(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリカ粉末は、石英、クリストバライト、リンケイ石、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される結晶性シリカ粉末である、請求項1に記載の焼結誘電体材料。
固体部を含む誘電体組成物を提供する工程であって、前記固体部が0.5〜30μmのD50粒子径を有する10〜99質量%のシリカ粉末、及び1〜90質量%のガラス成分を含み、
前記ガラス成分が、
50〜90モル%SiO2と、
0.1〜35モル%B2O3と、
0.1〜25モル%Al2O3と、
0.1〜10モル%K2Oと、
0.1〜10モル%Na2Oと、
0.1〜20モル%Li2Oと、
0.1〜30モル%Fと、を含み、
Li2O+Na2O+K2Oがガラス成分の0.1〜30モル%である工程と、
前記固体部を焼結するために700〜1100℃まで10〜10000分間前記誘電体組成物を加熱し、これにより誘電体部品を形成する工程と、を含み、
前記誘電体部品が8未満の誘電率及び500よりも高いQ値を有し、
前記固体部は、
5〜85モル%Bi2O3と、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2Oと、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むBi−B−Si酸化物ガラスフリット、
5〜65モル%ZnOと、
10〜65モル%SiO2と、
5〜55モル%B2O3と、
を含む酸化亜鉛系ガラスフリット、
5〜55モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
2〜26モル%TiO2+ZrO2と、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜30モル%TeO2+V2O5+Sb2O5+P2O5と、
0.1〜20モル%MgO+CaO+BaO+SrOと、
0.1〜20モル%Fと、
を含むアルカリ−チタン−シリケートガラスフリット、
15〜75モル%BaO+CaO+SrO+MgOと、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むアルカリ土類シリケートガラスフリット、
15〜75モル%MgOと、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むケイ酸マグネシウムガラスフリット、
15〜75モル%CaOと、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むケイ酸カルシウムガラスフリット、
15〜75モル%SrOと、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むケイ酸ストロンチウムガラスフリット、
15〜75モル%BaOと、
5〜75モル%B2O3+SiO2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li2O+Na2O+K2O+Cs2O+Rb2Oと、
0.1〜20モル%TiO2+ZrO2と、
を含むケイ酸バリウムガラスフリット、及び
これらの組み合わせ、
からなる群から選択される1つを5〜50質量%さらに含む、誘電体部品を形成する方法。
【背景技術】
【0002】
通信用途において、高Q値(quality factor)(Q)を有する誘電体材料は、低いエネルギー損失率を有し、これにより、材料に発生した振動が強度を損失することなくより長く持続するので、高Q値材料は誘電体層の作製に適している。誘電体材料のQ値は1/tanθであり、tanθは誘電正接(dielectric loss tangent)である。500を超える又は1,000を超える非常に高いQ値を有する、高周波数用途用の誘電体材料について需要が高まっている。
【0003】
高Q材料は、一般的に、1000℃よりも高い又は1100℃よりも高い高温で焼結する結晶性酸化物材料;例えば、約20よりも大きいK値を有するチタン酸塩粉末に基づく。誘電率がより低い材料は、2つの導電線間の低減された混線(cross talk)に加えて、(誘電率に比例する)より低い信号損失又はより低い遅延を有する材料が要求される、マイクロエレクトロニクス産業を含む電子産業において需要がある。ここで、Kの要件は、約6未満、好ましくは4未満(さらには3.8未満)である。このため、シリカ(K〜3.8)、β−ユークリプタイト(LiAlSiO
4)(K〜4.8)、シリマナイト(ケイセン石)(Al
2O
3・SiO
2)(K〜5.3)、アルバイト(曹長石)(NaAlSi
3O
8)(K〜5.5)、リン酸マグネシウム(Mg
2P
2O
7)(K〜6.1)、リン酸アルミニウム(AlPO
4)(K〜6.1)、コーディエライト(菫青石)(2MgO・2Al
2O
3・5SiO
2)(K〜6.2)、及びケイ酸亜鉛鉱(willemite)(2ZnO・SiO
2)(K〜6.6)等の多数の高Q、低K酸化物セラミックが存在する。ここで、記号「〜」は、「略等しい(approximately equal to)」を意味する。しかしながら、これらの結晶性酸化物材料は、(例えば、1000℃を超える、又は1100℃を超える)非常に高い焼結温度を有し、このため、電子組立体の他の部品、例えば、電気組立体中に存在する約960℃の融点を有する銀導電体、との共焼成(同時焼成;co-firing)と適合できない。
【0004】
誘電体系に添加されたガラスに基づく4〜12のKを有するLTCC材料の最新技術が存在する。これらの低誘電率材料への伝統的な低軟化温度ガラス、例えばZnO−B
2O
3−SiO
2ガラス、の添加は、焼結温度、例えば1100℃、950℃又は900℃未満、を低下させることができ、これにより、焼結温度は、電気組立体中に存在する銀導電体の融点未満となる。しかしながら、このような伝統的なガラスの添加は、これらの低誘電率材料のQ値を低下させるか、又は誘電体率を高めることになり、十分なガラスを添加しないならば焼結温度は高いままである、例えば1100℃よりも高く、又は950℃よりも高い。したがって、ガラスが系にどの程度添加されるかに依存する、ガラスを含むこれらの系は、4よりも高いKを有することになり、低下したQ値を有することになり、又は950℃よりも高い、もしくはさらに1000℃よりも高い、もしくはさらに1100℃よりも高い、より高い焼結温度を有することになり得る。このため、高周波数で測定したときに高いQ、4未満のK値を有すると共に、900℃未満の焼結温度を有する材料を製造することはかなり難しい。したがって、高周波数用途用の改善された低誘電率誘電体組成物を開発する必要性が存在する。
【0005】
最新技術において、FR−4印刷回路基板材料のような有機系基板又は(CVDもしくはPVD)成長フッ化ガラス(SiOF)無機ガラス質材料が使用されている。しかしながら、これらの材料でさえ、バルク形態のそれら(例えば、独立型バルク共振器(stand-alone bulk resonator)を作製することは、伝統的な鋳造又は焼結アプローチでも不可能である。さらに、これらの材料は、一般的に、高周波数よりもむしろ低周波数(低いMHz)で動作し、より高い使用温度、より高いエネルギー密度を扱うことができず、また、機械的強度も低い。
【0006】
したがって、従前の誘電体材料の欠点に対処する改善された組成物を提供する必要性が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、約1100℃未満、又は約1000℃未満、又は約950℃未満のピーク温度、又はより好ましくは900℃未満の温度で90%理論密度よりも高く焼成することができる低誘電率誘電体組成物(low K dielectric compositions)に関する。誘電体組成物は、5〜75GHz又は10〜30GHzで測定されたとき、8以下(例えば、K=2〜8)、又は6以下(例えば、K=2〜6)、好ましくは4.0以下(例えば、K=2〜4.0)、より好ましくは3.8以下(例えば、K=2〜3.8)、及び最も好ましくは3.5以下(例えば、K=2〜3.5)のK値を有し;より高いGHz周波数で測定されたとき、高いQ値、例えば、500、1000、2000、5000、10000、15000、20000、30000、40000、もしくは50000よりも高いQ値、又は前述の間のいずれかの値のQ値、又はさらに高いQ値、を維持する。
【0013】
本発明の誘電体組成物は、共振器、バンドパスフィルタ、オシレータ、アンテナ(従来かつ小さなアンテナ及び小型化)、及びLTCC基板等の低誘電率誘電体系電気部品に適しており、クアドバンド(Quad-band)GSM用途用の850〜1900MHz、ブルートゥース及びWi−Fi用途用2400MHz、並びに1GHzよりも高く、より好ましくは10GHzよりも高く、最も好ましくは30GHz〜300GHzのミリメータ波(mm waves)を含むマイクロ波周波数300MHz〜300GHz;特に無線通信用の約27GHz、ブロードバンド用無線伝送用の54〜66GHz、バンド高速無線伝送用の77〜79GHz、車載レーダ通信用の54〜66GHz及び77〜79GHzバンド、並びにさらにはTHz周波数、を伴う他の高周波数用途に適している。加えて、焼成誘電体組成物は、0.004、0.002、0.001、0.0005、又は0.0001未満である損失正接(loss tangent)値に反映されているように、系内において低損失を有する。
【0014】
誘電体組成物の焼結から形成される誘電体部品は、電話通信、レーダ産業、ロボット工学、医療装置、スマート電気製品(smart appliances)、スマートカー(smart car)、エネルギー変換及び蓄電、4GLTE用途、5G用途、m2m(マシンツーマシン(machine to machine)通信)、並びに新興IoT(モノのインターネット(Internet of Things))用途に使用することができる。
【0015】
例えば、マイクロエレクトロニクス産業において、低誘電率材料は、2つの導体線間の混線を低減できることに加えて、(材料の誘電率Kに比例する)より低い信号損失及びより少ない遅延を生成するために使用される。これらの材料のK値は、約4未満又は約3.8未満であることが望まれる。最新技術材料においては、FR−4グレードのような印刷回路基板材料の有機系基材か、又は化学蒸着(CVD)もしくは物理蒸着(PVD)成長フッ化無機ガラス質材料(SiOF)が使用される。しかしながら、これらの材料でさえ、被覆よりもバルク形態(例えば、独立型バルク共振子(stand-alone bulk resonator))にそれらを作製することは、伝統的なテープ鋳造(casting)又はバルク焼結アプローチを使用しては不可能であり、これらの従来の材料は、一般的に、低周波数(低いMHz)で動作する。しかしながら、本発明の低誘電率誘電体組成物は、より高い周波数で良好に機能すると共に、高周波数用途用のLTCC又はULTCC(超低温共焼成セラミック(Ultra Low Temperature Co-fired Ceramics))等の低損失バルク基材として使用することができる。
【0016】
さらに、無線通信、モバイル通信、インターネット及び接続性の分野は、300MHzよりも高い、さらには300MHz〜300GHzのマイクロ波又はミリメートル波(mm wave)周波数までの高周波数で動作する材料を必要とし、将来的にはTHz周波数にも拡張し得る材料を必要とする。本低誘電率材料は、エネルギー損失が低減された又はエネルギー損失のない、より速い伝送速度を提供する。共振周波数(f
r)、すなわち動作周波数、は共振子(d)の大きさ、及び共振子を形成する材料の誘電率(K)と反比例するため、本低誘電率材料は、これらの動作(共振)周波数で1000よりも高い高Q値(Q)を有するので、より高い動作周波数が可能となるだろう。したがって、当該材料は、より低い損失によって、より速い伝送速度、低減された遅延時間(又は待ち時間)及び優れた信号の質を提供する。本低K、高Q材料は、より高い周波数で良好に機能するので、無線用途、レーダ通信及び少ない待ち時間(信号の速い伝送及び受信)用途に優れて適している。
【0017】
加えて、本発明は、焼結誘電体材料から作製された様々なサイズ(d)の誘電体部品を製造することを可能にする様々な塗布及び形成技術を含む。すなわち、誘電体部品は、塗布/形成技術に依存して、比較的大きいサイズ(例えば、バルク又は独立型誘電体部品)から、非常に小さいサイズ(例えば、基材に形成されたミクロン又はサブミクロンサイズの誘電体トレース)を有するように作製することができる。
【0018】
誘電体部品の特徴的なサイズ(d)は、乾燥プレス(dry pressing)、テープキャスティング、シリンジ堆積、スクリーン印刷、デジタル又はインクジェット印刷、マイクロスプレー、ホットプレス、冷間焼結(cold sintering)、ゾルゲル堆積、テープキャスティング、及び押出堆積(extrusion deposition)を含む特定の生産技術を使用することによって、縮小したサイズのオーダーで、制御することができる。このようにして、これらの低誘電率誘電体部品を組み込んでいる電子装置は、誘電体部品のサイズ(d)が縮小するにつれて、ますます高い周波数で動作することができる。これらの目的のため、及びこれらの製造方法のため、焼結前の誘電体材料は、約10ナノメートル(nm)及びそれ以上、100nmから30ミクロン(μm)までの平均粒子径を有し、並びに、特別の用途において、固体部の乾燥プレス用に3ミクロン(μm)から30μmまで;テープキャスティング用に1〜3μm未満、スクリーン印刷用に0.5〜3μm、及びインクジェット又はデジタル印刷用に0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.8μm、より好ましくは0.1〜0.5μmの平均粒径を有する固体部を含むことができる。
【0019】
1100℃、950℃、又は900℃未満のそれらの低い焼結温度によって、これらの低誘電率誘電体材料は、他の電子部品、特にインダクタ及び導電体、と共焼成(同時焼成)することができる。誘電体材料の共焼成は、誘電体材料の特性と、共焼成される材料の特性とを整合させること、例えば、ピーク焼成温度、熱膨張(ひずみを小さくするため)、及び誘電体材料がテープとして処理される際の収縮(再度、歪みを小さくするため)を整合させること、を伴うことができる。一実施形態において、誘電体組成物の組成は、比誘電率K及びQ値を維持しながら、熱膨張係数(CTE)が異なる低誘電率材料を提供するように変えることができる。
【0020】
本主題によれば、焼結誘電体材料の気孔率(porosity)は、K値を低くするために制御することができる。焼結誘電体材料の気孔率は、固体部中に、0.1〜10質量%の、100nm〜30μm又は10nm〜30μmの平均粒子径を有する粒子を含むことによって制御することができる。粒子は、中空ガラス粉末もしくは粒子、中空シリカ球、多孔性ケイ酸塩ガラス、多孔性有機ケイ酸塩ガラス、キセロゲル粒子、エーロゲル粒子、ポリシロキサン、ゼオライト粒子、中空セラミック球、マイカ粒子、特定の温度まで加熱されたときに化学的に結合されたO
2もしくは結合された水を放出する材料、又は他の多孔性粒子を含むことができる。
【0021】
K値は、誘電体材料に、Li
+、B
3+、Si
4+、Al
3+等の低原子量カチオンを有するオキシフッ化物ガラスを含有させることによって、又は構造中に低分極化可能C−O、C−H、−F、C−F結合を有するようにそれらの構造中に異なる炭素度を有するゾルゲル誘導ホウケイ酸塩ガラス等の炭素含有ガラス複合粒子を含有させることによって、低下させることもできる。加えて、Be
+、Cl
−、Br
−、N
3−、I
−等の低質量イオンも含有させることができる。
【0022】
本主題は、4以下、又は6以下、又は8以下のK値を提供可能な、β−ユークリプタイト、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸カルシウムリチウム(lithium calcium silicate)、アルバイト(albite)、ホウ酸アルミニウムリチウム(lithium aluminum borate)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、コーディエライト、ケイ酸亜鉛鉱、ガーナイト(gahnite)、ムライト、珪灰石(wollastonite)、ホウ酸カルシウム、ホーステライト(forsterite)、ホウ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、及びアルミナ等の、1つ又は複数のセラミック材料を本発明の組成物に組み込むことによって、優れたQ値を有し、1100℃、950℃又は900℃よりもさらに低い焼結温度を有するが、わずかに誘電率が高い材料(例えば、6以下のK、又は8以下のK)を提供することも含む。
【0023】
シリカ(SiO
2)は、非常に安定な低誘電率酸化物材料である。しかしながら、単独で、シリカは、1100℃よりも十分に高い温度で焼結するので、シリカは、1100℃、950℃又は900℃未満の温度まで焼結を低下させるために、焼結助剤ガラス等のより低い焼成材料と組み合わせる必要がある。MgF
2又はLiF等のフッ化物を焼結助剤として使用し、1100℃、950℃又は900℃未満まで焼結温度を低下させることができる。しかしながら、フッ化物が焼結温度を低下させることができたとしても、焼成誘電体材料は、より低いK値を有することができないことが分かった。それどころか、焼成誘電体材料は、制御されていない気孔率のためにもろくなった。しかしながら、ガラス及びSiO
2添加と共に、LiF添加で焼結温度は低下したが、多量の泡がサンプル中に残存した。例えば、B
2O
3、ZnO、V
2O
5、Tl
2O、TeO
2等の焼結温度を低下させる酸化物、及びH
3BO
3添加物を使用することができるが、これらは十分な密度及び強い誘電体構造を形成することができない。水和物、ホウ酸塩(ホウ酸)、ハロゲン化物、及び硫化物等の他の添加剤を少量添加することができる。
【0024】
本主題は、10〜99質量%、10〜95質量%、15〜90質量%、20〜85質量%、30〜75質量%、又は40〜65質量%のシリカ粉末、及び1〜90質量%、5〜90質量%、10〜85質量%、15〜80質量%、25〜70質量%、又は35〜60質量%のガラス成分を含む固体部を焼成前に含む焼結誘電体材料に関する。ガラス成分は、例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物添加剤と共に、BaO−B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、CaO−B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、MgO−B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、SrO−B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、ZnO−B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、B
2O
3−SiO
2ガラスフリット、アルカリホウケイ酸塩ガラスフリット、及びBaO−SiO
2、CaO−SiO
2、MgO−SiO
2、SrO−SiO
2、ZnO−SiO
2ガラスフリット、ホウ酸塩ガラスフリット、ボロ−アルミノ−シリケートガラスフリット、アルカリ土類ボロシリケートガラスフリットを含むことができる。ガラス成分は、2以上の異なるガラスフリットの組み合わせとすることができる。
【0025】
高周波数用途用のガラス選択の観点において、イオン分極及び電子分極は、損失メカニズムに影響し得る、すなわちQ値を低下させることができる。したがって、これらの分極成分は、Q値をより高くするために最小限にすることができる。より低質量のカチオン(例えばLi
+)を使用することによって、かつアルカリ酸化物含有率を低く(実際、すべての他の修飾酸化物イオンを低く)保って、より大きな(アニオン性)分極損失を誘導することができるであろう、ガラス成分中の非架橋酸素の量を低減することによって、イオン分極及び電子分極を小さくすることができる。しかしながら、ホウケイ酸塩ガラスフリットを使用すると、すべてのアルカリ酸化物を排除することはできず、相分離を回避すると共に、750℃未満のガラスの軟化点を保ち、1100℃、950℃、又は900℃未満の焼結温度を保つためにいくらかのアルカリ酸化物が必要となる。
【0026】
材料中、特に結晶及びガラス中、の1つの他のエネルギー損失源は、高周波数下の材料中のフォノン波の共鳴である。いずれかの特別な理論に拘束されることはないが、焼成中のシリカ粉末(アモルファス又は結晶)とガラスとの相互作用は、ガラスフリットとシリカ粒子間のコヒーレンス(すなわち、インターフェースの最小化)を生じさせると共に、フォノン波、特に300MHz〜300GHzの高周波数領域におけるフォノン波の存在を実質的に打ち消すフォノン波を生成する共鳴波長を増大させると考えられる。このようにして、誘電体材料の微細構造は、この高周波数領域においてこの共鳴フォノン波の不存在のために、誘電体材料がより低いK及びより高いQ値を有することを可能にする。
【0027】
[ガラス成分]
焼結誘電体材料は、焼成前に、1〜90又は5〜90又は15〜80又は25〜70又は35〜60又は45〜50質量%でガラス成分を含むことができる。ガラス成分は、焼成前に、50〜90又は60〜80又は65〜75モル%SiO
2;0.1〜35又は5〜35又は10〜30又は15〜25モル%B
2O
3;0.1〜25又は0.1〜10又は5〜15モル%Al
2O
3;0.1〜10又は1〜8又は2〜7モル%K
2O;0.1〜10又は1〜8又は2〜7モル%Na
2O;0.1〜20又は5〜15又は7.5〜12.5モル%Li
2O;0.1〜30又は5〜25又は10〜20モル%Fを含み;Li
2O+Na
2O+K
2Oの総量が、ガラス成分の0.1〜30又は5〜25又は10〜20モル%であるアルカリボロシリケート(alkali borosilicate)ガラス成分を含むことができる。1つの好適なガラス成分は、フエロ社(Ferro Corporation)から市販されているガラスフリットであるEG2790である。シリカ粉末と組み合わされ、1100℃、950℃又は900℃未満で30分又は20〜40分間で焼結されると、焼結誘電体材料は、10〜20GHzで、3.1〜3.5、又は3.3〜3.8のK値、及び2000よりも高い高Q値を呈することができる。
【0028】
この特別なガラスEG2790においては、全体として非架橋酸素を低下させる混合アルカリ効果を導くことができるであろう、Li
2O、Na
2O、K
2Oの特定の組み合わせが存在する。ガラス中において、認識できる量の移動アルカリイオン及び遷移元素イオンが存在していないので、入射のドリフト流(drift current)による高電場下のエネルギー損失が最小化される。
【0029】
K値及びQ値に大きな影響を及ぼすことなく所望の性状に最適化するために、未焼成誘電体組成物は、ビスマスガラスフリット(テーブル1(表1))、又は亜鉛ガラスフリット(テーブル2(表2))、又はアルカリチタンシリカガラスフリット(テーブル3(表3))、又はアルカリ土類ガラスフリット、例えば、ホウ酸ケイ酸マグネシウム(magnesium borate silicate)ガラスフリットもしくはホウ酸マグネシウムガラスフリット、等のアルカリ土類ガラスフリット(テーブル4A〜4E(表4〜8))から選択される1つ又は複数の他のガラスフリットを含むこともできる。
【0030】
ガラス成分は、2つの別個のガラス成分(例えば、2つの異なるフリット)を含むことができる。非限定的な例において、ガラス成分は、マグネシウム/ホウ素/シリケートガラス(magnesium/boron/silicate glass)及びマグネシウム/アルミニウム/シリケートガラス(magnesium/aluminum/silicate glass)の2つのガラスを含む。また、鉛系ガラスを選択的に添加して、焼成温度を下げることができる。
【0039】
[シリカ]
本主題によれば、固体部は、10〜99又は10〜95又は20〜85又は30〜75又は40〜65又は50〜55質量%シリカも含み、シリカは、粉末形態であることができ、非晶質(例えば、ヒューズドシリカ)、又は結晶質(例えば、石英、クリストバライト、リンケイ石(tridymite))であることができる。これらは、中空シリカ球、キセロゲル粒子、エーロゲル粒子の形態であってもよい。シリカの様々な多形の使用は、焼結誘電体材料のK値及びQ値を大きく変化させず、これらの値は、使用されたシリカの種々の形態の間で維持することができる。非晶質又は結晶性シリカの使用は、焼結誘電体材料の所望する膨張係数に基づいて選択することができる。
【0040】
本主題によれば、シリカ粉末の平均粒子径は、30μm未満;好ましくは20μm未満;より好ましくは10μm未満;さらにより好ましくは1〜5μm;最も好ましくは0.5〜5μmとすることができる。シリカ粉末の平均粒子径は、乾式プレス又はテープキャスト法による等、誘電体部品又は層の作製方法に依存して選択することができる。一実施形態において、誘電体部品がデジタル印刷(例えば、インクジェット印刷)によって形成される場合、シリカ粉末の最も好ましい平均粒子径は、約0.5〜1.0μmである。いずれかの特定の理論に拘束はされないが、シリカ粉末の平均粒子径が小さすぎると、シリカ粉末は、完全な焼結に達する前にガラス成分に溶解し、これにより良好な微小構造の発達が阻害されると考えられ;一方、シリカ粉末の粒子径が大きすぎると、シリカ粒子周りに微細クラックが自然発生することになり、クラックが列をなすと、誘電体材料の強度を低下させ、時には誘電体部品全体のクラックを自然発生させることになり得る。
【0041】
[有機ビヒクル]
一実施形態において、誘電体組成物はLTCC用途に使用され、この場合、組成物はペーストの形態にある。誘電体材料は、デジタル印刷用途用のインク、又はスクリーン印刷用途用の異なる粘度ペースト、又はテープキャスティング用のテープ等、他の形態を採ることもできる。
【0042】
誘電体組成物は、本書に開示されたような、10〜99質量%又は10〜95質量%のシリカ粉末と、1〜90質量%又は5〜90質量%のガラス成分と、を含むガラス固体部と有機ビヒクルを混合することによって得ることができる。固体部(例えば、ガラス成分及びシリカ粉末)の成分は、一般的に、誘電体材料の準備に使用される塗布又は形成技術に依存して、約0.1〜約10ミクロン又は約0.5〜約10ミクロンの平均粒子径を有する粉末形態において使用される。
【0043】
未焼成誘電体材料は、有機ビヒクルを含む又は有機ビヒクルからなることができる有機部を含む。有機ビヒクルは、有機溶媒中又は水中にバインダを含むことができる。ここで使用されるバインダの選択は決定的ではなく、エチルセルロース、ポリビニルブタノール、及びヒドロキシプロピルセルロース、並びにこれらの組み合わせ等の従来のバインダと溶媒とが適当である。有機溶媒も決定的ではなく、特定の塗布方法(例えば、印刷、テープキャスティング、スプレー、又はシーティング)に従い、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン、エタノール、ジエチレングリコールブチルエーテル;2,2,4−トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール(Texanol(登録商標)));アルファ−テルピネオール;ベータ−テルピネオール;ガンマ−テルピネオール;トリデシルアルコール;ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール(Carbitol(登録商標)))、ジエチレングリコールブチルエーテル(ブチルカルビトール(Butyl Carbitol(登録商標)))及びプロピレングリコール;並びにこれらの混合物等の従来の有機溶媒から選択することができ、テキサノール(登録商標)の商標で販売されている製品はイーストマンケミカル社(Eastman Chemical Company)、テネシー州(TN)キングズポート(Kingsport)から入手可能であり;ダワノール(Dowanol(登録商標))及びカルビトール(登録商標)の商標で販売されている製品は、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)、ミシガン州(MI)ミッドランド(Midland)から入手可能である。
【0044】
本発明の誘電体材料の有機部に特別な限定は課されない。本発明の誘電体材料は、一実施形態において、約10質量%〜約40質量%の有機ビヒクルを含み;別の実施形態において、約10質量%〜約30質量%の有機ビヒクルを含む。多くの場合、未焼成誘電体材料は、約1質量%〜5質量%のバインダ及び約10質量%〜50質量%の有機溶媒を含み、残部が固体部である。一実施形態において、本発明の未焼成誘電体材料は、約60質量%〜約90質量%の固体部、及び約10質量%〜約40質量%の有機部を含む。所望すれば、未焼成誘電体材料は、分散剤、可塑剤、誘電体化合物、及び絶縁化合物等の添加剤を約10質量%まで含むことができる。
【0045】
[添加剤]
固体部は、焼成誘電体材料のK値を調節する添加剤をさらに含むことができる。K調節添加剤(K-modifying additive)は、0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のケイ酸カルシウムリチウム;0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のβ−ユークリプタイト;0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のホウ酸アルミニウムリチウム;0.1〜50質量%、0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、Mg
2Al
4Si
5O
18(例えばコーディエライト)等のケイ酸アルミニウムマグネシウム(magnesium aluminum silicate);0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のAl
2SiO
5(例えばシリマナイト);0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のNaAlSi
3O
8(例えばアルバイト);0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のリン酸マグネシウム;0.1〜50質量、0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、AlPO
4等のリン酸アルミニウム;0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、(Mg,Fe)
2Al
3(Si
5AlO
18)〜(Fe,Mg)
2Al
3(Si
5AlO
18)(例えばコーディエライト)の系列式の化合物;0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のZn
2SiO
4(例えばケイ酸亜鉛鉱);0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、3Al
2O
32SiO
2又は2Al
2O
3SiO
2(例えばムライト)等のアルミノケイ酸塩(aluminosilicates);0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のCaSiO
3(例えば珪灰石(ウォラストナイト));0.1〜30質量%、0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%のホウ酸カルシウム;0.1〜30質量%又は0.1〜10質量%のMg
2SiO
4(例えばクドカンラン石(フォルステライト));0.1〜50質量%、又は0.1〜30質量%、又は0.1〜10質量%のアルミナ;0.1〜30質量%、又は0.1〜10質量%の多孔又は中空ガラス粒子;0.1〜50質量%、又は0.1〜30質量%、又は0.1〜20質量%の、9Al
2O
32B
2O
3又は2Al
2O
3B
2O
3等のアルミノホウ酸塩(aluminoborates);0.1〜30質量%、又は0.1〜20質量%のフッ化アルカリ;0.1〜30質量%、又は0.1〜20質量%のアルカリ土類フッ化物;0.1〜30質量%、又は0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、ZnOB
2O
3、3ZnOB
2O
3、5ZnO
2B
2O
3等のホウ酸亜鉛;0.1〜30質量%、又は0.1〜20質量%、又は0.1〜10質量%の、2ZnO
3TiO
2等のチタン酸亜鉛、並びにこれらの組み合わせを含む結晶性化合物を含むことができる。これらの添加剤は、球形モルフォロジー、又は棒状、ファセット結晶等の非球形モルフォロジーを含む、いずれかのモルフォロジー(morphology)を有することができる。
【0046】
固体部は、焼成誘電体材料の強度を調節する0.1〜50質量%の添加剤をさらに含むことができる。強度調節添加剤は、500nm未満ではないD50粒子径を有する前述の10〜99質量%のシリカ粉末とは異なるナノサイズシリカ(「ナノシリカ」)又はコロイダルシリカを含むことができる。ナノシリカは、粉末形態を採ることができ、5nm〜500nmのD50粒子径を有することができる。強度調節添加剤は、10μm未満のD50粒子径を有するマイクロサイズ粉末を含むこともできる。非限定的例において、マイクロサイズ粉末は、1〜2μm又は1.5μmのD50粒子径を有する。マイクロサイズ粉末は、Al
2O
3粉末、ZrO
2粉末、TiO
2粉末、SiC粉末、Si
3N
4粉末、Y
2O
3粉末、MgO粉末、又は他の高ヤング率粉末、及びこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0047】
焼成誘電体材料の用途は、バンドパスフィルタ(ハイパス又はローパス)、セル方式用途を含むデータ通信用無線送信機及び受信機、電力増幅器モジュール(PAM)、RFフロントエンドモジュール(FEM)、WiMAX2モジュール、LTEアドバンストモジュール、トランスミッションコントロールユニット(TCU)、電子パワーステアリング(EPS)、エンジンマネージメントシステム(EMS)、種々のセンサモジュール、レーダモジュール、圧力センサ、カメラモジュール、スモールアウトラインチューナーモジュール、装置及び部品用薄型プロファイルモジュール、並びにICテスタボード等の装置としての使用を含む。バンドパスフィルタは、2つの主要な部品、1つはコンデンサ、もう1つはインダクタ、を含む。低誘電率材料は、インダクタの設計にはよいが、十分な静電容量を発生させるより大きなアクティブエリアを必要とするためコンデンサの設計には適していないかもしれない。高誘電率材料は、その反対の結果となり得る。発明者は、低誘電率(4〜8)/中誘電率(10〜100)LTCC材料を1つの部品に入れて共焼成することができ、低誘電率材料をインダクタエリアの設計に使用することができ、高誘電率材料がコンデンサエリアの設計に使用され、最適化された性能を有することができることを見い出した。
【0048】
誘電体材料は、LTCC用途等において、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、及び導電体等の他のセラミックと共焼成することができる。導電体は、L8 LTCC Ag導電体(CN33−498、CN33−493、CN33−495)及びA6M LTCC Ag導電体(CN33−398、CN33−407、CN33−393)を含むことができる。Agペースト組成物は、低誘電率誘電体材料と親和するように調節することができる。
【0049】
本発明の誘電率材料用の好ましい導電体システムは銀系ではあるが、限定はされないが、AgPd、AgAuPt等の混合金属系システム;Au、AuPt、Pt、AuPtPd等の貴金属系ペースト;銅系導電体;ニッケル系導電体;及びアルミナ系導電体等の低焼成導電体;等も使用することができる。これらの導電体は、誘電体材料と共焼成することができ、又は誘電体材料を焼成した後に後焼成することができる。
【0050】
本主題は、乾式プレス&焼結、ホットプレス&焼結、冷焼結、ゾルゲル堆積及び焼成、テープキャスティング及び焼成、スクリーン印刷及び焼成、押出堆積&焼成、並びにデジタル印刷及び焼成を含む様々な処理及び形成方法を含む。動作周波数がGHzからTHz周波数に上がると、アンテナ等の誘電体装置は小型化することが見込まれるので、ますます小さな装置、例えばデジタル印刷技術によって形成されたもの、の形成が促進されるだろう。焼成は、標準的な炉焼成、レーザアシスト焼結等の高速焼成、又は他の電磁放射の照射による焼成とすることができる。
【実施例】
【0051】
以下のテーブル5A〜5B(表9〜10)の実施例は、本発明の好適な態様を例示するために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0052】
本主題の種々の態様及び利点をさらに評価するために、誘電体材料及び本主題による誘電体材料から形成された焼成誘電体装置を評価する一連の研究を行った。以下のテーブル5A(表9)は、本主題により調製された実施例1及び2に存在するガラス成分酸化物に加えて、ガラス成分酸化物の好ましい範囲を示す。
【0053】
【表9】
【0054】
テーブル5Aにおいて、実施例1は、最高温度900℃で1時間焼成し、実施例2は、最高温度850℃で1時間焼成し、両実施例は、3.5グラムのガラス成分(又はフリット)、及び1.5グラムの非晶質シリカを含有していた。実施例2は、追加的に、0.6グラム(約10質量%)のLiFを含有するが、実施例1はLiFを含有していなかった。
【0055】
実施例1は、焼成され、厚さ0.21mm、焼結密度96.4%、260℃における膨張係数25.2×10
−7/℃、損失正接値4.07×10
−3、10GHzにおけるK値3.2、及び10GHzにおけるQ値6932を有する、
図1に示すような透明誘電体層を形成した。実施例1の実際の焼成プロファイルを
図2に示す。実施例1のSEMを
図3及び
図4に示す。
【0056】
実施例1のヒューズドシリカを同量(すなわち30質量%)の石英で置換し、最高温度850℃で1時間焼成した別の研究を行った。石英を含む焼成誘電体材料は、260℃における膨張係数64.4×10
−7/℃、損失正接値3.17×10
−3、10GHzにおけるK値3.15、及び10GHzにおけるQ値8421を有する、
図5に示す厚さ0.18mmの透明誘電体層を生成した。次に、実施例1のヒューズドシリカを同量(すなわち30質量%)のクリストバライトで置換し、最高温度850℃で1時間焼成した。クリストバライトを含む焼成誘電体材料は、260℃における膨張係数124.5×10
−7/℃、損失正接値2.90×10
−3、10GHzにおけるK値2.90、及び10GHzにおけるQ値9412を有する、
図6に示す厚さ0.18mmの透明誘電体層を生成した。
【0057】
実施例2は、850℃で焼成し、厚さ0.19mm、並びに焼結密度86.5%、10GHzにおけるQ値2697.8、損失正接値1.71×10
−2、及び10GHzにおけるK値3.74を有する、
図7に示すような透明誘電体層を形成した。実施例2のSEM画像を
図8及び
図9に示す。
【0058】
比較例は、シリカ粉末を添加することなく、ガラス成分(フエロ社から入手可能なEG2790)のみを焼成することによって調製した。比較例は、700℃で焼成し、10GHzにおけるQ値9021.7、損失正接値2.91×10
−3、及び10GHzにおけるK値3.14を有する、
図10に示す厚さ0.16mmの透明誘電体層を生成した。比較例は、高いQ値及び低いK値を有したが、銀の移動が本発明の実施例1及び2よりも比較例のほうが大きく、LTCC用途において銀導電体と共焼成すると問題を生じ得ると考えられる。さらに、実施例1及び2における異なるシリカ粉末の添加は、誘電体材料の熱膨張係数の調節を可能にする。
【0059】
(誘電体材料のCTEが誘電体材料と共焼成される他の材料のCTEと整合するように誘電体材料を設計する際の主な検討事項自体である)シリカの異なる多形の添加によるCTE調節能力に加えて、ガラス成分へのシリカ粉末の添加は、A)焼結の間、誘電体材料の収縮を調整する能力;B)誘電体材料を焼結するのに必要な焼成温度を調節し、誘電体材料と共焼成される他の材料の焼成温度と整合するようにする能力;C)誘電体材料中の銀の移動を制御する能力;D)材料の破壊電圧(BDV)を制御するために焼成誘電体材料における泡の大きさを制御する能力;E)焼結誘電体材料における結晶化レベルを制御する能力;F)焼結誘電体材料の機械的強度を高める能力も可能となり得る。
【0060】
【表10】
【0061】
テーブル5B(表10)において、実施例3は最高温度850℃で1時間焼成し、実施例4は最高温度900℃で1時間焼成し、両実施例は8.8グラムの実施例1を含んでいた。実施例3は、追加的に、0.4グラム(約4質量%)のナノシリカ及び0.8グラム(約8質量%)のAl
2O
3を含み、実施例4は、追加的に1.2グラム(約12質量%)のAl
2O
3を含んでいた。
【0062】
上述のように、焼結誘電体材料の機械的強度を高めることは、強固な基材にとって重要となり得る。実施例3及び4は、実施例1と比較して強度改善を示す様々な強度添加剤の添加を可能にする。実施例1は95.2MPaの強度値を有するのに対し、実施例3及び4は、それぞれ、135.8MPa及び128.6MPaの値を有する。この強度改善は、高ヤング率充填剤の添加に加えて、サンプル中の孔の減少によるものであり得る。
【0063】
本主題は、以下の項目においてさらに説明することができる。
【0064】
[項目1]
0.5〜30μmのD50粒子径を有する10〜99質量%のシリカ粉末、及び1〜90質量%のガラス成分を含む固体部を焼結前に含む焼結誘電体材料であって、
ガラス成分は、
50〜90モル%SiO
2と、
5〜35モル%B
2O
3と
0.1〜10モル%Al
2O
3と、
0.1〜10モル%K
2Oと、
0.1〜10モル%Na
2Oと、
0.1〜20モル%Li
2Oと、
0.1〜30モル%Fと、を含み、
Li
2O+Na
2O+K
2Oの総量がガラス成分の0.1〜30モル%であり、
焼結誘電体材料は、1100℃未満で焼結されたとき、8未満の誘電率及び500よりも高いQ値を有する、焼結誘電体材料。
【0065】
[項目2]
固体部は、
0.1〜10質量%ケイ酸カルシウムリチウム、
0.1〜10質量%β−ユークリプタイト、
0.1〜10質量%ホウ酸アルミニウムリチウム、
0.1〜10質量%シリマナイト、
0.1〜10質量%アルバイト、
0.1〜10質量%リン酸マグネシウム、
0.1〜10質量%リン酸アルミニウム、
0.1〜10質量%コーディエライト、
0.1〜10質量%ケイ酸亜鉛鉱、
0.1〜10質量%ムライト、
0.1〜10質量%珪灰石、
0.1〜10質量%ホウ酸カルシウム、
0.1〜10質量%クドカンラン石、
0.1〜10質量%アルミナ、
0.1〜10質量%多孔又は中空ガラス粒子、
0.1〜20質量%フッ化アルカリ、
0.1〜20質量%ホウ酸アルミニウム、
0.1〜20質量%ホウケイ酸マグネシウム、
0.1〜20質量%アルミノケイ酸マグネシウム、
0.1〜20質量%アルカリ土類フッ化物、
0.1〜20質量%ホウ酸亜鉛、
0.1〜20質量%チタン酸亜鉛、及び
これらの組み合わせ、
からなる群から選択される1つの結晶性化合物をさらに含む、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0066】
[項目3]
シリカ粉末は非晶質シリカ粉末である、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0067】
[項目4]
シリカ粉末は、石英、クリストバライト、リンケイ石、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される結晶性シリカ粉末である、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0068】
[項目5]
固体部は、
5〜85モル%Bi
2O
3と、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2Oと、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むBi−B−Si酸化物ガラスフリット、
5〜65モル%ZnOと、
10〜65モル%SiO
2と、
5〜55モル%B
2O
3と、
を含む酸化亜鉛系ガラスフリット、
5〜55モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
2〜26モル%TiO
2+ZrO
2と、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜30モル%TeO
2+V
2O
5+Sb
2O
5+P
2O
5と、
0.1〜20モル%MgO+CaO+BaO+SrOと、
0.1〜20モル%Fと、
を含むアルカリ−チタン−シリケートガラスフリット、
15〜75モル%BaO+CaO+SrO+MgOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むアルカリ土類シリケートガラスフリット、
15〜75モル%MgOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸マグネシウムガラスフリット、
15〜75モル%CaOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸カルシウムガラスフリット、
15〜75モル%SrOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸ストロンチウムガラスフリット、
15〜75モル%BaOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸バリウムガラスフリット、及び
これらの組み合わせ、
からなる群から選択される1つを5〜50質量%さらに含む、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0069】
[項目6]
固体部は、10nmから30μmの平均径を有する0.1〜10質量%の粒子をさらに含み、
粒子は、中空シリカ球、中空ガラス粒子、多孔ケイ酸塩ガラス粒子、多孔有機ケイ酸塩ガラス粒子、キセロゲル粒子、エーロゲル粒子、マイカ粒子、ゼオライト粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0070】
[項目7]
固体部は、10〜95質量%のシリカ粉末と、5〜90質量%のガラス成分と、を含む、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0071】
[項目8]
a)5〜500nmのD50粒子径を有するナノサイズシリカ、
b)Al
2O
3粉末、
c)ZrO
2粉末、
d)TiO
2粉末、
e)SiC粉末、
f)Si
3N
4粉末、
g)Y
2O
3粉末、又は
h)MgO粉末、
のうちの1つ又は複数を含む0.1〜30質量%の添加剤をさらに含む、項目1に記載の焼結誘電体材料。
【0072】
[項目9]
項目1に記載の焼結誘電体材料を含む電子部品。
【0073】
[項目10]
固体部を含む誘電体組成物を提供する工程であって、固体部が0.5〜30μmのD50粒子径を有する10〜99質量%のシリカ粉末、及び1〜90質量%のガラス成分を含み、
ガラス成分が、
50〜90モル%SiO
2と、
0.1〜35モル%B
2O
3と
0.1〜25モル%Al
2O
3と、
0.1〜10モル%K
2Oと、
0.1〜10モル%Na
2Oと、
0.1〜20モル%Li
2Oと、
0.1〜30モル%Fと、を含み、
Li
2O+Na
2O+K
2Oがガラス成分の0.1〜30モル%である工程と、
固体部を焼結するために700〜1100℃まで10〜10000分間誘電体組成物を加熱し、これにより誘電体部品を形成する工程と、を含み、
誘電体部品が8未満の誘電率及び500よりも高いQ値を有する、誘電体部品を形成する方法。
【0074】
[項目11]
固体部は、
0.1〜10質量%ケイ酸カルシウムリチウム、
0.1〜10質量%β−ユークリプタイト、
0.1〜10質量%ホウ酸アルミニウムリチウム、
0.1〜10質量%シリマナイト、
0.1〜10質量%アルバイト、
0.1〜10質量%リン酸マグネシウム、
0.1〜10質量%リン酸アルミニウム、
0.1〜10質量%コーディエライト、
0.1〜10質量%ケイ酸亜鉛鉱、
0.1〜10質量%ムライト、
0.1〜10質量%珪灰石、
0.1〜10質量%ホウ酸カルシウム、
0.1〜10質量%クドカンラン石、
0.1〜10質量%アルミナ、
0.1〜10質量%多孔又は中空ガラス粒子、
0.1〜20質量%フッ化アルカリ、
0.1〜30質量%ホウ酸アルミニウム、
0.1〜20質量%ホウケイ酸マグネシウム、
0.1〜20質量%アルミノケイ酸マグネシウム、
0.1〜20質量%アルカリ土類フッ化物、
0.1〜20質量%ホウ酸亜鉛、
0.1〜20質量%チタン酸亜鉛、及び
これらの組み合わせ、
からなる群から選択される1つの結晶性化合物をさらに含む、項目10に記載の方法。
【0075】
[項目12]
シリカ粉末は非晶質シリカ粉末である、項目10に記載の方法。
【0076】
[項目13]
シリカ粉末は、石英、クリストバライト、リンケイ石、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される結晶性シリカ粉末である、項目10に記載の方法。
【0077】
[項目14]
固体部は、
5〜85モル%Bi
2O
3と、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2Oと、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むBi−B−Si酸化物ガラスフリット、
5〜65モル%ZnOと、
10〜65モル%SiO
2と、
5〜55モル%B
2O
3と、
を含む酸化亜鉛系ガラスフリット、
5〜55モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
2〜26モル%TiO
2+ZrO
2と、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜30モル%TeO
2+V
2O
5+Sb
2O
5+P
2O
5と、
0.1〜20モル%MgO+CaO+BaO+SrOと、
0.1〜20モル%Fと、
を含むアルカリ−チタン−シリケートガラスフリット、
15〜75モル%BaO+CaO+SrO+MgOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むアルカリ土類シリケートガラスフリット、
15〜75モル%MgOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸マグネシウムガラスフリット、
15〜75モル%CaOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸カルシウムガラスフリット、
15〜75モル%SrOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸ストロンチウムガラスフリット、
15〜75モル%BaOと、
5〜75モル%B
2O
3+SiO
2と、
0.1〜55モル%ZnOと、
0.1〜40モル%Li
2O+Na
2O+K
2O+Cs
2O+Rb
2Oと、
0.1〜20モル%TiO
2+ZrO
2と、
を含むケイ酸バリウムガラスフリット、及び
これらの組み合わせ、
からなる群から選択される1つを5〜50質量%さらに含む、項目10に記載の方法。
【0078】
[項目15]
固体部は、10nmから30μmの平均径を有する0.1〜10質量%の粒子をさらに含み、
粒子は、中空シリカ球、中空ガラス粒子、多孔ケイ酸塩ガラス粒子、多孔有機ケイ酸塩ガラス粒子、キセロゲル粒子、エーロゲル粒子、マイカ粒子、ゼオライト粒子、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、項目10に記載の方法。
【0079】
[項目16]
固体部は、10〜95質量%のシリカ粉末と、5〜90質量%のガラス成分と、を含む、項目10に記載の方法。
【0080】
[項目17]
固体部が、
a)5〜500nmのD50粒子径を有するナノサイズシリカ、
b)Al
2O
3粉末、
c)ZrO
2粉末、
d)TiO
2粉末、
e)SiC粉末、
f)Si
3N
4粉末、
g)Y
2O
3粉末、又は
h)MgO粉末、
のうちの1つ又は複数を含む0.1〜30質量%の添加剤をさらに含む、項目10に記載の方法。
【0081】
ほかの多くの利点が、この技術の将来の適用及び開発から明らかになることは間違いないであろう。
【0082】
本書に記載されたすべての特許、用途、標準、及び物品は、参照によって全体としてここに繰み込まれているものとする。
【0083】
本主題は、本書に記載された特徴及び態様のすべての作用可能な組み合わせを含む。したがって、例えば、ある特徴がある実施形態に関連して記載され、別の特徴ば別の実施形態に関連して記載されているならば、本主題は、これらの特徴の組み合わせを有する実施形態を含むと理解されるであろう。
【0084】
上記に記載したように、本主題は、以前の戦略、システム及び/又は装置に関連付られた多くの問題を解決する。しかしながら、本主題の本質を説明するために本書に記載及び例示された、成分(部品)の細部、材料及び配置の種々の変更は、添付の特許請求の範囲に表現されているように、特許請求された主題の原理及び範囲から逸脱することなく、当業者によってなすことができると認識されるだろう。