特許第6763375号(P6763375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763375楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763375
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/04 20060101AFI20200917BHJP
   C09D 7/65 20180101ALN20200917BHJP
   C09J 11/08 20060101ALN20200917BHJP
   A61K 8/81 20060101ALN20200917BHJP
   A61K 8/02 20060101ALN20200917BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALN20200917BHJP
   G02B 5/02 20060101ALN20200917BHJP
【FI】
   C08F2/04
   !C09D7/65
   !C09J11/08
   !A61K8/81
   !A61K8/02
   !A61Q1/12
   !G02B5/02 B
【請求項の数】8
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-517897(P2017-517897)
(86)(22)【出願日】2016年5月2日
(86)【国際出願番号】JP2016063545
(87)【国際公開番号】WO2016181878
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-95723(P2015-95723)
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】橋場 俊文
(72)【発明者】
【氏名】松坂 恵里奈
(72)【発明者】
【氏名】山田 剛毅
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−070372(JP,A)
【文献】 特開2010−100689(JP,A)
【文献】 特開2009−235353(JP,A)
【文献】 特開2013−131368(JP,A)
【文献】 特開2015−093973(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/181876(WO,A1)
【文献】 Michael J. Heslinga et al.,Fabrication of biodegradable spheroidal microparticles for drug delivery applications,Journal of Controlled Release,2009年 5月12日,Vol.138,Pages 235-242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C09D 1/00−201/10
C09J 1/00−201/10
A61K 8/00− 8/81
A61Q 1/12
G02B 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)を満たす楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法であって、
水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合溶媒、高分子安定剤、重合開始剤及び不飽和単量体を含む合成溶液を加熱し、少なくとも加熱開始後に合成溶液のpHを5以下又は11〜14に調整して溶液重合を行う工程を含むことを特徴とする楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
(1)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L)の平均(LAV)が0.1〜80μm、
(2)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の短径(D)の平均(DAV)が0.05〜40μm、及び
(3)前記長径(L)と短径(D)とから算出されるアスペクト比(L/D)の平均(PAV)が1.5〜30。
【請求項2】
前記水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合比が、質量比で、99:0.5:0.5〜25:55:20である請求項1記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性有機溶媒が、分子量が200以上の高分子化合物である請求項1又は2記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項4】
前記不飽和単量体が、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボン酸ビニルエステル系単量体及び多官能不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項5】
前記不飽和単量体が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基及びチオール基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有するものを含む請求項1〜4のいずれか1項記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項6】
前記溶液重合工程の後、得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子と、前記反応性官能基と反応する反応基を有する有機化合物とを、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は溶解しないが前記有機化合物は溶解する溶媒の存在下で、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子に含まれる官能基と前記有機化合物に含まれる反応基とを反応させて架橋させる工程を含む請求項5記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、エーテル基、シアノ基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含むものである請求項6記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【請求項8】
少なくとも加熱開始後に前記合成溶液のpHを5以下に調整する請求項1〜7のいずれか1項記載の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロンサイズを有するポリマー粒子や無機粒子は、充填剤や検体として電子・電気材料、光学材料、塗料、インク、建築材料、生物・医薬材料、化粧料等の種々の分野で使用されている。近年、特に球状とは異なる異形状の粒子の開発が活発に行われており、光学特性、触感等様々な特性が付与されることから、日々応用開発も進められている。
【0003】
本発明者らも、高アスペクト比を有する楕円状又は針状ポリマー粒子の開発を進め、隠蔽性、光拡散性、触感性等の各特性において、従来の球状粒子よりも優れた特徴を有する粒子を見出している(特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、楕円状又は針状ポリマー粒子は、形状から得られる優れた特徴を有するものの、形状、粒子径を制御する上で不純物や凝集物も多くなりやすく、場合によっては濾過、分級に手間がかかることも大きな課題となっている。
【0005】
このような状況下、工業的な観点から、このような形状を精度よく安定的に得ることが可能なポリマー粒子の製造方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−235353号公報
【特許文献2】特開2009−235355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、単分散性に優れ、不純物や凝集物が少ない楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を、工業的な観点から精度よく安定して得ることができる、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合溶媒、高分子安定剤、重合開始剤及び不飽和単量体を含む合成溶液を加熱し、少なくとも加熱開始後に合成溶液のpHを5以下又は9以上に調整して溶液重合を行うことで、楕円形状、針形状又は棒形状を維持したまま、凝集物や不純物の少ない単分散性の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法を提供する。
1.下記(1)〜(3)を満たす楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法であって、
水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合溶媒、高分子安定剤、重合開始剤及び不飽和単量体を含む合成溶液を加熱し、少なくとも加熱開始後に合成溶液のpHを5以下又は11〜14に調整して溶液重合を行う工程を含むことを特徴とする楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
(1)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L)の平均(LAV)が0.1〜80μm、
(2)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の短径(D)の平均(DAV)が0.05〜40μm、及び
(3)前記長径(L)と短径(D)とから算出されるアスペクト比(L/D)の平均(PAV)が1.5〜30。
2.前記水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合比が、質量比で、99:0.5:0.5〜25:55:20である1の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
3.前記疎水性有機溶媒が、分子量が200以上の高分子化合物である1又は2の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
4.前記不飽和単量体が、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボン酸ビニルエステル系単量体及び多官能不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種を含む1〜3のいずれかの楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
5.前記不飽和単量体が、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基及びチオール基から選ばれる少なくとも1種の反応性官能基を有するものを含む1〜4のいずれかの楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
6.前記溶液重合工程の後、得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子と、前記反応性官能基と反応する反応基を有する有機化合物とを、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は溶解しないが前記有機化合物は溶解する溶媒の存在下で、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子に含まれる官能基と前記有機化合物に含まれる反応基とを反応させて架橋させる工程を含む5の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
7.前記有機化合物が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、エーテル基、シアノ基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基、カルボジイミド基及びオキサゾリン基から選ばれる少なくとも1つの官能基を含むものである6の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
8.少なくとも加熱開始後に前記合成溶液のpHを5以下に調整する1〜7のいずれかの楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法によれば、凝集物や不純物の少ない単分散性の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1で得られた粒子のSEM写真を示す図である。
図2】比較例1で得られた粒子のSEM写真を示す図である。
図3】実施例12、比較例9及び比較例10で作製した評価用シートにおける自動変角光度計を用いた反射光の光散乱分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法]
[溶液重合工程]
本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法は、下記(1)〜(3)を満たす楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法であって、水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合溶媒、高分子安定剤、重合開始剤及び不飽和単量体を含む合成溶液を加熱し、少なくとも加熱開始後に合成溶液のpHを5以下又は9以上に調整して溶液重合を行う工程を含むものである。
(1)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の長径(L)の平均(LAV)が0.1〜80μm、
(2)長軸方向と直交する方向から光を照射して得られる投影二次元図の短径(D)の平均(DAV)が0.05〜40μm、及び
(3)前記長径(L)と短径(D)とから算出されるアスペクト比(L/D)の平均(PAV)が1.5〜30。
【0013】
溶液重合法として具体的には、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法及びこれらに準ずる複合化した方法を含むものとする。
懸濁重合法は、単量体と、単量体に可溶な重合開始剤等とを、これらが難溶な媒体中で機械的に攪拌し、懸濁させた状態で重合反応を進行させてポリマー粒子を析出又は生成させる方法である。
乳化重合法は、水等の媒体と、この媒体に難溶な単量体と乳化剤(界面活性剤)等とを混合するとともに、媒体に可溶な重合開始剤を加えて重合反応を進行させてポリマー粒子を析出又は生成させる方法である。
分散重合法は、単量体は溶解するがポリマー化するに従い不溶となる液状媒体において単量体、開始剤、分散安定剤等が媒体に溶解した均一溶液で重合反応を進行させてポリマー粒子を析出又は生成させる方法である。
シード重合法は、重合反応の際にあらかじめ核となる別の粒子を加え、その粒子表面で重合反応を行う重合法のことである。
本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、これら各種の溶液重合によって得ることができるが、より好ましくは懸濁重合、乳化重合、分散重合又はその組み合わせによる方法がよい。これらの方法によれば、シード重合のように、シード粒子の準備工程を省くことができる。
【0014】
pHの調整は、少なくとも加熱開始後に行うが、加熱開始前に行ってもよい。合成溶液のpHを5以下又は9以上に調整した後は、反応が終了するまでpHを5以下又は9以上に保つことが好ましい。
【0015】
前記合成溶液のpHは、好ましくは0〜5又は9〜14であり、より好ましくは0〜4又は10〜14であり、更に好ましくは0〜3又は11〜14であり、最良は0〜2又は12〜14である。このように酸性又はアルカリ性側にシフトさせていくと、安定的にラジカル重合が進行して、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子が形成される。また、大きさ、アスペクト比等の独特な形状が制御しやすくなるため、凝集物やくっつき等の不純物が減少し、安定的に粒子を得ることができる。酸性側にシフトさせて反応を進行させた方がより安定的に重合反応が進行することから、pHは0〜5であることが好ましい。
【0016】
pHの調整方法としては、例えば、加熱開始後、徐々にpH調整剤を合成溶液に滴下して、pHを酸又はアルカリ側へと変化させることで行うことができる。または、重合開始剤として後述する過硫酸塩を用いると、重合反応中に分解して酸を生じるため、徐々にpHが低下する。この場合は、pH調整剤を加えなくてもよい。
【0017】
前記pH調整剤としては、クエン酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、塩酸、硝酸、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸、酢酸、酢酸ナトリウム、フマル酸、硫酸、リンゴ酸、リン酸等の酸や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、モルホリン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアルカリが挙げられる。
【0018】
合成溶液のpHを5以下又は9以上に調整して溶液重合を行うことで、目的の楕円形状骨格を形成させつつ粒子内部又は表層部での成長が促進されるため、凝集物や不純物が少なく、安定して単分散の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子が得られる。
【0019】
なお、本発明において、合成溶液のpHは、pH測定器又はpH試験紙を用いて、攪拌している状態の合成溶液のpHを測定することで得られるものである。
【0020】
本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法において用いる不飽和単量体としては、特に限定されない。好ましい不飽和単量体としては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボン酸ビニルエステル系単量体、N−ビニル化合物系単量体、オレフィン系単量体、フッ化オレフィン系単量体、共役ジエン系単量体、イオン性官能基含有単量体、多官能不飽和単量体等が挙げられる(以下、これらを総称して不飽和単量体Aという)。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記スチレン系単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0022】
前記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の炭化水素基含有(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸3,3,3−トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2−(パーフルオロエチル)エチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル、(メタ)アクリル酸2−(パーフルオロデシル)エチル、(メタ)アクリル酸2−(パーフルオロヘキサデシル)エチル等のフッ素含有(メタ)アクリル系単量体;アクリル酸N−プロピルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−エチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸N−フェニルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N−シクロヘキシルアミノエチル等のアルキルアミノ基含有(メタ)アクリル系単量体;γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン等のケイ素含有(メタ)アクリル系単量体;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリル系単量体;メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリル系単量体;(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、α−クロロ(メタ)アクリル酸メチル等が挙げられる。
【0023】
前記カルボン酸ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、ギ酸ビニル、バレリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等が挙げられる。
【0024】
前記N−ビニル化合物系単量体としては、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0025】
前記オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。前記フッ化オレフィン系単量体としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。前記共役ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0026】
前記イオン性官能基含有単量体としては、スルホン酸基、リン酸基、フェノール性ヒドロキシ基等のアニオン性官能基(例えば、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等)又はアミノ基、イミダゾール基、ピリジン基、アミジノ基等のカチオン性官能基を有するものが挙げられる。具体的には、p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0027】
前記多官能不飽和単量体としてはジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,7−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオール系ジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリロキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の化合物が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
これらの中でも、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボン酸ビニルエステル系単量体、多官能不飽和単量体等が好ましい。これらを用いることで、前述した形状を有する楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を容易に安価で得ることができる。
【0029】
また、本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の製造方法においては、不飽和単量体A以外の単量体として、親水性官能基、活性水素基等の反応性官能基を含む不飽和単量体(以下、不飽和単量体Bという)を用いることもできる。特に、後述する架橋工程を行う場合は、不飽和単量体Bを用いることが必要である。
【0030】
前記反応性官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキレンオキサイド基、チオール基、カルボニル基、エーテル基、シアノ基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等が挙げられる。これらのうち、エポキシ基、カルボキシル基、アミド基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基等が好ましい。
【0031】
反応性官能基を含む不飽和単量体Bとしては、例えば、以下に示すものが挙げられる。なお、以下の説明において「Cn」は炭素原子数がnであることを意味する。
【0032】
(1)エポキシ基含有不飽和単量体
グリシジル(メタ)アクリレート、(β−メチル)グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等のビニルグリシジルエーテル類;2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、ジ(β−メチル)グリシジルマレート、ジ(β−メチル)グリシジルフマレート等のエチレン性不飽和結合とエポキシ基とを含む単量体等が挙げられる。
【0033】
(2)カルボキシル基含有不飽和単量体
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノブチル等のイタコン酸モノC1〜C8アルキルエステル;マレイン酸モノブチル等のマレイン酸モノC1〜C8アルキルエステル;ビニル安息香酸等のビニル基含有芳香族カルボン酸等、及びこれらの塩が挙げられる。
【0034】
(3)アミド基含有不飽和単量体
(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル−p−スチレンスルホンアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
(4)ヒドロキシ基含有不飽和単量体
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル系単量体;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリル系単量体;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル系単量体;アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシ基含有アリル単量体等が挙げられる。
【0036】
(5)アミノ基含有不飽和単量体
アリルアミン、N−メチルアリルアミン等のアリルアミン系単量体;p−アミノスチレン等のアミノ基含有スチレン系単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等のアミノ基含有アクリル系単量体;2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン等のトリアジン含有単量体等が挙げられる。これらの中でも1級又は2級アミノ基を有する化合物が好ましい。
【0037】
(6)チオール(メルカプト)基含有不飽和単量体
N−(2−メルカプトエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプト−1−カルボキシエチル)アクリルアミド、N−(2−メルカプトエチル)メタクリルアミド、N−(4−メルカプトフェニル)アクリルアミド、N−(7−メルカプトナフチル)アクリルアミド、マレイン酸モノ2−メルカプトエチルアミド、2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート、2−メルカプト−1−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のメルカプト基含有(メタ)アクリル系単量体等が挙げられる。
【0038】
(7)カルボニル基含有不飽和単量体
ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニル基含有ケトン等が挙げられる。
【0039】
(8)エーテル基含有不飽和単量体
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニル基含有エーテル系単量体が挙げられる。
【0040】
(9)シアノ基含有不飽和単量体
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ヘキセンニトリル、4−ペンテンニトリル、p−シアノスチレン等が挙げられる。
【0041】
なお、不飽和単量体Bは、前記反応性官能基を1種含むものでもよく、2種以上含むものであってもよい。また、不飽和単量体Bは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
前記不飽和単量体Bの中でも、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、p−アミノスチレン、2−アミノエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0043】
前記不飽和単量体A及びBは、それぞれ単独で使用してもよく、不飽和単量体A及びBを適宜組み合わせて使用してもよい。不飽和単量体A及びBを組み合わせて使用する場合、不飽和単量体A及びBの使用量は、モル比(A:B)で99:1〜1:99が好ましく、反応性官能基の有する特徴を活かす観点から、95:5〜5:95がより好ましく、85:15〜15:85が更に好ましく、最良は80:20〜20:80である。各単量体の使用量を前記範囲とすることで、後述する架橋粒子や粒子表層部に結合樹脂層を得るための反応性の高い粒子が得られやすくなる。
【0044】
合成用溶媒としては、水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合溶媒を使用する。これらの溶媒は、使用する原料等に応じて一般的な溶媒の中から適切なものを選択すればよい。なお、本発明において親水性有機溶媒とは、水との混合液が均一な外観を維持するものを意味し、疎水性有機溶媒とは、1気圧(1.013×105Pa)において、温度20℃で同容量の純水と緩やかにかき混ぜ、流動がおさまった後に当該混合液体が均一な外観を維持できないものを意味する。
【0045】
具体的に、使用可能な溶媒としては、例えば、水、イオン交換水、蒸留水、親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0046】
疎水性有機溶媒としては、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、ブチルカルビトールアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ミネラルオイル、熱媒用オイル等の脂肪族又は芳香族炭化水素;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、シリコーンオイル等のシロキサン化合物;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロモエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なお、これら疎水性有機溶媒は、本発明の効果を阻害しない範囲で、炭素、窒素、酸素、水素、ハロゲン等置換された変性化合物、共重合体等の変性されたポリマー化合物を含んでもよい。これらは、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0047】
前記疎水性有機溶媒のうち、重合条件下では原料不飽和単量体と反応しない、炭素原子数8個以上の疎水性有機溶媒を使用することが好ましい。このような疎水性有機溶媒を反応系中に共存させることで、生成してくる楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の分散性を向上させることができ、粒子径をより均一に制御することが可能となる。
【0048】
前記炭素原子数8個以上の有機化合物は、少なくとも重合を進める温度では液体であり、架橋ポリマー粒子生成に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、融点80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下、より一層好ましくは30℃以下の有機化合物がよい。このような有機化合物としては、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、流動パラフィン、ミネラルオイル、熱媒用オイル等の脂肪族又は芳香族炭化水素;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、シリコーンオイル等のシロキサン化合物;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル類等が挙げられる。炭素原子数は8個以上であればよいが、得られる粒子の分散安定性を考慮すると、10個以上が好ましく、12個以上がより好ましく、15個以上が最適である。
【0049】
更に、前記疎水性有機溶媒の分子量は、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がより一層好ましく、1,000以上が最適である。このように分子量が大きい疎水性有機溶媒を用いることによって分散剤的な役割も果たすため、粒子のくっつきや凝集化を抑え、安定的に単分散かつ粒子径が制御された楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を得ることができる。
【0050】
なお、本発明において分子量とは、高分子化合物である場合は重量平均分子量のことを意味する。前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算測定値である。
【0051】
分子量が200以上の疎水性有機溶媒としては、繰り返し単位を有する高分子化合物が好ましい。具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、シリコーンオイル等のシロキサン化合物;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル類;流動パラフィン、熱媒用オイル等の脂肪族又は芳香族炭化水素等が挙げられる。特に、これら高分子化合物は、低分子の状態は水溶性であり高分子化するに従い疎水性を示す高分子化合物や極性基を分子内部に有する単量体を重合することによって得られた疎水性有機溶媒であると更に好ましい。このような極性基を分子内部に有すると、後述する高分子安定剤が溶媒内で均一に分散しやすく一層の粒子安定性に寄与する。前記極性基としては、ヒドロキシ基、エーテル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0052】
このような好ましい疎水性有機溶媒として具体的には、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル類、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、シリコーンオイル等のシロキサン化合物等が挙げられる。
【0053】
水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の混合比は、質量比で、99:0.5:0.5〜25:55:20が好ましく、98:1:1〜35:50:15がより好ましく、97:2:1〜45:45:10が更に好ましい。
【0054】
このような混合溶媒を用いると、静置した場合に現れる乳化層(下層、水リッチ層)、溶解層(中間層、親水性溶媒リッチ層)及び分離層(上層、疎水性溶媒リッチ層)が共存する状態(ファジー状態)となり、重合反応においてもこのファジー状態の中で前記各層に不飽和単量体が溶け込んだ状態で重合反応が進行するものと推測される。このファジー状態を形成する溶媒系において重合反応を進行させる場合、開始剤によって重合を誘発するとともに熱による溶媒の溶解バランスが崩れ、粒子析出界面の張力の変化に伴い分散状態が安定した状態で、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子が得られるとともに、合成溶液のpHを所定の値とすることで安定的に粒子成長反応が促進されるため、目的のポリマー粒子を効率よく、より安定的に得られるものと推測される。
【0055】
前記高分子安定剤としては、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレンスルホン酸、ヒドロキシスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ヒドロキシスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のポリスチレン誘導体;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸誘導体;ポリメチルビニルエーテル、ポリエチルビニルエーテル、ポリブチルビニルエーテル、ポリイソブチルビニルエーテル、ポリヘキシルビニルエーテル等のポリエーテル類及びその誘導体;セルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリ酢酸ビニル等のポリ酢酸ビニル誘導体;ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリ−2−メチル−2−オキサゾリン等の含窒素ポリマー誘導体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル誘導体等の各種疎水性又は親水性の安定剤が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
前記高分子安定剤は、原料不飽和単量体に対して、0.01〜50質量%の適切な量で配合することが好ましい。
【0057】
前記重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を用いることができ、例えば、水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過流酸カリウム等の過硫酸塩;2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(4−アミノ−フェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]四塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−メチル−N(フェニルメチル)プロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−2−プロペニルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス−2−シアノプロパン−1−スルホン酸二ナトリウム塩、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)ナトリウム塩等のアゾ系開始剤等の水溶性又はイオン性の重合開始剤が挙げられる。
【0058】
一方、油性開始剤としては、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸ジメチル)、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2'−アゾビス(N,N'−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド等のアゾ系化合物等の油溶性重合開始剤が挙げられる。
【0059】
これらの重合開始剤は、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。前記ラジカル重合開始剤の配合量は、通常、原料不飽和単量体100質量部に対して、0.01〜50質量部であることが好ましい。
【0060】
これらのうち、過流酸塩等の開始剤を用いると、ラジカル開始剤として機能するだけでなく、加水分解等により酸が生じ、別途pH調整剤を添加しなくても合成溶液のpHを調整することができる。好ましい添加量としては5〜30質量%である。
【0061】
楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子に表面の微細な凹凸、多孔質性、大きな比表面積といった特徴を持たせることは、水、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒の成分、組成を適宜調整することで可能である。これによって、粒子表面及び内部を適度に改質させることができる。
【0062】
本発明においては、以上のような溶媒組成の調整を行うことで、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の粒子径やアスペクト比、表面の微細な凹凸の大きさ、多孔質性をより安定的に制御できることから、用途によって吸水性、吸油性等の諸性能をバランスよく制御できることとなる。
【0063】
本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造する際には、必要に応じて、乳化剤(界面活性剤)等を、前記原料不飽和単量体に対して、0.01〜50質量%の適切な量で配合することもできる。
【0064】
乳化剤(界面活性剤)としては、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド等のカチオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系乳化剤等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0065】
乳化剤を添加することにより、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の長径、短径をコントロールすることができる。更に、常温で固体である乳化剤を1種以上含むことが好ましい。
【0066】
合成溶液中における、原料不飽和単量体の含有量は、全合成溶液中1〜80質量%とすることが好ましく、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜30質量%である。原料不飽和単量体の含有量が80質量%を超えると、凝集物が増え、単分散化した状態で前記物性を有するポリマー粒子を高収率で得ることが困難になることがある。一方、1質量%未満であると、反応が完結するまでに長時間を要し、また工業的観点から実用的ではない。
【0067】
重合時の反応温度は、使用する溶媒の種類によっても変わるものであるため一概には規定できないが、通常、10〜200℃程度であり、好ましくは30〜130℃、より好ましくは40〜90℃である。
【0068】
また、反応時間は、目的とする反応がほぼ完結するのに要する時間であれば特に限定されず、不飽和単量体の種類及びその配合量、溶液の粘度及びその濃度、目的の粒子径等に大きく左右されるが、例えば、40〜90℃の場合、1〜72時間、好ましくは2〜24時間程度である。
【0069】
また、重合反応の際に、得られる粒子の用途等に応じて、触媒(反応促進剤)を配合することができる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適切な量、例えば、重合成分の合計質量に対して、0.01〜20質量%とすることができる。
【0070】
触媒は正触媒であれば特に限定されず、公知のものから適宜選択して使用することができる。具体例としては、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、トリフェニルアミン等の3級アミン;トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム化合物;トリフェニルホスフィン、トリシクロホスフィン等のホスフィン;ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム化合物;2−メチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩;有機酸のアルカリ金属塩;三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン等のルイス酸性を示すハロゲン化物又はその錯塩等の触媒が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0071】
また、重合反応の際に、得られる楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の大きさ、形状、品質等を調整する目的で、水又はその他の極性溶媒に溶解し得る、陽イオンと陰イオンとに電離してその溶液が電気伝導性を示す化合物を添加することも可能である。
【0072】
このような化合物の具体例としては、塩類、無機酸、無機塩基、有機酸、有機塩基、イオン液体等が挙げられる。配合量は、粒子物性に悪影響を及ぼさない適切な量、例えば、重合成分の合計質量に対して、0.01〜80質量%とすることができる。
【0073】
不飽和単量体、高分子安定剤、溶媒の種類及び量比、並びに必要に応じて用いられる分散剤や乳化剤の量比を変えることで、単分散の状態でより安定して粒子径やアスペクト比、形状等の異なる楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造することができる。
【0074】
[架橋工程]
本発明の製造方法は、前記溶液重合工程の後、得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子と、前記反応性官能基と反応する反応基を有する有機化合物とを、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は溶解しないが前記有機化合物は溶解する溶媒の存在下で、前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子に含まれる官能基と前記有機化合物に含まれる反応基とを反応させて架橋させる工程を含んでもよい。このとき、前記得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、前記不飽和単量体Bを用いて得られたものである。
【0075】
架橋工程で用いる溶媒としては、前述した合成溶媒と同じものを用いることができる。具体的には、例えば、水、イオン交換水、蒸留水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリル等の親水性有機溶媒;1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等の高級アルコール類;ブチルセロソルブ等のエーテルアルコール;ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテル類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、ブチルカルビトールアセテート等のエステル類;ペンタン、2−メチルブタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、デカン、ノナン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ジシクロヘキシル、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、流動パラフィン、オイル等の脂肪族又は芳香族炭化水素;ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のシロキサン化合物;四塩化炭素、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラブロモエタン等のハロゲン化炭化水素等の疎水性有機溶媒等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0076】
これらのうち、水(イオン交換水、蒸留水を含む);メタノール、エタノール、プロパノール等の低級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコールジプロピレングリコール等の多官能アルコール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテルアルコール;トルエン、DMF、THF、MEK、MIBK、アセトン、NMP、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン及びこれらの混合物等が好ましい。これらのうち、少なくとも水と低級アルコールとの混合溶媒、水と多官能アルコールとの混合溶媒、水とエーテルアルコールとの混合溶媒を含む媒体とすることが好ましい。
【0077】
前記有機化合物としては、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子に含まれる反応性官能基と反応する官能基を2つ以上含む化合物であることが好ましい。
【0078】
前記有機化合物に含まれる官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、エーテル基、シアノ基、エポキシ基、アミド基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これらは、汎用的な官能基であって比較的低い温度で反応促進が可能であり、適宜使用する触媒も比較的安価なことから工業的にも優れる。これらのうち、特に好ましい官能基は、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基等である。
【0079】
前記化合物を例示すると、ヒドロキシ基を有する化合物としては、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4'−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4'−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0080】
カルボキシル基を有する化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロペンタントリカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ヒドロキシ酸、アミノ酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、カルボキシル基を有する樹脂及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0081】
アミノ基を有する化合物としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のジアミンと、4,4'−ヘキサフルオロプロピリデンビスフタル酸二無水物、4,4'−ビフタル酸無水物、ジフェニル−2,3,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニル−2,2',3,3'−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物とを重合させることによって得られるポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0082】
また、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、トリレンジアミン、cis−1,3ジアミノシクロブタン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、アミノエチルピペラジン等の脂肪族多官能アミン、芳香族多官能アミン、異節環状多官能アミン、アミノアルキル異節環状多官能アミン等が挙げられる。また、多官能アミノ重合体としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジメチルアリルアンモニウムハイドロキサイド、これらとアクリルアミドや二酸化硫黄との共重合体、キトサン等の多官能アミノ共重合体等が挙げられる。
【0083】
チオール基を有する化合物としては、メタンジチオ−ル、1,2−エタンジチオ−ル、1,1−プロパンジチオ−ル、1,2−プロパンジチオ−ル、1,3−プロパンジチオ−ル、2,2−プロパンジチオ−ル、1,6−ヘキサンジチオ−ル、1,2,3−プロパントリチオ−ル、1,1−シクロヘキサンジチオ−ル、1,2−シクロヘキサンジチオ−ル、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオ−ル、3,4−ジメトキシブタン−1,2−ジチオ−ル、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオ−ル、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ−exo−cis−2,3−ジチオ−ル、エチレングリコ−ルビスチオグリコレ−ト,ブチレングリコ−ルビスチオグリコレ−ト、4,4'−チオビスベンゼンチオ−ル、ビス(4−メルカプトフェニル)エ−テル、3,4−ジメルカプトトルエン、2,5−トルエンジチオ−ル、3,4−トルエンジチオ−ル、1,4−ナフタレンジチオ−ル、1,5−ナフタレンジチオ−ル、2,6−ナフタレンジチオ−ル、2,7−ナフタレンジチオ−ル、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオ−ル、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオ−ル、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオ−ル、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオ−ル、フェニルメタン−1,1−ジチオ−ル、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオ−ル、6−アミノフェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオ−ル、2,5−ジメルカプト−1,2,4−チアジアゾ−ル、2−メチルアミノ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオ−ル−sym−トリアジン、チオール基を有する樹脂及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0084】
カルボニル基を有する化合物としては、ジアセチル、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ジメドン、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオン、2,5−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタン−ジオン、カルボニル基を有する樹脂及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0085】
エーテル基を有する化合物としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジオクチルエーテル、ジエチレングリコールジ2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールブチル−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレンイソプロピルブチルエーテル、トリプロピレングリコールイソプロピルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールジプロピルエーテル、エーテル基を有する樹脂及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0086】
シアノ基を有する化合物としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、t−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,3,3−トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3−テトラメチルスクシノニトリル、2,3−ジエチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジエチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル−1,1−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−2,2−ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル−3,3−ジカルボニトリル、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジカルボニトリル、2,3−ジイソブチル−2,3−ジメチルスクシノニトリル、2,2−ジイソブチル−3,3−ジメチルスクシノニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2,3−ジメチルグルタロニトリル、2,4−ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4−テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4−ジシアノペンタン、2,6−ジシアノヘプタン、2,7−ジシアノオクタン、2,8−ジシアノノナン、1,6−ジシアノデカン、1,2−ジジアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン、3,3'−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3'−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル、シアノ基を有する樹脂及びこれらの変性物等が挙げられる。
【0087】
エポキシ基を有する化合物としては、ポリエポキシド、芳香族系ポリエポキシ化合物、多価フェノールのグリシジルエーテル体、多価フェノールのグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン、脂環族系ポリエポキシ化合物、脂肪族系ポリエポキシ化合物、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体等が挙げられる。これらのうち好ましくは、脂肪族系ポリエポキシ化合物及び芳香族系ポリエポキシ化合物である。
【0088】
エポキシ基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の脂肪族多価アルコールのグリシジルエーテル類;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのグリシジルエーテル類;ポリエステル樹脂系のポリグリシジル化物;ポリアミド樹脂系のポリグリシジル化物;ビスフェノールA系のエポキシ樹脂;フェノールノボラック系のエポキシ樹脂;エポキシウレタン樹脂等が挙げられる。
【0089】
また、前記エポキシ基を有する化合物としては、市販品を使用することもでき、例えば、ナガセケムテック(株)製、デナコールEX−611、612、614、614B、622、512、521、411、421、313、314、321、201、211、212、252、810、811、850、851、821、830、832、841、861、911、941、920、931、721、111、212L、214L、216L、321L、850L、1310、1410、1610、610U、又はこれらに準ずるエポキシ化合物が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0090】
アミド基を有する化合物としては、アジピン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等のジカルボン酸と、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等のジアミンとを重縮合させることによって得られるポリアミド樹脂が挙げられる。また、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ε−エナントラクタム等のラクタムを開環重合させたポリアミド樹脂も挙げられる。具体的には、ナイロン−6、ナイロン−11、ナイロン−12、ナイロン−6,6、ナイロン−6,T等が挙げられる。また、アミノ系樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等が挙げられる。
【0091】
イソシアネート基を有する化合物としては、4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
【0092】
カルボジイミド基を有する化合物としては、1種又は2種以上のイソシアネート化合物を原料として得られる少なくとも1つのカルボジイミド基を有する樹脂等が挙げられる。
【0093】
オキサゾリン基を有する化合物としては、ビスオキサゾリン化合物、ビスオキサゾリン化合物のオキサゾリン基2化学当量と多塩基性カルボン酸のカルボキシル基1化学当量とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物等が挙げられる。オキサゾリン化合物は、オキサゾリン環を開環させないで付加重合等の重合体から得られる1分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有するポリマー化した化合物でもよい。また、付加重合性オキサゾリン化合物とオキサゾリン基と反応しない共重合可能な単量体との共重合体等も、オキサゾリン基を有する化合物として挙げられる。
【0094】
オキサゾリン環を2個以上有する化合物では、例えば、2,2'−ビス(2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン)、2,2'−ビス(5,5'−ジメチルオキサゾリン)、2,2'−ビス(4,4,4',4'−テトラメチル−2−オキサゾリン)、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)エタン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ブタン、1,6−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ヘキサン、1,8−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)シクロヘキサン、1,2−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンセン、1,3−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,2−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,3−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(5−メチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン、1,4−ビス(4,4'−ジメチル−2−オキサゾリン−2−イル)ベンゼン等のビスオキサゾリン化合物、及びこれらのビスオキサゾリン化合物のオキサゾリン基2化学当量と多塩基性カルボン酸(例えばマレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等)のカルボキシル基1化学当量とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物等が挙げられる。
【0095】
また、オキサゾリン化合物は、オキサゾリン環を開環させないで付加重合等の重合体から得られる一分子中に少なくとも2つ以上のオキサゾリン基を有するポリマー化した化合物でもよい。このような化合物としては市販品を使用することができ、例えば、(株)日本触媒製エポクロス(登録商標)WS−500、WS−700、K−1010E、K−2010E、K−1020E、K−2020E、K−1030E、K−2030E、RPS−1005等が挙げられる。
【0096】
これらのうち、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基等を有する化合物が好ましく、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基を有する化合物がより好ましい。
【0097】
前記有機化合物は、分子量が50〜100,000であることが好ましく、100〜10,000であることがより好ましく、200〜5,000であることが更に好ましい。分子量が100,000超であると、粒子内部まで硬化反応させるのは難しくなり、また、合成溶液の粘度が上がりすぎるため、単分散した粒子に悪影響を及ぼす場合がある。一方、分子量が50未満であると、コア/シェル構造を有するような機能性粒子としての性能を活かせない場合がある。
【0098】
なお、溶液重合工程後、架橋工程の前に、得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を定法に従って精製し、その後前記溶媒と有機化合物とを加えて架橋を行ってもよく、又は溶液重合工程後に精製を行わずにそのまま有機化合物を加えて架橋を行ってもよい。
【0099】
[楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子]
本発明の方法によって得られるポリマー粒子のLAVは0.1〜80μmであるが、0.2〜60μmが好ましく、1.0〜40μmがより好ましく、2〜30μmが更に好ましい。LAVが80μm超となると、汎用の繊維と特性が変わらなくなり優位性がなくなる。また、単位当たりの比表面積の減少に伴い、光散乱等の光学特性が著しく低減する傾向がある。また、LAVが0.1μmを下回ると、短径も細くなることから光学特性の低下や、強度が低減することがある。
【0100】
前記ポリマー粒子のDAVは0.05〜40μmであるが、0.1〜30μmが好ましく、0.5〜20μmがより好ましく、1〜15μmが更に好ましい。DAVが40μm超となると、汎用的な球状粒子と特性が変わらなくなり、単位当たりの比表面積の減少に伴い光学特性効果が著しく低減する傾向がある。また、DAVが0.05μmを下回ると、光学特性の低下や、強度が低減することがある。
【0101】
前記ポリマー粒子のPAVは1.5〜30であるが、好ましくは1.8〜25、より好ましくは2〜20であり、更に好ましくは2.2〜20であり、最良は2.5〜18である。また、光拡散性等の光学特性を重視する場合は、3〜18が特に最良である。PAVが30を超えると、得られる粒子が配向しやすく、光散乱性、光反射性等の光学特性が安定的に得られないことがある。またPAVが1.5未満であると、同成分の球状粒子程度の光学特性効果しかなく、効果の優位性に欠ける。
【0102】
また、前記ポリマー粒子の体積平均粒子径(MV)は、0.06〜50μmが好ましく、0.1〜30μmがより好ましく、0.5〜20μmが更に好ましい。MVが50μm超となると、単位当たりの比表面積の減少に伴い光学特性効果が低減することがある。また、MVが0.06μmを下回ると、光抜けが生じ、光学特性効果が低減することがある。
【0103】
なお、本発明において体積平均粒子径とは、レーザー散乱・回折法による測定値であり、例えば、楕円状、針状又は棒状の粒子や異形粒子においては体積を球状に換算した場合の平均粒子径を意味する。
【0104】
本発明の方法によって得られるポリマー粒子は、粒子表面に微細な凹凸を有しているもの、多孔質であるもの等、比表面積が比較的大きくなる特徴を有していることが好ましい。特に、多孔質であることが好ましい。
【0105】
本発明の方法によって得られるポリマー粒子の比表面積は、次式を満たすものであることが好ましい。
SB/SD≧1.2
(式中、SBは各粒子の実際の比表面積を意味し、SDは各粒子の平均粒子径から算出される真球状粒子の理論比表面積を意味する。)
【0106】
SB/SDは、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは1.8以上であり、最良は2.0以上である。このように比表面積が大きいため、架橋反応時に効率よく反応が進行する。
【0107】
また、本発明の方法によって得られるポリマー粒子の実際の比表面積SBは、特に限定されないが、0.1〜30m2/gが好ましく、0.5〜20m2/gがより好ましく、1〜10m2/gが更に好ましい。なお、比表面積SBは、窒素ガス吸着法により測定した値である。
【0108】
本発明の方法によって得られるポリマー粒子は、吸水量又は吸油量が粒子100gあたり50mL以上であり、水系、油系の少なくとも一方(又は双方)に親和性を有する粒子であることが好ましい。前記吸水量又は吸油量は、粒子100gあたり80mL以上がより好ましく、粒子100gあたり100mL以上が更に好ましく、100gあたり120mL以上が最良である。
【0109】
粒子を構成するポリマーの分子量としては、特に限定されず、通常、重量平均分子量で、1,000〜3,000,000程度である。
【0110】
また、本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を含む樹脂組成物を成形し、拡散板や拡散シートとした場合、高温下でも十分な耐熱性を発揮させるために、当該楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の融点は60℃以上であることが好ましい。
【0111】
[楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の用途]
本発明の製造方法で得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、優れた耐熱性、耐薬品性を有しているので、プラスチック、容器、塗料、塗膜、繊維、建材等の高分子成形品に用いることができる。また、UV散乱性にも効果があることから、UVに弱い内容物等を保護するため、例えば、フィルタ、包装材料、容器、塗料、塗膜、インク、繊維、建材、記録媒体、画像表示装置、太陽電池カバーに用いることができ、光に不安定な化合物の分解を抑制することもできる。
【0112】
前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、水、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒又はこれらの混合溶媒に分散させ、分散液として使用できる。ここで、親水性有機溶媒及び疎水性有機溶媒としては、ポリマー粒子の製造方法において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0113】
前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、液体、塗膜、フィルム、板材、紙等の成型品への添加剤として利用することができる。本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子含有組成物は、光散乱剤や光学フィルタ材料、着色剤、化粧品、吸収剤、吸着剤、インク、接着剤、電磁波シールド材、蛍光センサー、生体マーカー、記録材料、記録素子、偏光材料、薬物送達システム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、検査薬、焼成空孔化成形物等に広く利用することができる。
【0114】
また、本発明の架橋ポリマー粒子を前駆体に混入させた上で、硬化、炭化、焼結等の焼成処理を施すことにより、粒子形状の孔をもつ焼成空孔化成形物を製造することもできる。
【0115】
更に、窓ガラス製品やカーテン、壁材等のインテリア製品等によって室内、及び車内等へ入射する光又はUVを遮蔽することは、人体の日焼け及び人体への悪影響を防ぐばかりでなく、室内や車内の装飾品等の劣化を防ぐことができるという点でも有用となる。
【0116】
前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、化粧品用添加剤として好適である。楕円状、針状又は棒状又は針状ポリマー粒子本来の軽量性、光散乱性、触感性、流動特性、溶液分散性等を保持しつつ、今まで添加することが困難であった熱成形や有機溶媒を多く使用する用途へ展開が可能となる。本発明の楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、独特の形状から一般の球状とは異なる付着力を有しており、例えばファンデーション等の成形体の固着力、塗布後の保持力を向上させる効果がある。更に、その光学特性によって肌を明るく見せ、ぼかし効果によりカバー力を向上できる。また、形状特有のすべり性によって、肌の上でののびに優れ、更にキメの溝を細かく埋めることで、シワや毛穴を目立たなくしたり、製品全体の流れ性を自由にコントロールしたりすることができる。また、付着力、保持力を利用して製品全体のポリマー添加量を多くすることができ、従来に無い化粧効果を見出すことができる。好ましい添加量としては、製品配合量に対して0.1〜50質量%であり、好ましくは0.5〜30質量%である。UV散乱効果、ぼかし効果等の光散乱性、流動性、成形性、付着向上、仕上り感等用途/目的に応じて適宜調整することができる。本発明者らの検討では化粧品用添加剤としては、1〜20質量%が特に好ましい。なお、市販の粒子と適宜調整し組み合わせて使用してもよい。
【0117】
特に、効果が高い化粧品として、具体的には、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、UV防御製品、香料製品等であってよい。例えば、乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、化粧下地料、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、クレンジング料、洗顔料、アクネ対策化粧料、エッセンス等の基礎化粧料、ファンデーション、白粉、マスカラ、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅等のメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、ボディーパウダー、育毛剤、デオドラント、脱毛剤、石鹸、ボディーシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。また、製品の形態についても特に限定は無く、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等であってよい。これら化粧品の添加剤として有用な効果が期待できる。
【0118】
前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビア印刷、タンポ印刷、コーター、インクジェット等に用いられる印刷インク用添加剤、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用、マジック等の筆記具インク用添加剤、クレヨン、絵の具、消しゴム等の文房具類の添加剤として利用できる。
【0119】
前記楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料用添加剤として好適である。例えば、自動車、電車、ヘリコプター、船、自転車、雪上車、ロープウェイ、リフト、フォバークラフト、自動二輪車等の輸送用機器、サッシュ、シャッター、貯水タンク、ドア、バルコニー、建築用外板パネル、屋根材、階段、天窓、コンクリート塀等の建築用部材、建築物屋内外の外壁や内装、ガードレール、歩道橋、防音壁、標識、高速道路側壁、鉄道高架橋、橋梁等の道路部材、タンク、パイプ、塔、煙突等のプラント部材、ビニールハウス、温室、サイロ、農業用シート等の農業用設備、電柱、送電鉄塔、パラボラアンテナ等の通信用設備、電気配線ボックス、照明器具、エアコン屋外器、洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ等の電気機器、及びそのカバー、モニュメント、墓石、舗装材、風防シート、防水シート、建築用養生シート等の物品に用いられる塗料用添加剤として好適である。
【0120】
塗料の形態としては溶剤型塗料のほかに、水分散型塗料、非水分散型塗料、粉体塗料、電着型塗料等、必要に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0121】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。なお、各実施例、比較例における評価項目は下記手法にて評価した。
【0122】
(1)ポリマー粒子のアスペクト比
走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製S-4800、以下、SEMという)を用い、測定可能な倍率(300〜30,000倍)で写真を撮影し、得られた楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を二次元化した状態(なお、通常、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は長軸方向を水平にした状態を保つ。)で、ランダムに100個の粒子を抽出して、各粒子の長径(L)及び短径(D)を測定し、アスペクト比(L/D)を算出し、平均アスペクト比(PAV)を算出した。
粒子の平均長径(LAV)及び平均短径(DAV)も同様に、ランダム抽出した100個の粒子について、長径(L)及び短径(D)を測定して算出した。
(2)ポリマー粒子の体積平均粒子径(MV)
MICROTRACK MT3000(日機装(株)製)を用いて測定した。
(3)測定用凝集物の定義とその量の測定
合成時に得られる測定用凝集物を次のように定義した。
凝集物1:合成溶液を200μmのふるいに通し、ふるい上に溜まった凝集物を水−エタノール混合溶液で洗浄し、得られた成分を乾燥させたものを凝集物1とした。
凝集物2:合成容器内(フラスコ及び攪拌翼)に付着しているポリマー成分(凝集物)を使用容器内で掻き落とし、水−エタノール混合溶液で分散/洗浄を行った後、200μmのふるいに通し、ふるい上に溜まった成分を乾燥させたものを凝集物2とした。
凝集物割合(%)は、下記式によって求めた。
凝集物割合(%)=[(凝集物1+凝集物2)/粒子化成分総量(単量体)]×100
(4)pHの測定
pH試験紙(Whatman社製)を用いて、色の変化を目視で判断した。
【0123】
<楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子の合成>
[実施例1]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括で仕込み、合成溶液を調製した。その後、室温で1時間攪拌を行った。液相は、水系相部分と乳化相部分と油系相部分の各相が交じり合う状態であった。また、合成溶液のpHを測定したところ、7であった。次に、窒素気流下でオイルバス温度80℃に設定し、加熱・攪拌(400rpm)を開始し、8時間加熱・攪拌(400rpm)して、ポリメタクリル酸メチルの粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、pH調整剤として1mol/L塩酸をpHが2となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも2であった。
水 1280.0g
メタノール 38.4g
ポリプロピレングリコール(♯3000) 9.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 32.0g
ショ糖ラウリン酸エステル 10.5g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 8.6g
メタクリル酸メチル 288.0g
【0124】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移し、ふるい上に溜まった凝集物は所定の工程を経て凝集物1として採取した。また、合成容器内(フラスコ及び攪拌翼)に付着しているポリマー成分(凝集物)を使用容器内で掻き落とし、所定の工程を経て凝集物2として採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A1を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは19.1μmであり、PAVは6.8であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
得られた粒子のSEM写真を図1に示す。
【0125】
[実施例2]
pH調整剤を1mol/L水酸化ナトリウムに変更し、合成時のpHが12となるように調整した以外は、実施例1と同様の方法でポリメタクリル酸メチルの粒子分散液を得た。なお、反応終了時のpHも12であった。
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A2を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは23.5μmであり、PAVは7.4であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0126】
[実施例3]
アゾビスイソブチロニトリルを過硫酸アンモニウム16.0gに変更し、pH調整剤を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でポリメタクリル酸メチルの粒子分散液を得た。なお、加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHは2、反応終了時のpHは1であった。
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A3を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは17.8μmであり、PAVは5.9であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0127】
[実施例4]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括で仕込み、室温で1時間攪拌を行った。液相は、水系相部分と乳化相部分と油系相部分の各相が交じり合う状態であった。また、pHを測定したところ7であった。次に、窒素気流下でオイルバス温度80℃に設定し、加熱・攪拌(400rpm)を開始し、8時間加熱・攪拌(400rpm)して、スチレン−p−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体の粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、合成溶液にpH調整剤として1mol/L水酸化ナトリウムをpHが12となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも12であった。
水 768.0g
メタノール 512.0g
ポリプロピレングリコール(♯3000) 32.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 48.0g
ソルビターンモノオレート 8.0g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 30.0g
スチレン 240.0g
p−スチレンスルホン酸ナトリウム 60.0g
【0128】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A4を得た。ポリマー粒子A4中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、スチレン:p−スチレンスルホン酸ナトリウム=89:11であった。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは29.4μmであり、PAVは8.4であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0129】
[実施例5]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括で仕込み、合成溶液を調製した。その後、室温で1時間攪拌を行った。液相は、水系相部分と乳化相部分と油系相部分の各相が交じり合う状態であった。また、合成溶液のpHを測定したところ6であった。次に、窒素気流下でオイルバス温度80℃に設定し、加熱・攪拌(400rpm)を開始し、8時間加熱・攪拌(400rpm)して、スチレン−メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、合成溶液にpH調整剤として1mol/L塩酸をpHが2となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも2であった。
水 768.0g
メタノール 512.0g
ポリプロピレングリコール(♯3000) 15.0g
ポリビニルピロリドン(K−30) 24.0g
ポリエチレングリコール(PEG20000) 6.4g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 12.0g
スチレン 80.0g
メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 120.0g
【0130】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールと水との混合溶液(質量比=7:3)で5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A5を得た。ポリマー粒子A5中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、スチレン:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル=46:54であった。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは51.2μmであり、PAVは10.2であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0131】
[比較例1]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を各相でそれぞれ溶解した後、水系相及び油系相を混合して仕込み、合成溶液を調製した。その後、1時間攪拌した後、窒素気流下でオイルバス温度80℃、約12時間加熱・攪拌してポリメタクリル酸メチル粒子分散液を得た。なお、合成溶液の加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHは6、反応終了時のpHも6であった。
水系相 水 1280.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 8.0g
過硫酸アンモニウム 4.8g
油系相 トルエン 80.0g
ポリスチレン(Mw45,000) 16.0g
メタクリル酸メチル 160.0g
(ポリスチレン:アルドリッチ製Polystyrene、average Mw ca. 45,000)
【0132】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ周り、攪拌翼に凝集物の塊が見られた。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子B1を得た。
得られた粒子の形状をSEMにて観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は散見されるものの、所々に200μmのふるいを通り抜けた異物や凝集物も多数散見されており、安定的に効率よく楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造する製法とは言えなかった。得られた粒子のSEM写真を図2に示す。
粒子100個をランダムに抽出し、測定したところ、LAVは31.2μmであり、PAVは6.9であった。
【0133】
[比較例2]
2,000mLフラスコに下記に示した化合物を一括して仕込み、合成溶液を調製した。その後、窒素にて溶存酸素を置換した後、攪拌機で窒素気流下オイルバス温度88℃で、約12時間加熱をして、スチレン−p−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体粒子分散液を得た。なお、合成溶液の加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHは8、反応終了時のpHも8であった。
スチレン 240.0g
p−スチレンスルホン酸ナトリウム 60.0g
ブタノール 400.0g
メタノール 200.0g
水 600.0g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 30.0g
ポリビニルピロリドン(K−30) 250.0g
ドデシル硫酸ナトリウム 6.0g
【0134】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ周り、攪拌翼に凝集物の塊が見られた。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子B2を得た。ポリマー粒子B2中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、スチレン:p−スチレンスルホン酸ナトリウム=89:11であった。
得られた粒子の形状をSEMにて観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は散見されるものの、所々に200μmのふるいを通り抜けた異物や凝集物も多数散見されており、安定的に効率よく楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造する製法とは言えなかった。
粒子100個をランダムに抽出し、測定したところ、LAVは22.7μmであり、PAV)は6.2であった。
【0135】
[比較例3]
pH調整を行わなかった以外は、実施例1と同じ方法でポリメタクリル酸メチルの粒子分散液を得た。なお、合成溶液の加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHも7、反応終了時のpHも7であった。
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ周り、攪拌翼に若干ポリマーが析出した凝集物の塊が見られた。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子B3を得た。
得られた粒子の形状をSEMにて観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は散見されているものの球状に近い粒子も多く、それらについて100個をランダムに抽出し、測定したところ、LAVは48.2μmであり、PAVは2.1であり、比較的アスペクト比の小さい緩やかな楕円形状であった。また、所々に200μmのふるいを通り抜けた異物や凝集物も若干散見されており、楕円状、針状又は棒状を工業レベルで制御できる製法とは言えなかった。
【0136】
[比較例4]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括して仕込み、ディスパー分散翼で1,000rpmで懸濁液を作製、窒素気流下でオイルバス温度80℃、8時間加熱・攪拌しポリメタクリル酸メチル粒子分散液を得た。
水 1386.5g
メタクリル酸メチル 173.4g
ラウリルパーオキサイド 8.6g
ポリビニルピロリドン(K−30) 17.3g
【0137】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。なお、使用したフラスコ、攪拌翼の付着物を確認したところ、フラスコ周り、攪拌翼に若干ポリマーが析出した凝集物の塊が見られた。
次に、ふるいを通過した粒子分散液より遠心分離を5回繰り返し分級・洗浄操作を行い、平均粒子径が5μmのポリメタクリル酸メチル単一の球状ポリマー粒子B4を得た。
得られた粒子の形状をSEMにて観察したところ、平均粒子径が5μm球状のポリマー粒子であった。
【0138】
前記実施例1〜5、比較例1〜4で得られた粒子のMV、LAV、DAV、PAV、粒子成分、形状についてのまとめを表1に示す。また、前記実施例1〜5、比較例1〜4で得られた凝集物の割合についてのまとめを表2に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
前記結果より、本発明の製造方法は、凝集物の少ない効率的な製法であることを確認した。
【0142】
[実施例6]
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括で仕込み、合成溶液を調製した。その後、室温で1時間攪拌を行った。液相は、水系相部分と乳化相部分と油系相部分の各相が交じり合う状態であった。また、合成溶液のpHを測定したところ7であった。次に、窒素気流下でオイルバス温度80℃に設定し、加熱・攪拌(400rpm)を開始し、8時間加熱・攪拌(400rpm)して、メタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、合成溶液にpH調整剤として1mol/L塩酸をpHが1となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも1であった。
水 1252.5g
メタノール 65.9g
ポリプロピレングリコール(♯3000) 9.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 32.0g
ショ糖ラウリン酸エステル 8.5g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 30g
メタクリル酸メチル 228.3g
エチレングリコ−ルジメタクリレート 4.4g
【0143】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A6を得た。ポリマー粒子A6中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、メタクリル酸メチル:エチレングリコ−ルジメタクリレート=99:1であった。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは22.4μmであり、PAVは6.4であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0144】
[実施例7]
(第一工程)
2,000mLフラスコに、下記に示した化合物を一括で仕込み、合成溶液を調製した。その後、室温で1時間攪拌を行った。液相は、水系相部分と乳化相部分と油系相部分の各相が交じり合う状態であった。また、合成溶液のpHを測定したところ6であった。次に、窒素気流下でオイルバス温度80℃に設定し、加熱・攪拌(400rpm)を開始し、8時間加熱・攪拌(400rpm)して、スチレン−メタクリル酸共重合体粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、合成溶液にpH調整剤として1mol/L塩酸をpHが2となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも2であった。
水 1136.0g
メタノール 284.0g
ポリプロピレングリコール(♯3000) 24.0g
ポリビニルピロリドン(K−15) 8.0g
ポリエチレングリコール(PEG20000) 4.0g
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 24.0g
スチレン 240.0g
メタクリル酸 60.0g
【0145】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールと水との混合溶液(質量比=7:3)で5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A7を得た。ポリマー粒子A7中の各繰り返し単位の組成比(モル比)は、スチレン:メタクリル酸=77:23であった。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは15.2μmであり、PAVは5.1であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0146】
(第二工程)
次に、300mLフラスコに下記に示した割合の混合物を一括して仕込み、室温で1時間攪拌機で分散化した後、触媒としてトリブチルアミンを0.1g添加して窒素気流下オイルバス温度70℃で約8時間加熱を行い、エポキシ含有粒子分散液を作製した。
第一工程で得られた粒子 10.0g
デナコールEX−1610 14.8g
メタノール 41.4g
水 57.8g
[デナコールEX―1610:ナガセケムテックス(株)製エポキシ化合物(エポキシ当量:170)]
【0147】
次に、公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールと水との混合溶液(質量比=7:3)で5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥後、ポリマー粒子A8を得た。
なお、この粒子の一部をフーリエ変換赤外分光光度計((株)島津製作所製FT-IR8200PC)で測定したところ、波数910(1/cm)前後でエポキシ基による吸収ピークを確認した。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは16.5μmであり、PAVは5.3であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は見られなかった。
【0148】
[実施例8]
アゾビスイソブチロニトリルを過硫酸アンモニウム21.0gに変更し、攪拌を250rpmに変更したこと以外は、実施例6と同様の方法でメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体粒子分散液を得た。なお、加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHは2、反応終了時のpHは1であった。
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A9を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは21.1μmであり、PAVは2.0であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0149】
[実施例9]
実施例6のポリビニルピロリドン(K−15)を20.0gに変更した以外は、実施例6と同様の方法でメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体粒子分散液を得た。なお、途中内温が40℃になった時から、合成溶液にpH調整剤として1mol/L塩酸をpHが1となるまで15分かけて滴下した。反応終了時のpHも1であった。
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子A10を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは56.4μmであり、PAVは12.4であった。
また、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0150】
[比較例5]
pH調整を行わなかった以外は、実施例6と同じ方法でメタクリル酸メチル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体粒子分散液を得た。なお、合成溶液の加熱開始前のpHは7、加熱開始2時間後のpHも7であった。
【0151】
得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した。また、実施例1と同様な工程を経て凝集物1及び2を採取した。(使用したフラスコ周り、攪拌翼にポリマーが析出した凝集物の塊が見られた。)
次に、ふるいを通過した粒子分散液より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子B5を得た。
得られた粒子の形状をSEMにて観察したところ、楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は散見されているものの球状に近い粒子も多く、粒子100個をランダムに抽出して測定したところ、LAVは22.1μmであり、PAVは1.4であり、比較的アスペクト比の小さい緩やかな楕円形状であった。また、所々に200μmのふるいを通り抜けた異物や凝集物も多数散見されており、安定的に効率よく楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造する製法とは言えなかった。
【0152】
前記実施例6〜9、比較例5で得られた粒子のMV、LAV、DAV、PAV、粒子成分、形状についてのまとめを表3に示す。また、前記実施例6〜9、比較例5で得られた凝集物の割合についてのまとめを表4に示す。
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
[架橋による耐薬品性確認]
300mLフラスコに、実施例6で得られた粒子、実施例7の第2工程で得られた粒子、実施例8で得られた粒子、実施例9で得られた粒子、又は比較例1で得られた粒子各1gと、下記表5記載の溶媒100mLとを入れ、常温で30分間攪拌した後、耐薬品性の確認のため目視による粒子の分散状態の確認を行った。また、SEMにより形状の確認を行った。それらの評価結果を表5に示す。
【0156】
【表5】
【0157】
表5に示したように、実施例6で得られた粒子、実施例7の第二工程で得られた粒子、及び実施例8、9で得られた粒子は、架橋されているため耐薬品性が高い粒子であることが確認された。
したがって、本製法は、楕円状、針状又は棒状架橋ポリマー粒子を安定的に効率よく得られる製法であることが確認された。
【0158】
<連続的合成>
[実施例10]
実施例1に従って同様な方法で粒子合成を行い、ポリメタクリル酸メチルの粒子分散液C1を得た。得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した後、合成に使用したフラスコに、再度実施例1に記載した成分を仕込み、実施例1と同じ方法で連続合成を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子分散液C2を得た。
得られた粒子分散液C2を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移し、ふるい上に溜まった凝集物は所定の工程を経て凝集物1として採取した。また、合成容器内(フラスコ及び攪拌翼)に付着しているポリマー成分(凝集物)を使用容器内で掻き落とし、所定の工程を経て凝集物2として採取した。(使用したフラスコ、攪拌翼に付着物は殆ど見られず、綺麗な状態であった。)
次に、粒子分散液C1及び粒子分散液C2より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子CA1及びCA2を得た。
得られた粒子100個をランダムに抽出し、SEMにて形状を観察したところ、ポリマー粒子CA1は楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは19.8μmであり、PAVは6.7であった。
また、ポリマー粒子CA2も楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子であり、LAVは20.2μmであり、PAVは6.9であった。連続合成を行ってもほぼ同様な楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子が得られることを確認した。ポリマー粒子CA1及びポリマー粒子CA2において、異物について確認したが、凝集物やくっつき等の変形物は殆ど見られなかった。
【0159】
[比較例6]
比較例1に従って同様な方法で粒子合成を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子分散液C3を得た。得られた粒子分散液を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移した後、合成に使用したフラスコを用いて同じ方法で連続合成を行い、ポリメタクリル酸メチル粒子分散液C4を得た。
【0160】
得られた粒子分散液C4を200μmふるいを通して別途3,000mLのフラスコに移し、ふるい上に溜まった凝集物は所定の工程を経て凝集物1として採取した。また、合成容器内(フラスコ及び攪拌翼)に付着しているポリマー成分(凝集物)を使用容器内で掻き落とし、所定の工程を経て凝集物2として採取した。(使用したフラスコ周り、攪拌翼に多量の凝集物の塊が見られた。)
次に、粒子分散液C3及び粒子分散液C4より公知の吸引ろ過設備を使ってメタノールで5回、洗浄−ろ過を繰り返して真空乾燥し、ポリマー粒子CB1及びCB2を得た。
SEMにて形状を観察したところ、ポリマー粒子CB1は楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は散見されており、粒子100個をランダムに抽出し、LAVは32.8μmであり、PAVは6.8であった。しかし、所々に200μmのふるいを通り抜けた異物や凝集物も多数散見された。
一方、ポリマー粒子CB2は楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は得られているものの極わずかであり、大半が球状粒子やふるいを通り抜けた異物や凝集物であった。
【0161】
前記実施例10、比較例6で得られた粒子のMV、LAV、DAV、PAV、粒子成分、形状についてのまとめを表6に示す。また、前記実施例10、比較例6で得られた凝集物の割合についてのまとめを表7に示す。
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
表6及び7に示した結果より、本発明の製造方法によれば、合成後の攪拌羽や容器内部に付着する残存物が殆どないため、連続的な合成が可能であり、連続的合成においても楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を安定的に効率よく製造することに優れており、量産可能な効率的な製法であることを確認した。
【0165】
<物性評価>
<光学測定シートの作製及びその評価>
[実施例11、比較例7、8]
ポリマー粒子A1(実施例11)、ポリマー粒子B1(比較例7)又はポリマー粒子B4(比較例8)と、バインダー樹脂((株)クラレ製PVA樹脂)及び精製水とを下記表8に示す割合で混合して組成物を調製し、厚み100μmのPETフィルム(東洋紡(株)製E-5000)の片面に市販のバーコーターを使用しコーティングした。コーティング後、乾燥機を50℃に設定し20分間熱風乾燥を行った後、塗工層の厚みが40μmとなるように光学シート1〜3を作製した。
【0166】
【表8】
【0167】
[評価試験1]
紫外可視分光光度計(日本分光(株)製UV-2450)を用いて、光学シート1〜3について、波長360nm、500nm、600nm、700nmにおける透過光分析を行った。結果を表9に示す。
【0168】
【表9】
【0169】
透過光分析の結果、光学シートにおいて実施例11で透過光が低下していることから明らかに楕円形状ならでは散乱効果が得られることを確認した。また、UV領域から可視光領域において散乱効果が高いことから、隠蔽性も高いことが確認された。
また、比較例7において比較例8の球状粒子に比べて楕円形状が有する拡散効果、隠蔽性は得られるものの、実施例11に比べると凝集物の存在によりその効果が低下してしまうことを確認した。
【0170】
<反射散乱性の評価>
[評価試験2]
[実施例12、比較例9、10]
ポリマー粒子A1(実施例12)、ポリマー粒子B1(比較例9)、ポリマー粒子B4(比較例10)を黒色の合成皮革(5cm×8cm)に、化粧用パフでパッティングしながら均一に塗布し(0.24mg/cm2)、評価用シートを作製した。次いで、自動変角光度計((株)村上色彩技術研究所製Gonio Photometer GP-200)を用い、評価用シートに入射角45°で光を一定量照射し、反射光の光散乱分布を測定した。結果を図3に示す。
【0171】
図3より、実施例12で楕円形状ならではの反射散乱効果が得られることを確認した。また、UV領域から可視光領域においても散乱効果が高いことから、隠蔽性も高いことが確認された。
また、比較例9において比較例10の球状粒子に比べて楕円形状が有する散乱効果は得られるものの、実施例12に比べると凝集物の存在によりその効果が低下してしまうことを確認した。
【0172】
<官能試験及び付着力評価>
[評価試験3]
[実施例13、比較例11、12]
ポリマー粒子A1(実施例13)、ポリマー粒子B1(比較例11)、ポリマー粒子B4(比較例12)について下記に示す方法で評価した。
結果を表10に示す。
評価項目
・肌触り:各粒子を皮膚上に伸ばした際の感触を評価。
・滑り性:黒色合皮上に各粒子を1gのせて、指で伸ばした際の長さを評価。
・粒子付着力:黒色合皮上に各粒子を1gのせて、パフで均等に伸ばした後、合皮を3回たたき、粒子の残存量をデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX200)で観察し評価。
評価詳細
・肌触り:○感触を感じ、塗心地感が良い。△触感を感じるがふつう。×触感を感じるが不快。
・滑り性:○よく伸びる。△ふつう。×伸びない。
・粒子付着力:○殆ど付着状態を維持。△部分的に剥がれ散見。×大部分が剥がれ落ちた。
【0173】
【表10】
【0174】
前記結果より、実施例13で楕円形状ならではの特徴が発揮されることが確認された。また、比較例11においても楕円状の特徴は有しているものの凝集物の存在によりその効果が低減してしまう傾向があった。比較例12の球状粒子は球状であるが故に付着性が弱かった。
【0175】
<化粧料の作製と評価>
[評価試験4]
下記表11の組成にしたがって、ファンデーション1〜3(粉末状)を作製した。
【0176】
【表11】
【0177】
パネラーとして10人を選定し、ファンデーション1、2、3について使用感や使用前後の差を「肌への付着性」、「塗布時のフィット感」、「使用感触」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」の5項目を総合的に評価し、化粧品配合可否について評価した。
A:<ファンデーション1>の方がよい。
B:<ファンデーション2>の方がよい。
C:<ファンデーション3>の方がよい。
D:何れも同じ。
【0178】
その結果、パネラーの評価は
A:6名
B:3名
C:1名
D:0名
であった。なお、ファンデーション1については「肌への付着性」、「ソフトフォーカス性」、「化粧効果の持続性(4時間)」が特に優れているという意見が多かった。ファンデーション2については、「塗布時のフィット感」、「使用感触」に難点があるとの意見が多く、これは凝集物による影響が高いものと推測している。また、ファンデーション3については、「肌への付着性」、「化粧効果の持続性(4時間)」に欠けるとの意見が多かった。
【0179】
以上のことより、本発明の製法によれば、得られる楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は凝集物等の異物が少なく、安定的に効率よく楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子を製造できるとともに、架橋性の粒子も安定的に作製できるため、様々な用途へ応用可能である。
【0180】
また、本評価結果から、本発明の製法により得られる楕円状、針状又は棒状ポリマー粒子は、従来有している楕円状、針状又は棒状から得られる特性を十分保持しているため、塗料、インク、成形品、化粧品、光拡散シート等の光学材料、焼成空孔化成形物等のポリマー粒子が必要とされる用途へ有効的に活用できることが期待される。
図1
図2
図3