特許第6763106号(P6763106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763106
(24)【登録日】2020年9月11日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   F16J15/10 N
   F16J15/10 T
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-526646(P2020-526646)
(86)(22)【出願日】2019年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2019029717
(87)【国際公開番号】WO2020044910
(87)【国際公開日】20200305
【審査請求日】2020年5月14日
(31)【優先権主張番号】特願2018-162622(P2018-162622)
(32)【優先日】2018年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 翼
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−085473(JP,A)
【文献】 米国特許第4056211(US,A)
【文献】 特開2008−281110(JP,A)
【文献】 特開2015−081980(JP,A)
【文献】 特開2011−033082(JP,A)
【文献】 実開昭49−068723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面湾曲形状を有する溝を有する第1部材と、第2部材とを密封するガスケットであって、
前記溝に挿入可能なゴム状弾性体の基部であって、前記第1部材と前記第2部材を接合した際に押し潰される高さを有する基部と、
前記基部の両側壁の異なる高さの位置から、少なくとも二片以上ずつ突出するゴム状弾性体のフィンであって、前記基部が前記溝に挿入されたときに、前記溝の側壁に当たって挿入方向と反対方向に弾性変形するフィンと、
を有し、
前記基部と前記フィンとは、押出成形により一体に成形され
前記第1部材と前記第2部材が接合した際、複数の前記フィンは、互いに隙間なく密接する、
ガスケット。
【請求項2】
前記基部は、前記溝の深さよりも大きい高さを有する、
請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記フィンは、先端にいくほど薄くなる、
請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記フィンの下面が有する、前記基部の中心軸と直交する仮想面に対する傾斜角度は、前記フィンの上面が有する、前記仮想面に対する傾斜角度よりも大きい、
請求項1〜のいずれかに記載のガスケット。
【請求項5】
前記基部は、前記第1部材と前記第2部材が接合した際、前記溝の底部に隙間なく密接する底部を有する、
請求項1〜のいずれかに記載のガスケット。
【請求項6】
前記基部の底部は、前記溝の底部よりも曲率が大きな断面湾曲形状を有する、
請求項に記載のガスケット。
【請求項7】
押出成形された前記基部と前記フィンの両端を連結する連結部を更に有する、
請求項1〜のいずれかに記載のガスケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
Eモビリティ(E-Mobility)の進展に伴い、電気自動車が急速に普及し始めている。大容量のバッテリを必要とする電気自動車では、平べったい薄型で大型のバッテリを床面の下方いっぱいに配置することが一般的である。この種のバッテリの周長は、車体の大きさに応じて3000〜6000mm程度にまで及ぶ。このためバッテリケースをシールするガスケットも、これに相当する全長を有する。
【0003】
特開2012−122536号公報(以下、「特許文献1」)は、電気自動車、燃料電池車、ハイブリット車等に使用されるバッテリのケースを密封するガスケットを開示する。このガスケットは、バッテリケースの対向する二つの面(2)(3)の間の隙間をシールするために、ボルトを用いて一方の面(3)に固定される。ガスケットの一面には一対のリップ状突起(12)が平行に配列され、反対側の面には一対の小突起(13)が平行に配列されている。小突起(13)はバッテリケースの一方の面(3)に密接し、リップ状突起(12)はもう一方の面(2)に密接する。これによって二つの面(2)(3)がシールされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるガスケットは、ボルトを用いてバッテリケースに固定するという構造上、取り付け工程が多く、作業性に難がある。また、ボルトを通すためのカラー(特許文献1の金属環(4))が必要になり、カラーをガスケットに取り付けるための作業も煩雑である。ガスケットにカラーを一体成形すればそのような取り付け作業を省略できるものの、この場合、金型を用いてガスケットとカラーとを一体成形しなければならない。電気自動車用のバッテリはその周長が3000〜6000mm程度にまで及ぶため、金型を用いた成形手法を採用すると、大掛かりな製造設備が必要になる。
【0005】
そこで、本発明は、プレス加工によって簡易に製作することができる溝に対して、容易に装着可能で押出成形可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスケットは、
断面湾曲形状を有する溝を有する第1部材と、第2部材とを密封するガスケットであって、
前記溝に挿入可能なゴム状弾性体の基部であって、前記第1部材と前記第2部材を接合した際に押し潰される高さを有する基部と、
前記基部の両側壁の異なる高さの位置から、少なくとも二片以上ずつ突出するゴム状弾性体のフィンであって、前記基部が前記溝に挿入されたときに、前記溝の側壁に当たって挿入方向と反対方向に弾性変形するフィンと、
を有し、
前記基部と前記フィンとは、押出成形により一体に成形される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガスケットによれば、プレス加工によって簡易に製作することができる溝に対して、容易に装着可能で押出成形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】バッテリの収納箇所を示す電気自動車の模式図
図2】(A)はガスケットによる密封領域を一点鎖線で示すバッテリケースの模式図、(B)は(A)中のA−A線断面図
図3】(A)は溝の一例を示す垂直断面図、(B)は溝の別の一例として(A)よりも深さを浅くした溝を示す垂直断面図、(C)は溝のさらに別の一例として(A)よりも深さを深くした溝を示す垂直断面図
図4】第1実施形態のガスケットを示す平面図
図5図4のA−A線断面図
図6】溝にガスケットが収納された状態を示す垂直断面図
図7】溝にガスケットが収納された状態を示す斜視図
図8】ガスケットの連結箇所を含む図4のBの領域の拡大平面図
図9】(A)は組み付け前のガスケットを示す垂直断面図、(B)は組み付け作業中のガスケットを示す垂直断面図、(C)は組み付け後のガスケットを示す垂直断面図
図10】第2実施形態のガスケットを示す平面図
図11】(A)は組み付け前のガスケットを示す垂直断面図、(B)は組み付け作業中のガスケットを示す垂直断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態のガスケットを説明する。本実施形態のガスケットは、電気自動車に搭載されるバッテリのバッテリケースを密封する。
【0010】
図1に示すように、電気自動車1は、平べったい薄型で大型のバッテリ101を搭載する。バッテリ101の搭載位置は、電気自動車1の床面2の下方である。
【0011】
図2(A)(B)に示すように、バッテリ101は、バッテリケース102の内部に各種構造物(不図示)を収納する。バッテリケース102は、例えば、矩形の平面形状を有する扁平筐体状で、上面が開口するケース103を有する。ケース103の開口104は、カバー105で塞がれる。
【0012】
図2(A)に一点鎖線で示す密封領域Sは、ケース103とカバー105との接合部分である。密封領域Sには、ガスケット11(図4以降の各図参照)が配置され、ガスケット11によってケース(第1部材)103とカバー(第2部材)105が密封される。
【0013】
図2(B)に示すように、密封領域Sは、ケース103の縁から外方に屈曲するフランジ106とカバー105との接合部分に設けられる。フランジ106には、全周にわたり溝107が設けられる。ガスケット11は、溝107に嵌められる。
【0014】
密封領域Sの周長は、バッテリケース102によって規定されるバッテリ101の外周の周長よりも、バッテリケース102の外周から内周側に寄った分だけ短い。バッテリ101の周長は、電気自動車1の車体の大きさに依存性を示す傾向があり、概ね3000mmから6000mm程度である。
【0015】
図3(A)(B)(C)は、フランジ106に設けられる各種形態の溝107の垂直断面を示している。図3(B)に示す溝107は、図3(A)に示す溝107よりも浅い。図3(C)に示す溝107は、図3(A)に示す溝107よりも深い。図3(A)〜図3(C)の溝107は、ケース103の製造時に行われるプレス加工に際して、一度のプレス加工のみによって成形可能な形状である。こうした製造上の制約によって、溝107は断面湾曲形状を有する。したがって、いずれの溝107も、底部107Bに特有の曲率を有する。
【0016】
なお、図3(A)(B)(C)は溝107の例に過ぎず、実施に際しては各種の変形が可能である。例えば、開口107Oの大きさ、深さ、側壁107Sの曲率、底部107Bの曲率などは、一度のプレス加工のみによって成形可能である限り、各種の変形が許容される。
【0017】
以下、図4図9(A)(B)(C)に示す第1実施形態のガスケット11と、図10図11(A)(B)に示す第2実施形態のガスケット11について説明する。
【0018】
<第1実施形態>
図4に示すように、本実施形態のガスケット11は、周方向に同一の形状を有する。図4に示すガスケット11は、真円形状あるいは長円形状であるが、これはガスケット11の形状上の一例にすぎない。ガスケット11は、ラバーオンリータイプである。例えば、フランジ106に設けた溝107などに嵌められて拘束されない限り、ガスケット11は様々な形態をとり得る。
【0019】
本実施形態のガスケット11は、押出成形されたゴム状弾性体12である。ゴム状弾性体12のゴム硬度は、例えば、70度以上である。ガスケット11は、例えば、Oリングのような単純な形状ではなく、基部31に複数片のフィン51を有する。基部31とフィン51は、追加工なく一度の押出成形によって一体に成形される。基部31はゴム状弾性体12の一部であり、フィン51はゴム状弾性体12の別の一部である。
【0020】
図4のA−A線断面を示す図5を参照すると、基部31とフィン51とを有するガスケット11の垂直断面形状が明確になる。フランジ106に設けた溝107にガスケット11を収納した状態を示す図6(垂直断面図)及び図7(斜視図)を参照することで、溝107とガスケット11との静的な関係性が明確になる。さらに、ケース103に対してカバー105を接合させる組み付け作業中、溝107内でのガスケット11の形状変化を示す図9(A)(B)(C)も参照することで、溝107とガスケット11との動的な関係性も明確になる。
【0021】
基部31は、水平方向の長さよりも垂直方向の長さが長い矩形の断面形状を有する。ただし、基部31は完全な矩形形状ではなく、底部31B及び上部31Uから側壁31Sの高さ方向中央位置に向けて膨らんだ樽のような形状を有する。
【0022】
底部31Bは断面湾曲形状に形成され、曲率を有する。基部31の底部31Bの曲率は、溝107の底部107Bの曲率よりも大きい。したがって、溝107にガスケット11を収納した際、溝107に対して基部31は余裕をもって収納される(図6図7図9(B)参照)。これに対して、基部31は、ガスケット11で密封する二部材、つまりフランジ106とカバー105とが接合したとき、溝107の底部107Bに隙間なく密接する(図9(C)参照)。
【0023】
基部31の上部31Uは、高さ方向中央部分と最上部との中間の位置でテーパー状に絞られ、最上部に向けて狭まる程度を強めている。
基部31は、フランジ106とカバー105が接合したとき、押し潰される高さ寸法を有する(図9(A)(B)(C)参照)。すなわち、基部31は、溝107の深さよりも大きい高さを有する。また、基部31は、フランジ106とカバー105が接合した際に弾性変形して、フランジ106とカバー105を密封する。
【0024】
フィン51は、基部31の両側壁31Sのそれぞれから異なる高さで三片ずつ突出する。すなわち、基部31の左右それぞれに、フィン51は上下三段設けられる。説明の便宜上、基部31の底部31Bに一番近い最下位置から最上位置に向けてフィン51a,51b,51cと呼ぶ。
【0025】
フィン51(51a,51b,51c)の突出量は、上方のものほど大きい。このため、基部31の樽のような形状と相俟って、個々のフィン51(51a,51b,51c)の先端部分をつないだ仮想面は、上方に向かうにしたがい拡がる形状を呈する。
【0026】
フィン51それ自体は、先端にいくほど薄くなる形状である。フィン51の上面USは、基部31の中心軸と直交する仮想面と平行に延びている。このため、仮想面に対する上面USの傾斜角度は0度である。フィン51の下面LSは、仮想面に対して15度前後、例えば10度から20度程度の傾斜角度を有する。したがって、仮想面に対する傾斜角度は、フィン51の下面LSの方が上面USよりも大きい。
【0027】
フィン51は、基部31が溝107に挿入されたときに溝107の側壁31Sに当たって挿入方向と反対方向に弾性変形する長さを有する(図6図7図9(B)参照)。また、基部31の側壁31S中、同じ側に設けられた上下三段のフィン51は、フランジ106とカバー105が接合したとき、側壁107Sに沿って変形し、互いに隙間なく密接する。フィン51は、このような形状、長さ、配列間隔、弾性などを有する。
【0028】
図8は、ガスケット11の連結箇所(連結部)Cを含む図4のBの領域の拡大平面図である。図4に示すように、ガスケット11は周方向に同一の形状を有する。そのため、どの位置の断面も、図5に示すような断面形状を有する。ガスケット11は、追加工なく一度の押出成形によって一体に成形されるからである。ガスケット11の連結箇所Cは、押出成形されたガスケット11の両端をつなぎ成形している。
【0029】
フランジ106にカバー105を接合させてバッテリケース102を閉じる際、溝107にガスケット11を収納することで、フランジ106とカバー105とが密封される。このときの作業の工程を図9(A)(B)(C)を参照しながら説明する。
【0030】
図9(A)に示すように、溝107にガスケット11を嵌める。この作業は、断面湾曲形状に成形されて開口107Oが広くなった溝107に対して、溝107よりも幅が狭く、溝107の底部107Bの曲率よりも大きな曲率を有する基部31の底部31Bを挿入する作業となるため、作業性が良好である。このとき、フィン51は溝107の側壁107Sにぶつかって弾性変形し、溝107にガスケット11を挿入する際の抵抗となる。一方、フィン51は上下の厚みが薄く容易に弾性的に変形するため、ガスケット11の挿入作業の作業性を損なわない。したがって、溝107に対してガスケット11を容易に嵌めることができる。
【0031】
溝107にガスケット11を嵌める作業の作業性が良好であることは、特に、ケース103のコーナーに位置する溝107の屈曲した部分にガスケット11を嵌める際に顕著である。溝107の形状とフィン51の特性とから、溝107に対するガスケット11の挿入状態に余裕が生まれるからである。ガスケット11は、矯正なしにコーナーに位置する溝107の屈曲部分にも容易に挿入可能である。
【0032】
図9(B)に示すように、溝107に収納されたガスケット11は、溝107の底部107Bに基部31の底部31Bを据え付け、溝107の側壁107Sにフィン51を押し当てる。フィン51は、基部31が溝107に挿入される動作に伴い、溝107の側壁107Sに当たり、挿入方向と反対方向に弾性変形する。フィン51は、その復元力によって溝107の側壁107Sに押圧力を及ぼし、溝107からのガスケット11の脱落を抑止する。その結果、ガスケット11は溝107の底部107Bから浮き上がることなく、溝107内で安定した姿勢を維持する。
【0033】
溝107からのガスケット11の脱落は、基部31の底部31Bと溝107の底部107Bとの間の曲率の違いによっても抑止される。底部107Bから開口107Oに向けて拡がる溝107の形状は、ガスケット11を挿入する作業性を良好にする反面、収納されたガスケット11を脱落させやすい。もしも基部31の底部31Bが溝107の底部107Bよりも曲率が小さい場合、基部31の底部31Bは溝107に挟まれ、弾性変形した状態で溝107の底部107Bに嵌った状態になる。このため、嵌合による保持が解除されるきっかけが与えられたとき、ガスケット11は溝107から脱落しやすい。これに対して、本実施形態の基部31の底部31Bの曲率は、溝107の底部107Bの曲率よりも大きいため、溝107に挟まれて弾性変形した状態にはならない。このため、溝107からのガスケット11の脱落が抑止される。
【0034】
図9(C)に示すように、溝107にガスケット11を収納した状態で、フランジ106にカバー105を接合させてバッテリケース102を閉じると、基部31が押し潰される。押し潰された基部31は、垂直方向に弾性変形するのみならず、水平方向にも弾性変形する。水平方向に弾性変形した基部31は、二種類の作用を生じさせる。一つは、基部31の底部31Bを溝107の底部107Bに隙間なく密接させる作用である。もう一つは、左右に三段ずつ設けた個々のフィン51a,51b,51cを互いに隙間なく密接させる作用である。
【0035】
もっとも、基部31の左右に三段ずつ設けた個々のフィン51a,51b,51cが互いに隙間なく密接するという現象は、押し潰された基部31の作用のみに依存して発生するわけではない。前述したとおり、フィン51の形状、長さ、配列間隔、弾性などにも依存する。先端にいくほど薄くなるフィン51の形状、及び基部31の中心軸と直交する仮想面に対する傾斜角度が上面USよりも下面LSの方が大きいフィン51の形状は、いずれも個々のフィン51a,51b,51cが互いに隙間なく密接させる作用を促進する。
【0036】
基部31の底部31Bが溝107の底部107Bに隙間なく密接し、基部31の左右に三段ずつ設けた個々のフィン51a,51b,51cが互いに隙間なく密接する結果、ガスケット11は良好な密封性を発揮する。
【0037】
本実施形態のガスケット11によれば、良好な装着作業性と良好な密封性を確保できる。
【0038】
また、本実施形態のガスケット11は、押出成形可能なラバーオンリータイプであるため、容易に製造できる。
【0039】
さらに、本実施形態のガスケット11は、バッテリケース102側の相手部材であるフランジ106に、手間のかかる加工を要求しない。一度のプレス加工のみによって成形可能な溝107をフランジ106に設けるだけでよいため、全体的な製造の簡略化及び容易化を図ることができる。
【0040】
<第2実施形態>
第2実施形態のガスケット11を図10及び図11(A)(B)に基づいて説明する。第1実施形態と同一部分は同位置符号で示し、説明も省略する。
【0041】
本実施形態のガスケット11は、フィン51の本数と形状とが第1実施形態と相違する。フィン51は、基部31の両側壁31Sのそれぞれから異なる高さで二片ずつ突出する。すなわち、基部31の左右それぞれに、フィン51は上下二段設けられる。説明の便宜上、下方に位置するフィン51をフィン51a、上方に位置するフィン51をフィン51bと呼ぶ。
【0042】
フィン51bの突出量は、フィン51aの突出量よりも大きい。このため、基部31の樽のような形状と相俟って、フィン51aの先端部分とフィン51bの先端部分とをつないだ仮想面は、上方に向かうにしたがい拡がる形状を呈する。この点は第1実施形態と共通する。
【0043】
フィン51それ自体は、先端にいくほど薄くなる形状である。この点も第1実施形態と共通する。ただし、本実施形態のフィン51は、第1実施形態よりも全体的に厚い。以下、詳しく説明する。
【0044】
下方に位置するフィン51aの上面USは、基部31の中心軸と直交する仮想面に対して5度程度の傾斜角度を有する。フィン51aの下面LSは、仮想面に対して35度前後、例えば30度から40度程度の傾斜角度を有する。第1実施形態のフィン51は、仮想面に対する傾斜角度が上面USで0度、下面LSで15度前後であった。そのため、第1実施形態の上面USと下面LSとの傾斜角度の差よりも、第2実施形態の上面USと下面LSとの傾斜角度の差の方が15度程度大きい。そのため、下方に位置するフィン51aの厚みは、第1実施形態のフィン51よりも厚い。
【0045】
上方に位置するフィン51bの上面USは、仮想面と平行に延びている。このため、仮想面に対する上面USの傾斜角度は0度である。フィン51bの下面LSは、仮想面に対して25度前後、例えば20度から30度程度の傾斜角度を有する。第1実施形態のフィン51は、仮想面に対する下面LSの傾斜角度が15度前後であった。そのため、第1実施形態の上面USと下面LSとの傾斜角度の差よりも、第2実施形態のフィン51bの上面USと下面LSとの傾斜角度の差の方が、10度程度大きい。そのため、上方に位置するフィン51bの厚みは、第1実施形態のフィン51よりも厚い。
【0046】
本実施形態のガスケット11が第1実施形態のガスケット11と大きく相違するのは、基部31の底部31Bと下方に位置するフィン51aとが分離しておらず、一体化している点である。垂直断面にした基部31の底部31Bがなす曲面は、そのまま下側に位置するフィン51aの下面LSに連絡し、両者は一体的な形状をなしている。
【0047】
フランジ106にカバー105を接合させてバッテリケース102を閉じる際、溝107にガスケット11を収納することで、フランジ106とカバー105とが密封される。このときの作業の工程を図11(A)(B)を参照しながら説明する。
【0048】
図11(A)に示すように、溝107にガスケット11を嵌める。この作業は、断面湾曲形状に成形されて開口107Oが広くなった溝107に対して、実質的には溝107よりも幅の狭い基部31を挿入する作業となるため、作業性が良好である。実質的にはと述べているのは、フィン51は上下の厚みが薄く容易に弾性的に変形するため、溝107にガスケット11を挿入するに際して、基部31と比較して大きな抵抗とならないからである。本実施形態のフィン51は、第1実施形態のフィン51よりも厚く、その分剛性も勝っているが、フィン51の枚数が左右二辺ずつと第1実施形態よりも少ない。このため、第1実施形態と同様に、溝107にガスケット11を挿入するに際して、フィン51は基部31と比較して大きな抵抗とならず、溝107にガスケット11を挿入する作業の作業性を損なわない。
【0049】
本実施形態のガスケット11も、ケース103のコーナーに位置する溝107の屈曲した部分にガスケット11を嵌めるに際して、矯正なしに挿入可能である。
【0050】
図11(B)に示すように、溝107に収納されたガスケット11は、下方に位置するフィン51aと一体化した基部31の底部31Bを溝107の底部107Bに据え付け、溝107の側壁107Sに上下のフィン51a,51bを押し当てる。フィン51a,51bの復元力によって、溝107からのガスケット11の脱落が抑止される。
【0051】
フランジ106にカバー105を接合させてバッテリケース102を閉じると、基部31が押し潰される。押し潰された基部31は、垂直方向に弾性変形するのみならず、水平方向にも弾性変形する。そのため、基部31の底部31Bを溝107の底部107Bに隙間なく密接させ、左右に二段ずつ設けた個々のフィン51a,51bを互いに隙間なく密接させる。その結果、ガスケット11は、良好な密封性を発揮する。
【0052】
[変形例]
実施に際しては、各種の変形や変更が許容される。
【0053】
例えば、第1及び第2実施形態で示したフィン51の本数及びフィン51それ自体の形状は一例に過ぎず、実施に際しては各種の変形が可能である。例えば、フィン51の本数は、基部31の両側壁31Sからそれぞれから異なる高さで二辺以上突出していればよく、例えば四片以上であってもよい。フィン51の上面US及び下面LSの傾斜角度も、第1及び第2実施形態で示した傾斜角度と異なる角度であってもよい。
【0054】
その他、実施に際してはあらゆる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 電気自動車
2 床面
11 ガスケット
12 ゴム状弾性体
31 基部
31B 基部の底部
31S 基部の側壁
31U 基部の上部
51 フィン
51a フィン
51b フィン
51c フィン
101 バッテリ
102 バッテリケース
103 ケース(第1部材)
104 開口
105 カバー(第2部材)
106 フランジ
107 溝
107B 溝の底部
107O 溝の開口
107S 溝の側壁
C 連結個所
S 密封領域
LS 下面
US 上面
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11