(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<記録材処理システムの構成>
図1は、本実施形態が適用される記録材処理システム500の構成を示した図である。
画像処理装置の一つとして機能する記録材処理システム500には、画像形成部にて用紙Pなどの記録材(シート)に対して電子写真方式等を用いて画像を形成する画像形成装置1、画像形成装置1により画像が形成された複数枚の用紙Pに対して後処理を行う後処理装置2が設けられている。
【0009】
画像形成装置1は、各色画像データに基づいて画像形成を行う4つの画像形成ユニット100Y、100M、100C、100K(「画像形成ユニット100」とも総称する)を備える。また、画像形成装置1には、各画像形成ユニット100に設けられた感光体ドラム107を露光し、感光体ドラム107の表面に静電潜像を形成するレーザ露光装置101が設けられている。
【0010】
また、画像形成装置1には、各画像形成ユニット100にて形成された各色のトナー像が多重転写される中間転写ベルト102、各画像形成ユニット100にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト102に順次転写(一次転写)する一次転写ロール103が設けられている。さらに、中間転写ベルト102上に転写された各色トナー像を用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール104、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着する定着装置105、画像形成装置1の動作を制御する本体制御部106が設けられている。
【0011】
各画像形成ユニット100では、感光体ドラム107の帯電、感光体ドラム107への静電潜像の形成が行われる。そして、静電潜像の現像が行われて、感光体ドラム107の表面には、各色のトナー像が形成される。
感光体ドラム107の表面に形成された各色トナー像は、一次転写ロール103により中間転写ベルト102上に順次転写される。そして、各色トナー像は、中間転写ベルト102の移動に伴って二次転写ロール104が設置された位置へ搬送される。
【0012】
画像形成装置1の用紙収容部110A〜110Dには、異なるサイズや異なる種類の用紙Pが収容されている。そして、例えば、ピックアップロール111により用紙収容部110Aから用紙Pが取り出され、搬送ロール112によってレジストロール113まで搬送される。
そして、中間転写ベルト102上の各色トナー像が二次転写ロール104に搬送されるタイミングに合わせて、二次転写ロール104と中間転写ベルト102とが対向する対向部(二次転写部)に対してレジストロール113から用紙Pが供給される。
そして、中間転写ベルト102上の各色トナー像が、二次転写ロール104により形成された転写電界の作用によって、用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
【0013】
その後、各色トナー像が転写された用紙Pは、中間転写ベルト102から剥離されて定着装置105へ搬送される。定着装置105では、熱および圧力による定着処理により、各色トナー像が用紙P上に定着され、用紙P上に画像が形成される。
そして、画像が形成された用紙Pは、搬送ロール114によって画像形成装置1の用紙排出部Tから排出され、画像形成装置1に接続された後処理装置2へ供給される。
後処理装置2は、画像形成装置1の用紙排出部Tの下流側に配置され、画像が形成された用紙Pに対して穴あけや綴じ等の後処理を行う。
【0014】
<後処理装置の構成>
図2は、後処理装置2の構成を説明するための図である。
図2に示すように、後処理装置2は、画像形成装置1の用紙排出部Tに接続されたトランスポートユニット21、トランスポートユニット21により搬送されてきた用紙Pに対して予め定められた処理を施すフィニッシャユニット22を備える。
【0015】
また、後処理装置2は、後処理装置2の各機構部を制御する用紙処理制御部23を備える。用紙処理制御部23は、不図示の信号ラインで本体制御部106(
図1参照)に接続され、相互に制御信号等の送受信を行う。
また、後処理装置2は、後処理装置2による処理が終了した用紙P(用紙束B)が積載されるスタッカー部80を備える。
【0016】
図2に示すように、後処理装置2のトランスポートユニット21には、2穴や4穴等の穴あけ(パンチ)を施すパンチ機能部30が設けられている。
さらに、トランスポートユニット21には、画像形成装置1にて画像形成された後の用紙Pをフィニッシャユニット22に向けて搬送する複数の搬送ロール211が設けられている。
【0017】
フィニッシャユニット22には、記録材束の一例としての用紙束Bに対する綴じ処理を行う綴じ処理装置600が設けられている。本実施形態の綴じ処理装置600は、綴じ部の一つとして機能し、ステープル(針)を用いずに用紙束Bに対する綴じ処理を行う。
【0018】
綴じ処理装置600には、用紙Pを下方から支持するとともに用紙Pを必要枚数だけ集積させて用紙束Bを生成する用紙集積部60が設けられている。また、綴じ処理装置600には、用紙束Bに対して綴じ処理を行う綴じユニット50が設けられている。なお、用紙集積部60は、記録材束である用紙束Bを保持する保持部の一つとして機能する。
本実施形態では、綴じユニット50に設けられた進出部材(後述)を用紙束Bの両面側から用紙束Bに押し当てることで、用紙束Bを構成する用紙Pを互いに圧着させ(用紙Pを構成する繊維同士を絡ませ)、用紙束Bに対する綴じ処理を行う。
【0019】
また、綴じ処理装置600には、搬出ロール61および移動ロール62が設けられている。搬出ロール61は、図中時計回り方向に回転し、用紙集積部60上の用紙束Bをスタッカー部80へ送る。
移動ロール62は、回転軸62aを中心に移動可能に設けられ、用紙Pを用紙集積部60に集積させる際には搬出ロール61から退避した箇所に位置する。また、生成された用紙束Bをスタッカー部80へ送る際には、用紙集積部60上の用紙束Bに押し当てられる。
【0020】
後処理装置2にて行われる処理について説明する。
本実施形態では、本体制御部106から用紙処理制御部23に対し、用紙Pに対する処理を実行する旨の指示信号が出力される。用紙処理制御部23がこの指示信号を受信することで、後処理装置2が用紙Pに対する処理を実行する。
【0021】
後処理装置2での処理では、まず、後処理装置2のトランスポートユニット21に対し、画像形成装置1により画像形成が行われた用紙Pが供給される。トランスポートユニット21では、用紙処理制御部23からの指示信号に応じてパンチ機能部30による穴あけが行われた後、搬送ロール211によって、フィニッシャユニット22に向けて用紙Pが搬送される。
なお、用紙処理制御部23からの穴あけ指示が無い場合、用紙Pは、パンチ機能部30による穴あけ処理は行われずにフィニッシャユニット22へ送られる。
【0022】
フィニッシャユニット22に送られた用紙Pは、綴じ処理装置600に設けられた用紙集積部60へ搬送される。そして、用紙Pは、用紙集積部60に付与された傾斜角によって用紙集積部60の上をスライド移動し、用紙集積部60の端部に設けられた用紙規制部64に突き当たる。
【0023】
これにより用紙Pは移動を停止する。本実施形態では、用紙規制部64に用紙Pが突き当たることで、用紙Pの後端部が揃えられた状態の用紙束Bが用紙集積部60上に生成される。なお、本実施形態では、用紙Pを用紙規制部64に向けて移動させる回転パドル63が設けられている。
【0024】
<綴じ処理装置の構成>
図3は、綴じ処理装置600を上方から見た図である。
用紙集積部60の幅方向における両端部には、第1移動部材81が設けられている。
第1移動部材81は、用紙束Bを構成する用紙Pの側辺に押し当てられ、用紙束Bを構成する用紙Pの端部の位置を揃える。また、第1移動部材81は、用紙束Bの幅方向に移動し、用紙束Bの幅方向へ用紙束Bを移動させる。
【0025】
具体的には、本実施形態では、用紙Pが用紙集積部60に集積される際、用紙Pの側辺に第1移動部材81が押し当てられ、用紙Pの側辺の位置が揃えられる。
また、後述するように、用紙束Bの綴じ位置が変更される場合には、第1移動部材81によって用紙束Bが押圧され、用紙束Bの幅方向に用紙束Bが移動する。
【0026】
さらに、本実施形態の綴じ処理装置600には、第2移動部材82が設けられている。
第2移動部材82は、図中上下方向に移動し、用紙束Bの幅方向と直交する方向に用紙束Bを移動させる。
さらに、本実施形態では、第1移動部材81、第2移動部材82を移動させる移動用モータM1が設けられている。
【0027】
図3の矢印4Aで示すように、綴じユニット50は、用紙Pの幅方向に移動可能に設けられている。そして、綴じユニット50は、例えば、用紙束Bの幅方向において異なる箇所に位置する2点((A)位置と(B)位置)に対して、綴じ処理(2点綴じ処理)を行う。
また、綴じユニット50は、
図3の(C)位置へ移動し、用紙束Bの角部に対して綴じ処理(1点綴じ)を行う。
なお、(A)位置と(B)位置との間では、綴じユニット50は直線的に移動するが、(A)位置と(C)位置との間では、綴じユニット50は、例えば45°の回転を伴いながら移動する。
【0028】
用紙規制部64は、コ字状に形成される。このコ字状の内側にて、底板60Aから上方に伸びる規制部(図示せず)が設けられ、この規制部にて、搬送されてきた用紙Pの先端部に接触し用紙Pの移動を規制する。また、コ字状に形成される用紙規制部64は、底板60Aに対向配置される対向部60Cを有している。この対向部60Cは、用紙束Bのうちの最上位の用紙Pに接触して、用紙束Bの厚み方向における用紙Pの移動を規制する。
【0029】
本実施形態では、用紙規制部64、第2移動部材82が設けられていない箇所にて、綴じユニット50による綴じ処理が行われる。
具体的には、
図3に示すように、図中左側に位置する用紙規制部64と第2移動部材82との間、および、図中右側に位置する用紙規制部64と第2移動部材82との間にて、綴じユニット50による綴じ処理が行われる。さらに、本実施形態では、図中右側の用紙規制部64に隣接する箇所(用紙束Bの角部)にて綴じ処理が行われる。
【0030】
なお、
図3に示すように、底板60Aには、3つの切り欠き60Dが設けられている。これにより、用紙集積部60と綴じユニット50との干渉が避けられる。
また、本実施形態では、綴じユニット50が移動する際、第2移動部材82は、
図3の符号4Bで示す位置へ移動する。これにより、綴じユニット50と第2移動部材82との干渉が避けられる。
【0031】
図4(A)、(B)は、
図3のIV−IV線における断面図である。
図4(A)に示すように、綴じユニット50は、図中左右方向に伸びる第1駆動部51、同じく図中左右方向に伸びる第2駆動部52、第1駆動部51と第2駆動部52との間に配置された楕円状のカム53、カム53を駆動するカムモータM2を備える。
【0032】
第1駆動部51には、駆動片511が設けられている。駆動片511は、板状に形成され、用紙束B側に一端部を有し、一端部とは反対側に他端部を有する。
本実施形態では、駆動片511のこの一端部に、上歯540が取り付けられている。上歯540は、用紙束Bの一方の面側から用紙束Bに向かって進出してこの用紙束Bを押圧する。また、駆動片511には、第2駆動部52側に向かって突出する突出部511Bが設けられ、さらに、この突出部511Bには、貫通孔511Aが形成されている。
【0033】
図4(A)に示すように、第2駆動部52は、駆動片521を備える。
駆動片521は、板状に形成され、用紙束B側に一端部を有し、一端部とは反対側に他端部を有する。本実施形態では、この駆動片521の一端部に、下歯550が取り付けられている。下歯550は、用紙束Bの他方の面に向かって進出して用紙束Bを押圧する。
また、駆動片521には、第1駆動部51側に向かって突出する突出部521Bが設けられ、この突出部521Bには、貫通孔(第1駆動部51の貫通孔511Aの背面に位置、不図示)が形成されている。
【0034】
また、本実施形態では、第1駆動部51に設けられた貫通孔511Aおよび第2駆動部52に設けられた貫通孔(不図示)に対して、ピンPNが通されている。本実施形態では、このピンPNを中心に、駆動片511および駆動片521が揺動する。
さらに、本実施形態では、ピンPNよりも用紙束B側に上歯540および下歯550が設けられ、ピンPNを挟み用紙束Bが設けられている側とは反対側に、カム53が設けられている。
【0035】
本実施形態では、カムモータM2によりカム53が回転すると、
図4(B)に示すように、上歯540および下歯550が互いに接近するように移動し、上歯540および下歯550によって、用紙束Bが挟まれ、用紙束Bに圧力が加わる。これにより、用紙束Bを構成する用紙Pの繊維が絡むようになり、隣接する用紙P同士が接合され、綴じ処理が行われた用紙束Bが生成される。本実施形態では、上歯540と下歯550とを有する構造が、綴じ部材の一つとして機能している。
図4に示す綴じユニット50を綴じ部材の一つとして把握することも可能である。なお、綴じユニット50の具体的構成、特に上歯540と下歯550とを接近させて用紙束Bを挟むための機構については、
図4を参照して説明した構成には限定されない。上歯540および下歯550により用紙束Bを挟んで加圧することが可能な種々の構成を採り得る。
【0036】
<綴じユニットの歯の構成>
図5は、本実施形態の綴じユニット50における第1駆動部51の駆動片511および第2駆動部52の駆動片521の部分を拡大した斜視図である。
駆動片511には上歯540が設けられ、駆動片521には下歯550が設けられている。上歯540は、駆動片511の第2駆動部52と対向する側の、下歯550と対応する位置に設けられている。下歯550は、駆動片521の第1駆動部51と対向する側の、上歯540と対応する位置に設けられている。
【0037】
図5に示すように、上歯540および下歯550は、尾根状の凸部541、551と溝状の凹部542、552とを交互に並べて配置してあり、全体として、凸部541、551および凹部542、552の長さを幅とする帯状に形成されている。また、上歯540の凸部541と下歯550の凹部552、上歯540の凹部542と下歯550の凸部551は、駆動片511と駆動片521とが接近した時に、それぞれ噛み合うように配置されている。
【0038】
<綴じ処理装置の歯の形状>
図6は、
図5に示した駆動片511、521のVI−VI断面の拡大図である。
図6を参照して、綴じ処理装置600における綴じユニット50に設けられる歯(上歯540および下歯550)の形状の一例を説明する。
図6(A)は、駆動片511、521の間が開いた状態を示す図であり、
図6(B)は、駆動片511、521を接近させ、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを噛み合わせた状態を示す図である。
【0039】
図6(A)を参照して、上歯540の凸部541の形状を説明する。
図6(A)に示す例において、凸部541は、角を丸めた台形の断面形状となっている。すなわち、凸部541は、平面の頂上面541aと、斜面である側面541bと、頂上面541aおよび側面541bをつなぐ凸曲面541cとで形成される。そして、凸部541は、
図6(A)に示す断面において、頂上面541aを等分する直線α(すなわち、凸部541の中心を通る仮想線α)に対して線対称の形状となっている。また、
図6(A)に示す例において、側面541bは平面である。なお、下歯550の凸部551も同様に形成される。すなわち、凸部551は、頂上面551aと、側面551bと、凸曲面551cとで形成される。
【0040】
図6(A)を参照して、下歯550の凹部552の形状を説明する。
図6(A)に示す例において、凹部552は、平面の底面552aと、側壁である第1側面552bおよび第2側面552cと、底面552aおよび第1側面552bをつなぐ凹曲面552dと、第1側面552bおよび第2側面552cをつなぐ凸曲面552eとで形成される。そして、凹部552は、
図6(A)に示す断面において、底面552aを等分する直線αに対して線対称の形状となっている。また、
図6(A)に示す例において、第2側面552cは、凸部541の側面541bと等しい角度で傾斜した平面である。また、第1側面552bは、第2側面552cよりも深い角度(底面552aに対する角度が第2側面552cと底面552aとのなす角度よりも大きい)をなす平面である。なお、上歯540の凹部542も同様に形成される。すなわち、凹部542は、底面542aと、第1側面542bと、第2側面542cと、凹曲面542dと、凸曲面542eとで形成される。
【0041】
付言すると、
図6(A)に示す上歯540および下歯550において、凸部541、551と凹部542、552とを構成する面の一部は、隣り合う凸部541、551と凹部542、552とに共有されている。具体的には、上歯540において、隣り合う凸部541と凹部542とに着目すると、凸部541の斜面である側面541bは、この凸部541と隣り合う凹部542の第2側面542cになっている。同様に、下歯550において、隣り合う凸部551と凹部552とに着目すると、凸部551の斜面である側面551bは、この凸部551と隣り合う凹部552の第2側面552cになっている。
【0042】
図6(B)を参照して、上歯540および下歯550の凸部541、551と凹部552、542との関係をさらに説明する。
図6(B)に示すように、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを接近させると、上歯540の凸部541が下歯550の凹部552に、下歯550の凸部551が上歯540の凹部542に、それぞれ嵌まり込む。そして、同じ角度で傾斜する凸部541、551の側面541b、551bと、凹部552、542の第2側面552c、542cとが当たることにより、上歯540と下歯550とが噛み合わされる。
【0043】
また、凹部542、552には、第1側面542b、552bおよび凸曲面542e、552eが設けられている。このため、
図6(B)に示すように、上歯540と下歯550とが噛み合わされた状態で、凸部551、541における頂上面551a、541aの近傍に空隙が生じている。
【0044】
図7は、
図6(A)に示す下歯550の凹部552の拡大図である。
図8は、
図6(B)に示す上歯540および下歯550の拡大図である。
図7および
図8を参照して、
図6(B)に示した凸部541、551と凹部552、542の間の空隙について、さらに詳細に説明する。
図7に示すように、下歯550の凹部552には、第1側面552bおよび凸曲面552eが設けられている。これにより、凹部552には、底面552aの両側部に、第2側面552cを延長した仮想線βよりも窪んだ窪み領域Sが形成されている。言い換えれば、この窪み領域Sは、仮想線βにより形成される仮想的な領域に対して、より幅の広い領域として形成される。そして、上述したように、上歯540と下歯550とを噛み合わせると、上歯540の凸部541の側面541bと、下歯550の凹部552の第2側面552cとが当たる。このとき、凹部552に窪み領域Sが形成されていることにより、
図8に示すように、凹部552の第1側面552bおよび底面552aと、凸部541の側面541bとに囲まれた空隙が形成される。
【0045】
なお、
図7には下歯550の凹部552のみが示されているが、上歯540の凹部542においても同様である。すなわち、底面542aの両側部に、第2側面542cを延長した仮想線よりも窪んだ窪み領域が形成される。また、
図8には上歯540の凸部541と下歯550の凹部552との組み合わせのみが示されているが、下歯550の凸部551と上歯540の凹部542との組み合わせにおいても同様である。すなわち、凹部542の第1側面542bおよび底面542aと、凸部551の側面551bとに囲まれた空隙が形成される。
【0046】
上歯540と下歯550とを噛み合わせた時に生じる空隙について、さらに説明する。この空隙は、上述したように、凸部541、551の側面541b、551bと凹部552、542に形成された窪み領域Sとによって形成される。そして、凹部552、542の窪み領域Sは、凹部552、542に凸曲面552e、542eが設けられており、凹部552、542の側面を第1の斜面としての第1側面552b、542bと第2の斜面としての第2側面552c、542cとに分けていることにより形成される。ここで、第1の曲面である凹曲面552d、542dが凹面であるのに対し、第2の曲面である凸曲面552e、542eは凸面である。すなわち、凹曲面552d、542dの曲率中心と凸曲面552e、542eの曲率中心とは、凹部552、542の表面に対して反対側に存在する。したがって、本実施形態によれば、凹部552、542の側面(第1側面552b、542b、第2側面552c、542c)上に、凹部552、542の溝形状を形成するための凹面である凹曲面552d、542dの曲率中心側とは反対側に曲率中心を有する凸曲面552e、542eが設けられていることにより、窪み領域Sが形成され、上歯540と下歯550とを噛み合わせた時に空隙が生じる。
【0047】
さらに、上記のようにして窪み領域Sが形成されることにより、上歯540と下歯550とを噛み合わせた時に生じる空隙において、凹部552、542の底面552a、542aと凸部541、551の側面541b、551bとの間には、次のような関係が成立する。すなわち、
図8に示すように、凸部541、551において、頂上面541a、551aを等分する直線αに対して直交する方向で、この直線αから側面541b、551bの表面までの距離が距離L1である側面541b、551b上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離を距離H1とする。また、直線αから側面541b、551bの表面までの距離が距離L2である側面541b、551b上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離を距離H2とする。そして、L1<L2であるとき、H1<H2となるようなL1、L2の組み合わせが必ず存在する。なお、L1<L2であるような全てのL1、L2において、H1<H2となるとは限らない。
【0048】
また、上歯540と下歯550とを噛み合わせた時に生じる空隙について、
図8を参照して別の観点から見ると、凹部552、542には、幅広の溝が形成されており、この溝により、上歯540と下歯550とを噛み合わせた時に空隙が生じると把握することができる。言い換えれば、凹部552、542の側面(第1側面552b、542b、第2側面552c、542c)の一部に、凸部541、551の側面541b、551bに比べて、上歯540および下歯550の移動方向(用紙束Bに対する押圧方向)と直交する方向に広がる斜面としての第1側面552b、542bが設けられていると把握することができる。
【0049】
ここで、
図6(A)、(B)および
図7に示した本実施形態の上歯540および下歯550による作用を、上記の窪み領域Sが形成されない歯型との比較において説明する。
図9は、凹部に窪み領域Sが形成された歯型による綴じ処理と、凹部に窪み領域Sが形成されない歯型による綴じ処理とを比較する図である。
図9(A)は、凹部に窪み領域Sが形成された本実施形態の上歯540と下歯550との間に用紙束Bを挟んで圧力を加えた状態を示す図、
図9(B)は、比較対象として、凹部に窪み領域Sが形成されない上歯560と下歯570との間に用紙束Bを挟んで圧力を加えた状態を示す図である。
【0050】
上歯と下歯との間に用紙束Bを挟んだ状態から、
図9(A)に示すように、上歯540と下歯550とを接近させて用紙束Bに圧力を加えていくと、用紙束Bは上歯540および下歯550の凸部541、551に押されて凸部541、551の形状に沿って変形する。そして、用紙束Bに対してさらに圧力を加えることにより、用紙束Bの用紙Pが伸びて用紙Pの繊維の一部が破断する。そして、用紙束Bに対してさらに圧力を加えることにより、重なった用紙Pの間で、破断した各用紙Pの繊維が絡まり合って、用紙Pどうしが結着する。
図9(B)の場合も同様に、上歯560と下歯570とを接近させて用紙束Bに圧力を加えることにより、用紙束Bが凸部561、571の形状に沿って変形し、用紙Pが伸びて用紙Pの繊維が破断する。そして、重なった用紙Pの間で、破断した各用紙Pの繊維が絡まり合って、用紙Pどうしが結着する。
【0051】
図9(A)において、用紙束Bに対して圧力を加える部分の一つは、上歯540および下歯550の凸部541、551における側面541bと凹部552、542の第2側面552c、542cとが重なる範囲R1である。また、用紙束Bに対して圧力を加える部分の他の一つは、凸部541、551における頂上面541a、551aと凹部552、542における底面552a、542aとが重なる範囲R2である。同様に、
図9(B)において、用紙束Bに対して圧力を加える部分の一つは、上歯560および下歯570の凸部561、571における側面561b、571bと凹部572、562の面572c、562cとが重なる範囲R3である。また、用紙束Bに対して圧力を加える部分の他の一つは、凸部561、571における頂上面561a、571aと凹部572、562における底面572a、562aとが重なる範囲R4である。
【0052】
ここで、
図9(A)と
図9(B)とを比較すると、
図9(A)では、凹部542、552に窪み領域Sが存在することにより、範囲R1の面積は、凹部562、572に窪み領域Sが存在しない
図9(B)の場合の範囲R3の面積よりも小さい。上歯540、560と下歯550、570とを接近させる綴じユニット50の駆動力が等しい場合、用紙束Bに対して圧力を加える部分の面積が小さい
図9(A)の構成の方が、用紙束Bにかかる圧力が大きくなる。
【0053】
また、
図9(A)では、凹部542、552に窪み領域Sが存在するため、用紙Pは、加圧されて伸びた際に、撓んで、窪み領域Sにより形成された空隙へ逃げることができる。これに対し、図(B)では、凹部562、572に窪み領域Sが存在しないため、用紙Pは、加圧されて伸びた際に、撓んで逃げることができない。このため、上歯540、560と下歯550、570とを接近させる綴じユニット50の駆動力が等しい場合であっても、凹部542、552に窪み領域Sがある
図9(A)の構成では、窪み領域Sがない
図9(B)の構成よりも用紙Pが伸びやすくなり、用紙Pの繊維が破断して絡まり合いやすくなる。このため、用紙束Bにおいて、
図9(A)の構成における範囲R1で加圧された箇所は、同じ力で、
図9(A)の構成における範囲R3で加圧された箇所よりも強い結着力で綴じられることになる。
【0054】
ここで、凹部542、552において、第1側面542b、552bと底面542a、552aとのなす角度は、第2側面542c、552cと底面542a、552aとのなす角度よりも大きいとしたが、さらに、第1側面552bと底面552aとのなす角度が90°よりも小さくなるようにしても良い。このようにすれば、上歯540と下歯550とで用紙束Bに圧力を加えた後、用紙束Bを綴じユニットから外す際に、窪み領域Sへ逃げた用紙束Bを外すための負荷が減る。このため、用紙束Bの綴じられた箇所(決着した部分)の緩みが少なくなる。
【0055】
なお、上述した上歯540および下歯550の凸部541、551および凹部542、552において、各平面を曲面(凸部541、551の凸曲面541c、551c、凹部542、552の凹曲面542d、552dおよび凸曲面542e、552e)でつないでいる。このように、凸部541、551および凹部542、552に角を設けず、曲面でつなぐことにより、用紙束Bに圧力を加えた際に、凸部541、551および凹部542、552の角によって用紙束Bの用紙Pが切れることが抑制される。
【0056】
また、上記の構成では、上歯540および下歯550のどちらも凹部542、552に窪み領域Sが形成されることとしたが、上歯540および下歯550のどちらか一方のみにおいて、凹部(凹部542または凹部552)に窪み領域Sを形成するようにしても良い。この場合であっても、窪み領域Sが形成された凹部において、対向する凸部と噛み合わされた際に生じる空隙に用紙束Bが逃げることができるため、用紙束Bの結着力が高まる。
【0057】
<綴じ処理装置の歯の変形例>
本実施形態は、上歯540と下歯550とを噛み合わせた際に生じる空隙に、上歯540と下歯550との間に挟まれて加圧された用紙束Bが逃げることを可能とし、用紙束Bの用紙Pが伸びやすくなることにより、用紙束Bの綴じ力(結着力)を高める。したがって、綴じユニット50における上歯540および下歯550は、噛み合わせた際に上述した空隙が生じる形状であれば良く、その具体的形状は、
図6乃至
図9を参照して説明した形状には限定されない。以下に、上歯540および下歯550の変形例を説明する。
【0058】
図10−1は、本実施形態の綴じユニット50における上歯540および下歯550の変形例を示す図である。
図10−1(A)は、綴じユニット50における駆動片511、521の間が開いた状態を示す図であり、
図10−1(B)は、駆動片511、521を接近させ、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを噛み合わせた状態を示す図である。
図6乃至
図9を参照して説明した上歯540および下歯550では、凸部541、551の断面形状が台形であった。これに対し、
図10−1(A)に示す上歯540および下歯550では、凸部543、553は、凸部543、553の頂点を含む凸曲面543a、553aと、斜面である側面543b、553bとで形成されている。言い換えれば、この凸部543、553は、
図6(A)に示した凸部541、551における平面の頂上面541a、541bの幅が0となり、頂上面541a、551aの両側の凸曲面541c、551cがつながって凸曲面543a、553aになった形状として把握することができる。
【0059】
図10−1(A)に示す凹部542、552は、
図6(A)に示した凹部542、552と同様であり、同一の符号を付している。すなわち、この凹部542、552は、底面542a、552aと、第1側面542b、552bと、第2側面542c、552cと、凹曲面542d、552dと、凸曲面542e、552eとで形成される。したがって、凸曲面542e、552eおよび第1側面542b、552bにより窪み領域Sが形成されている。そして、この窪み領域Sにより、上歯540と下歯550とが噛み合わされた状態で、
図10−1(B)に示すように、凸部543、553における凸曲面543a、553aの近傍に空隙が生じる。
【0060】
また、特に図示しないが、
図10−1(B)を参照して明らかなように、上記の空隙に関して、凸部543、553の凸曲面543a、553aと凹部552、542の底面552a、542aとの関係においても、
図8を参照して説明した、L1、L2とH1、H2との関係が成立する。すなわち、凸曲面543a、553aを等分する直線αに対して直交する方向で、この直線αから凸曲面543a、553aの表面までの距離が距離L1である凸曲面543a、553a上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離を距離H1とする。また、直線αから凸曲面543a、553aの表面までの距離が距離L2である凸曲面543a、553a上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離を距離H2とする。そして、L1<L2であるとき、H1<H2となるようなL1、L2の組み合わせが必ず存在する。一例として、
図10−1に示す例において、下歯の凸部553および対向する上歯の凹部542に着目する。そして、歯の凸部の中心に位置する頂点と、歯の中心から歯の押圧方向に垂直な方向に離れた位置における、歯の押圧方向の凹部と凸部との離間距離を考える。この場合、頂点位置では、L1=0となる。また、凸部の頂点は凸部の最も高い場所であるので、頂点位置におけるH1は、窪み領域Sにおける凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離のうちで最も短い。したがって、L1<L2であるときにH1<H2となることが成立する。
【0061】
以上のように構成された歯型によっても、上歯540と下歯550とが噛み合わされた状態で、凸部543、553における凸曲面543a、553aの近傍に空隙が生じるため、用紙束Bの用紙Pは、加圧されて伸びた際に、撓んで、窪み領域Sにより形成された空隙へ逃げることができる。これにより、用紙束Bは、窪み領域Sによる空隙が生じない歯を用いて加圧された場合と比較して、より強い結着力で綴じられることになる。
【0062】
ここで、この変形例における窪み領域Sの形状について、さらに詳細に説明する。この変形例では、窪み領域Sを形成する凸曲面542e、552eの位置に応じて、窪み領域Sの形状に関して複数の態様が考えられる。凸曲面542e、552eの位置は、凸部543、553の凸曲面543a、553aが形成される位置、すなわち、凸部543、553が第2側面542c、552cを延長した仮想線βから離れる位置との関係で、複数の異なる位置を取り得る。以下、各々の態様について説明する。
【0063】
図10−2は、
図10−1に示す歯の変形例における窪み領域Sの形状の一態様を示す図である。
図10−2に示す例では、凹部552上の、第2側面552cを延長した仮想線βから凸部543が離れる位置SPに対応する位置に、凸曲面552eが形成されている。すなわち、位置SPと凸曲面552eの位置とが一致している。なお、図示の例では、対向する下歯の凹部552および上歯の凸部543の間で形成される窪み領域Sの形状について説明したが、対向する上歯の凹部542および下歯の凸部553の間で形成される窪み領域Sの形状についても同様である。
【0064】
図10−3は、
図10−1に示す歯の変形例における窪み領域Sの形状の他の一態様を示す図である。
図10−3に示す例では、凹部552上の、第2側面552cを延長した仮想線βと凸部543とが重なる位置に、凸曲面552eが形成されている。したがって、仮想線βから凸部543が離れる位置SPは、凸部543上の、凸曲面552eに対応する位置よりも先端側に位置している。なお、図示の例では、対向する下歯の凹部552および上歯の凸部543の間で形成される窪み領域Sの形状について説明したが、対向する上歯の凹部542および下歯の凸部553の間で形成される窪み領域Sの形状についても同様である。
【0065】
図10−4は、
図10−1に示す歯の変形例における窪み領域Sの形状の他の一態様を示す図である。
図10−4に示す例では、凹部552上の、第2側面552cを延長した仮想線βから凸部543が離れる位置SPよりも、仮想線βの交点Iに近い位置に凸曲面552eが形成されている。したがって、位置SPは、凸部543が対向する凹部552の第2側面552cに接している位置にある。なお、図示の例では、対向する下歯の凹部552および上歯の凸部543の間で形成される窪み領域Sの形状について説明したが、対向する上歯の凹部542および下歯の凸部553の間で形成される窪み領域Sの形状についても同様である。
【0066】
図10−5は、
図10−1に示す歯の変形例における窪み領域Sの形状の他の一態様を示す図である。
図10−5に示す例では、凸部543、553における側面543b、553bと、隣接する凹部542、552における第1側面542b、552bとが滑らかにつながっている。そして、
図10−1に示す歯には存在する、平面である第2側面542c、552cおよび凸曲面542e、552eが存在しない。このような形状の場合、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを噛み合わせると、凸部543、553と対向する凹部552、542とは、1点で接する。この凸部543、553と凹部552、542とが接する点(接触点)CPは、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを噛み合わせた際に凸部543、553と凹部552、542とが接触する部位(接触部位)の一例として把握することができる。そこで、この接触点CPに接する接線を想定し、この接線を仮想線βとする。この構成例においては、凸部543、553および凹部552、542のいずれも、この接触点CPで仮想線βと接する。そして、凹部552、542に、仮想線βよりも窪んだ窪み領域Sが形成される。
【0067】
<綴じ処理装置の歯の他の変形例>
図11は、本実施形態の綴じユニット50における上歯540および下歯550の他の変形例を示す図である。
図11(A)は、綴じユニット50における駆動片511、521の間が開いた状態を示す図であり、
図11(B)は、駆動片511、521を接近させ、用紙束Bを挟まずに上歯540と下歯550とを噛み合わせた状態を示す図である。
図6乃至
図9を参照して説明した上歯540および下歯550では、凹部542、552に平面の底面542a、552aが設けられていた。これに対し、
図11(A)に示す上歯540および下歯550では、凹部544、554は、凹曲面544a、554aと、側壁である第1側面544b、554bおよび第2側面544c、554cと、第1側面544b、554bおよび第2側面544c、554cをつなぐ凸曲面544d、554dとで形成されている。言い換えれば、この凹部544、554は、
図6(A)に示した凹部542、552における平面の底面542a、552aの幅が0となり、底面542a、552aの両側の凹曲面542d、552dがつながって凹曲面544a、554aになった形状として把握することができる。
図11(A)を参照して明らかなように、凹部544、554には、凸曲面544d、554dおよび第1側面544b、554bにより窪み領域Sが形成されている。また、凹曲面544a、554aの曲率半径は、凸部543、553の凸曲面543a、553aよりも大きく設定されている。
【0068】
図11(A)に示す凸部543、553は、
図10−1(A)に示した凸部543、553と同様であり、同一の符号を付している。すなわち、この凸部553、543は、凸曲面543a、553aと、斜面である側面543b、553bとで形成される。したがって、上歯540と下歯550とが噛み合わされた状態で、
図11(B)に示すように、凸部543、553における凸曲面543a、553aの近傍に空隙が生じる。
【0069】
また、特に図示しないが、
図11(B)を参照して明らかなように、凸部543、553の凸曲面543a、553aよりも凹部554、544の凹曲面554a、544aの曲率半径が大きく設定されているため、上記の空隙に関して、凸部543、553の凸曲面543a、553aと凹部554、544の凹曲面554a、544aとの関係においても、
図8を参照して説明した、L1、L2とH1、H2との関係が成立する。すなわち、凸曲面543a、553aを等分する直線αに対して直交する方向で、この直線αから凸曲面543a、553aの表面までの距離が距離L1である凸曲面543a、553a上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の凹曲面554a、544aとの間の離間距離を距離H1とする。また、直線αから凸曲面543a、553aの表面までの距離が距離L2である凸曲面543a、553a上の位置を特定し、この位置と凹部552、542の底面552a、542aとの間の離間距離を距離H2とする。そして、L1<L2であるとき、H1<H2となるようなL1、L2の組み合わせが必ず存在する。
【0070】
以上のように構成された歯型によっても、上歯540と下歯550とが噛み合わされた状態で、凸部543、553における凸曲面543a、553aの近傍に空隙が生じるため、用紙束Bの用紙Pは、加圧されて伸びた際に、撓んで、窪み領域Sにより形成された空隙へ逃げることができる。これにより、用紙束Bは、窪み領域Sによる空隙が生じない歯を用いて加圧された場合と比較して、より強い結着力で綴じられることになる。
【0071】
なお、上述した各歯型は、いずれも凸部541、551、543、553において、平面の側面541b、551b、543b、553bが設けられていた。また、凹部542、552、544、554には、平面の側面541b、551b、543b、553bに対応する平面の第2側面542c、552c、544c、554cが設けられていた。そして、凹部542、552、544、554には、第2側面542c、552c、544c、554cを延長した仮想線βよりも窪んだ窪み領域Sが形成されていた。これに対し、凸部および凹部の側面が平面でない場合であっても、窪み領域Sを形成することが可能な場合がある。
【0072】
図12は、凸部および凹部の側面が曲面である歯の例を示す図である。
図12に示す上歯540および下歯550の凸部545、555は、凸曲面545a、555aで形成されている。一方、凹部546、556は、凹曲面546a、556aと、側壁である第1側面546b、556bおよび第2側面546c、556cと、第1側面546b、556bおよび第2側面546c、556cをつなぐ凸曲面546d、556dとで形成されている。ここで、凸部545、555は、凸曲面545a、555aの一部が側面となっている。そして、凹部546、556の第2側面546c、556cは、対向する凸部555、545の側面部分に対応している。すなわち、第2側面546c、556cは、凸部555、545の側面部分と同じ曲率の凹曲面である。
【0073】
図12に示す上歯540および下歯550の構成をさらに説明すると、まず、凸部545、555は、凸曲面545a、555aのみで形成されている。そして、変曲点IPを超えて凹曲面になると、凹部546、556の第2側面546c、556cとなる。そして、凹部546、556において、さらに凸曲面546d、556dから第1側面546b、556bに至り、凹曲面546a、556aへつながっている。
【0074】
以上のように曲面のみにて構成された上歯540および下歯550においても、凸曲面546d、556dおよび第1側面546b、556bが設けられていることにより、窪み領域Sが形成されている。この例において、窪み領域Sは、凹曲面である第2側面546c、556cを延長した仮想線ではなく、
図12に示すように、隣接する凸部545、555の凸曲面545a、555aから第2側面546c、556cへ切り替わる変曲点IPの接線γよりも窪んだ領域として把握しても良い。
【0075】
図13は、凹部の第1側面557bを曲面とした構成例を示す図である。
図13には、下歯の凹部557が示されている。図示の凹部557は、底面557aと、側壁である第1側面557bおよび第2側面557cと、第1側面557bおよび第2側面557cをつなぐ凸曲面557dとで形成されている。図示の例において、第1側面557bは、凹曲面となっており、底面557aと滑らかにつながっている。言い換えれば、この凹部557の第1側面557bは、
図7に示した第1側面552bと凹曲面552dとが融合した形状として把握することができる。
【0076】
以上、複数の構成を挙げて上歯540および下歯550の形状について説明したが、本実施形態は、上歯540と下歯550とを噛み合わせた際に、加圧された用紙束Bが撓んで逃げることのできる空隙が生じる形状であれば良く、上記の各構成例に限定されるものではない。