(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶接部を形成する工程では、前記タブ積層体の前記端面及び前記溝部の前記側面に前記エネルギービームが照射される、請求項1又は2に記載の電極組立体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図面には、必要に応じてXYZ直交座標系が示されている。Z軸方向は例えば鉛直方向、X軸方向及びY軸方向は例えば水平方向である。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電極組立体を備える蓄電装置の分解斜視図である。
図2は、
図1のII−II線に沿った蓄電装置の断面図である。
図1及び
図2に示される蓄電装置1は、例えばリチウムイオン二次電池といった非水電解質二次電池又は電気二重層キャパシタである。
【0019】
図1及び
図2に示されるように、蓄電装置1は、例えば略直方体形状をなす中空のケース2と、ケース2内に収容された電極組立体3とを備えている。ケース2は、例えばアルミニウム等の金属によって形成されている。ケース2は、一方側において開口した本体部2aと、本体部2aの開口を塞ぐ蓋部2bとを有している。ケース2の内壁面上には、絶縁フィルム(図示せず)が設けられる。ケース2の内部には、例えば非水系(有機溶媒系)の電解液が注液されている。電極組立体3では、後述する正極11の正極活物質層15、負極12の負極活物質層18、及びセパレータ13が多孔質をなしており、その空孔内に、電解液が含浸されている。ケース2の蓋部2bには、正極端子5と負極端子6とが互いに離間して配置されている。正極端子5は、絶縁リング7を介してケース2に固定され、負極端子6は、絶縁リング8を介してケース2に固定されている。
【0020】
電極組立体3は、積層型の電極組立体である。電極組立体3は、複数の正極11(電極)と、複数の負極12(電極)と、正極11と負極12との間に配置された袋状のセパレータ13とによって構成されている。セパレータ13内には、例えば正極11が収容されている。セパレータ13内に正極11が収容された状態で、複数の正極11と複数の負極12とがセパレータ13を介して交互に積層されている。
【0021】
正極11は、例えばアルミニウム箔からなる金属箔14と、金属箔14の両面に形成された正極活物質層15と、を有している。正極11の金属箔14は、矩形状の本体14aと、本体14aの一端から突出する矩形状のタブ14bと、を含む。正極活物質層15は、正極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。正極活物質層15は、本体14aの両面において、少なくとも本体14aの中央部分に正極活物質が担持されて形成されている。
【0022】
正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等が挙げられる。複合酸化物には、例えばマンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。ここでは、一例として、タブ14bには、正極活物質が担持されていない。ただし、タブ14bにおける本体14a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0023】
タブ14bは、本体14aの上縁部から上方に延び、集電板16(導電部材)を介して正極端子5に接続されている。集電板16はタブ14bと正極端子5との間に配置されている。集電板16は、例えば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ14bは、集電板16と、集電板16よりも薄い保護板23との間に配置される(
図3参照)。保護板23は、例えば、正極11の金属箔14と同一の材料から矩形平板状に構成される。
【0024】
負極12は、例えば銅箔からなる金属箔17と、金属箔17の両面に形成された負極活物質層18と、を有している。負極12の金属箔17は、正極11の金属箔14と同様に、矩形状の本体17aと、本体17aの一端部から突出する矩形状のタブ17bと、を含む。負極活物質層18は、本体17aの両面において、少なくとも本体17aの中央部分に負極活物質が担持されて形成されている。負極活物質層18は、負極活物質とバインダとを含んで形成されている多孔質の層である。
【0025】
負極活物質としては、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。ここでは、一例として、タブ17bには、負極活物質が担持されていない。ただし、タブ17bにおける本体17a側の基端部分には、活物質が担持されている場合もある。
【0026】
タブ17bは、本体17aの上縁部から上方に延び、集電板19(導電部材)を介して負極端子6に接続されている。集電板19はタブ17bと負極端子6との間に配置されている。集電板19は、例えば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。積層された複数のタブ17bは、集電板19と、集電板19よりも薄い保護板27との間に配置される(
図3参照)。保護板27は、例えば、負極12の金属箔17と同一の材料から矩形平板状に構成される。
【0027】
セパレータ13は、正極11を収容している。セパレータ13は、正極11及び負極12の積層方向からみて矩形状である。セパレータ13は、例えば、一対の長尺シート状のセパレータ部材を互いに溶着して袋状に形成される。セパレータ13の材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。
【0028】
図3は、第1実施形態に係る電極組立体の斜視図である。電極組立体3は、セパレータ13を介して互いに積層された複数の正極11及び複数の負極12を含む。複数の正極11のそれぞれは、XY平面に延在する本体14aと、本体14aの一端からX軸方向に突出するタブ14bとを含む。複数の負極12のそれぞれは、XY平面に延在する本体17aと、本体17aの一端からX軸方向に突出するタブ17bとを含む。タブ14b,17bは、互いに積層されてタブ積層体21,25をそれぞれ構成する。すなわち、電極組立体3は、Z軸方向に積層された複数のタブ14bを有するタブ積層体21と、Z軸方向に積層された複数のタブ17bを有するタブ積層体25とを備える。タブ積層体21,25は、Y軸方向において、互いに離間して配列される。
【0029】
タブ積層体21は、タブ積層体21の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体21の端面21a,21b,21cを備える。端面21a,21bは、タブ積層体21を挟む面であり、端面21cは端面21a,21bを繋ぐ面である。すなわち、端面21a,21bは、タブ積層体21を挟んで互いに反対側に配置されている。また、端面21a,21bは、XZ平面に沿う面である。また、端面21cは、タブ積層体21の先端に向かうにつれてタブ積層体21の厚さが小さくなるようにXY平面に対して傾斜した面である。
【0030】
タブ積層体21は、Z軸方向において、集電板16と保護板23との間に配置される。すなわち、タブ積層体21は、Z軸方向において集電板16上に配置される。保護板23は、集電板16とはタブ積層体21を挟んで反対側に、タブ積層体21上に配置される。保護板23は、集電板16と接触しておらず、保護板23と集電板16とは、タブ積層体21を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体21は保護板23よりも厚く、集電板16は保護板23よりも厚い。
【0031】
集電板16のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さ(端面21a,21b間の距離)よりも大きくなっている。Y軸方向において、集電板16のY軸方向における外側端部の位置は、本体14aのY軸方向における端部の位置と一致している。保護板23のY軸方向における長さは、タブ積層体21のY軸方向における長さと略同じである。
【0032】
タブ積層体21は、タブ積層体21の端面21a,21bからそれぞれ内側に位置する溶接部Wを有する。溶接部Wは、端面21a,21bに隣接する集電板16及び保護板23の内部まで延びている。端面21a,21bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板23のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板23のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体21のタブ14bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板23のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板23の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0033】
同様に、タブ積層体25は、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在するタブ積層体25の端面25a,25b,25cを備える。端面25a,25bは、タブ積層体25を挟む面であり、端面25cは端面25a,25bを繋ぐ面である。すなわち、端面25a,25bは、タブ積層体25を挟んで互いに反対側に配置されている。また、端面25a,25bは、XZ平面に沿う面である。また、端面25cは、タブ積層体25の先端に向かうにつれてタブ積層体25の厚さが小さくなるように、XY平面に対して傾斜した面である。
【0034】
タブ積層体25は、Z軸方向において、集電板19と保護板27との間に配置される。タブ積層体25は、Z軸方向において集電板19上に配置される。保護板27は、集電板19とはタブ積層体25を挟んで反対側に、タブ積層体25上に配置される。保護板27は、集電板19と接触しておらず、保護板27と29とは、タブ積層体25を積層方向に挟んで離間している。タブ積層体25は保護板27よりも厚く、集電板19は保護板27よりも厚い。
【0035】
集電板19のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さ(端面25a、25b間の距離)よりも大きくなっている。Y軸方向において、集電板19のY軸方向における外側端部の位置は、本体17aのY軸方向における端部の位置と一致している。保護板27のY軸方向における長さは、タブ積層体25のY軸方向における長さと略同じである。
【0036】
タブ積層体25は、タブ積層体25の端面25a,25bからそれぞれ内側に位置する溶接部Wを有する。タブ積層体25の端面25bは、タブ積層体21の端面21bと対向している。よって、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bは、Y軸方向に沿って配列される。溶接部Wは、端面25a,25bに隣接する集電板19及び保護板27の内部まで延びている。端面25a,25bにおいて、溶接部WのX軸方向における長さは、保護板27のX軸方向における長さと略等しいか、又は保護板27のX軸方向における長さよりも短いことが好ましい。これにより、タブ積層体25のタブ17bがX軸方向において位置ずれした場合(例えば公差による位置ずれがある場合)であっても安定して溶接部Wを形成することができる。なお、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さと略等しい場合、位置ずれにより溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す可能性がある。また、溶接部WのX軸方向における長さが保護板27のX軸方向における長さよりも長い場合、溶接部WがX軸方向において保護板27の外側にはみ出す。それらの場合であっても、溶接部Wを形成することは可能である。
【0037】
第1実施形態の一つの特徴は、集電板16,19の形状にある。具体的には、集電板16,19は、溝部40を備えている。ここでは、集電板19の構成の例について
図4及び
図5を参照して詳述する。集電板16の構成については、集電板19と同様に説明できるので、詳細な説明は省略する。
【0038】
図4は、
図3の電極組立体の一部を模式的に示す図であり、タブ積層体25の周辺の拡大図である。
図5は、
図4のV−V線に沿った断面図である。前述のとおり、集電板19上にはタブ積層体25が配置されており、集電板19は溝部40を備えている。溝部40は、集電板19の一部を加工することによって形成される。加工には、パンチ加工、プレス加工等が用いられてよい。溝部40は、端面25aに隣接する位置と、端面25bに隣接する位置の2つの位置にそれぞれ形成される。
【0039】
溝部40は、X軸方向に沿って延びる。
図4及び
図5に示される例では、溝部40は、Z軸方向から見たときに矩形形状を有しており、X軸方向から見たときにも矩形形状を有している。溝部40は、底面40aと、4つの側面40b,40c,40d,40eとを有している。側面40b,40cは、XZ平面に沿う面である。側面40d,40eはYZ平面に沿う面である。底面40aは、4つの側面40b,40c,40d,40eを繋ぐ面である。底面40aは、XY平面に沿う面である。溝部40は、4つの側面40b,40c、40d、40eで囲まれた部分に、空隙部Aを有する。空隙部Aは、底面40a及び4つの側面40b,40c,40d,40eによって規定されているとも言える。側面40b,40cは、空隙部Aを挟んで互いに反対側に配置されている。側面40d,40eは、空隙部Aを挟んで互いに反対側に配置されている。
【0040】
溝部40の側面40bは、タブ積層体25の端面25a,25bに隣接するとともに、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在する面である。すなわち、Z軸方向から見たときに、各端面25a,25bと各端面に対応する側面40b,40bとは、同じ位置にあってもよいし(重なっていてもよいし)、Y軸方向に所定のずれ量を有して位置していてもよい。Y軸方向のずれの大きさは、例えば0.2mm以下に設定される。
【0041】
また、側面40bは、端面25a,25bに略平行な面であってよい。すなわち、端面25a,25bと各端面に対応する側面40b,40bとが平行な平面上に位置していてもよいし、所定の角度αをなすように位置していてもよい。なお、端面25a,25bと各端面に対応する側面40b,40bとが平行な平面上に位置する場合には、角度αは180°である。角度αが180°でない場合、側面40bは、Z軸方向においてタブ積層体25から離れるにつれて(Z軸負方向に向かうにつれて)、Z軸方向から見て(Y軸方向において)タブ積層体25から離れるように傾斜していてよい。その場合、端面25a,25bと側面40b,40bとのなす角度のうち小さい角度が角度αであり、角度αの範囲(下限値)は、例えば、135°≦α≦180°、好ましくは160°≦α≦180°とすることができる。
【0042】
溝部40は、Z軸方向から見たときに端面25a,25bの外側に位置する。上述のように溝部40において側面40b,40cは空隙部Aを挟んで互いに反対側に配置されているので、側面40cは、Z軸方向から見たときに側面40bよりも外側に位置することとなる。
【0043】
溝部40の幅、つまり空隙部AのY軸方向の長さはとくに限定されないが、例えば0.01〜2mm程度とすることができる。また、溝部40の深さ、つまり空隙部AのZ軸方向の長さはとくに限定されないが、例えば溝部40の幅と同じであってもよいし、0.01〜2mm程度であってもよい。
【0044】
溶接部Wは、タブ積層体25の端面25a,25bから内側に位置している。端面25a,25bから内側に向かう溶接部Wの長さ(溶接深さ)は、保護板27側から集電板19側に向かうにつれて大きくなっている。溶接部Wは、後述するエネルギービームB(
図6参照)の照射により、エネルギービームBの周囲に形成される溶融池の形状に応じた形状とされる。溶融池は、例えば、エネルギービームBの照射方向において、エネルギービームBの照射対象物の表面から内側に向けて先細るように形成される。
図5に示される溶接部Wの形状は、Z軸正方向を上方向とすると、タブ積層体25の斜め上方向からエネルギービームBが照射された場合の形状である。溶接部Wは、集電板19にも形成される。また、溶接部Wは、保護板27にも形成される。
【0045】
以上では、タブ積層体25の端面25a,25bから内側に位置する溶接部Wについて説明した。このことはタブ積層体21の端面21a,21bから内側に位置する溶接部Wについても同様であるので、これについては説明を省略する。
【0046】
図6は、第1実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
図3に示される電極組立体3は、例えば以下の方法により製造される。
【0047】
(タブ積層体の準備工程)
まず、複数のタブ積層体21,25を準備する。
図6(A)はX軸方向から見たタブ積層体21,25を模式的に示す図であり
図6(B)はY軸方向から見たタブ積層体25を模式的に示す図である。例えば、まず、集電板16,19上にそれぞれタブ14b,17bを積層することによりタブ積層体21,25を形成する。その際、Z軸方向から見たときに、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bが集電板16,19における溝部40の側面40bに隣接するように、タブ積層体21,25を集電板16,19上にそれぞれ配置する。また、タブ積層体21,25上にそれぞれ保護板23,27を載置する。タブ積層体21,25は、例えば治具により保護板23,27を介して押圧されるが、押圧されなくてもよい。
【0048】
(溶接部の形成工程)
次に、タブ積層体25の端面25aにエネルギービームBを照射する。エネルギービームBは、照射装置30からタブ積層体25の端面25aに向けて照射される。照射装置30は、例えばレンズ及びガルバノミラーを含むスキャナヘッドである。スキャナヘッドにはファイバを介してビーム発生装置が接続される。照射装置30は、例えばプリズム等の屈折式又は回折光学素子(DOE:Diffractive optical element)等の回折系の光学系から構成されてもよい。エネルギービームBは、例えばレーザービーム又は電子ビームである。エネルギービームBの照射は、ノズル32から供給される不活性ガスGの雰囲気中で行われる。
【0049】
エネルギービームBは、例えば治具により集電板19及び保護板27を介してタブ積層体25をZ軸方向に押圧した状態でタブ積層体25の端面25aに照射される。
【0050】
エネルギービームBは、タブ積層体25の端面25aにおいて、Z軸方向に交差する方向(X軸方向)に沿って走査される。実施形態では、エネルギービームBをZ軸方向に変位させながらX軸方向に沿って走査する。例えば、エネルギービームBをZ軸方向に往復変位(ウォブリング)させながらX軸方向に沿って走査する。エネルギービームBの照射スポットのZ軸方向における変位量は、タブ積層体25の厚さよりも大きい。エネルギービームBの照射スポットは、タブ積層体25の端面25aにおいて、X軸方向に沿った軸線上の位置P1から位置P2まで移動する。例えば、位置P1,P2は、Z軸方向においてタブ積層体25の端面25aの中心に位置する。エネルギービームBは、例えば、タブ積層体25の端面25aにおいてX軸方向に沿って中心点を移動させ、当該中心点を中心にXZ平面においてエネルギービームBの照射スポットを回転させながら走査される。回転の直径がタブ積層体25の厚さよりも大きいと、タブ積層体25の端面25aとともに、集電板19及び保護板27を溶接できるため好ましい。タブ積層体25の端面25a及び集電板19の溝部40の側面40bにエネルギービームBが照射されることで、端面25a及び側面40bの内側に溶接部Wを形成される。よって、タブ積層体25と集電板19との溶接がより確実に行われる。また、タブ積層体25の端面25aのうちの保護板27側の部分にエネルギービームBを照射し、集電板19側の残部にはエネルギービームBを照射しなくてもよい。この場合、タブ積層体25の端面25aのうちの集電板19側の残部には溶接部Wが形成されない。しかし、タブ積層体25の端面25aの内側において溶接部WがエネルギービームBの照射方向に延びることによって、タブ積層体25の内部において、溶接部Wがタブ積層体25の厚さ方向に延在することになる。溶接部Wを集電板19まで到達させることによって、複数のタブ17b及び集電板19を溶接することができる。
【0051】
上述のようにエネルギービームBを照射することによって、先に
図5を参照して説明したように、タブ積層体25の端面25aから内側に溶接部Wが形成される。溶接部Wが形成された後も、集電板19の溝部40は空隙部Aを有している。すなわち、集電板19の表面上に溶融タブが流れ出ないように溶接部Wが形成される。
【0052】
続いて、タブ積層体21の端面21bにもエネルギービームBを照射し、端面21bから内側に溶接部Wを形成する。同様に、タブ積層体25の端面25b、タブ積層体21の端面21aにもエネルギービームBを照射し、端面25b,21aから内側に溶接部Wを形成する。
【0053】
上記工程を経ることによって、電極組立体3が製造される。その後、タブ積層体21,25を折り曲げた電極組立体3をケース2に収容し、蓄電装置1を製造することができる。
【0054】
以上説明したように、第1実施形態の電極組立体の製造方法では、集電板16,19上にタブ積層体21,25が配置された状態でタブ積層体21,25の端面21a,21b、25a,25bにエネルギービームBが照射され、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bから内側に溶接部Wが形成される。このようにして溶接部Wを形成すると、溶融したタブ積層体21,25(溶融タブ)が、集電板16,19のうちタブ積層体21,25が配置されていない部分の表面上に流れ出てしまう場合がある。とくに、集電板16,19がタブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに隣接するとともに積層方向(Z軸方向、つまり端面21a,21b,25a,25bの延在方向)に直交する方向に沿って延在する面(例えば
図5において角度αが90°のときの側面40bに相当し得る面)を有する場合には、溶融タブがその面に沿って移動し易くなるので、溶融タブが集電板16,19の表面上に流れ出てしまう可能性が高くなる。流れ出た溶融タブが集電板16,19の表面上で固化すると、例えば界面割れが生じてしまう可能性がある。これに対し、第1実施形態の電極組立体の製造方法では、集電板16,19が、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに隣接するとともに積層方向(Z軸方向)に沿って延在する側面40bを有し端面21a,21b,25a,25bの外側に位置する溝部40を備える。よって、溶融タブが集電板16,19の表面上に流れ出てしまう可能性を低減することができる。上述の界面割れが生じる可能性も低減できる。
【0055】
また、溶接部Wを形成する工程が完了した後も、集電板16,19の溝部40は空隙部Aを有している。すなわち、集電板16,19の表面上に溶融タブが流れ出にくい電極組立体が製造されることとなる。
【0056】
また、溶接部Wを形成する工程では、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25b及び溝部40の側面40bにエネルギービームBが照射されてもよい。これにより、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25b及び溝部40の側面40bから内側に溶接部Wを形成することができるので、タブ積層体21,25と、集電板16,19との溶接をより確実に行うことができる。
【0057】
また、溝部40の側面40bは、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに略平行であってよい。溝部40の側面40bが、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに対して平行な状態に近づくほど(角度αが180°に近づくほど)、溶融タブが集電板16,19の表面上に流れ出てしまう可能性をさらに低減することができる。
【0058】
また、先に
図3〜
図5を参照して説明した電極組立体3は、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bから内側に溶接部Wが形成されたものであるが、集電板16,19は、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに隣接するとともに積層方向(Z軸方向)に沿って延在する側面40bを有し、積層方向から見たときに端面21a,21b,25a,25bの外側に位置する溝部40を備える。そのため、例えば上述のようにエネルギービームBの照射によって溶接部Wを形成する場合、溶融タブが集電板16,19の表面上に流れ出てしまう可能性を低減することができる。
【0059】
(変形例)
例えば上記実施形態では、溝部40が、Z軸方向から見たときに矩形形状を有しており、X軸方向から見たときにも矩形形状を有している例について説明したが、電極組立体において、溝部40が別の形状を有していてもよい。
図7は、そのような変形例に係る電極組立体の一部の断面図である。この例では、集電板19は、溝部50を備えている。溝部50は、X軸方向から見たときに三角形状を有している。なお、溝部50は、Z軸方向から見たときには矩形形状を有している。溝部50は、側面50b,50cを有しており、側面50bは、タブ積層体25の端面25a,25bに隣接するとともに、タブ積層体25の積層方向(Z軸方向)に沿って延在する面である。側面50cは、Z軸方向に対して傾斜している面である。側面50cは、Z軸方向においてタブ積層体25から離れる側(Z軸負方向側)の先端において側面50bに接続されている。側面50bと側面50cとの離間距離は、Z軸正方向に向かうにつれて大きくなっている。溝部50は、溝部40の側面40d,40e(
図4)と同様な、ZY平面に沿う側面(不図示)をさらに有していてもよい。空隙部Aは、溝部50が有する各側面によって規定される。
【0060】
図7に示される構成において、集電板19は、タブ積層体25の端面25a,25bに隣接するとともに積層方向(Z軸方向)に沿って延在する側面50bを有し、端面25a,25bの外側に位置する溝部50を備える。よって、溶融タブが集電板19の表面上に流れ出てしまう可能性を低減することができる。集電板16においても同様である。
【0061】
(第2実施形態)
第1実施形態では、電極組立体において集電板が溝部を備えることによって、溶融タブが集電板の表面上に流れ出てしまう可能性を低減できる。次に説明する第2実施形態では、集電板が溝部を備えていない代わりに、集電板に離型剤が設けられることによって、溶融タブが集電板の表面上に流れ出てしまう可能性が低減される。具体的に、
図8を参照して、集電板19Aの構成の例について詳述する。集電板16A(
図9参照)の構成については、集電板19Aと同様に説明できるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
図8は、第2実施形態に係る電極組立体の一部の断面図である。
図8に示されるように、集電板19Aは、集電板19(
図5)と比較して、溝部40を備えておらず、離型剤部60が設けられている点において相違する。また、集電板19A上に離型剤部60が設けられている。離型剤部60は、積層方向(Z軸方向)から見たときに、タブ積層体25の端面25a,25bに隣接するとともに端面25a,25bの外側に位置している。すなわち、Z軸方向から見たときに、各端面25a,25bと各端面に対向する離型剤部60の一端60bとは、同じ位置にあってもよいし(重なっていてもよいし)、Y軸方向に所定のずれ量を有して位置していてもよい。Y軸方向のずれの大きさは、例えば0.2mm以下に設定される。離型剤部60は、X軸方向に沿って延在するように、集電板19上に設けられる。
【0063】
離型剤部60は、溶融したタブ積層体25(つまり溶融タブ)に対する疎液性を有する。前述のように、タブ積層体25は例えば正極11の金属箔14と同一の材料(アルミニウム等)から構成される。例えばタブ積層体25の材料がアルミニウムの場合には、離型剤部60には、溶融したアルミニウムに対する疎液性を有する材料が用いられる。そのような離型剤部60の材料としては、例えばシリコーンオイル又は黒鉛等がある。なお、集電板16(
図3)において溝部40を備えていない構成とした集電板16A(後述の
図9参照)上に離型剤部60が設けられる場合、離型剤部60には、溶融したタブ積層体21の材料、例えば負極12の金属箔17と同一の材料(銅等)が溶融したものに対する疎液性を有する材料が用いられる。タブ積層体21の材料が銅の場合も、離型剤部60の材料として、例えばシリコーンオイル又は黒鉛等を用いることができる。
【0064】
図9は、第2実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程を示す図である。
【0065】
(タブ積層体の準備工程)
タブ積層体の準備工程においては、Z軸方向から見たときに、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25cに隣接するとともにこれらの端面の外側に位置するように、集電板16A,19A上に離型剤部60を設ける。それ以降の手順については、先に
図7を参照して説明した第1実施形態に係る電極組立体の製造方法の一工程と同様に説明できるので、ここでは説明を省略する。
【0066】
(溶接部の形成工程)
図9に示されるように、溶接部の形成工程は、先に
図6を参照して説明した第1実施形態における溶接部の形成工程と同様に行われてよい。あるいは、集電板16,19上に設けられた離型剤部60にエネルギービームBが照射されないように、エネルギービームBの走査が調整されてもよい。
【0067】
上述のようにエネルギービームBを照射することによって、
図8に示されるように、タブ積層体25の端面25aのから内側に溶接部Wが形成される。
【0068】
続いて、タブ積層体21の端面21bにもエネルギービームBを照射し、端面21bから内側に溶接部Wを形成する。同様に、タブ積層体25の端面25b、タブ積層体21の端面21aにもエネルギービームBを照射し、端面25b,21aから内側に溶接部Wを形成する。
【0069】
なお、離型剤部60は、上述の製造工程において集電板16A,19A上に設けられていればよく、製造工程が完了した後は、集電板16A,19Aから取り除かれていてもよい。
【0070】
第2実施形態の電極組立体の製造方法では、集電板16A,19Aには、積層方向(Z軸方向)から見たときに、タブ積層体21,25の端面21a,21b,25a,25bに隣接するとともに端面21a,21b,25a,25bの外側に位置する離型剤部60が設けられている。離型剤部60は、溶融したタブ積層体21,25に対する疎液性を有する。このような離型剤部60が設けられていることによっても、溶融タブが集電板16A,19Aの表面上に流れ出ることを抑制することができる。