧力は、特に制限はなく、大気圧下で反応を実施することができ、又は加圧下で反応を行うことができる。
【0145】
第2工程の反応終了後、得られる反応混合物から、過剰の試薬、原料化合物等を、蒸留、ろ過、遠心分離、シリカゲルクロマトグラフィー等の通常の分離方法により除去し、目的とするシクロホスファゼン化合物の混合体を取り出すこともできる。
【0146】
4.難燃剤及び難燃性樹脂組成物
本発明の難燃剤及び難燃性樹脂組成物は、上記一般式(I)で表されるシクロホスファゼン化合物の混合体を含有する。上記シクロホスファゼン化合物の混合体は、高い難燃効果を有し、樹脂にシクロホスファゼン化合物の混合体を配合することで、得られた樹脂組成物、又は成形体は、優れた難燃性を示し、樹脂用の難燃剤として好適に使用できる。
【0147】
難燃性樹脂組成物に使用する樹脂としては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種樹脂を使用することができる。これら樹脂は、天然樹脂、又は合成樹脂を使用できる。
【0148】
熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル (メタ) アクリレート、ポリエステル (ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド (脂肪族系及び/又は芳香族系)、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリイミド等が好ましい。
【0149】
本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方」を意味する。
【0150】
熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−AD型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル系エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、非晶性エポキシ樹脂、ビフェニル系エポキシ樹脂、多官能系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂等)等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、ポリウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。本発明において、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂はいずれも1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0151】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を、熱、紫外線、可視光線等の電磁波、電子ビーム等の電子線等のエネルギー線により硬化させて得られる難燃性硬化性樹脂組成物又は成形体を得るためには、それ自身が硬化する性質(熱或いは光重合性)のモノマー及び/又はオリゴマーを共存させて用いることが好ましい。これらモノマー及びオリゴマーとしては天然又は合成のモノマー及びオリゴマーを使用できる。
【0152】
これら熱重合性/光重合性のモノマー及び/又はオリゴマーとしては、ビニル化合物、ビニリデン化合物、ジエン化合物及びラクトン、ラクタム、環状エーテル等の環状化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物が挙げられ、例えば、塩化ビニル、ブタジエン、スチレン、耐衝撃性ポリスチレン前駆体、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)前駆体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)前駆体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)前駆体、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)前駆体、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)前駆体、メチル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート樹脂前駆体、エポキシ化油アクリレート樹脂前駆体、ウレタンアクリレート樹脂前駆体、ポリエステルアクリレート樹脂前駆体、ポリエーテルアクリレート樹脂前駆体、アクリルアクリレート樹脂前駆体、不飽和ポリエステル樹脂前駆体、ビニル/アクリレート樹脂前駆体、ビニルエーテル系樹脂前駆体、ポリエン/チオール樹脂前駆体、シリコンアクリレート樹脂前駆体、ポリブタジエンアクリレート樹脂前駆体、ポリスチリル(エチル)メタクリレート樹脂前駆体、ポリカーボネートアクリレート樹脂前駆体、光硬化性ポリイミド樹脂前駆体、光硬化性ケイ素含有樹脂前駆体、光硬化性エポキシ樹脂前駆体、脂環式エポキシ樹脂前駆体、グリシジルエーテルエポキシ樹脂前駆体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン、ブタジエン、エポキシアクリレート樹脂前駆体、ウレタンアクリレート樹脂前駆体、ポリエステルアクリレート樹脂前駆体等が好ましい。これらは、1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0153】
また、本発明の難燃性硬化性樹脂組成物が、その重合性を損なわない範囲において、上記難燃性樹脂組成物において使用される熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を混合して用いることができる。
【0154】
本発明の難燃性樹脂組成物における、難燃剤の配合量は、特に制限はなく、配合する樹脂の種類、他の添加剤の有無、得られる難燃剤又は難燃性樹脂組成物の用途等に応じて広い範囲から適宜選択できる。難燃性、特に長期的な難燃性の付与等を考慮すると、通常樹脂100重量部に対して、難燃剤の配合量は、0.1〜100重量部程度、好ましくは0.5〜50重量部程度、より好ましくは、1〜40重量部程度である。
【0155】
本発明の難燃剤を熱可塑性又は熱硬化性樹脂に配合することによって、UL−94規格に定められたV−0レベルの優れた難燃性を付与することができる。
【0156】
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂中から本発明の難燃剤が表面へブリードアウトすることがほとんどないので、樹脂への配合当初と同レベルの優れた難燃性を長期的に保持できるという優れた特性を発揮する。
【0157】
本発明の難燃性樹脂組成物には、その難燃性能、特にドリッピング(燃焼時の滴下による延焼)防止性能をより一層向上させる目的で、フッ素樹脂、無機充填剤等を配合することができる。これらは、いずれかを単独で配合でき、又は両方を同時に配合できる。
【0158】
ドリッピング防止性能をより一層向上させる目的で配合できるフッ素樹脂としては公知のものを使用でき、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリ(トリフルオロクロロエチレン)(CTFE)、ポリフルオロビニリデン(PVdF)等が挙げられる。これらの中でも、PTFEが好ましい。フッ素樹脂は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。フッ素樹脂の配合量は特に制限されず、本発明のシクロホスファゼン混合体の使用量、配合する樹脂の種類、他の添加剤の種類又は配合量、得られる難燃性樹脂組成物の用途等の各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。通常樹脂100重量部に対し、フッ素樹脂の配合量は、0.01〜2.5重量部程度、好ましくは、0.1〜1.2重量部程度である。
【0159】
無機質充填剤には、ドリッピング防止効果の増強とともに、樹脂組成物の機械的強度をも向上させるという特性を有している。
【0160】
無機質充填剤としては、特に制限はなく、公知の樹脂用無機充填剤を使用でき、例えば、マイカ、カオリン、タルク、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硼酸亜鉛、硝子ビーズ、硝子バルーン、硝子フレーク、繊維状チタン酸アルカリ金属塩(チタン酸カリウム繊維、チタン酸ナトリウム繊維等)、繊維状硼酸塩(ホウ酸アルミニウム繊維、ホウ酸マグネシウム繊維、ホウ酸亜鉛繊維等)、酸化亜鉛繊維、酸化チタン繊維、酸化マグネシウム繊維、石膏繊維、珪酸アルミニウム繊維、珪酸カルシウム繊維、炭化珪素繊維、炭化チタン繊維、窒化珪素繊維、窒化チタン繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ジルコニア繊維、石英繊維、薄片状チタン酸塩、薄片状二酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、繊維状物、マイカ、薄片状(又は板状)チタン酸塩、薄片状二酸化チタン等の形状異方性を有するものが好ましく、繊維状チタン酸アルカリ金属塩、繊維状ホウ酸塩、酸化亜鉛繊維、珪酸カルシウム繊維、薄片状チタン酸塩、薄片状二酸化チタン等が特に好ましい。これら無機質充填剤は1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。また、母体樹脂の劣化を抑える目的で、表面処理用のシランカップリング剤を用いて、表面を被覆することができる。無機質充填剤の配合量は特に制限されず、配合する樹脂の種類、本発明のシクロホスファゼン混合体の使用量、他の添加剤の種類、配合量、得られる難燃性樹脂組成物の用途等の各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。難燃性の向上と機械的特性の向上のバランスを考慮すると、樹脂100重量部に対し、通常0.01〜50重量部程度、好ましくは1〜20重量部程度である。
【0161】
また、本発明の難燃性樹脂組成物を電気及び電子部品用材料として用いる際には、これら樹脂組成物の機械的強度を向上させる為の上記無機質充填剤の他に、該樹脂組成物の電気的性能(例えば、絶縁性、導電性、異方導電性、誘電性、耐湿性等)、熱的性能(例えば、耐熱性、ハンダ耐熱性、熱伝導性、低熱収縮性、低熱膨張性、低応力性、耐熱衝撃性、耐ヒートサイクル性、耐リフロークラック性、保存安定性、温度サイクル性等)、作業性/成形性(流動性、硬化性、接着性、粘着性、圧着性、密着性、アンダーフィル性、ボイドフリー性、耐磨耗性、潤滑性、離型性、高弾性、低弾性、可とう性、屈曲性等)を改善させる目的で、公知の無機質樹脂充填剤並びに各種添加剤を使用できる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化チタン、硫酸バリウム等の球状物/粉末状物が使用できる。これらの中でも、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム等の球状物/粉末状物が特に好ましい。これら無機質充填剤は、通常複数の要求性能を満たす為に2種以上を併用するが、1種を単独で使用しても良い。また、母体樹脂の劣化を抑える目的で、表面処理用のシランカップリング剤を用いて、表面を被覆することができる。電気及び電子部品用材料の場合、無機質充填剤の配合量は、配合する樹脂の種類、本発明の難燃剤の使用量、他の添加剤の種類、配合量、得られる難燃性樹脂組成物の用途等の各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。難燃性の向上と、要求される電気的特性の改善のバランスを考慮すると、樹脂100重量部に対し、通常0.01〜90重量部程度、好ましくは1〜80重量部程度である。
【0162】
本発明の難燃性樹脂組成物には、その好ましい特性を損なわない範囲で、各種の難燃剤又はドリッピング防止剤を配合することができる。難燃剤又はドリッピング防止剤としては特に制限されず、公知のものを使用でき、例えば、本発明に開示以外のホスファゼン化合物、ハロゲンを含まない有機リン化合物、無機系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0163】
更に本発明の難燃性樹脂組成物には、その好ましい特性を損なわない範囲で、一般的な樹脂添加剤を配合することができる。該樹脂添加剤としては、特に制限はなく、例えば、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等)、光安定剤(ヒンダードアミン系等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、有機リン系過酸化物分解剤、有機イオウ系過酸化物分解剤等)、遮光剤(ルチル型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム等)、金属不活性剤(ベンゾトリアゾール系等)、消光剤(有機ニッケル等)、防曇剤、防黴剤、抗菌剤、防臭剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、重合禁止剤、架橋剤、顔料、染料、増感剤、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、流動性調整剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、接着剤、粘着剤、粘着性付与剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、核剤、強化剤、相溶化剤、導電剤、アンチブロッキング剤、アンチトラッキング剤、蓄光剤、各種安定剤等が挙げられる。
【0164】
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に、本発明の難燃剤及び必要に応じてフッ素樹脂、無機質充填剤、他の難燃剤、その他の添加剤の所定量又は適量を、公知の方法で混合及び/又は混練することによって製造できる。例えば、粉末、ビーズ、フレーク又はペレット状の各成分の混合物を、1軸押出機、2軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、2本ロール、3本ロール等の混練機等を用いて混合及び/又は混練することができる。
【0165】
5.熱硬化性樹脂組成物
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体とジエノフィルとを含んでいる。
【0166】
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いられるジエノフィルとしては、特に制限はなく、例えば、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノール A ジフェニルエーテル ビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N,N’−(スルホニルジ−p−フェニレン)ジマレイミドが挙げられる。ジエノフィルは、1種を単独で使用でき、又は2種以上を併用できる。
【0167】
これらの中でも好ましいジエノフィルとしては、4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタンである。
【0168】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体に対するジエノフィルの使用割合は、用途、他の添加剤、樹脂等の種類、配合量等の各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。本発明のシクロホスファゼン混合体の式(II)で表されるアリルフェニル基上アリル基に対して、通常0.5〜5当量程度、好ましくは0.8〜3.5当量、より好ましくは1.0〜2.5当量である。
【0169】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、その硬化物である重合体又は成形体の強靭性及び低誘電性の効果を損なわない範囲で、ジアリルビスフェノールA(2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、ジメタリルビスフェノールA(2,2−ビス(3−メタリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)等のアリル誘導体、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニル)シアナト等のシアナトエステル誘導体、又は、日本特許公開2009−161725号公報に記載の2官能性フェニレンエーテルオリゴマーの末端をビニル化したビニル化合物を併用することができる。これらの各誘導体を併用することによって、ジエノフィルに対する本発明のシクロホスファゼン混合体の使用割合を低減させることができるので好ましい。
【0170】
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その好ましい特性を損なわない範囲で、フッ素樹脂、無機充填剤等を配合することができる。これらは、いずれかを単独で配合でき又は両方を同時に配合できる。フッ素樹脂及び無機充填剤等としては、上記難燃性樹脂組成物で使用できるものを例示できる。
【0171】
また、無機質充填剤の他に、熱硬化性樹脂組成物の電気的性能(例えば、絶縁性、導電性、異方導電性、誘電性、耐湿性等)、熱的性能(例えば、耐熱性、ハンダ耐熱性、熱伝導性、低熱収縮性、低熱膨張性、低応力性、耐熱衝撃性、耐ヒートサイクル性、耐リフロークラック性、保存安定性、温度サイクル性等)、作業性/成形性(流動性、硬化性、接着性、粘着性、圧着性、密着性、アンダーフィル性、ボイドフリー性、耐磨耗性、潤滑性、離型性、高弾性、低弾性、可とう性、屈曲性等)を改善させる目的で、公知の無機質樹脂充填剤並びに各種添加剤を使用できる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルク、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化チタン、硫酸バリウム等の球状物/粉末状物が使用できる。これらの中でも、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム等の球状物/粉末状物が特に好ましい。これら無機質充填剤は、通常複数の要求性能を満たす為に2種以上を併用するが、1種を単独で使用することもできる。また、母体樹脂の劣化を抑える目的で、表面処理用のシランカップリング剤を用いて、表面を被覆することができる。電気及び電子部品用材料の場合、無機質充填剤の配合量は、配合する樹脂の種類、本発明の難燃剤の使用量、他の添加剤の種類、配合量、得られる熱硬化性樹脂(熱硬化性重合体)の用途等の各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。樹脂100重量部に対し、通常0.01〜90重量部程度、好ましくは1〜80重量部程度である。
【0172】
さらに本発明の熱硬化性樹脂組成物には、その好ましい特性を損なわない範囲で、一般的な樹脂添加剤を配合することができる。該樹脂添加剤としては、特に制限はなく、例えば、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等)、光安定剤(ヒンダードアミン系等)、酸化防止剤(ヒンダードフェノール系、有機リン系過酸化物分解剤、有機イオウ系過酸化物分解剤等)、遮光剤(ルチル型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム等)、金属不活性剤(ベンゾトリアゾール系等)、消光剤(有機ニッケル等)、防曇剤、防黴剤、抗菌剤、防臭剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、重合禁止剤、架橋剤、顔料、染料、増感剤、硬化剤、硬化促進剤、希釈剤、流動性調整剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、接着剤、粘着剤、粘着性付与剤、滑剤、離型剤、潤滑剤、核剤、強化剤、相溶化剤、導電剤、アンチブロッキング剤、アンチトラッキング剤、蓄光剤、各種安定剤等が挙げられる。
【0173】
本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体は、ジエノフィルと反応して重合体を形成することができる。当該重合体の形成は、本発明のシクロホスファゼン化合物の混合体における基(II)で表されるアリルフェニル基とジエノフィルとが、ene付加反応又はディールス−アルダー反応により重合すると考えられ、この反応は加熱によって進行する。
【0174】
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物を加熱することで本発明の熱硬化性重合体を得ることができる。
【0175】
まず、本発明の熱硬化性樹脂組成物を100〜200℃程度、好ましくは120〜180℃、より好ましくは130〜160℃に加熱する。この温度で加熱することによって本発明のシクロホスファゼン混合体の基(II)で表されるアリルフェニル基上のアリル基に対して1当量のジエノフィルの重合を行うことができる。この場合の加熱時間は、本発明のシクロホスファゼン混合体、ジエノフィル、その他の添加剤等の量等によって、適宜調整されるものであり、通常0.1〜10時間程度、好ましくは0.5〜5時間程度である。
【0176】
前記加熱による重合に引続き、180〜300℃程度、好ましくは190〜270℃程度、より好ましくは200〜250℃程度に加熱することによって、本発明のシクロホスファゼン混合体の基(II)で表されるアリルフェニル基上アリル基に対して2当量のジエノフィルの重合を行うことができる。この場合の加熱時間は、本発明のシクロホスファゼン混合体、ジエノフィル、その他の添加剤等の量等によって、適宜調整されるものであり、通常0.1〜10時間程度、好ましくは1〜8時間程度、より好ましくは3〜6時間程度である。
【0177】
以上のように、ジエノフィルの配合割合、反応温度を調整することによって、得られる熱硬化性重合体の重合度を調整することができ、用途に応じて重合体の強度を調整することができる。また、得られた熱硬化性重合体は低誘電性に優れている。
【0178】
なお、理論上、本発明のシクロホスファゼン混合体の基(II)で表されるアリルフェニル基上のアリル基に対して3当量のジエノフィルの重合が可能と考えられるが、得られる重合体は剛直となり、強靭性に乏しくなるおそれがある。
【0179】
6.成形体
本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、プレス成形、射出成形、押出成形、注型成形等の公知の成形方法により、また用途に応じて熱又は紫外線、電子線を照射して硬化成形することにより、単一層又は複数層の樹脂板、シート、フィルム、球状、方状、異形品等の任意の形状の成形体とすることができる。本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性樹脂組成物は、樹脂又は熱硬化性重合体が使用可能なあらゆる分野で適用でき、例えば、電気及び電子機器、通信機器、精密機器、自動車等の輸送機器、繊維製品、各種製造機械類、食品包装フィルム、容器、農林水産分野、建設用資材、医療用品、家具類の構成部品等が挙げられる。
【0180】
具体的な用途としては、電気及び電子機器、並びに通信機器では、例えば、プリンタ、コンピュータ、ワードプロセッサー、キーボード、小型情報端末機(PDA)、電話機、携帯電話、ファクシミリ、複写機、電子式金銭登録機(ECR)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具等の事務及びOA機器;洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵等の家電製品;テレビ、VTR、ビデオカメラ、カムコーダー、カセット付きラジオ、テープレコーダー、ミニディスクプレーヤー、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、LDプレーヤー、スピーカー、液晶ディスプレイ及びそのドライバー、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のAV機器;コネクター、リレー、コンデンサ、スイッチ、プリント基板材料、コイルボビン、半導体封止材料、電池及びそのセパレーター又はその封止材、CCD、LED、電線、ケーブル、トランス、モーター、アンテナコイル、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気及び電子部品及び非接触データキャリアパッケージシステム、スマートカード / スマートタグ等の通信機器等が挙げられる。
【0181】
特に、本発明の成形体は、低誘電性に優れ、電気及び電子部品材料における用途に好ましく使用することができる。
【0182】
プリント基板材料としては、本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性組成物をガラス、紙、又はアラミド繊維布等の基材に含浸させたプリプレグ、及びそのプリプレグを配線基板に加工した(ガラス/紙/アラミド)基材、銅張積層板、コンポジット銅張積層板、フレキシブル銅張積層板、ビルドアップ型多層プリント配線板用の基板、キャリア付き樹脂フィルム、フレキシブルプリント配線板、ボンディングシート等が挙げられる。また、本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性重合体を用いたプリント基板材料は、リジッドタイプ、フレキシブルタイプのもの、また、それらの形状がシート状又はフィルム状から、板状の基板まで、いずれのタイプのプリント基板材料としても、公知の方法を用いて、制限なく好適に使用することができる。
【0183】
さらに、最近の電気及び電子機器の小型化、高容量化及び多機能化に伴い、プリント配線板は多層構造になっており、各層間の層間樹脂層に絶縁性を付与した樹脂層(層間絶縁膜(層)、絶縁性接着剤層)、各層間の層間樹脂層に導電性或いは異方導電性を付与した樹脂層(層間導電膜(層)、導電性接着剤層、層間異方導電膜(層)、異方導電性接着剤層)、及び誘電率制御又は導電率制御膜(層)等の機能付与膜(層)が必要になっている。またIC素子、ハンダボール、リードフレーム、ヒートスプレッダー、スティフナ等の部品、前記機能付与膜(層)等を互いに接着する為の接(粘)着剤層、及びカバーレイフィルム等の表面保護層も必要となっている。更に、樹脂製バンプ(樹脂被覆型バンプを含む)、スルーホール内側の導電樹脂層、更に素子を各種の熱的及び機械的な外部応力から保護する目的で形成される応力緩和樹脂層等の機能付与層も必要となっている。本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性重合体は、これらの種々の層間形成層/部品においても、何ら制限されることなく好適に使用できる。
【0184】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、熱、紫外線、電子線等のエネルギー線により硬化する難燃性硬化性樹脂を含んでいる。この難燃性硬化性樹脂組成物の内、特にエネルギー線による現像・印刷が可能なソルダーレジスト材(ソルダレジストインキ)、EL用の透明導電性インキ、及びTFT液晶で使われるパターン形成用インキ等として好適に使用できる。上述の半導体封止材料に関しては、半導体素子の実装方法(例えば、リードフレームパッケージ、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-leaded Package)、QFP(Quad Flat Package)、BGA(Ball GridArray)に代表される面実装パッケージ、種々の小型化されたCSP(チップサイズパッケージ)等)、回路との接続方法(ワイヤボンディング、TAB(Tape Automated Bonding)接続、フリップチップ接続等)、プロセスの違いにより種々の封止材料があり、その封止材に対して要求される性能も多種多様である。また、封止樹脂の性状も従来からのモールディングコンパウンドで用いられる固体からアンダーフィル材として使用されるキャピラリーフロータイプの液状の封止材、二次実装用セカンダリーアンダーフィル材、更に圧接工法で使用するコンプレッションフロータイプのACF(Anisotropic Conductive Film)、NCF(Non Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)、NCP(Non Conductive Paste)等のフィルム状、ペースト状の封止材がある。本難燃性樹脂組成物はいずれのタイプの封止材においても、制限無く好適に使用することが可能であり、該封止材が求められている性能を低下させること無く、封止材樹脂の難燃性を十分に発揮できる。
【0185】
電池封止部品、トランス絶縁材料、モーター絶縁材料、アンテナコイル絶縁材料に関しては、主に樹脂を型に注入して封止することから、特に注形材と呼ばれている。この注形材に関しては、高度な放熱性(熱伝導性)、耐熱性、及び耐衝撃性等の種々の性能が要求される。本発明の難燃性樹脂組成物又は本発明の熱硬化性樹脂組成物もしくはその重合体は、これらの注形材用途においても、何ら制限されることなく好適に使用できる。また、最近の環境問題への取り組みから、ハンダの鉛フリー化が要求されており、Sn/Ag/Cu系、Sn/Ag/(Bi)系、Sn/Zn/(Bi)系、Sn/Ag/Cu/Bi系等が鉛フリーハンダとして提案されているが、それらのフロー又はリフロー温度は、一般的なPb/Sn系共晶ハンダのフロー又はリフロー温度よりも10〜20℃高くなっている。そこで、基板材料、封止材等として電気及び電子部品に使用されている樹脂の耐熱性の向上が望まれている。本発明の難燃性樹脂組成物は、重合性化合物を反応した化合物から成る組成物であり、かつ、高耐熱性であるという特性を有することから、これらの特に耐熱性が要求される電気及び電子部品においても、何ら制限されることなく好適に使用できる。上述の液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、アクティブマトリクス液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイ、フォトカプラ、オプトアイソレータ等の光結合半導体装置に代表される光学材料用途においても、本発明の難燃性樹脂組成物は、何ら制限されることなく好適に使用できる。例えば、偏光板/ガラス基板/(透明)電極基板/配向膜/液晶層/フィルター/反射板/導電性基板/電極用導電性膜/バリア層等の構成部材間の接着剤(層)、絶縁層、スペーサー、及び、封口材等の樹脂部品等が挙げられる。
【0186】
さらに、その他の用途では、各種のいす又は座席の詰め物、表地、ベルト、天井、壁張り、コーパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイールカバー、マットレスカバー、エアバッグ、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被覆材、電気絶縁材、塗料、缶内面塗料、缶内蓋塗料、接着剤、タッチパネル、補聴器、コーティング材、インク(トナー)、シール材、上張り材、床材、隅壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、防音板、断熱板、窓材、窓ガラスと窓枠隙間のシーリング材、水回り又はコンクリートの防食材等の自動車、車両、船舶、橋梁、航空機及び土木及び建築用材料、衣類、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、食品包装フィルム又は容器、農林水産分野、医療用品、航空・宇宙用複合材料;シート、バケツ、ホース、容器、めがね、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、スノーボード板、スケートボード板、ラケット、テント、楽器等の生活及びスポーツ用品等が挙げられる。
【実施例】
【0187】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本実施例に限定するものではない。なお、以下において「部」及び「%」とあるのは、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0188】
製造例1.クロロシクロホスファゼン化合物の混合体(原料)の調製
還流冷却器、温度計、撹拌機及び滴下器を備えた100Lのフラスコにモノクロロベンゼン40L、塩化アンモニウム790g及び塩化亜鉛2.5gを仕込んで混合分散液を得た。これに五塩化リン2.9kgをクロロベンゼン10Lに溶解させた溶液を20時間かけて滴下した。五塩化リンを供給した後、20時間加熱還流した。次いで吸引濾過して未反応の塩化アンモニウムを除去し、濾液を13.3〜40hPaの減圧下にて30〜40℃でクロルベンゼンを留去してクロロシクロホスファゼン1460g(ヘキサクロロシクロトリホスファゼン:70%、オクタクロロシクロテトラホスファゼン:19%、五量体以上のクロロシクロホスファゼン:11%)を得た(収率約90%)。これをモノクロロベンゼンに再溶解させて、約30%のクロロシクロホスファゼン溶液を調製した。
【0189】
実施例1:R1が2−アリルフェニル基及びR2がフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの2口フラスコに2−アリルフェノール381g及びモノクロロベンゼン1000mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム水溶液(107g/水110mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0190】
このスラリーに、上記製造例1で調製したクロロシクロホスファゼン溶液1000gを30分以内に投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0191】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた3リットルの4口フラスコに、フェノール314g及びモノクロロベンゼン2000mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム130g、水酸化カリウム5g及び水135mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0192】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン1500mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0193】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン800mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水840mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水600mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液30mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状の目的物680gを得た。
【0194】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.8〜7.7(9H,m),5.5〜6.0(1H,m),4.7〜5.2(2H,m),3.0〜3.5(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):8.4〜9.3(3量体),−14〜−12(4量体),−22〜−17(5量体以上)
なお、3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ70.36%、19.32%、10.32%であった。
【0195】
<分析結果>
5%分解温度(TG/DTA): >350℃
加水分解性塩素の量:0.0007%
酸価:0.01mgKOH/g(サンプル重量)
本実施例で製造されたシクロホスファゼン化合物の混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表1に示した。
【0196】
同様に、本実施例で製造されたシクロホスファゼン化合物の混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜8個置換した4量体の生成割合を表2に示した。
【0197】
なお、各生成割合は、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)(アジレント・テクノロジー株式会社製、TR-6020 with LC1100)により測定された各ピーク面積から求めた。LC−MSの分析条件は以下の通りである。
【0198】
[分析装置]
カラム:GLサイエンス株式会社製 InertSustain(登録商標) C18 3mm×25cm溶離液:アセトニトリル:水=95:5
流速:0.5mL/min
検出:UV(254nm)
【0199】
【表1】
【0200】
【表2】
【0201】
実施例2 R1が2−アリルフェニル基及びR2がフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法2)
(1)還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの2口フラスコに2−アリルフェノール381g及びモノクロロベンゼン1000mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム水溶液(107g/水110mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。反応液中の水分含量が1000ppm以下であることを確認した後、懸濁液を100℃程度に冷却した。
【0202】
(2)製造例1と同操作により製造した約30%クロロシクロホスファゼン溶液1000gを3リットルの4口フラスコに入れ、冷却し40℃以下にした。これに上記(1)で調製した懸濁液を、100℃を超えないよう調節しながら徐々に投入した。反応液の温度が60℃付近で一定したのを確認した後、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した後、室温に戻した。
【0203】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた3リットルの4口フラスコに、フェノール314g及びモノクロロベンゼン2000mLを仕込み、窒素気流下で加熱撹拌した。そこへ水酸化ナトリウム130g、水酸化カリウム5g及び水135mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼンを全て系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0204】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認後、生成物にモノクロロベンゼン800mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を50℃に加温し、水840mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水600mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液30mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHが3〜5になるよう濃硝を加えて、この操作を繰り返した。水相を除き、有機相にイオン交換水400mLを加えて洗浄した。
【0205】
得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状の目的物680gを得た。
【0206】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.8〜7.7(9H,m),5.5〜6.0(1H,m),4.7〜5.2(2H,m),3.0〜3.5(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):8.4〜9.3(3量体),−14〜−12(4量体),−22〜−17(5量体以上)
なお、3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ70%、19%、11%であった。
【0207】
<分析結果>
5%分解温度(TG/DTA): >350℃
加水分解性塩素:0.003%
酸価:0.02mgKOH/g
【0208】
本実施例で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表3に示した。同様に、本実施例で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜8個置換した4量体の生成割合を表4に示した。
【0209】
なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0210】
【表3】
【0211】
【表4】
【0212】
比較例1
特開平1−158041の例3に準じて、以下シクロホスファゼン混合体の製造を行った。
【0213】
(1)2−アリルフェノール12.7gとアセトン150mL(15℃以下に冷却)との溶液に、水素化ナトリウム3.80gを徐々に加えることによって、ナトリウム 2−アリルフェノキシドを製造した。この溶液に上記実施例1の第1工程(1)と同様に製造したシクロクロロトリホスファゼン10gとアセトン30mLの溶液を加えた。生成した混合物を窒素気流下で15時間撹拌した。
【0214】
(2)フェノール8.93gとアセトン150mLとの冷却溶液(15℃以下)に水素化ナトリウム3.80gを徐々に加えることによって、ナトリウムフェノキシドを製造した。この溶液を上記(2)の混合物に加え、48時間還流した。
【0215】
混合物を冷却し、混合物を水に投入した後、モノクロロベンゼンで抽出した。得られた抽出液を48%水酸化ナトリウム水溶液で2回、イオン交換水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、濃縮した。更に濃縮残渣を減圧下150℃で乾燥させて油状物22gを得た。
【0216】
<分析結果>
加水分解性塩素:0.2%
酸価:0.2mgKOH/g
【0217】
比較例1で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表5に示した。
【0218】
なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0219】
【表5】
【0220】
<結果>
本比較例によれば、従来法での製造方法で得られたシクロホスファゼン化合物の混合体は、アリルフェニル基の置換数が1以下の化合物が、3量体中に、15%を占めることわかった。
【0221】
実施例3:R1が2−アリルフェニル基及びR2が4−ニトロフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた1リットルの4口フラスコに2−アリルフェノール121g及びモノクロロベンゼン400mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(35.9g/水40mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0222】
このスラリーに、上記製造例1で調製した約30%クロロシクロホスファゼン溶液333gを30分以内で投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0223】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの4口フラスコに、p−ニトロフェノール165g及びモノクロロベンゼン600mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム44g、水酸化カリウム2.4g及び水50mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0224】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン600mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0225】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン500mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水840mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水300mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色の半固体状の目的物250gを得た。
【0226】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):7.8〜8.3(2H,m),6.3−7.4(6H,m),5.6〜5.9(1H,m),4.7〜5.1(2H,m),3.0〜3.3(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜10.0(3量体),−12〜−17(4量体),−17〜−24(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ68.35%、20.84%、10.81%であった。
【0227】
実施例4:R1が2−アリルフェニル基及びR2がp−トリル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた1リットルの4口フラスコに2−アリルフェノール121g及びモノクロロベンゼン400mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(35.9g/水40mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0228】
このスラリーに、上記製造例1で調製した約30%クロロシクロホスファゼン溶液333gを30分以内で投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0229】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの4口フラスコに、p−クレゾール128g及びモノクロロベンゼン600mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム44g、水酸化カリウム2.4g及び水50mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻して脱水を行った。
【0230】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン600mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0231】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン500mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水840mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水300mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状の目的物240gを得た。
【0232】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.7〜7.5(8H,m),5.5〜5.9(1H,m),4.7〜5.0(2H,m),3.1〜3.3(2H,m),2.2(3H,s)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜10.0(3量体),−12〜−16(4量体),−16〜(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ70.36%、19.32%、10.32%であった。
【0233】
実施例5:R1が2−アリルフェニル基及びR2が4−メトキシフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた1リットルの4口フラスコに2−アリルフェノール121g及びモノクロロベンゼン400mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(35.9g/水40mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0234】
このスラリーに、上記製造例1で調製した約30%クロロシクロホスファゼン溶液333gを30分以内で投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0235】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの4口フラスコに、p−メトキシフェノール 146g及びモノクロロベンゼン600mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム44g、水酸化カリウム2.4g及び水50mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0236】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン600mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0237】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン500mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水840mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水300mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色の半固体状の目的物250gを得た。
【0238】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.4〜7.3(8H,m),5.6〜5.9(1H,m),4.8〜5.0(1H,m),3.65(3H,s),3.1〜3.3(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):5.0〜11.0(3量体),−12〜−15(4量体),−17〜(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ71.03%、21.12%、7.85%であった。
【0239】
実施例3〜5で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表6に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0240】
【表6】
【0241】
実施例6:R1が2−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル基及びR2がフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた1リットルの4口フラスコに2−メタリルフェノール63g及びモノクロロベンゼン400mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(16.1g/水20mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却した。
【0242】
この反応液に、クロロシクロホスファゼン(3量体67%、4量体19%、5量体以上14%)の約30%溶液150gを30分以内で投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0243】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの4口フラスコに、フェノール51g及びモノクロロベンゼン600mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム21g、水酸化カリウム1.2g及び水30mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0244】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン600mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0245】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン500mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水500mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水300mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色から褐色の液状の目的物94gを得た。
【0246】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.7〜7.4(9H,m),4.75(1H,s),4.55(1H,s),3.20(2H,s),1.57(3H,s)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜10.0(3量体),−12〜−15(4量体),−17〜(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ73%、17%、10%であった。
【0247】
実施例6で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表される(2−メチル−2−プロペニル)フェニル基(2−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表7に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0248】
【表7】
【0249】
実施例7:R1が2−メトキシ−4−アリルフェニル基及びR2がフェニル基であるシクロホスファゼン混合体の製造
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた1リットルの4口フラスコにオイゲノール74g及びモノクロロベンゼン500mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(17.8g/水20mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却した。
【0250】
この反応液に、クロロシクロホスファゼン(3量体67%、4量体19%、5量体以上14%)の約30%溶液167gを30分以内で投入し、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約300mLを反応系外へ除去した。
【0251】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの4口フラスコに、フェノール56g及びモノクロロベンゼン400mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム22.4g、水酸化カリウム1.2g及び水30mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0252】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン500mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0253】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン500mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水500mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水840mL、48%水酸化ナトリウム水溶液45mL、水300mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水400mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水400mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色の半固体状の目的物129gを得た。
【0254】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.4〜7.3(9H,m),5.90(1H,m), 5.07(1H,s),3.4〜4.7(3H,m),3.30(2H,s)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜11.0(3量体),−11〜−15(4量体),−17〜(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ68.05%、19.62%、12.33%であった。
【0255】
実施例7で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表される2−メトキシ−4−アリルフェニル基が0〜6個置換した3量体の生成割合を表8に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0256】
【表8】
【0257】
比較例2
原料のクロロシクロホスファゼン化合物として、3量体のみを使用して、フェノキシ基及びアリルフェノキシ基が置換したシクロホスファゼン化合物の製造を行った。なお、原料となるクロロシクロホスファゼンの3量体は、製造例1と同様に製造したクロロシクロホスファゼンから単離及び精製したものを使用した。
【0258】
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの2口フラスコに2−アリルフェノール127g及びモノクロロベンゼン500mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム水溶液(34.5g/水40mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0259】
このスラリーに、クロロシクロホスファゼン(3量体)をモノクロロベンゼンに溶解させて調製した30%クロロシクロホスファゼン溶液333gを30分以内で加え、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約200mLを反応系外へ除去した。
【0260】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた3リットルの4口フラスコに、フェノール113.4g及びモノクロロベンゼン500mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム44.8g、水酸化カリウム2.8g及び水135mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0261】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン500mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0262】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン300mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水200mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液25mL、水200mL、48%水酸化ナトリウム水溶液23mL、水200mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水200mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水200mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状のシクロホスファゼン化合物230gを得た。
【0263】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.7〜7.5(8H,m),5.7〜5.9(1H,m),4.7〜5.1(2H,m),3.1〜3.3(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜10.0(3量体)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ100%、0%、0%であった。
【0264】
比較例2で製造されたシクロホスファゼン化合物において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した化合物の生成割合を表9に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0265】
【表9】
【0266】
比較例3
混合フェノラートへクロロホスファゼン混合物を加えることにより、シクロホスファゼン混合体の製造を行った。製造方法の詳細は、以下のとおりである。
【0267】
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの2口フラスコに、2−アリルフェノール60g及びフェノール57gをモノクロロベンゼン500mLに溶解して仕込み、窒素気流下で加熱した。90℃以上で、水酸化ナトリウム水溶液(41g/水40mL)、KOH(2.8g)を水50mlに溶かして滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。脱水完了後、反応液を50℃に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0268】
このスラリーに、上記製造例1と同様の方法で製造した約30%クロロシクロホスファゼン溶液333g(3量体67%、4量体19%、5量体以上14%)を30分以内で、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約600mLを反応系外へ除去した。窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0269】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン600mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水200mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液25mL、水300mL、48%水酸化ナトリウム水溶液23mL、水200mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水200mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水200mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状の目的物116.9gを得た。
【0270】
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm):6.7〜7.5(8H,m),5.7〜5.9(1H,m),4.7〜5.1(2H,m),3.1〜3.3(2H,m)
31P−NMR(500MHz,CDCl
3,δppm):7.0〜10.0(3量体) ,−17以下(5量体以上)
3量体、4量体、5量体以上の各ピーク面積の割合は、それぞれ69%、19%、11%であった。
【0271】
比較例3で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表10に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0272】
【表10】
【0273】
実施例8〜10
原料のクロロシクロホスファゼン化合物として、上記製造例1で製造したものとは3量体と4量体との比が異なるものを使用して、以下シクロホスファゼン混合体の製造を行った。なお、製造例1よりも3量体の割合の多いクロロホスファゼン(実施例8)は、製造例1と同様に製造したクロロシクロホスファゼンから単離及び精製した3量体を、製造例1で製造した30%クロロシクロホスファゼン(3量体:70%、4量体:19%、5量体以上のクロロシクロホスファゼン:11%)のモノクロロベンゼン溶液に添加することにより調製した。製造例1よりも3量体の割合の少ないクロロホスファゼン(実施例9及び10)は、製造例1と同様に製造したクロロシクロホスファゼンから3量体をある程度除くことにより調製した。3量体と4量体との比は、調製した溶液を
31P−NMRで測定することにより求めた。
【0274】
第1工程(添加方法1)
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた2リットルの2口フラスコに2−アリルフェノール127g及びモノクロロベンゼン500mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム水溶液(34.5g/水40mL)を滴下して加え、6時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。反応液を40℃以下に冷却し、結晶を析出させてスラリー状態とした。
【0275】
このスラリーに、上記のように調製した各クロロシクロホスファゼン30%溶液333g(クロロホスファゼンの混合物として100g、3量体と4量体との比は表11に記載されている)を30分以内で加え、窒素雰囲気下で90℃を超えないよう冷却して撹拌した。1時間撹拌した後、40℃付近で一定したのを確認し、フラスコに蒸留塔を取り付け、溶媒の沸点温度まで徐々に加熱して、モノクロロベンゼン約200mLを反応系外へ除去した。
【0276】
第2工程
還流冷却器を付けたディーンスタークトラップ及び滴下ロートを備えた3リットルの4口フラスコに、フェノール113.4g及びモノクロロベンゼン500mLを仕込み、窒素気流下で加熱した。そこへ水酸化ナトリウム44.8g、水酸化カリウム2.8g及び水135mLの溶液を滴下して加え、15時間加熱還流した。この間、反応系中の水はモノクロロベンゼンとの共沸により系外へ除去し、モノクロロベンゼンのみを系内へ戻した。
【0277】
フラスコに蒸留塔を取り付け、反応液を加熱して、モノクロロベンゼンを系外に除去しながら、第1工程で得られた反応物を3回に分けて投入した。加熱を継続してモノクロロベンゼン500mLを系外に除去した後、窒素気流下で170〜180℃(内温130〜150℃)で15時間加熱した。
【0278】
31P−NMR測定により目的物の生成を確認した後、生成物にモノクロロベンゼン300mLを加えて再溶解させた。得られた溶液を70℃まで冷却し、水200mLを加えて分液した。得られた有機相を48%水酸化ナトリウム水溶液25mL、水200mL、48%水酸化ナトリウム水溶液23mL、水200mL及び48%水酸化ナトリウム水溶液15mLで順次洗浄した。有機相にイオン交換水200mLを加えて振り、その後水相のpHを3〜5になるよう濃硝酸を加えた。水相を除き、有機相にイオン交換水200mL加えて洗浄した。得られた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、13.3〜40hPaの減圧下にて60℃で濃縮した。得られた濃縮残渣を更に1.3hPaの減圧下150℃でモノクロロベンゼンを除去し、黄色〜褐色の油状の目的物(実施例8:228g、実施例9:227g、実施例10:225g)を得た。
【0279】
実施例8〜10で製造されたシクロホスファゼン混合体において、基(II)で表されるアリルフェニル基(2−アリルフェニル基)が0〜6個置換した3量体の生成割合を表11に示した。なお、HPLCの分析条件は、実施例1の場合と同じである。
【0280】
【表11】
【0281】
実施例11
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン113gを実施例1で製造したシクロホスファゼン混合体85gに加えて、撹拌後、この混合物をアルミパンに入れた。その後、これをオーブンで140℃に加熱して溶融させて、フィルム状に伸ばした。次いで、150℃で1時間加熱した後、230℃で5時間加熱して、0.44mm厚のフィルム状の暗褐色重合体を得た。
【0282】
実施例12
シクロホスファゼン混合体の使用量を68gに変更した以外は実施例11と同様にしてフィルム状の暗褐色重合体を得た。
【0283】
実施例13
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン113g及びジアリルビスフェノールA 30gを実施例1で製造したシクロホスファゼン混合体13.5gに加えてアルミパンに入れ、オーブンで140℃に加熱して溶融混合させて、フィルム状に伸ばし、150℃で1時間加熱した後、230℃で5時間加熱して、0.44mm厚のフィルム状の褐色重合体を得た。
【0284】
実施例14
ジアリルビスフェノールAの使用量を77gに、シクロホスファゼン混合体の使用量を13.2gに変更した以外は実施例13と同様にしてフィルム状の暗褐色重合体を得た。
【0285】
比較例4
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン113gをジアリルビスフェノールA 85gに加えて、アルミパンに入れ、オーブンで140℃に加熱して溶融混合させて、フィルム状に伸ばし、150℃で1時間加熱した後、230℃で5時間加熱して、0.44mm厚のフィルム状の重合体を得た。
【0286】
実施例15
3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI−70、ケイ・アイ化成株式会社製)40.8g、特開2009−161725号公報 合成例1に従って製造したビニル化合物[B]51.2g、実施例1で製造したシクロホスファゼン混合体16.2g及びスチレン系熱可塑性エラストマー(セプトンSEBS8007、株式会社クラレ製)30gを、撹拌装置を備えたセパラブルフラスコに仕込み、固形分濃度が20%となるようにトルエンを加えて60℃に加熱して1時間撹拌し、「ワニス」を調整した。ワニスをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムに塗布し、50℃で乾燥した後、150℃で1時間、250℃で5時間加熱して基材付き硬化物を得た後、基材のPTFEフィルムを剥離してフィルム状重合体(厚み0.4mm)を得た。
【0287】
実施例16
3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドを33.4g、実施例1で製造したシクロホスファゼン混合体を10.8gに変更した以外は、実施例15と同様にしてフィルム状重合体を得た。
【0288】
比較例5
3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミドを18.8gに変更し、実施例1で製造したシクロホスファゼン混合体を添加しない以外は、実施例7と同様にしてフィルム状重合体を得た。
【0289】
比較例6
4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン11.3gを比較例2で製造したシクロホスファゼン3量体8.5gに加えて、アルミパンに入れ、オーブンで140℃に加熱して溶融させて、フィルム状に伸ばし、150℃で1時間加熱した後、230℃で5時間加熱して、0.44mm厚のフィルム状の暗褐色重合体を得た。
【0290】
試験例1
実施例11〜16及び比較例4〜6で得られたフィルム状重合体の3GHzでの誘電特性を測定(空洞共振器法)した。その結果を表12に示した。
【0291】
【表12】
【0292】
実施例17
実施例11において、140℃で加熱して溶融させて得られた半硬化状態のフィルム状の重合体を5枚重ねて型枠に入れて、真空プレス(真空プレス機械、北川精機株式会社製)で230℃で加熱して1/16インチ厚の試験片1を製造した。
【0293】
同様に実施例12で得られた半硬化状態のフィルム状の重合体を用いて試験片2を、実施例13で得られた半硬化状態のフィルム状の重合体を用いて試験片3を、実施例14で得られた半硬化状態のフィルム状の重合体を用いて試験片4をそれぞれ作製した。
【0294】
実施例18
実施例15で製造したワニスにガラス繊維の布(厚さ50μm)に含浸させ、風乾した後、50℃で送風乾燥し、20枚を重ねて150℃で1時間、20kgf/cm
2で40hPa以下の真空下で真空プレスし、続いて230℃で加熱して1/16インチ厚の試験片5を作製した。同様に実施例16で製造したワニスを用いて試験片6を作製した。
【0295】
試験例2
実施例17で得られた試験片1、2、3及び4、及び実施例18で得られた試験片5及び6を用いて難燃性評価試験を行った。結果を表13に示した。
【0296】
なお、難燃性の評価はUL−94規格(Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances UL94, Fourth Edition)に基づき、厚さ1/16インチ、長さ5インチ、幅0.5インチの試験片を作製し、難燃性の評価試験を実施した。
【0297】
UL94における用語の定義及び評価基準は次のとおりである。
【0298】
〔用語の定義〕
アフターフレーム:接炎後(火種を取り除いた後)、材料のフレイミング(炎を上げて燃えること)が持続すること。
アフターフレーム時間:接炎後、試験条件下で、材料が炎を上げて燃え続ける時間の長さ。
アフターグロー:フレイミングが終わった後、又はもしフレイミングが起こらなければ接炎後、材料のグローイング(炎を上げて燃えないが、赤熱した火種として残ること)が持続すること。
アフターグロー時間:接炎後及び/又はフレイミングが終わった後、試験条件下で、材料が赤熱した火種として残り続ける時間の長さ。
t1:1回目のフレイミング操作後のアフターフレーム時間。
t2:2回目のフレイミング操作後のアフターフレーム時間。
t3:3回目のフレイミング操作後のアフターグロー時間。
【0299】
〔評価基準〕
V−0:
(1)各試験片のアフターフレーム時間t1又はt2が10秒以下。
(2)5つの試験片のアフターフレーム時間の合計(t1+t2)が50秒以下。
(3)2回目のフレイミング操作後の、各試験片のアフターフレーム時間とアフターグロー時間との合計(t2+t3)が30秒以下。
(4)いずれの試験片のアフターフレーム又はアフターグローも、固定用クランプにまで及ばない。
(5)フレイミング粒又は滴下物によって、木綿の標識が発火しない。
V−1:
(1)各試験片のアフターフレーム時間t1又はt2が30秒以下
(2)5つの試験片のアフターフレーム時間の合計(t1+t2)が250秒以下
(3)2回目のフレイミング操作後の、各試験片のアフターフレーム時間とアフターグロー時間との合計(t2+t3)が60秒以下
(4)いずれの試験片のアフターフレーム又はアフターグローも、固定用クランプにまで及ばない。
(5)フレイミング粒又は滴下物によって、木綿の標識が発火しない。
V−2:
(1)各試験片のアフターフレーム時間t1又はt2が30秒以下
(2)5つの試験片のアフターフレーム時間の合計(t1+t2)が250秒以下
(3)2回目のフレイミング操作後の、各試験片のアフターフレーム時間とアフターグロー時間との合計(t2+t3)が60秒以下
(4)いずれの試験片のアフターフレーム又はアフターグローも、固定用クランプにまで及ばない。
(5)フレイミング粒又は滴下物によって、木綿の標識が発火する。
【0300】
【表13】
【0301】
試験例3
実施例11で製造したフィルム状重合体を乳鉢で粉砕し、その粉砕物23.5mgをアセトニトリル10mLに懸濁させた後15時間放置した。上澄みをマイクロフィルターでろ過してとり、HPLC及び
31P−NMRで化合物の溶出状態を確認した。
【0302】
比較例として、比較例1で得られた生成物を用いて、実施例11と同様に操作して製造したフィルム状重合体についても溶出状態を確認した。なお、HPLCの分析条件は実施例1での分析条件と同じ条件で行った。
【0303】
その結果、実施例11のフィルム状重合体からは、シクロホスファゼン化合物その他の化合物は一切検出されなかった。一方、比較例のフィルム状重合体からは、アリルフェニル基が置換していないシクロホスファゼン含有量の約50%相当量のシクロホスファゼン及びその他シクロホスファゼン化合物とジエノフィルとが反応したと思われる化合物が複数検出された。
【0304】
以上のことから、本願発明のシクロホスファゼン混合体は、ジエノフィル化合物と定量的に反応して強固な重合体を形成し、ブリードアウトが防止されると考えられる。