(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
図1は、実施形態の充電率推定装置を含む電池パックの一例を示す図である。
図1に示す電池パック1は、例えば、電動フォークリフトなどの車両に搭載され、走行モータを駆動するインバータなどの負荷へ電力を供給する。
【0013】
また、電池パック1は、複数の電池モジュール2と、制御部3と、記憶部4とを備える。なお、記憶部4は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などにより構成される。
【0014】
各電池モジュール2は、それぞれ、電池スタックSと、スイッチSWと、電流検出部21と、温度検出部22と、監視部23とを備える。なお、各電池モジュール2のそれぞれの電池スタックSは、互いに並列接続され、組電池を構成する。なお、並列接続される電池スタックSの並列数は、1でも2以上でもよい。
【0015】
電池スタックSは、直列接続される複数の電池B(例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、または、電気二重層コンデンサ)により構成される。なお、各電池スタックSは、それぞれ、1つの電池Bで構成されてもよい。
【0016】
スイッチSWは、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体リレーや電磁式リレーにより構成される。充電器Chから電池パック1へ電力が供給されているとき、スイッチSWがオンしている電池モジュール2が有する電池Bが充電され、その電池Bの電圧が上昇する。
【0017】
電流検出部21は、例えば、ホール素子やシャント抵抗により構成され、各電池Bに流れる電流Iを検出する。
温度検出部22は、例えば、サーミスタにより構成され、各電池Bの温度Tを検出する。
【0018】
監視部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはプログラマブルディバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)など)により構成され、各電池Bの電圧Vを検出する。また、監視部23は、制御部3から送られてくる指示により、スイッチSWのオン、オフを制御する。また、監視部23は、各電池Bの電圧V、電流検出部21により検出される電流I、及び温度検出部22により検出される温度Tを示す電池状態情報を制御部3に送る。
【0019】
制御部3は、定電流定電圧充電制御を行うことで各電池Bを充電させる充電制御部31と、各電池Bの充電率(SOC:State Of Charge)を推定する推定部32とを備える。また、制御部3は、充電停止後において、推定部32で推定した推定充電率を、車両側制御部5に送る。車両側制御部5は、制御部3から送られてくる充電率を、表示部6(例えば、ディスプレイ)に表示させる。なお、制御部3は、例えば、CPUまたはプログラマブルディバイスにより構成され、CPUまたはプログラマブルディバイスが所定のプログラムを実行することによって、充電制御部31及び推定部32が実現される。また、充電率推定装置は、例えば、少なくとも充電制御部31及び推定部32を備えて構成される。
【0020】
図2は、制御部3の動作を説明するためのフローチャートである。
まず、制御部3の充電制御部31は、定電流充電制御を開始する(S201)。
次に、充電制御部31は、電圧Vが目標電圧Vtよりも小さいとき(S202:No)、定電流充電制御を継続し、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になると(S202:Yes)、定電流充電制御を終了し、定電圧充電制御を開始する(S203)。目標電圧Vtは、例えば、満充電電圧であるが、満充電電圧に限らず任意の電圧でも良い。
【0021】
また、制御部3の推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になると(S202:Yes)、推定充電率を所定の充電率に設定する(S203)。すなわち、推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの推定充電率を所定の充電率に設定する。S203で設定される所定の充電率は100[%]より小さい値である。
【0022】
次に、充電制御部31は、電圧Vが目標電圧Vtよりも小さいとき(S204:No)、定電圧充電制御を継続し、電圧Vが目標電圧Vt以上になると(S204:Yes)、充電器Chに送信する電流指令値を所定値減少させる(S205)。すなわち、充電制御部31は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になった後、電圧Vが目標電圧Vt以上になる度に、電流指令値を所定値減少させる。
【0023】
また、推定部32は、電圧Vが目標電圧Vt以上になると(S204:Yes)、推定充電率を所定量増加させる(S205)。すなわち、推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になった後、電圧Vが目標電圧Vt以上になり電流指令値が減少する度に、推定充電率を所定量増加させる。このように、電流指令値の変化に応じて推定充電率を設定する場合では、電流検出部21が故障するなどして電流Iを検出できない状況であっても、推定充電率を継続して推定することができる。なお、推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になった後、電圧Vが目標電圧Vt以上になり電流指令値が減少して電流I(電流検出部21により検出される電流)が減少する度に、推定充電率を所定量増加させるように構成してもよい。この場合、電流検出部21が故障していないが、電流検出部21の検出誤差が電流の積算値に多く含まれてしまう状況であっても、推定充電率を精度よく推定することができる。
【0024】
次に、充電制御部31は、定電圧充電制御を開始した時刻から所定時間が経過していないとき(S206:No)、定電圧充電制御を継続し、定電圧充電制御を開始した時刻から所定時間が経過すると、すなわち、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になってから所定時間経過すると(S206:Yes)、定電圧充電制御を終了する(S207)。例えば、充電制御部31は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になってから所定時間経過すると、充電器Chに充電停止指示を送信するとともに、すべてのスイッチSWをオンからオフに切り替え、各電池Bの充電を停止させる。なお、充電制御部31は、電流指令値が所定の電流指令値以下になると、充電器Chに充電停止指示を送信するとともに、すべてのスイッチSWをオンからオフに切り替え、各電池Bの充電を停止させるように構成してもよい。なお、充電器Chは、充電停止指示を受け取ると、電池パック1への電力供給を停止する。
【0025】
また、推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になってから所定時間経過すると(S206:Yes)、各電池Bのうち、最も電圧Vが高い満充電電池の推定充電率を100[%]に設定し、各電池Bのうち、満充電電池以外の未満充電電池の推定充電率を、充電が停止したときの未満充電電池の電圧Vにより推定する(S207)。
【0026】
このように、各電池Bの充電中において、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの推定充電率を所定の充電率に設定し、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になった後、充電器Chに送信する電流指令値が減少する度に、または、電流Iが減少する度に、推定充電率を所定量増加させているため、所定の充電率として、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になるときの電池Bの実際の充電率に近い値を設定することで、電流Iの積算値に基づいて推定充電率を求める場合や電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときに推定充電率を100[%]に設定する場合に比べて、充電中の各電池Bの充電率の推定精度を向上させることができる。
【0027】
また、各電池Bの充電停止後において、各電池Bのうち、最も電圧が高い満充電電池の推定充電率を100[%]に設定し、各電池Bのうち、満充電電池以外の未満充電電池の推定充電率を、充電を停止したときの未満充電電池の電圧Vにより推定するため、充電停止後の各電池Bの充電率の推定精度を向上させることができる。例えば、少なくとも1つの電池Bの推定充電率が100[%]になると、組電池の充電率として100[%]がユーザに対して表示され、少なくとも1つの電池Bの推定充電率が0[%]になると、組電池の充電率として0[%]がユーザに対して表示される場合、各電池Bの実際の充電率と、ユーザに対して表示される組電池の充電率との乖離を抑えることができるため、ユーザに違和感を覚えさせないようにすることができる。
【0028】
次に、充電制御部31及び推定部32の具体的な動作について説明する。
図3(a)は電池Bの電圧Vの変動例を示す図であり、
図3(b)は電池Bに流れる電流Iの変動例を示す図であり、
図3(c)は電池Bの実際の充電率(一点鎖線)及び推定充電率(実線)の変動例を示す図である。なお、
図3(a)に示すグラフの横軸は時間を示し、縦軸は電池Bの電圧Vを示している。また、
図3(b)に示すグラフの横軸は時間を示し、縦軸は電池Bに流れる電流Iを示している。また、
図3(c)に示すグラフの横軸は時間を示し、縦軸は電池Bの充電率を示している。また、
図3(a)〜
図3(c)の各グラフの横軸は互いに同じ時間を示している。
【0029】
まず、充電制御部31は、定電流充電制御を開始すると、時間t0〜t1において、電流Iを一定電流Icに保ちつつ、電圧Vが目標電圧Vtまで徐々に上昇するように、電流指令値を充電器Chに送信することで各電池Bを充電させる。
【0030】
また、推定部32は、時間t0〜t1において、電流Iの積算値に基づいて、推定充電率を求める。例えば、推定部32は、時間t0〜t1において、推定充電率=電流Iの積算値/満充電容量×100を計算することにより、推定充電率を求める。なお、推定部32は、充電開始前に推定した電池Bの充電率を記憶部4に記憶しておき、その記憶した充電率を、時間t0〜t1における推定充電率とするように構成してもよい。
【0031】
次に、充電制御部31は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になると、定電流充電制御を終了して、定電圧充電制御を開始する。
また、推定部32は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になると、推定充電率を所定の充電率(例えば、80[%])に設定する。なお、ここで設定される所定の充電率は、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの電流指令値と電池Bの内部抵抗をもとに算出することができる。電圧Vが最初に目標電圧Vtになったときの実際の電池Bの開回路電圧は、電圧Vが最初に目標電圧Vtから、(電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの電流指令値)×(電池Bの内部抵抗)により決まる電圧を減算して求めた電圧に近いため、その求めた開回路電圧を用いて、開回路電圧−充電率特性曲線により算出した充電率を所定の充電率とすることができる。なお、電池Bの内部抵抗は温度や劣化度によって変化するため、温度や劣化度を考慮して所定の充電率を求めてもよい。
【0032】
なお、推定部32は、例えば、
図4(a)に示す情報を記憶部4から取り出し、電池Bの温度Tが低い程、所定の充電率を低く設定し、温度Tが高い程、所定の充電率を高く設定してもよい。通常、温度Tが低い程、電池Bの内部抵抗が大きいために電池Bの閉回路電圧と実際の開回路電圧との差が大きくなることから、電池Bの実際の充電率が低くなり、温度Tが高い程、電池Bの実際の充電率が高くなるため、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの推定充電率の推定精度を向上させることができる。
【0033】
また、推定部32は、例えば、
図4(b)に示す情報を記憶部4から取り出し、電池Bに流れる電流Iが大きい程、所定の充電率を低く設定し、電流Iが小さい程、所定の充電率を高く設定してもよい。通常、電流Iが大きい程、電池Bの閉回路電圧と実際の開回路電圧との差が大きくなることから、電池Bの実際の充電率が低くなり、電流Iが小さい程、電池Bの実際の充電率が高くなるため、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの推定充電率の推定精度を向上させることができる。
【0034】
また、推定部32は、例えば、
図4(c)に示す情報を記憶部4から取り出し、電池Bの劣化度Dが大きい程、所定の充電率を低く設定し、電池Bの劣化度Dが小さい程、所定の充電率を高く設定してもよい。通常、電池Bの劣化度Dが大きい程、電池Bの内部抵抗が大きいために電池Bの閉回路電圧と実際の開回路電圧との差が大きくなることから、電池Bの実際の充電率が小さくなり、電池Bの劣化度Dが小さい程、電池Bの実際の充電率が大きくなるため、電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの推定充電率の推定精度を向上させることができる。
【0035】
また、推定部32は、電池Bの温度T、電池Bに流れる電流I、及び、電池Bの劣化度Dの少なくとも2つの変化に応じて、所定の充電率を変化させるように構成してもよい。例えば、推定部32は、
図4(a)及び
図4(b)に示す各情報を記憶部4から取り出し、電池Bの温度Tが低い程、電池Bに流れる電流Iが大きい程、所定の充電率を低く設定し、電池Bの温度Tが高い程、電池Bに流れる電流Iが小さい程、所定の充電率を高く設定する。例えば、推定部32は、
図4(a)〜
図4(c)に示す各情報を記憶部4から取り出し、電池Bの温度Tが低い程、電池Bに流れる電流Iが大きい程、電池Bの劣化度Dが大きい程、所定の充電率を低く設定し、電池Bの温度Tが高い程、電池Bに流れる電流Iが小さい程、電池Bの劣化度が小さい程、所定の充電率を高く設定する。
【0036】
次に、充電制御部31は、定電圧充電制御を開始すると、時間t1〜t2において、電圧Vが目標電圧Vt以上になる度に、電流指令値を所定値(例えば、1[A])減少させる。
【0037】
また、推定部32は、時間t1〜t2において、電圧Vが目標電圧Vt以上になる度に、推定充電率を所定量(例えば、0.2[%])増加させる。なお、推定部32は、所定量=(100[%]−所定の充電率)/(電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの電流指令値)を計算することにより所定量を求めるように構成してもよい。また、推定部32は、所定量=(100[%]−所定の充電率)×(電圧Vが目標電圧Vt以上になる度に、減少させる電流指令値の減少量)/(電圧Vが最初に目標電圧Vt以上になったときの電流指令値)を計算することにより所定量を求めるように構成してもよい。また、推定部32は、電池Bに流れる電流Iの変化に応じて、所定量を変化させるように構成してもよい。
【0038】
そして、充電制御部31は、定電圧充電制御を開始してから所定時間t(時間t1〜t2)経過すると、定電圧充電制御を終了する。
また、推定部32は、定電圧充電制御を開始してから所定時間t(時間t1〜t2)経過すると、各電池Bのうち、最も電圧が高い満充電電池の推定充電率を100[%]に設定し、各電池Bのうち、満充電電池以外の未満充電電池の推定充電率を、充電を停止したときの未満充電電池の電圧Vにより推定する。
【0039】
次に、充電停止後の推定部32の具体的な動作を説明する。
まず、推定部32は、
図5(a)に示すように、電池Bに流れる電流I(I1、I2、I3、・・・)毎に、電池Bの温度T(T1、T2、T3、・・・)と電池Bの劣化度D(D1、D2、D3、・・・)と補正値Vc(充電停止から分極が解消するまでの間に変動する電池Bの電圧幅)(Vc11、Vc12、Vc13、・・・)とが対応付けられた情報を記憶部4から取り出し、その取り出した情報を参照して、充電停止時に未満充電電池に流れていた電流Iと、充電停止時の未満充電電池の温度T及び劣化度Dとに対応する補正値Vcを求める。なお、電池Bに流れる電流が大きくなる程、電池Bの分極が大きくなるため、電流Iが大きくなる程、補正値Vcが大きな値になるように設定する。また、電池Bの温度が高くなる程、電池Bの分極が大きくなるため、温度Tが大きくなる程、補正値Vcが大きな値になるように設定する。また、電池Bの劣化度が大きくなる程、電池Bの分極が大きくなるため、劣化度Dが大きくなる程、補正値Vcが大きな値になるように設定する。このように補正値Vcを設定することにより、補正値Vcを最適値に近づけることができる。
【0040】
次に、推定部32は、充電停止時(各スイッチSWがオンからオフに切り替わった後)に監視部23により検出された未満充電電池の開回路電圧から、上記求めた補正値Vcを減算することにより、分極解消時の未満充電電池の開回路電圧を推定する。
【0041】
そして、推定部32は、
図5(b)に示すように、電池Bの開回路電圧(OCV1、OCV2、OCV3、・・・)と、電池Bの充電率(SOC1、SOC2、SOC3、・・・)とが対応付けられた情報を参照して、上記推定した分極解消時の未満充電電池の開回路電圧に対応する充電率を求め、その求めた充電率を未満充電電池の推定充電率とする。
【0042】
このように、充電停止時の未満充電電池の開回路電圧により未満充電電池の充電率を推定する構成であるため、充電停止までに未満充電電池に流れる電流の積算値により未満充電電池の充電率を推定する場合に比べて、電流検出部21で生じる検出誤差に相当する充電率を未満充電電池の充電率に含ませないようにすることができ、未満充電電池の充電率の推定精度をさらに向上させることができる。また、監視部23により検出された未満充電電池の開回路電圧から分極を考慮した補正値Vcを減算することで分極解消時の未満充電電池の開回路電圧を推定する構成であるため、分極解消時の未満充電電池の開回路電圧の推定精度を上げることができ、未満充電電池の充電率の推定精度をさらに向上させることができる。また、未満充電電池に流れる電流I、未満充電電池の温度T及び劣化度Dを考慮して補正値Vcを求める構成であり、補正値Vcを最適値に近づけることができるため、分極解消時の未満充電電池の開回路電圧の推定精度をさらに上げることができ、未満充電電池の充電率の推定精度をさらに向上させることができる。
【0043】
また、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。