(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
I.分離膜
(1)層(I)
本発明の分離膜は、厚みが0.5〜100μmの層(I)を有する。層(I)は、
図1中に符号「1」で示す層である。
層(I)は、厚み方向の断面において、領域a、bおよびcを有する。
【0014】
(1−1)領域a、bおよびc
図1に示すように、領域aとは、層(I)の一方の表面(A面)2から深さ50〜150nmの領域である。領域bとは、層(I)の他方の表面(B面)3から深さ50〜150nmの領域である。領域cは、両表面、すなわちA面2およびB面3からの深さが同じとなる厚み100nmの領域である。言い換えると領域cは、層(I)の断面において、層(I)の厚みの二等分線を中心とする、幅100nmの領域である。
【0015】
領域aの平均孔径Pa、領域bの平均孔径Pbは、いずれも0.3nm以上3.0nm以下であり、領域cの平均孔径Pcは3.0nm以下である。
領域a11の開孔率Ha、領域b12の開孔率Hb、領域c13の開孔率Hcが以下の式を満たす。
2Hc<Ha
2Hc<Hb
【0016】
(1−2)各部分の厚み
層(I)の厚みは0.5〜100μmであることが重要である。層(I)の厚みが0.5μm未満の場合、膜に欠陥が生じ易くなり、分離性能が不十分となる。また、層(I)の厚みが100μmを超える場合、透過性能が不十分となる。
【0017】
層(I)の厚みは0.5〜50μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましく、0.5〜20μmであることがさらに好ましく、0.5〜10μmであることが特に好ましい。
領域a、bおよびcの厚みはいずれも100nmである。
【0018】
(1−3)平均孔径
層(I)において、領域aの平均孔径Pa、及び、領域bの平均孔径Pbはいずれも0.3nm以上3.0nm以下であることが重要である。Pa及びPbが0.3nm未満の場合、透過性能が不十分となる。また、Pa及びPbが3.0nmを超える場合、分離性能が不十分となる。
【0019】
Pa及びPbは0.4nm以上であることが好ましく、0.5nm以上であることがより好ましく、0.6nm以上であることがさらに好ましく、0.7nm以上であることが特に好ましい。
【0020】
また、Pa及びPbは2.5nm以下であることが好ましく、2.0nm以下であることがより好ましく、1.5nm以下であることがさらに好ましく、1.3nm以下であることが特に好ましい。
【0021】
層(I)における領域cの平均孔径Pcは、3.0nm以下である。Pcが3.0nmを超える場合、分離性能が不十分となる。Pcは2.5nm以下であることが好ましく、2.0nm以下であることがより好ましく、1.5nm以下であることがさらに好ましく、1.3nm以下であることが特に好ましい。
【0022】
(1−4)開孔率
層(I)において、領域aの開孔率Ha、領域bの開孔率Hb、領域cの開孔率Hcが以下の式を満たす。開孔率の求め方は実施例にて詳述する。
2Hc<Ha
2Hc<Hb
この式を満たさない場合、透過性能と分離性能の両立が困難となり、また、欠陥の発生を抑制することができない。
【0023】
開孔率Ha、HbおよびHcは、3Hc<Haまたは3Hc<Hbの少なくとも一方を満たすことが好ましく、
5Hc<Haまたは5Hc<Hbの少なくとも一方を満たすことがより好ましく、
10Hc<Haまたは10Hc<Hbの少なくとも一方を満たすことがさらに好ましい。
【0024】
開孔率Ha及び開孔率Hbの少なくとも一方が2%以上80%以下であることが好ましい。開孔率Ha及び開孔率Hbは、いずれも2%以上80%以下であることがより好ましい。開孔率Ha及び開孔率Hbがこれらの範囲にあることで、透過性能と分離性能が良好な範囲で両立が可能となる。
【0025】
開孔率Ha、及び、開孔率Hbは、それぞれ5%以上であることがより好ましく、7%以上であることがさらに好ましく、10%以上であることが特に好ましい。また、開孔率Ha、及び開孔率Hbは、それぞれ65%以下であることがより好ましく、45%以下であることがさらに好ましく、30%以下であることが特に好ましい。
【0026】
また、開孔率Hcは40%以下であることが好ましい。開孔率Hcが上記範囲にあることで、透過性能と分離性能とが良好な範囲で両立が可能となる。開孔率Hcは30%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
【0027】
(1−5)構成材料
(1−5−1)主成分の樹脂
上記層(I)を構成する主成分の樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリビニル化合物、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロースエステルなどが挙げられる。
【0028】
この中でも、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロースエステルが好ましい。すなわち、層(I)は、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロースエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0029】
ここで、「主成分」とは、組成物における含有率が50重量%以上である成分を指す。この含有率は、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。つまり、層(I)は、主成分である樹脂を50重量%以上含有する。
【0030】
ポリアミドの具体例としては、各種ラクタム類の開環重合、各種ジアミン類と各種ジカルボン酸類との重縮合、及び各種アミノカルボン酸類の重縮合等によって得られる各種ポリアミド類、ないしこれらの開環重合と重縮合とを組み合わせた共重合ポリアミド類等が挙げられる。
【0031】
上記ポリアミド類や共重合ポリアミド類としては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/12共重合体(ε−カプロラクタムとラウロラクタムとの共重合体)、及びナイロン6/66共重合体(ε−カプロラクタムとヘキサメチレンジアミン・アジピン酸のナイロン塩との共重合体)などが挙げられる。また、これらのポリアミドを2種類以上混合して使用することもできる。
【0032】
ポリエステルの具体例としては、例えば芳香族ジカルボン酸部分とグリコール部分からなる芳香族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸とグリコール部分からなる脂肪族ポリエステル、ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル、及びこれらの共重合体などが挙げられる。
【0033】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。グリコールの具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、及び1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。
【0034】
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、及びヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0035】
またポリエステルは、その特性を大きく変えない範囲で共重合を行うこともできる。共重合成分としては、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの5−(アルカリ金属)スルホイソフタル酸や、前述の芳香族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸などが挙げられる。また、これらのポリエステルを2種類以上混合して使用することもできる。
【0036】
セルロースエステルの具体例としては、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースのグルコースユニットに存在する3つの水酸基が2種類以上のアシル基により封鎖されたセルロース混合エステル、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0037】
セルロース混合エステルの具体例としては、例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートオレート、及びセルロースアセテートステアレートなどが挙げられる。また、これらのセルロースエステルを2種類以上混合して使用することもできる。
【0038】
(1−5−2)可塑剤
本発明の分離膜は、可塑剤を含有していてもよい。
可塑剤は、主成分の樹脂を熱可塑化する化合物であれば特に限定されない。また、1種類の可塑剤だけでなく、2種類以上の可塑剤が併用されてもよい。
【0039】
可塑剤の具体例としては、例えばフタル酸ジエチルなどのフタル酸エステル系、アジピン酸ジ−1−ブチルなどの脂肪族二塩基酸エステル系、リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシルなどのリン酸エステル系、アセチルクエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系、アセチルリシノール酸メチルなどの脂肪酸エステル系、グリセリントリアセテートなどの多価アルコールエステル系、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール系、カプロラクトン系化合物、及びそれらの誘導体などが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、ポリアルキレングリコール系が好ましい。ポリアルキレングリコール系は、少量添加で可塑化効果を発現して膜強度の低下を抑制でき、また溶出後の細孔が微細なものとなり分離性能と透過性能の両立が可能となる。
【0041】
ポリアルキレングリコール系可塑剤の具体的な例としては、例えば重量平均分子量が400〜2000である、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールなどが挙げられる。
【0042】
(1−5−3)親水性樹脂
本発明の分離膜は、親水性樹脂を含有していてもよい。親水性樹脂を含有している場合、特に水処理用膜として使用する際に透過性能の向上が可能となる。
【0043】
本発明における親水性樹脂とは水と親和性が高い樹脂のことであり、水に溶解するか、または、水に対する接触角が分離膜の主成分よりも小さい樹脂を指す。
【0044】
親水性樹脂の具体例としては、上記した性質を有するものであれば特に限定されない。例えばポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、及びそれらの誘導体などが好ましい例として挙げられる。
【0045】
親水性樹脂は、分離膜中に残存していることが好ましいが、親水性樹脂の一部または全部が分離膜から水中に溶出してもよい。水中に溶出させた場合、親水性樹脂が抜けた跡が膜中における細孔となり、透過性能が良好となる。
【0046】
(1−5−4)添加剤
本発明の分離膜には、本発明の効果を損なわない範囲で上記した以外の添加剤を含有してもよい。
添加剤の具体例としては、例えば有機滑剤、結晶核剤、有機粒子、無機粒子、末端封鎖剤、鎖延長剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色防止剤、艶消し剤、抗菌剤、制電剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、抗酸化剤、イオン交換剤、消泡剤、着色顔料、蛍光増白剤、及び染料などが挙げられる。
【0047】
(2)層(II)
分離膜は、層(I)だけでなく、多孔性支持膜である層(II)をさらに備えてもよい。言い換えると、層(I)は多孔性支持層である層(II)と積層されていてもよい。層(II)が設けられることで、分離膜が物理的に補強されるので、分離膜の強度を保ちつつ、層(I)を薄くすることができる。その結果、分離膜の透水性が向上する。
【0048】
(2−1)厚み
層(II)の厚みは5〜500μmであることが好ましい。層(II)の厚みが上記範囲にあることで、十分な支持性と、透過性能を良好に両立することができる。
【0049】
層(II)の厚みは10〜400μmであることがより好ましく、20〜300μmであることがさらに好ましく、30〜200μmであることが特に好ましい。
【0050】
(2−2)孔径、開孔率
層(II)の多孔性支持膜は、分離膜として使用する際に、層(I)を物理的に支持し、厚み換算した透過性能が層(I)を単独で使用した場合よりも低下しなければ、その孔径、開孔率などに特に制限はない。
【0051】
(2−3)構成材料
層(II)を構成する材料の種類には特に制限はないが、製膜性、及び層間接着性などの観点から、層(I)を構成する材料を含有することが好ましい。
【0052】
(3)分離膜の層構成
分離膜は、層(I)単独でもよいし、層(I)と層(II)の2層で構成されていてもよいし、少なくとも層(I)を含んでいれば、別の層を含んだ2層以上で構成されてもよい。
【0053】
分離膜が層(I)と層(II)の2層で構成される場合は、いずれの層が分離前の物質との接触面であっても構わない。層(I)が分離前の物質との接触面であることが好ましい。
【0054】
分離膜が3層以上で構成される場合も、その積層順序に特に制限は無い。層(I)が分離前の物質との接触面であることが好ましい。
【0055】
(4)分離膜の形状
本発明の分離膜の形状は特に限定されないが、中空糸形状の膜(以下、中空糸膜ともいう)、または、平面形状の膜(以下、平膜ともいう)が好ましく採用される。このなかでも、中空糸膜は効率良くモジュールに充填することが可能であり、モジュールの単位体積当たりの有効膜面積を大きくとることができるため、より好ましい。
【0056】
中空糸膜の場合、モジュールに充填した際の有効膜面積と、膜強度を両立させる観点から、中空糸の外径が20〜200μmであることが好ましく、30〜180μmであることがより好ましく、40〜160μmであることがさらに好ましい。
【0057】
また、本発明の分離膜が中空糸形状である場合、中空部を流れる流体の圧損と、座屈圧との関係から、中空糸の中空率が20〜55%であることが好ましく、25〜50%であることがより好ましく、30〜45%であることがさらに好ましい。
【0058】
中空糸膜の外径や中空率を上記範囲とする方法は特に限定されない。例えば中空糸を製造する紡糸口金の吐出孔の形状、または巻取速度/吐出速度で算出できるドラフト比を適宜変更することで調整できる。
【0059】
(5)引張強度
本発明の分離膜は、製膜時や、モジュール作成時などにおける外力による欠陥の発生を抑制するために、長手方向の引張強度は70MPa以上であることが好ましい。引張強度の測定条件は実施例にて詳細に説明する。
【0060】
長手方向の引張強度は80MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましく、120MPa以上であることが特に好ましい。長手方向の引張強度は高い方が好ましいが、実用上の上限は300MPaである。
【0061】
引張強度を上記範囲とする方法は特に限定されないが、例えば、分離膜を製造する際の、巻取速度/吐出速度で算出できるドラフト比、および/または、延伸倍率を後述する好ましい範囲とすることが挙げられる。
【0062】
(6)膜透過流束(透水量)
本発明の分離膜は、特に水処理用膜として使用する際に良好な透過性能を発現するために、塩化ナトリウム濃度500ppmのpH6.5に調整した水溶液を、25℃、圧力0.75MPaで濾過した際の膜透過流束(透水量)は2L/m
2/day以上であることが好ましい。膜透過流束の測定条件は実施例にて詳細に説明する。
【0063】
膜透過流束は5L/m
2/day以上であることがより好ましく、10L/m
2/day以上であることがさらに好ましく、20L/m
2/day以上であることがさらにより好ましく、30L/m
2/day以上であることが特に好ましい。膜透過流束は高い方が好ましいが、後述する塩阻止率とのバランスから上限は500L/m
2/dayである。
【0064】
(7)塩阻止率
本発明の分離膜は、特に水処理用膜として使用する際に良好な分離性能を発現するために、塩阻止率は90%以上であることが好ましい。塩阻止率の測定条件は実施例にて詳細に説明する。
【0065】
塩阻止率は92.5%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、96.5%以上であることがさらにより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。また、塩阻止率は99.9%以下であることが好ましく、99.5%であることがより好ましい。
【0066】
(8)膜の種類
本発明の分離膜は、特に水処理に利用可能な膜である。水処理用膜としては、具体的には、例えば、精密濾過膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、及び正浸透膜などが挙げられる。本発明の分離膜は特に、ナノ濾過膜、逆浸透膜、及び正浸透膜に好ましく適用される。
【0067】
II.製造方法
次に、本発明の分離膜を製造する方法について、分離膜が中空糸膜の場合を例に具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0068】
以下に説明する製造方法は、溶融紡糸によって中空糸膜を製造する方法であり、大まかに、下記の工程を備える。
(a)主成分の樹脂と上述の可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一方とを溶融混練し、樹脂組成物を作製する工程
(b)溶融混練し得られた上記樹脂組成物を口金から吐出し、空気中で冷却することで中空糸を形成する工程
(c)得られた中空糸から上記可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一部を溶出させる工程
【0069】
(a)溶融混練工程
本工程では、主成分の樹脂と上述の可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一方とを溶融混練する。具体的には、本工程では、上述の材料を溶融混練することで樹脂組成物(ペレット)を作製する。
【0070】
以下記載の樹脂組成物(ペレット)は上記層(I)用にも層(II)用にも適用できる。主成分となる樹脂及び他の材料を二軸混練押出機に投入し、加熱溶融する。このとき、主成分となる樹脂の他に、少なくとも可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一方をペレットに含める。可塑剤、親水性樹脂等の好ましい樹脂、可塑剤および親水性樹脂については、上述したとおりである。
【0071】
ペレットを構成する樹脂組成物100重量%において、可塑剤の含有量は、5〜26重量%であることが好ましい。可塑剤の含有量が5重量%以上であることで、セルロースエステルの熱可塑性および分離膜の透過性能が良好なものとなる。可塑剤の含有量を26重量%以下とすることで、分離膜の分離性能および膜強度が良好なものとなる。可塑剤(B)の含有量は、より好ましくは10〜24重量%、さらに好ましくは14〜22重量%である。
【0072】
ペレットを構成する樹脂組成物100重量%において、親水性樹脂の含有量は、0.01〜10重量%であることが好ましい。親水性樹脂の含有量を0.01重量%以上とすることで、分離膜の透過性能が良好なものとなる。親水性樹脂の含有量を10重量%以下とすることで、分離膜の分離性能と膜強度が良好なものとなる。親水性樹脂の含有量は、より好ましくは0.05〜8.0重量%、さらに好ましくは0.1〜6.0重量%である。
【0073】
投入方法に特に制限はない。例えば、事前に混ぜ合わせて投入する方法、またはそれぞれ吐出量が設定された複数台のフィーダーを用いて投入する方法等が挙げられる。均一に混ざるまで溶融混練を行った後、ガット状に水槽に吐出して、ペレタイザーによりカットすることによりペレットを得る。
【0074】
(b)中空糸の形成
次に、得られたペレットを溶融紡糸法により中空糸化する。中空糸を形成する工程は、具体的には、加熱溶融された樹脂組成物を口金の吐出孔から中空糸状に押し出すこと、押し出された樹脂組成物を空気中で冷却することで固化させること、を備える。
【0075】
ここで、本発明では、
図2に示す、紡糸口金の吐出孔部の孔長(L)16と孔間隙(D)17の比(L/D)を2以上20以下の範囲とすることが好ましい。ここで、孔長(L)16とは、口金吐出部の孔間隙と同一の間隙を有する部分の長さのことであり、ランド長とも呼ばれる。また、孔間隙(D)17とは、口金吐出部のスリットの厚みのことである。
【0076】
L/Dは、4以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましく、11以上であることが特に好ましい。また、L/Dは、18以下であることがより好ましく、16以下であることがさらに好ましい。L/Dは12以下であってもよい。
【0077】
孔長(L)は0.2mm以上、0.5mm以上、1mm以上、または2mm以上であることが好ましい。また、孔長(L)は10mm以下、8mm以下、6mm以下、または5mm以下であることが好ましい。
【0078】
冷却は、空気中で、樹脂組成物を固化する温度まで冷却することができればよく、他の条件は特に限定されない。冷却には、中空糸に風を当てる冷却装置を用いてもよい。
中空糸の巻き取り速度(紡糸速度)は吐出速度よりも大きく設定されることが好ましい。ドラフト比は200以上、300以上、または400以上であることが好ましい。また、ドラフト比は、1,000以下、900以下、または800以下であることが好ましい。
【0079】
本発明では、口金の孔長(L)と、孔長と孔間隙の比(L/D)、及びドラフト比を上記範囲とすることで、領域a、領域b、領域cの平均孔径、開孔率を上記した好ましい範囲にできることを見出した。
【0080】
その理由は明確には分かっていないが、吐出孔内部において、層(I)の樹脂組成物の厚み方向の各領域に与えるせん断と、厚み方向で生じる流速差、吐出後において、ドラフトにより層(I)の樹脂組成物の厚み方向の各領域に与えるせん断、これらによって、層(I)の厚み方向における可塑剤や親水性樹脂の分散状態が変化するためと考えられる。
【0081】
本発明では、中空糸を製造する各種の紡糸口金を使用することができ、具体的には、例えば、C型スリットの紡糸口金、弧状(アーク状)のスリット部が複数個(例えば2〜5個)配置されて1個の吐出孔を形成する紡糸口金、及びチューブインオリフィス型の紡糸口金等を用いて製造することができる。
【0082】
樹脂組成物が吐出されてから冷却が始まるまでの間の距離、具体的には紡糸口金の下面から冷却装置(チムニー)上端までの距離は、0〜50mmであることが好ましく、0〜40mmであることがより好ましく、0〜30mmであることがさらに好ましい。
【0083】
本製造方法は、紡糸後に、中空糸を延伸する工程をさらに備えてもよい。延伸方法は特に限定されないが、例えば、延伸前の中空糸膜を加熱ロール上での搬送、または、オーブン中での加熱によって延伸を行う温度まで昇温し、ロール間の周速差を用いて1段もしくは2段以上の多段で延伸を行う。
【0084】
例えば、主成分の樹脂がセルロースエステルの場合、延伸工程における中空糸膜の温度の好ましい範囲は60〜140℃であり、より好ましくは70〜130℃、さらに好ましくは80〜120℃である。
【0085】
合計の延伸倍率は1.1〜2.0倍が好ましく、1.2〜2.0倍がより好ましく、1.3〜1.5倍がさらに好ましい。また必要に応じ、延伸中あるいは延伸後に熱固定を施してもよい。熱固定温度は100〜220℃であることが好ましい。
【0086】
なお、上記層(I)及び層(II)を積層させて中空糸を作製する方法は、具体的に実施例にて詳細に説明する。
【0087】
(c)溶出工程
このようにして紡糸し、巻き取って得られた中空糸から、可塑剤および/または親水性樹脂を溶出してもよい。溶出方法は特に限定されないが、水、アルコール水溶液、酸水溶液、及びアルカリ水溶液などの溶媒に浸漬することが採用される。なお、平膜型の分離膜を作製する方法は、具体的に実施例にて詳細に説明する。
【0088】
可塑剤または親水性樹脂が抜けた跡が膜における細孔となる。なお、可塑剤および親水性樹脂は、分離膜中に残存してもよいし、分離膜から完全に溶出してもよい。
【0089】
平均孔径Pa、Pb、Pcおよび開孔率を上記の範囲とする手段として、上述のとおり、主成分の樹脂と、可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一方とを含有する樹脂組成物を、孔長および間隙と孔長の関係が特定の範囲にある口金を用いると共に、特定の範囲のドラフト比で溶融製膜した後、可塑剤および親水性樹脂の少なくとも一部を水中に溶出させて細孔を形成する方法は好適であるが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0090】
III.モジュール
上記のようにして得られた本発明の分離膜は、従来公知の方法によりケースに充填することで、モジュールとすることが可能である。例えば、中空糸膜モジュールは、複数の中空糸膜と、筒状のケースと、を備える。複数の中空糸膜は、束ねて、筒状のケースに挿入した後、その端部をポリウレタンやエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で上記ケースに固定して封止する。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、モジュールを作製する。
【0091】
また、平膜であれば、支持体に固定されるか、膜同士が貼り合わせられることで封筒状膜を形成し、さらに必要に応じて集水管等に装着されることでモジュール化される。
【0092】
IV.造水方法
本発明の分離膜は、上記モジュールの形態としたのち、溶液から溶質を除去することを目的とする造水に用いることができる。その際の操作圧力は0.1MPa以上であると好ましく、0.3MPa以上であるとより好ましく、0.6MPa以上であるとさらに好ましい。一般に、操作圧力が大きいほど膜透過流束、脱塩率ともに大きくなる。
【0093】
一方で、中空糸膜の径方向への潰れ等、膜の破損を抑制するために、操作圧力は6.0MPa以下であることが好ましく、3.0MPa未満であることがより好ましく、1.5MPa未満であることがさらに好ましい。
【0094】
本発明の分離膜を液体の脱塩に使用する場合には、供給する液体の温度は高い脱塩率を実現するために、45℃以下であることが好ましく、40℃未満であることがより好ましく、35℃未満であることがさらに好ましい。その一方で、高い膜透過流束を得るために、供給水の温度は5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましい。
【0095】
また、供給する液体のpHは、高くなると海水等の高塩濃度の供給水の場合、マグネシウム等のスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
以上に記した数値範囲の上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。
【0097】
[測定及び評価方法]
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めたものである。
なお、以下の(1)、(2)、及び(8)においては、分離膜を25℃で8時間、真空乾燥させた状態で測定及び評価をした。
【0098】
(1)分離膜の各層の厚み(μm)
分離膜の厚み方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察、撮影し、層(I)または層(II)の厚み(μm)を算出した。各層の厚みは、任意の10箇所を観察して算出し、その平均値とした。
【0099】
(2)中空糸膜の中空率(%)、外径(μm)
中空糸膜の長手方向と垂直な方向(繊維径方向)と、膜の厚み方向の断面を光学顕微鏡により観察、撮影し、断面の中空部を合わせた全面積Sa(μm
2)と中空部の面積Sb(μm
2)を測定し、下式を用いて算出した。なお、中空率、及び外径は中空糸10本を用いて算出し、その平均値とした。
中空率(%)=(Sb/Sa)×100
外径(μm)=(4×Sa/π)
1/2【0100】
(3)平均孔径Pa、Pb、Pc(nm)
湿潤状態の分離膜を凍結乾燥した後、RuO
4染色超薄切片法にて分離膜の長手方向の断面の観察資料を作製し、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA)にて、領域a、領域b、及び領域cについて、それぞれ、加速電圧100kV、倍率10万倍で観察、撮影した。得られた断面写真の20nmが5cmになるように印刷した拡大写真の上に、透明なフィルムやシートを重ねて、細孔に該当する部分を油性インキ等で塗りつぶした。ここで、細孔に該当する部分とは、RuO
4ガスが沈着してできた黒色の微粒子と見なした。次いで、イメージアナライザーを用いて、当該部分の孔径を求めた。この測定を各領域について、任意の30個の細孔で行い、数平均することで平均孔径(nm)を求めた。
【0101】
(4)開孔率Ha、Hb、Hc(%)
領域a、領域b、及び領域cについて、それぞれ、上記(3)で平均孔径を算出した拡大写真の中の20nm四方あたりの細孔数を数えて、1m
2当たりの細孔数に換算した。この計算を各領域について、任意の5箇所の20nm四方で行い、数平均することで、各領域の細孔密度(個/m
2)を算出した。開孔率は、上記(3)で求めた平均孔径(nm)と細孔密度(個/m
2)から次式により計算して求めた。
開孔率(%)=(π×((平均孔径)/2)
2)×(細孔密度)×10
−16【0102】
(5)透過性能(膜透過流束(L/m
2/day))
イソプロピルアルコールの10wt%水溶液に1時間浸漬して親水化を行った分離膜に、濃度500ppm、温度25℃、pH6.5に調整した塩化ナトリウム水溶液を操作圧力0.75MPaで供給して、膜ろ過処理を行い、得られた透過水量に基づいて、下記式により膜透過流束を求めた。
膜透過流束(L/m
2/day)=1日あたりの透過水量/膜面積
【0103】
(6)分離性能(塩阻止率(%))
膜透過流束と同条件で膜ろ過処理を行い、得られた透過水の塩濃度を測定した。得られた透過水の塩濃度及び供給水の塩濃度から、下記式に基づいて塩阻止率を求めた。なお、透過水の塩濃度は、電気伝導度の測定値より求めた。
塩阻止率(%)=100×{1−(透過水中の塩化ナトリウム濃度/供給水中の塩化ナトリウム濃度)}
なお、上記(5)、及び(6)において、分離膜が中空糸膜の場合は、以下のように小型モジュールを作成して膜ろ過処理を行った。
中空糸膜を束ねて、プラスチック製パイプに挿入した後、熱硬化性樹脂をパイプに注入し、末端を硬化させて封止した。封止させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、外径基準の膜面積が約0.1m
2の評価用小型モジュールを作製した。
また、上記(5)、及び(6)においては、層(I)が供給水側との接触面となるように膜ろ過処理を行った。
【0104】
(7)耐欠陥性
分離膜を20枚(中空糸膜の場合は上記小型モジュールを20本)準備し、上記(6)に記載の方法で塩阻止率を求め、20枚(中空糸膜の場合は20本)の中で、最も高い数値と、最も低い数値の差を欠陥パラメータとして算出した。その欠陥パラメータを用いて、以下の基準にて評価した。
◎:0.2未満
○:0.2以上1未満
△:1以上3未満
×:3以上
【0105】
(8)引張強度(MPa)
温度20℃、湿度65%の環境下において、引張試験機(オリエンテック社製テンシロン UCT−100)を用い、試料長100mm、引張速度100mm/minの条件にて引張強度(破断強度)(MPa)を測定した。なお測定回数は5回とし、その平均値を引張強度とした。
【0106】
[樹脂(A)]
(A1)
セルロース(コットンリンター)100重量部に、酢酸240重量部とプロピオン酸67重量部を加え、50℃で30分間混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸172重量部と無水プロピオン酸168重量部をエステル化剤として、硫酸4重量部をエステル化触媒として加えて、150分間撹拌を行い、エステル化反応を行った。エステル化反応において、40℃を越える時は、水浴で冷却した。反応後、反応停止剤として酢酸100重量部と水33重量部の混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸333重量部と水100重量部を加えて、80℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム6重量部を含む水溶液を加えて、析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別し、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。得られたセルロースアセテートプロピオネートのアセチル基及びプロピオニル基の平均置換度は各々1.9、0.7であり、重量平均分子量(Mw)は17.8万であった。
(A2)
株式会社ダイセル製セルロースアセテート(LT35)、置換度2.90
【0107】
[可塑剤、親水性樹脂(B)]
(B1)
重量平均分子量600のポリエチレングリコール
(B2)
重量平均分子量3400のポリエチレングリコール
(B3)
重量平均分子量8300のポリエチレングリコール
(B4)
グリセリン
【0108】
[分離膜の製造]
(実施例1)
セルロースエステル(A1)78重量%、重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)22重量%を二軸押出機にて240℃で溶融混練し、均質化した後にペレット化して樹脂組成物を得た。このペレットを80℃で8時間真空乾燥を行った。
乾燥させた樹脂組成物のペレットを二軸押出機に供給し230℃で溶融混練したのち、ギヤポンプにて押出量を調整し、中央部に気体の流路を配した2重管口金(L=2mm、L/D=4)より下方に紡出した。
この紡出した中空糸を、口金の下面から冷却装置(チムニー)上端までの距離が30mmとなるように冷却装置へ導き、25℃、風速1.5m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、ドラフト比が50となるようにワインダーで巻き取った。その後、イソプロピルアルコールの10wt%水溶液に1時間浸漬して可塑剤を溶出させて中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた複合中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0109】
(実施例2)
LとL/Dは実施例1と同じで、吐出口径が異なる口金を用い、ドラフト比を200とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0110】
(実施例3)
樹脂組成物の成分を表1のように変更した以外は、実施例2と同様にして中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0111】
(実施例4〜6)
口金のLとL/Dを表1のように変更した以外は、実施例2と同様にして中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0112】
(比較例1)
口金のLとL/Dを表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0113】
(比較例2)
樹脂組成物の成分を表1のように変更し、LとL/Dは実施例1と同じで、吐出口径が異なる口金を用い、ドラフト比を20とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、グリセリン(B4)は、全量が中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表1に示した。
【0114】
(実施例7)
セルロースエステル(A1)78重量%、重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)18重量%、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)4重量%を二軸押出機にて240℃で溶融混練し、均質化した後にペレット化して層(I)用の樹脂組成物を得た。このペレットを80℃で8時間真空乾燥を行った。
また、セルロースエステル(A1)68重量%、重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)22重量%、重量平均分子量8300のポリエチレングリコール(B3)10重量%を二軸押出機にて240℃で溶融混練し、均質化した後にペレット化して、層(II)用の樹脂組成物を得た。このペレットを80℃で8時間真空乾燥を行った。
乾燥させた層(I)用の樹脂組成物のペレット及び層(II)用の樹脂組成物のペレットを、それぞれ別々の二軸押出機に供給し220℃で溶融混練したのち、ギヤポンプにて層(I)側:層(II)側=1:5となるように押出量を調整した。続いて外層が層(I)、内層が層(II)となるように、中央部に気体の流路を配した多重管ノズルを有する紡糸口金内に導入し、口金内で複合化させた。その後、口金孔(L=2mm、L/D=4)より下方に紡出した。この紡出した中空糸を、口金の下面から冷却装置(チムニー)上端までの距離が30mmとなるように冷却装置へ導き、25℃、風速1.5m/秒の冷却風によって冷却し、油剤を付与して収束させた後、ドラフト比が200となるようにワインダーで巻き取った。その後、イソプロピルアルコールの10wt%水溶液に1時間浸漬して可塑剤、親水性樹脂を溶出させて複合中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)、重量平均分子量8300のポリエチレングリコール(B3)は、それぞれ全量が複合中空糸膜から水中に溶出していた。得られた複合中空糸膜の構造、物性を表2に示した。
【0115】
(実施例8)
口金孔のLとL/Dを表2のように変更した以外は、実施例7と同様にして複合中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)、重量平均分子量8300のポリエチレングリコール(B3)は、それぞれ全量が複合中空糸膜から水中に溶出していた。得られた複合中空糸膜の構造、物性を表2に示した。
【0116】
(実施例9)
ギヤポンプにて押出量を調整する際に、層(I)側:層(II)側=1:10となるように押出量を調整した以外は、実施例8と同様にして複合中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)、重量平均分子量8300のポリエチレングリコール(B3)は、それぞれ全量が複合中空糸膜から水中に溶出していた。得られた複合中空糸膜の構造、物性を表2に示した。
【0117】
(比較例3)
LとL/Dは実施例7と同じで吐出口径が異なる口金を用い、ドラフト比を10とした以外は、実施例7と同様にして複合中空糸膜を得た。なお、浸漬前後における重量変化から、溶融紡糸する際に可塑剤、親水性樹脂として添加した重量平均分子量600のポリエチレングリコール(B1)、重量平均分子量3400のポリエチレングリコール(B2)、重量平均分子量8300のポリエチレングリコール(B3)は、それぞれ全量が複合中空糸膜から水中に溶出していた。得られた中空糸膜の構造、物性を表2に示した。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
表1、及び表2の結果から、領域aの平均孔径Pa及び領域bの平均孔径Pbが0.3nm以上3.0nm以下、領域cの平均孔径Pcが3.0nm以下であり、かつ領域aの開孔率Ha、領域bの開孔率Hb、領域cの開孔率Hcが2Hc<Ha及び2Hc<Hbの式を満たす実施例1〜9の分離膜は、一定の膜透過流束(透過性能)と塩阻止率(分離性能)を有し、かつ耐欠陥性に優れることがわかる。
一方、領域aの開孔率Ha、領域bの開孔率Hb、領域cの開孔率Hcが2Hc<Ha及び2Hc<Hbの式を満たさない比較例1〜3の分離膜、さらに領域aの平均孔径Pa及び領域bの平均孔径Pbが0.3〜3.0nmの範囲内にない比較例2の分離膜は、塩阻止率(分離性能)、及び耐欠陥性に劣ることがわかる。
【0121】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2016年1月29日付で出願された日本特許出願(特願2016−016423)に基づいており、その全体が引用により援用される。