(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マイクロカプセルが、界面重合によって、重合により誘導される相分離プロセスによって、またはコアセルベーションによって形成されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のマイクロカプセル。
請求項1から5までのいずれか1項に定義したマイクロカプセルの、長時間持続する強いバニラ系ノートを送達するための付香組成物または付香消費者製品における使用。
前記消費者製品が、ファインパフューム、コロン、アフターシェーブローション、液体もしくは固体洗剤、布地用柔軟剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン掛け水、紙、漂白剤、シャンプー、カラーリング調製物、ヘアスプレー、バニシングクリーム、デオドラントもしくは制汗剤、付香石けん、シャワーもしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、衛生用品、エアフレッシュナー、「すぐに使用できる」粉末エアフレッシュナー、ワイプ、食器用洗剤、または硬質表面洗剤であることを特徴とする、請求項9または10記載の付香消費者製品。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、香料送達システムの分野に関する。さらに詳細には、本発明は、優れた強さおよび長時間持続する効果を有するバニラ香気ノートを付与することが可能なマイクロカプセルに関する。本発明は、それらのコアに高レベルの式(I)
【化1】
(式中、R基は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表す)
の化合物を含有するカプセル;
ならびにこれらのカプセルを含有する付香組成物および着香物品に関する。
【0002】
従来技術
香料産業が直面している問題の1つは、それらの揮発性の結果として生じる発香性化合物によってもたらされる嗅覚効果、特に「トップノート」の嗅覚効果が比較的急速に失われることにある。また、一部の香料成分は、機能性香料の用途において不安定であり、かつ分解または急激な蒸発により失われ得る。
【0003】
特に、バニリン(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド)およびエチルバニリン(3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド)などのバニラ調の香気ノートを付与するために最もよく使用される成分は、消費者製品ベースなどの挑戦的な媒体において急速に分解しかつ製品の着色につながることが知られている。したがって、それらを保護するためだけではなく、消費者製品ベースなどの挑戦的な媒体において長時間持続するバニラノートを送達するためにも、カプセル化された形でそれらを提供することが求められている。しかしながら、これらの成分は、従来の方法では、妥当なコストで匂いの観点から満足のいく効果をもたらすのに十分な充填量でカプセル化することができない。また、カプセル化される際に、バニリンおよびエチルバニリンは、特に表面活性成分を含有する消費者製品に添加された場合、マイクロカプセルのシェルを通して拡散する特定の傾向があることが知られている。
【0004】
国際公開第2014059087号(WO2014059087)では、これらの問題に取り組んできた。バニリンをカプセル化された形で提供するための提案された解決策として、コアシェルマイクロカプセルは、バニリンおよび/またはエチルバニリンを予め形成されたコアシェルマイクロカプセルスラリーまたは配合物と混合し、次にバニリンおよび/またはエチルバニリンとマイクロカプセルが相互作用するのに十分な時間にわたり混合物をエイジング(aging)することによって形成されるものとして記載されている。しかしながら、この方法は、標準的なカプセル化と比較して余分な工程を必要とする欠点があり、この用途に記載されているバニリンおよび/またはエチルバニリンを含むマイクロカプセルのシェルが透過性であることを示唆する。そのため、この方法では、カプセルのコア内部のバニリンおよび/またはエチルバニリンの最終量を制御可能なマイクロカプセルを得ることができず、かつ挑戦的な媒体における保存時の拡散を防ぐことができない。さらに、この方法では、これらの成分の大部分が実際に下記の実験の部に示すようにスラリーに留まるので、大量のバニリンおよび/またはエチルバニリンをカプセル化することができない。
【0005】
したがって、必要に応じてバニラ香気ノートを付与することができ、マイクロカプセルのコア内部のバニラ系ノートに関与する高度でかつ制御可能な充填量の付香化合物を有することができ、直接的なカプセル化プロセスを使用することができ、かつ透過性のシェルのみに限定されない、マイクロカプセルを提供することが引き続き求められている。
【0006】
本発明は、コア中の香油の一部として高充填量の上記定義の式(I)の化合物を含み、かつマイクロカプセルの使用および所望の効果に応じて選択することができる透過性を有するシェルを含むマイクロカプセルを用いて上記の問題に対する解決策を提供する。式(I)の化合物は、国際公開第2011132098号(WO2011132098)においてバニラの匂いに非常に近い甘いバニラ調の匂いを付与する付香成分として報告されているが、特に高い負荷量でカプセル化される可能性があり、強力なノートを付与しかつバニリン系およびエチルバニリン系のカプセルの攻撃的な媒体における安定性の問題を回避することは予想されていなかった。
【0007】
発明の概要
本発明は、高充填量の式(I)
【化2】
(式中、R基は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表す)
の化合物を含む新規なマイクロカプセルに関する。意外にも、バニリンまたはエチルバニリンとは対照的に、それらの化学的類似性にもかかわらず、式(I)の化合物は、少ない漏れでかつ高レベルでうまくカプセル化することができ、これまでバニラ香気ノートを付与するためによく使用されるこれらの成分を用いて可能であったものよりも優れた強さを有するバニラノートを送達することができることが発見された。したがって、バニラ香気ノートを送達しやすい付香成分として多量の式(I)の化合物を含む香油を有するカプセルの使用によって、従来技術の問題が克服され、効率的かつ容易に入手可能なバニラ送達システムがもたらされる。
【0008】
したがって、本発明の第1の対象は、
A)式(I)
【化3】
(式中、R基は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表す)
の化合物を含む香油を含有するコア;および
B)前記コアを囲むポリマーシェル
を含むマイクロカプセルであって、
前記式(I)の化合物が、マイクロカプセルの全重量に対して、10重量%〜30重量%の量で存在することを特徴とする、前記マイクロカプセルである。
【0009】
本発明の第2の対象は、強くて長時間持続するバニラノートを送達するための、付香組成物または付香された消費者製品における上記で定義したマイクロカプセルの使用からなる。
【0010】
本発明の第3の対象は、上記で定義したマイクロカプセルを表面に適用することを含むバニラ香気ノートを付与する、強化する、改善する、または変更する方法である。
【0011】
本発明の別の対象は、付香組成物であって、
a)上記で定義した付香マイクロカプセル;
b)香料キャリヤーおよび香料補助成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
c)任意に少なくとも1つの香料補助剤
を含む、前記付香組成物である。
【0012】
本発明の最後の対象は、上記で定義したマイクロカプセルを含む付香消費者製品である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
特に指定のない限り、パーセンテージは組成物の重量%を意味することが意図されている。
【0015】
本発明のマイクロカプセルは、有利には、上記で定義した式(I)の化合物を予想外の高レベルでカプセルのコアにおいて使用することによる効率的なバニラ送達システムを提供する。さらに詳細には、式(I)の化合物は、驚くべきことに、カプセルの安定性に対する偏見なくかつマイクロカプセルの形成に対する特別な要求なく、バニリンおよびエチルバニリンよりも多量でマイクロカプセルの香油の一部として導入することができ、したがって、カプセルの特性に関して柔軟性のある用途において強いバニラ系ノートを送達することができる。
【0016】
したがって、本発明の第1の対象は、
A)式(I)
【化4】
(式中、R基は、互いに独立して、水素原子またはメチル基を表す)
の化合物を含む香油を含有するコア;および
B)前記コアを囲むポリマーシェル
を含むマイクロカプセルであって、
前記式(I)の化合物が、前記マイクロカプセルの全重量に対して、10重量%〜30重量%の量で存在することを特徴とする、前記マイクロカプセルである。
【0017】
本発明によれば、式(I)の化合物は、有利には、そして驚くべきことに、これらの全ての化合物の間の構造的な類似性にも関わらず、バニリンおよびエチルバニリンを用いて可能であるものよりも高い充填量でマイクロカプセルのコア中に導入することができる。
【0018】
明確にするために、本発明における「安定性」は、界面活性剤を含有する消費者製品ベースなどの攻撃的な媒体において保存される際にマイクロカプセルの外への香油の漏れに関して述べられる。
【0019】
明確にするために、本発明における「マイクロカプセル」または類似物は、コアシェル系(例えば、コアセルベート)とマトリックス形態を有する系(例えば、液体の小滴を含有する押出物または多孔性固相)のような両方の形態を含む。「コアシェル」との用語は、香油がシェルで囲まれた連続相を意味し、一方、「マトリックス形態」とは、香油がマトリックス中に分散され、かつシェルで囲まれていることを意味する。好ましくは、本発明によるマイクロカプセルはコアシェル系である。
【0020】
「香油」(または「香料」)とは、本明細書では約20℃で液体である香料を意味する。上記発明の実施形態のいずれか1つによれば、前記香油は、式(I)の化合物、溶媒、および任意に付香補助成分または付香組成物を含む。付香補助成分は、式(I)の化合物以外の付香成分である。「付香成分」は、香料業界で現在使用されている化合物、すなわち、少なくとも快楽効果を付与するために付香調製物または組成物において有効成分として使用される化合物である。換言すれば、このような付香成分は、香料の分野の当業者によって、単に匂いを有しているものとしてではなく、組成物の匂いを積極的にまたは心地良いように付与または変更することが可能なものとして認識されなければならない。明確にするために、付香成分の定義は、必ずしも匂いを有していないが、匂いを調節すること、例えば、不快な臭いを隠すことが可能な化合物も含むことを意味する。明確にするために、付香成分の定義は、プロ香料(pro-perfume)、すなわち、分解時に付香成分を遊離する化合物も含むことを意味する。「付香組成物」とは、少なくとも2つの付香補助成分を含む化合物の混合物である。
【0021】
一般的には、これらの付香成分は、アルコール、ラクトン、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、エステルニトリル、テルペノイド、窒素または硫黄複素環式化合物および精油などの化学クラスに属し、かつ前記付香成分は天然または合成由来であり得る。このような付香成分の特別な例は、例えば、S. Arctanderによって出版された著書、“Perfume and Flavor Chemicals”、モントクレア(米国、ニュージャージー州)、1969年、またはその最新版によって、または同様の性質の他の論文に、ならびに香料分野の豊富な特許文献などの関連文献に見出すことができる。それらは、消費者製品の付香、すなわち、心地良い匂いを消費者製品に付与することが当業者によく知られている。好ましくは式(I)の化合物と組み合わせて使用されるべき付香補助成分の完全に網羅されていないリストには、クマリン、1,3−ベンゾジオキソール−5−カルバルデヒド(製造元:フィルメニッヒSA、スイス)、3−ヒドロキシ−2−メチル−4(4H)−ピラノン2−エチル−3−ヒドロキシ−4(4H)−ピラノン、4−メトキシベンズアルデヒド、ベラトリックアルデヒドおよびガンマノナラクトンからなる群から選択されるものが含まれる。
【0022】
溶媒は、カプセルを形成するのに有用でありかつ香料産業で現在使用されている疎水性溶媒である。溶媒は好ましくはアルコールではない。このような溶媒の例は、ジエチルフタレート、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)(ロジン樹脂、イーストマンから入手可能)、安息香酸ベンジル、リモネンまたは他のテルペン、サリチル酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸シクロヘキシル、フェネチルフェニルアセテートまたはイソパラフィンである。溶媒は、好ましくはジエチルフタレート、ミリスチン酸イソプロピル、Abalyn(登録商標)、安息香酸ベンジル、リモネンまたは他のテルペン、またはイソパラフィンである。さらにより好ましくは、溶媒は安息香酸ベンジルである。
【0023】
香油は、香料において現在使用されている補助剤も含み得る。
【0024】
「香料において現在使用されている補助剤」とは、色、化学的安定性などの付加的に追加される利点を付与することができる成分を意味する。前記成分は当業者によく知られているので、香油に一般に使用される補助剤の性質および種類の詳細な説明は要求されない(そして網羅されないだろう)。
【0025】
香油は、その性質および/または目標の嗅覚効果の強さに応じて、様々な量で存在し得る。通常、マイクロカプセルは、全マイクロカプセルの重量を基準として、約1重量%〜約99重量%の香油を含む。好ましくは、マイクロカプセルは約20重量%〜約96重量%の香油を含む。
【0026】
特定の実施形態によれば、香油は、式(I)の化合物および溶媒を含む。
【0027】
特定の実施形態によれば、香油は実質的に式(I)の化合物および溶媒からなる。
【0028】
上記の実施形態のいずれか1つによれば、式(I)の化合物は、マイクロカプセルの全重量に対して10重量%〜30重量%、好ましくは15重量%〜30重量%の量で存在する。より好ましくは、式(I)の化合物は、マイクロカプセルの全重量に対して、20重量%〜30重量%の量で存在する。最も好ましくは、式(I)の化合物は、マイクロカプセルの全重量に対して、25重量%〜29重量%の量で存在する。
【0029】
本発明の特別な実施形態によれば、式(I)の化合物の1つのR基は、水素原子を表し、他のR基は水素原子またはメチル基を表す。好ましくは、式(I)の化合物は、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートである。有利には、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートは、バニリンまたはエチルバニリンとは対照的に、アルコール組成物、石けん、シャンプーまたは多目的洗浄剤などの攻撃的な媒体中でエイジング時に変色しない。
【0030】
任意に、カプセルのコアは、香油の他に、周囲環境に利益または効果をもたらすことができる活性剤、例えば、特に、香味、化粧品、皮膚ケア、悪臭中和、殺菌剤、殺真菌剤、酸化防止剤、消泡剤、農薬成分、および/または昆虫忌避剤または誘引剤を含み得る。
【0031】
本発明によるマイクロカプセルの成分B)は、様々な方法によって得ることができるポリマーシェルであり、得られた送達システムの特性に関して柔軟性が残されている。例えばポリマーシェルは多かれ少なかれ透過性であっていてよい。マイクロカプセルのコア中の式(I)の化合物の存在は、シェルの性質を制限するものではなく、マイクロカプセルの安定性にとって有害ではない。
【0032】
本発明のいずれかの実施形態によれば、ポリマーシェルは、好ましくは、アミノプラスト、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレア、もしくはポリウレタン樹脂、またはそれらの混合物に基づくか、またはゲル親水性コロイドに基づく。前記樹脂およびシェルは、当業者によく知られており、以下でより詳細に説明されている。
【0033】
本発明のいずれかの実施形態によれば、このようなシェルは、好ましくは、重合によって、界面重合によって、コアセルベーションによって、または全て一緒にすることによって、誘導される相分離プロセスによって得られる。このようなプロセスは従来技術に記載されている。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、コアシェルマイクロカプセルは、重合によって誘導される相分離プロセスによって得られる。このような方法は、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、2,2−ジメトキシエタン、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物)と、アミン、すなわち尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、メラミン、メチロールメラミン、メチル化メチロールメラミン、イミノメラミン、グアナゾール等、ならびにそれらの混合物との重縮合によって製造されるアミノ樹脂に基づく。適切な尿素の例は、ジメチロール尿素、メチル化ジメチロール尿素、尿素−レゾルシノール、およびそれらの混合物である。
【0035】
アミノ樹脂、すなわち、メラミン系樹脂とアルデヒドとの重縮合による香料のカプセル化に関するいくつかの類似文献は、K. Dietrichらにより刊行された、Acta Polymerica, 1989年, 第40巻, 第243頁, 325頁および683頁、ならびに1990年, 第41巻, 第91頁などの論文によって示される。かかる論文は、従来技術の方法に従う、かかるコアシェルマイクロカプセルの調製に影響を及ぼす様々なパラメータを既に記載しており、これらも特許文献においてさらに詳細に説明されかつ例示されている。Wiggins Teape Group Limitedによる米国特許第4396670号明細書(US4396670)は、後者の適切な初期の例である。以来、多くの他の著者や創作者がこの分野の文献の質を高めており、本明細書において全ての記載された展開をカバーすることは不可能であるが、この種のカプセル化の一般的な知識は非常に重要である。かかるマイクロカプセルの適切な使用にも対処する、より最新の適当な刊行物は、例えば、H. Y. Leeらの論文、Journal of Microencapsulation, 2002年, 第19巻, 第559頁〜569頁、国際公開第01/41915号(international patent publication WO 01/41915)、さらにはS. Boneらの論文、Chimia, 2011年, 第65巻, 第177頁〜181頁によって示されている。
【0036】
アルデヒドとアミンまたはアミノ樹脂との重縮合は、熱硬化性樹脂(アミノプラスト樹脂)として知られる高度に架橋した樹脂からなるシェルまたは壁につながる。本発明によるマイクロカプセルのための適切なアルコキシレート化ポリアミンは、1〜6個のメチレン単位を有するアルコールで順に部分的にアルキル化されていてよい、モノまたはポリアルキロール化(polyalkylolated)ポリアミンの混合物を包含し、また、モノまたはポリメチロールメラミンおよび/またはモノまたはポリメチロールウレア初期縮合物、例えば、Urac(登録商標)(製造元: Cytec Technology Corp.)、Cymel(登録商標)(製造元: Cytec Technology Corp.)、Urecoll(登録商標)またはLuracoll(登録商標)(製造元:BASF)の商標で市販されているものを包含する。
【0037】
モノまたはポリアルキロール化ポリアミンの混合物からの他の適切なアミノ樹脂は、国際公開第2011/161618号(WO2011/161618)に記載されているように、アルデヒド、例えば2,2−ジメトキシエタナール、グリオキサール、グリオキシル酸またはグリコールアルデヒドおよびそれらの混合物と、アミンとの重縮合により得ることができる。2,2−ジメトキシエタナールとの重縮合からのポリアルキロール化ポリアミンの非限定的な例は、ポリ[N−(2,2−ジメトキシ−1−ヒドロキシ)]ポリアミン、モノ−およびジ−[N−(2,2−ジメトキシ)−1−ヒドロキシ)]ウレア、モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラ−[N−(2,2−ジメトキシ)−1−ヒドロキシ)]メラミン、テトラ−[N−(2,2−ジメトキシ)−1−ヒドロキシ)]グリコリルまたはジ−[N−(2,2−ジメトキシ)−1−ヒドロキシ)]ベンゾグアニジンを含む。グリオキサールとの重縮合からのポリアルキロール化ポリアミンの非限定例は、ポリ[N−(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)]ポリアミン、モノ−およびジ−[N−(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)]ウレア、モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラ−[N−(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)]メラミン、テトラ−[N−(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)]グリコリルまたはジ−[N−(2−ヒドロキシアセトアルデヒド)]ベンゾグアニジンを含む。グリオキシル酸との重縮合からのポリアルキロール化ポリアミンの非限定例は、ポリ[N−(2−ヒドロキシ酢酸)]ポリアミン、モノ−およびジ−[N−(2−ヒドロキシ酢酸)]ウレア、モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラ−[N−(2−ヒドロキシ酢酸)]メラミン、テトラ−[N−(2−ヒドロキシ酢酸)]グリコリルまたはジ−[N−(2−ヒドロキシ酢酸)]ベンゾグアニジンを含む。グリコールアルデヒドとの重縮合からのポリアルキロール化ポリアミンの非限定的な例は、ポリ[N−(エタン−1,2−ジオール)]ポリアミン、モノ−およびジ−[N−(エタン−1,2−ジオール)]ウレア、モノ−、ジ−、トリ−、および/またはテトラ−[N−(エタン−1,2−ジオール)]メラミン、テトラ−[N−(エタン−1,2−ジオール)]グリコリルまたはジ−[N−(エタン−1,2−ジオール)]ベンゾグアニジンを含む。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、コアシェルマイクロカプセルは、界面重合によって得られ、その際、コアは、アミノ樹脂、ポリアミンまたはポリオールと少なくとも1つのポリイソシアネートとの反応によって形成された架橋ポリウレアまたはポリウレタンのシェルまたは壁にカプセル化される。
【0039】
ポリアミンまたはアミノ樹脂が使用される際に、ポリウレアマイクロカプセルのシェルまたは壁が形成される。特に有効なポリアミンは、水溶性グアニジン塩および/またはグアニジンおよび/またはアミノ樹脂、例えば、上記のものである。「水溶性グアニジン塩」とは、水に可溶でありかつグアニジンと酸との反応によって得られる塩を意味する。かかる塩の一例はグアニジンカーボネートである。
【0040】
ポリオールが架橋剤として使用される場合に、ポリウレタンマイクロカプセルのシェルまたは壁が形成される。ポリオールとしては、グリセロールが好ましい。
【0041】
ポリアミンまたはポリオールに対して特定の比のポリイソシアネートの使用が有利である。したがって、好ましくは、各モルのイソシアネート基に対して、1〜10モル、好ましくは2〜5モルのアミンまたはアルコール基が存在する。したがって、過剰の架橋剤が添加される。
【0042】
ポリイソシアネート化合物が、例えば、上記の相分離プロセスによって得られるアミノ樹脂と反応する場合、ポリアミンまたはポリオール、あらゆるポリイソシアネートが反応に適しているが、少なくとも2つのイソシアネート基または少なくとも3つのイソシアネート基を含むポリイソシアネートが好ましい。それらの低毒性のために低揮発性ポリイソシアネート分子が好ましい。特に、ポリイソシアネートは、有利には、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、イソホロンジイソシアネートまたはキシリレンジイソシアネートの三量体またはヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット、またはキシリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパンの三量体(Takenate(登録商標)の商品名で知られている、製造元:三井化学)からなる群から選択することができ、中でもキシリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパンの三量体と、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット(Desmodur(登録商標)N100の商品名で知られている、製造元:バイエル)がさらに一層好ましい。
【0043】
重合、または界面重合により誘導される相分離プロセスの場合、ポリマー安定剤は、マイクロカプセルが凝集するのを防ぐために使用することができ、したがって重合前にモノマー混合物に添加され、シェルを形成することが意図される保護コロイドとして作用する。明確にするために、本発明の文脈における「安定剤」またはその類似表現は、当該技術分野における通常の意味、すなわち、システムを安定化するために、例えば、消費者製品の適用時またはマイクロカプセルの調製プロセスの間、マイクロカプセルの凝集または凝塊形成を防ぐために添加可能なまたは添加される化合物であると理解されている。前記安定剤の使用は、当業者には標準的な知識である。
【0044】
本発明の目的のために、前記安定剤は、イオン性または非イオン性界面活性剤またはコロイド安定剤であってもよい。かかる安定剤の正確な性質は当業者によく知られている。非限定的な例としては、以下の安定剤が挙げられ得る:非イオン性ポリマー、例えばポリビニルアルコール(Mowiol 18−88、製造元:Fluka)、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース、例えばAmbergum(登録商標)1221(製造元:Aqualon Hercules)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシドとポリエチレンまたはポリプロピレンオキシドとのコポリマー、アルキルアクリレートとN−ビニルピロリドンとのコポリマー;イオン性ポリマー、例えばアクリルアミドとAlcapsol(登録商標)144(製造元:Ciba)などのアクリル酸とのアクリルコポリマー、例えば、アクリル酸とアクリルアミドとのモノマー混合物から生成した酸/アクリルアミドコポリマー(アクリル酸の含有率は20〜80%の範囲である)、酸アニオン性界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、スルホネート基を有するアクリルコポリマー(例えば、ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム、およびビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー。
【0045】
任意に、重合または界面重合により誘導される相分離プロセスによって得られたマイクロカプセルはカチオン性コポリマーでコーティングされていてよい。カチオン性ポリマーは、マイクロカプセルによって生じた負電荷を部分的もしくは完全に中和すること、またはさらには負に荷電したマイクロカプセルを正に荷電したマイクロカプセルに変換することも可能する。この効果のために、本発明によれば、好ましいカチオン性ポリマーは、Salcare(登録商標)SC60(製造元:BASF)などのカチオン性ポリアクリレートおよびアクリルアミド、Ucare(登録商標)(製造元:Amerchol)の商標名で入手可能なものなどのカチオン性セルロース誘導体、およびJaguar(登録商標)(製造元:Rhodia)の商品名で入手可能な4級化グアーガムを含む。使用され得る他のカチオン性化合物としては、ポリクオタニウム化合物(その全てが複数の第4級アンモニウム基を有する)、またはポリマー種、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミドポリマー、例えば、商品名Merquat(登録商標)(製造元:Nalco)の下で入手可能なものが挙げられる。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、コアシェル型マイクロカプセルは、コアがヒドロゲルシェルにカプセル化されたコアセルベーションによって得られる。
【0047】
ヒドロゲルシェルは、タンパク質および場合により非タンパク質ポリマーを含み、かつ疎水性の小滴の周りにコアセルベートを形成する。好ましくは、非タンパク質ポリマーは、タンパク質とは反対に荷電する。これらの材料は親水コロイドとも呼ばれ、水中で、場合により、例えば90℃までの高温で溶解し得るポリマー物質である。これらは、コアセルベーション法において有用であることが一般に知られているタンパク質、多糖類およびポリ酸などのポリマーを包含する。
【0048】
コアセルベーションプロセスは「単純」または「複雑」であっていてよい。前者の意味は、相分離を生じるので単一のタンパク質がカプセル壁を形成するために使用される場合に用いられる。後者の用語は、相分離を引き起こすために第2の反対に荷電した非タンパク質ポリマーの使用を意味する。複雑なコアセルベーション法は、商業的なプロセスで広く実施されており、文献でよく説明されている。特に、米国特許第2800457号明細書(US2800457)と米国特許第2800458号明細書(US2800458)は、複雑なコアセルベーションを非常に詳細に開示している。
【0049】
コアセルベーションプロセスに有用なタンパク質としては、アルブミン、植物性グロブリン、およびゼラチンが挙げられる。タンパク質の分子量は、典型的には40,000〜500,000、好ましくは20,000〜250,000のオーダーである。しかしながら、いくつかのタンパク質凝集体は、これよりもさらに大きな分子量を有していてよい。
【0050】
複合コアセルベーション法において有用な典型的な非タンパク質ポリマーとしては、特に、負に荷電したポリマーが挙げられる。例えば、それらは、アラビアゴム、キサンタン、寒天、アルギン酸塩、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ペクチン酸塩、カラギーナン、ポリアクリル酸およびメタクリル酸、および/またはそれらの混合物から選択されてよい。さらに適切な非タンパク質は、文献から、例えば国際公開第2004/022221号(WO 2004/022221)、第4頁、第27行〜29行から得ることができる。
【0051】
タンパク質および場合により非タンパク質ポリマーは、通常、水に溶解して親水コロイド溶液を形成する。好ましくは、水性の親水コロイド溶液では、タンパク質は0.5〜3.5重量%、より好ましくは1〜2重量%の量で存在する。
【0052】
存在する場合、非タンパク質ポリマーの量は、好ましくは水溶液中で0.5〜3.5重量%、より好ましくは1〜2重量%である。
【0053】
特定の実施形態では、タンパク質と非タンパク質ポリマーとの重量比は、約3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:1、最も好ましくは約3:2である。
【0054】
場合により、架橋剤が典型的には使用されてコーティング層を硬化する。適切な架橋剤としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、クロムミョウバン、またはトランスグルタミナーゼが挙げられる。好ましくは、トランスグルタミナーゼは、ゼラチン1g当たり10〜100、好ましくは30〜60活性単位で使用される。この酵素は十分に説明されており、市販されている。
【0055】
本発明の実施形態によれば、マイクロカプセルの平均サイズは、マイクロカプセルの形成中に系に適用される混合剪断応力に応じて、1マイクロメートル〜1000マイクロメートルの間、またはそれ以上の範囲であり得る。サイズの最適な範囲と分布の選択は、マイクロカプセルが意図される用途に依存し、後者に応じて当業者によって制御および調節され得る。一般的に、本発明によるマイクロカプセルの平均サイズは、1マイクロメートル〜600マイクロメートルの範囲であり、より好ましくは1マイクロメートル〜200マイクロメートルの範囲を含む。
【0056】
上記の重合、界面重合プロセスおよびコアセルベーションにより誘導される相分離プロセスは、カプセル化されるべき式(I)の化合物を含む分散した香油および連続水相からなるエマルションを、シェルによって囲まれたコアからなる固体ビーズの分散液に実質的に変換し、その透過性は、架橋の程度および/またはシェルの厚さを含む多くの要因に依存する。当業者は、所望の透過性を有するシェルを有するカプセルを得るために最適な要因および条件を容易に見出すことができる。
【0057】
本発明の実施形態によれば、相分離、重縮合または界面重合によって得られる本発明のマイクロカプセルは、10〜1000nm、好ましくは20〜500nm、さらにより好ましくは25〜350nmの種々のシェル厚さを有する。一例として、カプセルのシェル厚さは、原子間力顕微鏡(AFM)または走査型電子顕微鏡(SEM)によって決定され得る。シェルを形成するために使用されるモノマーの量および性質は、シェルの厚さを変えることができ、そのため、その透過性を変えることができる。例えば、樹脂の種類が同じ場合、マイクロカプセル樹脂の調製に、より少ないモノマーの使用により、一般により薄い壁のカプセルがもたらされる。モノマーの量が多いほど透過障壁が小さくなり、量が少ないほどより透過しやすいバリアがもたらされる。さらに別の方法は、マイクロカプセルのモノマーの種類を変えることであろう。例えば、Takenate(登録商標)モノマーなどの芳香族イソシアネートはより小さな透過障壁をもたらし、Desmodur(登録商標)N100モノマーなどの脂肪族イソシアネートはより大きな透過障壁をもたらす。また、香油は、(障壁効果を小さくするための)マトリックスカプセル化と比較して(障壁効果を大きくするための)固体壁カプセル化などによって、この差を達成するために様々な方法でカプセル化され得る。当業者は、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートとの混合物に含まれるべき特定の香油成分に応じて、日常的な試験によって、これらの異なる特徴を選択することができる。
【0058】
本発明の実施形態によれば、本発明のマイクロカプセルは、40%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の名目上のコアに対するシェルの重量割合によって特徴付けられ得る。したがって、マイクロカプセルは非常に薄くて壊れやすいシェルを有し得る。コアに対するシェルの比率は、予め水で洗浄されかつろ過により分離されたカプセル化された香料マイクロカプセルの有効量を測定することによって得られる。これは、マイクロ波増強溶媒抽出とその後の抽出液のガスクロマトグラフ分析により、湿ったマイクロカプセルケーキを抽出することによって達成される。名目上のコアに対するシェルの重量割合は、挑戦する媒体の安定性の点だけでなく、嗅覚性能の点でも送達システムの性能に強い影響を及ぼす。当業者は、マイクロカプセルの使用に関して適切な性能を有するマイクロカプセルを得るために、最も適切な名目上のコアに対するシェルの質量割合を設定することが可能である。
【0059】
本発明のマイクロカプセルは、典型的には、20〜55%の固形分を有する水性スラリーの形で提供され、その際、「固形分」との用語はマイクロカプセルの全重量に対するものである。スラリーは、マイクロカプセル、水、およびマイクロカプセルを作るための前駆体材料を含む。スラリーは、重合プロセスのための活性剤および/またはpH緩衝剤などの他の微量成分を含み得る。スラリーに、ホルムアルデヒド捕捉剤が添加されてもよい。
【0060】
特定の実施形態によれば、上記方法のいずれかによって得られたカプセルスラリーはさらに乾燥することができる。当業者に知られている乾燥方法、例えば、これに限定されるものではないが、2流体ノズル、回転ノズルまたは超音波ノズルなどの異なる構造の噴霧装置を備えた並流または向流空気流を有する流動床または噴霧乾燥塔を使用することができる。特に、スラリーは、好ましくはポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、デキストリン、マルトデキストリン、グルコースシロップ、天然または化工デンプン、植物性ガム、アラビアゴム、ペクチン、キサンテン、アルギン酸塩、カラギーナンまたはセルロース誘導体などのポリマー担体材料の存在下で噴霧乾燥されて、マイクロカプセルを粉末形態で提供し得る。広い範囲の適切な噴霧乾燥構造は、GEA−Niro(デンマーク)のような企業から入手可能である。
【0061】
特定の実施形態によれば、上記方法のいずれかによって得られたカプセルスラリーは、当業者に公知の押出方法、例えば、これに限定されるものではないが、球形化、ギア−ポンプ、ピストン押出、一軸スクリュー押出、二軸スクリュー共回転押出、二軸スクリュー逆回転押出によって押し出されるべき熱可塑性担体とさらに混合することができる。二軸スクリュー押出機は、従来から当該技術分野で知られているように、混合領域、溶融領域、均質化領域または通気領域等を得るために異なるスクリュー構造を有し得る。本発明のカプセルを埋め込んで得られた溶融塊は、急冷、粉砕、ダイフェースのペレット化、成形を含むが、これに限定されない方法によってさらに処理して粒状にすることができる。広い範囲の適切な押出構造は、BrabenderまたはCoperion(独国)のような企業から入手可能である。「熱可塑性担体」との用語は、当業者によって理解される通常の意味、すなわち、熱可塑性担体は、特定の温度を上回ると軟らかくなり、冷却時に硬くなる材料であることを意味する。この材料は軟らかい状態である時、成形することができる。この材料は、その熱可塑性特性を失うことなく数時間加熱することができる。
【0062】
このスラリーは、配合助剤、例えば安定化剤および粘度調整親水コロイド、殺生物剤を含有していてよく、場合によっては、ホルムアルデヒド捕捉剤であってもよい。
【0063】
水性相は、マイクロカプセルの密度を調整するために、有利にはシリカ粒子または酸化チタンなどの親水性無機粒子を含むこともできる。そうすることで、マイクロカプセルの密度を、それらを導入することが意図される最終製品の密度と同様の値にすることができ、したがってマイクロカプセルは均一に維持され、かかる液体製品中に均一に懸濁され、分散される。このことは特に、付香成分の比重が通常は1g/mlより低いため、付香マイクロカプセルにおいて有利である。
【0064】
本発明によるマイクロカプセルは、適用配合物に保存される間、香油を早期の劣化から保護し、標的基材が消費者製品で処理されると、その基材上への香油の堆積を増加させる。
【0065】
本発明の実施形態によれば、本発明のマイクロカプセルは、遊離油相とのおよび/または他のマイクロカプセルとの混合物としてまたは従来技術の他の種類の送達技術として使用してもよい。
【0066】
場合によって、本発明のマイクロカプセルは、遠心分離および数回の再懸濁により洗浄される。別の任意の工程では、記載されたプロセスから得られたスラリーからマイクロカプセルを単離することができる。
【0067】
以下の実施例に示すように、本発明のマイクロカプセルは、カプセル化されたバニリンまたはエチルバニリンと比較して優れた強さのバニラ香気ノートを付与する特に良好な送達システムを提供する。
【0068】
別の態様では、本発明は、長時間持続する強いバニラノートを送達するための付香組成物または付香された消費者製品における上記のマイクロカプセルの使用に関する。換言すれば、本発明は、上記で定義したマイクロカプセルを表面に適用することを含む、バニラ香気ノートを付与する、強化する、改善する、または変更する方法に関する。
【0069】
本発明のマイクロカプセルは、封入されたバニラ香料の制御放出に有利に使用することができる。したがって、これらのマイクロカプセルを、付香成分として付香組成物または付香された消費者製品中に含むことが特に評価される。本発明はまた、本発明のマイクロカプセルの使用による付香および悪臭中和方法に関する。
【0070】
したがって、本発明の別の対象は、付香組成物であって、
i)付香成分として、上記で定義したマイクロカプセル;
ii)香料キャリヤーおよび付香補助成分からなる群から選択される少なくとも1つの成分;および
iii)任意に少なくとも1つの香料補助剤
を含む前記付香組成物である。
【0071】
「香料キャリヤー」とは、本明細書では、香料の観点から実質的に中性の材料、すなわち、付香成分の感覚刺激特性を大きく変えない材料を意味する。前記キャリヤーは液体または固体であっていてよい。
【0072】
液体キャリヤーとしては、非限定的な例として、乳化系、すなわち溶媒および界面活性剤系、または香料に一般的に使用される溶媒が挙げられ得る。香料によく使用される溶媒の性質と種類の詳細な説明は網羅することができない。しかしながら、非限定的な例として、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシエトキシ)−1−エタノールなどの溶媒に加えて、先に挙げたカプセルを形成するのに使用できる溶媒も挙げることができる。香料キャリヤーと付香補助成分の両方を含む組成物の場合、前述したもの以外の他の適切な香料キャリヤーは、エタノール、水/エタノール混合物、リモネンまたは他のテルペン、イソパラフィン、例えば、Isopar(登録商標)(製造元:Exxon Chemical)の商標で知られているものまたはグリコールエーテルおよびグリコールエーテルエステル、例えば、Dowanol(登録商標)(製造元:Dow Chemical Company)の商標で知られているものであっていてよい。
【0073】
固体キャリヤーとしては、非限定的な例として、吸収ガムまたはポリマー、またはさらにカプセル化材料が挙げられ得る。かかる材料の例は、壁形成および可塑化材料、例えばモノ、ジまたはトリサッカリド、天然または化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質またはペクチン、またはさらにH. Scherz, Hydrokolloide: Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s Verlag GmbH & Co., Hamburg, 1996などの参照テキストに挙げられた材料を含み得る。カプセル化は、当業者によく知られた方法であり、例えば、噴霧乾燥、凝集またはさらに押出しなどの技術を用いて実施されていてよく;またはコアセルベーションおよび複合コアセルベーション技術を含むコーティングカプセル化からなる。
【0074】
「付香補助成分」との用語は、上記で定義した付香成分に相当する。「香料補助剤」は上記で定義した通りである。
【0075】
上記で定義した本発明のマイクロカプセルおよび少なくとも1つの香料キャリヤーからなる本発明の組成物は、本発明の特定の実施形態を表す。
【0076】
さらに、上記で定義したマイクロカプセルまたはかかるマイクロカプセルを含む付香組成物は、悪臭の形成を防止するためにおよび/または上記で定義した前記マイクロカプセルが添加される消費者製品の匂いを積極的に付与または変更するために、現代香料の全ての分野、すなわち、香水または機能性香料においても有利に使用され得る。
【0077】
下記の実施例に示すように、本発明のマイクロカプセルは、良好な嗅覚性能を示し、カプセルが壊れた時にバニラ系の香気ノートまたは優れた強さを付与する。それらは、式(I)のカプセル化化合物の制御放出または誘発放出をもたらし、前記化合物はマイクロカプセルから徐放され、したがって香料の長時間の持続性および強さを著しく改善する。
【0078】
その結果、本発明の別の対象は、付香成分として、上記で定義したマイクロカプセルを含む付香消費者製品によって表される。
【0079】
本発明のマイクロカプセルは、そのままで、または本発明の付香組成物の一部として添加することができる。
【0080】
明確にするために、「付香消費者製品」とは、それが適用される表面(例えば、皮膚、毛髪、テキスタイル、または家庭表面)にまたは周囲空気中に少なくとも心地良い付香効果を送達することが期待される消費者製品を意味することが述べられるべきである。換言すれば、本発明による付香消費者製品は、機能性配合物、ならびに所望の消費者製品に対応する任意に追加される有益剤、例えば洗剤またはエアフレッシュナー、および嗅覚有効量の少なくとも1つの本発明のマイクロカプセルを含む製品である。明確にするために、前記付香消費者製品は非食用製品である。
【0081】
香料消費者製品の成分の性質と種類は、本明細書においてより詳細な説明は行わないが、いかなる場合も網羅的ではなく、当業者は、自身の一般的な知識に基づいて、そして前記製品の性質および所望の効果に従ってそれらを選択することができる。
【0082】
適切な香料消費者製品の非限定的な例は、香水、例えばファインパフューム、コロンまたはアフターシェーブローション;布地ケア製品、例えば液体または固体洗剤、布地用柔軟剤、ファブリックリフレッシャー、アイロン掛け水、紙、または漂白剤;ボディケア製品、例えばヘアケア製品(例えば、シャンプー、カラーリング調製物またはヘアスプレー)、化粧品調製物(例えば、バニシングクリームまたはデオドラントまたは制汗剤)、またはスキンケア製品(例えば、付香石けん、シャワーもしくはバス用のムース、オイルもしくはジェル、または衛生用品);空気ケア製品、例えばエアフレッシュナーまたは「すぐに使用できる」粉末エアフレッシュナー;またはホームケア製品、例えばワイプ、食器用洗剤または硬質表面洗剤またはリフレッシャー;または悪臭を中和する衛生製品;または吸収パッドの形のペット製品、リター、クレンザーならびにリフレッシュおよび付香スプレーおよび製品であり得る。好ましくは、消費者製品は布地ケア製品である。好ましくは、消費者製品はソープバーまたは液体洗剤である。
【0083】
本発明のカプセルは、消費者製品を付香するためにそのまま使用されていてよく、その場合、反応混合物は、上記の実施形態のいずれかに定義されるように消費者製品に直接添加される。あるいは、本発明のマイクロカプセルは、消費者製品に組み込まれる前に反応混合物から単離されてよい。同様に、本発明のマイクロカプセルを含む反応混合物は、洗浄粉末または粉末洗剤などの乾燥した粉末製品と混合されるかまたはその上に噴霧されてよく、あるいはマイクロカプセルは乾燥されて固体の形でこれらの製品に添加されてもよい。マイクロカプセルは、例えば上記に定義したように噴霧乾燥されていてよい。
【0084】
本発明によるマイクロカプセルが種々の前記物品または組成物に組み込まれ得る割合は、広い範囲の値内で変動する。これらの値は、本発明によるマイクロカプセルが付香補助成分、溶媒または当該技術分野で通常使用される添加剤と混合される時の、付香されるべき物品の性質および所望の感覚刺激効果ならびに所与のベース中の補助成分の性質に依存する。
【0085】
例えば、付香組成物の場合、典型的な濃度は、それらが導入される組成物の重量を基準として、0.001重量%〜5重量%、またはそれ以上のオーダーの本発明のマイクロカプセルである。これらのマイクロカプセルが付香された物品に導入される場合、これらよりも低い濃度、例えば0.01重量%〜1重量%のオーダー(パーセンテージは物品の重量に対する)で使用され得る。
【0086】
本発明のマイクロカプセルを組み込むことができる消費者製品ベースの配合物は、かかる製品に関連する豊富な文献に見出され得る。これらの配合物は、本明細書では詳細な説明を行わず、いかなる場合も網羅されないだろう。このような消費者製品を配合する当業者は、一般的知識および入手可能な文献に基づいて、適切な成分を完全に選択することができる。特に、かかる配合物の例は、かかる製品に関する特許および特許出願、例えば国際公開第2008/016684号(WO2008/016684)(第10頁〜14頁)、米国特許出願公開第2007/0202063号明細書(US2007/0202063)(段落[0044]〜[0099])、国際公開第2007/062833号(WO 2007/062833)(第26頁〜44頁)、国際公開第2007/062733号(WO 2007/062733)(第22頁〜40頁)、国際公開第2005/054422号(WO 2005/054422)(第4頁〜9頁)、欧州特許第1741775号明細書(EP 1741775)、英国特許第2432843号明細書(GB2432843)、英国特許第2432850号明細書(GB2432850)、英国特許第2432851号明細書(GB2432851)または英国特許第2432852号明細書(GB2432852)に見出され得る。
【0087】
本発明の最後の対象は、長時間持続するバニラ系ノートを送達するための上記で定義したマイクロカプセルの付香成分としての使用である。
【0088】
実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態をさらに例示し、従来技術の教示に対して本発明の利点をさらに実証する。
【0089】
省略形は当該技術分野における通常の意味を有し、温度は摂氏(℃)で示される。
【0090】
実施例1
2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含むポリウレアマイクロカプセルとバニリンを含有する対照のポリウレアマイクロカプセルとの調製:
2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含むポリウレアマイクロカプセルの一般的な手順
200mLの反応器(Schmizo、スイス)中で、安息香酸ベンジル中の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの30%溶液とタケネート(Takenate)(登録商標)D−110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、製造元:三井化学株式会社、日本)を、ウルトラタラックス(Ultra-turrax)ローター・ステーターを用いて24,000rpmで3分間(pH=5.1)、ポリ(ビニルアルコール)の溶液(2重量%、Mowiol(登録商標)18−88、アルドリッチ、スイス)中に乳化させた。炭酸グアニジン水溶液をゆっくりと撹拌しながら(300rpm、アンカー)、室温で1時間滴下した。エマルションを1時間以内に室温から70℃まで温め、反応混合物を70℃でさらに2時間加熱して白色のカプセル分散液(pH7.6)を得た。
【0091】
カプセルA〜C
本発明によるポリウレアマイクロカプセル(カプセルA〜C)を、以下の成分を用いて上記で定義した一般的な手順に従って調製した:
【表1】
【0092】
バニリンを含む対照のポリウレアマイクロカプセルの調製:
バニリンを含むポリウレアマイクロカプセルの一般的な手順
200mLの反応器(Schmizo、スイス)中で、安息香酸ベンジル中のバニリンの10%溶液とタケネート(登録商標)D−110N(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、製造元:三井化学株式会社、日本)を、ウルトラタラックスローター・ステーターを用いて24,000rpmで3分間(pH=5.1)、ポリ(ビニルアルコール)の溶液(2重量%、Mowiol(登録商標)18−88、アルドリッチ、スイス)中に乳化させた。炭酸グアニジン水溶液をゆっくりと撹拌しながら(300rpm、アンカー)、室温で1時間滴下した。エマルションを1時間以内に室温から70℃まで温め、反応混合物を70℃でさらに2時間加熱して白色のカプセル分散液(pH7.6)を得た。
【0093】
対照のカプセルD〜F
バニリンを含むポリウレアマイクロカプセル(カプセルD〜F)を以下の成分を用いて上記の一般的な手順に従って調製した:
【表2】
【0094】
安息香酸ベンジル中のバニリンの溶液は10%のバニリン(最大)を含有していた。このことは、バニリンが、得られたマイクロカプセルの全重量に対して、カプセルD中に8.2重量%の量で、カプセルE中に9.1%の量で、カプセルF中に9.4%の量で存在したことを意味する。
【0095】
それに対して、安息香酸ベンジル中の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの溶液は、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを、10%を上回って、さらに20%を上回って、さらには25%を上回って含有し得る。
【0096】
バニリンに比べて3倍多くの2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートをカプセルのコアに充填することができた。
【0097】
実施例2
対照のマイクロカプセルと比較した本発明のマイクロカプセルの嗅覚性能
マイクロカプセルの綿上への付着の手順
正方形の綿布(12cm×12cm)をカットした。付着領域を直径10センチの円の形で区切った。各カプセルについて、統計的測定値を得るために4つの試料を分析した。マイクロカプセルの各分散液を水で100倍に希釈した。希釈した分散液(1g)を、布上の円形に端から中央まで付着させた。布を24時間乾燥させた。
【0098】
擦った後の香料放出の測定
AFFIRM(登録商標)は、APCI(大気化学イオン化源とMS−Noseインターフェース)を備えたシングル四重極質量分析計である。これらの実験の過程で使用された操作パラメータを以下に示す。
ソース温度105℃
加熱移送ライン150℃
加熱窒素移送ライン105℃
サンプリング流量50mL/分〜100mL/分
ソースガス流量10L/分
イオン化電圧3.8kV
コーン電圧14V
【0099】
擦る前に、試料を1Lのビーカーに入れ、続いてヘッドスペースをアルミホイルで密閉し、2分間平衡させた。次にMS−Noseのサンプリングプローブでホイルに穴を開け、ヘッドスペースを1分間サンプリングした(サンプリング流量50mL/分〜100mL/分)。次にタオルを取り出し、制御した条件下で10回擦った。擦った後、これをすぐに第2の1Lガラスビーカーに入れ、アルミホイルで再度密封し、2分間平衡させた。MS−Noseサンプリングプローブでアルミホイルに穴を開け、ヘッドスペースを1分間測定した。擦った後の測定値から初期(擦っていない)測定値を差し引いて芳香の放出を測定した。各試料について3回繰り返し行って再現性を測定した。異なる試料を擦る前後にヘッドスペース分析から得られた結果を
図1〜5にまとめる。
【0100】
図1において:
(白ひし形)は、マイクロカプセルの全重量に対して、それぞれ81.5重量%、91.5重量%、および94.1重量%のオイル、ならびに8.2重量%、9.1重量%、および9.4重量%のバニリンを含有するカプセルD〜Fに相当する。
(黒四角)は、マイクロカプセルの全重量に対して、それぞれ81.5重量%、91.5重量%、および94.1重量%のオイル、ならびに24.5重量%、27.4重量%および28.2重量%の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含有するカプセルA〜Cに相当する。
【0101】
驚くべきことに、
図1に示すように、擦った後に放出される成分の強さは、バニリンを含有するマイクロカプセル(カプセルD〜F)の強さよりも、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含有するマイクロカプセル(カプセルA〜C)の強さの方が予想以上に比例して強い。実際、カプセルA〜Cの充填量はカプセルD〜Fよりも3倍高いのに対して、カプセルA〜Cの擦過後の強度はカプセルD〜Fに比べて少なくとも100倍高い。
【0102】
図2〜5は、擦り前後のマイクロカプセルから放出されたバニリン(
図3、
図5)は、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネート(
図2、および
図4)の強度を示す。2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含有するカプセルは、バニリンカプセルよりも明らかに優れていた。
【0103】
実施例3
本発明の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含むメラミンマイクロカプセルの調製:
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂の溶液(Urecoll SMV、製造元:BASF、独国、およびCymel 9370、製造元:Allnex、ベルギー)を室温(室温、pH6.60)で調製した。この溶液(pH5.10)に酢酸(0.18g)を加えた。これを室温で1時間撹拌した。安息香酸ベンジル(30重量%、34.62g、製造元:フィルメニッヒSA、スイス)中の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの溶液を加え、反応混合物を、ウルトラタラックス(登録商標)を用いて24,000rpmで2分間撹拌した。得られたエマルションを、アンカーを用いて300rpmで撹拌し、80℃で1.5時間加熱した。最終分散液を室温まで冷却し、水酸化ナトリウム溶液(30重量%、0.45g、pH6.74)で中和した。
【0104】
実施例4
スラリー中のバニラノートを付与する成分の定量−国際公開第2014059087号(WO2014059087)による比較例
a)マイクロカプセルスラリーの調製
i)2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートを含む本発明のマイクロカプセルスラリー−マイクロカプセルスラリーAの調製
このマイクロカプセルスラリーを、実施例3に記載したように調製した。
【0105】
ii)バニリンを含む対照のマイクロカプセルスラリー−対照のマイクロカプセルスラリーBの調製
対照のマイクロカプセルスラリーBを実施例3に記載のプロトコルに従って調製した。2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの溶液を、安息香酸ベンジル(10重量%、34.62g、製造元:フィルメニッヒSA、スイス)中のバニリンの溶液に置き換えた。
【0106】
iii)国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されるネオビーを含む対照のマイクロカプセルスラリー−対照のマイクロカプセルスラリーCの調製
対照のマイクロカプセルスラリーCを、実施例3に記載されたプロトコルに従って調製した。2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの溶液をネオビーM5オイル(34.62g)に置き換えた。
【0107】
b)国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されるバニリンを含む溶液の調製
ジイソプロピレングリコール(8.00g)中のバニリン(2.00g)の溶液を調製した(溶液A)。この溶液Aをネオビーオイル(0.57g)およびTween(登録商標)20(0.2869g、製造元:シグマアルドリッチ、スイス)と混合して、文献の国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載される溶液Bを調製した。
【0108】
c)バニリンおよびマイクロカプセルスラリーA〜Cを含む溶液Bのエイジングによる国際公開第2014059087号(WO2014059087)に定義した方法に従うバニリンの脆いシェルコアマイクロカプセル組成物(分散液A〜C)の調製
上記で調製した溶液B(2.50g)を、上記で調製したマイクロカプセルスラリーA、BまたはC(47.146g)と混合し、少なくとも24時間エイジングさせると、白色の分散液(それぞれ分散液A、分散液B、分散液C)が得られた。
【0109】
d)分散液A〜Cの抽出および定量
これらの分散液;すなわち、分散液Aおよび比較分散液BまたはC(5.00g)を、酢酸エチル(5mL)で抽出し、バニリンおよび/または2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの量をGC(表3)により測定した。この抽出および定量により、スラリー中にある;すなわち、マイクロカプセルのコア中にはない、バニリンおよび/または2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの量を測定することができる。スラリー中のバニリンの予想される量は9.2mg/mlである。スラリー中のバニリンの量が少ないということは、溶液Bからのバニリンの一部がマイクロカプセルのコアの内部に拡散したことを意味する。スラリー中のバニリンがより多量であることが対照の分散液Bの場合のみ予想されており、このことは、カプセルのコアからのバニリンの一部がマイクロカプセルの外に拡散したことを意味する。実験は三重に行った。
【表3】
【0110】
国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されているバニリンの溶液中で少なくとも24時間エイジングさせた本発明のマイクロカプセルに対応する分散液Aの抽出および定量は、約13.2mg/mlのバニリンがスラリー中に存在することを示した(予想されるスラリー中のバニリンの量は9.2mg/mlであり、この差は予想される実験誤差の範囲内である)。組成物中のバニリンの量はカプセルのコア中にはない。バニリンはカプセルのコア内に拡散しないがスラリー中に留まる。さらに、ほんの少量の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートがカプセルのコアから漏れる(またはカプセル化されない)ことが示された。
【0111】
2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートが、カプセルのコア中でバニリンで置き換えられ、前記マイクロカプセルが国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されているバニリンの溶液(対照分散液B)中で少なくとも24時間エイジングされた場合、溶液中の初期量よりもかなり多量のバニリンがスラリー中に存在したことが示され、すなわち、カプセルのコア中には存在しなかったことが示された。このことは、多量のバニリンがカプセルのコアから漏れ出したかまたはカプセル化されなかったことを実証する。
【0112】
国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されているバニリンの脆いシェルコアマイクロカプセル組成物に対応する対照の分散液Cの抽出および定量は、約11.9mg/mlのバニリンがスラリー中に存在することを示した。このスラリー中のバニリンの抽出量は、工程b)で調製した溶液の全てのバニリンが、エイジング後にスラリー中に存在することを意味する。そのため、国際公開第2014059087号(WO2014059087)に定義した組成物中の大部分の量のバニリンが本発明とは対照的にカプセルのコア中に存在せず、その際、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートが主としてマイクロカプセルのコア中に存在する。長時間持続する嗅覚的体験の利益を得るために、スラリー中だけでなく、カプセルのコア内に大部分の付香成分を有することが重要である。
【0113】
これらのデータから、分散液A中のカプセルの安定性は、少量の2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートしかスラリー中に見出されなかったので、比較分散液Bからのカプセルの安定性よりはるかに高いことが示された。結果として、2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートのカプセル化は、バニリンを用いて調製した同じカプセルよりも安定した送達システムを提供するが、これは予想外であった。さらに、これらのデータは、国際公開第2014059087号(WO2014059087)に記載されるバニリンの脆いシェルコアマイクロカプセル組成物では、本発明とは対照的に、ほんのわずかな量のバニリンがマイクロカプセルのコア中に存在し、このことによりカプセルのコア中に多量のバニリンノートを付与する成分を導入することができたことを示した。
【0114】
実施例4
本発明のカプセルまたは対照のカプセルを含む布地用柔軟剤製品およびその嗅覚的評価
バニリンまたは2−メトキシ−4−メチルフェニルメチルカーボネートの遊離を、次の最終組成を有する布地用柔軟剤を使用して布地柔軟化用途で試験した:
Stepantex(登録商標)VL90A(製造元:Stepan) 16.5重量%
塩化カルシウム(10%水溶液) 0.6重量%
水 82.9重量%。
【0115】
a)従来技術の国際公開第2014059087号(WO2014059087)の比較の脆いシェルコアマイクロカプセル組成物を含有する試料
バイアル中で、バニリン(0.1g)、DIPG(0.4g)、ネオビーM5(0.029g)およびTween 20(0.014g)を、実施例4a)iii)(9.42g)の対照マイクロカプセルスラリーに溶解した。得られた分散液(0.5g)を布地用柔軟剤配合物(5.0g)中に分散させた。次に布地用柔軟剤(0.012g)をバイアル中の水(4.12mL)に分散させた。ウール見本(0.88g、Z.0537−5、Testex、独国)をバイアルに入れ、2分間撹拌した。ウール見本を抜き取って絞り、2.2g(見本+水)の重量を得た。
【0116】
b)本発明のメラミンマイクロカプセルを含有する試料
バイアル中で、実施例3のマイクロカプセルスラリー(0.1g)を布地用柔軟剤配合物(10.0g)中に分散させた。次に布地用柔軟剤(0.012g)をバイアル中の水(4.12mL)に分散させた。ウール見本(0.88g)をバイアルに入れ、2分間撹拌する。ウール見本を抜き取って絞り、2.2g(見本+水)の重量を得た。
【0117】
c)ウール見本におけるバニラ強度の評価:
処理したウール見本を室温で24時間ライン乾燥させた。香料の強さを、1(無臭)〜7(非常に強い)の範囲の目盛りを用いて、1日後に3人のパネリストにより、見本の擦り前後の強度で評価した。結果を第4表にまとめる。
【表4】
【0118】
結果は、本発明のカプセルからのより強力な強さと擦った後の布における知覚可能なバニラノートにより、国際公開第2014059087号(WO2014059087)に報告されたマイクロカプセル組成物よりも本発明のカプセルの性能が良好であることが実証されたことを示した。