特許第6762935号(P6762935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6762935ファイン香料におけるフレグランス送達システムとしてのポリシロキサン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762935
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ファイン香料におけるフレグランス送達システムとしてのポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/392 20060101AFI20200917BHJP
   C08L 83/08 20060101ALI20200917BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20200917BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20200917BHJP
   C11B 9/00 20060101ALN20200917BHJP
【FI】
   C08G77/392
   C08L83/08
   A61K8/35
   A61Q13/00 102
   !C11B9/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-528782(P2017-528782)
(86)(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公表番号】特表2018-501340(P2018-501340A)
(43)【公表日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2015078845
(87)【国際公開番号】WO2016091815
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】14197092.1
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨンタオ ウー
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ベルティエ
【審査官】 尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−531166(JP,A)
【文献】 特表2005−511710(JP,A)
【文献】 特表2007−511625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00− 77/62
C11B 1/00− 15/00
C11D 1/00− 19/00
A61Q 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドを制御された形で放出することができ、かつ式
【化1】
の少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーであって、
式中、二重破線は、別の繰り返し単位への結合を示し、
− Rは、C〜C16炭化水素基を表し、
− Pは、賦香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドを生成しやすい基を表し、かつ式
【化2】
[式中、波線は、前記Pと硫黄原子間の結合の位置を示し、
2は、水素原子、C〜C15の線状、環状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基を表し、該基は、任意に1〜4個のC〜Cアルキル基によって置換されており、かつ
、R及びRは、互いに独立して、水素原子、C〜C10芳香族環、又はC〜C15の線状、環状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基を表し、これらは、任意にC〜Cアルキル基によって置換可能であり、又は基R2〜R5の2個又は3個が一緒に結合して、炭素原子5〜20個を有し、かつ前記R、R、R又はRの基が結合している炭素原子を含む飽和環又は不飽和環を形成し、ここで、この環は、任意に1個又は2個のC〜Cの線状、分枝状又は環状のアルキル基又はアルケニル基によって置換されている]によって表され、
− それぞれのRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつ
− nは、1又は2を表す、
前記ポリマー。
【請求項2】
Pが、その異性体のいずれか1つの形態での、式(P−1)〜(P−13):
【化3】
の基を表すことを特徴とし、
式中、波線は、上記で示される意味を有し、点線は、単結合又は二重結合を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R10は、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、又はC〜Cの線状若しくは分枝状アルキル基を表す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記(CR基が、CH、CHMe、CMe、CHCH、CHMeCHMe及びCHMeCHの中から選択される基を表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
が、メチル基を表すことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
さらに、式(III)、(IV)及(IV’)
【化4】
群から選択される少なくとも1個の他の繰り返し単位を含むことを特徴とし、
式中、二重破線及びRは、請求項1に記載されるのと同じ意味を有し、
それぞれのR11基は、互いに独立して、C〜C12芳香族環、又はC〜C18の線状、環状若しくは分枝状のアルキル基、又はC〜Cの線状、環状若しくは分枝状のアルコキシ基を表し、
Yは、水素原子又は式−(C=O)(CRSHの基を表し、ここで、R及びnは、上記で示されるのと同じ意味を有し、
Zは、式−(CHO−PG又は−O−(CHO−PGの基を表し、ここで、PGは、2〜100個のグリコール単位を含むポリグリコール単位を表し、特に、前記グリコール単位は、式−CHCHO−又は−CHCHMeO−であってよい、請求項1から4までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーが、90/10〜40/60に含まれる繰り返し単位(I)/[(III)+(IV)+(IV’)]のモル比を有することを特徴とする、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
前記ポリマーが、線状であり、かつ、式(I)のシロキサン単位と、請求項5または6のいずれか1項で定義される、式(III)、(IV)及びIV’)の群から選択される少なくとも1個の他の繰り返し単位とのみを含むことを特徴とする、請求項5または記載のポリマー。
【請求項8】
前記ポリマーが、1400〜4000Daの範囲に含まれる重量平均分子量(M)を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項9】
前記ポリマーが、14.3〜17.0MPa0.5の範囲に含まれるハンセン溶解度パラメーターを有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項10】
賦香性組成物であって、
i)賦香性成分として、請求項1から9までのいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマー、
ii)香料キャリヤー及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに、
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤
を含む、前記賦香性組成物。
【請求項11】
賦香性成分として、請求項1から9までのいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマーを含む賦香性消費者製品。
【請求項12】
前記賦香性消費者製品が、香水、ファブリックケア製品、ボディケア製品、エアケア製品又はホームケア製品であることを特徴とする、請求項11に記載の賦香性消費者製品。
【請求項13】
前記賦香性消費者製品が、10%(w/w)未満の界面活性剤の全量を有し、ここで、パーセンテージは、賦香性消費者製品の配合物の重量に対するものであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の賦香性消費者製品。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項に記載のポリマーの賦香性成分としての使用。
【請求項15】
賦香性組成物又は着香物品の香気性を付与、向上、改善又は改質するための方法であって、該方法が、前記組成物又は物品に、請求項1から9までのいずれか1項に記載の少なくとも1種のポリマーの有効量を加えることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料分野におけるポリシロキサン結合体に関する。より具体的には、本発明は、シロキサン誘導体から誘導され、かつ、例えばα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドなどの活性分子を遊離することができる少なくとも1つのβ−チオカルボニル部分を含むポリマーに関する。本発明はまた、賦香性組成物又は悪臭を打ち消す組成物の一部としての香料中での該ポリマー又はコポリマーの使用、並びに本発明の化合物を含む賦香性組成物又は着香物品(perfumed articles)に関する。
【0002】
先行技術
香料産業は、例えば、揮発しすぎる、又は不十分な持続性を有する賦香性成分を使用したときに遭遇する問題を克服するために、一定の期間にわたって活性成分の効果を延長することができる誘導体に特に関心を示している。特に、この産業は、嗅覚への改善された性能を提供することができる誘導体に関心を抱いている。前述の改善は、放出される活性化合物の時間、強度又は有効量であり得る。
【0003】
一定の期間にわたって活性成分の効果を延長するための先行技術のシステムの典型例として、以下のものを挙げることができる:
− 国際公開第03/049666号(WO 03/049666)には、活性成分の効果を延長することができる化合物の分類が記載されている。これらの化合物の中には、特定の例としていくつかのスチレンコポリマーが引き合いに出されるポリマーが言及されている。しかしながら、いくつかのモノマー誘導体についての実施例において記載されている性能はかなり良好であるが、ポリマーの性能は、比較的控え目であり(この出願の実施例6及び7を参照されたい)、いずれの場合も、その性能は、典型的には数日中で一定期間にわたって効果的に認められ、これは、洗剤及び柔軟剤にとっては理想的であるが、数時間にわたる有効な放出が必要とされる皮膚への適用にとっては理想的でない。それゆえ、活性成分の効果を延長することができるポリマーベースの成分の放出特性を改善する必要性が依然としてある。
− 国際公開第WO2008/044178号(WO 2008/044178)の特許出願は、例えばα,β−不飽和ケトン、アルデヒド又はカルボン酸エステルなどの活性分子を遊離することができる少なくとも1つのβ−チオカルボニル部分を含む無水マレイン酸誘導体及びエチレン系誘導体から誘導されたコポリマーを扱う。これらのポリマーは、本発明のポリマーとはかなり異なり、いずれにしても、国際公開第WO03/049666号(WO 03/049666)に記載されたものと同じ時間尺度でフレグランス放出の延長効果を示す。
【0004】
事実、一定の期間にわたって活性成分の効果を延長することで知られており、かつ化学反応に基づくすべてのシステムは、数日間の時間尺度でのみ有効であって、数時間以内では有効でないことが知られている。
【0005】
本発明の目的は、適用後の数時間以内で活性成分の効果を有意に発揮又は延長することができる代替的なポリマー材料を提供することである。
【0006】
本発明のコポリマーは、先行技術において具体的に開示又は示唆されたことは一度もなく、香料放出の分野におけるそれらの特定の性能も開示又は示唆されたことは一度もないとされる。
【0007】
本発明の説明
意想外にも、本発明者らは、シロキサン誘導体から誘導され、活性分子、すなわち、エナール又はエノンを遊離することができる少なくとも1つのβ−チオカルボニル部分を含み、かつ自由活性分子と比較して優れた性能、及びファイン香料(fine perfumery)に関連した用途における先行技術のポリマーと比較して優れた性能を有する特定のポリマーが存在することを発見した。「活性分子」とは、本明細書中では、香りの利点又は効果を、その周囲環境にもたらすことができるあらゆる分子、特に発香性分子、すなわち、α,β−不飽和ケトン又はアルデヒドなどの賦香性成分を意味する。
【0008】
本発明において、「ポリマー」との用語は、ホモポリマー、すなわち、1種類のモノマーの重合によって得られるポリマー(末端基は考慮しない)、並びにコポリマー、すなわち、2種類以上のモノマーの重合によって得られるポリマーを含むものと理解される。本発明において、「ポリマー」との用語はまた、オリゴマー(三量体、四量体又はより高次のオリゴマーなど)も含むものと理解される。
【0009】
本発明のポリマーは、賦香性成分又は悪臭を打ち消す成分として使用することができる。
【0010】
本発明の第1の対象は、発香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドを制御された形で放出することができ、かつ式
【化1】
の少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーに関し、
式中、二重破線は、別の繰り返し単位への結合を示し、
− Rは、C〜C16炭化水素基を表し、
− Pは、賦香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドを生成しやすい基を表し、かつ式
【化2】
[式中、波線は、前記Pと硫黄原子間の結合の位置を示し、
2は、水素原子、C〜C15の線状、環状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基を表し、該基は、任意に1〜4個のC〜Cアルキル基によって置換されており、かつ
、R及びRは、互いに独立して、水素原子、C〜C10芳香族環、又はC〜C15の線状、環状若しくは分枝状のアルキル基、アルケニル基若しくはアルカジエニル基を表し、これらは、任意にC〜Cアルキル基によって置換されており、又は基R〜Rの2個若しくは3個が一緒に結合して、炭素原子5〜20個を有し、かつ前記R、R、R又はRの基が結合している炭素原子を含む飽和環又は不飽和環を形成し、ここで、この環は、任意に1個又は2個のC〜Cの線状、分枝状又は環状のアルキル基又はアルケニル基によって置換されている]によって表され、
− それぞれのRは、互いに独立して、水素原子又はメチル基を表し、かつ
− nは、1又は2を表す。
【0011】
「炭化水素基」とは、前記基が、水素原子及び炭素原子からなり、かつ線状、分枝状又は環状、芳香族のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基、例えば、線状アルキル基の形態であってよく、又は前記種類の基の混合物の形態であってもよいことを意味し、例えば、特定の基が、1つの種類のみへの特定の限定がなされていない限り、線状アルキル、分枝状アルケニル(例えば、1個以上の炭素−炭素二重結合を有する)、(多)環状アルキル及びアリール部分を含んでよいと理解される。同様に、本発明のすべての実施形態では、1個の基が、1つの種類より多いトポロジー(例えば、線状、環状若しくは分枝状)の形態をとること及び/又は飽和若しくは不飽和(例えば、アルキル、芳香族若しくはアルケニル)であることが言及される場合、上記で説明したとおり、前記トポロジーの任意の1つを有するか又は飽和若しくは不飽和である部分を含み得る基も意味する。同様に、本発明のすべての実施形態では、1個の基が、1つの種類の飽和若しくは不飽和(例えば、アルキル)の形態をとると言及される場合、前記基は、任意の種類のトポロジー(例えば、線状、環状又は分枝状)をとり得ること又は様々なトポロジーを有するいくつかの部分を有し得ることを意味する。
【0012】
Pの定義に使用される「賦香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒド」との表現は、本明細書中では、賦香性成分として香料中で使用されることが当業者によって認識されるα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドを意味する。「賦香性成分」とは、本明細書中では、快楽効果を付与するために賦香性の調製物又は組成物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、かかる賦香性成分が、賦香性のものであると考慮されるためには、単に香りを有するものとしてだけではなく、組成物の香りを、ポジティブな形で又は心地よい形で付与又は改質することができると当業者によって認識されなければならない。
【0013】
一般に、前記発香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドは、炭素原子8〜20個、又はそれ以上に好ましくは、炭素原子10〜15個を有する化合物である。
【0014】
本発明の任意の実施形態によれば、Pは、その異性体の任意の1つの形態での、式(P−1)〜(P−13):
【化3】
の基を表すことができ、
式中、波線は、上記で示した意味を有し、点線は、単結合又は二重結合を表し、ここで、Rは、水素原子又はメチル基を表し、かつR10は、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、又はC〜Cの線状若しくは分枝状アルキル基を表す。
【0015】
本発明の任意の実施形態によれば、Pは、式
【化4】
の基を表すことができ、
式中、波線、点線、R及びR10は、上記で示した意味を有する。
【0016】
本発明の任意の実施形態によれば、Pは、上記で定義したような、式(P−1)、(P−2)、(P−1)’、(P−2)’、(P−3)、(P−7)、(P−8)又は(P−13)の基を表し得る。さらにより具体的には、Pは、式(P−1)、(P−2)又は(P−3)の化合物を表し得る。
【0017】
本発明の任意の実施形態によれば、前記(CR基は、CH、CHMe、CMe、CHCH、CHMeCHMe及びCHMeCHの中から選択される基を表す。
【0018】
本発明の任意の実施形態によれば、Rは、任意に1個又は2個のC1〜4アルキル基又はC12芳香族環で置換されている、C〜C10の線状、環状又は分枝状のアルキル基、アルケニル基又はアルカジエニル基を表す。
【0019】
本発明の任意の実施形態によれば、前記Rは、C〜Cの線状又は分枝状アルキル基を表す。特に、Rは、メチル基を表し得る。
【0020】
本発明の任意の実施形態によれば、ポリマーは、繰り返し単位(I)と他の繰り返し単位とのコポリマーであってよい。前記コポリマーは、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーの形態をとり得る。本発明の任意の実施形態によれば、コポリマーは、好ましくは、ランダム型、又は統計型のものである。
【0021】
本発明の任意の実施形態によれば、前記ポリマーは、ホモポリマーであるか、あるいはコポリマーである。
【0022】
本発明の任意の実施形態によれば、コポリマーは、末端基を考慮することなく、繰り返し単位(I)と、この単位(I)以外のシロキサン繰り返し単位を含む。特に、前記コポリマーは、本質的に(すなわち、90%超、95%超、又はさらには100%(モルパーセント))のシロキサン繰り返し単位を含み得る。末端基を考慮することなく、シロキサン繰り返し単位を100%(モル%)含むポリマーが好ましい。
【0023】
そのうえ、本発明の前記コポリマーにおいて、繰り返し単位(I)の全量は、繰り返し単位の全量に対して、かつ末端基を考慮することなく(これ以降、(I)/(Tot))及びモルパーセントで表記)、5%〜100%、特に30%〜100%、又はさらには45%〜95%に含まれることができ、又は100%であり得ると言及しておくことが有益である。
【0024】
上述のように、本発明のコポリマーは、少なくとも1個の他の繰り返し単位、好ましくは別のシロキサンを含み得る。前記他の繰り返し単位は、特定の種類のものであってよく、又はいくつかの種類(例えば、2つ又は3つの異なる種類)を含み得る。本発明の任意の実施形態によれば、前記他の繰り返し単位は、式(III)又は(IV)
【化5】
であってよく、
式中、二重破線及びRは、式(I)に記載されるのと同じ意味を有し、
それぞれのR11基は、互いに独立して、C〜C12芳香族環、又はC〜C18の線状、環状若しくは分枝状のアルキル基、又はC〜Cの線状、環状若しくは分枝状のアルコキシ基を表し、かつ
Yは、水素原子又は式−(C=O)(CRSHの基を表し、ここで、R及びnは、上記で示したのと同じ意味を有する。
【0025】
本発明の任意の実施形態によれば、前記他の繰り返し単位は、式(IV’)
【化6】
であってよく、
式中、二重破線及びRは、式(I)に記載したのと同じ意味を有し、
Zは、式−(CHO−PG又は−O−(CHO−PGの基を表し、ここで、PGは、2〜100個のグリコール単位を含むポリグリコール単位を表し、特に、前記グリコール単位は、式−CHCHO−又は−CHCHMeO−であってよい。
【0026】
本発明の任意の実施形態によれば、前記PGは、5〜50個のグリコール単位を含むポリグリコール単位を表す。
【0027】
本発明の任意の実施形態によれば、「C〜C12の芳香族基又は環」は、所望の炭素原子数を得ることを可能にする他の基(アルキル基など)で任意に置換されているフェニル基又はナフチル基を意味する。
【0028】
本発明の任意の実施形態によれば、前記R11基のそれぞれは、互いに独立して、フェニル基、又はC〜Cの線状若しくは分枝状アルキル基、又はC16〜C18線状アルキル基を表す。本発明の任意の実施形態によれば、前記R11基の少なくとも1個は、メチル基である。本発明の任意の実施形態によれば、それぞれのR11基は、メチル基であるか、あるいはまた、一方がメチル基であり、他方がC16〜C18線状アルキル基である。
【0029】
本発明の任意の実施形態によれば、前記Yは、式−(C=O)(CRSHの基を表し、ここで、R及びnは、上記で示したのと同じ意味を有する。
【0030】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明のコポリマーはまた、99/1〜20/80で含まれる、又は90/10〜40/60で含まれる、又はさらには85/15〜45/55で含まれる繰り返し単位(I)/[(III)+(IV)+(IV’)]のモル比により特徴付けられることができる。
【0031】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明のポリマーはまた、架橋されていないことにより、特に架橋されていないシロキサン骨格により特徴付けられることができるか、又はさらに特徴付けられてもよい。本発明の任意の実施形態によれば、前記本発明のポリマーは、単位(I)に加えて、(M)又は(D)タイプのシロキサン単位のみを含み、かつ(T)又は(Q)タイプのシロキサン単位(Silicones in Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 7th Edition, 2012, vol. 32, p.675-712)を有さないことにより特徴付けられることができる。分かりやすくする意味で、「(M)、(D)、(T)又は(Q)タイプのシロキサン単位」との表現は、当該技術分野の通常の意味、すなわち、式
【化7】
[式中、本文脈中で、前記(D)及び(M)単位は、本明細書中で定義される式(III)、(IV)、(IV’)及び/又は(IV’)の基を表す]の単位を意味し、
そのため、単位(I)、並びに(D)及び(M)単位のみに基づくポリシロキサンは、基本的に線状ポリマーである。
【0032】
特に、本発明の任意の実施形態によれば、前記ポリマーは、線状であり、かつ本明細書中で定義される式(III)、(IV)及び/又は(IV’)と式(I)のシロキサン単位とのみを含む。
【0033】
本発明の任意の実施形態によれば、前記ポリマーは、1000Da〜8000Da、好ましくは1400Da又は2000Da〜4000Daの範囲に含まれる重量平均分子量(M)により特徴付けられることができる。
【0034】
本発明の任意の実施形態によれば、前記ポリマーは、14.3〜17.0MPa0.5の範囲に含まれるハンセン溶解度パラメーター(Hansen Solubility Parameters in Practice HSPiP software 3rd edition 3.1.25 (2013)により得られたもの)により特徴付けることができる。
【0035】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明の特定の種類のポリマーは、以下の工程を含む方法によって得ることができるポリマーである:
I)20℃〜95℃、好ましくは60℃〜95℃に含まれる温度で、
− 式
【化8】
[式中、R、R、n及びPは、式(I)のものと同じ意味を有し、R12は、C1〜3アルキル基、特にメチル基又はエチル基を表わす]
のモノマーと、
− 任意に、式(ii)及び/又は(iii)及び/又は(iv’)
【化9】
[式中、R、R11、R、n、Y、Z及びR12は、上記で示したものと同じ意味を有する]のモノマーと、
− 任意に、式(iv)、(v)又は(vi)
【化10】
[式中、R11、R12、R、n、X、P及びYは、上記で示したものと同じ意味を有する]のモノマーと、
− O−R12基に対して0.5〜1.1モル量の水と、
− 任意ではあるが、好ましくは、ある量の塩基と
を一緒に反応させる工程;
II)任意に、重合後に得られたアルコールR12−OHを蒸発させる工程。
【0036】
本発明の任意の実施形態によれば、又は代替的に、上記方法は、塩基(添加された場合)の中和の最終工程をさらに含んでいてよく、かかる中和は、適切な酸の付加によって、又は得られたポリマーの反復洗浄によって達成されることができる。
【0037】
本発明の任意の実施形態によれば、又は代替的に、モノマー(i)は、式
【化11】
[式中、R、R、n及びR12は、上記で示したものと同じ意味を有し、かつAは、水素原子又はアルカリ金属原子を表す]のモノマーとし、及び任意工程(II)の前又は後に、前の工程で得られたポリマーを、式
【化12】
[式中、炭素−炭素二重結合の配置は、(E)型又は(Z)型のものであってよく、かつ記号R、R、R及びRは、式(II)に示した意味を有する]の発香性化合物と、繰り返し単位(I)を形成することを可能にする条件下で反応させることによって、置き換えられることができる。
【0038】
本発明の任意の実施形態によれば、又は代替的に、モノマー(i)又は(i’)は、式
【化13】
[式中、R及びR12は、上記で示したものと同じ意味を有する]のモノマーとし、任意工程(II)の前又は後に、前の工程で得られたポリマーを、式
P−S−(CRCOX (P’’)
[式中、Xは、OH基、F、Cl若しくはBr原子、OCOOR15基、又はOR15基を表し、ここで、R15は、C1〜4アルキル基を表し、かつ記号P、R及びnは、式(I)で示したものと同じ意味を有する]の化合物と、繰り返し単位(I)を形成することを可能にする条件下で反応させることによって、置き換えられることができる。
【0039】
本発明の任意の実施形態によれば、上記方法で使用される水の量は、O−R12基に対して水の量0.7〜1.0モルに含まれることができる。
【0040】
分かりやすくする意味で、「ある量の塩基」又は似たような表現は、反応が、一般に10、又は12又はさらには14より高い値に含まれる塩基性pHで実施され、かつ塩基が、任意の塩基、特に水酸化物イオン、例えばDBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン)、NaOH、KOH、トリエチルアミン、N、N−ジイソプロピルエチルアミン又はトリエタノールアミンであってよいことを意味する。
【0041】
式(iv)、(v)及び(vi)のモノマーは、可能な末端鎖単位であってもよいことを意味する。実際、本発明の任意の実施形態によれば、前記ポリマーは、ポリマーの製造の仕方に依存して、様々な性質であってよい末端基を有する。
【0042】
本発明の任意の実施形態によれば、前記末端基は、Si(OH)、Si(OR12)(R11、Si(OR12又はSi(R11基であってよい。特に、前記末端基は、Si(OH)、Si(OR12)(R11又はSi(Me)基である。
【0043】
前記モノマー(i)は、式(i’)の適切な化合物(ここで、Aは、水素原子又はアルカリ金属原子を表す)を、式(P’)の発香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドに[1,4]付加することによって得られることができる。
【0044】
他のモノマーは、市販されているか、又は当業者に周知の標準的な手法に従って得ることができる。
【0045】
本発明の任意の実施形態によれば、本発明のポリマーは、繰り返し単位(I)/[(III)+(IV)]のモル比が85/15〜45/55に含まれる線状コポリマーであり、かつ式(I)中のPは、上記で定義されており、特に、式(P−1)〜(P−13)で定義されるとおりであり;
は、メチル基であり;
及びnは、本明細書中上記で定義したとおりであり;かつ
前記ポリマーは、
− 1000Da〜8000Da、好ましくは1400Da又は2000Da〜4000Daの範囲に含まれる重量平均分子量(M);
− 式−Si(OH)、−Si(OR13)(R14又は−Si(R14の末端基を有し、式中、
それぞれのR13は、互いに独立して、水素原子又は上記で定義したR12基を表し、
それぞれのR14は、互いに独立して、上記で定義したR又はR11基を表す。
【0046】
それらの特定の化学構造に基づき、本発明のポリマーは、分解反応を介して、残基及び発香性分子、例えば、式(P’)のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドなどを放出することができる。
【0047】
化合物(I)の合成に使用されることができ、その後に放出されることができる式(P’)の化合物の網羅的なリストを提供することは不可能である。しかしながら、以下の化合物名を、好ましい例として挙げることができる:α−ダマスコン、β−ダマスコン、γ−ダマスコン、δ−ダマスコン、α−イオノン、β−イオノン、γ−イオノン、δ−イオノン、β−ダマセノン、3−メチル−5−プロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、1−(3,3−又は5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(Neobutenone(登録商標)、出所:Firmenich SA)、1−(3−エチル−3−メチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン、1−(5−エチル−5−メチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン、1−(スピロ[4.5]デカ−6−又は7−エン−7−イル)ペンタ−4−エン−1−オン、2−メチル−5−(プロパ−1−エン−2−イル)シクロヘキサ−2−エノン(カルボン(carvon))、8−又は10−メチル−α−イオノン、2−オクテナール、1−(2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキシル)−2−ブテン−1−オン、4−(2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキシル)−3−ブテン−2−オン、2−シクロペンタデセン−1−オン、4,4a−ジメチル−6−(プロパ−1−エン−2−イル)−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロナフタレン−2(3H)−オン(ノートカトン(nootkatone))、シンナムアルデヒド、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−スピロ−2’−シクロヘキセン−4’−オン及び3,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエナール(シトラール(citral))。
【0048】
本発明の特定の実施形態によれば、以下の式(P’)の化合物を挙げることができる:ダマスコン、イオノン、β−ダマセノン、1−(3,3−又は5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン、1−(5−エチル−5−メチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン、カルボン、1−(2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキシル)−2−ブテン−1−オン、4−(2,2,3,6−テトラメチル−1−シクロヘキシル)−3−ブテン−2−オン及びシトラール。
【0049】
したがって、かかる化合物(P’)を放出することができるか、又は相応のP基を有する本発明の化合物も、本発明の特に好適な実施形態である。
【0050】
上記分解反応の一例を、以下のスキーム
【化14】
で例示しており(ここでは、1個の繰り返し単位のみを示している)、発香性分子の放出をもたらす分解反応は、酸素の存在、pH変化又は熱の影響を受けるとされるが、皮膚上に存在する酵素などの他の種類のメカニズムによっても引き起こされる可能性がある。
【0051】
本発明のポリマーは、適用において十分な安定性を示しながら、数時間以内で、発香性のα,β−不飽和ケトン又はアルデヒドの顕著な放出を制御された形で可能にするという特殊性を有する。かかる迅速な効果は、数日後にのみ有意に効果的である先行技術のシステムにおいて観察及び開示されているものとは逆である。
【0052】
上述のように、本発明は、賦香性成分としての上記コポリマーの使用に関する。言い換えれば、本発明は、賦香性組成物又は着香物品の香気性を付与、向上、改善又は改質するための方法に関し、該方法は、前記組成物又は物品に、本発明による少なくとも1種のポリマーの有効量を加えることを含む。「本発明のポリマーの使用」とは、本明細書中では、前記ポリマーを含有し、かつ有利には香料産業において活性成分として用いられることができる任意の組成物の使用とも理解される必要がある。
【0053】
実際に賦香性成分として有利には用いられることができる前記組成物も、本発明の対象である。
【0054】
したがって、本発明の別の対象は、
i)賦香性成分として、上記で定義される少なくとも1種の本発明のポリマー、
ii)香料キャリヤー(perfumery carrier)及び香料ベースからなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii)任意に少なくとも1種の香料補助剤(perfumery adjuvant)
を含む賦香性組成物である。
【0055】
「香料キャリヤー」とは、本明細書中では、香料の観点から実質的に中性的であり、すなわち、賦香性成分の官能特性を著しくは変化させない材料を意味する。前記キャリヤーは、液体であってよい。
【0056】
液体キャリヤーとしては、非限定的な例として、香料において一般的に使用される、乳化系、すなわち、溶媒及び界面活性剤系、又は溶媒を挙げることができる。香料において一般的に使用される溶媒の性質及び種類についての詳細な説明は、網羅することができない。しかしながら、非限定的な例として、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジプロピレングリコール及びそのモノエーテル、1,2,3−プロパントリイルトリアセテート、ジメチルグルタレート、ジメチルアジペート、1,3−ジアセチルオキシプロパン−2−イルアセテート、ジエチルフタレート、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノール、トリエチルシトレートなどの溶媒又はこれらの混合物を挙げることができ、これらが、最も一般的に使用される。香料キャリヤーと香料ベースの両方を含む組成物の場合、前で特定したもの以外の適切な香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネン又は他のテルペン、イソパラフィン、例えば商標Isopar(登録商標)(出所:Exxon Chemical)として知られているもの、又はグリコールエーテル及びグリコールエーテルエステル、例えば商標Dowanol(登録商標)(出所:Dow Chemical Company)として知られているもの、又は水素化ヒマシ油、例えば商標Cremophor(登録商標)RH40(出所:BASF)として知られているものであってもよい。
【0057】
固体キャリヤーとは、賦香性組成物又は賦香性組成物の一部要素が、化学的又は物理的に結合し得る材料を意味する。一般に、かかる固体キャリヤーは、組成物の安定化のためにも、組成物又は一部成分の蒸発速度を制御するためにも用いられる。固体キャリヤーの使用は、当該技術分野で現在使用されており、当業者は、所望の効果を達成する仕方を知っている。しかしながら、固体キャリヤーとしての非限定的な例として、吸収性ガム又はポリマー又は無機材料、例えば多孔性ポリマー、シクロデキストリン、木質材料、有機若しくは無機ゲル、粘土、石膏、タルク又はゼオライトを挙げることができる。
【0058】
固体キャリヤーの他の非限定的な例として、カプセル化材料を挙げることができる。かかる材料の例には、隔壁形成材料及び可塑化材料、例えば単糖類、二糖類若しくは三糖類、天然デンプン若しくは化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、タンパク質若しくはペクチン、又はさらにH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参照テキストに挙げられている材料が含まれ得る。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、例として、噴霧乾燥、アグロメレーション又はさらに押出成形のような技術を用いて実施することができ、又はコアセルベーション技術及び複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化から構成される。非限定的な例として、特に、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリ尿素又はポリウレタンタイプの樹脂又はそれらの混合物(これらの樹脂のすべてが当業者に周知である)での、重合、界面重合、コアセルベーション又はそれら全体(これらの技術のすべてが先行技術に記載されている)により誘起される相分離プロセスのような技術を用いる、任意にポリマー安定化剤又はカチオン性コポリマーの存在下でのコアシェルカプセル化を挙げることができる。
【0059】
特に、樹脂として、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2−ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸又はグリコールアルデヒド及びそれらの混合物)と、アミン、すなわち、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、グアナゾールなど、及びそれらの混合物との重縮合によって生成されたものを挙げることができる。あるいはまた、予備形成された樹脂のアルキロール化ポリアミン、例えば、Urac(商標)(出所:Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(出所:Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)又はLuracoll(登録商標)(出所:BASF)の商標で市販されているものを使用することができる。
【0060】
特に、樹脂として、ポリオール、例えばグリセロールと、ポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネート若しくはキシリレンジイソシアネートの三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、又はトリメチロールプロパンで変性されたキシリレンジイソシアネートの三量体(Takenate(登録商標)の商標で知られている、出所:三井化学株式会社)、中でもトリメチロールプロパンで変性されたキシリレンジイソシアネートの三量体及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットと、の重縮合によって生成されたものを挙げることができる。
【0061】
アミノ樹脂、すなわちメラミン系樹脂と、アルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関連した影響力の大きい文献のいくつかの代表例が、K. Dietrich他によりActa Polymerica, 1989, vol. 40, 第243頁, 第325頁及び第683頁,並びに1990, vol. 41, 第91頁の中で掲載されたものなどの論文である。かかる論文は、特許文献にもさらに詳述及び例示されている先行技術の方法に従った、かかるコアシェルマイクロカプセルの調製に影響を及ぼす様々なパラメーターを既に記載している。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4396670号明細書(US 4,396,670)は、該特許文献の適切な初期の例である。それ以来、多くの他の著者及び考案者が、この分野の文献を充実させており、出版されたすべての進展内容をここで網羅することは不可能であるものの、このタイプのカプセル化の一般知識は非常に重要である。かかるマイクロカプセルの適切な使用にも向けられている最近の関連文献の代表例は、例えば、H.Y.Lee他によるJournal of Microencapsulation, 2002, vol. 19, 第559頁〜第569頁中での論文、国際特許出願WO01/41915号(WO 01/41915)、又はさらにS.Bone他によるChimia, 2011, vol. 65, 第177頁〜第181頁中での論文である。
【0062】
一般的に言えば、「香料ベース」とは、本明細書中では、少なくとも1種の賦香性補助成分(perfuming co-ingredient)を含む組成物を意味する。
【0063】
前記賦香性補助成分は、本発明によるコポリマーではない。さらに、「賦香性補助成分」とは、本明細書中では、快楽効果を付与するために賦香性の調製物又は組成物中で使用される化合物を意味する。言い換えれば、かかる賦香性補助成分が、賦香性のものと考慮されるためには、単に香りを有するものとしてだけではなく、組成物の香りを、ポジティブな形で又は心地よい形で付与又は改質することができると当業者によって認識されなければならない。
【0064】
ベース中に存在する賦香性補助成分の性質及び種類は、より詳細な説明をここで保証するものではなく、それらはいずれの場合も網羅的ではなく、当業者は、自身の一般的な知識に基づき、かつ目的とされる使用又は適用及び所望の官能効果に従ってそれらを選択することができる。一般に、これらの賦香性補助成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、含窒素又は含硫黄複素環式化合物及び精油のような多岐にわたる化学的分類に属し、かつ前記賦香性補助成分は、天然又は合成起源又はさらにはプロパフューム(pro-perfumes)(すなわち、分解時に賦香性成分を遊離する化合物)であってよい。プロパフュームの例は、A.Herrmannにより出版された論文であるAngewandte Chemie International Edition, 2007, vol. 46, 第5836頁〜第5863頁、又は同じような種類の最近の研究書において、並びに当該分野における豊富な特許文献などの文献に記載されている。
【0065】
特に、香料配合物において一般的に使用される、例えば以下の賦香性補助成分を挙げることができる:
− アルデヒド成分:デカナール、ドデカナール、2−メチル−ウンデカナール、10−ウンデセナール、オクタナール及び/又はノネナール;
− 芳香族ハーバル成分:ユーカリ油、ショウノウ、ユーカリプトール、メントール及び/又はα−ピネン;
− バルサム含有成分:クマリン、エチルバニリン及び/又はバニリン;
− シトラス成分:ジヒドロミルセノール、シトラール、オレンジオイル、酢酸リナリル、シトロネリルニトリル、オレンジテルペン、リモネン、1−p−メンテン−8−イルアセテート及び/又は1,4(8)−p−メンタジエン;
− フローラル成分:ジヒドロジャスモン酸メチル、リナロール、シトロネロール、フェニルエタノール、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール、ヘキシルシンナムアルデヒド、酢酸ベンジル、サリチル酸ベンジル、テトラヒドロ−2−イソブチル−4−メチル−4(2H)−ピラノール、β−イオノン、メチル2−(メチルアミノ)ベンゾエート、(E)−3−メチル−4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン、サリチル酸ヘキシル、3,7−ジメチル−1,6−ノナジエン−3−オール、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパナール、酢酸ベルジル、ゲラニオール、p−メンタ−1−エン−8−オール、4−(1,1−ジメチルエチル)−1−シクロヘキシルアセテート、1,1−ジメチル−2−フェニルエチルアセテート、4−シクロヘキシル−2−メチル−2−ブタノール、サリチル酸アミル、高シスジヒドロジャスモン酸メチル、3−メチル−5−フェニル−1−ペンタノール、プロピオン酸ベルジル、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、シス−7−p−メンタノール、プロピル(S)−2−(1,1−ジメチルプロポキシ)プロパノエート、2−メトキシナフタレン、2,2,2−トリクロロ−1−フェニルエチルアセテート、4/3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、アミルシンナムアルデヒド、4−フェニル−2−ブタノン、酢酸イソノニル、4−(1,1−ジメチルエチル)−1−シクロヘキシルアセテート、イソ酪酸ベルジル及び/又はメチルイオノン異性体の混合物;
− フルーティ成分:γ−ウンデカラクトン、4−デカノリド、2−メチルペンタン酸エチル、酢酸ヘキシル、2−メチルブタン酸エチル、γ−ノナラクトン、ヘプタン酸アリル、2−フェノキシエチルイソブチレート、エチル2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−アセテート及び/又はジエチル1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート;
− グリーン成分:2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルバルデヒド、2−tert−ブチル−1−シクロヘキシルアセテート、酢酸スチラリル、アリル(2−メチルブトキシ)アセテート、4−メチル−3−デセン−5−オール、ジフェニルエーテル、(Z)−3−ヘキセン−1−オール及び/又は1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン;
− ムスク成分:1,4−ジオキサ−5,17−シクロヘプタデカンジオン、ペンタデセノリド、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチル−シクロペンタ−g−2−ベンゾピラン、(1S,1’R)−2−[1−(3’,3’−ジメチル−1’−シクロヘキシル)エトキシ]−2−メチルプロピルプロパノエート、ペンタデカノリド及び/又は(1S,1’R)−[1−(3’,3’−ジメチル−1’−シクロヘキシル)エトキシカルボニル]メチルプロパノエート;
− ウッディ成分:1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−エタノン、パチョリ油、パチョリ油のテルペン分画、(1’R,E)−2−エチル−4−(2’,2’,3’−トリメチル−3’−シクロペンテン−1’−イル)−2−ブテン−1−オール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、メチルセドリルケトン、5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール、1−(2,3,8,8−テトラメチル−1,2,3,4,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン−2−イル)エタン−1−オン及び/又は酢酸イソボルニル;
− 他の成分(例えば、アンバー、パウダリーなスパイシー又はウォータリー):ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチル−ナフト[2,1−b]フラン及びその任意の立体異性体、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、オイゲノール、シンナムアルデヒド、チョウジ油、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール及び/又は3−(3−イソプロピル−1−フェニル)ブタナール。
【0066】
本発明による香料ベースは、上述の賦香性補助成分に限定されていなくてよく、これらの他の多くの補助成分が、いずれの場合も、S. Arctanderの著作物であるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAなどの参照テキスト、又はその最新版、又は同じような種類の最近の研究書において、並びに香料の分野における豊富な特許文献に挙げられている。前記補助成分は、制御された形で様々な種類の賦香性化合物を放出することで知られている化合物であってもよいことも理解される。
【0067】
本発明のいずれかの実施形態によれば、賦香性成分の特定の種類は、プロパフュームである。特に、国際公開第2014/202591号(WO2014/202591A1)又は国際公開第2003/049666号(WO2003/049666)に記載されているすべてのプロパフュームを挙げることができる。具体的には、式P−S−R15[式中、Pは、上記で定義した基であり、R15は、1個若しくは2個の酸素原子又は窒素原子を任意に含む線状又は分枝状のC〜C20アルキル基である]のすべてのプロパフューム、例えば3−(ドデシルチオ)−1−[2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル]−1−ブタノンに言及することができる。特に、R15は、線状又は分枝状のC〜C15アルキル基であってよい。
【0068】
「香料補助剤」とは、本明細書中では、例えば色、特定の耐光性、化学的安定性などの付加的な利点を追加で付与することができる成分を意味する。香料ベース中で一般的に使用される補助剤の性質及び種類の詳細な説明は、網羅的に可能ではないが、前記成分は、当業者に周知であると言及しておく必要がある。しかしながら、非限定的な具体例として以下のものを挙げることができる:粘性剤(例えば、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤及び/又はレオロジー改質剤)、安定化剤(例えば、防腐剤、酸化防止剤、熱/光安定化剤及び/又は緩衝剤又はキレート剤、例えばBHT)、着色剤(例えば、染料及び/又は顔料)、防腐剤(例えば、抗菌剤又は抗微生物剤又は抗真菌剤又は抗刺激剤)、研磨剤、皮膚冷却剤、固定剤、昆虫忌避剤、軟膏剤、ビタミン、並びにそれらの混合物。
【0069】
当業者は、所望の効果を得るために、当該技術分野の標準的な知識を単に適用することだけでなく、試行錯誤の方法体系によっても、賦香性組成物の上記成分を混合することにより最適な配合物を完全に作り出すことができると理解される。
【0070】
本発明によるポリマーと組み合わせて任意に使用される他の適切な香料補助剤は、第三級アミン、特に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン及びエトキシル化アルキルジエタノールアミンのような高い水溶性を有するものを含む。
【0071】
本発明のいずれかの実施形態によれば、特定の種類の香料補助剤を、国際公開第2011/113746号(WO 2012/113746)に記載されているもの、例えば5−クロロ−2−メチルイソチアゾール−3(2H)−オン若しくは1,2−ベンズイソチアゾール−3(2H)−オンの中から、又は亜硫酸塩、例えば亜流酸水素塩若しくは亜流酸ナトリウム若しくは亜硫酸カリウムから選択することができる。
【0072】
少なくとも1種のコポリマー及び少なくとも1つの香料キャリヤーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態だけでなく、少なくとも1種のポリマー、少なくとも1つの香料キャリヤー、少なくとも1つの香料ベース、及び任意に少なくとも1種の香料補助剤を含む賦香性組成物も表す。
【0073】
ここで言及しておくと有益なのは、上記の組成物において、2種以上の本発明のポリマーを有する可能性が、本発明の様々な化合物の香調を有するアコード、香料を調香師が調製することを可能にし、それゆえ彼らの作業のために新しいツールをもたらすことから重要である。本発明のポリマーはまた、他の香料送達システム、例えばカプセル又はプロフレグランスの存在下で使用することもできる。
【0074】
そのうえ、本発明のポリマー、又はそれを含む賦香性組成物は、現代の香料のすべての分野、ファイン香料又は機能性香料など、特に、数時間以内での放出が求められる用途において有利に使用することができる有用な賦香性成分である。実際に、本発明の化合物は、発香性化合物のより制御された付着ひいては放出を達成するために、香料において有利に用いることができる。例えば、本発明によるポリマーは、発香性分子の良好な持続性、低い揮発性及びよく制御された放出に基づき、上記で定義した発香性成分の迅速な又は長期の遊離効果が求められる任意の用途に組み込むことができ、そのうえ、フレグランス及びフレッシュネスを、処理された表面、特に皮膚に付与することができ、これらは、数時間にわたって、そして、すすぎ及び/又は乾燥プロセスを十分に経ても持続する。上記のように、本発明のポリマーは非常に特殊な放出時間プロファイルを有しているため、トップノート(すなわち、最初の数時間の香り効果)を改善するためのファイン香料用途又は洗剤用途にも特に適している。この観点において、本発明の化合物と先行技術の香料送達システムとのブレンドは、消費者製品の全使用期間で好ましい影響を与えることを可能にする。
【0075】
結果として、賦香性成分として、上記で定義した少なくとも1種の本発明のポリマーを含む賦香性消費者製品も本発明の対象である。
【0076】
本発明の化合物は、そのまま又は本発明の賦香性組成物の一部として添加することができる。
【0077】
分かりやすくする意味で、「賦香性消費者製品」とは、それが適用される表面(例えば、皮膚、テキスタイル、又は硬質表面)に少なくとも心地よい賦香性効果を送達することが期待される消費者製品を意味するものと言及しておかなければならない。言い換えれば、本発明による賦香性消費者製品は、機能性配合物のほかに、所望の消費者製品、例えばオードトワレに対応する任意に追加的な有益剤、及び嗅覚的有効量の少なくとも1種の本発明のポリマーを含む着香消費者製品である。
【0078】
賦香性消費者製品の構成成分の性質及び種類は、より詳細な説明をここで保証するものではなく、それらはいずれの場合も網羅的ではなく、当業者は、自身の一般的な知識に基づき、かつ前記製品の性質及び所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0079】
適切な賦香性消費者製品の非限定的な例は、以下のものであり得る:パルファム、例えばファインパルファム、スプラッシュ、オードトワレ、オードパルファム、コロン又はアフターシェーブローション;ファブリックケア製品、例えば固形洗剤若しくは液体洗剤、又は単回量用洗剤(例えば粉末タブレット、液体単回量用洗剤又はマルチチャンバー式単回量用洗剤)、布用柔軟剤、布用リフレッシャー、アイロンウォーター、紙、又は漂白剤、カーペットクリーナー、カーテンケア製品;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、カラーリング剤若しくはヘアスプレー、カラーケア製品、整髪製品)、デンタルケア製品、消毒剤、インティメイトケア製品;化粧品調製物(例えば、スキンクリーム若しくはローション、バニシングクリーム又は制臭剤若しくは制汗剤(例えば、スプレー式又はロールオン式)、脱毛剤、タンニング用製品又は日焼け用製品若しくは日焼け後用製品、ネイル製品、スキンクレンジング、メイクアップ);又はスキンケア製品(例えば、着香石鹸、シャワー用若しくはバス用のムース、オイル若しくはゲル、又は衛生用品、又はフットケア/ハンドケア製品);エアケア製品、例えばエアフレッシュナー又は「すぐに使用できる」粉末状エアフレッシュナーであって、これは家庭空間(部屋、冷蔵庫、食器棚、靴若しくは車)及び/又は公共空間(ホール、ホテル、モールなど)で使用することができる;ホームケア製品、例えばカビ取り剤、家具手入れ用品、ワイプ、食器洗剤又は硬質表面(例えば、床、バス、トイレ又は窓)用洗剤;レザーケア製品;カーケア製品、例えばポリッシュ、ワックス又はプラスチッククリーナー。
【0080】
本発明のポリマーは、特にエタノールに可溶性であるので、あらゆるアルコール含有の賦香性消費者製品が特に適している。本発明の実施形態のいずれか1つによれば、前記賦香性消費者製品は、10%(w/w)より低い、又はさらには6%(w/w)より低い界面活性剤の全量を有する賦香性消費者製品であり、ここで、パーセンテージは、賦香性消費者製品の配合物(すなわち、包装されていない)の重量に対するものである。
【0081】
本発明の実施形態のいずれか1つによれば、前記賦香性消費者製品は、パルファム(例えばファインパルファム、オードトワレ、オードパルファム、コロン、ボディスプラッシュ、アフターシェーブローション又はボディスプレー、ボディミスト)、又は制臭剤(例えば、ボディデオドラントスプレー)である。
【0082】
上記のとおり、本発明によるポリマーは、フレグランス及びフレッシュネスを、処理された表面、例えば皮膚に付与することができ、これらは、すすぎ及び/又は乾燥プロセスを十分に経ても持続する。
【0083】
本発明の更なる態様は、表面の香気性を付与、向上、改善又は改質するための方法であり、該方法は、前記表面に、本発明による少なくとも1種のポリマーの有効量を付着させること、又は前記表面を、有効量の該ポリマーで洗浄することを含む。前記表面は、任意の1つのものであってよく、非限定的な例として、テキスタイル、硬質表面、毛髪及び皮膚、特に合成繊維、例えばポリエステル、毛髪を挙げることができる。特に、前記表面は皮膚である。
【0084】
上述の賦香性消費者製品の一部は、本発明の化合物に対する攻撃性媒体になり得るので、例えばカプセル化によって、早期の分解から該化合物を保護する必要があり得る。
【0085】
本発明の化合物を組み込むことができる織物洗剤又は柔軟剤組成物の典型的な例は、国際公開第97/34986号(WO 97/34986)又は米国特許第4137180号明細書(US 4,137,180)及び米国特許第5236615号明細書(US 5,236,615)又は欧州特許出願公開第799885号明細書(EP 799885)に記載されている。使用することができる他の典型的な洗剤及び軟化剤組成物は、Ullmann’s Encyklopedia of Industrial Chemistry, vol. 20, Wiley-VCH, Weinheim, 第355頁〜第540頁 (2012); Flick, Advanced Cleaning Product Formulations, Noye Publication, Park Ridge, New Jersey (1989); Showell, in Surfactant Science Series, vol. 71: Powdered Detergents, Marcel Dekker, New York (1988); Proceedings of the World Conference on Detergents (4th, 1998, Montreux, Switzerland), AOCS printなどの研究書に記載されている。
【0086】
本発明による化合物を様々な上記の製品又は組成物中に組み込むことができる割合は、広い範囲内の値で変化する。これらの値は、本発明による化合物が、当該技術分野において一般的に使用される賦香性補助成分、溶媒又は香料と混合されるときに、着香されるべき製品の性質及び所望の嗅覚的効果だけでなく、所与の組成物中の補助成分の性質にも依存する。
【0087】
例えば、本発明の化合物の典型的な濃度は、該化合物が組み込まれる組成物の重量に対して、0.001重量%〜20重量%、又はさらには10重量%のオーダーである。これらの値より低い濃度、例えば0.001重量%〜10重量%、又はさらには5重量%のオーダーは、この化合物が上記の様々な賦香性消費者製品を賦香するのに直接適用される場合に使用することができる。
【0088】
本発明の別の対象は、表面を賦香する方法、又は発香性成分の特徴的なフレグランスの表面上での拡散効果を増大又は延長させる方法に関し、該方法は、前記表面を本発明の化合物の存在下で処理することを特徴とする。適切な表面は、特に、テキスタイル、硬質表面、毛髪及び皮膚である。特に、前記表面は皮膚である。
【0089】
実施例
本発明を、これから以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、その際、略語は、当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏温度(℃)で示され;NMRスペクトルデータは、Bruker AM−400分光計(1Hは400MHzで、13Cは100MHzで)によりCD3OD(特に明記しない限り)で記録され、化学シフト(chemical displacements)δは、標準物質としてのTMSに対してppmで示され、結合定数Jは、Hzで表される。
【0090】
特に明記しない場合、市販の試薬及び溶媒を、さらに精製することなく使用した。IRスペクトル:Thermo Scientific Nicolet FTIR分光計、ν(cm−1)、位置として提供されるデータ(強度、すなわち透過率(%))。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析を、Viscotek UV検出器2500に接続されたViscotek GPC max VE 2001 GPC溶媒/サンプルモジュール、Viscotek VE3580 RI検出器及びViscotek−270−二重検出器(粘度計)により室温(約22℃)で行った。サンプルを、Waters Styragel HR 4E及びHP 5(7.8×300mm)カラムから、テトラヒドロフラン(THF、HPLCグレード)を用いて1.0mL/min−1の流速で溶出させた。ユニバーサルキャリブレーションを、市販のポリ(スチレン)標準を用いて行った。ポリマー標準物質(約40mg)を、正確に秤量し、THF(10mL)に溶解した;次いで、これらの溶液(100μL)を較正のために注入した。SECによって測定されたポリマーの分子量について、Mは、「重量平均分子量」を表し、Mは、「数平均分子量」を表す。実施例において、「転化率(conversion)」によって、第1の工程で形成されたコポリマーへの香料化合物(P’)の付加比として該転化率を定義する。完全な転化は、最終的なコポリマーにおける(P’)の完全な付加に相当する。コポリマーのハンセン溶解度パラメーターを、最終的なコポリマーにおける各モノマーのモル分率を考慮に入れることにより、対応するモノマーのハンセン溶解度パラメーターから計算した。モノマーの溶解度パラメーターデータは、Hansen Solubility Parameters in Practice HSPiP software 3rd edition 3.1.25 (2013)に従って得た。
【0091】
実施例において、「収率」によって、反応の終わりに回収されたコポリマーの質量と、得られた生成物の予想される理論質量との重量比として、上記で定義した転化率の関数として該収率を定義する。
【0092】
実施例1
本発明によるポリマーの調製
1)δ−ダマスコンを放出する本発明のコポリマーを調製するための一般プロトコル
(a) ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ(ジメチルシロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン)の調製
50mLの丸底フラスコ中で、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン(9.87g、50mmol)、ジエトキシジメチルシラン(1.535g、10mmol)及び水(1.799g、100mmol)を、NaOH(0.05g、1.25mmol)の存在下で溶解して無色の溶液を得た。この反応混合物を、室温で4時間撹拌した。二相混合物を得た。真空下で蒸発させることによりエタノール及び水を除去して、油状物を得た。
【0093】
FT-IR: 790 (34); 1005 (30); 1176 (84); 1257 (57); 1409 (87); 1591 (86); 2923 (80)
ハンセン溶解度パラメーター:14.85MPa0.5
【0094】
2. 2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)酢酸の調製
100mLの丸底フラスコに、δ−ダマスコン(3.33g、17.33mmol)、チオグリコール酸(2.47g、26.0mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.264mL、1.73mmol)及び50mLのTHFを、磁気撹拌しながら添加した。この溶液を45℃に温め、一晩中撹拌した。室温に冷却した後、この混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をCHCl(50mL)に溶解させた。この溶液を、5%の水性HCl(2×20mL)、純水(2×20mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して90%の収率で油状物を得た。
【0095】
FT-IR: 577 (84); 640 (78); 689 (65); 794 (84); 895 (80); 1008 (78); 1086 (84); 1116 (76); 1153 (76); 1201 (79); 1249 (79); 1295 (73); 1366 (71); 1387 (80); 1456 (84); 1703 (45); 2871 (82); 2958 (79); 3018 (88)
【0096】
3. ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(a).2で得られた酸(2.3g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.615g、7.75mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.857g、7.30mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(a).1で得られたコポリマー(1.56g、10.545mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.5mL、10.55mmol)をこの溶液に添加し、この混合物を一晩中撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後の固体)を得た。
【0097】
転化率=75〜80%
1H-NMR: 5.54 (m, 1H), 5.50 (m. 1H), 5.46 (m, 1H), 4.33 (m, 2H), 3.80 (m, 2H), 3.22 (m, 1H), 2.81 (m, 1H), 2.61 (m, 1H), 2.47 (m, 1H), 2.32 (m, 1H), 2.00 (m, 1H), 1.72 (m, 1H), 1.62 (m, 2H), 1.31 (m, 3H), 1.02 (m, 3H), 0.98 (m, 3H), 0.94 (m, 3H), 0.60 (m, 2H), 0.13 (m, 3H), 0.01 (m, 3H);
13C-NMR: 214.3 (s), 176.9 (s), 132.8 (d), 125.6 (d), 63.7 (d), 51.8 (t), 43.9 (t), 42.7 (t), 36.6 (s), 34.7 (d), 33.0 (t), 30.2 (d), 29.1 (t), 26.3 (q), 26.1 (q), 24.4 (q), 21.4 (t), 15.9 (q), -0.1 (q).
FT-IR: 689 (65); 795 (55); 894 (84); 1008 (50); 1071 (55); 1153 (86); 1211 (77); 1258 (68); 1297 (85); 1366 (78); 1387 (85); 1455 (84); 1537 (77); 1644 (63); 1705 (72); 2927 (82); 2956 (83); 3018 (95); 3295 (93)
ハンセン溶解度パラメーター:16.79MPa0.5
(SEC)=3880 Da M=2380Da
【0098】
(b) ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. 2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパン酸の調製
100mLの丸底フラスコに、δ−ダマスコン(3.33g、17.33mmol)、メルカプトプロパン酸(2.85g、26.0mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.264mL、1.73mmol)及び50mLのTHFを、磁気撹拌しながら添加した。この溶液を45℃に温め、一晩中撹拌した。室温に冷却した後、この混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をCHCl(50mL)に溶解させた。この溶液を、5%の水性HCl(2×20mL)、純水(2×20mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して85%の収率で油状物を得た。
【0099】
FT-IR: 648 (81); 690 (71); 843 (83); 895 (82); 932 (82); 998 (82); 1077 (79); 1117 (86); 1154 (79); 1204 (79); 1240 (78); 1285 (79); 1367 (75); 1455 (77); 1703 (46); 2872 (82); 2958 (80); 3018 (88)
【0100】
2. ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサンシロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(b).1で得られた酸(2.53g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.615g、7.75mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.857g、7.30mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(a).1で得られたコポリマー(1.56g、10.545mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.5mL、10.55mmol)を溶液に添加し、一晩中撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に固体になる)を得た。
【0101】
転化率=75%
1H-NMR: 5.54 (m, 1H), 5.50 (m. 1H), 5.46 (m, 1H), 3.43 (m, 1H), 3.20 (m, 2H), 3.01 (m, 1H), 2.94 (m, 1H), 2.63 (m, 1H), 2.46 (m, 1H), 2.31 (m, 1H), 1.98 (m, 2H), 1.77 (m, 2H), 1.70 (m, 2H), 1.38 (m, 3H), 1.28 (m, 3H), 1.02 (m, 3H), 0.98 (m, 3H), 0.93 (m, 3H), 0.59 (m, 2H), 0.14 (m, 3H), 0.01 (m, 3H);
13C-NMR: 214.6 (s), 176.4 (s), 132.8 (d), 125.4 (d), 63.7 (d), 49.7 (t), 45.8 (t), 42.7 (t), 35.8 (s), 34.7 (d), 34.0 (d), 33.1 (d), 32.9 (t), 30.3 (q), 30.2 (q), 26.8 (q), 22.3 (q), 21.3 (q), 20.4 (t), 19.6 (q), 19.5 (q), -0.01 (q).
FT-IR: 689 (65); 797 (56); 893 (84); 1007 (50); 1073 (54); 1189 (77); 1258 (65);1367 (75); 1452 (80); 1550 (76); 1643 (70); 1705 (74); 2929 (82); 2958 (83); 3018 (94); 3305 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:16.74MPa0.5
(SEC)=3800 Da M=2370Da
【0102】
(c) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
50mLの丸底フラスコ中で、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン(4.93g、25mmol)、ジエトキシジメチルシラン(0.764g、5mmol)、エトキシトリメチルシラン(3.66g、30mmol)及び水(1.621g、90mmol)を、NaOH(0.04g、1.0mmol)の存在下で溶解して無色の溶液を得た。この反応混合物を、室温で4時間撹拌した。二相混合物を得た。真空下で蒸発させることによりエタノール及び水を除去して、油状物を直接得た。
【0103】
FT-IR: 687 (67); 751 (33); 789 (35); 837 (32); 1025 (31); 1255 (57); 1410 (94); 2924 (88); 2957 (87)
ハンセン溶解度パラメーター:13.83MPa0.5
【0104】
2. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(a).2で得られた酸(2.30g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.758g、8.44mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.991g、8.44mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(c).1で得られたコポリマー(2.784g、12.654mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.98mL、14.06mmol)を溶液に添加し、40時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を、−20℃で2時間貯蔵し、次いで再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に粘性固体になった)を得た。
【0105】
転化率=80〜85%
FT-IR: 686 (64); 751 (52); 790 (50); 837 (43); 1026 (42); 1190 (83); 1255 (60); 1367 (82); 1455 (87); 1548 (78); 1644 (66); 1705 (80); 2957 (82); 3291 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:14.64MPa0.5
(SEC)=1840Da M(SEC)=1290Da
【0106】
(d) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(b).1で得られた酸(2.53g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.758g、8.44mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.991g、8.44mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(c).1で得られたコポリマー(2.784g、12.654mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.98mL、14.06mmol)を溶液に添加し、40時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を、−20℃で2時間貯蔵し、次いで再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に粘性固体になる)を得た。
【0107】
転化率=80〜85%
FT-IR: 688 (65); 753 (53); 793 (51); 839 (42); 1030 (43); 1190 (84); 1256 (60); 1367 (82); 1452 (85); 1551 (78); 1643 (67); 1706 (83); 2930 (86); 2957 (83); 3291 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:14.61MPa0.5
(SEC)=1800Da M(SEC)=1170Da
【0108】
(e) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−メチル−2−((1−オキソ−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. 2−メチル−2−((1−オキソ−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパン酸の調製
100mLの丸底フラスコに、δ−ダマスコン(3.33g、17.33mmol)、2−メルカプト−2−メチルプロパン酸(3.13g、26.0mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.264mL、1.73mmol)及び50mLのDMSOを、磁気撹拌しながら添加した。この溶液を60℃に温め、12時間撹拌した。室温に冷却した後、この混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をCHCl(50mL)に溶解した。この溶液を、5%の水性HCl(2×20mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して70%の収率で油状物を得た。
【0109】
FT-IR: 645 (71); 688 (58); 717 (84); 761 (91); 799 (85); 819 (80); 843 (88); 900 (80); 931 (73); 1000 (69); 1053 (86); 1067 (85); 1082 (81); 1115 (74); 1130 (76); 1165 (64); 1192 (85); 1252 (80); 1287 (58); 1337 (80); 1366 (68); 1385 (80); 1405 (80); 1686 (48); 1706 (59); 2870 (79); 2956 (73); 3016 (85)
【0110】
2. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−メチル−2−((1−オキソ−1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(e).1で得られた酸(2.20g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.758g、8.44mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.991g、8.44mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(c).1で得られたコポリマー(2.784g、12.654mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.98mL、14.06mmol)を溶液に添加し、40時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を、−20℃で2時間貯蔵し、次いで再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に粘性固体になった)を得た。転化率=80〜85%
FT-IR: 688 (67); 753 (54); 793 (52); 840 (43); 1030 (43); 1188 (84); 1256 (61); 1366 (83); 1456 (87); 1520 (80); 1645 (72); 1707 (86); 2929 (86); 2957 (83); 3325 (95)
ハンセン溶解度パラメーター:14.59MPa0.5
(SEC)=1500Da M(SEC)=1060Da
【0111】
(f) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン
1. ランダムα−トリメチルシリル−ω−トリメチルシロキサン−ポリ{(ジメチルシロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン}の調製
50mLの丸底フラスコ中で、3−アミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン(4.93g、25mmol)、ジエトキシジメチルシラン(0.764g、5mmol)、エトキシトリメチルシラン(1.83g、15mmol)及び水(1.35g、90mmol)を、NaOH(0.03g、0.75mmol)の存在下で溶解して無色の溶液を得た。この反応混合物を、室温で4時間撹拌した。二相混合物を得た。真空下で蒸発させることによりエタノール及び水を除去して、油状物を直接得た。
【0112】
FT-IR: 687 (67); 752 (32); 789 (32); 838 (39); 1011 (28); 1256 (57); 1410 (93); 2923 (86); 2957 (88)
ハンセン溶解度パラメーター:14.17MPa0.5
【0113】
2. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−3−エン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記1).(a).2で得られた酸(2.30g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.758g、8.44mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.991g、8.44mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(f).1で得られたコポリマー(2.288g、12.654mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.98mL、14.06mmol)を溶液に添加し、40時間撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を、−20℃で2時間貯蔵し、次いで再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に粘性固体になった)を得た。
【0114】
転化率=80〜85%
FT-IR: 688 (66); 754 (59); 795 (53); 841 (55); 1020 (48); 1190 (82); 1257 (63); 1367 (80); 1455 (87); 1544 (78); 1644 (66); 1705 (79); 2930 (86); 2957 (84); 3295 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:15.25MPa0.5
(SEC)=2500Da M(SEC)=1400Da
【0115】
2) ダマセノンを放出する本発明のコポリマーを調製するための一般プロトコル
(a) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. 2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)酢酸の調製
100mLの丸底フラスコに、ダマセノン(3.3g、17.33mmol)、チオグリコール酸(2.47g、26.0mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.264mL、1.73mmol)及び50mLのTHFを、磁気撹拌しながら添加した。この溶液を45℃に温め、一晩中撹拌した。室温に冷却した後、この混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をCHCl(50mL)に溶解した。この溶液を、5%の水性HCl(2×20mL)、純水(2×20mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して90%の収率で油状物を得た。
【0116】
FT-IR: 665 (76); 732 (68); 785 (83); 888 (80); 948 (81); 1019 (82); 1044 (85); 1123 (72); 1149 (66); 1172 (76); 1290 (69); 1346 (78); 1380 (79); 1398 (77); 1420 (82); 1686 (56); 1706 (58); 2921 (83); 2959 (82); 3036 (89)
【0117】
2. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシリル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記2).(a).1で得られた酸(2.21g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.615g、7.75mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.857g、7.30mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(c).1で得られたコポリマー(2.32g、10.545mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.5mL、10.55mmol)を溶液に添加し、一晩中撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を再び濾過の、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に固体になった)を得た。
【0118】
転化率75〜80%
FT-IR: 665 (63); 753 (55); 794 (52); 840 (46); 1026 (44); 1149 (83); 1255 (60); 1359 (82); 1398 (83); 1448 (83); 1550 (74); 1644 (61); 2928 (82); 3316 (93)
(SEC)=1880Da M(SEC)=1220Da
ハンセン溶解度パラメーター:14.88MPa0.5
【0119】
(b) ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシラン−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. 2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパン酸の調製
100mLの丸底フラスコに、ダマセノン(3.3g、17.33mmol)、2−メルカプトプロパン酸(2.85g、26.0mmol)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU、0.264mL、1.73mmol)及び50mLのTHFを、磁気撹拌しながら添加した。この溶液を45℃に温め、一晩中撹拌した。室温に冷却した後、この混合物を濃縮して油状物を得た。この油状物をCHCl(50mL)に溶解した。この溶液を、5%の水性HCl(2×20mL)、純水(2×20mL)及びブライン(40mL)で順次に洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して85%の収率で油状物を得た。
【0120】
FT-IR: 671 (77); 732 (72); 855 (83); 947 (81); 1017 (86); 1063 (82); 1123 (85); 1150 (70); 1172 (75); 1238 (77); 1285 (74); 1344 (80); 1378 (80); 1398 (80); 1453 (77); 1689 (56); 2870 (85); 2928 (83); 2960 (82); 3036 (90)
【0121】
2. ランダムα−トリメチルシロキサン−ω−トリメチルシラン−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)プロパンアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコ中で、実施例における上記2).(b).1で得られた酸(2.45g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.615g、7.75mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.857g、7.30mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(c).1で得られたコポリマー(2.32g、10.545mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.5mL、10.55mmol)を溶液に添加し、一晩中撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に固体になった)を得た。
【0122】
転化率=75〜80%
FT-IR: 663 (64); 753 (53); 793 (50); 839 (44); 1027 (42); 1149 (84); 1255 (59); 1345 (83); 1448 (82); 1553 (74); 1643 (64); 2928. (84); 2957 (84); 3306 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:14.85MPa0.5
【0123】
(c) ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−ジメチルシロキサン}
1. ランダムα−エトキシ−ω−エチル−ポリ{(メチル(3−(2−((4−オキソ−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1,3−ジエン−1−イル)ブタン−2−イル)チオ)アセトアミド)プロピル)シロキサン−co−(3−アミノプロピル)メチルシロキサン−co−ジメチルシロキサン}の調製
100mLの丸底フラスコに、実施例における上記2).(a).1で得られた酸(2.21g、7.03mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、1.758g、8.44mmol)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.991g、8.44mmol)を、磁気撹拌しながら40mLの乾燥CHClに溶解した。この混合物を室温で6時間撹拌した。次いで、実施例における上記1).(a).1で得られたコポリマー(1.875g、12.654mmolの−NHを含有する)及び10mLのCHCl中のトリエチルアミン(1.98mL、14.06mmol)を溶液に添加し、一晩中撹拌した。得られた溶液を濾過し、回転蒸発器を使用して濃縮し、油状物を得て、次いで酢酸エチル80mLを加え、この溶液を再び濾過し、50mLの0.01モル%の水性HClで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、次いで濾過した。溶媒を真空下で除去して油状物(すべての溶媒の除去後に固体になった)を得た。
【0124】
転化率=75〜80%
FT-IR: 665 (74); 735 (69); 797 (58); 892 (84); 1013 (55); 1045 (53); 1150 (81); 1190 (79); 1240 (69); 1258 (66); 1359 (82); 1372 (81); 1398 (84); 1446 (84); 1538 (79); 1645 (63); 1738 (74); 2118 (95); 2928 (84); 2958 (87); 3305 (94)
ハンセン溶解度パラメーター:16.61MPa0.5
【0125】
実施例2
消費者製品(ファイン香料)に組み込まれた本発明のコポリマーからの賦香性成分の放出の評価
本発明のポリマー(実施例1の1).(b).2で得られたもの)(164.2mg)を、(加熱により)エタノール(9mL)に溶解し、次いで水(1mL)を添加した。サンプル(0.035mL、9.1×10−4mmolの放出されるべきδ−ダマスコンの最大量に相当)を、ガラスプレート上にピペットで移し、ヘッドスペースサンプリングセル(約625mL)内に設置し、約200mL/minの一定の空気流に曝した。空気を活性炭に通して濾過し、(約75%の空気の一定の湿分を保証するために)NaClの飽和溶液に通して吸引した。135分間、ヘッドスペース系を平衡状態のままにし、次いで、揮発性成分を、清浄なTenax(登録商標)カートリッジに15分間、吸着させた。揮発性成分を有するこのカートリッジを、HP−1キャピラリーカラム(30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)及び火炎イオン化検出器(FID)を備えたAgilent Technologies 7890A GCシステムに連結されたPerkin Elmer TurboMatrix ATD脱着装置により熱脱着した。揮発性成分を、15℃/分で60℃〜200℃の温度勾配を用いて分析した。異なる濃度の遊離されるべきδ−ダマスコンを用いた外部標準較正によってヘッドスペース濃度(ng/L 空気)を得た。参照サンプルとして、等モル量の非修飾δ−ダマスコン(50.4mg、参照品)及び先行技術の3−(ドデシルチオ)−1−(2,6,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−ブタノン(国際公開03/049666(WO 03/049666)に実施例4aとして記載)(102.7mg)を調製し、同じように分析した。すべての測定を少なくとも2回実施した。
【0126】
【表1】
【0127】
本発明のポリマーは、適用において許容可能な期間内でδ−ダマスコンを放出した。そのうえ、該ポリマーは、先行技術の化合物(国際公開03/049666)又は非修飾ダマスコン参照品よりも高い濃度のδ−ダマスコンをヘッドスペース内に送達した。
【0128】
実施例3
消費者製品(ファイン香料)に組み込まれた本発明のコポリマーからの賦香性成分の放出の評価
以下の組成物を、本実施例における下記表に従って調製した。参照のために選択したダマセノンの量は、1%の本発明のコポリマー(実施例1の2).(a).2及び2).(c))で得られたもの)に含まれるダマセノンの量に相当していた。参照溶液(オードトワレ、EdT)中の残りを、同じ量の水及びエタノールを保持するために溶媒(トリエチルシトレート))で満たした。トリエチルシトレートは、蒸発及び香り強度に影響を与えないと考えられ、中性的であると考えられた。
【0129】
【表2】
【0130】
次いで、組成物A及び組成物Bを、選別され、かつ訓練された8人の評価者のパネルによって、参照品に対してシークエンシャルモディック方式でのブラインドテストにより評価した。評価者には、各一組のサンプル、すなわち、本発明による組成物と参照品とのサンプルから、1〜7の段階評価で、知覚される香り強度を評価するように求めた。1〜7の段階評価で、0は、香りを検出できないことを表し、7は、非常に強い香りであることを表していた。
【0131】
サンプルを、ガラススライドに距離ゼロで塗布した後に評価した。その際、ガラススライドは、32℃の一定温度で、異なる時点:ゼロ時、2時間、4時間、6時間でホットプレート上に設置した。このようにして行われたブラインドテストの結果は、合意に基づくものである。傾向(tendency)が強ければ強いほど、より多くの評価者が合意していた。
【0132】
組成物が参照品よりも強い強度を有するという指向性傾向(directional tendency)を得るためには、評点X=評点(A又はB)−評点(参照品)の差は、≧0.5でなければならない。
【0133】
組成物が参照品よりも強い強度を有するという強い傾向を得るためには、評点X=評点(A又はB)−評点(参照品)の差は、≧0.6でなければならない。
【0134】
このようにして得られた結果を、本実施例における下記第2表に報告する。
【0135】
【表3】
【0136】
この実験は、組成物Bが2時間及び4時間後の蒸発時に参照品よりも強度が強いように指向性傾向を有していることを示した。組成物Aは、6時間後の蒸発時に参照品よりも強度が強いように指向性傾向を有していた。したがって、本発明のコポリマーは、参照品よりも嗅覚的に強く知覚されるように、2時間、4時間及び6時間後に十分なダマセノンを放出した。
【0137】
実施例4
消費者製品(ファイン香料)に組み込まれた本発明のコポリマーからの賦香性成分の放出の評価
以下の組成物を、本実施例における下記表に従って調製した。参照のために選択したδ−ダマスコンの量は、1%の本発明のコポリマー(実施例1の1).(c).2及び1).(d).1で得られたもの)に含まれるδ−ダマスコンの量に相当していた。参照溶液(オードトワレ)の残りを、同じ量の水及びエタノールを保持するために溶媒(トリエチルシトレート)で満たした。
【0138】
【表4】
【0139】
官能評価を、実施例3に記載したとおりに行った。
【0140】
【表5】
【0141】
この実験は、組成物Dが4時間後の蒸発時に参照品よりも強度が強いと判明したことから指向性傾向を有していることを示した。組成物Eは、6時間後の蒸発時に参照品よりも強度が強いと判明したことから指向性傾向を有していた。したがって、本発明のコポリマーは、参照品よりも嗅覚的に強く知覚されるように、4時間及び6時間後に十分なδ−ダマスコンを放出した。
【0142】
実施例5
消費者製品(ファイン香料)に組み込まれた本発明のコポリマーからの賦香性成分の放出の評価
以下の組成物を、本実施例における下記表に従って調製した。参照のために選択したδ−ダマスコンの量は、1%の本発明のコポリマー(実施例1の1).(f).2で得られたもの)に含まれるδ−ダマスコンの量に相当していた。参照溶液(オードトワレ、EdT)の残りを、同じ量の水及びエタノールを保持するために溶媒(トリエチルシトレート)で満たした。
【0143】
【表6】
【0144】
官能評価を、実施例3に記載したとおりに行った。
【0145】
【表7】
【0146】
この実験は、組成物Fが6時間後の蒸発時に参照品よりも強度が強いと判明したことから指向性傾向を有していることを示した。したがって、本発明のコポリマーは、参照品よりも嗅覚的に強く知覚されるように、6時間後に十分なδ−ダマスコンを放出した。