特許第6763232号(P6763232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763232
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】定着装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-159724(P2016-159724)
(22)【出願日】2016年8月16日
(65)【公開番号】特開2018-28583(P2018-28583A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 康裕
(72)【発明者】
【氏名】藤森 教行
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−165018(JP,A)
【文献】 特開2005−084484(JP,A)
【文献】 特開2008−107464(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0274519(US,A1)
【文献】 特開2008−176285(JP,A)
【文献】 中興化成工業株式会社,FGF-400シリーズ,検索日:2020年3月4日,URL,https://www.chukoh.co.jp/products/fabric/fgf-400/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に第一支持体を挿入したベルトの外周面に金属粉が分散した液体を吹き付けた後、該ベルトを該第一支持体に対して軸方向に相対移動又は軸回りに回転しつつ軸方向に相対移動し、該第一支持体から取り外す工程と、
内側に第二支持体を挿入した該ベルトにおける該金属粉で粗らされた該外周面をメッキした後、該ベルトを該第二支持体に対して軸回りに回転しつつ軸方向に相対移動し、該第二支持体から取り外す工程と、
該ベルトを該第二支持体から取り外す際に、該金属粉により該ベルトの内周面に形成された螺旋状の突起が延びる方向に対し、交差する方向に配置された凸部が摺動面に形成された摺動部材を、該内周面に該摺動面が接触するように該ベルトに組み付ける工程と、
を備える定着装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定着装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる定着装置に関する技術が開示されている。この先行技術では、定着装置は、定着ロールとエンドレスベルトと圧力パッドとを備えている。そして、エンドレスベルトと圧力パッドとの間にエンドレスベルトとの摺擦面に溝が形成された低摩擦シートが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-084484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
定着装置を構成する回転移動するベルトの内周面には、摺動部材を接触させている。しかし、ベルトの内周面に傷が付いていると、傷が摺造部材の凸部に当たり、異音が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、ベルトの内周面の突起が延びる方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材を備える場合と比較し、回転移動するベルトの内周面に摺動する摺動部材の異音を低減することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様の発明は、外周面が回転部材に接触して回転移動し、内周面の突起が、回転軸方向に沿って又は回転軸方向に対して斜めに形成されたベルトと、該ベルトの内側に配置され、該ベルトを該回転部材に押し付ける押部材と、該ベルトと該押部材との間に設けられ、該ベルトの該内周面に摺動する摺動面に、該突起が延びる方向と交差する方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材と、を備える定着装置である。
【0007】
態様の発明は、該摺動部材は、格子状に繊維が織られている布材であり、繊維方向が該突起の方向と交差する方向とされている、態様に記載の定着装置である。
【0008】
態様の発明は、トナー像を形成し、記録媒体に該トナー像を転写する画像形成部と、転写された該トナー像を該記録媒体に定着させる態様又は態様に記載の定着装置と、を備える画像形成装置である。
【0009】
態様の発明は、芯体の外側に塗布した液状材料を硬化させてベルトを形成し、該ベルトを該芯体に対して軸方向に相対移動又は軸回りに回転しつつ軸方向に相対移動し、該ベルトを該芯体から取り外す工程と、該ベルトを該芯体から取り外す際に、該ベルトの内周面に形成された突起が延びる方向に対し、交差する方向に配置された凸部が摺動面に形成された摺動部材を、該内周面に該摺動面が接触するように該ベルトに組み付ける工程と、を備える定着装置の製造方法である。
【0010】
請求項の発明は、内側に第一支持体を挿入した該ベルトの外周面に金属粉が分散した液体を吹き付けた後、該ベルトを該第一支持体に対して軸方向に相対移動又は軸回りに回転しつつ軸方向に相対移動し、該第一支持体から取り外す工程と、内側に第二支持体を挿入した該ベルトにおける該金属粉で粗らされた該外周面をメッキした後、該ベルトを該第二支持体に対して軸回りに回転しつつ軸方向に相対移動し、該第二支持体から取り外す工程と、該ベルトを該第二支持体から取り外す際に、該金属粉により該ベルトの内周面に形成された螺旋状の突起が延びる方向に対し、交差する方向に配置された凸部が摺動面に形成された摺動部材を、該内周面に該摺動面が接触するように該ベルトに組み付ける工程と、を備える定着装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
態様に記載の発明によれば、ベルトの内周面の突起が延びる方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材を備える場合と比較し、回転移動するベルトの内周面に摺動する摺動部材の異音の発生を低減することができる。
【0012】
態様に記載の発明によれば、格子状に繊維が織られていない場合と比較し、ベルトの内周面の突起が延びる方向と交差する方向に、容易に摺動部材の凸部を設けることができる。
【0013】
態様に記載の発明によれば、態様又は態様に記載の定着装置を有しない構成と比較し、異音を低減することができる。
【0014】
態様に記載の発明によれば、ベルトの内周面の突起が延びる方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材を組みつける場合と比較し、回転移動するベルトの内周面に接触する摺動部材の異音を低減することができる。
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、ベルトの内周面の突起が延びる方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材を組みつける場合と比較し、回転移動するベルトの内周面に接触する摺動部材の異音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2図1の画像形成装置の定着装置の断面構造を模式的に示す概略構成図である。
図3】(A)は加熱ベルトの軸方向に対して繊維方向が斜めの摺動シートの平面図であり、(B)は加熱ベルトの軸方向に沿った繊維方向の摺動シートの平面図である。
図4】第一実施形態の加熱ベルトの突起と摺動シートの凸部とを模式的に示す模式図である。
図5】第一実施形態の加熱ベルトのベルト成形工程を(A)〜(C)へと順番に示す工程図である。
図6】第一実施形態の加熱ベルトの表面処理工程の表面粗し工程を(A)〜(D)へと順番に示す工程図である。
図7】第一実施形態の加熱ベルトの表面処理工程のメッキ工程を(A)〜(D)へと順番に示す工程図である。
図8】第二実施形態の加熱ベルトの(A)はベルト成形工程の要部を、(B)は表面処理工程の表面粗し工程の要部を、(C)は表面処理工程のメッキ工程の要部を、それぞれ示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る画像形成装置について説明する。
【0018】
[全体構成]
まず、本実施形態の画像形成装置の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態が適用される画像形成装置19を示した概略構成図である。
【0019】
画像形成装置19は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置である。画像形成装置19は、トナー像を形成し、記録媒体の一例としての用紙Pにトナー像を転写する画像形成部21と、転写されたトナー像を用紙Pに定着させる定着装置100と、各部の動作を制御する制御部40と、を含んで構成されている。
【0020】
画像形成部21は、電子写真方式にて各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、これら各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにて形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20を有している。
【0021】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11の周囲に、これらの感光体ドラム11が帯電される帯電器12、感光体ドラム11上に静電潜像が書込まれるレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14、感光体ドラム11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16、感光体ドラム11上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ17、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0022】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に循環駆動されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体ドラム11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール33、二次転写部20に設けられるバックアップロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール34を有している。
【0023】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体ドラム11に圧接配置され、さらに一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0024】
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。バックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0025】
一方、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0026】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0027】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0028】
さらに、本実施の形態の画像形成装置19では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ50、この用紙トレイ50に集積された用紙Pを予め定められたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール51、ピックアップロール51にて繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Pを二次転写部20へと送り込む搬送部材53、二次転写ロール22によって二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置100へと搬送する搬送ベルト55、用紙Pを定着装置100に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0029】
[作像プロセス]
次に、本実施の形態に係る画像形成装置19の基本的な作像プロセスについて説明する。
【0030】
画像形成装置19では、図示しない画像読取装置(IIT)や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置(IPS)にて画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0031】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C、1Kの各感光体ドラム11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにて、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0032】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム11上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10にて、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16にて中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0033】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール51が回転し、用紙トレイ50から用紙Pが供給される。
【0034】
ピックアップロール51により供給された用紙Pは、搬送ロール52により搬送され、搬送部材53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0035】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22がバックアップロール25に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22とバックアップロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22とバックアップロール25とによって押圧される二次転写部20にて、用紙P上に一括して静電転写される。
【0036】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置100における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置100まで搬送する。
【0037】
定着装置100に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置100によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置19の図示していない排出部に設けられた図示していない排紙部に搬送される。
【0038】
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0039】
[定着装置]
次に、本実施の形態の画像形成装置19に用いられる定着装置100について説明する。なお、軸Gは、後述する加熱ベルト200の回転軸を示し、矢印Vは加熱ベルト200の回転方向である。
【0040】
図2は、本実施の形態の定着装置100の構成を示す側断面図である。
【0041】
定着装置100は、回転部材の一例としての加圧ロール110、ベルトの一例としての加熱ベルト200、押部材の一例としての加圧パッド150、及び摺動部材の一例として摺動シート160と、を含んで構成されている。
【0042】
また、定着装置100は、加圧ロール110が加熱ベルト200の外周面200Bに接触しながら図示しないモータによって回転駆動され、搬送される用紙P(図1参照)を加熱ベルト200と加圧ロール110とによって形成されるニップ部Nに挟み込む。これにより、加熱ベルト200の熱とニップ部Nに加わる圧力とによって、用紙P(図1参照)に転写されたトナー画像を用紙P(図1参照)に定着する。
【0043】
加熱ベルト200は、電磁誘導により発熱する無端状のベルトであり、外周面200Bが加圧ロール110に接触し、回転移動する。
【0044】
加圧ロール110は、アルミニウム等の金属を含んで形成された心金112と、この心金112の周囲に設けられた弾性層114と、を含んで構成されている。
【0045】
また、加圧ロール110は、図示していないラッチ機構により、加熱ベルト200から離間した離間位置と、加熱ベルト200に押し付けられた加圧位置との間で移動するよう構成されている。なお、図2は、加圧位置の状態を図示している。
【0046】
加熱ベルト200の外側には、円弧状のIHコイルユニット120が設けられている。IHコイルユニット120の内部には、図示しない定着電源からの電力の供給によって磁界を発生する複数の励磁コイル122が設けられている。
【0047】
IHコイルユニット120の外側には、円弧状のソフトフェライト130が設けられている。更に、ソフトフェライト130の外側には、アルミ製の磁場遮蔽板132が設けられている。
【0048】
加熱ベルト200の内側には、加圧パッド150と、円弧状の内部磁性部材170と、が設けられている。また、加圧パッド150と加熱ベルト200の内周面200Aとの間には、摺動シート160が挟まれている。なお、加圧パッド150は、図示されていないフレームに支持された中子部材152に固定されている。
【0049】
内部磁性部材170は、円弧状のアルミ製の磁場遮蔽板172の外側に円弧状の感温磁性合金174が設けられた構造となっている。なお、加熱ベルト200は、感温磁性合金174と間隔をあけて図示されているが、実際には感温磁性合金174に接触しながら回転駆動する。
【0050】
感温磁性合金174は、IHコイルユニット120の複数の励磁コイル122によって発生する磁界の変動によって感温磁性合金174に誘導電流が発生し、加熱される。
【0051】
加熱ベルト200は、内部に導電発熱層を含むため、励磁コイル122によって発生する磁界の変動により、内部に誘導電流が発生し加熱される。すなわち、加熱ベルト200は、励磁コイル122の磁界によって直接的に誘導加熱されるのに加えて、更に感温磁性合金174に接触することで間接的にも加熱されることになる。
【0052】
[摺動シート]
次に、本実施の形態の定着装置100に用いられる摺動シート160について説明する。
【0053】
図3(A)に示すように、摺動シート160は、ガラス繊維等の繊維162が格子状に織られ、フッ素樹脂(PTFEなど)が含浸されている布材である。よって、加熱ベルト200の内周面200Aに接触し摺動する摺動面160Aには、繊維方向Sに沿って凸部164が形成されている。そして、本実施形態では、繊維方向S(直線状に配置された凸部164の方向)は、加熱ベルト200の回転軸Gの方向に対して、斜めに配置されるように、矩形状に切り出され、加圧パッド150(図2参照)に固定されている。つまり、摺動シート160は、辺部168に対して繊維方向S(直線状に配置された凸部164の方向)が斜めになるように矩形状に切り出される。
【0054】
[加熱ベルト]
次に、本実施の形態の定着装置100に用いられる加熱ベルト200について説明する。
【0055】
加熱ベルト200は、筒状のベルトの外側にメッキ層が形成された構成とされている。
【0056】
次に、加熱ベルト200の製造方法の概略について説明する。なお、後述するベルト成形工程、表面処理工程の一例としての表面粗し工程、及び表面処理工程の別の一例としてのメッキ工程は、加熱ベルト200の製造工程の代表的な工程であり、これら以外の工程が含まれていてもよい。また、ベルト成形工程と表面粗し工程との間に、又は表面粗し工程とメッキ工程との間に、別の工程が含まれていてもよい。また、軸Gは、回転軸Gと実質的に同一の軸である。
【0057】
[ベルト成形工程]
図5(A)に示す円筒状(又は円柱状)の芯体300の外側に、図5(B)に示すように液状材料をフローコート法で塗布したのち硬化させて筒状のベルト基材250を形成する。そして、図5(C)に示すように、筒状のベルト基材250を芯体300に対して軸G方向に相対移動し、ベルト基材250を芯体300から取り外す。
【0058】
[表面粗し工程]
図6(A)及び図6(B)に示すように、ベルト基材250の内側に円柱状(又は円筒状)の第一支持体310を挿入する。
【0059】
図6(C)に示すように、図示していないアルミ等の金属粉が分散した液体をベルト基材250の外周面に吹き付けて粗らした後、図6(D)に示すように、ベルト基材250を第一支持体310に対して軸G方向に相対移動し、ベルト基材250を第一支持体310から取り外す。
【0060】
[メッキ工程]
図7(A)及び図7(B)に示すように、外周面が粗らされたベルト基材250の内側に円柱状(又は円筒状)の第二支持体320を挿入する。
【0061】
図7(C)に示すように、ベルト基材250の外周面に、ニッケルメッキと銅メッキとをこの順で施した後、図7(D)に示すように、メッキされたベルト基材250(加熱ベルト200)を第二支持体320に対して軸G方向に相対移動し、ベルト基材250(加熱ベルト200)を第二支持体320から取り外す。
【0062】
[作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0063】
ベルト成形工程、表面粗し工程、及びメッキ工程において、芯体300、第一支持体310、及び第二支持体320からベルト基材250を軸G方向に相対移動して取り外す際に、ベルト基材250、すなわち加熱ベルト200の内周面200Aに、図4に示すように、傷210ができることがある。この傷210は芯体300、第一支持体310及び第二支持体320を相対移動する軸G方向に沿って形成され、この軸G方向の傷210によって、軸G方向に延びる直線状の突起212が形成される。
【0064】
なお、加熱ベルト200(ベルト基材250)の内周面200Aに傷210(直線状の突起212)が形成される理由であるが、ベルト成形工程においては、芯体300に付いた傷が原因と考えられる。また、表面粗し工程及びメッキ工程においては、ベルト基材250と第一支持体310又は第二支持体320との隙間に異物が侵入することが原因と考えられる。また、異物としては、表面粗し工程で使用する金属粉が考えられる。
【0065】
ここで、図3(B)の摺動シート161は、繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gの方向に沿って設けられている。別の観点から説明すると、摺動シート161は、辺部168が繊維方向S(直線状に配置された凸部164の方向)に沿うように矩形状に切り出される。そして、この摺動シート161が加圧パッド150(図2を参照)に固定されている比較例について説明する。
【0066】
図4に示すように、加熱ベルト200の内周面200Aの直線状の突起212が摺動シート161の繊維方向Sに沿って形成された凸部164を弾くことで異音が発生する。より詳しくは、摺動シート161が弾かれた振動が加圧パッド150(図2を参照)を介して中子部材152(図2を参照)に伝達されて振動し、異音が発生する。
【0067】
これに対して、図3(A)に示すように、本実施形態の摺動シート160は、繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gの方向に対して、角度を持って斜めに配置されるように、加圧パッド150に固定されている。つまり、加熱ベルト200の内周面200Aの突起212が直線状に延びる方向に対して、摺動シート160の繊維方向S(凸部164の配置方向)が交差している。
【0068】
よって、加熱ベルト200の直線状の突起212による摺動シート160の繊維方向Sに沿って形成された凸部164の弾き方が、交差していない場合と異なり、異音が低減する。なお、異音が低減する理由は、角度を設けることで、直線状の突起212が同じタイミングで弾く繊維162の数が減少するためと考えられる。また、角度を設けることで、繊維162を弾く間隔が小さくなる、つまり異音の発生する間隔が小さくなり、この結果、異音の周波数が小さくなり、共振が抑制され、異音が小さくなることも考えられる。
【0069】
また、格子状に繊維162が織られていない場合と比較し、加熱ベルト200の内周面200Aの突起212が直線状に延びる方向と交差する方向に、容易に摺動シート160の凸部164を設けることができる。
【0070】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、第一実施形態との違いは、摺動シート161(図3(B))と加熱ベルト200の製造方法であるので、この二点についてのみ説明する。
【0071】
[摺動シート]
本実施の形態の定着装置に用いられる摺動シート161について説明する。
【0072】
既に説明したが、図3(B)の摺動シート161は、繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gの方向(辺部168)に沿うように切り出され、加圧パッド150(図2を参照)に固定されている。
【0073】
[ベルト成形工程]
次に、本実施の形態の定着装置に用いられる加熱ベルトの製造工程について説明する。
【0074】
図8(A)に示すように、筒状のベルト基材250を芯体300に対して軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動し、ベルト基材250を芯体300から取り外す。
【0075】
[表面粗し工程]
図8(B)に示すように、外周面が粗らされたベルト基材250を第一支持体310に対して軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動し、ベルト基材250を第一支持体310から取り外す。
【0076】
[メッキ工程]
図8(C)に示すように、メッキされたベルト基材250(加熱ベルト200)を第二支持体320に対して軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動し、ベルト基材250(加熱ベルト200)を第二支持体320から取り外す。
【0077】
[作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0078】
ベルト成形工程、表面粗し工程、及びメッキ工程において、芯体300、第一支持体310、及び第二支持体320からベルト基材250を軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動して取り外す際に、ベルト基材250、すなわち加熱ベルト200の内周面200Aに、図4に示すように、傷210ができることがある。この傷210は相対移動する軸G方向に対して斜めに形成され、この軸G方向に対して斜めの傷210によって、軸G方向に対して斜めの突起212が形成される(図4参照)。なお、ベルト基材250の回転量を大きくした場合には、加熱ベルト200が円筒の場合は、突起212は螺旋状に形成される。また、仮に加熱ベルト200を展開した平面状にした場合には、突起212は直線状になる。
【0079】
本実施形態の摺動シート161は、繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gの方向に沿って配置されるように、加圧パッド150に固定されている。
【0080】
一方、本実施形態の加熱ベルト200の内周面200Aの直線状の突起212は、回転軸Gの方向に対して斜めに形成されている。
【0081】
よって、加熱ベルト200の内周面200Aの突起212が直線状に延びる方向に対して、摺動シート161の繊維方向S(凸部164の配置方向)が交差している。
【0082】
したがって、加熱ベルト200の直線状の突起212による摺動シート160の繊維方向Sに沿って形成された凸部164の弾き方が、交差していない場合と変わり、異音が低減する。
【0083】
ここで、ベルト成形工程、表面粗し工程、及びメッキ工程の各工程で、ベルト基材250を軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動して取り外した。しかし、ベルト成形工程、表面粗し工程、及びメッキ工程の三工程うち、一工程又は二工程でベルト基材250を軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動して取り外してもよい。
【0084】
例えば、ベルト成形工程では傷210(突起212)が形成されない、或いは殆ど形成されない場合は、ベルト成形工程ではベルト基材250を軸G方向に相対移動して取り外し、表面処理工程の表面粗し工程及びメッキ工程の二工程でベルト基材250を軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動して取り外せばよい。
【0085】
要は、加熱ベルト200の内周面200Aに傷210(突起212)が形成される工程、或いは形成される可能性が高い工程で、ベルト基材250を軸G回りに回転しつつ軸G方向に相対移動して取り外せばよい。
【0086】
また、繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gの方向に沿って配置されるように、加圧パッド150に固定されていなくてもよい。繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が、加熱ベルト200の回転軸Gに対して斜めに配置されていてもよい。加熱ベルト200の内周面200Aの突起212が延びる方向と交差する方向に繊維方向S(直線状に配置された凸部164)が配置されていればよい。
【0087】
<その他>
尚、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0088】
例えば、上記実施形態では、摺動部材の一例としての摺動シート160、161は、格子状に繊維が織られている布材であり、この繊維方向S(凸部164の配置方向)が、加熱ベルト200の内周面200Aの突起212が直線状に延びる方向に交差している。しかし、摺動部材は、格子状に繊維が織られている布材以外で構成されていてもよい。例えば、フッ素樹脂等がシート状に成型され、摺動面に縞状の直線状の凸部(溝)が形成された摺動部材であってもよい。また、摺動部材はシート状以外、例えば板状であってもよい。
【0089】
加熱ベルト200は、誘導加熱されるベルトであったが、これに限定されない。例えば、回転部材の一例としての加熱ロール又は面状ヒーターに、押部材で押し付けられる樹脂製又は金属製などのベルトであってもよい。そして、何らかの理由又は目的で、ベルトの内周面に回転軸G方向に沿って又は回転軸G方向に対して斜めに形成された突起が直線状に延びる方向と交差する方向に沿って配置された凸部が形成された摺動部材を設けられていればよい。
【0090】
また、定着装置及び画像形成装置の構成としては、上記実施形態の構成に限られず種々の構成とすることが可能である。
【0091】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
19 画像形成装置
21 画像形成部
100 定着装置
110 加圧ロール(回転部材の一例)
150 加圧パッド(押部材の一例)
160 摺動シート(摺動部材の一例)
160A 摺動面
162 繊維
164 凸部
200 加熱ベルト(ベルトの一例)
200A 内周面
200B 外周面
212 突起
G 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8