【課題を解決するための手段】
【0006】
真空断熱パネルにおいて、上記の問題は概して下記のようにして解決されている。
a) 少なくとも内側フィルムが、エチレンビニルアルコール共重合体からなり好適には金属化された少なくとも1つの層、特に、標準状態(23℃、外部相対湿度50%)にて透過度0.003cm
3/(m
2*d)以下の層を含んでいる。
b) シェル材料が、真空断熱パネルの面について少なくとも100g/m
2の面密度で存在する乾燥剤を含んでいる。そして、温度T=23℃、ならびに、温度T=23℃および全大気圧p=p
atmに対応する全空気圧pにおける飽和蒸気圧p
H2O,satよりも小さい低圧p
H2O(p
H2O<p
sat)において、乾燥剤の水蒸気吸着等温式Θ
H2O=Θ
H2O(p
H2O)
T=23℃は、下記式にしたがってラングミュア曲線Θ
H2O,Lにより最小化され得る。
【0007】
Θ
H2O=Θ
H2O(p
H2O)|
T=23℃≧Θ
H2O,L=K
L*p
H2O/[1+K
L*p
H2O]
ここで、p
H2Oは水蒸気分圧であり、Θ
H2O=q/q
maxは、温度T=23℃、全大気圧p
atmにおける材料の最大水蒸気吸収能q
maxに対する水蒸気吸収q=m
H2O/m
TMの比率であり、ラングミュア定数はK
L=10
2bar
-1以上、好適にはK
L=10
3bar
-1以上、特定的にはK
L=10
4bar
-1以上である。
【0008】
また、シェル材料によって少なくとも所定領域において互いに分離された2フィルムを含む構造体を用いることにより2段仕切り構造が得られる。この2段仕切り構造においては、外側フィルムをガスまたは蒸気が透過しない限り、内側フィルムは実質的に加圧されていない状態に当初維持される。しかしながら、ガスまたは蒸気の透過が生じた場合にも、内側フィルムにおける圧力差は最初はほとんど増加せず、そして、外側フィルムが内側フィルムから持ち上げられていることから、少なくとも所定領域において徐々にしか増加しない。また、この理由により、シェル材料の所定領域において、受容体積は、空の空間つまり比較的多量の充填ガスを受け入れる空の空間を有して存在し、これによって間隙で急速に圧力が上昇することが防止される。エチレンビニルアルコール共重合体からなる少なくとも1つの層を有する内側フィルムは、異なるガスおよび/または蒸気について異なる気密性の値に設定される。しかしながら、内側フィルムの気密性を、大気中ガス、すなわち、窒素(N
2)、酸素(O
2)、水素(H
2)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)およびクリプトン(Kr)などの希ガス、同様に、二酸化炭素(CO
2)、メタン(CH
4)について、水蒸気(H
2O)に加えて同等に設定することは困難またはほとんど不可能である。上述のガスに対する良好な気密性は、一般的には、水蒸気に対する気密性を低下させることにより実現される。本発明の実施形態にかかる二重フィルム構造体は、水蒸気を内側フィルムから可能な限り遠ざけるために有効に用いられ得る。この目的のために、他方で、特に水蒸気に対して良好または極めて優れた気密性を有する外側フィルム材料を用いてもよい。しかしながら、100%の気密性が達成されることはない。したがって、本発明においては、あらゆる予防策にもかかわらず2つのフィルム間に侵入する水蒸気は乾燥剤を用いて吸収することを二次的手段として提供し、これによって、2フィルム間の空隙における水蒸気分圧p
H2O、2を、可能な限り長期にわたって、1mbar以下の低い値、例えば0.5mbar以下、好適には0.2mbar以下、特定的には0.1mbar以下の低い値に保つようにする。その結果、上記の水蒸気分圧の少差Δp
H2O=p
H2O,2−p
H2O,1により、内側フィルムを通る水蒸気分子の顕著な拡散はほとんどないものとなる。これは内側フィルムの対水蒸気気密性が限定されたものであっても実現される。ただし、あらゆる乾燥剤がこの目的に適合するわけではなく、乾燥剤は、かなりの水分吸収性を示すにもかかわらず、低い水蒸気分圧p
H2Oを保証できるものでなければならない。本発明者は、この特性が、水蒸気吸着等温曲線Θ
H2O=Θ
H2O(p
H2O)
T=23℃(ただし温度T=23℃、飽和蒸気圧p
H2O,satよりも低い低分圧p
H2O(p
H2O<p
H2O,sat)の場合)に関連付けられることを見出した。また、その程度は大きく減ずるものの、使用する乾燥剤の絶対水蒸気吸収能に関連付けられることを見出した。これは、乾燥剤の水蒸気吸収能は、通常、湿度50%における水蒸気分圧について示されている、つまり、p
H2O=0.5*p
H2O,satであり、後者は室温23℃大気圧p=p
atm下で約30mbarであることから、これらの表示は典型的には約15mbarの水蒸気分圧の場合について言及していることに由来する。しかし、乾燥剤の多くにあっては、水蒸気吸収能は、水蒸気分圧の低下とともに急速に低下する。すなわち、ここで要求されている約1mbar以下の水蒸気分圧においては、このような乾燥剤が相当量の水蒸気を吸収することは困難である。しかしながら、乾燥剤の中には、温度T=23℃、飽和蒸気圧p
H2O,sat未満の低い水蒸気分圧p
H2O(つまり、p
H2O<p
H2O,sat|
T=23℃
,p=patm)において、その水蒸気吸着等温線Θ
H2O=Θ
H2O(p
H2O)
T=23℃が、式Θ
H2O=Θ
H2O(p
H2O)|
T=23℃≧Θ
L=K
L*p
H2O/[1+K
L*p
H2O]にしたがってラングミュア曲線Θ
H2O,Lにより最小化され得るものが存在する。このときのラングミュア定数はK
L=10
2bar
-1以上、好適にはK
L=10
3bar
-1以上、特定的にはK
L=10
4bar
-1以上である。理想真空状態すなわち水蒸気分圧p
H2O=0においては上記曲線はゼロ点を有し、有限の真空であったとしてもこの点において水蒸気吸収能はゼロに近づく(ここでp
H2O≒0ただしp
H2O>0)のではあるが、ラングミュア曲線Θ
H2O,Lおよびこの理想曲線によって最小化された実際の水蒸気吸収等温式は、急上昇すなわち傾きK
L≧100bar
-1または傾きK
L≧1000bar
-1もしくは傾きK
L≧10000bar
-1もの傾きで上昇する。乾燥剤の相対的ローディングΘ
H2Oは、最大水吸収能q
maxに対する実際のローディングqとして定義されるが、この相対ローディングは最大値を1と想定することができる。一定の傾きK
L=10000bar
-1である場合、水蒸気分圧p
H2Oの時点で、既にこの値に達していることがある(Θ
H2O=K
L*p
H2O=10000bar
-1*0.1mbar=1)。ただし、実際のラングミュア曲線Θ
H2O,Lの進行は平らになり、p
H2O=0.1mbarにおいて、Θ
H2O=K
L*p
H2O/[1+K
L*p
H2O]=10000bar
-1*0.1mbar/[1+10000bar
-1*0.1mbar]=1/[1+1]=0.5の値にしか達しない。しかしながら、このことはなお実効水蒸気吸収能が、要求される水蒸気分圧p
H2O=0.1において、最大水蒸気吸収能q
maxの50%もあることを意味している。したがって、最大水蒸気吸収能q
max=m
H2O,max/m
TM=0.2、すなわち、乾燥剤が自身重量つまり乾燥質量m
TMの最大20%まで吸収可能(水中にあっては水分量m
H2O,max=0.2
*m
TM)である場合において、水蒸気分圧p
H2O=0.1mbarにおける実効水吸収能qは、乾燥状態における乾燥剤重量m
TMの10%となる。したがって、乾燥剤の面密度が100g/m
2である場合、10g/m
2の量と想定することができる。このことは次のことを意味する。つまり、このような乾燥剤は、2フィルム間の空間内において、温度23℃の場合に真空断熱パネルの単位面積(m
2)当たり10gの水分を、水蒸気分圧0.1mbarを超えさせることなく吸収することができる。
【0009】
温度23℃での乾燥剤による水分吸収が、乾燥状態における乾燥剤自身重量の10%を超えることがない限り、本発明によれば、2フィルム間の空間内における水蒸気分圧は0.1mbar以下に保たれる。この基準は、本発明に適した乾燥剤と、この関係を満足せず適しない乾燥剤とを区別するものとしても用いられ得る。
【0010】
ラングミュア曲線Θ
H2O,L=K
L*p
H2O/[1+K
L*p
H2O]は、下記を考慮した結果となる。
【0011】
対象の乾燥剤は、その表面(内側表面)において、粒子つまり水蒸気分子で満たされた付加サイト(SP)とともに、潜在的な空の付加サイト(S*)を有している。また、ガス体積中には、多数の粒子つまり水蒸気分子(P)が存在している。充填された付加サイト(SP)の数はH
2O分子による乾燥剤のローディングΘ
H2Oに比例し、空の付加サイト(S*)の数は1−Θ
H2Oに比例し、ガス体積中の水蒸気分子(P)の数は水蒸気分圧p
H2Oに比例する。濃度[S*]=c(S*)、[SP]=c(SP)、[P]=c(P)とすると、温度Tが一定(例えばT=23℃)の場合において、下記のように平衡定数K
Lが計算されてよい。
【0012】
K
L=[SP]/[S*][P]
また、上記の関係を用いて下記の式が得られる。
【0013】
K
L=Θ
H2O/[(1−Θ
H2O)*p
H2O]
この式は、次のように変形されてよい。
【0014】
Θ
H2O=K
L*[(1−Θ
H2O)*p
H2O]
Θ
H2O[1+K
L*p
H2O]=K
L*p
H2O
Θ
H2O=K
L*p
H2O/[1+K
L*p
H2O]
このことはラングミュア定数K
Lが、まさしく「反応」についての平衡定数であることを意味している。
【0015】
S*+P←→SP
この反応は異なる速度で双方向において生じるものである。K
Lが大きくなるほど、脱離に対して吸収がより強く優位になる。したがって、本発明の特徴であるこのパラメータK
Lは、乾燥剤の、例えば乾燥剤の内部における潜在的なロード可能サイトを水分子が満たす傾向または親和性を示す基準となる。特に、水分子が少量しか存在しておらず、つまり低分圧時の基準となる。一方で、最大水吸収能q
max(多くの場合、乾燥剤について言明されている)は、乾燥剤の潜在的なロード可能サイトの数についての基準となる。ただし、最大水吸収能q
maxは、対象となる乾燥剤が実存するロード可能サイトを実際に充填しようとする傾向については情報を与えるものではない。
【0016】
ここでK
L=[SP]/[S*][P]であるので、ラングミュア定数K
Lは、自由エンタルピーすなわちギブスのエネルギーΔG(T=23℃)も下記の式にしたがって決定する。
【0017】
ΔG=ΔG°+RT*lnK
L
ここで、R=8.314472(15)Jmol
-1K
-1は一般気体定数であり、Tはケルビンで表される絶対温度であり、具体的にはT=296.15ケルビンである。
【0018】
しかしながら、上記の式は厳密には化学反応ではない。なぜなら、乾燥剤の(内側)表面への水分子の付着は、一般には、化学変化によって達成されるものではないからである。ただし、物理吸着系に加えて、化学吸着系も存在する。
【0019】
上記の「Θ
H2O,LがΘ
H2Oを最小化する」という表記は以下のように理解されたい。つまり、実際の水蒸気ローディング曲線すなわち水蒸気吸着等温式Θ
H2Oは、検討中の定義領域T=23℃、p
H2O<p
H2O,satにおいては、理想的なラングミュア曲線Θ
H2O,Lを決して下回るものではなく、むしろ、少なくともそれ以上のものとなる。
【0020】
Θ
H2O|
T=23℃≧Θ
H2O,L (ただし0≦p
H2O≦p
H2O,sat)
温度T=23℃のとき、シェル材料に用いられる乾燥剤が、乾燥剤自身の乾燥重量または乾燥剤自身の乾燥質量m
TMに対し、0.1以上の最大水蒸気吸収能q
max=m
H2O,max/m
TM(q
max=m
H2O,max/m
TM≧0.1)、例えば0.2以上の最大水蒸気吸収能q
max=m
H2O,max/m
TM(q
max=m
H2O,max/m
TM≧0.2)、好適には0.3以上の最大水蒸気吸収能q
max=m
H2O,max/m
TM(q
max=m
H2O,max/m
TM≧0.3)、特定的には0.4以上の最大水蒸気吸収能q
max=m
H2O,max/m
TM(q
max=m
H2O,max/m
TM≧0.4)を有していることが有利であることが分かっている。このことは、標準状態(T=23℃、大気圧p=p
atm)での飽和蒸気圧において実現可能な最大の水蒸気吸収能に関与する。
【0021】
また、本発明は、温度T=23℃、湿度2%において、標準状態(T=23℃、50%相対湿度)での飽和蒸気圧p
H2O,satに対しp
H2O=0.01*p
H2O,satであり、乾燥剤の自身乾燥重量または乾燥剤の乾燥質量m
TMに対して、乾燥剤の水蒸気吸収能q=m
H2O/m
TMが0.05以上(q=m
H2O/m
TM≧0.05)であり、例えば、水蒸気吸収能q=m
H2O/m
TMが0.15以上(q=m
H2O/m
TM≧0.15)であり、特に、水蒸気吸収能q=m
H2O/m
TMが0.2以上(q=m
H2O/m
TM≧0.2)であることを提案する。この値は、T=23℃、相対湿度50%の標準状態において減少した水蒸気分圧に基づくものである。これは、絶対飽和蒸気圧p
H2O,sat(湿度100%に対応)に対してわずか1%の値(p
H2O=0・01*p
H2O,sat)に対応する。
【0022】
さらに本発明では、内側フィルムと外側フィルムとが異なる層構造を有すること、および/または、少なくとも1つの層が異なる組成を有する点で互いに異なることが提案される。したがって、異種の気体および/蒸気に対する密封性について2つのフィルムのそれぞれを最適化することが可能である。
【0023】
内側フィルム内の空間は、残圧p
1まで排気され、一般的には残圧5mbar以下まで排気され、任意には残圧2mbar以下まで排気され、例えば残圧1mbar以下まで排気され、好適には残圧0.5mbar以下まで排気され、より好適には残圧0.2mbar以下まで排気され、特定的には残圧0.1mbar以下まで排気されることが有利であることが分かっている。この圧力は可能な限り低くあるべきであり、それにより最適な断熱特性が得られるからである。上述の圧力範囲は、一方での最適な断熱性と、他方での低製造コストとの合理的な妥協点を示す。
【0024】
また、内側フィルムと外側フィルムとの間の空間は、残圧p
2まで排気され、一般的には残圧100mbar以下まで排気され、任意には残圧50mbar以下まで排気され、例えば残圧20mbar以下まで排気され、好適には残圧10mbar以下まで排気され、より好適には残圧5mbar以下まで排気され、特定的には残圧2mbar以下まで排気される。この空間はまた全体の断熱性も向上させるが、その主要機能は、具体的には内側フィルムにかかる差圧を最大限可能な限り除去することによって、内側のコア空間を圧力上昇から保護することである。この空間は、同様に排気されたときにこの機能を最も良く実現させる。
【0025】
本発明ではさらに、内側フィルム内の空間を、外側フィルムと内側フィルムとの間の空間の残圧p
2よりも小さい残圧p
1まで排気することが提案される。
【0026】
p
1<p
2
この方式では、負の差圧によって内側フィルムが内側コアから浮き上がらなくなることが確実にされる。むしろ、少なくとも内部応力によって、内側フィルムは常にコアに支持される。そのため、制御できない状態は避けられる。
【0027】
一方で、外側フィルムと内側フィルムとの間の空間は、内側フィルム内部の空間の残圧p
1と同様の残圧p
2にまで排気されるべきである。つまり、好適には1mbar以下の絶対圧力差にまで排気されるべきであり、|Δp|=|p
1−p
2|≦10mbar、好適には|Δp|=|p
1−p
2|≦5mbar、好適には|Δp|=|p
1−p
2|≦2mbar、特定的には|Δp|=|p
1−p
2|≦1mbarである。
【0028】
その結果、内側フィルムには最小の圧力降下のみが存在することになり、いずれにしろ存在するバリア効果を良好にするという点においては、フィルム内側空間からコア内部空間への目立った拡散はなくなることになる。フィルム内部空間の圧力がかなり増大する場合に限り、(漸次的ではあるが)認識できる拡散が、その場所から内部コア空間へ行われる。ただし、その拡散は、周囲からフィルム内部空間への拡散に比べれば大きくなり得ないものである。そのため、2重のフィルム層は、少なくともこの種の真空断熱素材の耐用年数を倍増させるという結果をもたらし、可能性としてはなおさらに耐用年数を増加させる結果を生むと考えるべきである。
【0029】
次に説明するさらなる利点が実現され得る。つまり、コアおよび/またはシェルの充填材料は、低熱伝導性を有する圧力抵抗性、多孔質、好適には開気孔の材料、および/または乾燥剤から形成されており、これらにはゲッタ材料が含まれていてもよい。湿気(特に水蒸気)を吸収することができ、つまり蒸気圧を低下させることができる物質は、乾燥剤とみなされる。化学的および/または物理的構造の変化を任意に伴って、吸収した湿気を取り込むことができるものが好適な材料である。乾燥剤の特性を有する材料が、圧力抵抗性であり多孔質である(特に開気孔とされている)場合、必要に応じて純粋形態で用いられ得る。一方で、両物質の混合物を用いることも推奨される。
【0030】
本発明によれば、粉末、泡体、またはガラスファイバが圧力抵抗性の多孔質材料として好適である。このような物質は十分な圧力抵抗特性と特に高い細孔分率とを兼ね備える。開気孔のポリウレタンフォームは好適であり、ウレタン基-NH-CO-O-に特徴付けられるプラスチック、特に主鎖を形成するモノマーの成分として好適である。
【0031】
本発明によれば、周囲から湿気を吸収し、これに結合する(特に取り込む)ことができる吸湿材が、乾燥剤として推奨される。吸湿材は、好ましくは、ひとたび吸収すると、水分子を脱離させ難い(その理由は、例えば、物質の分子構造が水分吸収により変化するからである)ものが、本用途において特に好適であると考えられる。吸収された水分が温度上昇によって再度放出されるならば、それは通常使用の温度、すなわち、好適には60℃超、特定的には80℃超の温度においてのみであるべきである。
【0032】
ただし、木やウールなどの特定の動植物性材料などの吸湿材のいくつかについてはあまり適合しないと思われる。その理由は、吸収した湿気を恒久的に保持することができないからである。これには他の多くの無機物質が含まれ得、特に取り込みが構造の変化を伴わない場合にそうである。これに関して、キセロゲル、特に実験式SiO
2を有するシリカゲル(すなわち、アモルファスシリカ)について言及する必要がある。この物質は多孔質体であり、水中では自身重量の1/3〜2/3を吸収することができる。ただし、水は高湿度の場合にのみ空隙に取り込まれ得、例え適度な湿度であってもこの値ははるかに小さい値に落ち込み、低湿度にあっては水が放出されさえする。
【0033】
これについて、ゼオライト(すなわち、下記の組成を有する物質群から選択される材料)は、より好適であると考えられる。
【0034】
M
n+x/n[(AlO
2)
-x(SiO
2)
y]・zH
2O
ここで、Mは、典型的には価数nを有するアルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンであり、物質全体における電気的中性から、その比率は、負に荷電されたアルミニウム酸化物四面体の1/n倍に対応する。
【0035】
この構造体は、AlO
4-およびSiO
4四面体で構成される構造体を含んでおり、酸素原子がアルミニウム原子とシリコン原子との結合を確立している。結果として、マイクロポアには水分子が取り込まれ得るものとなる。因子zは結晶の細孔にどのくらいの量の水がすでに取り込まれているかを示すものである。
【0036】
カルシウム酸化物(CaO)もまた本発明において有利な特性を示す。
【0037】
内側フィルム内のコア充填材料においては、圧力抵抗性の多孔質材料に対する乾燥剤の体積比率が、1:1以下であるべきであり、典型的には1:2以下、例えば1:3以下、任意的には1:4以下、好適には1:5以下、より好適には1:7以下、特定的には1:10以下であるべきである。本発明における真空断熱素材のコアの熱遮断継続性は非常に重要である。そのため、他の要素のなかでも、特に高い断熱性能すなわち特に公表された多孔率は最重要の要素である。
【0038】
これに対し、外側チャンバまたはシェルの最重要機能の一つとして、ガス圧(特に蒸気圧)を好適に恒久的に維持するということがあり、チャンバやコア上に設けられた内側フィルムからのガス圧を維持するということがある。これを実現するために、内側フィルムと外側フィルムとの間の空隙(体積比率)は少なくとも所定領域において、充填材料によって満たされている。充填材料には、乾燥剤が圧力抵抗性多孔質材料に対して体積比率で1:2以上、任意的には1:1以上、例えば2:1以上、任意的には3:1以上、好適には5:1以上、より好適には7:1以上、特定的には9:1以上含まれている。あらゆる対抗手段にもかかわらず、水蒸気が外側チャンバまたはシェルに透過するようであれば、その場所において乾燥剤が飽和するまで水蒸気が吸収され、その結果、水蒸気が外側フィルムを介して徐々に拡散するときでさえ、蒸気圧が最初は非常に低いレベルに維持される。シェル内の蒸気圧は、乾燥剤の水吸収能が使い果たされるまでは上昇することがなく、その結果として、外側チャンバと内側チャンバとの蒸気の差圧、または、シェルとコアとの上記の差圧は対応して増加することになり、内側フィルムを通過するわずかな拡散が段階的に生じる。しかし、この拡散は、極度の時間遅延を伴うものであり、理想的な状態においては数十年もの遅延を伴う。
【0039】
内側コアは、特に真空断熱パネルの所望の全体形状に略対応するように、予め形成されていてもよい。コア材料が予め形成されているか、あるいは、内側フィルムが充填されるまでコア材料が形成されていないかにかかわらず、例えばプレス機の内部において、内側コーティングとともにコアは最初に作製されるべきであり、好適には、シェルおよび外側カバーが作製されるまでに排気も含めて完全に作製されるべきである。
【0040】
外側カバーが、少なくとも所定領域において内側フィルムにより包囲されたコアから持ち上げられているので、仕上げられた真空パネルの形状は、コアの形状とは異なっている。本発明によれば、したがって、コアの形状は、真空断熱パネルの全体形状を略縮尺した形状であってよい。
【0041】
本発明の範囲内において、コア材料は、直方体状、特にパネル状であってよく、2つの互いに平行なベース面、2つの長手方向側面および2つの端面側面を有する。
【0042】
これは、本発明の特に重要な用途、すなわち、パネル状の真空断熱素子に対応している。これらは断熱のため、例えば、家屋壁面および/または屋根の断熱や、冷蔵庫または冷却装置の断熱のために広く用いられる。平坦パネル形状が好適な形状である一方で、湾曲パネルについても用途があり、例えば、円柱状湾曲パネルの形状は、パイプ、(クッキング)ポット、(コーヒー)缶などの断熱に用いられる。これらの用途は共通の特徴を有しており、すなわち、2つの比較的大きいベース面が互いに対して略一定の距離を有するように広がって設けられている。これら2つのベース面は、1辺のエッジに沿って結合されている。エッジは、略一定の幅を有していてよい。
【0043】
第1の態様の範囲内において、コアを包囲するシェルは略一定の厚さを有していてよく、この態様において、コアを取り囲むフィルムは全ての側面において充填材料により覆われる。
【0044】
製造プロセスは、したがって以下のようにかなり簡易化され得る。つまり、例えばスペーサプレートがシェル充填材料として2フィルム間に設けられ、ストリップ状の充填材料がスペーサとしてエッジに沿って挿入され得る。製造中、作製済みのプレート状またはストリップ状の充填材料が、例えば内側フィルムの外側面に接着されてよく、特に、フィルムで包囲されたコアを製造した後に接着されてよいことは言うまでもない。
【0045】
一方で、特に(平坦または湾曲)真空断熱パネルについて、ベース面におけるシェルは、例えば同じ第1の厚さを有していてよく、また、ベース面を結合するエッジ領域において異なる厚さ、好適にはより小さい厚さを有していてよい。
【0046】
本発明の作用として、パネル状(平坦または湾曲)断熱素子において、外側シェルをなす充填材料が内側フィルムを完全に包囲することが絶対に必要というわけではない。むしろ、何らかの方法で2つのカバーフィルムが互いに好ましくは全ての側面で分離されていることが確実であるならば、例えば、先に包囲されたコアのベース面の一方好ましくは両方がスペーサ材料で覆われれば足りる。
【0047】
このことは、例えば、不織布または他の可撓性の多孔質材料をコアの周囲に巻きつけることによってなされ得る。コアは、最初に包囲され、好適には既に排気されており、任意には内側カバー上またはそれに付与されたスペーサプレートまたは各種充填材料とともに包囲されたコアおよびの周りに直接巻きつけられている。したがって、例えば、適切な充填材料からなる1以上のスペーサプレートまたはストリップが、最初にコアの内側カバーフィルムに接着され得、外側カバーが最終的に付与される前に、このユニットが次に不織布その他の可撓性多孔質材料で包まれる。このような方法においては、不織布などによってのみ端面またはエッジ面が包まれる場合に、シェルのカバー材料(ベース面のみを覆うもの)の断熱特性が任意に減少してしまうことは重大な問題ではなく、真空断熱パネル全体としての断熱値を低減させるものではないし、特にヒートブリッジを生むものではない。
【0048】
内側フィルムは、好適には、気密性のバリア性フィルムとして設計され、例えば、少なくとも1つの層がエチレンビニルアルコール共重合体から形成され好適には金属化されている複数層フィルムとして設けられる。好ましい主特性として、このフィルムは特に気密すなわちガスタイトであるべきであり、これにより、実質的な断熱層であるコア領域を好適には全く圧力がかからないように維持することができる。
【0049】
内側カバーのこの特性が蒸気密性に優先する場合であっても、この目的のために設けられた外側カバーが蒸気密設計であれば許容できると考えられる。したがって、本発明によれば、外側フィルムは、空気および/または蒸気密のバリア性フィルムとして設けられることが推奨され、例えば、少なくとも1つの層がエチレンビニルアルコール共重合体から形成され好適には金属化されている複数層フィルムとして設けられ、つまりは、少なくとも1つの側面上において好適には蒸着金属薄膜を有して設けられる。
【0050】
本発明においては、少なくとも1つの層がエチレンビニルアルコール共重合体から形成されている材料が、内側カバーおよび外側カバーとして好適であるが、このことは、双方にまったく同じ材料を用いる必要があることを意味するものではない。これは、エチレンビニルアルコール共重合体からなるフィルムが、エチレンおよびビニルアルコールの比率の設定に応じて異なる封密特性を示すからである。モノマーを用いて得られるエチレン(C
2H
4)およびビニルアルコール(C
2H
4O)の共重合体は、異なる質量比で作製され得る。しかしながら、重合化は、モノマー自体から発生するのではなく、好適にはエチレンおよび酢酸ビニルを用いアセチル基が加水分解により後に脱離されることによって発生する。生成される共重合体が相違し得る理由は、他の要因のなかでも次の事実に起因する。すなわち、重合化においては、高分子中のモノマー基の配列は固定されておらず、むしろ任意に設定、つまりランダムに、いずれにしても出発材料の混合比率に対応する頻度確率のうちに設定されるという事実に起因する。最終製品の特性に影響を与えるのはこの自由度において他ならない。実際において、エチレンの比率は、通常、約20mol%〜50mol%の間であり、つまりは、共重合体の高分子中においてエチレンモノマー比率は、高分子中に含まれる全モノマーの約20%〜50%に当たる。ビニルアルコールの比率がより多い場合には、ガスに対するより高いバリア効果が得られるが、共重合体の吸湿特性もまた増加し、このため水蒸気に対するバリア効果は一方で低下し、水蒸気飽和の増大を伴ってガスに対するバリア効果もまた低下し得る。
【0051】
すなわち、エチレン比率が例えば20〜25mol%と低いと、共重合体は約0.05cm
3/(m
2*d*bar)のガス透過度しか有しないが、水蒸気透過率は約5g/(m
2*d)を有する。これに対して、エチレン比率が例えば45〜50mol%と最大限に多い場合、水蒸気透過率は約0.5g/(m
2*d)すなわち低エチレン比率のときの約1/10の値まで低下するが、ガス透過率は約0.5cm
3/(m
2*d*bar)すなわち低エチレン比率のときの変位の約10倍の値まで増加する。
【0052】
このような関係から、本発明によれば次のことが提案される。すなわち低水蒸気透過率について外側フィルムが最適化され、したがって外側フィルムにエチレンビニルアルコールモノマーを用いた共重合体が用いられ、ここでエチレンモノマーの比率は30mol%以上、好適には35mol%以上、特定的には40mol%以上であるべきである。それでもなお透過する蒸気は、2フィルム間のシェル空間に一時的に結合され、これにより中和され、その結果、この内部空間における蒸気圧および内側フィルム上の蒸気差圧は、無視できるほど小さい値に一時的に保たれる。
【0053】
また、ガス透過度を低下させるための内側フィルムは、エチレンおよびビニルアルコールモノマーの共重合体から形成される少なくとも1つの層を含むフィルムを内側フィルムに用いることによって最適化され得る。ここで、エチレンモノマーの比率は40mol%以下、好適は35mol%以下、特定的には30mol%以下であるべきである。
【0054】
外側フィルムが少なくとも部分的にアルミニウムから形成されているか、あるいは、少なくとも部分的にアルミニウムによって被覆されている場合には、特に高い密度値が実現され得る。純粋なアルミニウムフィルムは、金属化された高バリア性フィルムに対して封密性の点で勝り、したがって、コストパフォーマンスを抜きにすれば一般的には好適であるといえる。
【0055】
しかしながら、純粋アルミニウムフィルムを用いることによって端面領域での断面において金属面積が増加すると、ヒートブリッジが形成され得る。このため、2つの対向配置された表面上(のみ)において外側フィルムにアルミニウム層を設け、パネル状真空断熱素子のベース面に限定して純粋アルミニウムフィルムを用いるようにしてもよい。
【0056】
内側フィルムは、真空断熱パネルの形状がコアの形状と一致するように形成されるように、内側コアを完全に包むように設けられているべきである。突出する接合タブは、外側フィルム内に包囲コアを挿入する前に、および/または、シェル材料を付与する前に、折り返されているべきである。
【0057】
最後に、本発明の教示によれば、内側フィルムの5つの折線が、内側コアの角部のそれぞれにおいて集結する。接合タブが折り込まれる場合、対象となるフィルムにストレスがかからないようにすることが重要である。その理由は、このような場合において、タイトでない部分が設けられ、これによって封密なそして耐久性のある真空断熱素子を作製するための他の全ての努力を無効化してしまうからである。これらの理由から、フィルムの折込作業のいずれもが、排気の前後によらず、できるだけストレスが生じないように行われるべきである。これはつまり、折込の手順が、とにかくフィルムが理論的に引き伸ばしの影響を受けないように続けられるべきことを意味している。このことは、その場所における過剰なフィルム面がコア上に正しい手順で折り曲げられるように、特に角部において5つの折線が角部でそれぞれ集結することを必要とする。
【0058】
本発明によるさらなる特徴、特に利点および効果は、図面を参照しながら行う本発明の好適な実施形態に関する下記説明から導かれる。