(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記画像表示装置の色再現領域の、少なくとも白近傍の輪郭を算出する輪郭算出部と、
予め定められた白の目標測色値が前記色再現領域内に入っているか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で該予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えたことを特徴とする再現可否判定装置。
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値算出部で算出された前記評価対象白入力値が前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値であるか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で前記予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えたことを特徴とする再現可否判定装置。
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記測色値取得部で得られた前記白測色値が表わす色温度である測色色温度と前記目標測色値が表わす色温度である目標色温度との比率に基づいて前記白入力値を変換することにより、前記目標色温度を達成する目標色温度白入力値を算出する目標色温度白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値を前記測色色温度に対応づけるとともに前記目標色温度白入力値を前記目標色温度に対応づけたときの関係式に基づいて、前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値が得られる色温度を算出する色温度算出部と、
前記色温度算出部で算出された色温度を提示する色温度提示部とを備えたことを特徴とする色温度提示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、カラーマネジメントに先だって、対象となる画像表示装置の例えば輝度を測定して、その測定した輝度が目標としている輝度であればそれで十分という訳ではない。対象となる画像表示装置の色温度が目標の色温度からずれている場合、その画像表示装置への入力データで色温度を調整すると輝度が低下することになる。すなわち、画像表示装置の色温度と目標の色温度との間にずれがあった場合には、そのずれを考慮した上で輝度が十分か否かを判定する必要がある。
【0007】
上掲の特許文献1は、対象となる画像表示装置が十分な画像表示性能を有していることを前提として、色変換プロファイル作成処理の効率化を図る提案であり、対象となる画像表示装置が十分な画像表示性能を有しているか否かを知る技術ではない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、対象となる画像表示装置が画像表示性能として重要な、目標の白を再現できるか否かを判定することのできる再生可否判定装置および再生可否判定プログラム、並びに、調整すべき輝度あるいは色温度を提示する輝度提示装置、色温度提示装置、輝度提示プログラム、および色温度提示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記画像表示装置の色再現領域の、少なくとも白近傍の輪郭を算出する輪郭算出部と、
予め定められた白の目標測色値が前記色再現領域内に入っているか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で該予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えたことを特徴とする再現可否判定装置である。
【0010】
請求項2は、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記
画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値算出部で算出された前記評価対象白入力値が前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値であるか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で前記予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えたことを特徴とする再現可否判定装置である。
【0011】
請求項3は、
前記対応関係算出部が、前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記色再現領域内の各点の、入力値と測色値との対応関係を表わす変換マトリックスを算出し、
前記評価対象白入力値算出部が、前記対応関係算出部で算出された変換マトリックスに基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出することを特徴とする請求項2に記載の再現可否判定装置である。
【0012】
請求項4は、
前記対応関係算出部が、前記測色値取得部で取得した測色値
に基づいて、白入力値と白測色値との組合せについての階調曲線、および、入力値を構成する各入力変数と測色値を構成する各測色変数との各組合せについての階調曲線を算出するとともに、該階調曲線に基づいて、前記色再現領域内の各点の入力値と測色値との対応関係を表わす線形回帰モデルを作成し、
前記評価対象白入力値算出部が、前記対応関係算出部で算出された線形回帰モデルに基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出することを特徴とする請求項2に記載の再現可否判定装置である。
【0013】
請求項5は、
請求項2に記載の再現可否判定装置と、
前記再現可否判定部による、現在の設定における前記画像表示装置では前記予め定められた白が再現不可能であるとの判定を受けて、前記対応関係算出部に、前記測色値取得部で取得された前記白測色値を採用することに代えて、該白測色値と比べ色温度を変化させずに輝度を変化させた新たな白測色値を採用したときの、前記色再現領域内の各点の入力値と測色値との間の新たな対応関係を算出させるとともに、前記評価対象白入力値算出部に、該新たな対応関係に基づく、前記予め定められた白の目標測色値に対応する新たな評価対象白入力値を算出させて、前記再現可否判定部に、該新たな評価対象白入力値が前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値であるか否かを判定させる過程を経て、目標色温度を再現した上での目標輝度の再現が可能な輝度を算出する輝度算出部と、
前記輝度算出部で算出された輝度を提示する輝度提示部とを備えたことを特徴とする輝度提示装置である。
【0014】
請求項6は、
請求項2に記載の再現可否判定装置と、
前記再現可否判定部による、現在の設定における前記画像表示装置では前記予め定められた白が再現不可能であるとの判定を受けて、前記測色値取得部で取得した前記白測色値と前記評価対象白入力値算出部で算出された前記評価対象白入力値とに基づくとともに階調特性を考慮して、目標色温度を再現した上での目標輝度の再現が可能な輝度を算出する輝度算出部と、
前記輝度算出部で算出された輝度を提示する輝度提示部とを備えたことを特徴とする輝度提示装置である。
【0015】
請求項7は、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記
画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記測色値取得部で得られた前記白測色値が表わす色温度である測色色温度と前記目標測色値が表わす色温度である目標色温度との比率に基づいて前記白入力値を変換することにより、前記目標色温度を達成する目標色温度白入力値を算出する目標色温度白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値を前記測色色温度に対応づけるとともに前記目標色温度白入力値を前記目標色温度に対応づけたときの関係式に基づいて、前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値が得られる色温度を算出する色温度算出部と、
前記色温度算出
部で算出された色温度を提示する色温度提示部とを備えたことを特徴とする色温度提示装置である。
【0016】
請求項8は、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記画像表示装置の色再現領域の、少なくとも白近傍の輪郭を算出する輪郭算出部と、
予め定められた白の目標測色値が前記色再現領域内に入っているか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で該予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えた再現可否判定装置として動作させることを特徴とする再現可否判定プログラムである。
【0017】
請求項9は、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値の
うちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記
画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値算出部で算出された前記評価対象白入力値が前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値であるか否かに応じて、現在の設定における前記画像表示装置で前記予め定められた白が再現可能な白であるか否かを判定する再現可否判定部とを備えた再現可否判定装置として動作させることを特徴とする再現可否判定プログラムである。
【0018】
請求項10は、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
請求項9に記載の再現可否判定プログラムによって該情報処理装置内に構築される再現可否判定装置を備えるとともに、さらに
前記再現可否判定部による、現在の設定における前記画像表示装置では前記予め定められた白が再現不可能であるとの判定を受けて、前記対応関係算出部に、前記測色値取得部で取得された前記白測色値を採用することに代えて、該白測色値と比べ色温度を変化させずに輝度を変化させた新たな白測色値を採用したときの、前記色再現領域内の各点の入力値と測色値との間の新たな対応関係を算出させるとともに、前記評価対象白入力値算出部に、該新たな対応関係に基づく、前記予め定められた白の目標測色値に対応する新たな評価対象白入力値を算出させて、前記再現可否判定部に、該新たな評価対象白入力値が前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値であるか否かを判定させる過程を経て、目標色温度を再現した上での目標輝度の再現が可能な輝度を算出する輝度算出部と、
前記輝度算出部で算出された輝度を提示する輝度提示部とを備えた輝度提示装置として動作させることを特徴とする輝度提示プログラムである。
【0019】
請求項11は、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
請求項9に記載の再現可否判定プログラムによって該情報処理装置内に構築される再現可否判定装置を備えるとともに、さらに
前記再現可否判定部による、現在の設定における前記画像表示装置では前記予め定められた白が再現不可能であるとの判定を受けて、前記測色値取得部で取得した前記白測色値と前記評価対象白入力値算出部で算出された前記評価対象白入力値とに基づくとともに階調特性を考慮して、目標色温度を再現した上での目標輝度の再現が可能な輝度を算出する輝度算出部と、
前記輝度算出部で算出された輝度を提示する輝度提示部とを備えた輝度提示装置として動作させることを特徴とする輝度提示プログラムである。
【0020】
請求項12は、
プログラムを実行する情報処理装置内で実行され、該情報処理装置を、
画像表示装置へ入力値を入力したときの該画像表示装置の測色により得られる測色値のうちの、少なくとも、白を表わす入力値である白入力値を該画像表示装置に入力したときに該画像表示装置に表示される白の測色により得られる白測色値を取得する測色値取得部と、
前記測色値取得部で取得した測色値に基づいて、前記
画像表示装置の色再現領域内の各点の、入力値と測色値との間の対応関係を算出する対応関係算出部と、
前記対応関係算出部で算出された対応関係に基づいて、予め定められた白の目標測色値
に対応する評価対象白入力値を算出する評価対象白入力値算出部と、
前記測色値取得部で得られた前記白測色値が表わす色温度である測色色温度と前記目標測色値が表わす色温度である目標色温度との比率に基づいて前記白入力値を変換することにより、前記目標色温度を達成する目標色温度白入力値を算出する目標色温度白入力値算出部と、
前記評価対象白入力値を前記測色色温度に対応づけるとともに前記目標色温度白入力値を前記目標色温度に対応づけたときの関係式に基づいて、前記画像表示装置の入力値として再現可能な範囲内の値が得られる色温度を算出する色温度算出部と、
前記色温度算出
部で算出された色温度を提示する色温度提示部とを備えた色温度提示装置として動作させることを特徴とする色温度提示プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1乃至請求項4の再現可否判定装置、並びに、請求項8および請求項9の再現可否判定プログラムによれば、目標輝度および目標色温度を再現したカラーマネジメントが可能か否かを判定することができる。
【0022】
請求項5および請求項6の輝度提示装置および請求項10および請求項11の輝度提示プログラムによれば、目標の色温度の再現が可能な輝度を提示することができる。
【0023】
請求項7の色温度提示装置および請求項12の色温度提示プログラムによれば、目標の輝度の再現が可能な色温度を提示することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、色変換プロファイル作成システムの概念図である。
【0027】
この色変換プロファイル作成システム100は、色変換プロファイル作成対象のモニタ10と、測色計20と、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」と略記する)30とで構成されている。
【0028】
ここでは、モニタ10の表示画面11の表示色が測色計20によって測色される。この測色にあたっては、不図示の装置から、R(赤),G(緑),B(青)の3色分のデータからなるRGBデータが、R,G,Bの各値をR,G,B=0〜255の範囲内で順次変化させながら、モニタ10およびPC30に入力される。すると、モニタ10の表示画面11の表示色が、モニタ10に入力されたRGBデータに応じた色に順次に変化する。測色計20は、その順次に変化する色を測色し測色データを出力する。ここで用いている測色計20は、一例として、XYZ表色系に準拠した測色データを出力する測色計である。
【0029】
なお、XYZ表色系以外の表色系、例えば
【数1】
等に準拠した測色データを出力する測色計も存在するが、それらの表色系は相互に一義的に変換可能であるため、ここでは、XYZ表色系に準拠した測色データを出力する測色計を用いるものとし説明する。そして、これ以降、この測色計20から出力される測色データを、XYZデータと称する。
【0030】
測色計20から順次出力されたXYZデータは、RGBデータと同期して、そのRGBデータとともにPC30に入力され、PC30内にRGBデータとXYZデータとのペアが蓄積される。
【0031】
なお、ここでは、不図示の装置からRGBデータが出力されてモニタ10とPC30に入力される旨、説明したが、PC30がRGBデータの出力元となりPC30から出力したRGBデータをモニタ10に入力する構成としてもよい。
【0032】
ここで、本実施形態におけるRGBデータおよびXYZデータは、本発明にいう、それぞれ「入力値」および「測色値」の各一例に相当する。なお、ここでは、モニタ10に入力した入力値(RGBデータ)および測色計20での測色により得られた測色値(XYZデータ)のみでなく、後述する演算により得られる入力値(RGBデータ)および測色値(XYZデータ)に相当する値についても、それぞれ入力値(RGBデータ)および測色値(XYZデータ)と称する。また、「データ」を省略して「RGB」および「XYZ」、あるいは、その値に関心があるときは、「RGB値」および「XYZ値」とも称する。
【0034】
図1に示すPC30内には、上記のようにして、RGB値とXYZ値とのペアが蓄積される。そして、それら多数のペアを基に、RGB値を、予め定められた所望のXYZ値を得ることができるR’G’B’値に変換するための変換テーブルを作成する。ここでは、この変換テーブルを、色変換プロファイルと称する。そして、RGB値が入力されてきたときに、色変換部において、その色変換プロファイルを参照してR’G’B’値に変換する。モニタ10には、この変換により得られたR’G’B’値に基づく画像を表示させる。こうすることにより、モニタ10に所望の色(所望のXYZ値が得られる色)の画像を表示することができる。
【0035】
図3は、色変換プロファイル作成処理のフローを示した図である。
【0036】
ここでは、先ず、色再現目標を決定する(ステップS01)。ここでは、この色再現目標として、目標の輝度と目標の色温度を決定する。ここでは、一例として、輝度100cd、色温度6500Kを、それぞれ目標輝度、目標色温度とする。
【0037】
次に、測色計20を用いて、モニタ1の表示画面11の測色を行なう(ステップS02)。ここでの測色では、表示画面11の白、すなわち、(R,G,B)=(255,255,255)のRGB値を入力したときの表示画面11の表示色の測色は必須である。その他の、後述する演算に必要な色についても、精度を高めるためには測色を行なうことが望ましいが、簡便さを考慮して、この段階の測色は白の測色のみに留め、他の色については計算で済ませてもよい。
【0038】
次に、その測色により得られたXYZ値を基にした演算により、モニタ10が今のハードウェア設定のままで色再現目標(ここでは100cd,6500K)を再現することが可能か否かを判定する(ステップS03)。そして、モニタ10が、今ハードウェア設定のままでは色再現目標を再現することができないとの判定の場合には、ハードウェア設定をどのように変更すれば色再現目標を再現することのできるかという、設定変更ガイドを提示する(ステップS04)。
【0039】
モニタ10のハードウェア設定が色再現目標(ここでは100cd,6500K)を再現することができる設定であったとき、あるいは、色再現目標を再現することができる設定に変更されると(ステップS03)、今度は、
図1を参照して説明したようにして、モニタ10に様々な値のRGB値を入力しながら測色を繰り返し、各RGB値と各XYZ値とのペアを蓄積する(ステップS05)。そして、蓄積されたそれらの多数のペアを基にして色変換プロファイルを作成する。色変換プロファイルの作成方法自体は広く知られているため、ここでの説明は省略する。
【0040】
ここでは、色変換プロファイル作成処理(ステップS05)に先だってステップS02〜S04の処理を行なっているため、色変換プロファイル作成処理を行なった後で所望の色の画像が得られずにやり直しが強いられることが防止される。
【0041】
ここで、モニタ10によっては、ハードウェア設定として例えば輝度のみ設定可能であって色温度が固定のモニタも存在する。あるいは、色温度も設定可能であるが、離散的ないくつかの色温度にしか設定できず、目標の色温度(ここでは、6500K)そのものには設定不能なモニタも存在する。その場合に、色温度自体はRGB値の調整により(すなわち、色変換プロファイルにより)目標の色温度に合わせることは可能であるが、それに伴って輝度が低下する。したがって、モニタ10のハードウェア設定としての輝度のガイドにあたっては、RGB値の調整により色温度を目的の色温度に調整してもなお、目的の輝度も達成できる輝度を提示することが必要である。
【0042】
以下では、本実施形態の特徴である
図3に四角で囲った部分、すなわち、モニタ10のハードウェア設定が色再現目標(ここでは100cd,6500K)を再現することができる設定になっているか否かの判定アルゴリズム(ステップS03)と、提示すべき輝度ないし色温度の算出アルゴリズム(ステップS04)について詳細に説明する。
(再現可否判定の第1例)
図4は、本発明の第1実施形態としての再現可否判定装置の機能ブロック図である。
【0043】
この
図4に示す再現可否判定装置40は、
図1に示すPC30内で本発明の第1実施形態としての再現可否判定プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての再現可否判定装置である。
【0044】
この
図4に示す再現可否判定装置40は、XYZ値取得部41と、輪郭算出部42と、再現可否判定部43とで構成されている。
【0045】
XYZ値取得部41は、モニタ10へRGB値を入力したときのモニタ10の測色により得られるXYZ値のうちの、少なくとも、白を表わすRGB値である白RGB値をモニタ10に入力したときにモニタ10に表示される白の測色により得られる白XYZ値を取得する。
【0046】
ここで、白RGB値、すなわち、((R,G,B)=(255,255,255)のRGB値は、本発明にいう「白入力値」の一例に相当する。また、その白RGB値をモニタ10に入力して得られる白XYZ値は、本発明にいう「白測色値」の一例に相当する。
【0047】
ここでは、モニタ10に白RGB値、すなわち、(R,G,B)=(255,255,255)のRGB値を入力して得られる白XYZ値のほかにも、R,Gの各色、すなわち、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,255,0)、(0,0,255)や、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)の各色、すなわち、(R,G,B)=(0,255,255)、(255,0,255)、(255,255,0)、および黒色、すなわち、(R,G,B)=(0,0,0)についても測色して、それらに対応する各XYZ値を得ることが望ましい。ただし、白以外については測色を省略し、必要なデータを計算で算出してもよい。具体例は後述する。
また、
図4に示す再現可否判定装置40の輪郭算出部42では、XYZ値取得部41で取得したXYZ値に基づいて、モニタ10の色再現領域の、少なくとも白近傍の輪郭が算出される。
【0048】
そして、再現可否判定部43は、目標の白(ここでは、100cd,6500K)を満たす目標XYZ値の座標がモニタ10の色再現領域内に入っているか否かに応じて、現在の設定におけるモニタ10で目標の白が再現可能な白であるか否かを判定する。
(再現可否判定の第1例の中の第1態様)
ここでは、再現可否判定の第1例の中の第1態様として、白のみでなく、上記のR,G,B,C,M,Yおよび黒の各色についても測色を行なった場合について説明する。
【0049】
図5は、測色により得られた各XYZ値を、XYZ空間上の各座標として表わした図である。
【0050】
輪郭算出部42では、この
図5に示す、‘ひゅしゃげた’直方体状の多面体が占める領域の輪郭が算出される。再現可否判定部43では、色再現目標である目標XYZ値がその多面体の輪郭の内側に存在するか外側に存在するかが判定される。そして、目標XYZ値の座標がその輪郭の内側に存在するときは、色再現目標(目標輝度と目標色温度の双方)が再現可能と判定され、一方、目標XYZ値の座標がその輪郭の外側に存在するときは、色再現目標は再現不能と判定される。
【0051】
なお、この第1態様では、白のみでなく、R,G,B,C,M,Yおよび黒の各色の全てについて測色を行なうとして説明したが、それらの全てではなく、白以外は、C,M,Yのみ、あるいはR,G,Bのみ測色してもよい。あるいは、白とC,M,Yについて測色し、R,G,Bや黒については、以下の第2態様と同様にして、計算で算出したXYZ値を用いてもよい。
(再現可否判定の第1例の中の第2態様)
次に、再現可否判定の第1例の中の第2態様として、白のみを測色する場合について説明する。
【0052】
モニタ10の表示色は、sRGBの規格から大きくは外れていない場合が多く、ここでは、白XYZ値以外は、測色せずに、sRGBの規格を用いた計算により算出される。
【0053】
下記(1)式は、sRGBの規格を用いたXYZ値の算出式を示した式である。
【0054】
【数2】
ここで、この(1)式では、R,G,Bの各値は、0〜255のレンジではなく、0〜1.0のレンジに規格化されている。また、Ynは、白XYZ値を(Xn,Yn,Zn)としたときの、輝度を表わすYnである。
【0055】
ここで、一例として、白XYZ値が、
(Xn,Yn,Zn)=(98,100,108)・・・(2)
であった場合、R,G,B,黒の各XYZ値は、それぞれ、
RのXYZ値(Xr,Yr,Zr)=(41.24,35.76,18.05)
GのXYZ値(Xg,Yg,Zg)=(21.26,71.52, 7.22)
BのXYZ値(Xb,Yb,Zb)=( 1.93,11.92,95.05)
黒のXYZ値(Xk,Yk,Zk)=( 0.00, 0.00, 0.00)
・・・(3)
の通りに計算される。
【0056】
ここでは、白の測色により得られた白XYZ値(上記の(2)式)と、上記の(1)式を用いた計算により得られた、一例としての(3)式の値とを使って、モニタ10の色再現領域の輪郭を算出し、目標XYZ値の座標がその輪郭の内側に存在するか否かを判定する。
【0057】
ここで、目標XYZ値の座標が輪郭の内側に存在するか否かの判定にあたっては、モニタ10の色再現領域全域の輪郭の情報は不要であって、白とその近傍についてのみ輪郭が分かれば十分である。
(再現可否判定の第1例の中の第3態様)
図6は、XYZ空間上に、白XYZ値の座標とその近傍のXYZ値の座標をプロットして示した図である。
【0058】
ここでは、白RGB値(R,G,B)=(255,255,255)と、その近傍、例えば、(R,G,B)=(250,255,255)、(255,250,255)、(255,255,250)、(255,250,250)、・・など、白からR,G,B,C,M,Yのそれぞれに少しずつ寄った値の各RGB値をモニタ10に入力し測色して各XYZ値を得る。そして、それらのXYZ値に基づいて、モニタ10の色再現領域のうちの白近傍の領域の輪郭を計算する。そして、その白近傍の輪郭と目標XYZ値とを比較して、目標XYZ値の座標がその輪郭の内側に存在するか否かを判定する。
この第3態様によっても、今のハードウェア設定のままのモニタ10で、色再現目標の再現が可能か否かを判定することができる。
(再現可否判定の第2例)
図7は、本発明の第2実施形態としての再現可否判定装置の機能ブロック図である。
【0059】
この
図7に示す再現可否判定装置50は、
図1に示すPC30内で本発明の第2実施形態としての再現可否判定プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての再現可否判定装置である。
【0060】
この
図7に示す再現可否判定装置50は、XYZ値取得部51と、変換マトリックス算出部52と、評価対象白RGB値算出部53と、再現可否判定部54とで構成されている。ここで、変換マトリック算出部52は、本発明にいう対応関係算出部の一例に相当する。
【0061】
XYZ値取得部51は、
図4に示す第1実施形態の再現可否判定装置40のXYZ値取得部41と同様、モニタ10へRGB値を入力したときのモニタ10の測色により得られるXYZ値のうちの、少なくとも、白を表わすRGB値である白RGB値をモニタ10に入力したときにモニタ10に表示される白の測色により得られる白XYZ値を取得する。ここでは、白だけでなく、R,G,Bについても測色することが望ましい。すなわち、ここでは、
白:(R,G,B)=(255,255,255)
R:(R,G,B)=(255,0,0)
G:(R,G,B)=(0,255,0)
B:(R,G,B)=(0,0,255)
・・・(4)
のそれぞれをモニタ10に入力して測色し、各色ごとのXYZ値を得ることが望ましい。
【0062】
ただし、ここでも、XYZ値取得部51では白についてのみ、XYZ値(白XYZ値)を取得し、モニタ10がsRGBの規格に近い表示プロファイルを有していることを仮定して、次の変換マトリックッス算出部52において、変換マトリックスの算出に先だって、R,G,Bの各色(上記の(4)式)に対応する各XYZ値を計算で算出してもよい。
【0063】
そして、変換マトリックス算出部52では、このような測色により求めた、あるいは計算で求めた白,R,G,Bの各色のRGB値とそれぞれ対応する各XYZ値との4つのペアから、下記(5),(6)式で示される、モニタ10の色再現領域内の各点の、RGB値とXYZ値との間の対応関係を表わす変換マトリックスMおよびその逆マトリックスM−1が算出される。変換マトリックスMおよびその逆マトリックスM−1の算出アルゴリズム自体は広く知られており、ここでの説明は省略する。
【0064】
【数3】
そして、評価対象白RGB値算出部53では、上記の(6)式に目標XYZ値を代入して、その目標XYZ値に対応するRGB値を算出する。この目標XYZ値は、色再現目標(目標輝度および目標色温度)が再現されたときに測色すれば得られる筈のXYZ値である。(6)式に目標XYZ値を代入して算出されるRGB値は、この後の評価の対象となる白のRGB値であり、ここではこのRGB値を「評価対象白RGB値」と称する。
【0065】
再現可否判定部54では、このようにして算出された評価対象白RGB値が、R,G,Bのいずれについても、モニタ10に入力されるRGB値の範囲内、すなわち、ここに示す例では、R,G,Bのいずれについても0〜255の範囲内(R,G,Bが0〜1.0のレンジに規格化されているときは、R,G,Bのいずれについても、0〜1.0の範囲内)の値であるか否かが判定される。そして、その評価対象白RGB値が、R,G,Bのいずれについても、モニタ10に入力されるRGB値の範囲内の値のときは、色再現目標が再現可能であると判定される。一方、その評価対象白RGB値を構成する、R,G,Bのいずれかが、モニタ10に入力されるRGB値の範囲から外れた値のときは、色再現目標は再現不能であると判定される。
【0066】
この再現可否判定の第2例では、以上の演算により、現在のハードウェア設定のモニタ10で、目標色温度を達成した上で目標輝度が再現可能か否かが判定される。
(再現可否判定の第3例)
図8は、本発明の第3実施形態としての再現可否判定装置の機能ブロック図である。
【0067】
この
図8に示す再現可否判定装置60は、
図1に示すPC30内で本発明の第3実施形態としての再現可否判定プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての再現可否判定装置である。
【0068】
この
図8に示す再現可否判定装置50は、XYZ値取得部61と、線形回帰モデル作成部62と、評価対象白RGB値算出部63と、再現可否判定部64とで構成されている。
【0069】
XYZ値取得部61は、
図7に示す第2実施形態の再現可否判定装置50のXYZ値取得部51と同一であり、重複説明は省略する。
【0070】
線形回帰モデル作成部62は、上述の第2例における変換マトリック算出部52に代わる構成要素であり、この線形回帰モデル作成部62は、上述の第2例における変換マトリック算出部52と同様、本発明にいう対応関係算出部の一例に相当する。
【0071】
この線形回帰モデル作成部62は、XYZ値取得部61で取得したXYZ値に基づいて、白RGB値と白XYZ値との組合せについての階調曲線、および、RGB値を構成する各変数R,G,BとXYZ値を構成する各変数X,Y,Zとの各組合せについての階調曲線を算出するとともに、それらの階調曲線に基づいて、モニタ10の色再現領域内の各点のRGB値とXYZ値との対応関係を表わす線形回帰モデルを作成する。
【0072】
ここで、RGB値を構成する各変数R,G,BとXYZ値を構成する各変数X,Y,Zとの各組合せは9通り存在し、それら9通りの組合せについての階調曲線と、白RGB値と白測色値との組合せについての階調曲線とを合わせると、ここでは10通りの階調曲線が算出される。
【0073】
図9は、10通りの階調曲線のうちの一例を示した図である。
【0074】
横軸はR(ここでは、規格化されており、R=0〜1.0である)、縦軸はYである。
【0075】
この
図9に示す階調曲線は、
【数4】
により算出される。
【0076】
ここで、aは、RGB値が、
(R,G,B)=(255,0,0)
(規格化後は、(R,G,B)=(1.0,0,0))
の場合における、そのRGB値に対応するXYZ値のうちのY値である。また、(7)式のRは、0〜1.0に規格化された値である。また、ここでは、モニタ10の標準的な表示階調特性を考慮して、Rの2.2乗を採用している。また、ここでは、黒(R,G,B)=(0,0,0)については、(X,Y,Z)=(0,0,0)と仮定している。ここでは、白の近傍に関心があり、黒については、この仮定をおいても問題はない。
【0077】
図8の線形回帰モデル生成部62は、この
図9に示すような階調曲線を合計10通り作成する。そして、その線形回帰モデル生成部62はさらに、それら10通りの階調曲線により得られる各階調のRGB値とXYZ値との多数のペアを用いてRGB値とXYZ値との相互の対応関係を表わす線形回帰モデルを作成する。この線形回帰モデルは、
図7を参照して説明した第2例の変換マトリックス算出部52で算出される変換マトリックスと同様、モニタ10の色再現領域内の各点のRGB値とXYZ値との対応関係を表わしている。なお、線形回帰モデル作成のアルゴリズム自体は広く知られており、ここでの説明は省略する。
【0078】
図8に示す評価対象白RGB値算出部63は、線形回帰モデル作成部62で作成した線形回帰モデルを使って、目標白XYZ値を、その目標白XYZ値に対応するRGB値に変換する。この目標XYZ値に対応するRGB値は、この後の評価の対象となる白のRGB値であり、上述の第2例の場合と同様、このRGB値を「評価対象白RGB値」と称する。
【0079】
再現可否判定部64では、このようにして算出された評価対象白RGB値が、R,G,Bのいずれについても、モニタ10に入力されるRGB値の範囲内、すなわち、ここに示す例では、R,G,Bのいずれについても0〜255の範囲内(R,G,Bが0〜1.0のレンジに規格化されているときは、R,G,Bのいずれについても、0〜1.0の範囲内)の値であるか否かが判定される。そして、その評価対象白RGB値が、R,G,Bのいずれについても、モニタ10に入力されるRGB値の範囲内の値のときは、色再現目標が再現可能であると判定される。一方、その評価対象白RGB値を構成する、R,G,Bのいずれかが、モニタ10に入力されるRGB値の範囲から外れた値のときは、色再現目標は再現不能であると判定される。
【0080】
この再現可否判定の第3例では、以上の演算により、現在のハードウェア設定のモニタ10で、目標色温度を達成した上で目標輝度が再現可能か否かが判定される。
【0081】
次に、色再現目標を表わす目標XYZ値を再現するための、モニタ10のハードウェア設定として提示する輝度や色温度の算出アルゴリズムについて説明する。
【0082】
(輝度算出の第1例)
図10は、本発明の第4実施形態としての輝度提示装置の機能ブロック図である。
【0083】
この
図10に示す輝度提示装置70は、
図1に示すPC30内で本発明の第4実施形態としての輝度提示プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての輝度提示装置である。
【0084】
この
図10に示す輝度提示装置70は、XYZ値取得部71と、対応関係算出部72と、評価対象白RGB値算出部73と、再現可否判定部74と、輝度算出部75と、輝度提示部76とで構成されている。
【0085】
XYZ値取得部71は、
図7に示す再現可否判定装置50のXYZ値取得部51あるいは
図8に示す再現可否判定装置60のXYZ値取得部61と同一であり、重複説明は省略する。
【0086】
対応関係算出部72では、モニタ10の色再現領域内の各点のRGB値とXYZ値との対応関係が算出される。この対応関係算出部72は、
図7に示す再現可否判定装置50の変換マトリックス算出部52ないし
図8に示す再現可否判定装置60の線形回帰モデル作成部62に対応する。すなわち、この対応関係算出部71では、
図7を参照して説明した変換マトリックス(前述の(5),(6)式)が算出され、あるいは、
図8を参照して説明した線形回帰モデルが作成される。
【0087】
また、評価対象白RGB値算出部73は、
図7に示す再現可否判定装置50の評価対象白RGB値算出部53ないし
図8に示す再現可否判定装置60の評価対象白RGB値算出部63に対応する。すなわち、この評価対象白RGB値算出部73では、対応関係算出部72で算出された対応関係(変換マトリックスあるいは線形回帰モデル)を使って、目標XYZ値が、その目標XYZ値に対応するRGB値である評価対象白RGB値に変換される。
【0088】
そして、再現可否判定部74では、
図7に示す再現可否判定装置50の再現可否判定部54ないし
図8に示す再現可否判定装置60の再現可否判定部64と同様、評価対象白RGB値算出部73で算出された評価対象白RGB値を構成するR,G,Bの各値が、0〜255(規格化されていたときは0〜1.0)の範囲内であるか否かにより、色再現目標が再現可能か否かが判定される。
【0089】
すなわち、
図10に示す輝度提示装置70を構成しているXYZ値取得部71、対応関係算出部72、評価対象白RGB値算出部73、および再現可否判定部74は、
図7に示す再現可否判定装置50あるいは
図8に示す再現可否判定装置60と同一であって、この輝度提示装置70は、
図7に示す再現可否判定装置50あるいは
図8に示す再現可否判定装置60を内包している。すなわち、この輝度提示装置70は、再現可否判定装置としての構成に、さらに、輝度算出部75および輝度提示部76が追加された構成を有する。
【0090】
輝度算出部75は、再現可否判定部74による、現在のハードウェア設定におけるモニタ10では色再現目標である目標XYZ値が再現不可能であるとの判定を受けて、対応関係算出部72に、XYZ値取得部71で取得した白XYZ値の代わりに、その白XYZ値と比べ色温度を変化させずに輝度のみを変化させた新たな白XYZ値を採用したときの、モニタ10の色再現領域内の各点のRGB値とXYZ値との間の新たな対応関係を算出させるとともに、評価対象白RGB値算出部73に、その新たな対応関係に基づく、色温度目標を表わす目標XYZ値に対応する新たな評価対象白RGB値を算出させて、再現可否判定部74に、その新たな評価対象白RGB値がモニタ10のRGB値として成立する範囲内の値であるか否かを判定させる過程を経て、目標色温度を再現した上でさらに目標輝度の再現が可能な輝度を算出する。
【0091】
そして、輝度提示部76は、輝度算出部75で算出された輝度を、PC30の表示画面上に表示することで、ユーザに向けて提示する。
(輝度算出の第1例の第1態様)
図11は、
図10に示す輝度提示装置の輝度算出部における輝度算出処理フローを表わした図である。
【0092】
また、
図12は、
図10に示す輝度提示装置の輝度算出部における輝度算出の過程を示した模式図である。
【0093】
図12の横軸はモニタの輝度、縦軸は評価対象白RGB値(更新後の新たな評価対象白RGB値を含む)RT,GT,BTである。ただし、この縦軸は、R,G,B=0〜255を0〜1.0に規格化した値を示している。また、RT,GT,BTは、通常、値は互いに異なるが、この
図12では、代表的に1つの変数の値の変化を模式的に示している。
【0094】
ここでは、再現可否判定部74で色再現目標が再現不可能であると最初に判定された時点の、(R,G,B)=(255,255,255)に対応する測色値である白XYZ値を、
(X,Y,Z)=(Xn,Yn,Zn) ・・・(8)
とする。
【0095】
ここでは先ず、その白XYZ値のYnの増加分のΔYを加算して、
Yn’=Yn+ΔY ・・・(9)
を算出する(ステップS21)。
【0096】
そして、モニタ10の色温度を変更させないように、XnとZnについても、下記の(10)式のように、Yn’とYnとの比率と同じ比率だけ増加させる(ステップS22)。
【0097】
Xn’=Xn×Yn’/Yn
Zn’=Zn×Yn’/Yn ・・・(10)
そして、(9)式、(10)式に従って算出した新たな白XYZ値=(Xn’,Yn’,Zn’)を、測色により得られた最初の白XYZ値の代わりに採用して、モニタ10の色再現領域内の各点のRGB値とXYZ値との間の新たな対応関係を算出する(ステップS23)。この新たな対応関係としては、対応関係算出部72が変換マトリックスを算出するアルゴリズムを有する場合は変換マトリックスが採用され、対応関係算出部72が線形回帰モデルを作成するアルゴリズムを有する場合は線形回帰モデルが採用される。
【0098】
次に、算出した新たな対応関係に基づいて、(9)式、(10)式で算出した新たな白XYZ値=(Xn’,Yn’,Zn’)を、その新たな白XYZ値=(Xn’,Yn’,Zn’)に対応する新たな評価対象白RGB値=(RT,GT,BT)に変換する(ステップS24)。そして、この変換により得られた新たな評価対象白RGB値=(RT,GT,BT)が、RT,GT,BTのいずれについても1.0以下(規格化前の255以下)か否かが判定される(ステップS25)。RT,GT,BTのうちのいずれか1つでも1.0(規格化前の255)を越えていたら、(9)式に従って算出したYn’にさらにΔYを加え(ステップS26)、Xn’Zn’についても(10)式に従って計算し直して(ステップS22)、さらに新たな対応関係を算出し(ステップS23)、さらに新たな評価対象白RGB値=(RT,GT,BT)に変換し(ステップS24)、1.0以下か否かの判定を行なう(ステップS25)。これを繰り返すと、
図12に示すように、輝度Yn’の増加に伴ってRT,GT,BTの値が減少していく。そして、繰り返しの結果、RT,GT,BTが全て1.0以下となったときの輝度Y0を、調整目標値として設定する(ステップS27)。
【0099】
輝度提示部76は、上記の演算処理により設定された輝度Y0を、PC30の表示画面31上への表示等によりユーザに向けて提示して、モニタ10の表示画面11がその輝度Y0以上の輝度となるように、モニタ10のハードウェア設定の変更を促す。モニタ10が離散的ないくつかの輝度にのみ設定可能なモニタであったときは、輝度Y0以上の、設定可能な輝度を提示してもよい。
(輝度算出の第1例の第2態様)
図13は、
図10に示す輝度提示装置の輝度算出部における輝度算出の過程を示した模式図である。
【0100】
図12と同様、
図13の横軸はモニタの輝度、縦軸は、R,G,B=0〜255が0〜1.0となるように規格化された評価対象白RGB値(ここでは、Rで代表させている)である。
【0101】
この
図13に示すRTは、最初に算出された対応関係を採用して目標白XYZ値から変換して得られた最初の評価対象白RGB値のうちのRである。そして、RT’は、1回更新して得た、すなわち、
図11のフローのステップS21〜S24を1回だけ通過して得た、新たな評価対象白RGB値のうちのRである。ここでは、最初のRTと1回更新後のRT’を外挿して、RT≦1.0となる輝度Yrを算出する。
図13には、Rについてのみ示されているが、G,Bについても同様に、最初のGT,BTと1回更新後のGT’,BT’を外挿して、GT≦1.0、BT≦1.0となる輝度Yg,Ybを算出する。そして、このようにして算出された3つの輝度Yr,Yg,Ybのうちの一番高い輝度を調整目標の輝度とする。
【0102】
調整目標の輝度を算出するにあたり、評価対象白RGB値=(RT,GT,BT)の算出を繰り返すことに代えて、この
図13に示すように外挿により算出してもよい。
【0103】
(輝度算出の第2例)
図14は、本発明の第5実施形態としての輝度提示装置の機能ブロック図である。
【0104】
この
図14に示す輝度提示装置70は、
図1に示すPC30内で本発明の第5実施形態としての輝度提示プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての輝度提示装置である。
【0105】
この
図14に示す輝度提示装置80は、XYZ値取得部81と、対応関係算出部82と、評価対象白RGB値算出部83と、再現可否判定部84と、輝度算出部85と、輝度提示部86とで構成されている。これらの構成要素のうち、再現可否判定装置の要素である、XYZ値取得部81、対応関係算出部82、評価対象白RGB値算出部83、および再現可否判定部84と、さらに、輝度算出部85は、
図10に示す輝度提示装置70の対応する構成要素とそれぞれ同一であり、重複説明は省略する。すなわち、この
図14に示す輝度提示装置80は、輝度算出部85における輝度算出のアルゴリズムが、
図10に示す輝度提示装置70の輝度算出部75における輝度算出のアルゴリズムと異なっている。
【0106】
この輝度算出部85は、再現可否判定部84による、現在の設定におけるモニタ10では色再現目標を表わす目標XYZ値が再現不可能であるとの判定を受けて、色再現目標を再現することのできる輝度を算出する。すなわち、この輝度算出部85は、XYZ値取得部81で取得した白XYZ値と、評価対象白RGB値算出部で算出した評価対象白RGB値とに基づくとともに階調特性を考慮して、目標色温度を再現した上での目標輝度の再現が可能な輝度を算出する。
【0107】
図15は、
図14に示す輝度提示装置の輝度算出部における輝度算出アルゴリズムの説明図である。
【0108】
ここでは、XYZ値取得部81から、測色により得られた白XYZ値=(Xn,Yn,Zn)を受け取るとともに、評価対象白RGB値算出部83から、RGB値とXYZ値との対応関係(変換マトリックスあるいは線形回帰モデル)に従って目標XYZ値が変換された評価対象白RGB値=(RT,GT,BT)を受け取る。ここでは、評価対象白RGB値を構成するRT,GT,BTのうちの一番値が大きい変数について以下の演算が実行される。一番値が大きい変数について演算を実行するだけで十分だからである。ここでは、GT≧RT,BTとして説明する。
【0109】
ここでは、
【数5】
により、新たな輝度Yn’が算出される。この(11)式は、モニタ10の標準的な表示階調特性を考慮してGTヲを2.2乗してYnに乗算することで、新たな輝度Yn’を算出することを意味している。この算出された新たな輝度Yn’が、モニタ10のハードウェア設定として提示すべき輝度とされる。
【0110】
例えば、(RT,GT,BT)=(0.8,1.2,1.1)、Yn=80であったとする。このとき、(11)式より、
Yn’=80×1.22.2=119.47
と計算される。モニタ10の輝度をこの輝度Yn’に調整すると、そのときの評価対象白RGB値のG=GT’=1.0となることが予測される。ここでは、GT≧RT,BTであるから、モニタ10に輝度を輝度Yn’に調整した後の評価対象白RGB値は、RT,BT≦1.0となる。
(色温度算出)
図16は、本発明の第6実施形態としての色温度提示装置の機能ブロック図である。
【0111】
この
図16に示す色温度提示装置90は、
図1に示すPC30内で本発明の第6実施形態としての色温度提示プログラムが実行されることにより、そのPC30に構築される機能としての色温度提示装置である。
【0112】
この
図16に示す色温度提示装置90は、XYZ値取得部91と、対応関係算出部92と、評価対象白RGB値算出部93と、目標色温度白RGB値算出部94と、色温度算出部95と、色温度提示部96とで構成されている。これらの構成要素のうちの、XYZ値取得部91、対応関係算出部92、および評価対象白RGB値算出部93は、
図10,
図14に示す輝度提示装置70,80の同一名称の構成要素とそれぞれ同一であり、ここでの重複説明は省略する。
【0113】
目標色温度白RGB値算出部94は、XYZ値取得部91で得られた白XYZ値が表わす色温度である測色色温度と目標XYZ値が表わす色温度である目標色温度との比率に基づいて白RGB値を変換することにより、目標色温度を達成する目標色温度白RGB値を算出する。
【0114】
そして、色温度算出部95は、評価対象白RGB値を測色色温度に対応づけるとともに目標色温度白RGB値を目標色温度に対応づけたときの関係式に基づいて、モニタ10に入力可能な範囲内のRGB値が得られる色温度を算出する。
(色温度算出の第1態様)
図17は、目標色温度白RGB値算出部および色温度算出部における処理内容を示した図である。
【0115】
この
図17の横軸は色温度、縦軸は算出されたRGB値である。
【0116】
ここでは、評価対象白RGB値算出部93で算出された評価対象白RGB値を(RT1,GT1,BT1)とする。また、ここでは、目標XYZ値の輝度および色温度を、それぞれ、YT,TTとする。
【0117】
XYZ値取得部91で取得した、測色により得られた白XYZ値の輝度Yと、目標XYZ値の輝度YTとを用いて、色再現目標(ここでは、目標輝度YTと目標色温度TT)の達成に必要な、目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)を算出する。
【0118】
ここでは、モニタ10の色温度が、「仮想的に」、目標色温度TTそのものに設定されていることを想定している。換言すると、この目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)をモニタ10に入力したときに得られる色温度は、目標色温度TTと一致する。したがって、R,G,Bの各値を一律に変更することで、目標色温度TTを達成することができる。すなわち、下記式(12)を採用することで、目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)を算出することができる。
【0119】
【数6】
ただし、この(12)式では、R,G,B=0〜255が0〜1.0となるように規格化されている。また、(YT/Y)を(1/2.2)乗しているのは、モニタ10の表示階調特性を考慮したものである。
【0120】
具体例を示すと、目標輝度YT=100、白XYZ値の輝度Y=200の場合、
【数7】
と計算される。
【0121】
そして、
図17に示すように、評価対象白RGB値=(RT1,GT1,BT1)をモニタ10の現在の色温度、すなわち、白XYZ値により表わされる色温度(ここでは一例として、3800K)に対応づけ、(12)式で算出した目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)を、目標色温度TT(ここでは一例として6500K)に対応づける。
【0122】
現在のハードウェア設定のモニタ10の色温度は3800Kであり、
図17に示すようにGT1>1.0であって、現在のハードウェア設定のままでは、色再現目標(目標輝度YT=100cdと目標色温度TT=6500K)の再現は不可能である。そこで、ここでは、仮想的に、モニタ10を、現在の輝度Y(ここに示した例では輝度Y=200cd)を維持したまま色温度を目標色温度(ここに示した例では目標色温度TT=6500K)に調整したとすると、そのように調整したモニタ10で色再現目標(目標輝度YT=100cdかつ目標色温度TT=6500K)を表示すると、その時のRGB値は、RT2,GT2,BT2(ここに示す例では、RT2=GT2=BT2=0.73)となる筈である。
【0123】
そこで、ここでは、評価対象白RGB値=(RT1,GT1,BT1)をモニタ10の現在の色温度、すなわち、白XYZ値により表わされる色温度(ここでは一例として、3800K)に対応づけ、(12)式で算出した目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)を、目標色温度TT(ここでは一例として6500K)に対応づけて、RT1とRT2、GT1とGT2、BT1とBT2を、それぞれ直線で結ぶ。すなわち、
RT=αr×T+βr
GT=αg×T+βg
BT=αb×T+βb ・・・(13)
なる予測式を算出する。ここで、Tは色温度を表わす変数である。
【0124】
そして、これら3本の予測式により算出されるRT,GT,BTの各値のいずれもが1.0を下回る色温度(
図17に示す例では、約4500K)が、モニタ10のハードウェア設定として提示すべき色温度として算出される。すなわち、この
図17に示す例では、モニタ10の色温度のハードウェア設定を4500K以上に設定すれば、RGB値の調整により、すなわち色変換プロファイルを作成することにより、色再現目標(ここに示している例では、目標輝度YT=100cdと目標色温度TT=6500K)の白を再現することができることを意味している。
(色温度算出の第2態様)
図18は、離散的ないくつかの色温度にしか設定できないモニタについての
図17と同様な図である。
ここでは、ハードウェア的には、パターン1からパターン4までの4つの色温度にしか調整できないものとする。
【0125】
この場合、パターン1〜4の4パターンの色温度が不明なときは、各パターンにおける白を測色して各パターンの色温度を調べる。そして、
図16,
図17を参照して説明した演算と同様の演算を行なって、評価対象白RGB値=(RT1,GT1,BT1)をモニタ10の現在のハードウェア設定における色温度(ここでは一例として、4500K)に対応づけ、(12)式で算出した目標色温度白RGB値=(RT2,GT2,BT2)を、目標色温度TT(ここでは一例として、6500K)に対応づける。そして、RT,GT,BTのいずれもが1.0を下回るパターン、
図18に示す例ではパターン3が、設定すべきパターンとして、PC30の表示画面31上への表示等によりユーザに提示される。
【0126】
このように、上述の各再現可否判定装置の各実施形態によれば、色変換プロファイルの作成前に、モニタ10が色再現目標、すなわち目標輝度と目標色温度との双方を再現した白を表示することができるか否かが判定される。このため、目標の色再現が不能であるにも関わらず色変換プロファイルを作成しようとする無駄を省くことができる。また、上述の輝度提示装置ないし色温度提示装置の各実施形態によれば、設定すべき輝度ないし色温度が提示されるため、ユーザは、色再現目標を再現することのできるハードウェア設定を容易に知ることができる。