特許第6763295号(P6763295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6763295-表面実装インダクタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763295
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】表面実装インダクタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20200917BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   H01F17/04 F
   H01F27/29 123
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-249652(P2016-249652)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-107199(P2018-107199A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】宗内 敬太
(72)【発明者】
【氏名】磯 英治
(72)【発明者】
【氏名】大井 秀朗
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−009858(JP,A)
【文献】 特開2014−130988(JP,A)
【文献】 特開2016−058418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が平角状の導体がその両端部が外周に位置する様にコイル軸の周りに2段に巻回されて形成される巻回部と、前記巻回部から引き出された引き出し端部とを有するコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、前記コイルを内包する成形体と、前記コイルの引き出し端部と接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、
前記成形体は、前記コイルのコイル軸が実装面と垂直になる様にコイルが埋設され、コイルのコイル軸と垂直な面において、前記コイルの巻回部と対向する外部端子形成領域のみに前記金属磁性材料の充填率が、前記成形体全体における前記金属磁性材料の平均充填率よりも低い第1の領域と、コイルの周辺部分に、前記第1の領域の前記金属磁性材料の充填率よりも、前記金属磁性材料の充填率が高い第2の領域とを有し、
前記外部端子は、前記第1の領域を少なくとも含む領域に配置される表面実装インダクタ。
【請求項2】
断面が平角状の導体がその両端部が外周に位置する様にコイル軸の周りに2段に巻回されて形成される巻回部と、前記巻回部から引き出された引き出し端部とを有するコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、前記コイルを内包する成形体と、前記コイルと接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、
前記成形体は、前記コイルのコイル軸が実装面と垂直になる様にコイルが埋設され、コイルのコイル軸と垂直な面において、前記コイルの巻回部と対向する外部端子形成領域のみに前記金属磁性材料の中心粒子径D50が、前記成形体全体における前記金属磁性材料の中心粒子径D50よりも小さい第3の領域と、コイルの周辺部分に、前記第3の領域の前記金属磁性材料の中心粒径D50よりも、前記金属磁性材料の中心粒径D50が大きい第4の領域とを有し、
前記外部端子は、前記第3の領域を少なくとも含む領域に配置される表面実装インダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面実装インダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面実装インダクタに、導線を巻回してコイルを形成し、このコイルを樹脂と磁性粉末を含む封止材で形成された成形体内に埋設し、コイルの引き出し端部を成形体の表面に形成された外部端子に接続したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。この表面実装インダクタでは、樹脂成形法もしくは圧粉成形法によりコイルを内蔵する成形体が形成され、この成形体に導電性ペーストを塗布して外部端子が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−116708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような従来の表面実装インダクタでは、性能を向上させるために、成形体の磁性粉の密度を高くすることにより成形体の透磁率を高くすることが行われる。成形体の透磁率を高くするために磁性体粉として金属磁性体粉を用いる場合、金属磁性体粉自体の絶縁性が低い上、成形体を形成する際に加える圧力を高くして金属磁性体粉の密度を高くしているため、図6に示す様に、成形体を形成する際に圧力加える方向Pにおいて、コイル61の巻回部61aと外部端子63の間に位置する金属磁性体粉を介して、コイル61の巻回部61aと外部端子63とが接触し、絶縁性が低下してSで示す様にショートが発生しやすくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、高い絶縁性を有する高性能な表面実装インダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、導体が巻回されて形成されるコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、該コイルを内包する成形体と、該コイルと接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、該成形体は、該コイルのコイル軸と垂直な面に、該金属磁性材料の充填率が、該成形体全体における該金属磁性材料の平均充填率よりも低い第1の領域を有し、該外部端子は、該第1の領域を少なくとも含む領域に配置されることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、導体が巻回されて形成されるコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、該コイルを内包する成形体と、該コイルと接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、該成形体は、該コイルのコイル軸と垂直な面に、該金属磁性材料の中心粒子径D50が、該成形体全体における該金属磁性材料の中心粒子径D50よりも小さい第3の領域を有し、該外部端子は、該第3の領域を少なくとも含む領域上に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインダクタでは、導体が巻回されて形成されるコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、該コイルを内包する成形体と、該コイルと接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、該成形体は、該コイルのコイル軸と垂直な面に、該金属磁性材料の充填率が、該成形体全体における該金属磁性材料の平均充填率よりも低い第1の領域を有し、該外部端子は、該第1の領域を少なくとも含む領域に配置されるので、高い絶縁性を有しながら、インダクタとして高い性能を示すことができる。
また本発明のインダクタでは、導体が巻回されて形成されるコイルと、金属磁性材料と樹脂を含む封止材からなり、該コイルを内包する成形体と、該コイルと接続される外部端子とを備える表面実装インダクタであって、該成形体は、該コイルのコイル軸と垂直な面に、該金属磁性材料の中心粒子径D50が、該成形体全体における該金属磁性材料の中心粒子径D50よりも小さい第3の領域を有し、該外部端子は、該第3の領域を少なくとも含む領域上に配置されるので、高い絶縁性を有しながら、インダクタとして高い性能を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の表面実装インダクタの第1の実施例の部分断面図である。
図2】本発明の表面実装インダクタにおける成形体の表面近傍の構造を模式的に示す概略断面図である。
図3】本発明の表面実装インダクタの製造工程を説明するための斜視図である。
図4】本発明の表面実装インダクタの第2の実施例における成形体の表面近傍の構造を模式的に示す概略断面図である。
図5】本発明の表面実装インダクタの第3の実施例の部分断面図である。
図6】従来の表面実装インダクタにおける成形体の表面近傍の構造を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面実装インダクタは、導線を巻回して形成されたコイルと、主に金属磁性材料と樹脂とを含有する封止材でコイルを封止した成形体と、コイルに接続される外部端子とを備える。成形体は、内包するコイルのコイル軸と直交する2つの面を有し、その少なくとも1つの面側に、金属磁性材料の充填率が、成形体の他の部分における金属磁性材料の充填率よりも小さい第1の領域が形成される。すなわち、第1の領域の金属磁性材料の充填率は、成形体全体における金属磁性材料の充填率よりも小さくなっている。また成形体は、金属磁性材料として、その中心粒子径D50が異なる複数の金属磁性材料が用いられ、内包するコイルのコイル軸と直交する2つの面の少なくとも1つの面側に、金属磁性材料の粒子径の大きいものの比率が、成形体の他の部分よりも小さい第3の領域が形成されて構成される。すなわち、第3の領域ではそこに含まれる金属磁性材料の中心粒子径D50が、成形体全体における金属磁性材料の中心粒子径D50よりも大きくなっている。外部端子は、少なくとも第1の領域又は第3の領域を含む領域に位置する様に成形体に形成され、コイルと接続される。
【0011】
成形体における第1の領域及び第3の領域は、成形体の他の領域に比べて絶縁抵抗が大きくなっている。すなわち、本発明の表面実装インダクタでは、成形体において、絶縁抵抗が高い部分と、絶縁抵抗が低い部分とが意識的に形成されている。すなわち、成形体の表面側における外部端子を形成する部分の絶縁抵抗を高くしつつ、成形体内部のコイルの周辺部分の絶縁抵抗を低く、すなわち透磁率を大きく形成することができ、インダクタとしての性能を向上させることができる。なお、絶縁抵抗が高い部分は、絶縁抵抗が低い部分に比べて、金属磁性材料の充填率が小さくなっている第1の領域であるか、そこに含まれる金属磁性材料の中心粒子径D50が小さくなっている第3の領域である。金属磁性材料の充填率が低い領域は、例えば、そこに含まれる金属磁性材料の中心粒子径D50が小さくなるようにして構成することができる。また金属磁性材料の中心粒子径D50が小さい領域は、例えば、粒子径が小さい金属磁性材料の含有割合が、粒子径が大きい金属磁性材料の含有割合よりも多くなるようにして構成することができる。
【0012】
成形体は、内包するコイルの周辺部分に、第1の領域よりも金属磁性材料の充填率が高い第2の領域、又は第3の領域よりも中心粒子径D50が大きい第4の領域を有していてもよい。コイルの周辺部に透磁率が高い領域を設けることで、表面実装インダクタとして、より優れた性能を示すことができる。
【0013】
第1の領域又は第3の領域が形成される成形体の面は、成形体が内包するコイルのコイル軸に直交する面である。これにより表面実装インダクタを、例えば、コイル軸に平行な方向に加圧成形で形成する際に、コイルの変形が抑制され、生産性がより向上する。
【0014】
外部端子は、成形体の第1の領域又は第3の領域における表面の樹脂の少なくとも一部が除去されて、成形体の表面に露出した金属磁性材料と外部端子を構成するメッキ層とが接合され、外部端子とコイルの引き出し端部とが接続されることにより形成されていてもよい。表面の樹脂の少なくとも一部が除去されて金属磁性材料が露出していることで、メッキ層の形成がより容易に進行し、生産性が向上する。またメッキ層の成形体への接着性が向上するため、成形体と外部電極との間の強度が向上する。
【0015】
第1の領域及び/又は第3の領域は、少なくとも表面実装インダクタの基板実装面側に設けられてもよい。基板実装面側に設けることで、より容易に第1の領域及び/又は第3の領域を形成することができ、生産性がより向上する。
【0016】
ここで成形体における金属磁性材料の充填率は、以下のようにして測定される。成形体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、観察領域の面積に対する金属磁性材料の占有面積の割合と金属磁性材料の比重に基づいて算出される。
【0017】
金属磁性材料の中心粒子径D50は、粒子径分布において小径側からの体積累積が50%に対応する粒子径である。成形体における金属磁性材料の中心粒子径D50は、以下のようにして測定することができる。成形体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、観察される金属磁性材料の円相当径をそれぞれ算出する。得られた円相当径を金属磁性材料の粒子径として体積基準の粒子径分布を作成する。粒子径分布において、小径側からの体積累積が50%となる粒子径を中心粒子径D50とする。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、表面実装インダクタを例示するものであって、本発明は、表面実装インダクタを以下のものに特定しない。なお特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものではない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
なお、各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。第2の実施例以降では第1の実施例と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0019】
図1は本発明の表面実装インダクタの第1の実施例の部分断面図である。図1において、11はコイル、12は成形体である。コイル11は、導線をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部11aと、巻回部11aから成形体12の長手方向に引き出された引き出し端部11bを備えて形成される。導体には断面が平角状の平角線が用いられる。引き出し端部11bは、導体の両端部が巻回部11aから巻回部11aを挟んで対向する様に引き出される。
【0020】
成形体12は、樹脂と金属磁性材料を含む封止材を用いてコイル11を内包する様に形成される。成形体12はコイル軸に直交する2つの面(上面及び下面ともいう)と、コイル軸に平行で成形体12の長手方向に直交する長手方向の側面と、コイル軸に平行で長手方向の側面に直交する短手方向の側面とを有する。封止材としては、金属磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合したものが用いられる。この成形体12は、コイル軸に平行な方向、すなわち、成形する際に圧縮する方向と垂直な面側(本実施例では上下両面)に、金属磁性材料の充填率が、成形体全体における金属磁性材料の平均充填率よりも低い第1の領域12aが形成されると共に、コイル11の周辺部分に、第1の領域の金属磁性材料の充填率よりも金属磁性材料の充填率が高い第2の領域12bが形成される。また、この成形体12の長手方向の側面には、コイル11の引き出し端部11bの表面が露出する。
そして、この成形体12の長手方向の側面とこの側面に隣接する4つの面に跨って外部端子13が形成され、コイル11の引き出し端部11bと外部端子13とが接続される。外部端子13は、例えば、導電性ペーストによって形成される。
図1では、第1の領域12aは、コイル軸に垂直な2つの面の全面にそれぞれ形成されているが、外部端子13が形成される領域に部分的に形成されていてもよい。
【0021】
本発明の表面実装インダクタは、図1に示す様に、成形体12に第1の領域12aと第2の領域12bとが形成され、外部端子13が第1の領域12a上と成形体の長手方向の側面上に形成されている。図2は、図1の断面部分の部分拡大図であって、第1の領域12a、第2の領域12b、及び外部端子13の関係を模式的に示す概略断面図である。図2では、第1の領域12aの金属磁性粉末F1の充填率が、第2の領域12bの金属磁性粉末F2の充填率よりも低くなっている。そして、第1の領域12aが成形体12の上下面全体に亘って所定の厚みで形成され、成形体12のそれ以外の部分が第2の領域12bとなっており、第2の領域12b内にコイル11が内包される。成形体12の上下面の絶縁性が高くなっているため、成形体12を形成する際に加える圧力を高くしてコイル11の巻回部11aの周辺部の金属磁性体粉の充填率を高くしているにも係わらず、コイル11の巻回部11aと外部端子13の間に位置する金属磁性粉を介して、コイル11の巻回部11aと外部端子13が接触する可能性を低減できる。
【0022】
この様な表面実装インダクタは以下の様にして製造される。まず、図3に示す様に断面が平角状の絶縁被覆が施された導体をその両端が外周に位置する様に渦巻き状に2段の外外巻きに巻回して巻回部11aを形成した後、導線の両端を巻回部11aの外周から引き出して引き出し端部11bを形成してコイル11を形成する。本実施例で用いる導体は絶縁被膜としてイミド変成ポリウレタン層を有するものを用いた。絶縁被膜は、ポリアミド系やポリエステル系などでもよく、耐熱温度が高いものの方が好ましい。また、本実施例では断面が平角形状のものを用いるが、丸線や断面が多角形状のものを用いてもよい。図3では、コイル11はコイル軸方向から見ると長円状に形成されているが、コイル11の形状は長円状に限られない。
【0023】
次に、金属磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合して粉末状に造粒した封止材を用いて、圧縮成形法、シート工法、圧粉成形法などの成形方法にて、図3に示すようなコイル11が埋設された成形体12を成形する。このとき、成形体12は、圧縮成形法の場合、コイル11を保持する仮成形体の上下面に、仮成形体の金属磁性粉末の充填率よりも低い充填率の仮成形体を追加するか、成形金型内の下部と上部に仮成形体の金属磁性粉末の充填率よりも低い充填率の材料を充填するかして形成される、また成形体12は、シート工法の場合、成形体を構成する金属磁性材料シートの最上層と最下層に、他の層の金属磁性粉末の充填率よりも低い充填率の金属磁性材料シートを追加して形成される。さらに成形体12は、圧粉成形法の場合、成形金型内の下部と上部に他の部分の金属磁性粉末の充填率よりも低い充填率の材料を充填することにより形成される。また、コイル11の引き出し端部11bは、成形体12の長手方向の側面の外部端子が形成される位置にその表面が露出するように引き出される。
この様にして空芯コイル11を内蔵する成形体12内において、図1に示す様に、成形する際に圧縮する方向、すなわちコイル軸と平行な方向と直交する面側に、金属磁性材料の充填率が、成形体の他の部分の金属磁性材料の充填率よりも低い第1の領域12aが形成されると共に、コイル11の周辺部分に、第1の領域12aの金属磁性材料の充填率よりも金属磁性材料の充填率が高い第2の領域12bが形成される。
【0024】
続いて、コイル11の引き出し端部11bの表面の絶縁被膜を機械剥離によって除去した後、成形体12の長手方向の側面とその側面に隣接する4つの面に跨って導電性ペーストを塗布することにより外部端子13が形成される。外部端子13は成形体12の長手方向の側面に露出していたコイル11の引き出し端部11bと接続される。
【0025】
図4は、本発明の表面実装インダクタの第2の実施例における成形体の外部電極43が形成される部分における第3の領域42a、第4の領域42b、外部端子43の関係を模式的に示す概略断面図である。第2の実施例では、粒子径の小さい金属磁性材料の含有比率が成形体42の他の部分よりも大きい第3の領域42aが、成形体42のコイル軸に直交する面に形成されている。
本実施例では、前述の第1の実施例と同様に、導体をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部41aと、巻回部41aから引き出された引き出し端部41bとを備えるコイルが成形体42に内包される。そして、成形体42は、樹脂に加えて金属磁性材料として、その中心粒子径D50が異なる複数の金属磁性材料を用いて形成され、コイル軸と直交する面側に、粒子径の小さい金属磁性材料(例えば、粒子径10μm未満)F3の比率が、成形体42の他の部分、例えば成形体42の内部よりも大きい第3の領域42aが形成されると共に、コイルの周辺部分に、粒子径の大きい金属磁性材料(例えば、粒子径10μm以上)F4の比率が、成形体の第3の領域42aよりも大きい第4の領域42bが形成される。すなわち、成形体42は、コイル軸に直交する2つの面を有し、その少なくとも1つの面に、金属磁性材料の中心粒子径D50が、成形体42全体における金属磁性材料の中心粒子径D50よりも小さい第3の領域42aを有する。また、この成形体42の長手方向の側面には、コイルの引き出し端部41bの表面が露出する。
そして、この成形体42の長手方向の側面とその側面に隣接する4つの面に跨って、外部端子43が形成され、コイルの引き出し端部41bと外部端子43とが接続される。
【0026】
この様に形成された表面実装インダクタは、前述の実施例と同様に、成形体42の上下面全体の絶縁性が高くなり、成形体を形成する際に加える圧力を高くしてコイル41の巻回部41aの周辺部の金属磁性体粉の密度を高くしているにも係わらず、コイル41の巻回部41aと外部端子43の間に位置する金属磁性粉を介して、コイル41の巻回部41aと外部端子43が接触する可能性を低減できる。
【0027】
図5は、本発明の表面実装インダクタの第3の実施例の部分断面図である。第3の実施例では、金属磁性材料の充填率が小さい第1の領域が、表面実装インダクタの基板実装面(底面ともいう)に形成され、コイルの引き出し端部が基板実装面に露出している。
コイル51は、導体をその両端部が外周に位置するように渦巻き状に2段の外外巻きに巻回した巻回部51aと、巻回部51aから引き出された引き出し端部51bを備えたコイルが形成される。導体は断面が平角状の平角線が用いられる。引き出し端部51bは、導体の両端部が巻回部51aから引き出され、成形体52の底面に位置させることができる様に屈曲加工される。
【0028】
成形体52は、樹脂と金属磁性材料を含む封止材を用いてコイル51を内包する様に形成される。封止材としては、金属磁性材料として例えば鉄系の金属磁性粉末を、樹脂として例えばエポキシ樹脂をそれぞれ用い、これらを混合したものが用いられる。この成形体52は、底面側に、金属磁性材料の充填率が、成形体の他の部分における金属磁性材料の充填率よりも低い第1の領域52aが形成されると共に、コイル51の周辺部分に、第1の領域52aの金属磁性材料の充填率よりも金属磁性材料の充填率が高い第2の領域52bが形成される。また、この成形体52の底面には、コイル51の引き出し端部51bの表面が露出する。
そして、この成形体52の底面の第1の領域52a上に外部端子53が形成され、コイル51の引き出し端部51bと外部端子53が接続される。外部端子53は、成形体52の外部端子が形成される部分の表面の樹脂成分を除去して金属磁性粉末を露出させ、NiやSn等の金属材料を用いたメッキを施すことにより形成されたメッキ層により形成される。
【0029】
以上、本発明の表面実装インダクタの実施例を述べたが、本発明はこの実施例に限られるものではない。例えば、外部端子はスパッタを用いて形成してもよい。また、実施例では成形する際に圧縮する方向と垂直な面全体に第1の領域を形成した場合を示したが、該当する面の一部分に形成しても良い。その場合、該当する面の外部端子が形成される部分に形成すると良い。
【符号の説明】
【0030】
11 コイル
12 成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6