(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762937
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】切屑除去機械加工ツールの測定装置及び操作パラメータ選択方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/12 20060101AFI20200917BHJP
B23B 29/12 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
B23Q17/12
B23B29/12 Z
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-530126(P2017-530126)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公表番号】特表2018-502726(P2018-502726A)
(43)【公表日】2018年2月1日
(86)【国際出願番号】EP2015077738
(87)【国際公開番号】WO2016091601
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月1日
(31)【優先権主張番号】14196826.3
(32)【優先日】2014年12月8日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リリエレーン, アンデシュ
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0277609(US,A1)
【文献】
特開2000−158282(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0088456(US,A1)
【文献】
米国特許第08726740(US,B1)
【文献】
中国特許出願公開第105058166(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/12
B23B 29/12
B23Q 17/09
G05B 19/404
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切屑除去機械用の測定装置(1)であって、前端(10)及び後端(11)を有し、前記前端と前記後端の間に中心軸(x)が延び、
前記後端(11)には、切屑除去機械と係合するための係合部(2)が設けられ、
前記係合部(2)の遠位である前記前端(10)には、ツールチップを有さない測定部(5)が設けられ、
前記測定部(5)は前記中心軸(x)と直角な平坦な前端面(6)を有し、
前記平坦な前端面(6)には、機械的励起を受容するために中心軸(x)上に設けられた連結点(8)と、複数の台座(9、9’、9’’、9’’’)とが形成され、台座毎に機械的励起の応答を測定する加速度計が設けられ、前記機械的励起は、振動または1つ以上の衝撃を発生するアクチュエータによって実施され、
各台座には、加速度計のために3つの接触面が有り、加速度計がいずれかの台座に受容されていて前記3つの接触面に当接している場合には、当該加速度計は三次元の空間内において、連結点に対する3つの軸であるX軸、Y軸、Z軸のまわりに、正しく配置、配向されたことになる、測定装置。
【請求項2】
前記3つの接触面のうちの1つは、軸方向接触面であり、前記中心軸に対して直角に延在している、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記3つの接触面のうちの1つは、径方向接触面(15、15’、15’’、15’’’)である、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
各台座の前記径方向接触面は、前記連結点から同じ距離に配置されている、請求項3に記載の測定装置。
【請求項5】
前記連結点の周囲に4つの加速度計を受容し配置する4つの台座を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記台座は前記連結点の周囲に回転対称に配設されている、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記台座は前記前端面内の窪みとして形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
各台座は、直方体形状の加速度計を受容する直方体の窪みとして形成される、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
各台座は、隣接する台座と窪みによって接続されている、請求項7または8に記載の測定装置。
【請求項10】
前記係合部は、後端面(4)及び、前記後端面から後方に突出する、丸みを帯びた多角形の断面を持つ先細凸型連結部(3)を備え、前記後端面は前記凸型連結部から径方向外側にあり、接触面を形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記測定部は、前端で平坦な前端面と接続する円筒形エンベロープ面を有し、2つの平坦な励起面(12、13)であって、機械的励起の励起源がそれぞれに直角に連結される励起面が、互いに及び前記前端面に対して直角に円筒形エンベロープ面内に形成され、前記励起面の垂直軸は前記中心軸と交差する、請求項1から10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
各台座(9、9’、9’’、9’’’)に1つ受容された加速度計(14、14’、14’’、14’’’)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
前記加速度計は、底面及び前面を持つ直方体の形状を有し、各台座は前記前端面内の窪みとして形成されており、各台座の3つの前記接触面のうちの1つは、前記中心軸に対して直角に延在している軸方向接触面であり、前記台座の3つの前記接触面のうちの別の1つは、前記中心軸に向かう方向への支持を提供する径方向面であり、前記底面は前記台座の前記軸方向接触面と接触しており、前記前面の少なくとも一部は、前記台座の前記径方向面と接触している、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
各台座は、前記加速度計の径方向外側に、第2の径方向面を有し、前記加速度計と前記第2の径方向面との間に間隙(17、17’、17’’、17’’’)が形成される、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記加速度計は高さを有し、各窪みは、前記加速度計の前記高さよりもずっと少ない深さを有し、それによって、前記加速度計の大部分は、前記前端面から延在する、請求項13または14に記載の測定装置。
【請求項16】
前記加速度計は接着剤によって前記台座に取り付けられている、請求項12から15のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項17】
切屑除去機械内の切屑除去機械加工ツールの周波数応答関数を取得する方法であって、
第1の部分構造が、ツールチップのないツールが装着された切屑除去機械からなり、第2の部分構造が、前記ツールのツールチップからなる、2つの部分構造を規定することと、
前記切屑除去機械においてツールチップのない前記ツールに相当する、請求項1から16のいずれか一項に記載の測定装置(1)を装着することと、
各台座(9、9’、9’’、9’’’)内に1つの加速度計(14、14’、14’’、14’’’)を装着することと、
機械的エネルギーで前記測定装置を励起することと、
前記加速度計によって前記励起の応答を測定し、測定された前記励起の応答から、前記切屑除去機械内に装着された前記測定装置の周波数応答関数を計算することと、
前記第1の部分構造の前記周波数応答関数を、前記切屑除去機械内に装着された前記測定装置の前記周波数応答関数と関連付けることと、
前記第2の部分構造の前記周波数応答関数を計算することと、前記第1の部分構造と前記第2の部分構造を含む組み立てシステムの周波数応答関数を取得するため、前記第1の部分構造と前記第2の部分構造の前記周波数応答関数を連結することを含む、方法。
【請求項18】
機械的エネルギーで前記測定装置を励起することは、機械的エネルギーで、前記測定装置を直交する3つの方向に逐次的に励起することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
切屑除去機械内の切屑除去機械加工ツールの安定図表を取得する方法であって、請求項17または請求項18に記載の方法によって、前記切屑除去機械内の前記ツールの周波数応答関数の組合せを取得することと、前記周波数応答関数の前記組合せに基づく、組合せ構造に関する前記安定図表を計算することを含む、方法。
【請求項20】
切屑除去機械内の切屑除去機械加工ツールの操作パラメータを選択する方法であって、請求項19に記載の方法によって、切屑除去機械内の切屑除去機械加工ツールの安定図表を取得することと、前記安定図表に示される安定領域内の操作パラメータを選択することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切屑形成切削機械用の測定装置、並びに、周波数応答関数の取得方法、安定図表の取得方法、及び切屑除去機械加工ツールの操作パラメータの選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業における激しい競争は、コスト削減のための効率的な切削作業のたゆまざる探究につながってきた。生産性の向上には、機械加工の高速化とサイクルタイムの短縮が要求される。これらの必要を満たすためには、切削速度、送り速度、切り込み量といった処理パラメータを、次なるレベルに進めることが望ましい。処理パラメータが変更された結果、これに続いて切削領域における切削抵抗と温度の上昇が起きる。処理温度と切削抵抗の上昇は、ツールの損耗を加速し、ワークピースの変形に寄与し得る。切削抵抗が増大することによって、また、機械加工処理が、再生する振動をより受けやすくなる。この現象は、びびりとして知られる。
【0003】
びびり振動は、機械加工されたワークピース表面の品質を損ない、切削ツールを破損し得、極端な場合には、機械加工ツールの損傷につながり得る。びびり振動は、全ての金属切削処理において生じ得、金属機械加工において最もよく見られる生産性阻害要因のうちの1つである。びびりの一因は、切削中の切屑厚さの変動に起因する、動的外力のフィードバックである。切屑厚さの変動は、2つの連続する切削間に機械加工された表面に残された、振動マークの位相ずれに起因し得る。したがって、この位相ずれは、機械加工ツール/切削ツールアセンブリの動力学に依存し得る。スピンドル速度nと切削歯数zが、切削間の時間を統御する。スピンドル速度はオペレータによって選択される処理パラメータなので、このパラメータを、前回の切削による振動マークが、最新の切削と同一位相になるようにして選ぶことができる。切削間の振動マーク同士が同一位相にある場合、力のフィードバックは少なくとも大幅に低減し、その結果、再生する振動もまた同様である。
【0004】
切削ツールの動的挙動が予測可能であるためには、安定限界線図が描かれてよい。こうした図の一例を、
図6に示す。この図は、以下のように読むべきである。スピンドル速度(回転速度、n)と切込量(d)との組み合わせが線よりも下にある場合、その切削処理は安定しているはずである。他方、この切削パラメータの組み合わせが線よりも上にある場合、その処理は不安定であり得る。
【0005】
切削処理の安定性境界を予測するために選択される方法に関わらず、機械加工ツールに装着された切削ツールのツールチップの周波数応答関数(FRF)を知ることが有利である。多数の機械加工ツール/切削ツールの組合せの物理的試験によってツールチップのFRFを取得するのが、最先端技術である。この手法の否定的側面は、種々の切削ツールに対する幾何学的特性の変異に伴って動的特性が変化するため、関心がある全ての切削ツールに関してFRFを取得することが必要になるだけでなく、測定中、機械加工ツールが停止状態であることもまた必要なことである。この結果、貴重な生産時間が失われる。
【0006】
他方で、完備された機械加工ツール構造、即ち機械加工ツールと、装着された切削ツールとを組み合わせたシステムのモデリングは、困難であるだろう。なぜならば、完備されたシステムが機械的に複雑だからである。こうして、完備された機械ツールシステムの動的挙動の予測を簡素化することが、問題となっている。
【発明の概要】
【0007】
したがって、機械に装着された切削ツールの部分構造の動的応答の測定を提供することが、本発明の目的である。さらに、費用効率の良い方法で、切削機械内の広範にわたる切削ツールの動的挙動を安定図という形態で予測するために、様々なツールチップのモデルと組み合わせて測定するのに用いられ得る、測定装置を提供することが目的である。また、正確且つ再現可能な、ツールの部分構造の動的応答の測定を提供することも、目的である。
【0008】
このように、本発明は切屑除去機械用の測定装置に関し、この装置は前端及び後端を有する。前端と後端の間に、中心軸が延在する。装置は、機械と係合するための係合部を後端に備え、ツールチップを有しない測定部を、係合部に対して遠位である前端に備える。測定部は、中心軸に
直角な、平坦な前端面を備える。前端面は、機械的励起を受けるための連結点を備える。連結点は、中心軸と一直線上にある。前端面はさらに、受けた機械的励起への応答を測定する加速度計をそれぞれ1つ受容するための、複数の台座を備える。各台座は、加速度計用の3つの接触面を備える。
加速度計が台座のうちの1つに受容され3つの接触面と当接している
場合、この加速度計
は三次元
の空間内において、連結点に対する3つ
の軸であるX軸、Y軸、Z軸のまわりに、
正しく配置
、配向され
たことになる
【0009】
概して、切屑除去機械に装着される切削ツールは、後部連結部と、中間部と、ツールチップの形状であって中間部から延びている前部とを有する、本体を備える。ツールチップは、ツールの切削作業に関与する部分であって、切れ刃、切屑用溝、切削インサート、インサート台座、及びインサート保持/固定部品を含み得る。通常、様々な機械用切削ツールの中で、切削ツール同士で互いに異なっているのは、ツールチップの設計のみである。本発明による測定装置の基部本体は、切削ツールの後部連結部及び中間部からなるユニットに相当すると見なされ得る。言い換えれば、ツールチップのない切削ツールか、または様々な機械における切削ツールの共通部分に相当する。例として、
図5(a)は、回転フライス加工ツールの形態の切削ツールを示し、
図5(b)は、ツールチップ(II)及び、機械(I)に装着された測定装置を示す。
【0010】
測定装置の構造は、ツールの部分構造、即ち測定装置が連結されている機械からなる部分構造の、動的応答の正確且つ再現可能な測定を可能にする。これは、加速度計の配置及び配向が、互いに対して、また連結点に対して、明確に規定されていることによる。これに加えて、加速度計が、互いに対して、また機械的励起が促進される方向に対して、装着及び整列されていることによる。ツールの部分構造の動的応答の測定値は、モデリングされた様々なツールチップのデータと共に、切削機械内の、広範にわたる切削ツールの振動性能を予測するために用いられ得る。これらの計算では、測定装置が連結されている機械は第1の部分構造と見なされ得、各ツールチップは第2の部分構造と見なされ得る。
【0011】
本発明の装置の平坦な前端面は、部分構造間の周波数応答関数の連結を促進する。連結点とは、切削ツールが装着されている機械に相当する組合せ構造の周波数応答関数を計算する際に、ツールチップとして規定される部分構造が、測定装置として規定される部分構造と切削機械とに併せて連結され得る点である。
【0012】
3つの接触面のおかげで、各加速度計の配置及び配向は、明確に規定されている。したがって、互いに対する、また連結点に対する、加速度計の配置及び配向は、既知である。
【0013】
3つの接触面のうちの1つは、軸方向接触面であり、中心軸に
対して直角に延在している。したがって、軸方向支持面は、加速度計の軸方向の配置を
規定し得る。加速度計が窪み内に設置され軸方向支持面に当接している
場合、加速度計は、中心軸方向に対して、且つ連結点における励起方向に対しても、正しく支持される
こととなる。中心軸は、デカルト座標系におけるX軸を規定する。この座標系におけるY軸及びZ軸は、前端面の平面内に規定される。
【0014】
3つの接触面のうちの1つは、径方向接触面であってよく、したがって、周縁から中心軸に向かう方向に、支持を提供していてよい。各台座の径方向接触面は、連結点に対して同じ距離に配置されていてよい。したがって、簡素化のため、並びに動的応答の測定及び計算の向上のため、加速度計は、連結点の周囲に分布していてよく、連結点から同じ径方向距離で配置されていてよい。したがって、加速度計はまた、連結点またはその付近における装置の機械的励起を可能にしつつ、連結点に可能な限り近接して置かれていてもよい。
【0015】
3つの接触面のうちの1つは、接線方向接触面であってよい。したがって、加速度計には、連結点の周囲の各加速度計位置を規定する、接線方向位置の定義が与えられてよい。接線方向は、径方向に対して垂直である、即ち中心軸の周りの円周方向であるとして規定される。径方向接触面は、正か負のY方向、もしくは正か負のZ方向に法線ベクトルで配置されていてよいか、またはYもしくはZ方向に、例えば30、45、60°で角度を付けて配設されていてよい。
【0016】
測定装置は、連結点の周囲に4つの加速度計を受容し配置する、4つの台座を有し得る。こうして、加速度計は、連結点における並進運動と回転運動が測定可能なように、連結点の両側にペアで配設され、直交する2方向に、2つずつ整列されてよい。台座は、加速度計が共配向され、ペアごとに共直線性を有するようにして、配設されてよい。したがって、励起は、加速度計の1つのペアの整列軸に沿って、且つ加速度計のもう1つのペアの整列軸に直交して、生成され得る。これによって、受動性の基準(T. McKelvey and S. O. R. Moheimani, “Estimation of phase constrained mimo transfer functions with application to flexible structures with mixed collocated and non−collocated actuators and sensors”, World Congress, Vol. 16, p. 36, 2005)を侵害するリスクは低減される。
【0017】
代替形態として、測定装置は、連結点の周囲に3つの加速度計を受容し配置する、3つの台座を有し得る。さらなる代替形態として、測定装置は、連結点の周囲に2つの加速度計を受容し配置する、2つの台座を有し得る。好ましくは、2つの台座は、連結点の両側に配置される。
【0018】
台座は、連結点を中心に回転対称に配置されていてよい。こうして、周波数応答関数の計算が容易になる。台座が連結点の可能な限り近くに位置し得るため、回転対称は有利である。回転対称は、台座の数に応じて、例えば2回対称、3回対称、または4回対称であってよい。2回対称の回転対称の場合、2つの台座は互いに180°のところに位置しており、3回対称の場合、3つの台座は互いに120°のところに位置している。4回対称の回転対称の場合、4つの台座は、互いに90°のところに位置している。4回対称の場合、台座に受容された加速度計は、ペアごとに連結点の両側に、2つの直角方向に配置されており、連結点における並進運動と共に回転運動も測定が可能である。
【0019】
台座は、前端面内の窪みとして形成されていてよい。したがって、台座内に受容された加速度計は、少なくとも部分的に、測定部の前端面内に埋設されていてよい。加速器によって増加する質量は、窪みから除去された材料によって少なくとも部分的に相殺されてよい。それによって、本測定装置の、ツールチップなしの実際のツールに対する類似性は増大し、その結果、動的応答の測定は向上する。また、加速度計は、測定の正確性向上のため、加速度計の実際の測定面が、前端面の平面の近くにもたらされ得るように配置されていてよい。台座はまた、前端面内に単純な態様で形成されていてもよい。代替方法では、台座は、3つの接触面を形成する、前端面からの突起によって形成されてよい。各支持面は、加速度計の形状に対応して設置され配置される。
【0020】
各台座は、直方体の形状の加速度計を受容するため、ほぼ直方体の窪みとして形成されていてよい。こうして、加速度計の装着は簡素化され得、測定部内の材料の除去は、測定上のあらゆる影響を低減するため最小化され得る。楕円形または多角形といった断面をした、他の形状の窪みもまた想定可能である。窪みは、加速度計の形状に対応した形状を有する。典型的には、直方体の窪みの長方形の断面は、前端面の平面の辺の長さが10〜15mmの範囲、好ましくは約12mmであってよく、窪みの深さは、約0.5〜3mmであってよい。
【0021】
各台座は、単一の共通の窪みの一部であってよく、即ち言い換えれば、各台座は隣接する台座に窪みによって接続されていてよく、それによって、機械加工が単純になり、窪みを機械加工することで角が凹形になることなく、真っ直ぐな径方向接触面が設けられ、加速度計の配置の正確性が向上し得る。
【0022】
4つの加速度計用の4つの窪みを有する実施形態では、こうした単一で共通の窪みは、正方形の材料が中心軸部に残された、十字の形状を有していてよい。連結点は、この正方形の中心に配設され得る。これらの実施形態では、正方形の径方向外側を向いた面によって、各台座の径方向支持面が形成される。
【0023】
測定装置は、回転軸を有する機械の回転スピンドルと係合するように構成されていてよく、装置がスピンドルと係合しているときは、装置の中心軸は、回転軸と一致していてよい。したがって、前端面は、回転軸に対して垂直であってよく、切削ツールの動的特性のモデリング中に、第1の部分構造と第2の部分構造との間に、自然のインターフェースが形成されてよい。
【0024】
係合部は、後端面と、丸みを帯びた多角形の断面を持つ先細凸型連結部を含み得、この凸型連結部は、後端面から後方に突出し、後端面は凸型連結部から径方向外側にあり、接触面を形成している。こうして、測定装置の機械への装着は簡素化され得、例えばSandvik Capto(登録商標)カップリングを用いたものになり得る。こうして、機械内の測定装置は、機械内に装着された切削装置とほとんど同じになり得るが、ツールチップは有していない。HSKやISO7/24テーパの標準継手といった、他のカップリングもまた、代わりに用いられ得る。
【0025】
測定部は、前端において平坦な前端面と接続している円筒形エンベロープ面を有し得、各励起面に垂直である機械的励起の励起源を連結する2つの平坦な励起面が、このエンベロープ面内に形成される。2つの平坦な励起面は、互いに、且つ前端面に対して垂直であり、その垂直軸は、中心軸と交差する。したがって、連結点と共に、この2つの励起面によって、互いに直交し、中心軸に対して向けられているかまたは中心軸に対して整列されている3つの方向に対して、励起が印加され得ることが確保される。2つの励起面は、それぞれY方向とZ方向に沿った機械的励起を受容するため、それぞれY方向とZ方向に法線ベクトルが来るように配設されてよい。
【0026】
測定装置を簡便に装着/装着解除するため、ツール交換用の把持溝が、エンベロープ面内に形成されてよい。
【0027】
測定装置は、各台座に受容された1つの加速度計を備え得る。加速度計は、互いに直交する3つの軸内の加速を測定可能な、3軸加速度計であってよい。代わりに、3軸加速度計のうちの1つ以上が、例えば複数の1軸または2軸加速度計によって代替されてもよい。
【0028】
加速度計は、底面及び前面を持つ直方体の形状を有し得、各台座は前端面内の窪みとして形成されており、各台座の3つの接触面のうちの1つは、中心軸に対して垂直に延在する軸方向接触面であり、台座の3つの接触面のうちの別の1つは、中心軸に向かう方向への支持を提供する径方向接触面であり、底面は台座の軸方向接触面と接触しており、前面の少なくとも一部は、台座の径方向接触面と接触している。加速度計の配向が、断面が楕円形または多角形であるようにして決定され得る限り、他の形状の加速度計もまた想定可能である。このとき、台座の支持面は、別の形状を持つ加速度計に対応する形状及び配置を有する。
【0029】
各台座は、加速度計の径方向外向きに、第2の径方向面を備え得る。加速度計と第2の径方向面との間には、間隙が形成される。こうして加速度計の装着は簡略化され得、加速度計の配置は、台座に加速度計を挿入し、中心軸に向かう方向に支持を提供する径方向面に向けて加速度計を押すことによって、なされ得る。代わりに、台座は径方向外側に向かって開放されていてよい。
【0030】
加速度計は高さを有し、各窪みは、加速度計の高さよりもずっと少ない深さを有し得る。それによって、加速度計の大部分は、前端面から延在する。加速度計の装着は精密であってよく、同時に、測定用ケーブルの接続の余地があるように、加速度計は前面から十分に延在していてよい。代わりに、加速度計は、前端面内に埋設されていてよく、ケーブルは前端面に垂直に接続されてもよい。
【0031】
加速度計は、接着剤によって台座に取り付けられていてよい。代わりに、加速度計は、例えばネジもしくは圧入といった機械的締結、または磁石によって締結されていてもよい。
【0032】
本発明はさらに、機械内の切屑除去機械加工ツールの周波数応答関数を取得する方法であって、
2つの部分構造を規定することであって、第1の部分構造は、ツールチップのないツールが装着された機械からなり、第2の部分構造は、ツールのツールチップからなる、規定することと、
本書で開示し、機械内のツールチップのないツールに相当する測定装置を装着することと、
各台座内に1つの加速度計を装着することと、
機械的エネルギーで測定装置を励起することと、
加速度計によって励起の応答を測定し、測定された励起の応答から、機械内に装着された測定装置の周波数応答関数を計算することと、
第1の部分構造の周波数応答関数を、機械内に装着された測定装置の周波数応答関数と関連付けることと、
第2の部分構造の周波数応答関数を計算(または測定)することと、
第1の部分構造と第2の部分構造を含む組み立てシステムの周波数応答関数を取得するため、第1の部分構造と第2の部分構造の、周波数応答関数を連結すること
を含む方法に関する。
【0033】
それによって、機械内に装着された多数の切削ツールの周波数応答関数は、各機械用の各切削ツールを測定する必要なく、効率的な方法で取得され得る。周波数応答関数は、機械に装着されたときの測定装置の応答を測定すること、したがって、第1の部分構造と第2の部分構造とのインターフェースを規定する前端面までの機械及びツールの周波数応答関数を取得することによって、取得され得る。第2の部分構造、即ち多数の切削ツールの様々なツールチップの周波数応答関数は、例えば、有限要素法(FEM)と、機械内に装着された各タイプの切削ツールの周波数応答関数を取得するために組み合わされた周波数応答関数とによって計算され得る。
【0034】
機械的エネルギーで測定装置を励起させることは、互いに直交する3つの方向に、逐次的に機械的エネルギーで装置を励起することを含み得る。したがって、こうした各直交方向への機械的励起は、周波数応答関数の測定における入力として用いられ得る。
【0035】
代わりに、機械的エネルギーで測定装置を励起させることは、互いに直交する3つの方向に、同時に機械的エネルギーで装置を励起することを含み得る。これの利点は、システムが、逐次的な励起ステップの途中で変更されないことである。
【0036】
励起は、振動を提供するアクチュエータ(振とうアクチュエータ)または、例えばインパルスハンマーといった1つ以上の衝撃によって実施され得る。
【0037】
装置の励起の方向は、好ましくは軸方向及び、それぞれ一対の加速度計の配列方向に整列された、前端面の平面内の2つの方向である。それによって、動的システムの受動性の基準を侵害するリスクは低減する。
【0038】
本方法は、機械内のツールの周波数応答関数の組合せを取得することと、周波数応答関数の組合せに基づく、組合せ構造に関する安定図表を計算することを含む、機械内の切屑除去機械加工ツールの安定図表を取得することを含み得る。こうして、機械内の多数の切削ツールに関する安定基準が取得され得、この安定基準は、安定した機械加工用の操作パラメータを判定するのに用いられ得る。
【0039】
本方法は、機械内の切屑除去機械加工ツールの安定図表を取得することと、安定図表の範囲内にある操作パラメータを選択することを含む、機械内の切屑除去機械加工ツールの、安定した操作パラメータを選択することを含み得る。
【0040】
以下では、付随する図面を参照して、本発明の様々な実施形態が詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】第1の実施形態による測定装置を、(a)〜(d)の各方向で示す。
【
図2】並進応答及び回転応答の測定、並びに基準座標系を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1(a)は切屑除去機械用の測定装置1の前方からの斜視図を示し、
図1(b)はこの装置の後方からの対応する図を示し、
図1(c)はこの装置の側面図を示す。装置は、前端10と後端11がある本体を有し、これらの両端の間に中心軸xが延在する。装置は、機械の回転スピンドルと係合するための係合部2を後端に備える。機械に装着されているときは、回転軸は中心軸xに相当する。
【0043】
測定装置は、係合部から遠位の、装置の前端に、平坦な前端面6を有する測定部5を備える。前端面は、x軸と垂直である。測定部は概して円筒形であり、前端で平坦な前端面に接続している円筒形のエンベロープ面を有する。エンベロープ面には、装置を装着解除して交換するための把持溝7が設けられている。
【0044】
平坦な前端面の中央、回転軸のところに、連結点8が規定されている。連結点には、測定装置をx軸に沿って機械的に励起するための機械的励起装置(振とうアクチュエータ)を取り付けるネジ穴が存在する。
【0045】
連結点8の周囲には、それぞれ1つの加速度計を受容するための、4つの台座9、9’、9’’、9’’’が前端面6内に形成されている。台座は、連結点を中心に回転対称に配設され、90°で隔てられている。各台座は、前端面内に窪みを機械加工することによって形成されており、1つの加速度計に対して3つの接触面を備えている。加速度計は、台座を形成する窪み内に受容され得る、直方体の形状を有する。加速度計が台座のうちの1つに受容され、3つの接触面と当接している
場合、この加速度計は
三次元
の空間内において、連結点に対する3つ
の軸であるX軸、Y軸、Z軸の
まわりに、
正しく配置
、配向され
たこととなる。3つの接触面のうちの1つは、平坦であり前端面と平行である、窪みの底部接触面であり、したがって、中心軸の方向と
直角に配向されている。台座の3つの接触表面のうちの別の1つは、中心軸に向かう方向への支持を提供する、径方向面である。台座の径方向面は、連結点の周囲にほぼ正方形の支持構造体の表面を形成する。こうした径方向支持面のそれぞれから、連結点までの距離は、同じである。図面に示すように、各台座は隣接する台座に窪みによって接続されており、それによって、機械加工が単純になり、窪みを機械加工することで角が凹形になることなく、真っ直ぐな径方向接触面が設けられ、加速度計の配置の正確性が向上し得る。第3の接触表面は、軸方向及び径方向に
直角な方向に加速度計の側方支持を提供する、横方向(即ち側部)接触面である。
【0046】
機械的励起の励起源を各励起面に垂直に連結するため、測定部のエンベロープ面上に2つの平坦な励起面12、13が形成されている。励起面12及び13は、互いに対して、且つ前端面6に対して、垂直である。これら励起面の各垂直軸は中心軸と交差するように指向されており、即ち、励起面は、中心軸に対して径方向面である。
【0047】
図1(b)を参照すると、装置の後端が示されている。係合部は、後端面4及び、後端面から後方に突出する、丸みを帯びた多角形の断面を持つ先細凸型連結部3を備える。後端面は、凸型連結部から径方向外側にあり、接触面を形成する。実施例で示される係合部は、Sandvik Coromant Capto(登録商標)システムに基づく。
【0048】
図1(d)は、回転軸(X)に沿った前端面の図を示す。装置中に、4つの加速度計が受容されている。4つのPCB Piezotronics 356A24 3軸加速度計14、14’、14’’、14’’’が、それぞれ台座9、9’、9’’、9’’’の1つ内に受容されている。各加速度計は、直方体の本体形状であり、正方形の形状の底面と、通常、この底面の一辺の長さよりもずっと小さい高さとを有する。加速度計は、それぞれの窪み内に受容されており、加速度計の前面は、各台座の内側径方向接触面15に向かって押されている。このように、連結点8の周囲で、各加速度計は、連結点までの距離が同じになるように配置されている。各台座はまた、加速度計に対して横方向、例えば接線方向、即ちy方向またはz方向の支持を提供する、側部接触面16も形成している。
このように1つの台座に受容された各加速度計は、
三次元
の空間内に、連結点に対する3つ
の軸であるX軸、Y軸、Z軸のまわりに、配置
、配向されている。
【0049】
各台座は、台座の幅よりも大きい、径方向の伸長(即ち台座の長さ)を有する。窪みの径方向外側端部に、第2の径方向面が形成される。第2の径方向面は、加速度計の径方向外側に配置されており、したがって、加速度計と第2の径方向面との間に、間隙17が形成される。これによって、各加速度計が、窪み内に受容され、台座の内側径方向接触面15に対して押されることが可能になる。
【0050】
窪みの深さは、加速度計の高さに対して小さい。それによって、加速度計は窪みの接触面で正しく配置され配向され得る。一方、加速度計の大部分が前端面から延在し、こうして測定信号を処理するための加速度計への接続ワイヤ用のスペースが提供される。
【0051】
加速度計は、接着剤の薄い層によって、台座を形成する窪み内に取り付けられる。代わりに、加速度計は、例えばネジまたは圧入といった機械的締結によって締結されていてもよい。
【0052】
ツールチップにおける動的応答を合成するために、リセプタンス連結技法が用いられる。リセプタンス連結技法の利点は、機械的システム(この場合は切削ツールを装着した機械加工ツール)を、サブシステムの組立品と見なし得ることである。この手法によって、当該の部分構造には何が最も適合するかに応じた、測定値とモデリングと分析との混合に基づいて、部分構造から周波数応答を得ることが可能になる。
【0053】
測定装置の操作中、装置の各台座に1つ、加速度計が装着されている。この装置は、使用されるべき機械、例えばフライス盤に装着されている。装置は、この後、振とうアクチュエータの形態の励起装置を接続することによって、機械的エネルギーで3つの直交方向に逐次的に励起される。こうして、振とうアクチュエータは、励起位置Fx、Fy及びFzの間で移動する(
図2b参照)。連結点における6個の自由度(DOF)を表す全ての周波数応答関数(FRF)を取得するためには、4種類の異なるFRF、即ち、並進力と回転モーメントとのそれぞれに対する並進応答と回転応答とを、個別に測定しなければならないであろう。連結点における応答は、以下に説明される計算に基づき、連結点の両側の、ペアをなす加速度計間の平均及び差分に基づき、この結果、並進励起に基づく並進応答及び回転応答が得られる。
【0054】
これを例証するため、加速度計の応答を平均することによってz方向の直接周波数応答H
zzが得られてよく(等式1及び
図2a参照)、加速度計A及びBのy方向の並進応答の差分(
図2a参照)によってx軸周りの回転応答H
Φxzが得られてよい(等式2参照)。
【0055】
この方法を採ることによって、また
図2bに従って簡略化のためこの時点から記数法を変更することによって、等式3のFRFマトリクスで要求される要素のうちの半数が測定され得る。
【0056】
マックスウェル・ベティの相反定理が導入され、FRFマトリクス中の不足している要素(等式3)を満たすため、状態空間モデル(4.2参照)として特定されたシステムに適用される。部分構造のシステムモデルを構築してこれらの部分構造を連結するため、状態空間コンポーネント合成と呼ばれる方法が使用され、展開される。この方法は、線形時不変系の、連続時間状態空間の説明に依存する。外力入力u及び変位出力yは、以下の式で書き表される。
ここでは、xは状態ベクトルであり、定係数行列{A,B,C,D}の、Aは状態マトリクス、Bは入力マトリクス、Cは出力マトリクス、Dはフィードスルーマトリクスである。
【0057】
実験的に得られたサブシステムIのFRF上で、自動モデル次数推定アルゴリズムを用いて、システム同定が実施される。このアルゴリズムは、MATLAB
(登録商標)に実装された状態空間部分空間システム同定アルゴリズムn4sidと組み合わせて、ブートストラップ評価及び統計的評価を用いる。これによってモデルの安定性が強制される結果、次の等式5のMIMO(マルチ入力、マルチ出力)の状態空間FRFとなる。
【0058】
この線形システムに関する相反定理は、参照用に
図2aを用いると、連結ノードにおいて方向1に励起されたシステムであって、同じ位置で方向2の応答が測定されたシステムは、同じ励起力が方向2に加えられた場合、方向1への応答と一致する、ということを述べている。したがって、次の数学的関係が成り立つ。
【0059】
FRFマトリクスを完成させるための第1のステップは、以下の変換(等式7)を用い、左の固有ベクトルV
left及び右の固有ベクトルV
rightを用いて、状態空間モデルをブロック対角の形にすることである。
【0060】
Bマトリクスに関連付けられた添字T、Mは、並進入力及びモーメント入力を意味し、B
Mは測定値から漏れている。一方、Cマトリクスに関連付けられたT及びΦは、並進出力及び回転出力を意味し、その全てが測定値によってカバーされる。等式5、6、及び7を組み合わせることによって、以下の等式8の相反関係が導かれる。
ここで、
及び、n番目のモードの寄与に基づいて、各モードへの相反関係は、以下のように表され得る。
これによって、以下が与えられる。
【0061】
B
Mの不足している入力エンティティを導くために、システムは、等式12で、原形に再変換される。
【0062】
またここで、等式12から、FRFマトリクスが以下のように完成され得る。
【0063】
上記の物理的制約に加えて、安定性及び相反性もまた、説明される。
【0064】
代替的な加速度計の構成として、
図3及び
図4は、それぞれ加速度計が2つまたは3つである実施例を示している。
図3に示す代替例では、2つの加速度計14及び14’が、ペアとなって連結点8の両側に配設されている。2つの加速度計は、それぞれ角度α及びβでy軸及びz軸に角度付けされており、α及びβは、好ましくは同じ、例えば45°である。角度α及びβ、並びに加速度計の位置L1、L2、L3、及びL4を知ることによって、x方向、y方向、z方向の励起応答が、したがって周波数応答関数が計算され得る。
図4は、連結点8の周囲に配設された3つの加速度計14、14’、14’’を有する、対応する代替的構成を示す。各加速度計の位置及び回転を知ることによって、x方向、y方向、z方向の励起応答が、したがって周波数応答関数が計算され得る。
【0065】
機械内の任意の切屑除去機械加工ツールの周波数応答関数を取得するための方法は、以下のとおりである。第1に、2つの部分構造が規定される。第1の部分構造は、ツールが装着されているが、ツールチップは付いていない、機械からなる。第2の部分構造は、ツールのツールチップのみからなるものとして規定される。
【0066】
ツールチップなしのツールに相当する測定装置が機械内に装着され、加速度計が台座内に受容され、上記されたように測定が実施される。測定結果から、機械内に装着された測定装置の周波数応答関数が計算される。
図5では、ツールチップを有する切削ツールの一例が(a)で示されている。
図5(b)では、切削ツールのツールチップを第2の部分構造IIとして示す、対応する部分構造が示されている。部分構造I、即ち機械内に装着されたツールチップのない切削ツールは、測定用の装備として示されており、一式の加速度計14を有する測定装置1が、機械内に装着されている。
【0067】
第2の部分構造、即ち切削ツールの特定のツールチップの周波数応答関数は、有限要素法(FEM)によって計算される。これ以降、第1の部分構造と第2の部分構造の各周波数応答関数は、第1の部分構造及び第2の部分構造を備え、したがって機械内に装着されたツールに相当する、組み立てられたシステムに関する周波数応答関数を取得するため、連結される。周波数応答関数の連結は、P. Sjovallの “Identification and synthesis of components for vibration transfer path analysis” (Ph.D. thesis, Chalmers University of Technology, Gothenburg, Sweden, 2007)に記載されている。
【0068】
組み合わされた構造の周波数応答関数を用いて、機械内に装着されたツールの安定図表が計算される。安定図表の一例を、
図6に示す。この図表では、回転速度(横軸)と、切削ツールの切り込み量(縦軸)と間の安定性が示されている。実線のプロット線よりも下では、機械加工動作は安定している、即ちびびり振動のリスクは低いとみなされる。実線よりも上では、実質的なびびり振動のリスクがあり、それは導入部に記載されたように、機械加工中の問題であり得る。こうして、安定図表から、(例えばOで示される)良好な切削性能を提供する操作パラメータが選択され得、したがって、びびり振動が生じ得る操作パラメータ(例えばXで示される)は回避され得る。こうして、安定図表によって示される安定領域内の操作パラメータが選択され得る。