特許第6763326号(P6763326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763326
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】油圧回路
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20200917BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20200917BHJP
   F15B 11/17 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   E02F9/22 K
   F15B11/02 M
   F15B11/17
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-48280(P2017-48280)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-150744(P2018-150744A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】井上 皓二
(72)【発明者】
【氏名】上田 浩司
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200179(JP,A)
【文献】 特開平03−129108(JP,A)
【文献】 特開2016−133206(JP,A)
【文献】 特開2016−205450(JP,A)
【文献】 特開2015−172393(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0356020(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0348342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
F15B 11/02
F15B 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、前記ブームの先端部に対して回動可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端部に対して回動可能に取り付けられたバケットと、を有する建設機械に設けられた油圧回路であって、
前記ブームに対して前記アームを回動させるアームシリンダと、
前記アームに対して前記バケットを回動させるバケットシリンダと、
前記バケットシリンダに作動油を供給するための第1ポンプと、
前記アームシリンダに作動油を供給するための第2ポンプと、
第3ポンプと、
前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、及び前記第3ポンプを駆動するエンジンと、
前記第3ポンプからの作動油を前記第1ポンプの吐出ラインに合流させるための第1合流ラインと、
前記第3ポンプからの作動油を前記第2ポンプの吐出ラインに合流させるための第2合流ラインと、
前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が予め設定された設定圧以下のときに前記第1ポンプの吐出ラインと比較して前記第2ポンプの吐出ラインに対して優先的に前記第3ポンプからの作動油を導くために前記第1合流ラインの開口面積を予め設定された制限開口面積に制限するとともに、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記設定圧を超えたときに前記第1合流ラインの開口面積を前記制限開口面積よりも広げるように動作する開口調整弁と、を備えている、油圧回路。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧回路であって、
前記開口調整弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記設定圧を超えた状態において前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が大きいほど前記第1合流ラインの開口面積が大きくなるように動作する、油圧回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の油圧回路は、
前記ブームを回動可能に支持する前記建設機械の機体に対して前記ブームを回動させるブームシリンダと、
前記第1合流ラインからの作動油を前記ブームシリンダに導くためのブーム側ラインと、
前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が予め設定された基準圧以下のときの前記ブーム側ラインの開口面積と比較して前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記基準圧を超えたときの前記ブーム側ラインの開口面積が制限されるように動作する開口変化弁と、をさらに備えている、油圧回路。
【請求項4】
請求項3に記載の油圧回路であって、
前記開口変化弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記基準圧を超えた状態において前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が大きいほど前記ブーム側ラインの開口面積が小さくなるように動作する、油圧回路。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の油圧回路であって、
前記開口調整弁及び前記開口変化弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の作動油の圧力に応じて動作するパイロット式の切換弁によりそれぞれ構成されている、油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に設けられる油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下部走行体と、下部走行体に対して旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体に対して起伏可能に取り付けられたアタッチメントと、を有する油圧ショベルが知られている。
【0003】
アタッチメントは、上部旋回体に対して回動可能に取り付けられたブームと、ブームの先端部に対して回動可能に取り付けられたアームと、アームの先端部に対して回動可能に取り付けられたバケットと、を有している。
【0004】
また、油圧ショベルは、例えば、特許文献1に記載の油圧回路を備えている。
【0005】
油圧回路は、上部旋回体を旋回駆動する旋回モータと、上部旋回体に対してブームを回動させるブームシリンダと、ブームに対してアームを回動させるアームシリンダと、アームに対してバケットを回動させるバケットシリンダと、を備えている。
【0006】
また、油圧回路は、例えば、特許文献1に開示されるように、ブームシリンダ及びバケットシリンダに作動油を供給するための第1ポンプと、アームシリンダに作動油を供給するための第2ポンプと、旋回モータに作動油を供給するための第3ポンプと、第1〜第3ポンプを駆動するエンジンと、を備えている。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の油圧回路は、第3ポンプからの作動油を第1ポンプの吐出ラインに合流させるための第1合流ラインと、第3ポンプからの作動油を第2ポンプの吐出ラインに合流させるための第2合流ラインと、を有する。
【0008】
これにより、第1ポンプ及び第2ポンプからの作動油に第3ポンプからの作動油を加えて当該第1ポンプ及び第2ポンプの駆動対象となる油圧アクチュエータを確実に動作させることができる。
【0009】
また、特許文献1に記載の油圧回路(合流弁)は、第3ポンプからの作動油を第1ポンプ及び第2ポンプの吐出ラインに合流させるときに第2合流ラインに優先的に作動油を導くために第1合流ラインの開口面積を制限する絞りを備えている。
【0010】
これにより、例えば、ブーム下げとアーム動作とが同時に行われた場合に、アームシリンダに作動油を優先的に流すことによりアームを増速させ、作業性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−147864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のような油圧回路を有する建設機械においては、エンジンに要求される負荷トルクがエンジンの出力トルクを下回るように第1ポンプ及び第2ポンプの容量を制御するトルク制御が実行される。
【0013】
また、油圧回路は、油圧回路内の作動油の圧力が予め設定されたリリーフ圧以上となったときに開放して油圧回路内の油圧機器が破損するのを防止するリリーフ弁を有している。
【0014】
ここで、アーム引きとバケット掘削とが同時に行われて土砂を掘削する掘削作業が行われると、アームが地面から受ける反力によりアームシリンダに負荷が大きくなる。しかも、第3ポンプから吐出された作動油は、上述した絞りにより第2ポンプの吐出ライン(アームシリンダ)に優先的に供給される。
【0015】
したがって、掘削作業中においては、油圧回路内の圧力が上昇してリリーフ弁が開放するとともに、このような高圧状態において作動油を吐出する第1ポンプ及び第2ポンプの負荷が増加するため、両ポンプの負荷の増加に伴いトルク制御が実行される。
【0016】
その結果、第1ポンプの容量が低下することに伴いバケットの掘削速度が低下し、掘削作業の作業性が低下するおそれがある。
【0017】
本発明の目的は、アーム引き及びバケット掘削を伴う掘削作業中におけるバケットの掘削速度の低下を抑制することができる油圧回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明は、ブームと、前記ブームの先端部に対して回動可能に取り付けられたアームと、前記アームの先端部に対して回動可能に取り付けられたバケットと、を有する建設機械に設けられた油圧回路であって、前記ブームに対して前記アームを回動させるアームシリンダと、前記アームに対して前記バケットを回動させるバケットシリンダと、前記バケットシリンダに作動油を供給するための第1ポンプと、前記アームシリンダに作動油を供給するための第2ポンプと、第3ポンプと、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、及び前記第3ポンプを駆動するエンジンと、前記第3ポンプからの作動油を前記第1ポンプの吐出ラインに合流させるための第1合流ラインと、前記第3ポンプからの作動油を前記第2ポンプの吐出ラインに合流させるための第2合流ラインと、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が予め設定された設定圧以下のときに前記第1ポンプの吐出ラインと比較して前記第2ポンプの吐出ラインに対して優先的に前記第3ポンプからの作動油を導くために前記第1合流ラインの開口面積を予め設定された制限開口面積に制限するとともに、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記設定圧を超えたときに前記第1合流ラインの開口面積を前記制限開口面積よりも広げるように動作する開口調整弁と、を備えている、油圧回路を提供する。
【0019】
本発明によれば、アーム及びバケットの複合動作が行われた状況であってアームシリンダの負荷が比較的に低い状況(例えば、アーム引き及びバケット掘削操作が行われ、地面から反力を受けていない状況)においては開口調整弁により第1合流ラインの開口面積が制限開口面積に制限される。これにより、バケットシリンダと比較してアームシリンダに優先的に第3ポンプからの作動油が導かれるため、アームを増速して作業性を向上することができる。
【0020】
一方、アーム及びバケットの複合動作が行われた状況であってアームシリンダの負荷が高い状況(例えば、アーム引き及びバケット掘削操作が行われ、かつ、地面からの反力を受けている掘削作業時)においては開口調整弁により第1合流ラインの開口面積が制限開口面積よりも広げられる。これにより、高負荷状態にあるアームシリンダに対して第3ポンプからの作動油の優先供給が継続される場合のように油圧回路内のリリーフ弁が開放するほど当該油圧回路内の圧力が上昇するのを抑制することができる。そのため、油圧回路内の圧力が上昇することに伴い第1ポンプ及び第2ポンプの負荷が上昇して、第1ポンプのトルクが制限されるのを抑制することができるとともに、第3ポンプから第1ポンプの吐出ラインに合流される作動油を有効に活用してバケットの掘削速度を向上することができる。
【0021】
したがって、本発明によれば、アーム引き及びバケット掘削を伴う掘削作業中におけるバケットの掘削速度の低下を抑制することができる。
【0022】
なお、本発明における『設定圧』は、第3ポンプの作動油が第1ポンプの吐出ライン及び第2ポンプの吐出ラインに導かれている合流状態において油圧回路に設定されるリリーフ圧よりも低い値として予め設定されたものである。つまり、合流状態において第1〜第3ポンプの吐出圧によりリリーフ可能となるように油圧回路に設けられたリリーフ弁に設定されたリリーフ圧よりも『設定圧』は低く設定されている。このようにすれば、合流状態においてアームシリンダの負荷が高くなることによるトルク制御の実行を抑制することができる。
【0023】
ここで、アームシリンダのヘッド側室内の圧力が設定圧以下の値から設定圧を超える値に変化したときに、開口調整弁は、第1合流ラインの開口面積を急激に広げることも可能である。しかし、この場合、アームシリンダに対する第3ポンプからの作動油の供給量が急激に減少することにより当該アームシリンダが急激に減速し、作業性が低下するおそれがある。
【0024】
そこで、前記油圧回路において、前記開口調整弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記設定圧を超えた状態において前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が大きいほど前記第1合流ラインの開口面積が大きくなるように動作することが好ましい。
【0025】
この態様によれば、アームシリンダの負荷が比較的に小さい状況においてアームシリンダの増速期間をできるだけ維持しながら油圧回路内の圧力をトルク制御が実行されない程度に低く抑えることができる。
【0026】
したがって、アームシリンダの減速を抑えて作業性の低下を抑制することができる。
【0027】
前記油圧回路は、前記ブームを回動可能に支持する前記建設機械の機体に対して前記ブームを回動させるブームシリンダと、前記第1合流ラインからの作動油を前記ブームシリンダに導くためのブーム側ラインと、を有していてもよい。
【0028】
この構成において、掘削作業時にさらにブーム上げ動作が行われることがある。この場合、第3ポンプからの作動油をブームシリンダに対しても無条件で供給すると、ブーム上げ動作に伴ってバケットが地面から離れる方向に移動してしまい掘削作業を効率的に行うことが難しい。
【0029】
そこで、前記油圧回路は、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が予め設定された基準圧以下のときの前記ブーム側ラインの開口面積と比較して前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記基準圧を超えたときの前記ブーム側ラインの開口面積が制限されるように動作する開口変化弁をさらに備えていることが好ましい。
【0030】
この態様によれば、ブーム上げ動作が行われた場合に、掘削作業時、つまり、アームシリンダの負荷が高い状況においては、ブームシリンダに対する第3ポンプからの作動油の供給量を抑えるとともに相対的にバケットシリンダに対する第3ポンプからの作動油の供給量を増加することができる。
【0031】
したがって、前記態様によれば、掘削作業時にブーム上げ動作の速度を抑えながらバケット掘削を増速することにより、掘削作業をより効率的に行うことができる。
【0032】
なお、前記態様において『基準圧』は、前記設定圧と同様、第3ポンプの作動油が第1ポンプの吐出ライン及び第2ポンプの吐出ラインに導かれている合流状態において油圧回路に設定されるリリーフ圧よりも低い値として予め設定されたものである。
【0033】
ここで、アームシリンダのヘッド側室内の圧力が基準圧以下の値から基準圧を超える値に変化したときに、開口変化弁は、ブーム側ラインの開口面積を急激に制限することも可能である。しかし、この場合、ブームシリンダに対する第3ポンプからの作動油の供給量が急激に減少することによりブームシリンダが急激に減速し、作業性が低下するおそれがある。
【0034】
そこで、前記油圧回路において、前記開口変化弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が前記基準圧を超えた状態において前記アームシリンダのヘッド側室内の圧力が大きいほど前記ブーム側ラインの開口面積が小さくなるように動作することが好ましい。
【0035】
この態様によれば、アームシリンダの負荷が比較的に小さい状況においてブームの増速を図りながら、アームシリンダの負荷が大きい状況においてはバケットが地面から離れるのを防止することができる。
【0036】
したがって、掘削作業時における作業性をより向上することができる。
【0037】
ここで、アームシリンダのヘッド側室内の作動油の圧力を検出するセンサと、センサの検出値に基づいて開口調整弁及び開口変化弁に指令を出力するコントローラと、を有し、開口調整弁及び開口変化弁がコントローラからの指令に応じて動作する電磁式の切換弁によりそれぞれ構成されていてもよい。
【0038】
一方、前記油圧回路において、前記開口調整弁及び前記開口変化弁は、前記アームシリンダのヘッド側室内の作動油の圧力に応じて動作するパイロット式の切換弁によりそれぞれ構成されていることが好ましい。
【0039】
この態様によれば、回路調整弁及び開口変化弁が電磁式の切換弁により構成されている場合と比較して、センサやコントローラ等の構成を省略することができるため、コスト面で有利となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、アーム引き及びバケット掘削を伴う掘削作業中におけるバケットの掘削速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の建設機械の一例である油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
図2図1の油圧ショベルに設けられた第1実施形態に係る油圧回路の回路図である。
図3図2の開口調整弁の開口特性を示すグラフである。
図4図2の開口変化弁の開口特性を示すグラフである。
図5】第2実施形態に係る油圧回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0043】
<第1実施形態>
図1を参照して、建設機械の一例である油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に対して旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3に対して起伏可能に設けられたアタッチメント4と、を備えている。下部走行体2及び上部旋回体3は、アタッチメント4(ブーム5)を回動可能に支持する機体に相当する。
【0044】
アタッチメント4は、上部旋回体3に対して回動可能に取り付けられた基端部を有するブーム5と、ブーム5の先端部に対して回動可能に取り付けられた基端部を有するアーム6と、アーム6の先端部に対して回動可能に取り付けられたバケット7と、を備えている。
【0045】
また、油圧ショベル1は、図2に示す油圧回路を備えている。
【0046】
油圧回路は、上部旋回体3に対してブーム5を回動させるブームシリンダ8と、ブーム5に対してアーム6を回動させるアームシリンダ9と、アーム6に対してバケット7を回動させるバケットシリンダ10と、下部走行体2に対して上部旋回体3を旋回駆動する旋回モータ11と、を備えている。
【0047】
また、油圧回路は、バケットシリンダ10及びブームシリンダ8に作動油を供給するための可変容量式の第1ポンプ13と、アームシリンダ9に作動油を供給するための可変容量式の第2ポンプ14と、旋回モータ11に作動油を供給するための第3ポンプ15と、後述する制御弁17〜19及び21に対するパイロット圧を供給するためのパイロットポンプ16と、これらのポンプ13〜16を駆動するエンジン12と、を備えている。
【0048】
以下、油圧回路における第1ポンプ13とバケットシリンダ10及びブームシリンダ8との間に設けられた構成について説明する。
【0049】
油圧回路は、第1ポンプ13とブームシリンダ8との間に設けられたブーム用制御弁17と、第1ポンプ13とバケットシリンダ10との間に設けられたバケット用制御弁18と、を備えている。
【0050】
両制御弁17、18は、第1ポンプ13に接続されたタンデムラインL1を介して互いに直列に接続されている。タンデムラインL1は、バケット用制御弁18の下流側でタンクラインLTに接続されている。
【0051】
また、両制御弁17、18は、ラインL2〜L4を介してパラレルに接続されている。
【0052】
具体的に、ブーム用制御弁17の供給側ポートには、タンデムラインL1のブーム用制御弁17の上流側の部分から分岐する分岐ラインL2の途中部に接続された供給ラインL3が接続されている。分岐ラインL2における供給ラインL3の接続点よりもタンデムラインL1側には、当該タンデムラインL1から供給ラインL3側への作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁(符号省略)が設けられている。また、供給ラインL3には、分岐ラインL2からブーム用制御弁17へ向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁(符号省略)が設けられている。
【0053】
一方、バケット用制御弁18の供給側ポートには、タンデムラインL1におけるブーム用制御弁17とバケット用制御弁18との間の部分から分岐する供給ラインL4が接続されている。供給ラインL4には、タンデムラインL1からバケット用制御弁18へ向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制する一対のチェック弁(符号省略)が設けられている。また、供給ラインL4のチェック弁間の部分には分岐ラインL2が接続されている。なお、分岐ラインL2における供給ラインL3の下流側の位置には絞り(符号省略)が設けられている。この絞りは、ブーム5の上げ及びバケット7の掘削の複合動作が行われたときにブームシリンダ8に優先して作動油を導くことにより操作性を向上するために設けられたものである。
【0054】
また、ブーム用制御弁17のタンク側ポートには、タンクラインLTに接続された導出ラインL5が接続されている。同様に、バケット用制御弁18のタンク側ポートには、タンクラインLTに接続された導出ラインL6が接続されている。
【0055】
また、タンデムラインL1における第1ポンプ13とブーム用制御弁17との間の部分とタンクラインLTとの間にはリリーフライン(符号省略)が設けられ、リリーフラインの途中部にはリリーフ弁27が設けられている。リリーフ弁27は、タンデムラインL1内の圧力が予め設定されたリリーフ圧以上のときにリリーフラインを開いてタンデムラインL1内の作動油をタンクラインLTに導く。これにより、第1ポンプ13の負荷(ブームシリンダ8及びバケットシリンダ10の負荷)が高くなったときに油圧回路を保護することができる。
【0056】
ブーム用制御弁17は、図外の操作レバーが操作されていない状態で付勢される中立位置と、操作レバーの操作に応じてパイロットポンプ16からの作動油(パイロット圧)により作動するブーム上げ位置(図2の右側位置)及びブーム下げ位置(図2の左側位置)と、を備えている。中立位置にあるブーム用制御弁17は、ブームシリンダ8に対する作動油の給排を停止させるとともにタンデムラインL1を開放する。ブーム上げ位置にあるブーム用制御弁17は、タンデムラインL1を閉じ、供給ラインL3からブームシリンダ8のヘッド側室へ作動油を導くとともにブームシリンダ8のロッド側室内の作動油を導出ラインL5に導く。ブーム下げ位置にあるブーム用制御弁17は、タンデムラインL1を閉じ、供給ラインL3からブームシリンダ8のロッド側室へ作動油を導くとともにブームシリンダ8のヘッド側室内の作動油を導出ラインL5に導く。
【0057】
バケット用制御弁18は、図外の操作レバーが操作されていない状態で付勢される中立位置と、操作レバーの操作に応じてパイロットポンプ16からの作動油(パイロット圧)により作動するバケット掘削位置(図2の右側位置)及びバケットダンプ位置(図2の左側位置)と、を備えている。中立位置にあるバケット用制御弁18は、バケットシリンダ10に対する作動油の給排を停止させるとともにタンデムラインL1を開放する。バケット掘削位置にあるバケット用制御弁18は、タンデムラインL1を閉じ、供給ラインL4からバケットシリンダ10のヘッド側室へ作動油を導くとともにバケットシリンダ10のロッド側室内の作動油を導出ラインL6に導く。バケットダンプ位置にあるバケット用制御弁18は、タンデムラインL1を閉じ、供給ラインL4からバケットシリンダ10のロッド側室へ作動油を導くとともにバケットシリンダ10のヘッド側室内の作動油を導出ラインL6へ導く。
【0058】
次に、油圧回路における第2ポンプ14とアームシリンダ9との間に設けられた構成について説明する。
【0059】
油圧回路は、第2ポンプ14とアームシリンダ9との間に設けられたアーム用制御弁19を備えている。
【0060】
アーム用制御弁19は、第2ポンプ14からタンクラインLTまで延びるポンプラインL7の途中部に設けられている。
【0061】
また、アーム用制御弁19の供給側ポートには、ポンプラインL7における第2ポンプ14とアーム用制御弁19との間の部分から分岐する供給ラインL8が接続されている。供給ラインL8には、ポンプラインL7からアーム用制御弁19に向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁(符号省略)が設けられている。
【0062】
さらに、ポンプラインL7における第2ポンプ14とアーム用制御弁19との間の部分とタンクラインLTとの間にはリリーフライン(符号省略)が設けられ、リリーフラインの途中部にはリリーフ弁20が設けられている。リリーフ弁20は、ポンプラインL7内の圧力が予め設定されたリリーフ圧未満のときにリリーフラインを閉じる一方、ポンプラインL7内の圧力がリリーフ圧以上のときにリリーフラインを開いてポンプラインL7内の作動油をタンクラインLTに導く。これにより、第2ポンプ14の負荷(アームシリンダ9の負荷)が高くなったときに油圧回路を保護することができる。
【0063】
一方、アーム用制御弁19のタンク側ポートには、タンクラインLTに接続された導出ラインL9が接続されている。
【0064】
アーム用制御弁19は、図外の操作レバーが操作されていない状態で付勢される中立位置と、操作レバーの操作に応じてパイロットポンプ16からの作動油(パイロット圧)により作動するアーム押し位置(図2の右側位置)及びアーム引き位置(図2の左側位置)と、を備えている。中立位置にあるアーム用制御弁19は、アームシリンダ9に対する作動油の給排を停止させるとともにポンプラインL7を開放する。アーム押し位置にあるアーム用制御弁19は、ポンプラインL7を閉じ、供給ラインL8からアームシリンダ9のロッド側室へ作動油を導くとともにアームシリンダのヘッド側室から導出ラインL9へ作動油を導く。アーム引き位置にあるアーム用制御弁19は、ポンプラインL7を閉じ、供給ラインL8からアームシリンダ9のヘッド側室へ作動油を導くとともにアームシリンダ9のロッド側室から導出ラインL9へ作動油を導く。
【0065】
次に、油圧回路における第3ポンプ15と旋回モータ11との間に設けられた構成について説明する。
【0066】
油圧回路は、第3ポンプ15と旋回モータ11との間に設けられた旋回用制御弁21を備えている。
【0067】
旋回用制御弁21は、第3ポンプ15から後述する第1合流ラインL14及び第2合流ラインL13まで延びるポンプラインL10の途中部に設けられている。
【0068】
また、旋回用制御弁21の供給側ポートには、ポンプラインL10における第3ポンプ15と旋回用制御弁21との間の部分から分岐する供給ラインL11が接続されている。供給ラインL11には、ポンプラインL10から旋回用制御弁21に向けた作動油の流れを許容する一方、その逆向きの流れを規制するチェック弁(符号省略)が設けられている。
【0069】
さらに、ポンプラインL10における第3ポンプ15と旋回用制御弁21との間の部分とタンクラインLTとの間にはリリーフライン(符号省略)が設けられ、リリーフラインの途中部にはリリーフ弁22が設けられている。リリーフ弁22は、ポンプラインL10内の圧力が予め設定されたリリーフ圧未満のときにリリーフラインを閉じる一方、ポンプラインL10内の圧力がリリーフ圧以上のときにリリーフラインを開いてポンプラインL10内の作動油をタンクラインLTに導く。これにより、第3ポンプ15の負荷(旋回モータ11の負荷)が高くなったときに油圧回路を保護することができる。
【0070】
一方、旋回用制御弁21のタンク側ポートには、タンクラインLTに接続された導出ラインL12が接続されている。
【0071】
旋回用制御弁21は、図外の操作レバーが操作されていない状態で付勢される中立位置と、操作レバーの操作に応じてパイロットポンプ16からの作動油(パイロット圧)により作動する右旋回位置(図2の右側位置)及び左旋回位置(図2の左側位置)と、を備えている。中立位置にある旋回用制御弁21は、旋回モータ11に対する作動油の給排を停止させるとともにポンプラインL10を開放する。右旋回位置及び左旋回位置にある旋回用制御弁21は、それぞれ、ポンプラインL10を閉じ、供給ラインL11から旋回モータ11の一方のポートへ作動油を導くとともに旋回モータの他方のポートから導出ラインL12に作動油を導く。
【0072】
以下、第3ポンプ15から吐出された作動油を第1ポンプ13及び第2ポンプ14の吐出ラインに合流させるための構成について説明する。
【0073】
油圧回路は、第3ポンプ15からの作動油を第1ポンプ13の吐出ラインに合流させるための第1合流ラインL14と、第3ポンプ15からの作動油を第2ポンプ14の吐出ラインに合流させるための第2合流ラインL13と、を有する。ここで、第1ポンプ13の吐出ラインは、タンデムラインL1における第1ポンプ13とブーム用制御弁17との間の部分と、分岐ラインL2と、を有する。また、第2ポンプ14の吐出ラインは、ポンプラインL7における第2ポンプ14とアーム用制御弁19との間の部分を有する。
【0074】
具体的に、第1合流ラインL14及び第2合流ラインL13は、第3ポンプ15に接続されたポンプラインL10の旋回用制御弁21の下流側の端部から分岐したラインである。第1合流ラインL14は、分岐ラインL2における供給ラインL3との接続点に接続されている。一方、第2合流ラインL13は、ポンプラインL7における供給ラインL8との接続点に接続されている。
【0075】
これにより、旋回用制御弁21が中立位置以外の位置に切り換えられた状態において、第3ポンプ15からの作動油は、分岐ラインL2(第1ポンプ13の吐出ライン)及び供給ラインL8(第2ポンプ14の吐出ライン)に導かれる。
【0076】
ここで、第1合流ラインL14には、第1合流ラインL14の開口面積を調整するための開口調整弁23が設けられている。
【0077】
図3は、開口調整弁23の開口特性を示すグラフである。
【0078】
図2及び図3を参照して、開口調整弁23は、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が予め設定された設定圧P1以下のときに第1ポンプ13の吐出ラインと比較して第2ポンプ14の吐出ラインに対して優先的に第3ポンプ15からの作動油を導くために第1合流ラインL14の開口面積を予め設定されて制限開口面積に制限する。一方、開口調整弁23は、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が設定圧P1を超えたときに第1合流ラインL14の開口面積を制限開口面積よりも広げる。
【0079】
なお、設定圧P1は、第3ポンプ15の作動油が第1ポンプ13の吐出ライン及び第2ポンプ14の吐出ラインに導かれている合流状態において油圧回路に設定されるリリーフ圧よりも低い値として予め設定されたものである。つまり、合流状態において第1〜第3ポンプ13〜15の吐出圧によりリリーフ可能となるように油圧回路に設けられたリリーフ弁20、22、27に設定されたリリーフ圧よりも『設定圧』は低く設定されている。
【0080】
具体的に、開口調整弁23は、絞りにより開口面積を制限する制限位置と、絞りを有しない非制限位置と、を有している。また、開口調整弁23のパイロットポートは、アームシリンダ9のヘッド側室に接続されている。そして、開口調整弁23は、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が設定圧P1以下のときに制限位置に付勢されている一方、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が設定圧P1を超えたときに当該圧力が大きいほど開口面積が大きくなるように制限位置から非制限位置に連続的に切り換えられる。
【0081】
したがって、例えば、アームシリンダ9とバケットシリンダ10との複合動作が行われ、アームシリンダ9の負荷が比較的に小さいときには、開口調整弁23は制限位置に付勢されている。これにより、第3ポンプ15からの作動油がバケットシリンダ10と比較してアームシリンダ9に優先して供給されてアーム6の増速を図ることができる。
【0082】
一方、アーム6及びバケット7の複合動作が行われた状況であってアームシリンダ9の負荷が高い状況においては開口調整弁23が非制限位置に動作し、第1合流ラインL14の開口面積が制限開口面積よりも広げられる。これにより、高負荷状態にあるアームシリンダ9に対して第3ポンプ15からの作動油の優先供給が継続される場合のようにリリーフ弁20、22、27が開放するほど油圧回路内の圧力が上昇するのを抑制することができる。ここで、リリーフ弁20、22、27が開放した場合には、図外のコントローラにより第1ポンプ13及び第2ポンプ14の容量が制限されるトルク制御が実行される。この状況においては、第1ポンプ13の容量が制限されることによりバケット7の速度が低下してしまう。これに対し、上述のように、リリーフ弁20、22、27の開放を抑制することにより、バケット7の増速を有効に図ることができる。
【0083】
さらに、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力の大きさに応じて第1合流ラインL14の開口面積が連続的に広げられるため、アームシリンダ9の負荷が比較的に小さい状況においてアームシリンダ9の増速期間をできるだけ維持しながら油圧回路内の圧力を低くおさえることができる。
【0084】
さらに、油圧回路は、第1合流ラインL14からの作動油をブームシリンダ8に導くための供給ラインL3(ブーム側ライン)に設けられた開口変化弁24をさらに備えている。
【0085】
図4は、開口変化弁24の開口特性を示すグラフである。
【0086】
図2及び図4を参照して、開口変化弁24は、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が予め設定された基準圧P2以下のときに供給ラインL3の開口面積と比較してアームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が基準圧P2を超えたときの供給ラインL3の開口面積が制限されるように動作する。なお、基準圧P2は、前記設定圧と同様、第3ポンプ15の作動油が第1ポンプ13の吐出ライン及び第2ポンプ14の吐出ラインに導かれている合流状態において油圧回路に設定されるリリーフ圧よりも低い値として予め設定されたものである。つまり、合流状態において第1〜第3ポンプ13〜15の吐出圧によりリリーフ可能となるように油圧回路に設けられたリリーフ弁20、22、27に設定されたリリーフ圧よりも『基準圧』は低く設定されている。
【0087】
また、開口変化弁24の基準圧P2は、開口調整弁23の設定圧P1よりも低く設定されている。
【0088】
具体的に、開口変化弁24は、絞りにより開口面積を制限する制限位置と、絞りを有しない非制限位置と、を有している。また、開口変化弁24のパイロットポートは、アームシリンダ9のヘッド側室に接続されている。そして、開口変化弁24は、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が基準圧P2以下のときに非制限位置に付勢されている一方、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が基準圧P2を超えたときに当該圧力が大きいほど開口面積が小さくなるように非制限位置から制限位置に切り換えられる。
【0089】
したがって、ブーム5とアーム6とバケット7との複合操作が行われ、かつ、アームシリンダ9の負荷が比較的低い状態においては、開口変化弁24が非制限位置に保持され、第3ポンプ15からの作動油をブーム5、アーム6、及びバケット7で有効に活用することができる。
【0090】
一方、ブーム5とアーム6とバケット7との複合操作が行われ、かつ、アームシリンダ9の負荷が比較的に高い状態においては、開口変化弁24が制限位置に切り換えられ、第3ポンプ15からの作動油をブーム5と比較してバケット7に優先的に供給することができる。したがって、掘削作業時にブーム上げ操作が行われた場合であっても、バケット7の増速を図ることができる。
【0091】
以上説明したように、アーム6及びバケット7の複合動作が行われた状況であってアームシリンダ9の負荷が比較的に低い状況(例えば、アーム引き及びバケット掘削操作が行われ、地面から反力を受けていない状況)においては開口調整弁23により第1合流ラインL14の開口面積が制限開口面積に制限される。これにより、バケットシリンダ10と比較してアームシリンダ9に優先的に第3ポンプ15からの作動油が導かれるため、アーム6を増速して作業性を向上することができる。
【0092】
一方、アーム6及びバケット7の複合動作が行われた状況であってアームシリンダ9の負荷が高い状況(例えば、アーム引き及びバケット掘削操作が行われ、かつ、地面からの反力を受けている掘削作業時)においては開口調整弁23により第1合流ラインL14の開口面積が制限開口面積よりも広げられる。これにより、高負荷状態にあるアームシリンダ9に対して第3ポンプ15からの作動油の優先供給が継続される場合のように油圧回路内のリリーフ弁20、22が開放するほど当該油圧回路内の圧力が上昇するのを抑制することができる。そのため、油圧回路内の圧力が上昇することに伴い第1ポンプ13及び第2ポンプ14の負荷が上昇して、第1ポンプ13のトルクが制限されるのを抑制することができるとともに、第3ポンプ15から第1ポンプ13の吐出ラインに合流される作動油を有効に活用してバケット7の掘削速度を向上することができる。
【0093】
したがって、アーム引き及びバケット掘削を伴う掘削作業中におけるバケット7の掘削速度の低下を抑制することができる。
【0094】
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0095】
アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力の大きいほど第1合流ラインL14の開口面積を大きくしているため、アームシリンダ9の負荷が比較的に小さい状況においてアームシリンダ9の増速期間をできるだけ維持しながら油圧回路内の圧力をトルク制御が実行されない程度に低く抑えることができる。
【0096】
したがって、アームシリンダ9の減速を抑えて作業性の低下を抑制することができる。
【0097】
ブーム上げ動作が行われた場合に、掘削作業時、つまり、アームシリンダ9の負荷が高い状況においては、開口変化弁24によりブームシリンダ8に対する第3ポンプ15からの作動油の供給量を抑えるとともに相対的にバケットシリンダ10に対する第3ポンプ15からの作動油の供給量を増加することができる。
【0098】
したがって、掘削作業時にブーム上げ動作の速度を抑えながらバケット掘削を増速することにより、掘削作業をより効率的に行うことができる。
【0099】
アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力が大きいほど供給ラインL3の開口面積が大きくなるように開口変化弁24が動作する。これにより、アームシリンダ9の負荷が比較的に小さい状況においてブーム5の増速を図りながら、アームシリンダ9の負荷が大きい状況においてはバケット7が地面から離れるのを防止することができる。
【0100】
したがって、掘削作業時における作業性をより向上することができる。
【0101】
開口調整弁23及び開口変化弁24は、アームシリンダ9のヘッド側室内の作動油の圧力に応じて動作するパイロット式の切換弁によりそれぞれ構成されている。
【0102】
これにより、開口調整弁23及び開口変化弁24が電磁式の切換弁により構成されている場合と比較して、センサやコントローラ等の構成を省略することができるため、コスト面で有利となる。
【0103】
<第2実施形態>
第1実施形態では、油圧パイロット式の開口調整弁23及び開口変化弁24を採用した例について説明したが、これらの弁23、24は、油圧パイロット式に限定されない。
【0104】
以下、図5を参照して、油圧回路における第1実施形態と異なる部分のみについて説明する。
【0105】
図5に示す第2実施形態に係る油圧回路は、電磁式の開口調整弁23と、電磁式の開口変化弁24と、アームシリンダ9のヘッド側室内の圧力を検出可能な圧力センサ25と、圧力センサ25による検出信号に基づいて両弁23、24を制御するコントローラ26とを備えている。
【0106】
コントローラ26は、圧力センサ25により検出された圧力が設定圧P1を超えたときに開口調整弁23のソレノイドに電気指令を出力する。これにより、開口調整弁23は、圧力センサ25による検出圧力の大きさに応じて制限位置から非制限位置に向けて連続的に動作する。
【0107】
第2実施形態によれば、両弁23、24を電気指令により制御することができるため、両弁23、24の切換タイミング等の自由度が高くなる。
【0108】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0109】
ブームシリンダ8は第1ポンプ13から作動油の供給を受けているが、ブームシリンダ8に対する作動油の供給源は第1ポンプ13に限定されない。
【0110】
第3ポンプ15は、旋回モータ11に作動油を供給しているが、第3ポンプ15の作動油の供給先は旋回モータ11に限定されない。
【0111】
第1合流ラインL14及び第2合流ラインL13がポンプラインL10から分岐している構成を例に挙げて説明したが、第3ポンプ15からの作動油を第1ポンプ13及び第2ポンプ14の吐出ラインに導くための切換位置を有する合流弁(例えば、特許文献1の合流弁)をポンプラインL10に設けることもできる。この場合、合流弁及びこれと第1ポンプの吐出ラインとを接続するラインが第1合流ラインに相当し、合流弁及びこれと第2ポンプの吐出ラインとを接続するラインが第2合流ラインに相当する。さらに、この場合には、合流弁が第1合流ラインの開口面積を調整する、つまり、開口調整弁の機能を有していてもよい。
【0112】
開口調整弁23が開口面積を連続的に調整可能な例について説明したが、設定圧を境として制限位置(図2の左側位置)から非制限位置(図2の右側位置)に瞬間的に調整可能な開口調整弁23を採用することもできる。
【0113】
建設機械は、油圧式のものに限定されず、ハイブリッド式のものでもよい。
【符号の説明】
【0114】
L1 タンデムライン(第1ポンプ13の吐出ライン)
L2 分岐ライン(第1ポンプ13の吐出ライン)
L3 供給ライン(ブーム側ライン)
L7 ポンプライン(第2ポンプ13の吐出ライン)
L13 第2合流ライン
L14 第1合流ライン
P1 設定圧
P2 基準圧
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(機体)
3 上部旋回体(機体)
5 ブーム
6 アーム
7 バケット
8 ブームシリンダ
9 アームシリンダ
10 バケットシリンダ
12 エンジン
13 第1ポンプ
14 第2ポンプ
15 第3ポンプ
23 開口調整弁
24 開口変化弁
図1
図2
図3
図4
図5