(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セメントと速硬性混和材と細骨材と凝結調整剤とを含むモルタル組成物と、前記モルタル組成物100質量部に対して20質量部以上70質量部以下の範囲の量の塩水とを含むセメントミルクであって、
前記塩水が、塩化物イオンを1質量%以上4質量%以下の範囲で含み、かつ前記モルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量の凝結調整剤を含有することを特徴とする半たわみ性舗装用セメントミルク。
さらに、前記塩水が、前記モルタル組成物100質量部に対して0.01質量部以上0.30質量部以下の範囲の量の減水剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の半たわみ性舗装用セメントミルク。
前記モルタル組成物が、前記速硬性混和材を前記セメント100質量部に対して10質量部以上60質量部以下の範囲の量にて含み、前記細骨材を前記セメント100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含み、凝結調整剤を前記セメント100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲の量にて含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半たわみ性舗装用セメントミルク。
前記速硬性混和材が、カルシウムアルミネートと石膏と凝結調整剤を含む組成物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半たわみ性舗装用セメントミルク。
さらに、前記モルタル組成物が、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、再乳化粉末樹脂からなる群より少なくとも1種の混和材を含み、セメント100質量部に対して前記混和材を、5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半たわみ性舗装用セメントミルク。
開粒度アスファルト混合物に請求項1から請求項6のいずれかの一項に記載の半たわみ性舗装用セメントミルクを浸透させ、次いで硬化させることを特徴とする半たわみ性舗装の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離島や沿岸地域など淡水の入手が困難な場所で、半たわみ性舗装用セメントミルクを製造する場合、練混ぜ水として海水をそのまま利用することができれば好ましい。しかしながら、速硬混和材を含むモルタル組成物に、練混ぜ水として海水のような塩化物イオンを含む塩水を用いて製造したセメントミルクは、粘度が高くなり流動性が低下する。このため、アスファルトへの浸透性が低下するという問題があった。また、凝結始発時間が短くなり、可使時間が十分に得られないという問題があった。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、練混ぜ水として海水などの塩化物イオンを含む塩水を用いながらも、粘度が低く、流動性が良く、半たわみ性舗装材の母体となる開粒度アスファルト混合物に浸透させやすく、さらに所要の可使時間が確保される凝結開始時間が長いセメントミルクとそのセメントミルクの製造方法およびそのセメントミルクを用いた半たわみ性舗装の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクは、セメントと速硬性混和材と細骨材と凝結調整剤とを含むモルタル組成物と、前記モルタル組成物100質量部に対して20質量部以上70質量部以下の範囲の量の塩水とを含むセメントミルクであって、前記塩水が、塩化物イオンを1質量%以上4質量%以下の範囲で含み、かつ前記モルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量の凝結調整剤を含有することを特徴としている。
【0008】
このような構成とされた本発明の半たわみ舗装用セメントミルクによれば、練混ぜ水として、塩化物イオンを1質量%以上4質量%以下の範囲で含む塩水を用いながらも、その塩水が所定量の凝結調整剤を含むので、粘度が低くなり、流動性が良くなり、さらに可使時間が長くなるので、半たわみ性舗装の母体となる開粒度アスファルト混合物に浸透させやすくなる。
【0009】
ここで、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、さらに、前記塩水が、前記モルタル組成物100質量部に対して0.01質量部以上0.30質量部以下の範囲の量の減水剤を含有していてもよい。
この場合は、さらに半たわみ性舗装用セメントミルクの塩水が上記の量の減水剤を含有するので、さらに粘度が低くなり、半たわみ性舗装材の母体となる開粒度アスファルト混合物により浸透させやすくなる。
【0010】
また、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、塩水が、海水もしくは海水と淡水との混合物であってよい。
この場合、離島や沿岸地域など淡水の入手が比較的困難な場所で、半たわみ舗装用セメントミルクを製造する場合、練混ぜ水として海水をそのまま利用することができる。
【0011】
さらに、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、前記モルタル組成物が、前記速硬性混和材を前記セメント100質量部に対して10質量部以上60質量部以下の範囲の量にて含み、前記細骨材を前記セメント100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含み、凝結調整剤を前記セメント100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲の量にて含むことが好ましい。
この場合、セメントミルクが開粒度アスファルト混合物に浸透してから硬化するまでの時間を短くできる。従って、このセメントミルクを、道路等に敷設される半たわみ性舗装用セメントミルクとして用いることによって、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【0012】
またさらに、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、前記速硬性混和材が、カルシウムアルミネートと石膏と凝結調整剤を含む組成物であることが好ましい。
この場合、前記セメントミルクが開粒度アスファルト混合物に浸透してから硬化するまでの時間をより確実に短くできるとともに、アスファルト混合物への浸透に必要な可使時間を確保できる。従って、このセメントミルクを、半たわみ性舗装用セメントミルクとして用いることによって、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、さらに前記モルタル組成物が、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、再乳化粉末樹脂からなる群より少なくとも1種の混和材を含み、セメント100質量部に対して前記混和材を、5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含んでいてもよい。
この場合、これらの混和材の種類や配合量を変えることによっても、前記セメントミルクの可使時間、凝結始発時間や圧縮強度などの特性を調整することができる。
【0014】
本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクの製造方法は、上述の半たわみ性舗装用セメントミルクを製造する方法であって、セメントと速硬性混和材と細骨材と凝結調整材を含むモルタル組成物と、前記モルタル組成物100質量部に対して20質量部以上70質量部以下の範囲の量の塩水と、前記モルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量の凝結調整剤とを用意する工程と、前記モルタル組成物と、前記塩水と、前記凝結調整剤とを混合する工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
このような構成とされた本発明のセメントミルクによれば、モルタル組成物と塩水とを所定の量比で用意して混合するので、上述のセメントミルクを、例えば、離島や沿岸地域など淡水の入手が困難な場所で容易に製造することができる。
【0016】
本発明の半たわみ性舗装材の施工方法は、開粒度アスファルト混合物に上述の半たわみ性舗装用セメントミルクを浸透させ、次いで硬化させることを特徴としている。
このような構成とされた本発明の半たわみ性舗装材の製造方法によれば、セメントミルクとして上述の半たわみ性舗装用セメントミルクを用いるので、開粒度アスファルト混合物の内部にセメントミルクを短時間で浸透させることができ、さらに浸透させた後の凝結開始時間が短く、初期強度が高いので、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、練混ぜ水として海水などの塩化物イオンを含む塩水を用いながらも、粘度が低く、半たわみ性舗装材の母体となる開粒度アスファルト混合物に浸透させやすく、さらに凝結開始時間が長いセメントミルクとそのセメントミルクの製造方法およびそのセメントミルクを用いた半たわみ性舗装材の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明のセメントミルク、セメントミルクの製造方法および半たわみ性舗装材の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のセメントミルクは、セメントと速硬性混和材と細骨材を含むモルタル組成物と、モルタル組成物100質量部に対して20質量部以上70質量部以下の範囲の量の塩水とを含む。塩水の含有量が少なくなりすぎると、セメントミルクの粘度が高くなり、浸透性が低下するおそれがある。一方、塩水の量が多くなりすぎると、流動性が過剰となりブリーディングが過大になる、強度が低下するので好ましくない。
【0019】
モルタル組成物は、速硬性混和材をセメント100質量部に対して10質量部以上60質量部以下の範囲の量にて含み、細骨材をセメント100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含み、凝結調整剤をセメント100質量部に対して0.1〜5質量部の範囲で含む。
【0020】
セメントとしては、ポルトランドセメントあるいは混合セメントを用いることができる。ポルトランドセメントとしては、普通、早強、中庸熱、低熱、白色の各種ポルトランドセメントを用いることができる。混合セメントとしては、フライアッシュセメント、高炉セメントを用いることができる。
【0021】
速硬性混和材は、カルシウムアルミネートと石膏と凝結調整剤を含む組成物である。
カルシウムアルミネートと石膏は、速硬材として作用する。すなわち、カルシウムアルミネートと石膏は、水に接したときにカルシウムイオンとアルミニウムイオンを溶出し、これらと石膏から溶出される硫酸イオンとを反応させて、針状結晶のエトリンガイト(3CaO・Al
2O
3・3CaSO
4・32H
2O)あるいはモノサルフェイト(3CaO・Al
2O
3・CaSO
4・12H
2O)などの水和物を生成させることによって、モルタル組成物の硬化時間を短くし、かつ初期強度発現性を向上させる作用を有する。
【0022】
カルシウムアルミネートとしては、12CaO・7Al
2O
3、11CaO・7Al
2O
3・CaF
2及びCaO・Al
2O
3からなる群より選択される一つ以上の組成を有し、ガラス化率が80%以上であるものを使用する。ガラス化率は、80%以上98%以下であることが好ましく、特に90%以上98%以下であることが好ましい。上記の組成とガラス化率とを有するカルシウムアルミネートは、カルシウムイオンとアルミニウムイオンの溶出速度が大きく、反応性が高いので、モルタル組成物の初期強度発現性を確実に向上させることが可能となる。
【0023】
石膏は、無水石膏であることが好ましく、II型無水石膏であることが特に好ましい。無水石膏(特にII型無水石膏)は、カルシウムアルミネートとの反応性が高いので、モルタル組成物の初期強度発現性をより確実に向上させることが可能となる。
【0024】
凝結調整剤は、モルタル組成物の凝結が開始するまでの時間を調整する作用、すなわちセメントの硬化時間を遅延させる作用を有する。凝結調整剤によって、セメントの硬化時間が遅延されることによって、セメントミルクの可使時間を長くすることができ、その可使時間内のセメントミルクの流動性が向上する。
【0025】
凝結調整剤としては、無機炭酸塩、オキシカルボン酸、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを用いることができる。これらの薬剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。これら薬剤によるセメントの硬化時間の遅延作用は、これらの薬剤が水に溶解し、カルシウムアルミネートから溶出したカルシウムイオンやアルミニウムイオンとキレート反応して、カルシウムアルミネートの表面に皮膜を形成することによって、カルシウムアルミネートからのカルシウムイオンやアルミニウムイオンの溶出が一時的に抑制されることにより発現すると考えられる。ただし、カルシウムアルミネートの表面に形成される皮膜は、極めて薄いため、比較的短時間で溶解して消失する。そして、この被膜が消失した後は、カルシウムアルミネートからのカルシウムイオン、アルミニウムイオンの再溶出が始まって、セメントの硬化反応が進行する。
【0026】
無機炭酸塩は、アルカリ金属の炭酸塩あるいは炭酸水素塩であることが好ましい。無機炭酸塩の例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウムが挙げられる。これらの無機炭酸塩は、1つを単独で使用してもよいし、2つ以上を組合せて使用してもよい。オキシカルボン酸の例としては酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸が挙げられる。これらのオキシカルボン酸は、1つを単独で使用してもよいし、2つ以上を組合せて使用してもよい。
凝結調整剤は、無機炭酸塩、オキシカルボン酸、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムのうちの2つ以上を組合せて使用することが好ましい。2つ以上の組合せは、無機炭酸塩、オキシカルボン酸およびアルミン酸ナトリウムの3つの組合せが好ましく、無機炭酸塩、オキシカルボン酸、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムの4つの組合せがより好ましい。
【0027】
速硬性混和材のカルシウムアルミネートと無機硫酸塩と凝結調整剤の配合量は、カルシウムアルミネート100質量部に対して、無機硫酸塩が50質量部以上200質量部以下の範囲にあり、凝結調整剤が0.1質量部以上10質量部以下の範囲にあることが好ましい。
【0028】
細骨材は、モルタル組成物の硬化に伴う硬化体の収縮(自己収縮)や、硬化後の水分の逸散に伴う収縮(乾燥収縮)を抑える作用がある。細骨材は、砂であることが好ましく、粒子径が150〜3000μmの砂であることがより好ましく、200〜1500μmの砂であることが更に好ましい。また、粒子径が90〜1000μmの砂であってもよく、更に90〜200μmの砂であってもよい。砂の粒子径が小さくなりすぎると、撹拌性能及び硬化体の耐摩耗性が低下するとともにすべり抵抗性が低下するおそれがある。一方、砂の粒子径が大きくなりすぎると、セメントミルク中に砂が沈降し易くなるとともに、半たわみ性舗装への注入性が低下するおそれがある。
【0029】
凝結調整剤は、上述のとおり、速硬性混和材に含まれているが、凝結調整剤は、セメント、細骨材を含むモルタル全体に含まれていることが好ましい。凝結調整剤以外に含まれる速硬性混和材は、凝結調整剤に含まれる速硬性混和材と同じ薬剤を用いることができる。
【0030】
モルタル組成物は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、再乳化粉末樹脂などの混和材を含んでいてもよい。これらの混和材は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。これらの混和材の含有量は、合計でセメント100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲にあることが好ましい。
【0031】
本実施形態において、練混ぜ水として用いる塩水は、塩化物イオンを1質量%以上4質量%以下の範囲で含む。塩水は、海水もしくは海水と淡水との混合物であることが好ましい。海水と淡水との混合物は、海水と淡水との割合が質量比で1:0.1〜1:10(海水:淡水)の範囲にあることが好ましい。海水の割合が多いと、凝結始発時間が短く、初期強度発現性が向上する傾向がある。一方、淡水の割合が多くなると粘度が低くなり浸透性が向上する傾向がある。
【0032】
本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクでは、凝結調整剤をモルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量にて添加することによって、塩水に凝結調整剤を含有させる。凝集調整剤としては、モルタル組成物中の速硬性混和材において凝結調整剤として使用されている薬剤を用いることができる。すなわち、無機炭酸塩、オキシカルボン酸、アルミン酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムを用いることができる。これらの薬剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0033】
半たわみ性舗装用セメントミルク中の凝結調整剤は、モルタル組成物中の速硬性混和材もしくはセメントと塩水中の塩化物イオンとの反応を抑制し、セメントミルクの急激な硬化を抑える作用があると考えられる。凝結調整剤の含有量が少なくなりすぎると、速硬性混和材もしくはセメントと塩化物イオンとの反応が進行し、モルタル組成物が硬化して、セメントミルクの粘度が上昇し、所要の可使時間が得られなくなるおそれがある。一方、凝結調整剤の含有量が多くなりすぎると、セメントの硬化反応が進行しにくくなり、セメントミルクの強度が発現しにくくなるおそれがある。
このため、本実施形態では、塩水中の凝結調整剤の含有量を、モルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量と設定している。なお、凝結調整剤による上記の効果をより確実に発揮させるためには、凝結調整剤の含有量を、モルタル組成物100質量部に対して0.2質量部以上(後述の減水剤を使用する場合は、凝結調整剤と減水剤との合計)とすることが好ましい。
【0034】
半たわみ性舗装用セメントミルクには、さらに、モルタル組成物100質量部に対して0.01質量部以上0.30質量部以下の範囲の量の減水剤を添加することによって、塩水中に減水剤を含有させることができる。
減水剤は、モルタル組成物中のセメントや速硬性混和材などの分散性を向上させる作用がある。モルタル組成物中のセメントおよび速硬性混和材の分散性が向上することによって、塩水中の凝結調整剤によるセメントおよび速硬性混和材と塩水中の塩化物イオンとの反応がより反応が抑制されると考えられる。減水剤の添加量が少なくなりすぎると減水剤の作用が得られにくくなる。一方、減水剤の含有量が多くなりすぎると、流動性が過剰になりブリーディングが発生し、硬化速度が遅くなり、強度が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、減水剤の添加量を、モルタル組成物100質量部に対して0.01質量部以上0.30質量部以下の範囲の量と設定している。
減水剤は、粉末状、液体状でも良く、ポリカルボン酸系、ポリカルボン酸コポリマー系、メラミンスルホン酸系、ポリエーテル−ポリカルボン酸系、変性ポリカルボン酸系等のものが好ましい。
【0035】
本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクは、例えば、セメントと速硬性混和材と細骨材と凝結調整材を含むモルタル組成物と、前記モルタル組成物100質量部に対して20質量部以上70質量部以下の範囲の量の塩水と、前記モルタル組成物100質量部に対して0.1質量部以上0.7質量部以下の範囲の量の凝結調整剤とを用意する工程と、用意したモルタル組成物と塩水と凝結調整剤とを混合する工程を有する方法によって製造することできる。
【0036】
材料の混合方法としては、モルタル組成物と塩水とを混合した混合物に、凝結調整剤を加えて混合する方法、モルタル組成物と凝結調整剤とを混合した混合物に、塩水を加えて混合する方法、凝結調整剤と塩水を混合した混合物に、モルタル組成物を加えて混合する方法、モルタル組成物と塩水と凝結調整剤とを同時に混合する方法のいずれの方法を用いることができる。凝結調整剤と塩水を混合した混合物に、モルタル組成物を加えて混合する方法は、塩水に所定量の凝結調整剤を確実に含有させることができるので好ましい。
減水剤は凝結調整剤とともに混合することが好ましい。これらの材料の混合には、グラウトミキサーなどのセメントミルクの調製に使用されている公知の混合装置を用いることができる。
【0037】
本実施形態の半たわみ性舗装材の施工方法は、開粒度アスファルト混合物からなる開粒度アスファルト混合物に本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクを浸透させる。
まず、路盤などの上に開粒度アスファルト混合物を形成する。次いでこの開粒度アスファルト混合物の上に、本実施形態のセメントミルクを流し込み、ゴムレーキなどを用いて開粒度アスファルト混合物の内部に浸透させる。この際に、セメントミルクを開粒度アスファルト混合物の内部に確実に浸透させるために、振動ローラー等を用いて、バイブレーション(振動)を加えてもよい。
【0038】
以上のような構成とされた本発明の半たわみ性舗装用セメントミルクによれば、練混ぜ水として、塩化物イオンを1質量%以上4質量%以下の範囲で含む塩水を用いながらも、その塩水が、上記の量の凝結調整剤を含有するので、粘度が低くなり、流動性が向上し、半たわみ性舗装材の母体となる開粒度アスファルト混合物に浸透させやすくなる。
【0039】
また、本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、さらに、塩水がモルタル組成物100質量部に対して0.01質量部以上0.30質量部以下の範囲の量の減水剤を含有していているので、さらに粘度が低くなり、半たわみ性舗装材の母体となる開粒度アスファルト混合物により浸透させやすくなる。
【0040】
さらに、本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、塩水を、海水もしくは海水と淡水との混合物とすることができるので、離島や沿岸地域など淡水の入手が比較的困難な場所で、半たわみ性舗装材を製造する場合、練混ぜ水として海水をそのまま利用することができる。
【0041】
またさらに、本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、モルタル組成物が、硬性混和材をセメント100質量部に対して10質量部以上60質量部以下の範囲の量にて含み、細骨材をセメント100質量部に対して5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含むので、セメントミルクが開粒度アスファルト混合物に浸透してから硬化するまでの時間を短くできる。従って、このセメントミルクを、道路等に敷設される半たわみ性舗装材として用いることによって、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【0042】
さらにまた、本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、速硬性混和材が、カルシウムアルミネートと石膏と凝結調整剤を含む組成物であるので、セメントミルクが開粒度アスファルト混合物に浸透してから硬化するまでの時間をより確実に短くできる。従って、このセメントミルクを、道路等に敷設される半たわみ性舗装材として用いることによって、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【0043】
さらにまた、本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクにおいては、さらにモルタル組成物が、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、再乳化粉末樹脂からなる群より少なくとも1種の混和材を含み、セメント100質量部に対して前記混和材を、5質量部以上30質量部以下の範囲の量にて含むことによって、これらの混和材の種類や配合量を変えることによっても、セメントミルクの可使時間、凝結始発時間や圧縮強度などの特性を調整することができる。
【0044】
本実施形態の半たわみ性舗装用セメントミルクの製造方法によれば、モルタル組成物と塩水とを所定の量比で用意して混合するので、上述のセメントミルクを、例えば、離島や沿岸地域など淡水の入手が困難な場所で容易に製造することができる。
【0045】
本実施形態の半たわみ性舗装の施工方法によれば、セメントミルクとして上述のセメントミルクを用いるので、開粒度アスファルト混合物の内部にセメントミルクを短時間で完全に浸透させることができ、さらに浸透させた後の硬化時間が短く、初期強度が高いので、施工後から交通開放までの時間を短縮することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を本発明例と比較例により説明する。
【0047】
本発明例および比較例にて使用した使用材料を、以下に示す。
1)セメント:普通ポルトランドセメント(三菱マテリアル社製)
2)速硬性混和材:カルシウムアルミネートと無水石膏と凝結調整剤を、40:60:1.2(質量比)の割合で混合したもの
3)凝結調整剤:炭酸ナトリウムと酒石酸とアルミン酸ナトリウムを、3:1:1(質量比)の割合で混合したもの(Bセッター、三菱マテリアル社製)
4)細骨材:珪砂7号、ニッチツ社製
5)再乳化粉末樹脂:LDM−2071P、ニチゴーモビニール社製
6)高炉スラグ微粉末:三菱マテリアル社製
7)フライアッシュ:JIS2種、中部テクノ社製
8)石灰石微粉末:道路用普通炭酸カルシウム、菱光石灰社製
9)減水剤:ポリカルボン酸コポリマー、メルフラックスFW−10、BASFジャパン社製)
10)人工海水:塩化物イオン濃度2.1質量%、アクアマリン、八洲薬品社製
11)水道水(埼玉県秩父郡)
【0048】
[モルタル組成物A〜Dの作製]
普通ポルトランドセメント、速硬材、細骨材、再乳化粉末樹脂、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末、凝結調整剤を下記の表1に示す質量部にて秤量した。
秤量した各材料を、V型混合機で15分混合し、モルタル組成物A〜Dを作製した。
【0049】
【表1】
【0050】
[本発明例1〜8および比較例1〜3]
粉体混合物Aと、練混ぜ水(人工海水、水道水)と、凝結調整剤と、減水剤とを、下記の表2に示す質量割合にて用意した。まず、練混ぜ水(人工海水、水道水)と、凝結調整剤と、減水剤とを混合して練混ぜ水組成物を調製した。次いで、粉体混合物Aと練混ぜ水組成物とをラボミキサーで3分間混練して、本発明例1〜8および比較例1〜3のセメントミルクを調製した。
【0051】
調製したセメントミルクについて、P漏斗流下時間、粘度、浸透性、凝結始発時間および圧縮強度(材齢3時間、材齢7日)を、それぞれ下記の方法により測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0052】
(P漏斗流下時間)
土木学会規準JSCE−F 521「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(P漏斗による方法)」に準拠して測定した。
【0053】
(粘度)
練混ぜ直後のセメントミルクの粘度をブルックフィールド型回転式粘度計により測定した。
【0054】
(浸透性)
30×30×厚さ10cmの開粒度アルファルト混合物(空隙率22%)の上面からセメントミルクを流し込み、浸透状況を目視観察し、下記の基準で浸透性を阪大した。
○:10cmの厚さを全浸透し、アスファルト混合物の下面からセメントミルクが浸出する。
△:アスファルト混合物5cm〜10cmの深さでセメントミルクが浸透する。
×:アルファルト混合物への浸透性が5cm未満である。
【0055】
(凝結始発時間)
JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した。
【0056】
(圧縮強度)
土木学会規準 JSCE−G 505「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。
【0057】
【表2】
【0058】
表2の結果から、練混ぜ水として、凝結調整剤および減水剤を本発明の範囲で含有する人工海水を用いた本発明例1〜8のセメントミルクは、練混ぜ水として凝結調整剤を含有しない人工海水を用いた比較例1のセメントミルクと比較して、P漏斗流下時間が短く、粘度が高く、浸透性に優れており、流動性が高くなることが確認された。また、本発明例1〜8のセメントミルクは、比較例1のセメントミルクと比較して、凝結始発時間(可使時間)が長くなることが確認された。特に、凝結調整剤を、モルタイル組成物100質量部に対して0.2質量部以上(減水剤を含む場合は凝結調整剤と減水剤の合計)含有する人工海水を用いた本発明例2〜8のセメントミルクは、流動性がさらに高くなることが確認された。
また、本発明例1〜8のセメントミルクは、本混ぜ水として水道水を用いた比較例2のセメントミルクと比較して、材齢3時間の圧縮強度が高く、初期強度発現性に優れることが確認された。
一方、練混ぜ水として凝結調整剤を本発明の範囲よりも多く有する人工海水を用いた比較例3のセメントミルクは、凝結始発時間が長くなり、材齢3時間の圧縮強度が測定不可となるまで低下することが確認された。
【0059】
[本発明例9〜17および比較例4〜9]
粉体混合物B〜Dと、練混ぜ水(人工海水、水道水)と、凝結調整剤と、減水剤とを、下記の表3に示す質量割合にて用意した。まず、練混ぜ水(人工海水、水道水)と、凝結調整剤と、減水剤とを混合して練混ぜ水組成物を調製した。次いで、粉体混合物Aと練混ぜ水組成物とをラボミキサーで3分間混練して、本発明例9〜17および比較例4〜9のセメントミルクを調製した。
【0060】
調製したセメントミルクについて、P漏斗流下時間、粘度、浸透性、凝結始発時間および圧縮強度(材齢3時間、材齢7日)を、それぞれ上記の方法により測定した。その結果を下記の表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果から、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、石灰石微粉末を含むモルタル組成物においても練混ぜ水として、凝結調整剤および減水剤を本発明の範囲で含有する人工海水を用いた本発明例9〜17のセメントミルクは、練混ぜ水として凝結調整剤を含有しない人工海水を用いた比較例4、6、8のセメントミルクと比較して、P漏斗流下時間が短く、粘度が高く、浸透性に優れており、流動性が高くなることが確認された。また、本発明例9〜17のセメントミルクは、比較例4、6、8のセメントミルクと比較して、凝結始発時間(可使時間)が長くなることが確認された。
また、本発明例9〜17のセメントミルクは、練混ぜ水として水道水を用いた比較例5、7、9のセメントミルクと比較して、材齢3時間の圧縮強度が高く、初期強度発現性に優れることが確認された。