特許第6763219号(P6763219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763219食用油用浄化剤及び食用油浄化用フィルタ、並びに食用油の劣化抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763219
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】食用油用浄化剤及び食用油浄化用フィルタ、並びに食用油の劣化抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 3/04 20060101AFI20200917BHJP
   C11B 5/00 20060101ALI20200917BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C11B3/04
   C11B5/00
   A23D9/02
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-135804(P2016-135804)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2018-2977(P2018-2977A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯 賢一
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−520565(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/121865(WO,A1)
【文献】 特開2013−252129(JP,A)
【文献】 特開2002−371294(JP,A)
【文献】 特開2015−213597(JP,A)
【文献】 特開2012−050563(JP,A)
【文献】 特開2013−013588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B
C11C
A23D
A47J
B01D 35/02
B01D 39/
CAplus/REGISTRY
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酒石酸水素カリウムを配合し
前記酒石酸水素カリウムの添加量が、食用油全量に対して2質量%以上10質量%以下であることを特徴とする食用油用浄化剤。
【請求項2】
前記酒石酸水素カリウムの添加量が、前記食用油全量に対して2質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の食用油用浄化剤。
【請求項3】
使用済もしくは使用中の食用油を、前記食用油全量に対して2質量%以上10質量%以下の添加量となる酒石酸水素カリウムに接触させることで前記食用油の劣化を抑制することを特徴とする食用油の劣化抑制方法。
【請求項4】
前記酒石酸水素カリウムの添加量が、前記食用油全量に対して2質量%以上5質量%以下であることを特徴とする請求項3記載の食用油の劣化抑制方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の食用油用浄化剤を含有することを特徴とする食用油浄化用フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済もしくは使用中の食用油の劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油は種々の食べ物に使用されているが、調理に伴う加熱や、放置などにより劣化した食用油は、食べ物の味や臭い、外観を悪化させる。食用油の劣化を防ぐために、例えば特許文献1では、酸化チタンで被覆したセラミックボールをステンレス製の網に入れた器具を油槽中の食用油に投入し、加熱により食材から出る有機物や汚れ、匂いなどを酸化チタンで分解して食用油の酸化速度や劣化速度を遅くすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3088760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食用油の劣化の更なる劣化抑制への要望は高く、本発明は食用油の劣化をこれまでよりも抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、下記の食用油用浄化剤及び食用油の劣化抑制方法を提供する。
(1)酒石酸塩を配合したことを特徴とする食用油用浄化剤。
(2)使用済もしくは使用中の食用油を、酒石酸塩に接触させることで前記食用油の劣化を抑制することを特徴とする食用油の劣化抑制方法。
(3)上記(1)記載の食用油用浄化剤を含有することを特徴とする食用油浄化用フィルタ。
【発明の効果】
【0006】
本発明よれば、食用油の劣化をこれまでよりも抑えることができる。また、本発明で使用する酒石酸塩は、食品添加物としても使用されており、人体への影響が小さく、回収も不要で取扱い性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の食用油用浄化剤の使用形態の一例を示す模式図であり、(A)は全体構成図、(B)はフィルタ(F)の拡大図である。
図2】酒石酸水素カリウムの添加量と、加熱後の蒸発量との関係を示すグラフである。
図3】酒石酸水素カリウムの添加量と、加熱後の酸価との関係を示すグラフである。
図4】酒石酸水素カリウムの添加量と、加熱後の動粘度との関係を示すグラフである。
図5】実施例1と比較例2とで、加熱後の酸価を比較した結果を示すグラフである。
図6】実施例1と比較例2とで、加熱後の動粘度を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0009】
本発明において食用油には制限はなく、一般に使用されている種々の食用油、代表的には植物油が対象になる。
【0010】
本発明の食用油用浄化剤は、上記食用油の劣化を抑制するものであり、その有効成分として酒石酸塩を含む。中でも、酒石酸水素カリウムが好ましい。酒石酸塩は、GRAS確認物質リストにも記載されているように食品添加物としても使用されており、人体への影響が小さい。そのため、食用油用浄化剤は酒石酸塩を単独で使用することが最も好ましいが、他の物質を併用する場合は人体に無害であるものを用いる。例えば、酸化カルシウムなどを併用することができる。
【0011】
食用油用浄化剤の使用方法は、食用油用浄化剤を食用油に接触させれば制限はないが、食用油用浄化剤を食用油に直接添加する方法が最も簡便である。食用油用浄化剤に用いる酒石酸塩は、常温で結晶(粉末)であり、食用油にそのまま添加すればよい。上記したように、食用油用浄化剤の主成分である酒石酸塩は食品添加剤としても使用されており、食用油用浄化剤を添加した食用油をそのまま調理に使用することができる。また、使用後に食用油用浄化剤を回収する必要もない。あるいは、紙や不織布、織布のような食用油を透過する材料からなる容器や袋などに食用油用浄化剤を収容し、容器や袋ごと食用油に投入し、使用後に容器や袋ごと回収することもできる。
【0012】
酒石酸塩の添加量としては、食用油全量に対して0.1質量%以上であると効果が得られ、1質量%以上であることがより好ましい。但し、酒石酸塩を必要以上に多く添加しても効果が飽和して不経済になり、更には食用油用浄化剤を添加した食用油を調理用に用いるため味などへの影響を考慮すると、上限は10質量%が適当であり、5質量%以下でも十分に実用的である。
【0013】
また、使用方法として、図1(A)に示すように、油槽の外部にてポンプPで食用油を循環させ、循環途中に食用油用浄化剤を収容したフィルタFを配置し、フィルタFに食用油を流通させてもよい。フィルタFとしては、例えば同図(B)に示すように、食用油用浄化剤である酒石酸塩、例えば酒石酸水素カリウム塩(または他の物質との混合物)を紙で挟み、紙の周縁を閉じて袋状としたものを用いることができる。このような循環式にすることにより、調理中の食用油、もしくは調理時間外に、使用後の食用油を処理することができる。そして、劣化抑制効果が得られなくなる時間を予め求めておき、これを経過した時点でフィルタFを交換する。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0015】
(実施例1〜4、比較例1〜2)
表1に示すように、40℃における動粘度が30mm/sの食用油(菜種油)を用い、実施例1では酒石酸水素カリウムを食用油に対し1質量%、実施例2では同2質量%、実施例3では同5質量%、実施例4では同10質量%を添加して試料を調製した。また、比較例1では何も添加せずに食用油単独、比較例2では酸化チタンを食用油に対して10質量%添加して試料とした。
【0016】
そして、各試料を大気中、160℃にて50時間加熱し、加熱後に蒸発量、酸価及び40℃における動粘度を測定した。尚、酸価は、JIS K 2501:2003に基づき電位差滴定法(中和点:pH12)により測定した。結果を表1に併記する。
【0017】
【表1】
【0018】
また、実施例1〜4及び比較例1の測定結果を基に、図2に酒石酸水素カリウムの添加量と蒸発量との関係を、図3に酒石酸水素カリウムの添加量と酸価との関係を、図4に酒石酸水素カリウムの添加量と動粘度との関係を、それぞれグラフ化して示す。
【0019】
これらグラフに示すように、酒石酸水素カリウムを添加することにより、蒸発量、酸価及び動粘度の変化が抑えられており、食用油の加熱による劣化を抑える効果が認められた。酒石酸水素カリウムの添加量としては、食用油量に対して1質量%以上であれば効果が顕著であり、また、ほほ同等の効果が得られていることから1質量%以上が好ましいといえる。また、図4からは、添加量2質量%以上で動粘度が特に小さくなっており、2質量%以上がより好ましいといえる。但し、前記のように添加量が1質量%以上では効果がほぼ飽和する傾向にあるため、10質量%を上限にすることが好ましいと言える。
【0020】
また、酒石酸水素カリウムと酸化チタンとで、添加量が同一である実施例4と比較例2とを比較すると、図5及び図6にも示すように、実施例4の方が酸価が低く、動粘度の変化も抑えられており、食用油の劣化抑制には酸化チタンよりも酒石酸水素カリウムの方が優れていることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6