(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)成分の合計100重量部に対して、(A−1)23℃における粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサンの含有量が、10重量部超90重量部以下である、請求項1又は2記載の接着性ポリオルガノシロキサン組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[用語の定義]
シロキサン化合物の構造単位を、以下のような略号によって記載することがある(以下、これらの構造単位をそれぞれ「M単位」「D
H単位」等ということがある)。
M
:(CH
3)
3SiO
1/2
M
H:(CH
3)
2HSiO
1/2
M
V:(CH
3)
2(CH
2=CH)SiO
1/2
D
:(CH
3)
2SiO
2/2
D
H:(CH
3)HSiO
2/2
D
V:(CH
3)(CH
2=CH)SiO
2/2
T
:CH
3SiO
3/2
Q
:SiO
4/2(四官能性)
【0009】
本明細書において、基の具体例は以下のとおりである。
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルケニル基が挙げられる。脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基としては、アルケニル基以外の前記1価の炭化水素基が挙げられる。
アルケニル基は、炭素原子数2〜6の直鎖又は分岐状の基であり、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基及び5−ヘキセニル基等が挙げられる。
アルキル基は、炭素原子数1〜18の直鎖又は分岐状の基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基及びオクタデシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基は、炭素原子数3〜20の単環又は多環の基であり、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基は、炭素原子数6〜20の単環又は多環の基を含む芳香族基であり、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基は、アリール基で置換されたアルキル基であり、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等が挙げられる。
アルキレン基は、炭素原子数1〜18の直鎖又は分岐状の基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2−メチルエチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。
アルケニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及びアルキレン基は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン;シアノ基等で置換されていてもよい。ハロゲンで置換された基としては、クロロメチル基、クロロフェニル基、2−シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0010】
本明細書において、「(D)フィラー」を「(D)」ともいう。「(E)白金族金属化合物」等についても同様である。
【0011】
本明細書において、「比表面積」は、BET法による比表面積である。
本明細書において、「粘度」は、JIS K 6249に準拠して、回転粘度計を用いて、スピンドル番号及び回転数を適宜設定し、23℃の条件で測定した値である。
本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
[接着性ポリオルガノシロキサン組成物]
接着性ポリオルガノシロキサン組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、
(A)分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1〜500Pa・sである直鎖状ポリオルガノシロキサンであって、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む、直鎖状ポリオルガノシロキサン;
(B)必須の単位としてR
3SiO
1/2単位及びR
2SiO
2/2単位からなる群から選択される1種以上の単位と、SiO
4/2単位とを含み、任意の単位としてRSiO
3/2単位(式中、Rは、R
1又はR
2であり、R
1は、前述のとおりであり、R
2は、脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価の炭化水素基を表す)を含み、R中、1分子あたり少なくとも3個がR
1であるポリオルガノシロキサン;
(C)下記(C1)及び(C2):
(C1)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(C2)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子鎖の両末端にのみ、それぞれ1個ずつ含み、かつ分子中に脂肪族不飽和結合を有しない直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン;
(D)フィラー;
(E)白金族金属化合物;並びに
(F)下記(F1)〜(F4):
(F1)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【化3】
で示される側鎖とを有する有機ケイ素化合物、
(F2)Si(OR
3)
n基とエポキシ基含有基を有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(F3)Si(OR
3)
n基と脂肪族不飽和炭化水素基を有するシラン化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物、並びに
(F4)有機アルミニウム化合物
(上記各式中、Q
1は、ケイ素原子とエステル結合の間に2個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;Q
2は、酸素原子と側鎖のケイ素原子の間に3個以上の炭素原子を有する炭素鎖を形成する、直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し;R
3は、炭素数1〜4のアルキル基又は2−メトキシエチル基を表し;nは、1〜3の整数である)
からなる群より選択される、少なくとも2種;
を含み、
(A)成分中のR
1基及び(B)成分中のR
1基の合計に対する、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の合計の比(H/Vi)が、0.2以上1.5未満であり、
(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のうち、(C2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の割合が、20〜99モル%であり、
(D)成分の含有量が組成物中の20重量%以下であり、
(E)成分の白金
族金属原子の量が、(A)成分と(B)成分の合計量に対して0.1〜1,000重量ppmである。
【0013】
<(A)直鎖状ポリオルガノシロキサン>
(A)成分は、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1〜500Pa・sである直鎖状ポリオルガノシロキサンであって、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む、直鎖状ポリオルガノシロキサンである。(A)成分は、組成物において、ベースポリマーとなる成分である。
【0014】
「分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサン」を、「(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサン」ともいう。また、(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む、(A)分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が、0.1〜500Pa・sである直鎖状ポリオルガノシロキサンを、「(A)直鎖状ポリオルガノシロキサン」ともいう。
【0015】
(A)成分は、前記した粘度を有し、(C)成分のSi−H結合との付加反応により、網状構造を形成することができるものであれば、どのようなものであってもよいが、代表的には、一般式(II):
(R
1)
a(R
2)
bSiO
(4−a−b)/2 (II)
(式中、
R
1は、アルケニル基を表し;
R
2は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基を表し;
aは、1又は2であり;
bは0〜2の整数であり、ただし、a+bは2又は3である)
で示されるアルケニル基含有シロキサン単位を、分子中に少なくとも2個有するアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンである。
【0016】
R
1は、合成が容易で、また未硬化状態の組成物の流動性や、組成物の硬化物の耐熱性を損ねないことから、ビニル基が好ましい。aは、合成が容易であることから、1が好ましい。R
2は、合成が容易であって、機械的強度及び未硬化状態の組成物の流動性などの特性のバランスが優れていることから、メチル基が好ましい。(A)成分中の他のシロキサン単位のケイ素原子に結合した有機基としては、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基が挙げられる。前記有機基は、R
2と同様の理由から、メチル基が好ましい。
【0017】
(A)成分としては、(A’)両末端がR
3SiO
1/2単位で封鎖され、中間単位がR
22SiO
2/2単位である直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。ここで、RはR
1又はR
2であるが、R中、1分子あたり2個以上がR
1である。(A’)成分におけるR
3SiO
1/2単位は、R
1R
22SiO
1/2単位、R
12R
2SiO
1/2単位又はR
13SiO
1/2単位であることが好ましく、R
1R
22SiO
1/2単位であることが特に好ましい。(A’)成分におけるR
22SiO
2/2単位は、R
1R
2SiO
2/2単位又はR
2SiO
2/2単位が挙げられる。
【0018】
R
1は、(A)成分の分子鎖の末端又は途中のいずれに存在してもよく、その両方に存在してもよい。R
1は、組成物の硬化物に優れた機械的性質を与えるために、少なくともその両末端に存在していることが好ましい。よって(A’)成分は、両末端がR
1R
22SiO
1/2単位で閉塞され、中間単位がR
2SiO
2/2単位のみからなる直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましく、両末端がM
vi単位(ジメチルビニルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(ジメチルシロキサン単位)のみからなる直鎖状のポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
【0019】
(A)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0020】
<<(A)成分の粘度>>
(A)成分の粘度は、23℃において、0.1〜500Pa・sである。(A)成分の粘度が、0.1〜500Pa・sの範囲であると、未硬化状態の組成物が、良好な流動性を示して、注型やポッティングの際に優れた作業性を示し、組成物の硬化物が、優れた機械的強度、及び適度の弾性と硬さを示す。(A)成分の粘度は、0.1〜300Pa・sであることが好ましく、0.1〜20Pa・sであることがより好ましく、0.1〜15Pa・sであることがさらに好ましく、0.2〜15Pa・sであることがよりさらに好ましく、0.3〜15Pa・sであることが特に好ましい。
【0021】
(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃において、0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である。(A1)成分は、必須の成分として(A)成分中に含まれる成分である。組成物が(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む場合、効率的に、より低い粘度を有する組成物が得られる。(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンの粘度は、23℃において、0.1Pa・s以上0.5Pa・s以下であることが好ましい。
【0022】
ここで、組成物中に、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサンが複数存在する場合、(A)成分の粘度は当該複数の物質の合計の粘度を意味する。例えば、(A)成分が、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサンの2種以上の組合せである場合、(A)成分の粘度とは、混合された直鎖状ポリオルガノシロキサンの粘度を意味する。よって、(A)成分の粘度が、23℃において、0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満である場合、(A)成分は、(A1)成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分は、23℃において、0.1Pa・s以上500Pa・s以下である、分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサンのみからなっていてもよい。
【0023】
(A1)成分以外の(A)成分に含まれる成分の粘度は、(A)成分の粘度が、23℃において、0.1〜500Pa・sである限り、任意である。このような成分として、(A2)分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が1.0Pa・s以上である直鎖状ポリオルガノシロキサンが好ましく、1.0Pa・s以上500Pa・s以下である直鎖状ポリオルガノシロキサンが特に好ましい。このような(A2)成分としては、(A2−1)分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が1.0Pa・s以上10.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサン、及び(A2−2)分子中に2個以上のR
1(式中、R
1は、アルケニル基を表す)を含有し、23℃における粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下である直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。ここで、(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンの粘度が、好ましい範囲である、23℃において、0.1Pa・s以上0.5Pa・s未満である場合、(A2)成分の下限は、0.5Pa・s以上となることができる。
【0024】
(A)成分は、(A1)成分、(A2−1)成分及び(A2−2)成分を含むことが特に好ましい。また、(A)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有さないことが好ましい。
【0025】
<(B)分岐状ポリオルガノシロキサン>
(B)成分は、必須の単位として、R
3SiO
1/2単位及びR
2SiO
2/2単位からなる群から選択される1種以上の単位とSiO
4/2単位とを含み、任意の単位として、RSiO
3/2単位(式中、Rは、R
1又はR
2であり、R
1は、前述のとおりであり、R
2は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基を表す)を含み、R中、1分子あたり少なくとも3個がR
1であるポリオルガノシロキサン(「(B)分岐状ポリオルガノシロキサン」ともいう。)である。(B)成分は、組成物において、ベースポリマーとなる成分であり、組成物の硬化物に優れた機械的強度を与え、千切れにくくするための成分である。(B)成分は、硬化反応において架橋点となるように、1分子あたり少なくとも3個のRがR
1であり、残余がR
2ある。
【0026】
R
1は、R
3SiO
1/2単位のRとして存在してもよく、R
2SiO
2/2単位のRとして存在してもよい。硬化性を調整しやすいことから、R
3SiO
1/2単位に存在することが好ましい。即ち、(B)成分に含まれるR
3SiO
1/2単位の一部又は全部が、R
1R
22SiO
1/2単位であることが好ましい。
【0027】
(B)成分に含まれる単位の組み合わせとして、(B1)SiO
4/2単位、R
1R
22SiO
1/2単位及びR
22SiO
2/2単位の組み合わせ、並びに(B2)SiO
4/2単位、R
23SiO
1/2単位及びR
1R
2SiO
2/2単位の組み合わせが挙げられる。硬化性の調整しやすさと強度バランスの両立が容易であることから、(B2)成分の構造が好ましい。
【0028】
優れた機械的強度を有する硬化物を与えることから、R
3SiO
1/2単位とSiO
4/2単位の比率は、モル比として、1:0.8〜1:3の範囲の、室温で固体ないし粘稠な半固体の樹脂状のものが好ましい。
【0029】
(B)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。また、(B)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有さないことが好ましい。
【0030】
<(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン>
(C)成分は、(C1)成分及び(C2)成分の組み合わせである。ここで、(C1)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、(C2)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を、分子鎖の両末端にのみ、それぞれ1個ずつ含み、かつ分子中に脂肪族不飽和結合を有しない直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。(C)成分は、分子中に含まれるヒドロシリル基(Si−H)が、(A)成分及び(B)成分中のR
1との間で付加反応することにより、(A)成分及び(B)成分の架橋剤として機能する。
【0031】
<<(C1)>>
(C1)成分は、付加反応に関与するケイ素原子に結合した水素原子を、少なくとも3個有しているため、組成物の硬化物を網状化するのに寄与する成分である。(C1)成分中のケイ素原子に結合した水素原子は、(C1)成分の1分子あたり、3〜100個であることが好ましく、5〜50個であることが特に好ましい。この範囲にあると、優れた機械的強度及び弾性率がより低い硬化物を与えることができる。
【0032】
(C1)成分は、代表的には、一般式(III):
(R
5)
cH
dSiO
(4−c−d)/2 (III)
(式中、
R
5は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基を表し;
cは、0〜2の整数であり;
dは、1又は2であり、ただし、c+dは1〜3の整数である)
で示される単位を分子中に3個以上有する。
【0033】
R
5は、合成が容易であることから、メチル基が好ましい。また、dは、合成が容易であることから、1が好ましい。合成が容易であることから、(C1)成分は、3個以上のシロキサン単位からなることが好ましい。また、硬化温度に加熱しても揮発せず、かつ未硬化状態の組成物が流動性に優れ、(A)成分及び(B)成分と混合しやすいことから、(C1)成分のシロキサン単位の数は、6〜200個であることが好ましく、10〜150個であることが特に好ましい。(C1)成分におけるシロキサン骨格は、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよい。
【0034】
(C1)成分は、(C1−1)両末端が、それぞれ独立して、R
73SiO
1/2単位で閉塞され、中間単位が、それぞれ独立して、R
72SiO
2/2単位のみからなる、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び、(C1−2)R
73SiO
1/2単位とSiO
4/2単位のみからなる、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(上記各式中、R
7は、それぞれ独立して、水素原子又はR
5であるが、ただし、R
7のうち、少なくとも3つは水素原子である)であることが好ましい。(C1−1)成分及び(C1−2)成分の場合において、R
73SiO
1/2単位としては、HR
52SiO
1/2単位及びR
53SiO
1/2単位が挙げられ、R
72SiO
2/2単位としては、HR
5SiO
2/2単位及びR
52SiO
2/2単位が挙げられる。(C1−1)成分の場合において、ケイ素原子に結合する水素原子は、末端に存在していても、中間単位に存在していてもよいが、中間単位に存在することが好ましい。
【0035】
(C1)成分としては、(C1−1’)両末端がM単位(トリメチルシロキサン単位)で閉塞され、中間単位がD単位(ジメチルシロキサン単位)及びD
H単位(メチルハイドロジェンシロキサン単位)のみからなり、ジメチルシロキサン単位1モルに対して、メチルハイドロジェンシロキサン単位が0.1〜2.0モルである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン、並びに、(C1−2’)M
H単位(ジメチルハイドロジェンシロキサン単位)及びQ単位(SiO
2/2単位)のみからなるポリメチルハイドロジェンシロキサンが特に好ましい。
(C1)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。また、(C1)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有さないことが好ましい。
【0036】
<<(C2)>>
(C2)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を分子鎖の両末端にのみ、それぞれ1個ずつ有しているため、組成物の硬化物に良好な伸びを付与する成分である。(C2)成分は、代表的には、一般式(IV):
【0037】
【化4】
【0038】
(式中、R
6は、脂肪族不飽和結合を有しない、非置換又は置換の1価の炭化水素基を表し;mは、23℃における粘度を、0.001〜10Pa・sとする数である)で示される、直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが挙げられる。
【0039】
R
6は、合成が容易であることから、メチル基が最も好ましい。なお、R
6は、同一でも、異なっていてもよいが、合成が容易であることから、同一のものが好ましい。具体的には、α,ω−ジメチルシリル末端ポリオルガノシロキサン、たとえばα,ω−ジメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
(C2)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。また、(C2)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を有さないことが好ましい。
【0040】
<(D)フィラー>
(D)フィラーは、未硬化状態の組成物に適度な流動性を与え、硬化物に、その用途に応じて要求される高い機械的強度を付与する成分であり、無機充填剤が好ましい。このような無機充填剤としては、煙霧質シリカ、焼成シリカ、シリカエアロゲル、沈殿シリカ、煙霧質酸化チタン、及びこれらの表面をポリオルガノシロキサン類、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化したもののような補強性充填剤;並びにけいそう土、粉砕シリカ、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム、有機酸表面処理炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄のような非補強性フィラーが挙げられ、押出し作業性と、硬化物に必要な物性に応じて選択される。また、目的に応じて、無機フィラーに代えて、又は併用して、カーボンブラックのような導電性充填剤を配合しても良い。高い流動性と補強性とを両立するために、煙霧質シリカが最も好ましい。そのような煙霧質シリカの比表面積は、特に限定されないが、50〜500m
2/gであることが好ましく、100〜400m
2/gであることが特に好ましい。
【0041】
<(E)白金族金属化合物>
(E)白金族金属化合物は、(A)成分及び(B)成分中のアルケニル基と(C)成分中のヒドロシリル基との間の付加反応を促進させ、また同様の付加反応によって、架橋重合体のシロキサン網状構造に、後述する(F1)成分及び/又は(F3)成分を導入するための触媒である。
【0042】
(E)成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールの反応生成物(例えば、ラモローの触媒(白金−オクタノール錯体、米国特許第3220972号明細書))、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ケトン錯体、白金−ホスフィン錯体のような白金化合物等が挙げられる。これらのうち、触媒活性が良好であることから、塩化白金酸とアルコールの反応生成物、及び、白金−ビニルシロキサン錯体が好ましいと考えられるが、特に限定されるものではない。
(E)成分は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0043】
<(F)接着性付与剤>
(F)接着性付与剤は、下記(F1)成分〜(F4)成分からなる群より選択される少なくとも2種である。
(F1)ケイ素原子に結合した水素原子と、ケイ素原子に結合した下記式(I):
【化5】
で示される側鎖とを有する有機ケイ素化合物、
(F2)Si(OR
3)
n基とエポキシ基含有基を有する有機ケイ素化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物
(F3)Si(OR
3)
n基と脂肪族不飽和炭化水素基を有するシラン化合物、及び/又はその部分加水分解縮合物、並びに
(F4)有機アルミニウム化合物
(上記各式中、Q
1、Q
2、R
3及びnは、前記のとおりである。)
【0044】
(F)成分は、組成物に様々な基材に対する接着性を付与する成分である。(F1)成分、(F2)成分、(F3)成分及び(F4)成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、(F)成分は、1種の(F1)成分と2種の(F2)成分と2種の(F3)成分との組合せであってもよい。
【0045】
<<(F1)>>
(F1)成分は、組成物の硬化のための付加反応の際に、(A)成分及び(B)成分との付加反応によって、架橋したシロキサン構造に導入され、式(I)の側鎖が接着性を発現する部分として、組成物の接着性に寄与する成分である。また、(F1)成分の側鎖に存在するアルコキシ基(以下、アルコキシ基は、2−メトキシエトキシ基を包含する)は、(F2)成分及び/又は(F3)成分のアルコキシ基との共加水分解・縮合反応により、(F2)成分及び/又は(F3)成分をシロキサン骨格に導入するにも寄与する。
【0046】
Q
1は、合成及び取扱いが容易であることから、エチレン基及び2−メチルエチレン基が好ましい。Q
2は、合成及び取扱いが容易であることから、トリメチレン基が好ましい。R
3は、良好な接着性を与え、かつ加水分解によって生じるアルコールが揮発しやすいことから、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0047】
(F1)成分の特徴である上記の水素原子と上記の側鎖とは、合成が容易であることから、別個のケイ素原子に結合していることが好ましい。したがって、(F1)成分の基本部分は、鎖状、分岐状又は環状シロキサン骨格を形成していることが好ましく、特定の化合物を制御よく合成し、精製しうることから、環状シロキサン骨格が特に好ましい。(F1)成分に含まれるSi−H結合の数は、1個以上の任意の数であり、環状シロキサン化合物の場合、2個又は3個が好ましい。
【0048】
(F1)成分としては、下記の化合物が挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
<<(F2)>>
(F2)成分は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基(以下、OR
3に関しては、2−メトキシエトキシ基を包含する)と、(F1)成分、(F3)成分及び/又は(F4)成分のケイ素原子に結合したアルコキシ基との加水分解・縮合反応によって、架橋したシロキサン構造に導入され、エポキシ基が接着性を発現する部分として、組成物の接着性、特にプラスチックに対する接着性の向上に寄与する成分である。
【0051】
R
3は、良好な接着性を与えることから、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。nは、2又は3が好ましい。エポキシ基含有基としては、合成が容易で、加水分解性がなく、優れた接着性を示すことから、3−グリシドキシプロピル基のような、エーテル酸素原子を含む脂肪族エポキシ基含有基;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基のような脂環式エポキシ基含有基などが好ましい。ケイ素原子に結合したアルコキシ基の数は、分子中2個以上であることが好ましい。OR
3基とエポキシ基含有基とは、同一のケイ素原子に結合していてもよく、別のケイ素原子に結合していてもよい。
【0052】
(F2)成分としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような3−グリシドキシプロピル基含有アルコキシシラン類;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランのような2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有アルコキシシラン類;nが2以上のこれらシラン類の部分加水分解縮合物;並びに鎖状又は環状メチルシロキサンのメチル基の一部が、トリメトキシシロキシ基又は2−(トリメトキシシリル)エチル基と、上記のエポキシ基含有基とで置き換えられた炭素/ケイ素両官能性シロキサンなどが挙げられる。
【0053】
<<(F3)>>
(F3)成分は、(F3)成分が有するケイ素原子に結合したアルコキシ基と、(F1)成分、(F2)成分及び/又は(F4)成分が有するケイ素原子に結合したアルコキシ基との加水分解・縮合反応によって、架橋したシロキサン構造に導入される。または、(F3)成分の有する脂肪族不飽和炭化水素基が、組成物の硬化のための付加反応の際に、(C)成分との付加反応によって、架橋したシロキサン構造に導入され、(F3)成分の有するケイ素原子に結合したアルコキシ基が他の(F3)成分のアルコキシ基、及び(F2)成分と併用する場合は、(F2)成分のアルコキシ基との共加水分解・縮合反応によって、他の(F3)成分及び/又は(F2)成分をシロキサン構造に導入する。そして、残存するアルコキシ基が、接着性を発現する部分として、組成物の接着性、特に金属に対する接着性の向上に寄与する成分である。
【0054】
R
3としては、良好な接着性を与えることから、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。nは、2又は3が好ましい。脂肪族不飽和炭化水素基は、ビニル、アリル、3−ブテニルのようなアルケニル基の場合、ケイ素原子に直接結合していてもよく、3−アクリロキシプロピル、3−メタクリロキシプロピルのように、不飽和アシロキシ基が3個以上の炭素原子を介してケイ素原子に結合していてもよい。不飽和炭化水素基含有基としては、合成及び取扱いが容易であることから、ビニル基、メタクリロキシプロピル基などが好ましい。
【0055】
(F3)成分としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、メチルアリルジメトキシシランのようなアルケニルアルコキシシラン類及び/又はその部分加水分解物;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピル(メチル)ジメトキシシランのような(メタ)アクリロキシプロピル(メチル)ジ−及び(メタ)アクリロキシプロピルトリ−アルコキシシラン類及び/又はその部分加水分解物等が挙げられる。
【0056】
<<(F4)>>
(F4)成分は、有機アルミニウム化合物である。(F4)成分としては、(MeO)
3Al、(EtO)
3Al、(n−PrO)
3Al等のアルミニウムアルコラート;ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸若しくは安息香酸等のアルミニウム塩;アルミニウムアルコラートとアセト酢酸エステル又はジアルキルマロネート等との反応生成物等のアルミニウムキレート;アルミニウムオキサイドの有機酸塩;及び、アルミニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。(F4)成分は、加水分解性に優れることからアルミニウムキレート又はアルミニウムアルコラートが好ましく、液状での取扱性に優れることから、ビスエチルアセトアセテートアルミニウムモノアセチルアセトネート又はアルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレートが好ましい。
【0057】
<<好ましい態様>>
(F)成分は、(F2)成分を含むことが好ましい。即ち、(F)成分は、(F1)成分、(F3)成分及び(F4)成分からなる群より選択される1種以上と、(F2)成分との組合せであることが好ましい。また、(F)成分は、(F1)成分と(F2)成分の組合せ、(F1)成分と(F2)成分と(F3)成分の組合せ、又は、(F2)成分と(F4)成分の組合せであることが特に好ましい。
【0058】
<(G)更なる成分>
組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(G)更なる成分を含むことができる。このような成分として、(G1)他の接着性付与剤(但し、(F)接着性付与剤を含まない)、(G2)反応調整剤、(G3)各種の添加剤等が挙げられる。(G)更なる成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0059】
<<(G1)他の接着性付与剤(但し、(F)接着性付与剤を含まない)>>
(G1)成分としては、(G1−1)Si(OR
4)
4で示されるテトラアルコキシシラン化合物、及び/又はその部分加水分解物、並びに(G1−2)金属アルコキシド類(但し、アルミニウムアルコキシドを含まない)が挙げられる、
【0060】
(G1−1)成分は、組成物の金属への接着性を、さらに向上させる成分である。R
4は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、容易に入手でき、取扱いが容易で、接着性の向上効果が著しいことから、メチル基、エチル基が好ましい。また、加水分解性に優れる、毒性が低くなることから、(G1−1)成分は、テトラアルコキシシラン化合物の部分加水分解物であることが好ましい。
【0061】
(G1−2)成分は、組成物の接着性を、さらに向上させる成分である。(G1−2)成分としては、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソブトキシド、チタンテトライソプロペニルオキシドのようなチタンアルコキシド;ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド等の金属アルコキシド類(但し、アルミニウムアルコキシドを含まない)が挙げられる。
【0062】
<<(G2)反応調整剤>>
(G2)反応調整剤としては、マレイン酸ジアリル等の分子中に極性基を有する有機化合物;アセチレンアルコール類やその誘導体等の不飽和結合を有する有機化合物;等が挙げられる。(G2)反応調整剤は、組成物の硬化反応速度を抑制して、取扱いの作業性、及び接着性の発現と硬化速度とのバランスの向上に寄与する成分である。
【0063】
<<(G3)各種の添加剤>>
組成物は、目的に応じて、更に、有機溶媒、顔料、チクソトロピー性付与剤、押出し作業性を改良するための粘度調整剤、紫外線防止剤、防かび剤、耐熱性向上剤、難燃化剤等の(G3)各種の添加剤を含むことができる。(G3)各種の添加剤は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。なお、用途によっては、組成物を、トルエン、キシレンのような有機溶媒に溶解ないし分散させてもよい。
【0064】
[組成]
組成物中の各成分の含有量は以下のとおりである。
(A)成分の含有量は、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分の合計100重量部に対し、10〜5,000重量部であることが好ましく、50〜4,000重量部であることがより好ましく、100〜3,000重量部であることが特に好ましい。このような範囲であると、接着性を効率的に高めることができる。
【0065】
(A1)低粘度の直鎖状ポリオルガノシロキサンの含有量は、(A)成分の合計100重量部に対して、10重量部超99重量部以下であることが好ましく、10重量部超90重量部以下であることがより好ましく、20重量部以上90重量部以下であることが特に好ましい。また、(A2−1)23℃において、粘度が1.0Pa・s以上10.0Pa・s未満である直鎖状ポリオルガノシロキサンの含有量は、(A)成分の合計100重量部に対して、1重量部〜60重量部以下であることが好ましく、10重量部以上80重量部以下であることが特に好ましい。(A1)成分及び(A2−1)成分の含有量が前記範囲であると、組成物の粘度が効率的に低くなる。また、架橋密度が高くなりすぎず、硬化物の弾性率がより低くなる。
【0066】
(B)分岐状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンの含有量は、(A)直鎖状アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンの100重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜80重量部であることがより好ましく、1〜60重量部であることが更に好ましく、5〜50重量部であることが特に好ましい。前記(B)成分の含有量が100重量部以下であると、架橋密度が高くなりすぎず、硬化物の弾性率がより低くなる。また、前記(B)成分の含有量がこのような範囲であると、機械的強度を補強し、千切れにくくすることができる。
【0067】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分のアルケニル基の合計Viに対する、(C)のケイ素原子に結合した水素原子の合計Hの比(H/Vi)が、0.2以上1.5未満であるような量が好ましく、0.9〜1.4であるような量がより好ましく、1.0超1.3以下であるような量が特に好ましい。また、前記H/Viは、1.2超1.5未満であるような量であってもよい。組成物におけるH/Viが、0.2以上であると、硬化物の機械的強度が優れ、1.5未満であると、接着性や弾性率のバランスが取れたゴム硬化物が得られる。
【0068】
(C)成分において、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のうち、(C2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の割合が、20〜99モル%である。この範囲にあると、硬化物の弾性率が低くなる。(C2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が30〜95モル%であることが好ましく、40〜90モル%であることが特に好ましい。ここで、(C)成分中のケイ素原子に結合した水素原子のうち、(C2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の割合は、「H
C2/(H
C1+H
C2)」で示す場合がある。ここで、H
C1は、(C1)成分のケイ素原子に結合した水素原子の個数であり、H
C2は、(C2)成分のケイ素原子に結合した水素原子の個数である。
【0069】
(D)成分の含有量は、組成物中の0重量%超20重量%以下である。(D)成分の含有量が、組成物中の20重量%超である場合、組成物の粘度が高くなりすぎてしまう。(D)成分の含有量は、組成物中の0.5重量%以上10重量%以下であることが好ましく、1重量%以上5重量%以下であることが特に好ましい。また、(D)成分の含有量が前記した範囲であれば、未硬化状態の組成物が流動性に富み、吐出作業性に優れ、及び、得られる硬化物が機械的強度に優れる。
【0070】
(E)成分の含有量は、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、白金
族金属原子換算で0.1〜1,000重量ppmであることが好ましく、0.5〜200重量ppmであることが特に好ましい。(
E)成分の含有量が前記範囲であると、硬化性と接着発現のバランスの調整が容易になる。
【0071】
組成物が、(F1)成分、(F2)成分及び/又は(F3)成分を含む場合、(F1)成分、(F2)成分及び/又は(F3)成分の合計量は、(A)成分の100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.5〜10重量部であることが特に好ましい。この範囲にあると、目的とする接着性が十分であり、かつ、所望の機械的強度と弾性率を両立できる硬化物を与えることができる。また、組成物が、(F4)成分を含む場合、(F4)成分の含有量は、硬化して得られるシリコーンゴムに、室温における金属への優れた接着性を付与することから、(A)成分の100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることが特に好ましい。なお、良好な接着性を得るために、(F)成分中、重量比で(F1)成分〜(F4)成分の一方が他方の0.05〜20倍の範囲であることが好ましい。また、(F)成分が(F1)成分〜(F4)成分からなる群より選択される3種又は4種の混合物である場合、それぞれが(F)成分の5重量%以上配合されていることが好ましい。
【0072】
(G)成分の含有量は、組成物の使用目的を損なわないかぎり特に限定されない。
【0073】
(組成物の製造方法)
組成物は、必須成分である(A)成分〜(F)成分及び任意成分である(G)成分を、万能混練機、ニーダーなどの混合手段によって均一に混練して製造することができる。また、安定に長期間貯蔵するために、(C)成分と(F1)成分に対して(E)成分が別の容器になるように、適宜、2個の容器に配分して保存しておき、使用直前に混合し、減圧で脱泡して使用に供してもよい。
【0074】
組成物を、接着すべき部位に注入、滴下、流延、注型、容器からの押出しなどの方法により、又はトランスファー成形や射出成形による一体成形によって、接着対象物に付着させ、硬化させることにより、シリコーンゴムを得ることができ、同時に接着対象物に接着させることができる。また、シリコーンゴムは柔軟性に優れているため、より高温で硬化させた場合であっても、クラック発生が抑制され、接着性に優れ、弾性率が低いシリコーンゴムを得ることができる。硬化のための加熱温度としては、たとえば200℃までの温度が挙げられ、具体的には80℃で1時間、又は100℃で30分という、比較的低温、短時間の加熱によって生産性向上が期待できる。
【0075】
(用途)
組成物は、半導体デバイスの実装や封止、半導体や汎用プラスチックの接着のような用途に用いることができる。光学素子や半導体モジュール用のシール剤、ポッティング剤としても有用である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。これらの例において、部は重量部を示し、粘度は23℃における粘度を示す。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0077】
(使用成分)
実施例及び比較例に、下記の成分を用いた。
(A)直鎖状ポリオルガノシロキサン
A−1:両末端がM
v単位で封鎖され、中間単位がD単位のみからなり、23℃における粘度が100Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン
A−2:両末端がM
v単位で封鎖され、中間単位がD単位のみからなり、23℃における粘度が10Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン
A−3:両末端がM
v単位で封鎖され、中間単位がD単位のみからなり、23℃における粘度が3.0Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン
A−4:両末端がM
v単位で封鎖され、中間単位がD単位のみからなり、23℃における粘度が0.3Pa・sである直鎖状ポリメチルビニルシロキサン
(B)分岐状ポリオルガノシロキサン
B−1:M単位、D
v単位及びQ単位からなり、これらのモル比がM:D
V:Q=6:1:8でMw(重量平均分子量)が3,000であるレジン状ポリメチルビニルシロキサン
B−2:M単位、M
v単位及びQ単位からなり、これらのモル比がM:M
V:Q=5:1:8でMw(重量平均分子量)が3,000であるレジン状ポリメチルビニルシロキサン
【0078】
(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
C−1−1:両末端がM単位で封鎖され、中間単位が50モル%のD
H単位と残余のD単位からなり、23℃における粘度が0.02Pa・sである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン(1分子当たり平均20個の水素原子)
C−1−2:M
H及びQ単位からなり、23℃における粘度が0.017Pa・sであるポリメチルハイドロジェンシロキサン(ケイ素に結合した水素原子の含有量は1.0重量%である)
C−2:両末端がM
H単位で封鎖され、中間単位がD単位からなり、23℃における粘度が0.015Pa・sである直鎖状ポリメチルハイドロジェンシロキサン
【0079】
(D)フィラー
D−1:煙霧質シリカをヘキサメチルジシラザンで表面処理した、BET比表面積200m
2/gのシリカ
D−2:カーボンブラック
【0080】
(E)白金族金属化合物
E−1:塩化白金酸をオクタノールと加熱することによって得られる白金含有量が4重量%である錯体
E−2:塩化白金酸をM
vM
vで示されるシロキサン二量体と加熱することによって得られ、白金含有量が2重量%である白金−ビニルシロキサン錯体
【0081】
(F)接着性付与剤
F−1:式:
【化7】
で示される環状シロキサンの異性体混合物
F−2:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
F−3:ビニルトリ
エトキシシラン
F−4:アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート(川研ファインケミカル社製、アルミキレートM)
【0082】
(G)更なる成分
G−1:マレイン酸ジアリル
【0083】
実施例1
撹拌機、加熱装置及び減圧装置を備えた容器に、A−3と、あらかじめ調製した濃度50重量%のB−1トルエン溶液を入れ、均一になるように混合した後、150℃、0.13kPaでトルエンを留去して、ポリシロキサン溶液を調製した。これを万能混練機に移し、D−1及びA−4を添加して、150℃で3時間減圧下に混練し、さらにA−1を添加した後に1時間減圧混練を行った。40℃以下まで冷却して、E−1を混合分散させた後に、G−1を混合した。次にC−1−1、C−2、F−1及びF−2を添加して、30分間すばやく減圧混練することにより、脱泡を行って、ポリオルガノシロキサン組成物を調製した。
【0084】
実施例2〜3、比較例1〜7
実施例1に準じる手順により、ポリオルガノシロキサン組成物を調製した。各実施例及び比較例の配合比を、表1に示す。
【0085】
(評価方法)
<粘度>
JIS K 6249に準拠して、回転粘度計を用いて、スピンドル番号及び回転数を適宜設定し、室温(23℃)の条件で測定した。
【0086】
<接着性と接着耐久性>
(1)試験片の作製
JIS A1439に規定する方法に準じて、接着性試験のための試験体を作製した。即ち、ポリオルガノシロキサン組成物を2枚のアルミニウム板(JISH4000に規定されたアルミニウム被着体:A5052P:50mm×50mm×5mm厚)の間に充填し、120℃×1時間加熱硬化させて、試験体(「H型試験体」とも呼ばれる)を製造した。接着層は12mm×12mm×50mmとした。
【0087】
(2)接着性試験と接着耐久性の確認
(2−1)接着耐久性
試験体の接着層(組成物の硬化物)の両側にスペーサーを取り付けて、2枚のアルミニウム板が平行の状態を保ったまま、引き離すようにして、接着層を引き延ばす方向に20%のひずみを加え、接着層の耐久性を確認した。室温で1日放置するか、−40℃〜125℃の冷熱サイクル試験(10分〜15分で両端の温度の間を昇温及び降温し、かつ、両端の温度を30分保持した。)を行った(エスペック社製 冷熱衝撃装置)。
サイクル試験投入前(室温で1日放置)、各サイクル試験経過後(100、500、1000サイクル)での試験体の状態を以下の判断に従い観察した。
◎:異常無し
×:接着層と基材の界面付近に亀裂(千切れ)が生じた
【0088】
(2−2)接着性(破断試験)
前記冷熱サイクルを1000回行った後に異常が見られなかった試験片について、試験片をオートグラフによって破断させて、接着層の接着性を評価した。破断試験は、JISA1439に準拠し、オートグラフ(島津製作所社製)を用いて行い、硬化物の破断状況を確認した。
○:硬化物が破断し、試験片との接着面の100%に硬化物が付着している
×:試験片から硬化物が剥離し、接着面への硬化物の付着がない
【0089】
<複素弾性率>
組成物の複素弾性率は、動的粘弾性装置を用いて調査した(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製 ARES−G2)。調査方法は、室温から120℃まで昇温させて(10℃/分、2時間計測、1Hz、5%ひずみ)組成物を硬化させた際に示す複素弾性率を組成物の弾性率[Pa]とした。
【0090】
<レベリング性>
50mm×50mmのガラス板の中心部に、ガラス板の1〜2cm上から、組成物を1g塗布した後、5分間放置し、その後、120℃で、1時間硬化させた。硬化した硬化物の直径及びレベリング(平滑)状況を評価した。
○:硬化物の直径は25mm以上であり、かつ、十分にレベリングしていた。
×:硬化物の直径は25mm未満である、又は、十分にレベリングしていなかった。
【0091】
結果を表1〜表2にまとめる。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1中の略語は以下を意味する。
H/Vi:(A)中のビニル基及び(B)中のビニル基の合計に対する、(C)中のケイ素原子に結合した水素原子の合計の比(モル比)
H
C2/(H
C1+H
C2)(%):(C)中のケイ素原子に結合した水素原子のうち、(C2)中のケイ素原子に結合した水素原子の割合(モル比)
【0095】
表2から明らかなように、実施例のポリオルガノシロキサン組成物は、低粘度であった。また、実施例のポリオルガノシロキサン組成物の硬化物は、弾性率が低く、接着性試験において千切れが発生せず、接着性に優れていた。
実施例1と2の比較により、B−2成分が用いられる場合、弾性率がより低くなった。
【0096】
比較例1の組成物は、B成分及びD成分を含まない。そのため、変形ひずみに追随できず、接着不良及び剥がれが生じた。
比較例2の組成物は、H/Viが1.5以上であり、B成分を含まないため、強度不足となり、千切れが発生した。
比較例3の組成物は、B成分の含有量が小さいため、強度不足となり、千切れが発生した。また、比較例3の組成物は、H/Viが1.5以上であり、C−2成分を含まないため、変形ひずみに追随できず、また、接着不良及び剥がれが生じた。
比較例4の組成物は、H/Viが1.5以上であり、C−2成分を含まないため、変形ひずみに追随できず、また、弾性率が比較的高く、接着不良及び剥がれが生じた。
比較例5の組成物は、H/Viが1.5であり、D成分を含まないため、変形ひずみに追随できず、また、弾性率が比較的高く、接着不良及び剥がれが生じた。
比較例6〜7の組成物は、(A1)低粘度ポリオルガノシロキサンに相当するA−3成分及びA−4成分のいずれも含まないため、組成物の粘度が高く、広がり性及びレベリング性に劣っていた。
本発明は、弾性率が低く、千切れにくい硬化物を与え、接着性に優れる、低粘度である接着性ポリオルガノシロキサン組成物であって、(A)低粘度のアルケニル基を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサンを含む、アルケニル基を含有する直鎖状ポリオルガノシロキサン;(B)1分子あたり少なくとも3個のアルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン;(C1)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子中に3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン;及び(C2)ケイ素原子に結合した水素原子を、分子鎖の両末端にのみ、それぞれ1個ずつ含み、かつ分子中に脂肪族不飽和結合を有しない直鎖状ポリオルガノハイドロジェンシロキサン;(D)フィラー;(E)白金族金属化合物;並びに(F)特定の接着付与剤の2種以上を、特定の組成で含む、接着性ポリオルガノシロキサン組成物である。