特許第6763303号(P6763303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763303立体造形用樹脂組成物、立体造形物の製造方法及び無機充填材粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763303
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】立体造形用樹脂組成物、立体造形物の製造方法及び無機充填材粒子
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20200917BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20200917BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20200917BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20200917BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20200917BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200917BHJP
   C03C 12/00 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/076 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20200917BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   C08F2/44 A
   C08L63/00 C
   C08K3/40
   B29C67/00
   B33Y70/00
   B33Y10/00
   C03C12/00
   C03C3/076
   C03C3/087
   C03C3/078
   C03C3/083
   C03C3/089
   C03C3/091
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-558997(P2016-558997)
(86)(22)【出願日】2015年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2015081073
(87)【国際公開番号】WO2016076180
(87)【国際公開日】20160519
【審査請求日】2018年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-229984(P2014-229984)
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中根 慎護
(72)【発明者】
【氏名】石田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 良憲
【審査官】 阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−105555(JP,A)
【文献】 特開2001−261367(JP,A)
【文献】 特開2010−001496(JP,A)
【文献】 特開2011−057867(JP,A)
【文献】 特開2007−154064(JP,A)
【文献】 特開平02−046840(JP,A)
【文献】 特開2004−351907(JP,A)
【文献】 特開2011−153048(JP,A)
【文献】 特開2012−180278(JP,A)
【文献】 特開2012−162448(JP,A)
【文献】 特開2013−139372(JP,A)
【文献】 特開平05−286040(JP,A)
【文献】 特開2006−312706(JP,A)
【文献】 南条 尚志,FRP構成素材入門 第2章 構成素材と種類 −ガラス繊維−,日本複合材料学会誌,日本,2007年,33巻、4号,141頁〜149頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00〜2/60、
B29C67/00〜67/24、
B33Y10/00、B33Y70/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、無機充填材粒子が、硬化後の硬化性樹脂との屈折率ndの差が±0.02以下、アッベ数νdの差が±10以下であるガラス粒子であり、当該ガラス粒子中のNbとWOの合量が0.1〜30%であることを特徴とする立体造形用樹脂組成物。
【請求項2】
硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、硬化後の最大透過率Tmaxが10%以上であることを特徴とする請求項1に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項3】
硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、硬化後の最大透過率Tmaxと最小透過率Tminの比率Tmax/Tminが20以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂が、液状の光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項5】
ガラス粒子の屈折率ndが1.40〜1.90、アッベ数νdが20〜65であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項6】
ガラス粒子がガラスビーズであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項7】
ガラス組成として、Fe、NiO、Cr及びCuOの含有量の合量が1質量%以下であるガラスビーズを用いることを特徴とする請求項6に記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項8】
ガラス粒子が、質量%でSiO 40〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、CaO 0〜25%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の立体造形用樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂組成物からなる液状層に選択的に活性エネルギー光線を照射して所定のパターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな液状層を形成した後に活性エネルギー線を照射して前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返す立体造形物の製造方法であって、樹脂組成物として、請求項1〜8の何れかに記載の立体造形用樹脂組成物を使用することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体造形用樹脂組成物、これを用いた立体造形物の製造方法及び無機充填材粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料等を積層させて立体造形物を得る方法が知られている。例えば光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法等種々の方法が提案され実用化されている。
【0003】
例えば光造形法は、細やかな造形や正確なサイズ表現に優れており、広く普及している。この方法は以下のようにして立体造形物を作成するものである。まず液状の光硬化性樹脂を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射して所望のパターンの硬化層を作成する。このようにして硬化層を1層造ると造形ステージを1層分だけ下げて、硬化層上に未硬化の樹脂を導入し、同様にして紫外線レーザーを光硬化性樹脂に照射して前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げる。この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。また、粉末焼結法は、樹脂、金属、セラミックス、ガラスの粉末を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の粉末に半導体等のレーザーを照射し、軟化変形にて所望のパターンの硬化層を作製するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−26060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光造形法等で作製される樹脂製の立体造形物は、細やかで精密であるが、機械的強度等に劣ることが指摘されている。そこで特許文献1で提案されているように、光硬化性樹脂に、無機充填材を添加することが提案されている。
【0006】
ところが無機充填材粒子を添加すると、無機充填材粒子の存在により、光硬化性樹脂に十分な紫外線が照射されにくくなることから、十分な量の無機充填材粒子を添加できないという不具合がある。また得られる立体造形物の透明性が損なわれるという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、透明性を損なうことなく、十分な量の無機充填材粒子を添加可能な立体造形用樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、無機充填材粒子が、硬化後の硬化性樹脂との屈折率ndの差が±0.02以下、アッベ数νdの差が±10以下である透光性粒子であることを特徴とする。ここで「屈折率nd」は、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対し測定した値であり、「アッベ数νd」は上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)及びC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd−1)/(nF−nC)]式から算出した値である。また本発明において「透光性」とは可視光範囲のいずれかの波長の光透過率が10%以上であることを意味する。
【0009】
上記構成によれば、硬化後の硬化性樹脂と光学定数が整合した透光性粒子を用いることから、硬化性樹脂と無機充填材粒子の界面で発生する光散乱が抑制され、得られる立体造形物の透明性が損なわれることがない。また光造形法を使用する場合には、無機充填材粒子によって活性エネルギー線の照射が妨げられることがない。それゆえ無機充填材粒子を硬化性樹脂中に多量に導入することが可能となり、機械的強度の高い立体造形物を得ることができる。
【0010】
本発明においては、硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、硬化後の最大透過率が10%以上であることが好ましい。ここで「硬化後の最大透過率Tmax」とは、無機充填材粒子と硬化性樹脂とを硬化させた後の複合体における最大透過率を意味する。また本発明でいう透過率とは、波長400nmから800nmの範囲における厚さ1mmでの透過率を意味する。
【0011】
上記構成によれば、透明性の高い立体造形物を得ることができる。
【0012】
本発明においては、硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む立体造形用樹脂組成物であって、硬化後の最大透過率Tmaxと最小透過率Tminの比率Tmax/Tminが20以下であることが好ましい。ここで「最小透過率Tmin」とは、無機充填材粒子と硬化性樹脂とを硬化させた後の複合体における最小透過率を意味する。「比率Tmax/Tmin」とは、最大透過率Tmaxを最小透過率Tminで除した値を意味する。
【0013】
上記構成によれば、硬化後の硬化性樹脂と光学定数が整合した透光性粒子により光散乱が低下し、可視域の広い範囲において高い透過率が得られるとともに、着色の少ない立体造形物を得ることができる。
【0014】
本発明においては、硬化性樹脂が、液状の光硬化性樹脂であることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、立体造形物の作製に光造形法を用いることができる。
【0016】
本発明においては、透光性粒子の屈折率ndが1.40〜1.90、アッべ数νdが20〜65であることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、硬化性樹脂と光学定数を整合させることが容易になる。
【0018】
本発明においては、透光性粒子がガラスビーズであることが好ましい。本発明において「ガラスビーズ」とは、球状に成形されたガラス粒子を意味するが、必ずしも真球状であることは要しない。
【0019】
上記構成によれば、立体造形物の透明性が損なわれることがない。また光造形法を使用する場合には、硬化性樹脂の流動性を損ない難い。
【0020】
本発明においては、ガラス組成として、Fe、NiO、Cr及びCuOの含有量の合量が1質量%以下であるガラスビーズを用いることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、ガラスビーズの着色を抑制し易くなることから、無色透明な立体造形物を容易に得ることができる。
【0022】
本発明においては、透光性粒子が、質量%でSiO 40〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、CaO 0〜25%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有するガラス粒子であることが好ましい。
【0023】
上記構成を採用すれば、使用する硬化性樹脂に適した光学定数を有する無機充填材粒子を採用することが容易である。
【0024】
本発明の立体造形物の製造方法は、樹脂組成物からなる液状層に選択的に活性エネルギー光線を照射して所定のパターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな液状層を形成した後に活性エネルギー線を照射して前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返す立体造形物の製造方法であって、樹脂組成物として上記した立体造形用樹脂組成物を使用することを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、透明で機械的強度の高い立体造形物を得ることができる。
【0026】
本発明の無機充填材は、硬化性樹脂と混合して使用される無機充填材粒子であって、質量%でSiO 40〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、CaO 0〜25%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有するガラスからなることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、硬化性樹脂と無機充填材粒子とを含む。硬化性樹脂と無機充填材粒子の混合割合は、体積%で硬化性樹脂が30〜99%、無機充填材粒子が1〜70%であることが好ましい。より好ましくは、硬化性樹脂が35〜95%、40〜90%、特に45〜85%であり、無機充填材粒子が5〜65%、10〜60%、特に15〜55%である。無機充填材粒子の割合が高すぎると、樹脂との接着する表面積が少なく機械的強度が低くなる。また光造形法を使用する場合は、硬化性樹脂の粘度が高くなり過ぎて造形ステージ上に新たな液状層を形成しにくくなる等の不具合が生じる。硬化性樹脂の割合が高すぎるとガラスフィラーの持つ強度や硬度をコンポジットに反映し難くなる。また相対的に無機充填材粒子の含有量が低下することから造形物の機械的強度が低下する。
【0028】
本発明で使用する硬化性樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂の何れであってもよく、採用する造形法によって適宜選択することができる。例えば光造形法を使用する場合は液状の光硬化性樹脂を選択すればよく、また粉末焼結法を採用する場合は粉末状の熱硬化性樹脂を選択すればよい。
【0029】
例えば光硬化性樹脂としては、重合性のビニル系化合物、エポキシ系化合物等種々の樹脂を選択することができる。また単官能性化合物や多官能性化合物のモノマーやオリゴマーが用いられる。これらの単官能性化合物、多官能性化合物は、特に限定されるものではない。例えば、以下に光硬化性樹脂の代表的なものを挙げる。
【0030】
重合性のビニル系化合物の単官能性化合物としては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジンクロペンテニルアクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、ビニルピロリドン、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。また多官能性化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。これらの単官能性化合物や多官能性化合物の1種以上を単独又は混合物の形で使用することができる。
【0031】
ビニル系化合物の重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、フルオレノン、ベズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、ミヒラーケトン等が代表的なものとして挙げることができ、これらの開始剤を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。必要に応じてアミン系化合物等の増感剤を併用することも可能である。熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパ−オキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が代表的なものとして挙げることができる。これらの重合開始剤又は熱重合開始剤の使用量は、ビニル系化合物に対してそれぞれ0.1〜10重量%であることが好ましい。
【0032】
エポキシ系化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物を用いる場合には、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のエネルギー活性カチオン開始剤を用いることができる。
【0033】
さらに液状光硬化性樹脂には、レベリング剤、界面活性剤、有機高分子化合物、有機可塑剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0034】
本発明で使用する無機充填材粒子は、硬化後の硬化性樹脂との屈折率ndの差が±0.02以下(好ましくは±0.01以下、より好ましくは±0.075以下、さらに好ましくは±0.05)、アッベ数νdの差が±10以下(好ましくは±5.0以下、より好ましくは±2.5以下、さらに好ましくは±1.0以下)である透光性粒子であれば特に制限はない。例えばガラスビーズ、ガラス粉末、ガラスファイバー、セラミック粉末、セラミックファイバー等を単独又は混合して使用することが可能である。なお透光性粒子と硬化性樹脂と光学定数の差が大きくなると樹脂との屈折率等の不整合により、立体造形物の透明性が低下する。
【0035】
透光性粒子は、組み合わせる樹脂にもよるが、例えば屈折率ndが1.40〜1.90、1.40〜1.65、1.45〜1.6、特に1.5〜1.55であることが好ましく、アッべ数νdは、組み合わせる樹脂にもよるが、例えば20〜65、40〜65、45〜60、特に50〜55であることが好ましい。さらに屈折率ndが1.5〜1.55、且つアッべ数νdが50〜55であれば、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ABS樹脂等多くの樹脂と光学定数が整合するため幅広い用途に使用可能である。光学定数が上記範囲から外れると、硬化後の硬化性樹脂と整合した光学定数を得ることが難しくなる。また透光性粒子は、可視光範囲のいずれかの波長の光透過率が10%以上のものであるが、得られる造形物の透明性を高める観点から、可視域(400〜700nm)における平均透過率が30%以上、50%以上、特に70%以上であることが望ましい。
【0036】
透光性時粒子と硬化性樹脂の組み合わせは、上記条件を満たすように、適切な材料を選択すればよいが、特に硬化後の透過率における最大透過率が10%以上、20%以上、30%以上、50%以上、70%以上、特に80%以上となるように選択することが好ましい。また同様に硬化後の最大透過率Tmaxと最小透過率Tminの比Tmax/Tminが20%以下、8%以下、5%以下、特に3%以下であることが好ましい。
【0037】
透光性粒子として、ガラスビーズ、円柱形状や角柱形状等のロッド等のガラス粒子を単独で、或いは組み合わせて用いることができる。特にガラスビーズは球状であることから流動性に優れている。またファイアポリッシュ等の方法で作製すれば、表面粗さの小さい表面仕上げが可能であり、より流動性を高めることができる。ガラスビーズの粒度は、平均粒径D50が0.1〜300μm、特に1〜200μmさらに3〜100μmであることが好ましい。またガラスビーズの最大粒子径は500μm以下、特に300μm以下であることが好ましく、最小粒子径は0.1μm以上、特に0.5μm以上であることが好ましい。ガラスビーズの粒度が小さくなるほど充填率を高めることができる。しかし光造形法を使用する場合には、硬化性樹脂の流動性を低下させたり、界面泡が抜けにくくなったりしてしまう。一方、ガラスビーズの粒度が大きいほど充填率が低下し、また屈折率差による光散乱が増大しやすくなってしまう。なおガラスビーズは、粉砕等で作製される粉末ガラスに比べ、同じ添加量の場合、硬化性樹脂の粘度上昇が抑制できるという特徴がある。
【0038】
ガラスビーズ等の無機充填材粒子は、その表面がシランカップリング剤によって処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で処理すれば、無機充填材粒子と硬化性樹脂の結合力を高めることができ、より機械的強度の優れた造形物を得ることが可能になる。さらに、無機充填材粒子と硬化性樹脂のなじみがよくなり、界面の泡や空隙が減少でき、光散乱を抑制でき、透過率が高くなる。シランカップリング剤としては、例えばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等が好ましい。なおシランカップリング剤は、用いる硬化性樹脂によって適宜選択すればよく、例えば光硬化性樹脂としてビニル系不飽和化合物を用いる場合にはアクリルシラン系シランカップリング剤が最も好ましく、またエポキシ系化合物を用いる場合にはエポキシシラン系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0039】
さらに、無機充填剤や硬化性樹脂に酸化物ナノ粒子を、樹脂組成物に対して1%以下の割合で添加してもよい。酸化物ナノ粒子は、ZrO、Al、SiO等が使用できる。尚、酸化物ナノ粒子は、可視光波長より小さい粒子であり、光散乱を発生しにくい。
【0040】
ガラスビーズ等のガラス粒子は、上記した光学定数を満足するものであれば組成は制限されない。例えばSiO−B−R’O(R’はアルカリ金属元素)系ガラス、SiO−Al−RO(Rはアルカリ土類金属元素)系ガラス、SiO−Al−R’O−RO系ガラス、SiO−Al−B−R’O系ガラス、SiO−Al−B−R’O−RO系ガラス、SiO−R’O系ガラス、SiO−R’O−RO系ガラス等が使用できる。
【0041】
またガラスビーズは、着色を抑制するために、ガラス組成中のFe、NiO、Cr及びCuOの含有量が合量で1質量%以下、0.75質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。
【0042】
またガラス組成中のLa、Gd3、及びBiの含有量は合量で20質量%以下、15質量%以下、特に10質量%以下とすることが好ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、ガラスビーズ等の着色を抑制し易くなることや屈折率の上昇が抑制できることから、無色透明な立体造形物を容易に得ることができる。
【0043】
また環境上の理由から、ガラス組成中の鉛、アンチモン、ヒ素、塩素、硫黄の含有量は合量で1質量%以下、0.5質量%以下、特に0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0044】
ガラス粒子を構成するガラスの組成範囲としては、例えば質量%でSiO 40〜80%、Al 0〜30%、B 0〜20%、CaO 0〜25%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有するガラスであることが好ましい。
ところでガラス粒子の光学定数は、組み合わせる樹脂の光学定数と整合していることが重要である。
【0045】
例えばビニル系樹脂の屈折率ndは1.40〜1.60、アッべ数νdは45〜65程度であり、これに整合する光学定数が得られるガラスとして、例えば質量%でSiO 50〜80%、Al 0〜30%、B0〜30%、CaO 0〜25%、NaO 0〜30%、KO 0〜30%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有するガラスを使用することが好ましい。上記組成範囲のガラスは、屈折率ndが1.4〜1.6、アッべ数νdが45〜65であり、ビニル系樹脂と組み合わせて透明な立体造形物を得ることが可能である。
【0046】
組成範囲を上記のように限定した理由は、以下の通りである。なお以降の説明において特に断りのない限り「%」は質量%を意味する。
【0047】
SiOはガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。SiOは、50〜80%、55〜75%、特に60〜70%であることが望ましい。SiOが多すぎると溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。SiOが少なすぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0048】
Alはガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。Alは、0〜30%、2.5〜25%、特に5〜20%であることが望ましい。Alが多いと、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。Alが少ないと、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0049】
はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。Bは、0〜50%、2.5〜40%、特に5〜30%であることが望ましい。Bが多いと、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。Bが少ないと、化学耐久性が低下しやすくなる。またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0050】
CaOは、アルカリ土類であり、ガラス中で中間物質として安定化させる成分である。CaOは、0〜25%、0.5〜20%、特に1〜15%であることが望ましい。CaOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。CaOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0051】
MgO、SrO、BaO及びZnOは合量で0.1〜50質量%、1〜40%、特に2〜30%であることが好ましい。これらの成分は、CaOと同様にガラスの耐久性を大きく低下させずにガラスの粘度を低下させやすい成分である。
【0052】
NaOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。NaOは、0〜30%、0.1〜25%、0.5〜20%、特に1〜15%であることが望ましい。NaOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。NaOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなるとともに、成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0053】
Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。KOは、0〜30%、0.1〜25%、0.5〜20%、特に1〜15%であることが望ましい。KOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。KOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなるとともに、成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0054】
LiOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。LiOは、0〜10%、0.1〜9%、0.5〜7%、特に1〜5%であることが望ましい。LiOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。LiOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなるとともに、成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0055】
TiOは、屈折率やアッベ数を調整できる成分であり、ガラスの粘度を低下させる成分である。TiOは0〜15%、0.1〜12%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。TiOが多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。またガラスに着色が起こりやすい。TiOが少なすぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。さらに化学耐久性が悪化しやすくなる。
【0056】
Nbは、屈折率、アッベ数を調整できる成分である。Nbは、0〜20%、0.1〜15%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。Nbが多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる。さらにガラスが失透しやすくなる。Nbが少なすぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。さらに化学耐久性が悪化しやすくなる。
【0057】
WOは、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。WOは、0〜20%、0.1〜15%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。
【0058】
またガラス組成中のTiO、Nb、WOの含有量は合量で0〜30%、0.1〜25%、1〜20%、特に3〜15%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすく、またガラスの失透の抑制が容易になる。また化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0059】
またガラス組成中のNb、WOの含有量は合量で0〜30%、0.1〜25%、1〜20%、特に2〜10%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすくなるとともに、着色し難くなる。またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0060】
は、ガラス骨格を形成する成分である。また、透過率、特に紫外領域の透過率を高めることが可能な成分である。Fは、0〜10%、0.1〜7.5%、0.5〜5%、特に1〜3%であることが望ましい。FOが多すぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。また化学耐久性が悪化しやすい。さらにFは揮発性が高く、ビーズ作製時に昇華した成分がガラス表面に付着し、表面性状を悪化させる虞がある。Fが少なすぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスの着色が起こりやすい。
【0061】
またエポキシ系樹脂の屈折率ndは1.50〜1.80、アッべ数νdは20〜55であり、これに整合する光学定数が得られるガラスとして、例えば質量%でSiO 20〜70%、Al 0〜20、 B0〜20%、CaO 0〜25%、NaO 0〜10%、KO 0〜10%、LiO 0〜10%、TiO 0〜15%、Nb 0〜20%、WO 0〜20%、F 0〜10%含有するガラスを使用することが好ましい。上記組成範囲のガラスは、屈折率ndが1.5〜1.8、アッべ数νdが20〜55であり、エポキシ系樹脂と組み合わせて透明な立体造形物を得ることが可能である。
【0062】
組成範囲を上記のように限定した理由は、以下の通りである。
【0063】
SiOはガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。SiOは、20〜70%、30〜65%、特に40〜60%であることが望ましい。SiOが多すぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。SiOが少なすぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0064】
Alはガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。Alは、0〜30%、2.5〜25%、特に5〜20%であることが望ましい。Alが多いと、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。Alが少ないと、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0065】
はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透性の抑制が可能な成分である。Bは、0〜50%、2.5〜40%、特に5〜30%であることが望ましい。Bが多いと、溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。Bが少ないと、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0066】
CaOは、ガラス中で中間物質として安定化させる成分である。CaOは、0〜25%、0.5〜20%、特に1〜15%であることが望ましい。CaOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。CaOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0067】
MgO、SrO、BaO及びZnOは合量で0.1〜50%、1.0〜40%、特に2〜30%であることが好ましい。これらの成分は、CaOと同様にガラスの耐久性を大きく低下させずにガラスの粘度を低下させやすい成分である。
【0068】
NaOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。NaOは、0〜10%、0.1〜7.5%、0.5〜5%、特に1〜2.5%であることが望ましい。NaOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。NaOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0069】
Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。KOは、0〜10%、0.1〜7.5%、0.5〜5%、特に1〜2.5%であることが望ましい。KOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。KOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0070】
LiOは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。LiOは、0〜10%、0.1〜9%、0.5〜7%、特に1〜5%であることが望ましい。LiOが多すぎると化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。また、LiOが少なすぎると溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくく、製造が困難になる虞がある。
【0071】
またガラス組成中のNaO、KO、LiOの含有量は合量で10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、特に1%以下とすることが好ましい。これらの成分の合量を上記のように限定すれば、樹脂硬化時に発生するガラス中のアルカリ成分の蒸発を抑制し易くなる。また化学耐久性の低下を抑制できることから、例えばアルカリ溶出によるエポキシ樹脂の劣化が抑制できる。それゆえ無色透明な立体造形物を容易に得ることができ、また得られた造形物の経時的な劣化を防止することができる。さらにガラスの熱膨張係数を小さくできることから、サーマルショックや硬化時の熱収縮が抑制できる。
【0072】
TiOは、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。TiOは、0〜15%、0.1〜12%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。TiOが多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。またガラスが着色しやすくなる。TiOが少なすぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。さらに化学耐久性が悪化しやすくなる。
【0073】
Nbは、屈折率、アッベ数を調整できる成分である。Nbは、0〜20%、0.1〜15%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。Nbが多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが失透しやすくなる。Nbが少なすぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。さらに化学耐久性が悪化しやすい。
【0074】
WOは、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。WOは、0〜20%、0.1〜15%、0.5〜10%、特に1〜5%であることが望ましい。WOが多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが着色しやすくなる傾向がある。WOが少なすぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。さらに化学耐久性が悪化しやすくなる。
【0075】
またガラス組成中のTiO、Nb、WOの含有量は合量で0〜30%、0.1〜25%、1〜20%、特に3〜15とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすく、またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0076】
またガラス組成中のNb、WOの含有量は合量で0〜30%、0.1〜25%、1〜20%、特に2〜15%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすくなるとともに、着色し難くなる。またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0077】
は、ガラス骨格を形成する成分である。また透過率、特に紫外領域の透過率を高めることができる成分である。Fは、0〜10%、0.1〜7.5%、0.5〜5%、特に1〜3%であることが望ましい。Fが多すぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。また化学耐久性が悪化しやすい。さらにFは揮発性が高く、ビーズ作製時に昇華した成分がガラス表面に付着し、表面性状を悪化させる虞がある。Fが少なすぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスの着色が起こりやすい。
【0078】
ガラス粒子は、30〜100℃における熱膨張係数が20〜100×10−7/℃、30〜90×10−7/℃、特に40〜80×10−7/℃であるガラスからなることが好ましい。ガラスの熱膨張係数が低いほど、サーマルショックによる割れや強度劣化が起こりにくいことや、硬化時の収縮率が小さく、寸法精度の高い造形物を得ることができる。
【0079】
次に上記した樹脂組成物を用いた本発明の立体造形物の製造方法を、光造形法を用いて説明する。なお樹脂組成物は既述の通りであり、ここでは説明を省略する。
【0080】
まず光硬化性樹脂組成物からなる1層の液状層を用意する。例えば液状の光硬化性樹脂組成物を満たした槽内に、造形用ステージを設け、ステージ上面が液面から所望の深さ、(例えば0.2mm程度)となるように位置させる。このようにすることで、ステージ上に厚さ約0.1〜0.2mmの液状層を用意することができる。
【0081】
次にこの液状層に、活性エネルギー光線、例えば紫外線レーザーを照射して光硬化性樹脂を硬化させ、所定のパターンを有する硬化層を形成する。なお活性エネルギー光線としては、紫外線の他に、可視光線、赤外線等のレーザー光を用いることができる。
【0082】
続いて形成した硬化層上に、光硬化性樹脂組成物からなる新たな液状層を準備する。例えば、前記した造形用ステージを1層分下降させることにより、硬化層上に光硬化性樹脂を導入し、新たな液状層を用意することができる。
【0083】
その後、硬化層上に用意した新たな液状層に活性エネルギー線を照射して、前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する。
【0084】
以上の操作を繰り返すことによって硬化層を連続的に積層し、所定の立体造形物を得る。このようにして得られた立体造形物は、最大透過率が10%以上となり易く、20%以上、30%以上、50%以上、70%以上、特に80%以上となることが好ましい。また最大透過率Tmaxと最小透過率Tminの比Tmax/Tminが20%以下となり易く、8%以下、5%以下、特に3%以下であることが好ましい。
【0085】
続いて本発明の無機充填材を説明する。
【0086】
本発明の無機充填材はガラス粒子からなる。ガラス粒子の好適な特性、粒度、組成等は既述の通りであり、ここでは説明を割愛する。
【0087】
またガラス粒子の表面は、シランカップリング剤で処理されていることが好ましい。シランカップリング剤については既述の通りであり、ここでは説明を割愛する。
【0088】
さらに本発明の無機充填材は、光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法等の立体造形用途に好適に使用できる。また通常のシート状、或いはブロック状に成形される各種樹脂の充填材用途に使用することも可能である。例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂や、エポキシ、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル、シリコーン等の熱硬化性樹脂の充填材用途として使用することが可能である。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
以下に本発明の立体造形用樹脂組成物を実施例に基づいて説明する。表1は本発明の実施例(試料I〜III)を示している。
【0090】
【表1】
【0091】
まずイソホロンジイソシアネート、モルホリンアクリルアミドおよびジブチル錫ジラウレートをオイルバスで加熱した。グリセリンモノメタクリレートモノアクリレートにメチルヒドロキノンを均一に混合溶解させた液を入れ撹拌混合して、反応させた。ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド4モル付加物(ペンタエリスリトールの4個の水酸基にプロピレンオキサイドをそれぞれ1モル付加したもの)を加え、反応させて、ウレタンアクリレートオリゴマーとモルホリンアクリルアミドを含む反応生成物を製造した。
【0092】
得られたウレタンアクリレートオリゴマーとモルホリンアクリルアミドに、モルホリンアクリルアミド、ジシクロペンタニルジアクリレートを添加した。さらに、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)を添加し、無色透明なアクリル系光硬化性樹脂を得た。このアクリル系光硬化性樹脂は、粘度が1Pa・s、硬化後の屈折率ndが1.5103、アッベ数νdが51.2、ヌープ硬度が11であった。
【0093】
またガラスビーズA1及びA2は次のようにして作製した。質量%でSiO 50.3%、B 7%、Al 7.9%、KO 8.5%、Sb 0.4%、TiO 6.6%、Nb 0.6%、WO3 1.4%、KHF 17.3%含有するガラスとなるように調合した原料を溶融した後、粉砕し、平均粒径5μmの粉末ガラスを作製した。この粉末を酸素バーナーのフレームに当て、球状に成形した。その後、分級をすることで平均粒径5μmのガラスビーズA1を得た。同様に平均粒径30μmの粉末ガラスをビーズ化し、平均粒径30μmのガラスビーズA2を得た。得られたガラスビーズAの光学定数を測定したところ、屈折率ndが1.5111、アッベ数νdが51であった。
【0094】
続いて表1に示す割合で、アクリル系光硬化性樹脂にガラスビーズA1及びA2を添加し、3本ローラーにより混練を行い、均質にガラスビーズを分散させたペースト状樹脂を得た。このペースト状樹脂をテフロン(登録商標)製の内寸30mm□の型枠に流し入れた。その後、500mW、波長364nm)の光を照射して、硬化させ、80℃にてキュアを行った。
【0095】
このようにして得られた板材は機械的強度が高く、且つ透明性に優れていた。それゆえ試料I〜IIIの組成物を用い、光造形法にて立体造形物を作製すれば、高強度で透明性の高い造形物を得ることができる。
【0096】
なお光硬化性樹脂及びガラスビーズの屈折率ndやアッべ数νdは精密屈折率計(島津デバイス製KPR−2000)により測定した値である。
【0097】
光硬化性樹脂の粘度はブルックフィールド粘度計(DV−3)により測定した。
【0098】
透過率は、立体造形物を肉厚1mmで両面を鏡面研磨し、400nm〜800nmの透過波長における最大透過波長をmax、最大透過波長をTminとした。
【0099】
硬度は、ヌープ硬度計を用い、荷重50gで測定した。
(実施例2)
表2は本発明の実施例(試料IV)を示している。
【0100】
【表2】
【0101】
まずエポキシシクロヘキシルメチル、エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ブタンジオールジグリシジルエーテル、フェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート を仕込み、約1時間撹拌混合した。その後、ヘキサフルオロアンチモネートを添加し、エポキシ系光硬化性樹脂を作製した。このエポキシ系光硬化性樹脂は、粘度が1Pa・s、硬化後の屈折率ndが1.5713、アッベ数νdが35.7、ヌープ硬度が12であった。
【0102】
またガラスビーズBは次のようにして作製した。質量%でSiO 53.6%、B 4.3%、Al 5.5%、MgO 18.4%、CaO 0.9%、NaO 0.5%、SO 16.8%含有するガラスとなるように調合した原料を溶融した後、粉砕し、平均粒径5μmの粉末ガラスを作製した。この粉末を酸素バーナーのフレームに当て、球状に成形した。その後、分級をすることで平均粒径5μmのガラスビーズBを得た。得られたガラスビーズBの光学定数を測定したところ、屈折率ndが1.5852、アッベ数νdが39であった。
【0103】
続いて表2に示す割合でエポキシ系光硬化性樹脂組成物にガラスビーズBを添加し、実施例1と同様にして試料を作成し、硬化させた。その結果、得られた板材は、機械的強度が高く、且つ透明性に優れていた。それゆえ試料IIIの組成物を用い、光造形法にて立体造形物を作製すれば、高強度で透明性の高い造形物を得ることができる。
(比較例1)
表3は本発明の比較例(試料V)を示している。
【0104】
【表3】
【0105】
表3に示す割合で、実施例1で使用したアクリル系光硬化性樹脂に実施例2で作製したガラスビーズBを添加し、実施例1と同様にして試料を作成し、硬化させた。その結果、得られた板材は、屈折率が整合しておらず、不透明な外観であった。
(比較例2)
表4は本発明の比較例(試料VI)を示している。
【0106】
【表4】
【0107】
ガラスビーズCは次のようにして作製した。質量%でSiO 52%、B 7%、Al 14.0%、MgO 0.4%、CaO 25%、SrO 0.2%、NaO 0.6%、KO 0.1%、TiO 0.3%、F 0.2%、Fe 0.1%含有するガラスとなるように調合した原料を溶融した後、平均径5μmの粉末ガラスを作製した。この粉末を酸素バーナーのフレームに当て、球状に成形した。その後、分級をすることで平均粒径5μmのガラスビーズCを得た。得られたガラスビーズCの光学定数を測定したところ、屈折率ndが1.5657、アッベ数νdが58.5であった。
【0108】
表4に示す割合で、実施例3で使用したエポキシ系光硬化性樹脂にガラスビーズCを添加し、実施例3と同様にして試料を作成し、硬化させた。その結果、得られた板材は、アッベ数が整合していないため、虹色着色のある外観であった。
(実施例4)
表5、6は、本発明の無機充填材粒子の実施例(試料No.1〜26)を示している。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
各試料は次のようにして調製した。まず表中の組成となるように調合した原料を溶融した後、粉砕し、平均粒径5μmの粉末ガラスを作製した。この粉末を酸素バーナーのフレームに当て、球状に成形した。その後、分級をすることで平均粒径5μmのビーズ状試料を得た。
【0112】
得られた試料の光学定数を測定したところ、試料No.1〜15、17、20〜24は、屈折率ndが1.496〜1.59、アッベ数νdが45.5〜64.0であり、ビニル系樹脂に整合した光学定数を有していた。また試料No.5〜12、16〜22、25〜27は、屈折率ndが1.520〜1.795、アッベ数νdが33.0〜52.2であり、エポキシ系樹脂に整合した光学定数を有していた。また試料No.1〜5、7〜9、11、13、14、17、23は、屈折率ndが1.512〜1.590、アッベ数νdが50.5〜60.0であり、ABS樹脂に整合した光学定数を有していた。
【0113】
なお熱膨張係数はDILATO METERにて測定した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の立体造形用樹脂組成物は、硬化後の硬化性樹脂組成物とガラスビーズの光学定数が整合しており、光造形法、粉末焼結法等を用いて立体造形物を作製すれば、透明性の高い造形物を得ることができる。
【0115】
また本発明の無機充填材粒子は、硬化性樹脂と光学定数が整合することから、透明な樹脂成形体を得ることが可能である。