特許第6762945号(P6762945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6762945-樹脂フィルムの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6762945
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/88 20190101AFI20200917BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20200917BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20200917BHJP
   B29C 48/69 20190101ALI20200917BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200917BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 37/10 20060101ALI20200917BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200917BHJP
   B29K 27/00 20060101ALN20200917BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20200917BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20200917BHJP
【FI】
   B29C48/88
   B29C48/08
   B29C48/305
   B29C48/69
   C08J5/18CEW
   C08J7/00 302
   B32B37/10
   B32B27/30 D
   B29K27:00
   B29L7:00
   B29L9:00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-536721(P2017-536721)
(86)(22)【出願日】2016年8月4日
(86)【国際出願番号】JP2016072941
(87)【国際公開番号】WO2017033701
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-166608(P2015-166608)
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】澤里 正
(72)【発明者】
【氏名】永岡 洪太
(72)【発明者】
【氏名】松本 睦
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/103845(WO,A1)
【文献】 特開2011−037172(JP,A)
【文献】 特開2010−023464(JP,A)
【文献】 特開2013−237730(JP,A)
【文献】 特開平05−222214(JP,A)
【文献】 特開2002−240144(JP,A)
【文献】 特開平06−263891(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/031930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
C08J 5/18
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程を有し、
前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、
前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、
前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、
前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度であり、
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体中のエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのモノマー比(Et/CTFE)が40/60〜60/40である、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記キャスティング処理が、前記第一冷却ロール及びタッチロールを用いて行われ、
前記第一冷却ロールの表面の一部が、前記タッチロールの表面の一部と接しており、
前記Tダイの吐出口先端部と、前記第一冷却ロール表面及びタッチロール表面が接する面における前記Tダイ側の端部との距離が400mm以下である、請求項1に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、240℃〜300℃である、請求項1または2に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が熱安定剤を含有し、前記樹脂組成物中の前記熱安定剤の含有量が、0.1質量%〜5質量%である、請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有し、前記樹脂組成物中の前記紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量%〜5質量%である、請求項1から4の何れか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を用いて作製された樹脂フィルムからなるリサイクル原料を、前記樹脂組成物中に1質量%〜40質量%含有する、請求項1から5の何れか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程と、
得られた樹脂フィルムの第一面を、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、希ガス元素ガスおよび炭化水素ガスから選択される一種以上の改質ガス中でコロナ処理またはプラズマ処理により表面改質する工程と、
前記表面改質した樹脂フィルムの第一面に、熱可塑性樹脂を含有する基材を、真空ラミネートにより積層する工程と、を有し、
前記樹脂フィルムを形成する工程において、前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、
前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、
前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度であり、
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体中のエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのモノマー比(Et/CTFE)が40/60〜60/40である、積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程と、
得られた樹脂フィルムの第一面を、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、希ガス元素ガスおよび炭化水素ガスから選択される一種以上の改質ガス中でコロナ処理またはプラズマ処理により表面改質する工程と、
前記表面改質した樹脂フィルムの第一面に、熱可塑性樹脂を含有する基材を、真空ラミネートにより積層する工程と、を有し、
前記樹脂フィルムを形成する工程において、前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、
前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、
前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度であり、
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体中のエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのモノマー比(Et/CTFE)が40/60〜60/40である、屋外防水フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を用いた樹脂フィルムの製造方法、及びこれにより得られた樹脂フィルムを、熱可塑性樹脂を含有する基材と積層してなる、積層フィルムの製造方法及び屋外防水フィルムの製造方法に関する。
【0002】
エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)は、耐候性、耐薬品性、耐汚染性、撥水性、絶縁性、低摩擦性、電気絶縁性の他、低吸湿性、水蒸気バリア性、低薬品透過性、難燃性、耐延焼性に優れることから、半導体製造機器の構造部品、各種耐蝕ライニング材等に使用されている。また、ECTFEは押出成形が可能であり、フィルム成形も可能であることから、表面保護フィルム、太陽電池用部材フィルム等の各種用途に使用されている。
【0003】
一般的に、透明性に優れるフィルムを得る為には、樹脂の温度を結晶化温度より高い状態から急冷し結晶化を抑制する成形プロセスが必要とされている。しかし、ECTFEは、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの組成比の調整によって、最大融点が242℃、結晶化温度が222℃になることが知られており、結晶化温度が融点に近い為、押出成形時に結晶化し易く、フィルムの透明性の発現が難しくなる。また、優れた透明性を得るためには、押出機で溶融、混練され、ダイス出口から押出される際の樹脂温度をなるべく高く設定することが好ましいとされている。しかし、樹脂温度を高温に設定し過ぎた場合、反対に、樹脂の劣化が進行し易くなり、茶色や黒色に変色することが知られている。
【0004】
一方、ECTFEを使用したフィルムには、欠点と呼ばれる、異物、フィッシュアイ、ゲル、コンタミ等の、フィルムの平均厚みに対し不連続な物理的凹凸、或いは色相ムラ等を極力含有しない品質要求が高まっている。そのため、欠点の発生を低減するさらなる取り組みが求められている。
【特許文献1】特開2013−237730号公報
【特許文献2】特表2013−500856号公報
【特許文献3】特開2011−176192号公報
【発明の概要】
【0005】
欠点の発生原因としては、ECTFEの分解又は劣化による着色、ゲル化、炭化、ECTFE以外の成分の混入等が主なものとして挙げられる。これらの欠点の発生を低減するための取り組みとして、押出機のスクリュー先端部よりもプロセス下流に配置されるスクリーンメッシュの目開きを細かくする手段がある。しかし、目開きを細かくし過ぎた場合、溶融樹脂の滞留や劣化を助長させることに繋がり、欠点の発生を抑制する効果が得られ難くなる他、塩化水素、フッ化水素等の有毒性腐食性ガスの発生リスクを高めるため、好ましくない。
【0006】
さらに、フィルムの製造に際しては、製造したフィルムの一部を粉砕又は造粒して再生原料にした後、未使用の原料に任意の割合で配合し、歩留りを向上させる取り組みが一般的に行われている。この場合、一度、溶融環境に曝されることで熱履歴を受けたECTFEが、再度、熱履歴を受けることから、樹脂の劣化による透明性の低下や、欠点が発生する可能性が高くなる。このような状況の下、スクリーンメッシュの目開きを細かくした場合においても、樹脂の滞留を生じ難く、フィッシュアイ、ゲル、コンタミ等の欠点のない外観に優れた、透明性に優れるECTFEフィルムの開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記問題と実状に鑑み、透明性及び外観に優れたエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂フィルムの製造方法を提供することを課題とする。さらに、この樹脂フィルムを用いた積層フィルム及び屋外防水フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者は、鋭意研究を進める過程で、ECTFEを含む樹脂組成物から樹脂フィルムを作製する際に、ブレーカープレートの開口率、スクリーンメッシュの目開き、Tダイ吐出口での樹脂温度とTダイ吐出口から吐出される樹脂を受ける冷却ロール(第一冷却ロール)の表面温度との差を特定の範囲にすることにより、樹脂組成物の温度上昇や異物混入を防ぎつつ、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体の結晶化を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)本発明は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程を有し、前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度である、樹脂フィルムの製造方法である。
(2)本発明において、前記キャスティング処理が、前記第一冷却ロール及びタッチロールを用いて行われ、前記第一冷却ロールの表面の一部が、前記タッチロールの表面の一部と接しており、前記Tダイの吐出口先端部と、前記第一冷却ロール表面及びタッチロール表面が接する面における前記Tダイ側の端部との距離が400mm以下である、(1)に記載の樹脂フィルムの製造方法とすることができる。
(3)本発明において、前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、240℃〜300℃である、(1)または(2)に記載の樹脂フィルムの製造方法とすることができる。
(4)本発明において、前記樹脂組成物が熱安定剤を含有し、前記樹脂組成物中の前記熱安定剤の含有量が、0.1質量%〜5質量%である、(1)〜(3)の何れか一つに記載の樹脂フィルムの製造方法とすることができる。
(5)本発明において、前記樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有し、前記樹脂組成物中の前記紫外線吸収剤の含有量が、0.1質量%〜5質量%である、(1)〜(4)の何れか一つに記載の樹脂フィルムの製造方法とすることができる。
(6)本発明において、前記樹脂組成物が、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を用いて作製された樹脂フィルムからなるリサイクル原料を、前記樹脂組成物中に1質量%〜40質量%含有する、(1)〜(5)の何れか一つに記載の樹脂フィルムの製造方法とすることができる。
(7)本発明は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程と、得られた樹脂フィルムの第一面を、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、希ガス元素ガスおよび炭化水素ガスから選択される一種以上の改質ガス中でコロナ処理またはプラズマ処理により表面改質する工程と、前記表面改質した樹脂フィルムの第一面に、熱可塑性樹脂を含有する基材を、真空ラミネートにより積層する工程と、を有し、前記樹脂フィルムを形成する工程において、前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度である、積層フィルムの製造方法である。
(8)本発明は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、少なくとも1つの冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程と、得られた樹脂フィルムの第一面を、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、希ガス元素ガスおよび炭化水素ガスから選択される一種以上の改質ガス中でコロナ処理またはプラズマ処理により表面改質する工程と、前記表面改質した樹脂フィルムの第一面に、熱可塑性樹脂を含有する基材を、真空ラミネートにより積層する工程と、を有し、前記樹脂フィルムを形成する工程において、前記押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にブレーカープレートを備え、前記ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備え、前記ブレーカープレートの開口率が40%〜60%であり、前記スクリーンメッシュの最小の目開きが0.03mm〜0.1mmであり、前記Tダイの吐出口における前記樹脂組成物の温度が、第一冷却ロールの表面温度よりも110℃〜280℃高い温度である、屋外防水フィルムの製造方法である。
【0010】
本発明によれば、透明性及び外観に優れたエチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。さらに、この樹脂フィルムを用いた積層フィルム及び屋外防水フィルムの製造方法を提供することができる。本発明の製造方法により得られる樹脂フィルムは、透明性及び外観に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】押出機、Tダイ、第一冷却ロール及びタッチロールの構成を示す模式図である。
図2】Tダイ、第一冷却ロール及びタッチロールの構成を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[樹脂フィルムの製造方法]
本実施形態の樹脂フィルムの製造方法は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体を含む樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、冷却ロールを用いてキャスティング処理して樹脂フィルムを形成する工程を有する。
<樹脂組成物>
樹脂組成物は、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(以下、「ECTFE」ともいう。)を含有する。エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体としては、エチレン(以下、「Et」ともいう。)とクロロトリフルオロエチレン(別名「三フッ化塩化エチレン」、以下、「CTFE」ともいう。)からなる共重合体の他、前記モノマーに加え、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロブチル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン、[4(ヘプタフルオロイソプロピル)パーフルオロブチル]エチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等を第3モノマーとして使用した共重合体を使用することができる。EtとCTFEとの共重合におけるモノマー比(モル比)については、特に制限を受けるものでは無いが、樹脂フィルムに耐熱性を付与するために、前記モノマー比がEt/CTFE=40/60〜60/40であることが好ましい。
【0014】
樹脂組成物は、任意のEt/CTFE比(モル比)を有するECTFEを単独で使用してもよいし、少なくとも1種類以上の異なるEt/CTFE比のECTFEと混合して使用してもよい。また本発明の樹脂フィルムの効果を阻害しない範囲で、ECTFE以外の樹脂を添加することができる。
【0015】
樹脂組成物には、必要に応じて熱安定剤を含有させることができる。熱安定剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、金属石鹸、有機スズ化合物、エポキシ化合物、β−ジケトン、過塩素酸金属塩、ハイドロタルサイト等が挙げられるが、これらの中では透明性の点でフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、金属石鹸が好ましい。熱安定剤の添加方法としては、使用するECTFE原料の造粒工程で予め添加されたものを使用してもよいし、樹脂フィルムを製造する際に、熱安定剤が添加されていないECTFE原料と熱安定剤とを溶融混合して含有させることもできる。酸化防止剤の添加量としては、全樹脂組成物中0.001質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%であることがより好ましい。0.001質量%を下回ると十分な熱安定性が得られず、5質量%を超えると透明性または色調が悪化する場合がある。
【0016】
樹脂組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系安定剤(HALS)等が挙げられる。これらの中ではトリアジン系紫外線吸収剤が好ましく、特にECTFEとの相溶性の点で、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノールが好ましい。紫外線吸収剤の添加方法としては、使用するECTFE原料の造粒工程で予め添加されたものを使用してもよいし、樹脂フィルムを製造する際に紫外線吸収剤が添加されていないECTFE原料と紫外線吸収剤とを溶融混合して含有させることもできる。紫外線吸収剤の添加量としては、0.001質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜1.0質量%であることがより好ましい。0.001質量%を下回ると十分な紫外線吸収剤の効果が得られず、5質量%を超えると透明性または色調が悪化する場合がある。
【0017】
樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、後述の方法により製造された樹脂フィルムの破材の一部を、リサイクル原料として樹脂組成物に添加することができる。樹脂フィルム破材の添加割合は、樹脂組成物中に1質量%〜40質量%であることが好ましい。その他、樹脂組成物には、透明性、色調、耐熱性、フィルム外観等を実用上損なわない範囲で、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、流滴剤、親水剤、撥液剤等を添加することができる。これらの添加剤の添加方法としては、樹脂組成物を混練する際でもよく、樹脂フィルムを製造した後、樹脂フィルム表面に塗布してもよい。
【0018】
<樹脂フィルムの形成工程>
樹脂フィルムは、樹脂組成物を、Tダイを備えた押出機にて溶融混練後、冷却ロールにてキャスティング処理して得られる。「キャスティング処理」とは、いわゆるキャスト法でフィルムを形成する処理であり、例えば、押出機で溶融された樹脂を、ダイに設けられた直線状のスリット(吐出口)から押出し、その溶融膜を冷却ロールで冷却及び延伸しながら巻き取りフィルムを形成する処理をいう。なお、以降の記載において、「樹脂組成物」を「樹脂」と略すことがある。
【0019】
図1は、本実施形態の樹脂フィルムの形成工程の一例を示す模式図である。本実施形態では、樹脂組成物を、押出機1が備える図示しない加熱されたシリンダー内でスクリューにより溶融混練した後、単管2を介して連結されたTダイ3を通過させ、吐出口4から溶融樹脂を吐出する。その後、この溶融樹脂を第一冷却ロール5及びタッチロール6を用いてキャスティング処理して樹脂フィルム10を得る。なお、「第一冷却ロール」は、Tダイ3の吐出口4に最も近接して設けられる冷却ロールであって、吐出された樹脂を冷却及び延伸するキャスティングロールである。
【0020】
押出機としては、単軸スクリュー型、二軸スクリュー型、タンデム型等が一般的なものとして使用できるが、樹脂に過剰なせん断を与えずに、且つ系内に滞留し難い点で、単軸スクリュー型押出機が好ましい。
【0021】
押出機のスクリューとしては、樹脂を可塑化させ、均一化させるのにするのに十分で、且つ過剰なせん断による樹脂劣化が生じない仕様であれば、特に制限を受けるものでは無い。好適に使用することができるスクリューとしては、フルフライト型スクリューが好ましい。フルフライト型スクリューは圧縮比が1.3〜3.0、スクリューの長さLとスクリューの直径Dとの比(L/D)が20〜40が好ましく、より好ましくは、圧縮比が2.0〜3.0、L/Dが25〜35である。
【0022】
押出機は、スクリュー先端部と前記Tダイとの間にはブレーカープレートを備える。ブレーカープレートは、例えば、押出機中のシリンダーの先端フランジ部に、シリンダーの内孔を横断しかつ溶融樹脂の流路に直行するように備えられていてもよい。ブレーカープレートは、中央部に、溶融樹脂が通過する複数の貫通孔が形成されている。ブレーカープレートの開口率は40%〜60%であり、42%〜58%であることが好ましい。ブレーカープレートの開口率を40%以上とすることで、樹脂への背圧を抑え樹脂の押出機内の滞留を抑えることができる。また、開口率を60%以下とすることで、フィルムの欠点数(フィッシュアイ、ゲル、コンタミ等の数)を長時間に渡り、安定的に低く保つことが可能となる。なお、開口率とは押出機の樹脂流通部に露出する部分を基準とし、樹脂貫通孔も含めた全体の面積に対して、樹脂貫通孔が形成された部分の面積を意味する。
【0023】
ブレーカープレートの樹脂貫通孔の最小直径は、3.7mm〜6.0mmであることがより好ましい。「最小直径」とは、各貫通孔の直径のうち最小のものをいう。樹脂貫通孔の最小直径を3.7mm以上とすることで、樹脂への背圧を抑え樹脂の押出機内の滞留を抑えることができる。また樹脂貫通孔の最小直径を6.0mm以下とすることで、フィルムの欠点数を長時間に渡り、安定的に低く保つことが可能となる。
【0024】
ブレーカープレートは、スクリーンメッシュを備える。スクリーンメッシュは、例えば、ブレーカープレートの上流側(スクリュー先端部側)の面に接して1又は2以上備えられていてもよい。ブレーカープレートに配置されたスクリーンメッシュは、目開きが異なる2枚以上のスクリーンメッシュを組み合わせることが好ましい。スクリーンメッシュは、目開きが同じスクリーンメッシュを併用することもできる。一般には樹脂流通部の上流側(スクリュー近傍側)から下流側(ブレーカープレート開口側)に向かい、目開きの大きいスクリーンメッシュ、目開きの小さいスクリーンメッシュの順に配置することが好ましい。さらに、目開きが最少のメッシュの下流には、樹脂圧力によるメッシュの破れを防止する目的で、当該メッシュより粗いメッシュを配置することが好ましい。本実施形態では、スクリーンメッシュの最小の目開きは、0.03mm〜0.1mmであり、0.03mm〜0.7mmであることが好ましい。スクリーンメッシュの最小の目開きを0.03mm以上とすることで、樹脂の滞留及び剪断発熱による劣化を抑制することができる。また、スクリーンメッシュの最小の目開きを0.1mm以下とすることで、樹脂中に混入するコンタミ、原料の劣化物等を低減することができる。目開きの大きいスクリーンメッシュは、粗大な欠点を取り除く役割を担い、目開きは0.15mm〜0.6mmであることが好ましい。さらに、スクリーンメッシュが樹脂圧により破けるのを防ぐ目的で、目開きが最小のスクリーンメッシュの下流側に、それより目開きが大きい粗いスクリーンメッシュを導入してもよい。前記スクリーンメッシュの配置位置としては、スクリュー先端部から10mm〜100mm下流側に設置されることが好ましい。
【0025】
Tダイ吐出口での樹脂温度としては、用いるECTFEの融点にもよるが、240℃〜300℃に保つことが好ましい。樹脂温度が300℃を超えると、ECTFEが分解し易くなり、樹脂の分解劣化に伴う色調変化や欠点発生に繋がり易くなる場合がある。また、樹脂温度が240℃未満であると、樹脂の粘度上昇に伴う流動性の低下が生じ、押出機内での過剰なせん断、滞留を助長させることになる場合がある。
【0026】
前述の方法に従って可塑化された樹脂は、Tダイからシート状に押出された後、温調された第一冷却ロール及びゴム製のタッチロール間にキャスティング処理されながら引き取られ、その後、さらに複数の冷却ロールに接触しながら引き取られることで所定の厚みに調製されることができる。ここで、タッチロールは第一冷却ロールに接した状態又は押圧された状態にあるため、タッチロール表面の一部は、冷却ロール表面と面で接触した状態にあり、タッチロールは圧力センサーにより樹脂に付加される圧力、ならびに第一冷却ロールとタッチロールの引き取り速度を調整することで樹脂の厚みを所望の厚みに調整することができる。
【0027】
冷却ロールは、少なくとも1つの冷却ロールを備え、複数のロールを備えていてもよい。上述のように、Tダイの吐出口に最も近接して設けられる冷却ロールが第一冷却ロールである。Tダイ吐出口における樹脂温度は、第一冷却ロールの表面温度より+110℃〜+280℃高温であり、+120℃〜+250℃高温であることが好ましい。Tダイの吐出口における樹脂温度と冷却ロール表面温度との温度差が、+110℃未満であるとECTFEの結晶化を生じ樹脂フィルムの透明性が悪化したり、樹脂フィルム製造時に冷却ロールへのフィルム粘着が生じたりするため、好ましくない。また、温度差が+280℃を上回ると、樹脂の劣化による欠点数の増加やフィルム外観の悪化が生じ易くなるため好ましくない。Tダイ吐出口における樹脂温度は、例えば、接触式温度計等を用いてTダイのリップ出口を通過する樹脂の温度を測定することで得ることができる。第一冷却ロールの表面温度は、例えば、接触式温度計等を用いて、第一冷却ロールの表面温度を測定することで得ることができる。
【0028】
Tダイ吐出口からの、第一冷却ロール表面とタッチロール表面が接する面までの距離は、樹脂フィルムの結晶性を制御する上で重要な役割を担う。図1,2に、Tダイ、第一冷却ロール及びタッチロールの構成を示す。図1,2に示すように、第一冷却ロール5表面とタッチロール6表面が接する面7において、接する面7の最高位置にある点8(回転状態にある第一冷却ロールとタッチロールが最初に接する点、又は冷却ロール表面及びタッチロール表面が接する面における前記Tダイ側の端部)を「接点」と略す場合があり、Tダイ吐出口4からの、接点8までの距離(最短距離)9を「エアギャップ」と略す場合がある。即ち、エアギャップとは、Tダイ吐出口と、第一冷却ロール表面及びタッチロール表面の接触面とが垂直位置にある場合(例えば、接触面が、Tダイ吐出口の垂直方向下側に位置している場合、つまり下方吐出の場合)は、Tダイ吐出口と接点までの垂直方向の最短距離を意味し、Tダイ吐出口と前記接触面が垂直とは異なる位置に配置される場合は、Tダイ吐出口と接点を結ぶ直線距離を意味する。
【0029】
前記エアギャップの距離(最短距離)は、400mm以下であることが好ましく、100mm〜300mm以下であることがより好ましい。エアギャップの距離が400mmを超えると、第一冷却ロールに到達する前に結晶化が進み、良好な透明性の樹脂フィルムが得られない場合がある。
【0030】
冷却されたフィルムの端部をスリットし、任意のフィルム幅にした後、フィルムの巻き締まり、巻きズレが生じない適度な張力で巻き取ることによって、樹脂フィルムを得ることができる。
【0031】
樹脂フィルムの厚みは、0.001mm〜0.5mmが好ましく、0.01mm〜0.3mmであることがより好ましい。樹脂フィルムの厚みが0.001mm未満では、フィルム製造時に破れが発生し易くなったり、フィルムの厚み制御が困難となったりする場合がある。また、厚みが0.5mmを超えると、フィルムの厚み方向で冷却速度のムラが生じ易く、透明性が悪化し易くなる。
【0032】
樹脂フィルムの透明性を表す尺度の一つとして、全光線透過率が挙げられる。本実施形態の製造方法により得られる樹脂フィルムは、ヘイズメーターにより測定されるフィルムの全光線透過率が、92%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。92%を下回ると、樹脂フィルムを基材に積層した際の意匠性の低下や、高い集光効率が求められる用途への適用が難しくなる場合がある。
【0033】
本実施形態の製造方法により得られる樹脂フィルムは、ECTFEの優れた水蒸気バリア性、耐薬品性、防汚性、耐候性を活かし、屋外で使用される各種防水フィルムとして好適に用いることができる。屋外で使用される用途の一例としては、スポーツ施設等の建造物での膜材料、道路標識等を一例とする金属鋼板の被覆材、コンクリートの止水シート等、前述の特性が求められる各種用途に好適に用いることができる。特に、上記した本実施形態の樹脂フィルムは、透明性および外観に優れるため、他の樹脂シートや無機材料の表面保護フィルムとして好適である。特に、耐候性や水蒸気バリア性に優れるECTFEを含有するため、屋外防水フィルムとしての用途に適している。
【0034】
[積層フィルムの製造方法及び屋外防水フィルムの製造方法]
上記した樹脂フィルムを表面保護フィルムとして用いて積層フィルムを形成する際は、被保護体(以下、「基材」という。)との接着性を付与すべく、接着面(樹脂フィルムの第1面)を表面改質することが好ましい。積層フィルム又は屋外防水フィルムとする場合、上記した樹脂フィルムの製造方法からなる樹脂フィルムの形成工程と、得られた樹脂フィルムの第一面を表面改質する工程と、表面改質した樹脂フィルムの第一面に、熱可塑性樹脂を含有する基材を積層する工程と、を有するように構成することができる。
【0035】
(表面改質工程)
表面改質方法としては、樹脂フィルムの第一面を、コロナ処理やプラズマ処理する方法等が挙げられる。なお、「第一面」とは、接着面となり得る樹脂フィルムの表裏面のうちのいずれか一方又は両方の面のことをいう。コロナ処理、およびプラズマ処理の方法としては、樹脂フィルム製造時に冷却ロールのプロセス下流でインラインで処理してもよいし、樹脂フィルム製造後に、オフラインでコロナ処理設備、プラズマ処理機設備で処理してもよい。
【0036】
コロナ処理に係る放電量としては、特に限定するものではないが、基材との好適な接着性を得る目的において、30W・min/m以上であることが好ましく、より好ましくは、50W・min/m以上である。30W・min/m未満では、樹脂フィルムの十分な表面改質効果が得られず、基材との接着性が不十分となる場合がある。放電量の上限値については、樹脂フィルムの外観が損なわれない範囲で適宜設定することができる。
【0037】
プラズマ処理によって得られる表面改質効果については、存在させるガスの種類によって様々だが、本実施形態の樹脂フィルムに好適に用いることができる改質ガスとしては、窒素、酸素、水素、二酸化炭素、アルゴン、炭化水素系ガス等が挙げられる。基材との接着性を得る目的において、より好ましい処理ガスの一例として、アルゴンガス等の希ガス元素ガス成分、炭化水素系ガスが挙げられる。これらの処理ガスは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合ガスとして併用することもできる。一般的なプラズマ処理の方式としては、リモートプラズマ方式、ダイレクトプラズマ方式が挙げられ、本実施形態の樹脂フィルムはそのいずれの処理方式にも好適に用いることができるが、プラズマ処理時のガス使用量を低減し、低コストでの表面処理を可能にする目的で、ダイレクトプラズマ方式がより好ましい。
【0038】
(基材の積層工程)
コロナ処理またはプラズマ処理により表面改質された樹脂フィルムに基材を積層する方法としては、熱により軟化させた基材表面に樹脂フィルムをラミネート処理する方法を採用することができる。
【0039】
樹脂フィルムの他の表面改質方法としては、表面改質した樹脂フィルムの接着面(第1面)に、当該樹脂フィルム及び基材の両者に対する接着性を有する接着樹脂を塗工し、熱により樹脂フィルムを軟化させ、基材表面にラミネート処理する方法等を好適に採用することができる。
【0040】
前記塗工で使用することが可能な主な接着樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリレート系樹脂、イソシアネート系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられ、目的と用途に応じ、少なくとも1種類以上を選定し使用することができる。これらの接着樹脂は、封止樹脂としても用いられる。
【0041】
基材としては、フィルムやシート状の平板形状のものや、直方体、角柱、角錐、円柱、円錐等の立体形状を有するものが挙げられる。基材の種類は特に限定されず、樹脂、ガラスなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、スチレン−ブタジエン共重合体(SBC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、アラミド、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーン樹脂、脂環式アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂(COP)、トリアセチルセルロース(TAC)等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。ガラスとしては、軟質ガラス、硬質ガラスまたは石英ガラスを用いることができる。これらの中では、樹脂フィルムとの接着性の点で、熱可塑性樹脂が好ましく、特に接着性や透明性の点でエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例で使用した原料を以下に記す。
[ECTFE]
・ECTFE1:Solvay社製「Halar ECTFE 500LC」、融点242℃、MFR18g/10min(ASTM D1238 275℃/2.16kg荷重)
・ECTFE2:Solvay社製「Halar ECTFE 350LC」、融点242℃、MFR4.0g/10min(ASTM D1238 275℃/2.16kg荷重)
・ECTFE3:Solvay社製「Halar ECTFE XPH802B(700HC)」、融点202℃、MFR9.0g/10min(ASTM D1238 275℃/2.16kg荷重)
[酸化防止剤]
・ADEKA社製「アデカスタブ593」:ステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムとの混合物
[紫外線吸収剤]
・ADEKA社製「LA−46」:2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[2−(2−エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール
【0044】
実施例及び比較例の樹脂フィルムは、下記の装置を使用して形成した。
[押出機]
・田辺プラスチック工業社製「VS65−25単軸横型押出機」、ホッパー型
[スクリュー]
・スクリュー構成:フルフライト型スクリュー
・スクリュー直径:65mm
・スクリュー長さ(L)/スクリュー直径(D)比:25
・圧縮比:2.5
【0045】
[スクリーンメッシュ]
実施例及び比較例で使用したスクリーンメッシュの構成、目開き値を表1,2に示した。スクリーンメッシュの材質はSUS304を使用し、スクリュー先端部から20mm下流に設置した。なお、スクリーンメッシュの構成は、スクリュー側、中央側及びTダイ側に連続した3層構造とした。
【0046】
[ブレーカープレート]
実施例及び比較例で使用したブレーカープレートの開口率を表1,2に示した。なお、ブレーカープレートの材質にはSUS304を使用し、前記スクリーンメッシュのプロセス下流に隣接する形態で設置した。
【0047】
[Tダイ]
実施例及び比較例で使用したTダイの仕様を以下に示した。
・ダイス仕様:コートハンガー方式/下方吐出式、内面に硬質クロムメッキ処理
・リップ幅:1050mm
[ロール]
・型式:タッチロール式 線圧25〜30kgf/cm
・ロール仕様:
第一冷却ロール
直径260mm
表面焼入れ研磨後硬質クロムメッキ仕上げ
表面粗さ:0.2S(凸部最大高さ)
チラー水循環方式
タッチロール
直径260mm
表面鏡面仕上げホワイトミラーロール
表面粗さ:(凸部最大高さ)Ry3.2μm、(算術平均粗さ)Ra0.05μm
・Tダイ吐出口からの、第一冷却ロール表面とタッチロール表面が接する面における最高位置までの最短距離(エアギャップ):100〜250mm
【0048】
(実施例1)
ECTFE1(Halar ECTFE 500LC)のペレットを80℃で4時間乾燥させた後、前述の押出機を用いて、ブレーカープレート部、及びTダイの設定温度を280℃とし溶融混練した。スクリーンメッシュは、樹脂流通部の上流側から下流側に向かい、0.18mm、0.075mm、0.18mmのメッシュを用いた。また、エアギャップは120mmとした。Tダイ吐出口での樹脂温度は、280℃であり、第一冷却ロールの表面温度は、60℃とした。得られた樹脂フィルムの厚みは、0.025mであった。結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
<Tダイ吐出口での樹脂温度>
Tダイ吐出口における樹脂温度の測定は、接触式の温度計(安立計器株式会社製 DIGITAL SURFACE THERMOMETER、型番:HL−200)を使用し、Tダイのリップ出口を通過する樹脂の温度を計測し、測定値とした。
【0051】
<樹脂フィルムの透明性>
樹脂フィルムの透明性は、日本電色工業株式会社製 Haze Meter「NDH7000」を使用し、全光線透過率、ヘイズ値にて評価した。評価に際しては、樹脂フィルムのTD方向より任意の5点より切り出した試料を用い、その算術平均値を採用した。
優:ヘイズ値4%未満
良:ヘイズ値4%以上、7%未満
可:ヘイズ値7%以上、20%未満
不良:ヘイズ値20%以上
【0052】
<樹脂フィルムの欠点(外観)>
フィルム製造設備に装備されたインラインの欠点検出機を用い、フィルム面積1000m中に含まれる0.7mm以上の欠点(異物、フィッシュアイ、ゲル)数を計測した。樹脂フィルム中の欠点数は以下の基準で性能を判定した。
優:50個未満
良:50個以上、80個未満
可:80個以上、100個未満
不良:100個以上
【0053】
<耐候性>
得られた樹脂フィルムを、株式会社東洋精機製作所製キセノンアークウェザオメーター Ci4000(光源キセノンランプ)を用いて、照射強度80W/m、ブラックパネル温度85℃、相対湿度50%、102分乾燥/ウォータースプレー18分のサイクルで2000時間紫外線照射し、得られた樹脂フィルムの全光線透過率、色相変化(△b)を測定した。
色相(△b)の測定は、スガ試験機株式会社製「Colour Cute i」を用いて、紫外線照射前に対するb値の変動を△bとして計測した。耐候性については、計測した△b値について、以下の基準で性能を判定した。
優:0.3未満
良:0.3以上、0.6未満
可:0.7以上、0.9未満
不良:1.0以上
【0054】
<防湿性>
樹脂フィルムの防湿性は、Lyssy社製 L−80−5000型水蒸気透過度計を使用し、温度40℃、相対湿度90%で計測した。樹脂フィルムの防湿性は以下の基準で性能を判定した。
優:1.0未満
良:1.0以上、5.0未満
可:5.0以上、10.0未満
不良:10.0以上
【0055】
<樹脂フィルムによる基材への表面被覆>
樹脂フィルムを、リモートプラズマ方式でアルゴン環境下でプラズマ処理し、濡れ指数44mN/mとした後、プラズマ処理面を厚さ0.4mmのEVA樹脂シートと150℃で30分間圧着させ、真空ラミネートした。ラミネート後の基材に関し、性能を以下の基準で判定した。プラズマ処理には、大気圧プラズマ表面処理装置を用いた。
良:層間剥離、成形品の変色等、欠点等の巨視的な外観悪化が認められない。
不良:層間剥離が認められる、或いは成形品の変色等、欠点等の巨視的な外観悪化が認められる。
【0056】
(実施例2〜9)
表1に示す条件にて、樹脂フィルムを作製し各種評価を実施した。なお、実施例2〜4、実施例6〜9で用いた再生樹脂フィルムは、同じ実施例で作製した樹脂フィルムを樹脂組成物用原料に配合したものである。
【0057】
(比較例1〜9)
表2に示す条件にて、樹脂フィルムを作製し各種評価を実施した。なお、比較例7〜9は樹脂組成物としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いたものである。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例1〜9、及び比較例1〜9の結果から、本実施形態の樹脂フィルムは、透明性に優れ、且つ欠点数も少ないフィルムが得られていることが分かる。本実施形態のフィルムを使用することにより、意匠性が求められる各種保護フィルム、ならびに屋外防水フィルムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 押出機
2 単管
3 Tダイ
4 Tダイ吐出口
5 第一冷却ロール
6 タッチロール
7 第一冷却ロール表面とタッチロール表面の接触面
8 第一冷却ロール表面とタッチロール表面が接する面における最高位置
9 第一冷却ロール表面とタッチロール表面が接する面における最高位置までの最短距離
10 樹脂
図1
図2