(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジメチルスズ触媒の含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.001〜0.3質量部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
前記脂肪族イソシアネートAが、ヘキサメチレンジイソシアネートと3官能以上のポリオールとの反応物、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体及びヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘキサメチレンジイソシアネート変性体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
本明細書において、難接着性塗板との接着性により優れることを、本発明の効果により優れる、又は、接着性により優れるという。
【0011】
本発明の接着剤組成物は、
ウレタンプレポリマーと、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとの反応物とを含む予備組成物と、
下記式(1)で表されるジメチルスズ触媒とを含有する、1液湿気硬化型の接着剤組成物である。
【化2】
式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立に2価のヘテロ原子を表し、R
1、R
2はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。
【0012】
本発明の接着剤組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
所定のジメチルスズ触媒はジオクチルスズ触媒よりも活性が高く、所定のジメチルスズ触媒を含有することによって本発明の接着剤組成物は、水との反応による接着剤自体の硬化よりも、水以外の活性水素(例えば、塗板)との結合を生成しやすいと本発明者は推測する。これによって本発明の接着剤組成物は難接着塗板に対する接着性に優れると考えられる。
【0013】
[接着剤組成物]
以下、本発明の接着剤組成物に含有される各成分について詳述する。
<<予備組成物>>
本発明の接着剤組成物に含有される予備組成物は、ウレタンプレポリマーと、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとの反応物とを含む。
予備組成物は、ウレタンプレポリマーと脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとを反応させて得られる反応物とを混合して製造されることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0014】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の接着剤組成物に使用されるウレタンプレポリマーは、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーであれば特に制限されない。例えば、ポリイソシアネートと1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)とを、活性水素化合物が有する活性水素含有基に対してポリイソシアネートが有するイソシアネート基が過剰になるように反応させたものが使用できる。ウレタンプレポリマーは、0.5〜5質量%のイソシアネート基を分子末端に含有することができる。
【0015】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;
これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。
【0016】
ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、硬化性に優れる、硬化物の物性が良好理由から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、MDIがより好ましい。
【0017】
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用される1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であるのが好ましい。
【0018】
ポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0020】
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネートとの相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネートとの反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温において適度な流動性を有するという観点から、500〜20,000であるのが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー:Gel Permeation Chromatographyの略称)法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF)を使用)により得られたポリスチレン換算値である。
活性水素化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
ウレタンプレポリマーは、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンプレポリマーであるのが好ましく、ポリプロピレンポリオールとジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーがより好ましい。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5〜2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネートを使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
ウレタンプレポリマーはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
<反応物>
本発明の接着剤組成物に使用される反応物は、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物B又はモノテルペンアルコールとの反応物である。
脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bとの反応によって、例えば、−NH−CO−NH−又は−NH−CO−N−を形成することができる。
脂肪族イソシアネートAとモノテルペンアルコールとの反応によって、例えば、ウレタン結合を形成することができる。
上記反応物は、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bとの反応物1、及び、脂肪族イソシアネートAとモノテルペンアルコールとの反応物2からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。脂肪族イソシアネートAが脂肪族ポリイソシアネート(上記脂肪族ポリイソシアネートは変性体を含む。)である場合、反応物は、上記脂肪族ポリイソシアネートとアミノシラン化合物Bとの反応物3、上記脂肪族ポリイソシアネートとモノテルペンアルコールとの反応物4、及び、上記脂肪族ポリイソシアネートとアミノシラン化合物Bとモノテルペンアルコールとの反応物5からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことができる。
本発明において、反応物は接着付与剤として作用することができる。
【0024】
(脂肪族イソシアネートA)
本発明の接着剤組成物において、反応物の製造に使用される脂肪族イソシアネートAは、1分子中に少なくとも1個のイソシアネート基を有する脂肪族炭化水素化合物であれば特に制限されない。
脂肪族イソシアネートAが有する脂肪族炭化水素基は、特に制限されない。直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状であるのが好ましい。脂肪族炭化水素基は、飽和、不飽和のいずれであってもよく、飽和であるのが好ましい。
脂肪族イソシアネートAが1分子中に有するイソシアネート基は、接着性により優れるという観点から、2個以上であるのが好ましく、2〜3個であるのがより好ましい。
【0025】
脂肪族イソシアネートAは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(変性体を除く。以下上記脂肪族ポリイソシアネートを脂肪族ポリイソシアネートbということがある。);脂肪族ポリイソシアネートの変性体が挙げられる。
脂肪族イソシアネートAは、接着性により優れ、特に硬化時の環境の違いによる接着性の幅が大きい(つまり、硬化時の環境(例えば温度環境)の違いに関わらず接着性に優れる)という観点から、脂肪族ポリイソシアネートの変性体が好ましい。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネートの変性体は、接着性と硬化後の接着剤の物性バランスに優れるという観点から、3官能以上のポリオールと脂肪族ポリイソシアネートとの反応物、脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート体、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体及び脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体からなる群から選ばれる少なくとも1種の脂肪族イソシアネート変性体aであるのが好ましい。
【0027】
脂肪族イソシアネート変性体aに使用される脂肪族ポリイソシアネートは、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する脂肪族炭化水素化合物であれば特に制限されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネートbと同様のものが挙げられる。なかでも、接着性により優れ、添加量による発泡が起きにくいという観点から、直鎖状の脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、HDIがより好ましい。
【0028】
3官能以上のポリオールと脂肪族ポリイソシアネートとの反応物としては、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリンのような3官能ポリオールと脂肪族ポリイソシアネートb(例えば、HDI)との反応物が挙げられる。具体的には例えば、TMPとHDIとの反応物(例えば下記式(5)で表される化合物)、グリセリンとHDIとの反応物(例えば下記式(6)で表される化合物)が挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート体としては、例えば、HDIのアロファネート体が挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体としては例えば、HDIのビウレット体が挙げられる。具体的には例えば、下記式(7)で表される化合物が好適に挙げられる。
【化5】
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体としては、例えば、HDIのイソシアヌレート体が挙げられる。具体的には例えば、下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
【0034】
脂肪族イソシアネートAは、耐熱接着性、配管安定性に優れるという観点から、HDIのビウレット体、HDIのイソシアヌレートが好ましく、HDIのビウレット体がより好ましい。
【0035】
脂肪族イソシアネートAはその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。脂肪族イソシアネートAはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
脂肪族イソシアネートAの量は、接着性により優れ、硬化物の物性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.8〜15質量部であるのが好ましく、0.8〜10質量部であるのがより好ましく、3.0〜8.0質量部であるのがさらに好ましい。
【0037】
(アミノシラン化合物B)
本発明の接着剤組成物において、反応物の製造に使用することができるアミノシラン化合物Bは、アミノ基(−NH
2)及びイミノ基(−NH−)からなる群から選ばれる少なくとも1種と加水分解性シリル基とを有する化合物であれば特に制限されない。上記アミノ基又はイミノ基と加水分解性シリル基とは有機基を介して結合することができる。
アミノシラン化合物Bがイミノ基を有する場合、イミノ基に結合する基は芳香族炭化水素基であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも有する炭化水素基であれば特に制限されない。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。
芳香環は、置換基を有してもよい。置換基としては例えば、アルキル基が挙げられる。
【0038】
加水分解性シリル基は、1つのケイ素原子に少なくとも1つの加水分解性基が結合したものが挙げられる。1つのケイ素原子に1つ又は2つの加水分解性基が結合する場合、同ケイ素原子に結合することができる他の基は特に制限されない。例えば、炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は特に制限されないが、アルキル基が好ましい。
加水分解性シリル基としては例えば、アルコキシシリル基が挙げられる。具体的には例えば、メトキシシリル基(モノメトキシシリル基、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基)、エトキシシリル基(モノエトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基)が挙げられる。
【0039】
有機基は特に制限されない。例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。不飽和結合を有してもよい。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。炭化水素基が有する炭素原子又は水素原子の少なくとも1個が、置換基と置き換わってもよい。有機基は、なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0040】
アミノシラン化合物Bは、接着性により優れ、接着剤の貯蔵安定性、耐垂下性に優れるという観点から、1分子中にアルコキシシリル基とイミノ基とを有する化合物であるのが好ましく、1分子中にアルコキシシリル基と、芳香族炭化水素基が結合したイミノ基とを有する化合物であるのがより好ましく、1分子中にアルコキシシリル基と、芳香族炭化水素基が結合したイミノ基とを有し、アルコキシシリル基とイミノ基とが脂肪族炭化水素基を介して結合する化合物であるのがさらに好ましい。
【0041】
アミノシラン化合物Bとしては、例えば、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
R
1n−NH
2-n−R
2−Si−R
33 (I)
式(I)中、R
1は芳香族炭化水素基を表し、nは0又は1であり、R
2は2価の脂肪族炭化水素基を表し、3つのR
3のうち少なくとも1個はアルコキシ基であり、3つのR
3は同一でも異なってもよい。3つのR
3のうち1又は2個がアルコキシ基である場合残りのR
3はアルキル基であることが好ましい。
【0042】
芳香族炭化水素基としては例えば、フェニル基が挙げられる。
2価の脂肪族炭化水素基としては例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が挙げられる。
アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。
アルキル基としては例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0043】
具体的なアミノシラン化合物Bとしては、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0044】
アミノシラン化合物Bはその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。アミノシラン化合物Bはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
アミノシラン化合物Bの使用量は、接着性により優れ、未硬化物の貯蔵安定性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.3〜5質量部であるのがより好ましく、0.8〜3質量部であるのが更に好ましい。
【0046】
(モノテルペンアルコール)
本発明の接着剤組成物において、反応物の製造に使用することができるモノテルペンアルコールは、2つのイソプレン単位からなり、ヒドロキシ基を有する化合物をいう。
モノテルペンアルコールは、1分子中に二重結合を1個又は2個有することができる。なお本発明において、モノテルペンアルコールは、モノテルペンアルコールの水素添加物を含むものとする。
【0047】
モノテルペンアルコールとしては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。なお式(II)で表される化合物は水素添加物(水添化合物)であってもよい。
【化7】
式(II)中、実線と点線の二重線部分は単結合又は二重結合を表し、点線の単線部分は結合がないこと又は単結合を表し、m、nはそれぞれ独立に0又は1であり、m+nは1である。なお、Cx、Cyは炭素原子を表す。式(II)で表される化合物が二重結合を有する場合、Cx、Cyはそれぞれ1個の二重結合を形成することができる。
【0048】
点線の単線部分に結合がない場合、モノテルペンアルコールは、鎖状となり、二重結合を2個有してもよい。
点線の単線部分が単結合を表す場合、モノテルペンアルコールは、6員環を有し、二重結合を1個有することができる。
【0049】
モノテルペンアルコールとしては、例えば、下記式(II−1)〜(II−4)で表される化合物、これらの水素添加物(水添化合物)が挙げられる。
【化8】
【0050】
これらのうち、上記式(II−1)で表される化合物(α−ターピネオール)、上記式(II−2)で表される化合物(β−ターピネオール)、上記式(II−3)で表される化合物(γ−ターピネオール)のようなターピネオールを用いるのが好ましい。
モノテルペンアルコールはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
モノテルペンアルコールの使用量は、接着性により優れるという観点から、モノテルペンアルコールが有するヒドロキシ基に対する脂肪族イソシアネートAが有するイソシアネート基のモル比(NCO基/OH基)が1.2〜3.5となる量であることが好ましい。
【0052】
(反応物の調製方法)
反応物は、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとを、例えば、50〜100℃で加熱撹拌することによって調製することができる。
なお、必要に応じて、有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることもできる。
反応物は、未反応の、脂肪族イソシアネートA、アミノシラン化合物B又はモノテルペンアルコールを含んでもよい。
【0053】
本発明においては、反応物の含有量は、接着性により優れ、硬化物物性、未硬化時の貯蔵安定性に優れるという観点から、予備組成物100質量部に対して、0.5〜20質量部であるのが好ましく、0.8〜10質量部であるのがより好ましい。
【0054】
(フィラー)
本発明において、予備組成物は更にフィラーを含有することができる。このような場合、接着剤のチクソ性、接着剤塗布後の深部硬化性、硬化後の物性に優れる。
フィラーは特に制限されない。フィラーは、カーボンブラック及び白色充填材からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。フィラーは、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物、脂肪酸エステルのような表面処理剤によって表面処理されたものであってもよい。
【0055】
カーボンブラックは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
カーボンブラックの量は、耐垂下性、硬化物の物性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、10〜150質量部であるのが好ましく、30〜100質量部であるのがより好ましい。
【0056】
白色充填材としては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウムのような炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカのようなシリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレーが挙げられる。
【0057】
白色充填材の量は、硬化時の深部硬化性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5〜80質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
【0058】
(可塑剤)
本発明において、予備組成物は更に可塑剤を含有することができる。このような場合、接着剤組成物の粘度及び物性コントロール、塗布性に優れる。
可塑剤としては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
可塑剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
可塑剤の量は、粘度及び物性コントロール、塗布性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5〜100質量部であるのが好ましく、10〜50質量部であるのがより好ましい。
【0060】
<<ジメチルスズ触媒>>
本発明の接着剤組成物に含有されるジメチルスズ触媒は、下記式(1)で表される化合物である。
【化9】
式(1)中、X
1、X
2はそれぞれ独立に2価のヘテロ原子を表し、R
1、R
2はそれぞれ独立にヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。
【0061】
2価のヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0062】
炭化水素基が有してもよいヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子が挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。不飽和結合を有してもよい。)、芳香族炭化水素基、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
炭化水素基が有する炭素原子又は水素原子の少なくとも1個が、置換基と置き換わってもよい。置換基としては、例えば、カルボニル基、エステル結合が挙げられる。炭化水素基が有する炭素原子のうち、上記炭化水素基の両末端以外に位置する炭素原子が置換基と置き換わってもよい。
【0063】
(ジメチルスズジカルボキシレート)
ジメチルスズ触媒は、触媒活性に優れ、貯蔵後の組成物の粘度の上昇を抑制できるという観点から、式(1)において、X
1及びX
2が酸素原子であり、R
1及びR
2が、カルボニル基を有するアルキル基であり、上記酸素原子が上記カルボニル基と結合してエステル結合を形成するジメチルスズジカルボキシレートが好ましい。
【0064】
ジメチルスズジカルボキシレートとしては例えば、下記式(2)で表されるジメチルスズジカルボキシレートが挙げられる。
【化10】
式(2)中、R
3、R
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基はR
1及びR
2で表される炭化水素基と同様である。
具体的なジメチルスズジカルボキシレートとしては、例えば、下記式(2−1)で表されるジメチルスズジラウレート、下記式(2−2)で表されるジメチルスズジオクテートが挙げられる。
【化11】
【0065】
(チオ系ジメチルスズ触媒)
ジメチルスズ触媒は、接着性により優れ、(触媒自体の)安定性と触媒活性のバランス、配管安定性に優れ、貯蔵後の組成物の粘度の上昇を抑制できるという観点から、式(1)において、X
1及びX
2が硫黄原子であり、R
1及びR
2が、無置換の又はエステル結合を有するアルキル基であるチオ系ジメチルスズ触媒であるのが好ましい。この場合、R
1及びR
2は同じでも異なってもよい。
なお、R
1及びR
2が、無置換の又はエステル結合を有するアルキル基であることは、R
1及びR
2が無置換のアルキル基であること、又は、R
1及びR
2がエステル結合を有するアルキル基であることを意味する。
また、エステル結合を有するアルキル基において、上記アルキル基が有する炭素原子の少なくとも1個が、置換基と置き換わってもよい。置換基としては、例えば、カルボニル基、エステル結合が挙げられる。アルキル基が有する炭素原子のうち、上記アルキル基の両末端以外に位置する炭素原子が置換基と置き換わってもよい。
【0066】
・ジメチルスズジメルカプチド
式(1)において、X
1及びX
2が硫黄原子であり、R
1及びR
2が無置換のアルキル基であるチオ系ジメチルスズ触媒としては、例えば、ジメチルスズジメルカプチドが挙げられる。
【0067】
ジメチルスズジメルカプチドとしては例えば、下記式(3)で表されるジメチルスズジメルカプチドが挙げられる。
【化12】
式(3)中、R
3、R
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基はR
1及びR
2で表される炭化水素基と同様である。
【0068】
具体的なジメチルスズジメルカプチドとしては例えば、下記式(3−1)で表されるジメチルスズジドデカシルメルカプチド、ジブチルスズジオクタシルメルカプチドが挙げられる。
【化13】
【0069】
・ジメチルスズジチオグリコレート
式(1)において、X
1及びX
2が硫黄原子であり、R
1及びR
2がエステル結合を有するアルキル基であるジメチルスズ触媒としては、例えば、ジメチルスズジチオグリコレートが挙げられる。
【0070】
ジメチルスズジチオグリコレートとしては例えば、下記式(4)で表されるジメチルスズジメルカプチドが挙げられる。
【化14】
式(4)中、R
3、R
4はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基はR
1及びR
2で表される炭化水素基と同様である。
【0071】
具体的なジメチルスズジチオグリコレートとしては例えば、下記式(4−1)で表されるジメチルスズビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)が挙げられる。
【化15】
【0072】
ジメチルスズ触媒はその製造方法について特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。またジメチルスズ触媒はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
ジメチルスズ触媒の含有量は、接着性により優れ、硬化性、未硬化物の貯蔵安定性、配管安定性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.0005〜1.0質量部であるのが好ましく、0.005〜0.5質量部がより好ましく、0.01〜0.3質量部が更に好ましい。
【0074】
(第3級アミン)
本発明の接着剤組成物は、更に、第3級アミンを含有することができる。
第3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、トリエタノールアミンのような鎖状アミン;
トリエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン、4,4′−(オキシジ−2,1−エタンジイル)ビス−モルフォリン、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン、1、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、N,N′−ジメチルピペラジン、ジモルフォリノジエチルエーテル、ビス(2,2−モルフォリノエチル)エーテルのような、第3級アミンを構成する窒素原子が環構造の一部を形成するアミン;
ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのようなエーテル結合を有するアミン;
N,N−ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノールのような環構造と第3級アミンとを有する化合物等が挙げられる。
第3級アミンはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらのうち、塗布時の塗膜形成性が良好となり、また、貯蔵安定性と硬化速度とのバランスが良好となる理由から、N,N−ジメチルアミノエチルモルフォリン、ジモルフォリノジエチルエーテルであるのが好ましい。
【0075】
第3級アミンはアミノシラン化合物を含まないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0076】
第3級アミンの含有量は、接着性により優れ、接着剤の貯蔵安定性、硬化性に優れるという観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01〜2.0質量部であるのが好ましい。
【0077】
(その他の成分)
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、脂肪族イソシアネートA以外のイソシアネート化合物、アミノシラン化合物B以外のシランカップリング剤、モノテルペンアルコール以外のアルコール、ジメチルスズ触媒及び第3級アミン以外の触媒、接着付着剤、垂れ止め剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの添加剤を含有することができる。添加剤の量は適宜決めることができる。
【0078】
本発明の接着剤組成物の製造方法としては、例えば、後述する[接着剤組成物の製造方法]が挙げられる。
【0079】
本発明の接着剤組成物は、1液型である。
本発明の接着剤組成物は、湿気硬化することができる。例えば、大気中の湿気によって−20〜+50℃の条件下で硬化することができる。
本発明の接着剤組成物は、環境温度が−20℃〜+5℃のような低温であっても、難接着塗板に対する接着性に優れる。
【0080】
本発明の接着剤組成物を適用することができる被着体は特に制限されない。例えば、金属(塗板を含む。)、プラスチック、ゴム、ガラスが挙げられる。
被着体に対してプライマーを使用せずに本発明の接着剤組成物を被着体に適用することができる。
本発明の接着剤組成物は難接着塗板に使用することができる。難接着塗板に塗布されている塗料は特に制限されない。例えば、アクリル/シラン系塗料が挙げられる。なお本明細書において、A/B系塗料は、A系塗料及びB系塗料を意味する。難接着塗板に塗布されている塗料が例えばアクリル/シラン系塗料である場合、難接着塗板に塗布されている塗料はアクリル系塗料及びシラン系塗料である。
また本発明の接着剤組成物は難接着塗板以外の塗板に対する接着性に優れる。難接着塗板以外の塗板は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。難接着塗板以外の塗板に使用される塗装としては例えば、ウレタン塗料、酸/エポキシ系塗料、アクリル/メラミン系塗料が挙げられる。
【0081】
[接着剤組成物の製造方法]
本発明の接着剤組成物の製造方法について以下に説明する。
本発明の接着剤組成物の製造方法(本発明の製造方法)は、
脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとを反応させて反応物を得る反応工程と、
ウレタンプレポリマーと、反応物とを混合して予備組成物を得る混合工程1と、
予備組成物と上記式(1)で表されるジメチルスズ触媒とを混合して、本発明の接着剤組成物を製造する混合工程2とを有する、接着剤組成物の製造方法である。
【0082】
<反応工程>
まず、反応工程において、脂肪族イソシアネートAと、アミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとを反応させて反応物を得る。
反応工程において使用される、脂肪族イソシアネートA、アミノシラン化合物B、モノテルペンアルコールはそれぞれ本発明の接着剤組成物に使用される脂肪族イソシアネートA、アミノシラン化合物B、モノテルペンアルコールと同様である。
反応物は、脂肪族イソシアネートAとアミノシラン化合物Bまたはモノテルペンアルコールとを、例えば、50〜100℃で加熱撹拌することによって得ることができる。
なお、必要に応じて、更に、有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒を用いることができる。
反応物は、未反応の、脂肪族イソシアネートA、アミノシラン化合物B又はモノテルペンアルコールを含んでもよい。
【0083】
<混合工程1>
次に、混合工程1において、ウレタンプレポリマーと反応物とを混合して予備組成物を得る。
混合工程1において使用される、ウレタンプレポリマー、反応物は上記と同様である。
【0084】
混合工程1において、更にフィラー及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の使用することができる。
混合工程1において更にフィラー及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用する場合、ウレタンプレポリマーと反応物とを初めに混合し、これにフィラー及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加して予備組成物を製造してもよい。
また、ウレタンプレポリマーと、反応物と、フィラー及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種とを同時に混合して予備組成物を製造してもよい。
【0085】
混合工程1において、例えば、縦型ミキサー又は横型ミキサーを使用することができる。
混合工程1における混合温度は40〜90℃であるのが好ましい。
混合工程1は減圧下で行うのが好ましい。
【0086】
<混合工程2>
次に、混合工程2において、予備組成物とジメチルスズ触媒とを混合して、本発明の接着剤組成物を製造する。
混合工程2において使用されるジメチルスズ触媒は上記式(1)で表されるジメチルスズ触媒と同様である。
【0087】
混合工程2において、例えば、縦型ミキサー又は横型ミキサーを使用することができる。
混合工程2における混合温度は40〜70℃であるのが好ましい。
混合工程2は減圧下で行うのが好ましい。
本発明の接着剤組成物が更に添加剤を含有する場合、混合工程1及び/又は混合工程2において添加剤を適宜添加することができる。
本発明の接着剤組成物が更に第3級アミンを含有する場合、第3級アミンを混合工程2において使用するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<反応物の調製(反応工程)>
第1表に示すイソシアネート化合物とシラン化合物又はモノテルペンアルコールとを同表に示す量(質量部)で混合し、得られた混合物を50℃の条件下で10時間反応させて反応物を調製した。
実施例10において、モノテルペンアルコール1が有するヒドロキシ基に対する脂肪族イソシアネートA1が有するイソシアネート基のモル比(NCO基/OH基)は3.0/0.93(=3.2)であった。
実施例16において、モノテルペンアルコール1が有するヒドロキシ基に対する脂肪族イソシアネートA2が有するイソシアネート基のモル比(NCO基/OH基)は3.0/1.1(=2.7)であった。
調製された反応物をそのまま組成物の製造に使用した。
【0089】
<組成物の製造>
(混合工程1)
まず、混合工程1において、下記第1表の混合工程1に示す接着剤ベース材200質量部と上述のとおり調製した反応物とを、横型ミキサーで40〜70℃、2kPa以下の条件下で1時間混合し、予備組成物を製造した。上記のとおり製造された予備組成物をそのまま混合工程2に用いた。
【0090】
(混合工程2)
次いで、混合工程2において、上記予備組成物に、下記第1表の混合工程2に示す各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、40〜70℃、2kPa以下の条件下で、これらを横型ミキサーで混合し、組成物を製造した。
【0091】
<評価>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0092】
・耐垂下性
上記のとおり製造した各組成物を、ガラス板の上に、底辺6mm、高さ10mmの直角三角形ビードで帯状に押し出し、その後、上記直角三角形の形状に押し出された組成物の斜辺が下向きになり、上記組成物の高さ10mmの辺が水平になるようにガラス板を垂直(90°の角度)に立て、ガラス板を固定し、ガラス板を垂直に保持したまま、20℃、65%相対湿度の条件下で30分放置した。
ガラス板を垂直にした後から30分の間に、各組成物の直角三角形の頂点が、下へ垂れ下がった距離h(mm)を測定し、この値で耐垂下性を評価した。上記値を第1表の垂下性の欄に示した。上記値が小さいほど耐垂下性に優れる。
【0093】
・粘度上昇率
(初期粘度)
上記のとおり製造した組成物のSOD粘度(初期粘度)を、JASO M338−89に準拠して、圧力粘度計(ASTM D 1092)を用いて測定した。
(貯蔵後の粘度)
また、上記のとおり製造した組成物を容器に入れ、窒素ガスで空気を置換して、容器を密封し、40℃で7日間貯蔵した後の組成物のSOD粘度(Pa・s)を測定した。貯蔵後の粘度の測定方法は上記と同様である。
(粘度上昇率の算出及び評価基準)
初期粘度、貯蔵後の粘度から、粘度上昇率(初期粘度に対する、増加した粘度の比)を算出した。
粘度上昇率が30%以下である場合、粘度安定性(貯蔵安定性)に優れると評価できる。
【0094】
・耐熱接着性
(耐熱接着性評価用サンプルの作製)
被着材としてガラス(縦25mm×横100mm×厚み8mm、プライマー処理済み、プライマーは商品名MS−90、横浜ゴム社製)を1枚準備した。
上記のとおり製造した各組成物を室温下で上記ガラスに塗布した。
塗布後各ガラス上の組成物を厚さ5mmまで圧着し、23℃、50%相対湿度の条件下で72時間硬化させた後、120℃環境下に7日間放置し、耐熱接着性評価用サンプルとした。
【0095】
(手剥離試験)
上記のとおり得られた耐熱接着性評価用サンプルを用いてカッターナイフによる手剥離試験を実施した。
手剥離試験の結果、硬化後の組成物が凝集破壊した場合を「CF」と表示した。この場合耐熱接着性に非常に優れる。
また硬化後の組成物がプライマーとの界面で界面剥離した場合、これを「PS」と表示した。この場合、耐熱接着性が低い。
【0096】
・配管安定性
上記のとおり製造された組成物を、ホース(直径5mm、長さ20cm、商品名チューコーフローチューブ、中興化成社製、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製)に空気が入らないように充填し、充填後ホースを密閉し、密閉されたホースを50℃の条件下に1週間置いた。
1週間後、ホースを室温に戻し、ホースの中央を輪切りにし、未硬化の組成物をホースから除いて、ホース内を観察した。
ホース内に組成物が残らなかった場合を配管安定性に優れると評価して、これを「〇」と表示した。
組成物がホースの内面から中心に向かって硬化した場合、ホースの切断面において、ホースの内面上の任意の点から、ホースの切断面の中心への方向に向かって、硬化した組成物の厚みを測定した。厚みが大きいほど配管安定性が低い。
【0097】
・接着性1
(接着性1を評価するためのサンプルの作製)
鋼板にアクリル/シラン系塗料が塗布された難接着塗板を準備した。
上記難接着塗板に、プライマーを用いず、直接上記のとおり製造した各組成物を塗布し、5℃、50%相対湿度の条件下で7日間養生して、組成物を硬化させて、サンプルを作製した。硬化後の組成物の厚さは5mmであった。上記のとおり作製されたサンプルを、接着性1を評価するためのサンプルとする。
【0098】
(剥離試験)
上記のとおり作製されたサンプルが有する硬化後の組成物の一端を把持して、20℃の条件下で、硬化後の組成物を難接着塗板から180度剥離する剥離試験を行い、破壊状態を観察した。
硬化物が凝集破壊した場合を接着性に優れると評価し、これを「CF」と表示した。
硬化物が界面剥離した場合を接着性が低いと評価し、これを「AF」と表示した。
【0099】
・接着性2
(接着性2を評価するためのサンプルの作製)
鋼板にアクリル/シラン系塗料が塗布された難接着塗板を準備した。
また、上記のとおり製造した各組成物を、50℃、95%相対湿度の条件下で14日間貯蔵して、貯蔵後の組成物を準備した。
上記難接着塗板に、プライマーを用いず、直接上記のとおり準備した貯蔵後の組成物を塗布し、5℃、50%相対湿度の条件下で7日間養生して、組成物を硬化させて、サンプルを作製した。硬化後の組成物の厚さは5mmであった。上記のとおり作製されたサンプルを、接着性2を評価するためのサンプルとする。
【0100】
接着性2を評価するためのサンプルを用いる他は、接着性1における剥離試験と同様の剥離試験を行った。評価基準も接着性1と同様である。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
第1表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・接着剤ベース材:後述するもの
・脂肪族イソシアネートA1:上記式(7)で表される、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット体(D165N、三井化学社製)
・脂肪族イソシアネートA2:上記式(8)で表される、HDIのイソシアヌレート体、三井化学社製タケネートD170N
・芳香族イソシアネート:トリレンジイソシアネート(TDI)のイソシアヌレート体、デスモジュール1351、バイエル社製
【0105】
・メルカプトシラン:3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、KBM−802、信越化学工業社製
・アミノシラン化合物B1:N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、KBM−573、信越化学工業社製
・モノテルペンアルコール1:ターピネオール、商品名Terpineol C、日本テルペン化学社製
【0106】
・ビスマス触媒:無機ビスマス(ネオスタンU−600、日東化成社)
・ジオクチルスズ触媒:ジオクチル錫ジラウレート(ネオスタンU−810、日東化成社製)
・ジブチルスズ触媒:ジブチル錫ジラウレート(ネオスタンU−100、日東化成社製)
【0107】
・ジメチルスズ触媒1:ジメチルスズジラウレート(商品名UL−22、モメンティブ社製)
・ジメチルスズ触媒2:ジメチルスズジドデカシルメルカプチド(商品名UL−28、モメンティブ社製)
・ジメチルスズ触媒3:ジメチルスズビス(2−エチルヘキシルチオグリコレート)(商品名UL−54、モメンティブ社製)
【0108】
・アミン触媒1(TEDA):トリエチレンジアミン(DABCO、エアプロダクツ社製)
・アミン触媒2(DMDEE):ジモルフォリノジエチルエーテル(サンアプロ社製)
【0109】
第1表に示した接着剤ベース材には下記第2表に示す成分が同表に示す組成(質量部)で使用された。
【表4】
【0110】
第2表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・ウレタンプレポリマー:ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2000)500g、ポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量5000)1150g、および4,4′−ジイソシアネートフェニルメタン(分子量250)264gを混合し(このときNCO/OH=1.8)、窒素気流中、80℃で24時間撹拌を行い、反応させて、イソシアネート基を1.45%含有するウレタンプレポリマーを合成した。
・カーボンブラック:N220、新日化カーボン社製
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(DINP、ジェイプラス社製)
【0111】
第1表に示す結果から、芳香族イソシアネートとアミノシラン化合物との反応物を含有する比較例1は、難接着塗板との接着性が低かった。
脂肪族イソシアネートとメルカプトシランとの反応物を含有する比較例2は、難接着塗板との接着性が低かった。
ジメチルスズ触媒以外の金属触媒を含有する比較例3〜5は、難接着塗板との接着性が低かった。
【0112】
これに対して、本発明の接着剤組成物は、所望の効果が得られることが確認された。
ジメチルスズ触媒の構造について実施例1〜3の粘度上昇率を比較すると、ジメチルスズ触媒がチオグリコレートの構造を有する場合、粘度上昇率が最も低いことが確認された。実施例4〜6の比較、実施例7〜9の比較、及び、実施例12〜14の比較も同様の結果を示した。
また、ジメチルスズ触媒の構造について実施例12〜14の配管安定性を比較すると、ジメチルスズジカルボキシレート、ジメチルスズジチオメルカプチド、ジメチルスズジチオグリコレートの順で配管安定性に優れ、ジメチルスズジチオグリコレートが最も配管安定性に優れた。
【0113】
ジメチルスズ触媒の含有量について実施例11と13とを比較すると、ジメチルスズ触媒の含有量がウレタンプレポリマー100質量部に対して0.5質量部未満であるほうが、耐熱接着性、配管安定性に優れることが確認された。
ジメチルスズ触媒の含有量について実施例1、4、7を比較すると、ジメチルスズ触媒の含有量が少ないほうが粘度上昇率が低いことが確認された。実施例2、5、8の比較、実施例3、6、9の比較、及び、実施例11、13の比較も同様の結果を示した。