特許第6763144号(P6763144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763144非水電解液二次電池用非水電解液及び非水電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763144
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用非水電解液及び非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20200917BHJP
【FI】
   H01M10/0569
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-5241(P2016-5241)
(22)【出願日】2016年1月14日
(65)【公開番号】特開2017-126488(P2017-126488A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(72)【発明者】
【氏名】岸本 顕
(72)【発明者】
【氏名】相馬 正典
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−093321(JP,A)
【文献】 特開2013−093322(JP,A)
【文献】 特開2007−250415(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/147005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0569
CAplus(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、エチルメチルカーボネート(EMC)と2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)を主溶媒として、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60未満:40超の割合で含む、非水電解液二次電池用非水電解液(但し、下記(a)、(b)、(c)及び(d)に該当するものを除く。
(a)前記非水溶媒が、環状カーボネートの60重量%以上がカーボネート環にフッ素原子が直結したフッ素化エチレンカーボネートであり且つ環状カーボネートと鎖状カーボネートの重量比率が3:97〜35:65であるもの
(b)前記非水電解液が、フッ素含有率が33〜70質量%であるフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒及びホウ素酸塩を含むもの
(c)前記非水電解液が、一般式:X−R−SOF(式中、Rは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Xは、カルボン酸誘導体基である。)で表される化合物を含むもの
(d)前記非水電解液が、一般式:Rf−SOF(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物を含有するもの)。
【請求項2】
非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、エチルメチルカーボネート(EMC)と2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)を、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60:40の割合で含み、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を、全非水溶媒の10質量%以下の量で含み、エチルメチルカーボネート(EMC)と2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(TFEMC)の含有量が、全非水溶媒中の80質量%以上である、非水電解液二次電池用非水電解液。
【請求項3】
正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、請求項1又は2に記載の非水電解液である、非水電解液二次電池。
【請求項4】
正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる、請求項3に記載の非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用非水電解液、及び非水電解液二次電池、特に、非水電解液に特徴を有する非水電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池に代表される非水電解液二次電池は、ノートパソコンや携帯電話などのモバイル機器の電源として用いられてきたが、近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの自動車用電源としても用いられている。
【0003】
非水電解液二次電池は、一般に、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、セパレータと、非水溶媒及びリチウム塩を含有する非水電解液とを備えている。
非水電解液二次電池を構成する正極活物質としてはリチウム含有遷移金属酸化物が、負極活物質としてはグラファイトに代表される炭素材料が、非水電解液としては、エチレンカーボネート等の環状カーボネートとジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートを主構成成分とする非水溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)等の電解質を溶解したものが広く知られている。
【0004】
また、種々の目的で、上記のような非水電解液にハロゲン化カーボネートを含有させた発明も知られている(特許文献1〜4参照)。
【0005】
特許文献1には、「非水電解液に難燃性及び自己消火性をもたせ、またこの電解液を用いることによって電池特性を損ねることのない、安全かつ特性に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的」(段落[0006])として、「電気化学的にリチウムを吸蔵・放出できる材料を用いた負極と、電気化学的にリチウムを吸蔵・放出できる材料を用いた正極と、非水溶媒に電解質としてリチウム塩を溶解した非水電解液とからなる非水電解液二次電池において、非水溶媒が、環状エステルの1種以上と鎖状エステルの1種以上を含む混合溶媒からなり、かつ混合溶媒が互いに相溶し、かつ鎖状エステルの少なくとも1種は一般式(1)で示される、ハロゲン化鎖状カーボネートであることを特徴とする非水電解液二次電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
【0006】
また、特許文献1には、「充電電流280mA,充電電圧4.2V の定電流定電圧充電,放電電流280mA,放電終止電圧2.5V の定電流放電で充放電を3回行い容量測定を行い、3回目の放電容量をその電池の容量とした。」(段落[0023])と記載されている。
そして、実施例には、上記環状エステルとして、EC(エチレンカーボネート)、上記鎖状エステルとして、TFEMC(2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート)+DMC(ジメチルカーボネート)を用い、混合比(体積比)を1:1:1とした非水電解液(段落[0018]表1の実施例2参照)等が示されている。
【0007】
特許文献2には、「正極にリチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物を備えた非水電解質二次電池の電解質組成を最適化することにより、高電圧非水電解質二次電池の充放電サイクル性能を向上すること」(段落[0013])を目的として、「正極活物質が一般式LiNiMn2−y4−δ(但し、0<x<1.1、0.45<y<0.55、0≦δ<0.4)で表されるリチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物である非水電解質二次電池において、非水電解質が環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含み、前記環状カーボネートまたは鎖状カーボネートの少なくとも1種がフッ素元素を含むことを特徴とする非水電解質電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、「本発明の、正極活物質が一般式LiNiMn2−y4−δ(但し、0<x<1.1、0.45<y<0.55、0≦δ<0.4)で表されるリチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物である非水電解質二次電池において、非水電解質が環状カーボネートと鎖状カーボネートとを含み、前記環状カーボネートまたは鎖状カーボネートの少なくとも1種がフッ素元素を含む非水電解質二次電池においては、高電圧下での非水溶媒の酸化分解反応が抑制される。」(段落[0015])、「その結果、5V級電池に特有の、正極における高電圧下での電解質の酸化分解により、電解液が枯渇することによって充放電サイクル性能が低下するといった問題が改善されて、高エネルギー密度、長寿命の高電圧非水電解質二次電池を得ることができる。したがって、本発明の工業的価値は極めて大きい。」(段落[0016])と記載されている。
そして、実施例には、上記のフッ素元素を含む環状カーボネートとして、フッ素化エチレンカーボネート(FEC)、上記のフッ素元素を含む鎖状カーボネートとして、フッ素化エチルメチルカーボネート(TFEMC)を用い、FEC:TFEMC=4:6(vol比)とした非水電解質(段落[0043]、[0044]、[0048]、[0051]表1の実施例5及び6参照)等が示されている。
【0009】
特許文献3には、「放電負荷特性に優れ、高温保存特性、サイクル特性に優れた二次電池用非水系電解液を提供すること」(段落[0006])を課題として、「イオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、該非水系電解液が、電解質と非水系溶媒とを有し、該非水系溶媒がハロゲン原子を有するカーボネートを含有していると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有することを特徴とする非水系電解液。」(請求項1)、「ハロゲン原子を有するカーボネートが、フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水系電解液。」(請求項3)、「ハロゲン原子を有するカーボネートが、フルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の非水系電解液。」(請求項5)の発明が記載されている。
【0010】
また、特許文献3には、「・・・4.4V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。」と記載されている(段落、[0411])。
そして、実施例には、フルオロエチレンカーボネート+エチルメチルカーボネート+エチル(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート(38.4:60.6:1.0)、フルオロエチレンカーボネート+エチルメチルカーボネート+エチル(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート(38.1:51.6:10.3)、フルオロエチレンカーボネート+エチルメチルカーボネート+ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート(37.2:50.3:12.5)、エチレンカーボネート+エチルメチルカーボネート+エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート(35.4:63.6:1.0)、エチレンカーボネート+エチルメチルカーボネート+エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート(35.0:54.0:11.0)等の非水系溶媒(質量%)が示されている。
【0011】
特許文献4には、「放電レート特性を損なうことなく、充電保存時におけるガス発生及び正極における金属溶出を抑制する非水電解質二次電池用正極活物質を提供する」(段落[0005])ことを課題として、「非水溶媒を含む非水電解質を備えた非水電解質二次電池であって、前記非水溶媒は、フルオロエチレンカーボネートと、ジフルオロブチレンカーボネートと、フッ素化鎖状カーボネート及びフッ素化鎖状カルボン酸エステルの少なくとも一方とを含有し、これらの合計の含有量は前記非水溶媒の総体積に対して50体積%よりも多い、非水電解質二次電池。」(請求項1)の発明が記載されている。
【0012】
また、特許文献4には、「充電終止電圧は、特に限定されないが、好ましくは4.4V以上であり、より好ましくは4.5Vであり、特に好ましくは4.5〜5.0Vである。後述する非水溶媒の組成は、電池電圧が4.4V以上の高電圧用途において特に好適である。」(段落[0009])と記載されている。
そして、実施例には、「4−フルオロエチレンカーボネート(FEC)と、トランス−4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン(DFBC)と、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(FEMC)とを体積比で10:15:75となるように調整し、この溶媒にLiPFを1.0mol/lとなるように加えて非水電解質を作製した」(段落[0038])こと(実施例1)、「FEMCに代えて3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチル(FMP)を用いた以外は、実施例1と同様」(段落[0040])にして非水電解質を作製したこと(実施例2)、「FMPの一部をエチルメチルカーボネート(EMC)に代えて、体積比をFEC:DFBC:FMP:EMC=10:15:45:30となるように調整した以外は、実施例2(「実施例1」は「実施例2」の誤記と思われる)と同様」(段落[0041])にして非水電解質を作製したこと(実施例3)等が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−40195号公報
【特許文献2】特開2005−78820号公報
【特許文献3】特開2008−277000号公報
【特許文献4】特開2015−111549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載された発明は、安全かつ特性に優れた非水電解液二次電池を提供することを目的として、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート(以下、「TFEMC」という。)を含有する混合溶媒を用いるものであるが、高電圧において高率放電性能を改善することを目的とするものではなく、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」という。)、フルオロエチレンカーボネート(以下、「FEC」という。)を含有させることは、具体的に記載されていない。
特許文献2に記載された発明は、高電圧非水電解質二次電池の充放電サイクル性能を向上させることを目的として、FECとTFEMCの混合溶媒を用いるものであるが、この混合溶媒を用いた非水電解質二次電池では、高電圧において高レートでの充放電サイクル特性の改善が十分であるとはいえない。
特許文献3に記載された発明は、放電負荷特性に優れ、高温保存特性、サイクル特性に優れた二次電池用非水系電解液を提供することを課題として、電解液の非水系溶媒にハロゲン原子を有するカーボネートを含有させるものであるが、高電圧において用いる非水系電解液二次電池の非水系溶媒として、TFEMCを含有させた実施例はない。
特許文献4には、放電レート特性を損なうことなく、充電保存時におけるガス発生及び正極における金属溶出を抑制することを課題として、非水電解質二次電池用溶媒として、FECとDFBCとTFEMCの混合溶媒を用いることが示されているが、高電圧において高レートでの充放電サイクル特性の改善するために、EMCとTFEMCを含有する溶媒を用いることは示されていない。
上記のように、高電圧(例えば、正極電位で4.4V(vs.Li/Li)以上)において、FECとTFEMCの混合溶媒を用いると低レートでのサイクル特性の改善ができる。しかし、この場合、高レートでの充放電サイクル特性が低下するという課題がある。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、非水電解液の非水溶媒を改良することにより、高電圧において、高レートでの充放電サイクル特性が改善できる非水電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、EMCとTFEMCを主溶媒として、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60未満:40超の割合で含む(但し、下記(a)、(b)、(c)及び(d)に該当するものを除く。
(a)前記非水溶媒が、環状カーボネートの60重量%以上がカーボネート環にフッ素原子が直結したフッ素化エチレンカーボネートであり且つ環状カーボネートと鎖状カーボネートの重量比率が3:97〜35:65であるもの
(b)前記非水電解液が、フッ素含有率が33〜70質量%であるフッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒及びホウ素酸塩を含むもの
(c)前記非水電解液が、一般式:X−R−SOF(式中、Rは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキレン基であり、Xは、カルボン酸誘導体基である。)で表される化合物を含むもの
(d)前記非水電解液が、一般式:Rf−SOF(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物を含有するもの
(2)非水溶媒と電解質塩を含む非水電解液二次電池用非水電解液であって、前記非水溶媒が、EMCとFEMCを、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60:40の割合で含み、FECを、全非水溶媒の10質量%以下の量で含み、EMCとTFEMCの含有量が、全非水溶媒中の80質量%以上である。
(3)正極、負極、及び非水電解液を備えた非水電解液二次電池であって、前記非水電解液が、前記(1)又は(2)の非水電解液である。
(4)前記(3)の非水電解液二次電池であって、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、EMCとTFEMCを特定の割合で混合した非水溶媒を含む非水電解液を用いることにより、非水電解液二次電池を高電圧(例えば、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる電圧)まで充電した際の、高レートでの充放電サイクル特性の改善が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態を示す外観斜視図
図2】本発明に係る非水電解液二次電池を複数個備えた蓄電装置を示す概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に、本発明に係る非水電解液二次電池の一実施形態である矩形状の非水電解液二次電池1の外観斜視図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す非水電解液二次電池1は、電極群2が電池容器3に収納されている。電極群2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
【0019】
ここで、セパレータに保持されている非水電解液は、非水溶媒と前記非水溶媒に溶解した電解質塩とを含むものであるが、本発明において、前記非水溶媒は、EMCとTFEMCを主溶媒として、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60:40の割合で含むことを特徴とする。
【0020】
本発明において、前記非水溶媒は、EMCとTFEMCとを主溶媒として、EMCを20〜60体積%、TFEMCを40〜80体積%の割合で含むことを特徴とする。
EMCとTFEMCの混合溶媒中のEMCの含有量が20体積%未満であるか、60体積%を超える場合、又は、TFEMCの含有量が40体積%未満であるか、80体積%を超える場合には、高電圧において高レートでの充放電サイクル特性が低下する。EMCの含有量を20〜60体積%、TFEMCの含有量を40〜80体積%とすることにより、正極電位で4.4V(vs.Li/Li)以上の高電圧において、高レートでの充放電サイクル特性が改善される。より高電圧の場合、高レートでの充放電サイクル特性を向上させるためには、EMCの含有量を60体積%よりも少なくし、TFEMCの含有量を40体積%よりも多くすることが好ましい。
【0021】
FECは、高電圧において、45℃充放電サイクル特性を向上させるために、非水溶媒に含有させることが好ましい。しかし、多すぎると、ガス発生による電池厚み増加が著しくなるから、全非水溶媒の20質量%以下とすることが好ましい。全非水溶媒の5〜10質量%とすることがより好ましい。
【0022】
本発明において、前記非水溶媒は、EMCとTFEMCとを主溶媒とするものであるから、両者の含有量は、全溶媒中の80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。本発明の効果を損なわない範囲で、EMC、TFEMC、FEC以外の少量の非水溶媒を含有してもよい。他の非水溶媒としては、一般に非水電解液二次電池の非水電解液に使用される非水溶媒が使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1−フェニルビニレンカーボネート、1,2−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、プロピオラクトン等の環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状カルボン酸エステル、テトラヒドロフラン若しくはその誘導体、1,3−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、ジオキサラン若しくはその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0023】
本発明の非水電解液に含有される電解質塩としては、限定されるものではなく、一般に非水電解液二次電池に用いられる電解質塩を用いることができる。例えば、LiClO,LiBF,LiAsF,LiPF,LiSCN,LiBr,LiI,LiSO,Li10Cl10,NaClO,NaI,NaSCN,NaBr,KClO,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO,LiN(CFSO,LiN(CSO,LiN(CFSO)(CSO),LiC(CFSO,LiC(CSO,(CHNBF,(CHNBr,(CNClO,(CNI,(CNBr,(n−CNClO,(n−CNI,(CN−maleate,(CN−benzoate,(CN−phthalate、ステアリルスルホン酸リチウム、オクチルスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。
【0024】
非水電解液における電解質塩の濃度としては、優れた高率放電性能を有する非水電解液二次電池を確実に得るために、0.1mol/l〜5.0mol/lが好ましく、1.0mol/l〜2.0mol/lがより好ましい。
【0025】
本発明の非水電解液二次電池を構成する正極に使用する正極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能であり、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となるものが好ましく、一般に非水電解液二次電池の正極活物質に使用されるリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物等が使用できる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウムニッケルマンガン複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。リチウムニッケルマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi0.5Mn1.5等のLiNiMn2−y4−δ(0<x<1.1、0.45<y<0.55、0≦δ<0.4)、LiNi1/2Mn1/2等のLiMeO(MeはNi、及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.11Ni0.29Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Mnを含む遷移金属)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のLiMeO(MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)、又はLi1.09Co0.11Ni0.18Mn0.62(Li/Me=1.2)、Li1.11Co0.11Ni0.18Mn0.60(Li/Me=1.25)等のLi1+αMe1−α(0<α、MeはNi、Co及びMnを含む遷移金属)を使用することができる。ポリアニオン化合物としては、例えば、LiNiPO、LiCoPO、LiCoPOF、LiMnSiO等を使用することができる。
【0026】
本発明の非水電解液二次電池を構成する負極に使用する負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを挿入・脱離可能なものであり、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上となる正極と組み合わせて高電圧で使用できるものが好ましく、一般に非水電解液二次電池の負極活物質に使用される炭素質材料、酸化錫や酸化ケイ素等の金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体やリチウムアルミニウム合金等のリチウム合金、SnやSi等のリチウムと合金形成可能な金属等が使用できる。炭素質材料としては、天然グラファイト、人造グラファイト、コークス類、難黒鉛化性炭素、低温焼成易黒鉛化性炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、活性炭等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。中でも炭素質材料が安全性の点から好ましい。
【0027】
正極活物質及び負極活物質の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、非水電解液電池の高出力特性を向上する目的で10μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0028】
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極活物質について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
【0029】
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛,鱗片状黒鉛,土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅,ニッケル,アルミニウム,銀,金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種またはそれらの混合物として含ませることができる。
【0030】
これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが好ましい。導電剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜50重量%が好ましく、特に0.5重量%〜30重量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
【0031】
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),ポリフッ化ビニリデン(PVdF),ポリエチレン,ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM),スルホン化EPDM,スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して1〜50重量%が好ましく、特に2〜30重量%が好ましい。
【0032】
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料を用いることができる。通常、ポリプロピレン,ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極または負極の総重量に対して添加量は30重量%以下が好ましい。
【0033】
正極及び負極は、前記主要構成成分(正極においては正極活物質、負極においては負極活物質)、およびその他の材料を混練し合剤とし、N−メチルピロリドン,トルエン等の有機溶媒又は水に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、または圧着して50℃〜250℃程度の温度で、2時間程度加熱処理することにより好適に作製される。前記塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚さ及び任意の形状に塗布することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
正極集電体及び負極集電体の材質としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
負極集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも銅が加工し易さとコストの点から好ましい。
【0035】
セパレータとしては、微多孔性膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。中でもポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂を主成分とする微多孔性膜であることが好ましい。
【0036】
その他の電池の構成要素としては、端子、絶縁板、電池ケース等があるが、これらの部品は従来用いられてきたものをそのまま用いて差し支えない。
【0037】
本発明に係る非水電解液二次電池の形状については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の非水電解液二次電池を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の非水電解液二次電池1を備えている。前記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
(本発明非水電解液1〜3)
体積比で、それぞれ、EMC:TFEMC=20:80、40:60、60:40のEMC及びTFEMCを含む混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させ、そこに、FECを7.5質量%添加した非水電解液を本発明非水電解液1〜3とする。
【0040】
(比較非水電解液1〜3)
体積比で、EMC:TFEMC=80:20のEMC及びTFEMCを含む混合溶媒に、電解質塩としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させ、そこに、FECを7.5質量%添加した非水電解液を比較非水電解液1とする。
EMCに、電解質塩としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させ、そこに、FECを7.5質量%添加した非水電解液を比較非水電解液2とする。
TFEMCに、電解質塩としてLiPFを1.2mol/lの濃度で溶解させ、そこに、FECを7.5質量%添加した非水電解液を比較非水電解液3とする。
【0041】
(正極板の作製)
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。質量比で、正極活物質:ポリフッ化ビニリデン(PVdF):アセチレンブラック(AB)=93:4:3の割合(固形物換算)の割合で含み、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極ペーストを作製し、該正極ペーストを正極活物質が単位電極面積あたり17mg/cm含まれるように、厚さ15μmの帯状のアルミニウム箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して正極活物質層を成型した後、100℃で14時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして正極板を作製した。
【0042】
(負極板の作製)
負極活物質として、黒鉛を用いた。質量比で、黒鉛:スチレン−ブタジエン・ゴム(SBR):カルボキシメチルセルロース(CMC)=97:2:1の割合(固形分換算)で含み、水を溶剤とする負極ペーストを作製し、厚さ10μmの帯状の銅箔集電体の両面に塗布した。これをローラープレス機により加圧して負極活物質層を成型した後、100℃で12時間、減圧乾燥して、極板中の水分を除去した。このようにして負極板を作製した。
【0043】
(非水電解液二次電池の作製)
<組立工程>
ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータを介して前記正極板と前記負極板を積層し、扁平形状に巻回して、図1に示すような電極群2を作製し、アルミニウム製の電池容器3に収納し、正負極端子4,5を取り付けた。電池容器3内部に、本発明非水電解液1〜3、比較電解液1〜3を注入したのちに封口した。このようにして非水電解液二次電池を組み立てた。
【0044】
<初期充放電工程>
上記のようにして組み立てた非水電解液二次電池について、温度25℃にて、2サイクルの初期充放電工程に供した。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。1サイクル目の充電は、電流0.2CmA、電圧4.35V、8時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流0.2CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。2サイクル目の充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。このようにして、非水電解液二次電池を作製した。本発明非水電解液1〜3、比較電解液1〜3を用いた非水電解液二次電池は、初期放電容量が、それぞれ、161、159、161、162、159、160mAh/gであった。
【0045】
(充放電サイクル試験)
上記のようにして作製した、本発明非水電解液1〜3、比較非水電解液1〜3を備えた非水電解液二次電池について、温度45℃にて、充放電サイクル試験を行い、放電容量の推移を調べた。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。充電は、電流1.0CmA、電圧4.35V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。ここで、負極に黒鉛を用いた場合、正極電位(vs.Li/Li)の値は端子間電圧の値に対して約0.1V大きいものとなることがわかっている。この結果を表1に示す。表中、「×」印は、充放電サイクル経過に伴う放電容量の低下が著しいため、所定サイクルに達する前に試験を終了したことを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1より、以下のことがわかる。
主溶媒がTFEMCのみである比較非水電解液3を用いた電池は、100サイクル付近から、放電容量が急激に低下し始める。そのため、200サイクルに至る前に試験を終了した。EMC:TFEMCの体積比が80:20である比較非水電解液1を備えた非水電解液電池は、400サイクル付近までは本発明非水電解液を用いた電池と同程度の放電容量維持率を示したが、500サイクル手前で、放電容量が急激に低下したので、試験を終了した。主溶媒がEMCのみである比較非水電解液2を用いた電池は、600サイクルまでは本発明非水電解液を用いた電池と同程度の放電容量維持率を示したが、600サイクルを超えた時点で、放電容量が急激に低下したので、試験を終了した。
これに対して、EMC:TFEMC=20:80〜60:40の本発明非水電解液1〜3を用いた電池は、正極電位が4.4V(vs.Li/Li)以上という高電圧、放電電流が1CmAという高レートでも、800サイクルまで、良好な放電容量維持率を示した。
【0048】
(実施例2)
実施例1と同様にして作製した、本発明非水電解液1,2、比較非水電解液2を備えた非水電解液二次電池について、温度45℃にて、異なる条件で充放電サイクル試験を行い、放電容量の推移を調べた。電圧制御は、全て、正負極端子間電圧に対して行った。充電は、電流1.0CmA、電圧4.5V、3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、電流1.0CmA、終止電圧2.75Vの定電流放電とした。全てのサイクルにおいて、充電後及び放電後に、10分の休止時間を設定した。ここで、正極電位は、4.6V(vs.Li/Li)であった。この結果を表2に示す。表中、「×」印は、充放電サイクル経過に伴う放電容量の低下が著しいため、所定サイクルに達する前に試験を終了したことを示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2より、正極電位が4.6Vという、実施例1よりも高電圧の条件でも、主溶媒が体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜4060の本発明非水電解液1及び2を用いた電池は、主溶媒がEMCのみである比較非水電解液2を用いた電池と比較して、高レートで、良好な放電容量維持率を示すことがわかる。
但し、EMCの含有量が多い場合、正極電位が高くなるほど、サイクル寿命が短くなる傾向があるので、体積基準で、EMC:TFEMC=20:80〜60未満:40超とすることが好ましい。
【0051】
(符号の説明)
1 非水電解液二次電池
2 電極群
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る非水電解液二次電池は、充放電サイクル特性が優れているので、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの自動車用電源として有用である。
図1
図2