【文献】
S. K. WASSER,Techniques for application of faecal DNA methods to field studies of Ursids,Molecular Ecology,1997年,Vol.6,Page.1091-1097
【文献】
Taiana Haag,Development and testing of an optimized method for DNA-based identification of jaguar (Panthera onca) and puma (Puma concolor) faecal samples for use in ecological and genetic studies,Genetica,2009年,Vol.136,Page.505-512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)採便器
本発明の採便器は、容器本体と、一側に把持部を有し、他側に、その先端付近に採便部が設けられている棒部を有する採便棒とからなり、前記容器本体は、前記採便棒の採便部が挿通される開口部と、内部に乾燥剤が封入されており、前記開口部から挿入された、便検体を保持した採便部が乾燥剤と接触することにより、採便部に保持された便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存する便収容室とを具備する採便器である。
本発明における便検体とは、本発明の採便器を用いて採取され得る便検体であれば特に制限はなく、例えばヒト、動物等の糞便から分離された便等が挙げられる。動物としては、例えば、サル、ゴリラ、オランウータン、パンダ、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イノシシ、ウサギ、ネズミ、リス、ハムスター、トラ、ライオン、オウム、インコ、ハト等が挙げられる。
【0011】
本発明における便検体中の成分としては、便検体中に存在する成分であればいかなる成分でもよく、ヘモグロビン、トランスフェリン、カルプロテクチン、エラスターゼ−1、腸内細菌、蟯虫等を例示することができる。また、便検体中の成分の測定には、成分の定量、半定量の他、定性、検出をも含む。
【0012】
本発明における乾燥剤としては、便検体と接触させることにより、便検体を乾燥させ、便検体中の成分を安定に保持できるものであれば特に制限はなく、例えば、物理的に水分を吸着する物理的乾燥剤、化学反応や潮解等の化学物質に固有の性質を利用する化学的乾燥剤を挙げることができるが、物理的乾燥剤が便検体中の成分に変化を与えない点で好ましい。物理的乾燥剤としては、例えば水分子が吸着しやすい多孔質表面を有する乾燥剤等が挙げられる。具体的には、シリカゲル、モレキュラーシーブ、アロフェン(アモルファス又は結晶化度の低い水和アルミニウムケイ酸塩でできた粘土準鉱物)、酸化アルミニウム、ゼオライト、ベントナイト、クレイ、珪藻土、チタニア、ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水ポリマーなどを挙げることができ、シリカゲル、酸化アルミニウムが好ましい。化学的乾燥剤としては、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0013】
物理的乾燥剤は、乾燥状態に保持された粉末形状、例えば乾燥状態に保持された未包装形態の粉末形状で用いられることが好ましい。粉末形状の物理的乾燥剤を用いることにより、便検体との速やかな接触が可能となり、接触した際に便検体を速やかに乾燥させることができる。
【0014】
本発明において、「乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存する」とは、「便検体が乾燥剤と接触することにより、便検体中の水分が乾燥剤に吸収され、水分が吸収された状態、すなわち、乾燥状態の便検体が、採便棒の採便部から剥離(離脱)し、乾燥剤中に保持される」ことを意味する。
【0015】
本発明の採便器は、容器本体と採便棒とを備えている。前記採便棒は、一側に把持部を有し、他側に、その先端付近に採便部が設けられている棒部を有する。前記容器本体は、便収容室を具備し、前記便収容室は容器本体と一体的に作製してもよいが、作製のしやすさから容器本体の内部に嵌合された嵌合体により形成することが好ましい。嵌合体を用いる場合、前記容器本体は、一側に嵌合体を嵌入するための開口部と他側に底部を有し、容器本体の下方部分(容器本体の開口部とは反対側の部分)と嵌合体の下方との間の空間には乾燥剤が収容される便収容室が形成される。前記嵌合体は、採便棒の棒部を挿入することができる筒状ガイド部と、該筒状ガイド部に設けられた過剰な便を除去するための第1の擦切り孔と、該第1の擦切り孔の下方に過剰な便を更に除去するための第2の擦切り孔とを有することが好ましい。
【0016】
上記採便棒の一側に設けられる把持部は、採便操作前においては便収容室(乾燥剤収納室)中の乾燥剤の吸湿を防止するために、また、採便操作後においては乾燥剤に便が接触した後の乾燥状態の便検体や乾燥剤の外部への飛散を防止するために、乾燥剤を封入できる形状、例えば採便器のキャップ部材として機能する形状としたものが好ましい。また、キャップ部材として把持部を備えた採便棒に気密機能を付与するため、採便棒の棒部の基端にネジ部を設け、採便棒を容器本体の開口内周面に対して螺合させつつ挿入して気密状態で装着することや、採便棒の棒部の基端部分を容器本体の開口内周面に緊着状態で挿入しうるように構成することもできるが、採便棒の棒部の基端にネジ部を設けることがより好ましい。
【0017】
また、採便棒の棒部の先端付近の採便部の構造としては、定量性確保と乾燥剤との接着性のバランスの観点から決定すればよく、1又は複数の各種形状の凹部、貫通孔、溝部(環状溝、細長状溝、螺旋状溝、斜線状溝、V字状溝)等を挙げることができる。また、採便棒の棒部の長さとしては、棒部の先端付近の採便部が、容器本体の開口部、好ましくは過剰な便を除去するための擦切り孔を具備する開口部を通過する長さを有し、乾燥剤が収容されている便収容室中に突出する長さを有するものが好ましい。採便棒の材質としては、低密度ポリエチレン、ABS樹脂等を例示することができる。
【0018】
上記容器本体としては、一側に嵌合体を嵌入するための開口部と他側に底部を有する、断面長方形、長円形、円形等の有底筒状容器、又は底シール部を有するチューブ状容器であればよく、これら容器、中でもチューブ状容器の胴部(腹部)は可撓性材料で形成されていることが好ましい。可撓性材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の可撓性樹脂、及び、これらの可撓性樹脂をラミネート加工したもの等が挙げられる。
容器本体が有底筒状容器の場合には、容器本体の底部を、便検体中の成分を溶解させるための水性媒体を導入するためのピアス部を備えた凹底、特に底部に向かって狭くなるテーパー形状凹底とすることが好ましい(
図1参照)。容器本体の底部を、底部に向かって狭くなるテーパー形状凹底とすることにより、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を便収容室内に導入するためのノズルの先端を確実にピアス部に誘導することができる。上記ピアス部を備えた凹底は、前記ノズルの先端により、穿孔可能な強度又は構造とすることが好ましい。
容器本体が底シール部を有するチューブ状容器の場合には、チューブ状容器の肩部を形成する嵌合体の上部にピアス部を具備する構造が好ましい(
図4参照)。嵌合体が上方嵌合ブロックと下方嵌合ブロックとからなる場合には、上方嵌合ブロックの上部に、便検体中の成分を溶解させるための水性媒体を導入するためのピアス部を具備する構造が好ましい。ピアス部をその上部に備えた嵌合体は、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を便収容室内に導入するためのノズルの先端が穿孔可能な強度又は構造とすることが好ましい。また、容器本体がチューブ状容器の場合には、採便棒の把持部の上面に、便検体中の成分を溶解させるための水性媒体を導入するためのピアス部を具備する構造とすることもできる(
図5参照)。この場合、採便棒の把持部の上面に直結する嵌合体の上部にもピアス部を設けることが好ましい。ピアス部をその上面に備えた把持部は、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を便収容室内に導入するためのノズルの先端が穿孔可能な強度又は構造とすることが好ましい。
また、前記ノズルは、便検体中の成分が溶解した水性媒体の吸引ノズルとしても使用することができるが、便検体中の成分が溶解した水性媒体用の吸引ノズルを別途設けることもでき、この場合には、ノズル先端にフィルターを設けることもできる。
【0019】
容器本体の下方部分と嵌合体の下方との間に形成される便収容室には、あらかじめ乾燥剤が収容されている。乾燥剤としては、例えば前述の乾燥剤等が挙げられる。また、容器本体の材質としては、外部から内部が見えるプラスチックが好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の可撓性樹脂、及び、これらの可撓性樹脂をラミネート加工したもの等を好適に例示することができる。
【0020】
本発明における、便検体中の成分を溶解させる水性媒体としては、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等の水性媒体が挙げられるが、緩衝液が好ましい。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、炭酸緩衝液、アンモニア緩衝液、酢酸緩衝液、乳酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液、グッドの緩衝液等が挙げられる。グッドの緩衝液に使用される緩衝剤としては、例えば、2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)、ピぺラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis−Tris)、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]プロパンスルホン酸[(H)EPPS]、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)、3−(モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、3−(モルホリノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPSO)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、N−(2−アセタミド)イミノ二酢酸(ADA)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(Tricine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N−シクロヘキシル−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CAPSO)等を挙げることができる。
【0021】
採便棒により採取された便検体は、後述の嵌合体の第1の擦切り孔と第2の擦切り孔を通じて、余分な便が除去された後、余分な便が除去された便検体は、便収容室に収容されている乾燥剤と直接接触して乾燥され、乾燥状態の便検体が乾燥剤中で保存される。余分な便が除去された便検体を、便収容室に収容されている乾燥剤と直接接触させる方法としては、便検体を乾燥剤と直接接触させる方法であれば特に制限はないが、例えば、採便棒を乾燥剤中に挿入する方法や、採便器を振動又は揺動させて、便検体を乾燥剤と直接接触させる方法等が挙げられる。また、容器本体が、チューブ状容器の場合には、当該チューブ状容器は柔軟性を有していることが好ましく、当該性質を有するチューブ状容器は、容器本体に圧を掛けることによって、便収容室中で、便検体と乾燥剤とを直接接触させることもできる。特に、容器本体の胴部(腹部)に圧を掛けることが、便検体と乾燥剤とが効率的に接触する上で好ましい。便検体を乾燥剤と直接接触させることにより、便検体中の水分が乾燥剤に吸収されて、乾燥状態の便検体となり、乾燥状態の便検体は採便部より剥がれ落ち、乾燥剤中に保存される。その後、便検体中の成分を測定する場合には、乾燥状態の便検体が保存された乾燥剤に水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させ、水性媒体中に溶解された便検体中の成分を分析システムに供して測定することができる。分析システムとしては、水性媒体中に溶解された便検体中の成分を分析できるシステムであれば特に制限はないが、便検体中の成分がヘモグロビンである場合には、ヘモグロビン分析装置が挙げられる。ヘモグロビン分析装置としては、例えばHM−JACK、HM−JACKarc(いずれも、協和メデックス社製)等の全自動便中ヘモグロビン分析装置等が挙げられる。
【0022】
容器本体の内部に嵌合される嵌合体としては、容器本体の内部を上方と下方の便収容室とに液密に遮断することができ、採便棒の棒部を挿入することができる筒状ガイド部と、該筒状ガイド部に設けられた過剰な便を除去するための第1の擦切り孔と、該第1の擦切り孔の下方に過剰な便を更に除去するための第2の擦切り孔とを有するものが好ましく、筒状ガイド部に第1の擦切り孔と第2の擦切り孔とが設けられている単一の嵌合ブロックから構成されている嵌合体や、筒状ガイド部に第1の擦切り孔が設けられた上方嵌合ブロックと、第2の擦切り孔が設けられた下方嵌合ブロックとから構成される嵌合体など、複数の嵌合ブロックから構成されている嵌合体を例示することができる(前記特許文献1参照)。単一の嵌合ブロックから構成されている嵌合体の場合、筒状ガイド部の下端付近を容器本体に固定するための固定部材を筒状ガイド部と一体に成型しておくことが好ましい。また、上方嵌合ブロックと下方嵌合ブロックとから構成され、上方嵌合ブロックが筒状ガイド部の第1の擦切り孔を有する嵌合体の場合、下方嵌合ブロックには、上方嵌合ブロックにおける筒状ガイド部の下側部分の狭持部を設けておくことが好ましい。これら嵌合体の固定は、容器本体に嵌入させ気密に固定する方法や、別途嵌合体支持体を用いて気密に固定する方法により行うことができる。
【0023】
嵌合体に設けられる第2の擦切り孔の開口面積(孔径)は、第1の擦切り孔の開口面積(孔径)よりも小さくすることにより、第1の擦切り孔による採便棒の採便部に付着した過剰な便の除去と、第2の擦切り孔による過剰な便の更なる除去による便の定量的な採取とをそれぞれ行う上で好ましい。また、嵌合体の第1の擦切り孔や第2の擦切り孔の開口面積(孔径)が、採便棒の採便部の断面積(棒径)よりも小さいことが好ましい。嵌合体の第1の擦切り孔の開口面積(孔径)を採便棒の採便部の断面積(棒径)よりも小さくすることにより、第1の擦切り孔による採便棒の採便部に付着した過剰な便の効率的な除去を達成することができ、嵌合体の第2の擦切り孔の開口面積(孔径)を採便棒の採便部の断面積(棒径)や第1の擦切り孔の開口面積(孔径)よりも小さくすることにより、第2の擦切り孔による便の定量的な採取を達成することができる。さらに、第2の擦切り孔には乾燥剤が漏洩しないように薄膜状封止膜を設けたり、あるいは、第2の擦切り孔を、採便棒の棒部が抜かれた状態において閉塞される構造とすることもできる。
【0024】
また、採便棒が、採便棒を嵌合体上部に設けられた雌ネジに対して螺合させつつ挿入するための雄ネジ部を棒部の基端に備えている場合に、第1の擦切り孔の上端に隣接した筒状ガイド部の内部断面積よりも第1の擦切り孔の開口面積が小さくなった段差部分を設けておくと、採便棒の採便部に付着した過剰な便は、嵌合体の第1の擦切り孔の上端に隣接した筒状ガイド部の内面側に突出した螺旋構造体により圧縮されながら、摩擦圧力により螺旋構造体の下降螺旋斜面上を滑落し、突出した螺旋構造体の欠落段差部分に便が集積・貯留し、この予め位置が特定された突出した螺旋構造体の欠落部分が集便検知領域として形成されたことになる。特に、螺旋構造体を、螺合させながら挿入される採便棒の螺旋回転角度が200〜260度の範囲で設定されるような螺旋構造体に形成すると、採便棒の採便部に付着した過剰な便は、筒状ガイド部の内面側に突出した螺旋構造体により圧縮されながら、摩擦圧力により螺旋構造体の下降螺旋斜面上を滑落し、突出した螺旋構造体の欠落段差部分(160〜100度)に集積・貯留されるため、好ましい。
【0025】
上記筒状ガイド部は、第1の擦切り孔の上端の段差部分に至るまでは、緩やかな逆テーパー構造とすることが採便棒の採便部をスムーズに第1の擦切り孔に導く上で好ましく、逆テーパー構造が第1の擦切り孔から第2の擦切り孔に隣接した上方まで、あるいは、第1の擦切り孔から第2の擦切り孔まで延設されていることが採便棒の採便部をスムーズに第1の擦切り孔から第2の擦切り孔に導く上で好ましく、通常、第1の擦切り孔から下方の筒状ガイド部分は同径の円筒形状として構成されている。
【0026】
嵌合体の形成材料としては、液密シール性、容器本体への挿着、採便棒の第1の擦切り孔や第2の擦切り孔への挿通性などを考慮して、一般にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル、オレフィン系エラストマーなどの軟質の可撓性樹脂を使用することができる。
【0027】
そして、採便器外側に、把持部より、容器本体の一方の側面、底部、及び他方の側面にわたってJ字状にラベルを貼付することが好ましく、また、該ラベルには集便検知領域を直接視認しうる採便確認用の切欠き窓を設けることができる。このラベルは被検者の氏名、性別や採便日等の識別用のラベルとして利用される他、容器本体が有底筒状容器の場合には、容器本体の底部のピアス部の保護と汚染防止にも有用である。
【0028】
(2)便検体中の成分の測定方法
本発明の便検体中の成分の測定方法は、採便後の便検体と乾燥剤とを接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存した後、乾燥状態の便検体が保存された乾燥剤に水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させ、水性媒体中に溶解された便検体中の成分を検出又は測定することを特徴とする方法である。本発明の測定方法において、乾燥状態の便検体は本発明の採便器等を用いて得ることができる。本発明の測定方法において用いられる便検体としては、例えば前述の便検体等が挙げられる。本発明の測定方法における便検体中の成分としては、例えば前述の便検体中の成分等が挙げられる。本発明の測定方法における乾燥剤、及び、水性媒体としては、例えば前述の乾燥剤、及び、水性媒体等がそれぞれ挙げられる。
【0029】
本発明の測定方法としては、例えば以下の工程を含む方法等が挙げられる。
[1]採便棒の採便部で便検体を得る工程;
[2]工程[1]で得られた便検体を、乾燥剤と直接接触させて便検体を乾燥する工程;
[3]工程[2]で得られた、採便棒の採便部から剥離した乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存する工程;
[4]工程[3]の乾燥剤に水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させて、当該成分を含む水溶液を得る工程;
[5]工程[4]で得られた水溶液中の当該成分を測定する工程;
[6]予め作成した当該成分の濃度と当該成分に由来する情報量との間の関係を示す検量線と、工程[5]で得られた測定値とから、当該水溶液中の当該成分の濃度を決定する工程;
[7]工程[6]で決定された濃度と、工程[4]で添加された水性媒体の容量とから、当該検体中の当該成分の含量を決定する工程。
工程[5]における便検体中の成分の測定に用いられる方法としては、便検体中の成分を正確に測定し得る方法であれば如何なる方法を用いることができ、公知の方法を用いることができる。便検体中の成分がヘモグロビンである場合には、例えば「エクステル ヘモ・オート」(協和メデックス社製)、「ネスコート ヘモ Plus」(アルフレッサファーマ社製)等の市販品を用いて測定することができる。便検体中の成分がトランスフェリンである場合には、例えば「ネスコート トランスフェリン Plus」(アルフレッサファーマ社製)等の市販品を用いて測定することができる。なお、工程[4]で得られた当該水溶液中の当該成分の測定は、前記の全自動便中ヘモグロビン分析装置等の全自動便中成分分析装置を用いて行うことができる。
【0030】
本発明の採便器の使用の一形態として、本発明の採便器を用いる、便検体中の成分の測定方法について、
図1〜6を参照して説明する。採便器1から採便棒2を取り外し(
図1参照)、採便棒2の把持部3を手に持って採便部5を便の中に突き刺すか、便の表面に擦り付けて採便する。次いで、正立状態の有底筒状の容器本体20に嵌合体10の筒状ガイド部13を介して採便棒2の棒部7を挿入し、採便棒2の把持部3をねじ込み、採便棒2の棒部基端部6に設けられた雄ネジと嵌合体上部に設けられた雌ネジを螺合させて容器本体20を密封するとともに、採便棒2の採便部5を第1の擦切り孔11と第2の擦切り孔12とを挿通させて、採便棒2に付着した過剰の便を除去する。過剰の便が除去されて得られる便の量は、通常1〜10mgである。次いで採便器1をよく振って便検体Bと乾燥剤Dとを直接接触させる。便検体Bが乾燥剤Dと接触することにより、便検体中の水分が乾燥剤Dに吸収され、水分が吸収された状態、すなわち、乾燥状態の便検体B
Dが採便部から剥がれ落ち、乾燥剤中に保持されることになる(
図2参照)。被検者は、この状態で郵送その他の方法により病院・検査機関等の検査施設に採便器1を送ることができる。病院・検査機関等の検査施設では、採便器1を倒立させた状態で、便検体中の成分を溶解させる水性媒体(便溶解液)の注入ノズル先端を容器本体の底部のピアス部14を貫通させ、乾燥状態の便検体B
Dに前記水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させて当該成分の水溶液を調製し、調製した当該成分の水溶液を吸引ノズルにより吸引し、吸引した水溶液を試料として用いて、分析システム上で、当該水溶液中の成分を測定することができる(
図3参照)。当該分析ステムにおいて、当該成分は、吸光度法、発光法、蛍光法、比濁法等の方法により測定される。なお、吸引ノズルとして、上記注入ノズルと同一のノズルを用いることもできる。
【0031】
また、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を導入するためのピアス部14が、嵌合体10の上部に具備され、採便棒の把持部に注入ノズル及び吸引ノズルが挿通する空洞部分を有する採便器[
図4(a)参照]や、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を導入するためのピアス部14が、嵌合体10の上部に具備されるが、採便棒の把持部に注入ノズル及び吸引ノズルが挿通する空洞部分を有さない採便器[
図4(b)参照]を用いることもできる。また、便検体中の成分を溶解させる水性媒体を導入するためのピアス部8、14が、採便棒の把持部の上面9、及び、当該上面に直結する嵌合体10の上部の両者に具備される採便器(
図5参照)を用いることもできる。採便器1から採便棒2を取り外し、採便棒2の採便部5を便の中に突き刺すか、便の表面に擦り付けて採便する。次いで、正立状態の容器本体30に嵌合体10の筒状ガイド部13を介して採便棒2の棒部7を挿入し、採便棒2の把持部3をねじ込み、採便棒2の棒部基端部6に設けられた雄ネジと嵌合体上部に設けられた雌ネジを螺合させて容器本体30を密封するとともに、採便棒2の採便部5を第1の擦切り孔11と第2の擦切り孔12とを挿通させて、採便棒2に付着した過剰の便を除去する。過剰の便が除去されて得られる便の量は、通常1〜10mgである。次いで採便器1をよく振って便検体Bと乾燥剤Dとを直接接触させる。便検体Bが乾燥剤Dと接触することにより、便検体中の水分が乾燥剤に吸収され、水分が吸収された状態、すなわち、乾燥状態の便検体B
Dが採便部から剥がれ落ち、乾燥剤中に保持されることになる。被検者は、この状態で郵送その他の方法により病院・検査機関等の検査施設に採便器を送ることができる。病院・検査機関等の検査施設では、採便器を倒立させることなく、正立状態のままで、便検体中の成分を溶解させる水性媒体(便溶解液)の注入ノズル先端を嵌合体の上部のピアス部14、又は、採便棒把持部上面9のピアス部8と嵌合体上部のビアス部14とを貫通させ、乾燥状態の便検体B
Dに前記水性媒体を添加して、水性媒体中に便検体中の成分を溶解させて当該成分の水溶液を調製する。このとき、採便器の容器本体がチューブ状容器の場合には、容器本体30の胴部32に圧を掛けることにより、当該成分を効率的に水性媒体中に溶解させることができる。容器本体30の胴部32への圧は、容器本体の片側から掛けることも、両側から掛けることもできる。容器本体30の両側から圧を掛ける場合には、左右の胴部32から交互に圧を掛けることも、左右の胴部32から同時に圧を掛けることもできる。そして、調製した当該成分の水溶液を吸引ノズルにより吸引し、吸引した水溶液を試料として用いて、全自動便中成分分析装置等の分析システム上で、当該水溶液中の成分を測定することができる(
図6参照)。当該分析ステムにおいて、当該成分は、吸光度法、発光法、蛍光法、比濁法等の方法により測定される。なお、吸引ノズルとして、上記注入ノズルと同一のノズルを用いることもできる。
【0032】
(3)便検体中の成分の安定化方法
本発明の便検体中の成分の安定化方法は、採便後の便検体と乾燥剤とを接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存することを特徴とする方法である。本発明の安定化方法における便検体、便検体中の成分、及び、水性媒体としては、それぞれ、例えば前述の便検体、便検体中の成分、及び、水性媒体等が挙げられる。なお、便検体中の成分の安定化は、実便の代わりに、擬似便を用いて評価することもできる。擬似便とは、糞便(大便)に物理的性状を近似させた基材(マトリックス)に、ヘモグロビン等の便中の成分を添加して調製される人工糞便であり、便潜血試験の精度管理等に使用されるものである。当該基材(マトリックス)としては、例えば特開平11−242027号公報や特開2003−185654号公報に記載されている、きな粉、マッシュポテト、そば粉、白玉粉、片栗粉、すりごま、コーンスターチ、無機粉末等が挙げられる。また、擬似便は、市販の管理試料を用いて調製することもできる。市販の管理試料としては、例えば免疫学的便潜血測定試薬用管理試料 ヘモコントロール(極東製薬社製)等が挙げられる。
本発明において「安定」とは、長時間、便検体を保存しても便検体中の成分の濃度又は活性が維持されていることを意味し、具体的には、便検体として擬似便を用いる場合には、便検体を40℃で6日間、又は、50℃で5日間保存し、40℃で6日間、又は、50℃で5日間保存後の当該成分の濃度又は活性が、便検体を40℃又は50℃で保存する直前の、当該成分の濃度又は活性の40%以上、好ましくは50%以上であることをいい、便検体として実便を用いる場合には、40℃で3日間保存し、40℃で3日間保存後の当該成分の濃度又は活性が、便検体を40℃で保存する直前の、当該成分の濃度又は活性の30%以上、好ましくは40%以上であることをいう。便検体中の成分の濃度又は活性は、例えば前述の方法により測定することができる。
【0033】
便検体中の成分の安定化は、例えば以下の方法により評価することができる。一定量の便検体を市販の採便器中の便溶解液に溶解し、便安定性評価用試料
(対照:0日間)を調製する。この便安定性評価用試料
(対照:0日間)を40℃又は50℃で一定時間保存し、便安定性評価用試料
(対照:保存後)を調製する。調製した便安定性評価用試料
(対照:0日間)、及び、便安定性評価用試料
(対照:保存後)を用いて、上記の便検体中の成分(例えば、ヘモグロビン)測定方法により、それぞれの便安定性評価用試料中の当該成分濃度C
(対照:0日間)及びC
(対照:保存後)を決定する。決定された成分濃度C
(対照:0日間)と、成分濃度C
(対照:保存後)とから、以下の式(I)により、対照試料における当該成分の残存率を算出する。
残存率(%)=C
(対照:保存後)/C
(対照:0日間)×100 (I)
【0034】
一定量の便検体を、一定量の乾燥剤が充填された容器に添加し、当該容器内で当該便検体を当該乾燥剤と混合し、乾燥便検体
(本発明:0日間)を調製する。この乾燥便検体
(本発明:0日間)を40℃又は50℃で一定時間保存し、乾燥便検体
(本発明:保存後)を調製する。調製した乾燥便検体
(本発明:0日間)、及び、乾燥便検体
(本発明:保存後)のそれぞれの乾燥便検体に対して、一定量の水性媒体を添加し、一定時間放置し、得られる上清を便安定性評価用試料
(本発明:0日間)及び便安定性評価用試料
(本発明:保存後)とする。上記の便検体中の成分(例えば、ヘモグロビン)測定方法により、それぞれの便安定性評価用試料中の当該成分濃度C
(本発明:0日間)及びC
(本発明:保存後)を決定する。決定された成分濃度C
(本発明:0日間)と、成分濃度C
(本発明:保存後)とから、以下の式(II)により、乾燥便検体における当該成分の残存率を算出する。
残存率(%)=C
(本発明:保存後)/C
(本発明:0日間)×100 (II)
【0035】
上記式(I)で算出された対照試料における当該成分の残存率も、上記式(II)で算出された乾燥便検体における当該成分の残存率も、100%に近ければ近いほど、当該成分が安定に保持された、と評価できる。乾燥便検体における当該成分の残存率が、対照試料における当該成分の残存率よりも高い場合、便検体中の成分が安定化された、と評価することができる。
【0036】
本発明の安定化方法においては、乾燥剤と共に、界面活性剤、防腐剤、蛋白質、糖類等を共存させてもよい。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化物、キレート剤等が挙げられ、アジ化物としては、例えばアジ化ナトリウム等が挙げられる。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)若しくはその塩等が挙げられ、塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。蛋白質としては、例えばアルブミン等が挙げられ、アルブミンとしては、例えば牛血清アルブミン(BSA)等が挙げられる。糖類としては、例えばトレハロース、スクロース等が挙げられる。
【0037】
(4)便検体の保存方法
本発明の便検体の保存方法は、採便後の便検体と乾燥剤とを接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を乾燥剤中で保存することを特徴とする方法である。本発明の保存方法における便検体としては、例えば前述の便検体等が挙げられる。本発明の便検体の保存方法における保存期間は、便検体が安定に保存される期間であれば特に制限はなく、通常、30分間〜30日間であり、1〜5日間が好ましい。また、本発明の便検体の保存方法における保存温度は、便検体が安定に保存される温度であれば特に制限はなく、通常、−80〜60℃であり、0〜50℃が好ましい。本発明の便検体の保存方法においては、乾燥剤と共に、界面活性剤、防腐剤、蛋白質、糖類等を共存させてもよい。界面活性剤としては、例えば非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化物、キレート剤等が挙げられ、アジ化物としては、例えばアジ化ナトリウム等が挙げられる。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)若しくはその塩等が挙げられ、塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。蛋白質としては、例えばアルブミン等が挙げられ、アルブミンとしては、例えば牛血清アルブミン(BSA)等が挙げられる。糖類としては、例えばトレハロース、スクロース等が挙げられる。
【0038】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、本実施例においては、下記メーカーの機器類、試薬、及び試料を使用した。
・機器類
全自動便中ヒトヘモグロビン分析装置 HM−JACKarc(協和メデックス社製)
インキュベータ AS ONE SHAKING INCUBATOR SI-300(アズワン社製)
・試薬類
エクステル「ヘモ・オート」HS L液(協和メデックス社製)
エクステルヘモグロビン標準 HS(協和メデックス社製)
エクステルHMコントロール HS(協和メデックス社製)
エクステル「ヘモ・オート」緩衝液(協和メデックス社製)
ヘモオートMC採便器(協和メデックス社製)
ヘモオートMC採便器中に含まれる便溶解液N(協和メデックス社製)
シリカゲル(ドライフラワー用乾燥剤)(豊田化工社製)
酸化アルミニウム(シグマ−アルドリッチ社製)
【実施例1】
【0039】
擬似便中のヘモグロビンの安定性(1)〜シリカゲル充填容器を用いた検討
(1)擬似便の調製
免疫学的便潜血測定試薬用管理試料 ヘモコントロール(極東製薬社製)に同梱されている3種類の粉末試料A〜C、及び、3種類の溶解液A〜Cのうち、粉末試料Bと溶解液Bとを用いて擬似便を調製した。具体的には、溶解液B(2mL)を粉末試料(2g)に添加し、30分間、25℃で放置した後、当該管理試料に付属の攪拌棒で撹拌し、擬似便を調製した。
【0040】
(2)シリカゲル充填容器の調製
スクリュースピッツ(10mL用;栄研化学社製)にシリカゲル1.4gを充填し、シリカゲル充填容器を調製した。
【0041】
(3)擬似便試料の調製
(3−1)対照用擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した擬似便を保持する採便棒をヘモオートMC採便器の本体へねじ込みながら挿入し、ヘモオートMC採便器中の便溶解液Nに擬似便を溶解し、擬似便試料1
(対照:0日間)を調製した。
【0042】
(3−2)本発明の擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成パーツである下方嵌合ブロック(セパレータ)[前記特許文献1(
図9の40)を参照のこと]の擦切り孔に直接挿入し、採便棒に付着した過剰の擬似便を除去した。その後、過剰の擬似便が除去された採便棒の先端部分(先端部より約2cmの部位)をニッパで切り取り、上記(2)のスクリュースピッツに添加した。次いで、擬似便を保持する採便棒の先端部分を含有するスクリュースピッツをスクリューキャップで蓋をして、十分にスクリュースピッツを撹拌し、擬似便をスクリュースピッツ中のシリカゲルと混合させ、擬似便試料1
(本発明:0日間)を調製した。
【0043】
(4)保存安定性評価用試料の調製
(4−1)対照用保存安定性評価用試料の調製
上記(3−1)で調製した擬似便試料1
(対照:0日間)をインキュベータ内で50℃で24時間保存し、擬似便試料1
(対照:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(対照:0日間)をインキュベータ内で50℃で48時間保存し、擬似便試料1
(対照:2日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(対照:0日間)をインキュベータ内で50℃で72時間保存し、擬似便試料1
(対照:3日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(対照:0日間)をインキュベータ内で50℃で96時間保存し、擬似便試料1
(対照:4日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(対照:0日間)をインキュベータ内で50℃で120時間保存し、擬似便試料1
(対照:5日間)を調製した。調製した擬似便試料1
(対照:0日間)、擬似便試料1
(対照:1日間)、擬似便試料1
(対照:2日間)、擬似便試料1
(対照:3日間)、擬似便試料1
(対照:4日間)、擬似便試料1
(対照:5日間)の各擬似便試料を、対照用保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料1
(対照:0日間);保存安定性評価用試料1
(対照:1日間);保存安定性評価用試料1
(対照:2日間);保存安定性評価用試料1
(対照:3日間);保存安定性評価用試料1
(対照:4日間);保存安定性評価用試料1
(対照:5日間)]として用いた。
【0044】
(4−2)本発明の保存安定性評価用試料の調製
上記(3−2)で調製した擬似便試料1
(本発明:0日間)をインキュベータ内で50℃で24時間保存し、擬似便試料1
(本発明:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(本発明:0日間)をインキュベータ内で50℃で48時間保存し、擬似便試料1
(本発明:2日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(本発明:0日間)をインキュベータ内で50℃で72時間保存し、擬似便試料1
(本発明:3日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(本発明:0日間)をインキュベータ内で50℃で96時間保存し、擬似便試料1
(本発明:4日間)を調製した。同様に、擬似便試料1
(本発明:0日間)をインキュベータ内で50℃で120時間保存し、擬似便試料1
(本発明:5日間)を調製した。
【0045】
調製した本発明の各擬似便試料を含有する各スクリュースピッツに、ヘモオートMC採便器中に含まれる便溶解液N(4mL)を添加した後、スクリューキャップでスクリュースピッツに蓋をして、ボルテックスミキサーにて各スクリュースピッツを1分間攪拌し、各スクリュースピッツ中の擬似便を含有するシリカゲルと便溶解液Nとを撹拌した。攪拌後、各スクリュースピッツを静置し、各スクリュースピッツ中の上澄を本発明の保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料1
(本発明:0日間);保存安定性評価用試料1
(本発明:1日間);保存安定性評価用試料1
(本発明:2日間);保存安定性評価用試料1
(本発明:3日間);保存安定性評価用試料1
(本発明:4日間);保存安定性評価用試料1
(本発明:5日間)]とした。
【0046】
(5)保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
(5−1)対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
エクステル「ヘモ・オート」HS L液、及び、エクステル「ヘモ・オート」緩衝液を用いて、HM−JACKarcにより、上記(4−1)で調製した対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビンを測定した。
(a)検量線の作成
エクステル「ヘモ・オート」HSの添付文書に記載の方法に従い、エクステルヘモグロビン標準 HS、及び、エクステルHMコントロール HSを用いて、ヘモグロビン濃度と濁度との間の関係を示す検量線を作成した。
(b)対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度の決定
エクステル「ヘモ・オート」HS L液(90μL)及びエクステル「ヘモ・オート」緩衝液(190μL)をHM−JACKarc専用カップに添加し、その後、(4−1)で調製した対照用保存安定性評価用試料1
(対照:0日間)(4μL)を添加し25℃で反応を行い、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:0日間)を添加した108秒後の濁度と306秒後の濁度を測定し、306秒後の濁度から108秒後の濁度を差し引き、得られた値を(a)で作成した検量線に照らし合わせ、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:0日間)中のヘモグロビン濃度を決定した。
【0047】
対照用保存安定性評価用試料として、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:0日間)の代わりに、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:1日間)、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:2日間)、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:3日間)、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:4日間)、対照用保存安定性評価用試料1
(対照:5日間)の各対照用保存安定性評価用試料を用いて同様の測定を行い、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。対照用保存安定性評価用試料1
(対照:0日間)中のヘモグロビン濃度を100としたときの、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表1及び
図7に示す。
【0048】
(5−2)本発明の保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、対照用保存安定性評価用試料の代わりに、上記(4−2)で調製した本発明の保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料1
(本発明:0日間)、保存安定性評価用試料1
(本発明:1日間)、保存安定性評価用試料1
(本発明:2日間)、保存安定性評価用試料1
(本発明:3日間)、保存安定性評価用試料1
(本発明:4日間)、保存安定性評価用試料1
(本発明:5日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は(5−1)と同様の方法により、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。保存安定性評価用試料1
(本発明:0日間)中のヘモグロビン濃度を100とした時の、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表1及び
図7に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1及び
図7より明らかな様に、便溶解液Nに擬似便を溶解して調製した対照用保存安定性評価用試料においては、50℃で1日間保存しただけで、ヘモグロビン濃度が14%に低下したのに対して、シリカゲルと擬似便とを接触することにより擬似便をシリカゲル中に保存して調製した本発明の保存安定性評価用試料においては、50℃で5日間保存してもヘモグロビン濃度がほぼ100%であった。したがって、便検体をシリカゲルと接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体をシリカゲル中に保存することにより便検体が安定化され、便検体中のヘモグロビンが安定化され、50℃で5日間保存しても、便検体中のヘモグロビンが安定に保持されることが判明した。
【実施例2】
【0051】
擬似便中のヘモグロビンの安定性(2)〜シリカゲル充填採便器を用いた検討
(1)擬似便の調製
実施例1の(1)で調製した擬似便を使用した。
【0052】
(2)シリカゲル充填採便器の調製
ヘモオートMC採便器の便収容室に、便溶解液Nの代わりにシリカゲル200mgを充填し、シリカゲル充填採便器を調製した。
【0053】
(3)擬似便試料の調製
(3−1)対照用擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取し、採取した擬似便を保持する採便棒をヘモオートMC採便器の本体へねじ込みながら挿入し、ヘモオートMC採便器中の便溶解液に擬似便を溶解し、擬似便試料2
(対照:0日間)を調製した。
【0054】
(3−2)本発明の擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取し、採取した擬似便を保持する採便棒を、上記(2)で調製したシリカゲル充填採便器の本体へねじ込みながら挿入し、便収容室内でシリカゲルと擬似便とを十分に混合し、擬似便試料2
(本発明:0日間)を調製した。
【0055】
(4)保存安定性評価用試料の調製
(4−1)対照用保存安定性評価用試料の調製
上記(3−1)で調製した擬似便試料2
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、擬似便試料2
(対照:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料2
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で6日間保存し、擬似便試料2
(対照:6日間)を調製した。同様に、擬似便試料2
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で10日間保存し、擬似便試料2
(対照:10日間)を調製した。調製した擬似便試料2
(対照:0日間)、擬似便試料2
(対照:1日間)、擬似便試料2
(対照:6日間)、擬似便試料2
(対照:10日間)の各擬似便試料を、対照用保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料2
(対照:0日間);保存安定性評価用試料2
(対照:1日間);保存安定性評価用試料2
(対照:6日間);保存安定性評価用試料2
(対照:10日間)]として用いた。
【0056】
(4−2)本発明の保存安定性評価用試料の調製
上記(3−2)で調製した擬似便試料2
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、擬似便試料2
(本発明:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料2
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で6日間保存し、擬似便試料2
(本発明:6日間)を調製した。同様に、擬似便試料2
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で10日間保存し、擬似便試料2
(本発明:10日間)を調製した。
調製した本発明の各擬似便試料を含有する各採便器の容器本体から採便棒を抜き取り、ヘモオートMC採便器用便溶解液N(2mL)を便収容室に添加し、採便棒を容器本体へ挿入した後、容器本体をボルテックスミキサーにて1分間攪拌し、各採便器中の擬似便を含有するシリカゲルと便溶解液Nとを撹拌した。攪拌後、各採便器を静置し、各採便器中の上澄を本発明の保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料2
(本発明:0日間);保存安定性評価用試料2
(本発明:1日間);保存安定性評価用試料2
(本発明:6日間);保存安定性評価用試料2
(本発明:10日間)]とした。
【0057】
(5)保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
(5−1)対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、上記(4−1)で調製した対照用保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料2
(対照:0日間)、保存安定性評価用試料2
(対照:1日間)、保存安定性評価用試料2
(対照:6日間)、保存安定性評価用試料2
(対照:10日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。対照用保存安定性評価用試料2
(対照:0日間)中のヘモグロビン濃度を100としたときの、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表2及び
図8に示す。
【0058】
(5−2)本発明の保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、対照用保存安定性評価用試料の代わりに、上記(4−2)で調製した本発明の保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料2
(本発明:0日間)、保存安定性評価用試料2
(本発明:1日間)、保存安定性評価用試料2
(本発明:6日間)、保存安定性評価用試料2
(本発明:10日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。保存安定性評価用試料2
(本発明:0日間)中のヘモグロビン濃度を100とした時の、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表2及び
図8に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2及び
図8より明らかな様に、採便器中で、便溶解液Nに擬似便を溶解して調製した対照用保存安定性評価用試料においては、40℃で1日間保存しただけで、ヘモグロビン濃度が38%に低下したのに対して、採便器中で、便溶解液Nに擬似便を溶解して調製した本発明の保存安定性評価用試料においては、40℃で6日間保存してもヘモグロビン濃度がほぼ100%であり、40℃で10日間保存してもヘモグロビン濃度が80%以上であった。したがって、シリカゲルと接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体をシリカゲル中に保存することにより便検体が安定化され、便検体中のヘモグロビンが安定化され、40℃で6日間以上保存しても、便検体中のヘモグロビンが安定に保持されることが判明した。
【実施例3】
【0061】
実便中のヘモグロビンの安定性〜シリカゲル充填容器を用いた検討
(1)実便の調製
凍結保存されたヒト由来の陽性便を25℃で1時間放置して融解させた後、撹拌棒で均一に撹拌し、実便を調製した。ここで、陽性便とは、便1g当たりヘモグロビンが30μg以上である便である。
【0062】
(2)シリカゲル充填容器の調製
スクリュースピッツ(10mL用;栄研化学社製)にシリカゲル1.4gを充填し、シリカゲル充填容器を調製した。
【0063】
(3)実便試料の調製
(3−1)対照用実便試料
上記(1)で調製した実便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した実便を保持する採便棒をヘモオートMC採便器の本体へねじ込みながら挿入し、ヘモオートMC採便器中の便溶解液Nに実便を溶解し、実便試料
(対照:0日間)を調製した。
【0064】
(3−2)本発明の実便試料
上記(1)で調製した実便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成パーツである下方嵌合ブロック(セパレータ)[前記特許文献1(
図9の40)を参照のこと]の擦切り孔に直接挿入し、採便棒に付着した過剰の実便を除去した。その後、過剰の実便が除去された採便棒の先端部分(先端部より約2cmの部位)をニッパで切り取り、上記(2)のスクリュースピッツに添加した。次いで、実便を保持する採便棒の先端部分を含有するスクリュースピッツをスクリューキャップで蓋をして、十分にスクリュースピッツを撹拌し、実便をスクリュースピッツ中のシリカゲルと混合させ、実便試料
(本発明:0日間)を調製した。
【0065】
(4−1)対照用保存安定性評価用試料の調製
上記(3−1)で調製した実便試料
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、実便試料
(対照:1日間)を調製した。同様に、実便試料
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で2日間保存し、実便試料
(対照:2日間)を調製した。同様に、実便試料
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で3日間保存し、実便試料
(対照:3日間)を調製した。同様に、実便試料
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で5日間保存し、実便試料
(対照:5日間)を調製した。調製した実便試料
(対照:0日間)、実便試料
(対照:1日間)、実便試料
(対照:2日間)、実便試料
(対照:3日間)、実便試料
(対照:5日間)の各実便試料を、対照用保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料3
(対照:0日間);保存安定性評価用試料3
(対照:1日間);保存安定性評価用試料3
(対照:2日間);保存安定性評価用試料3
(対照:3日間);保存安定性評価用試料3
(対照:5日間)]として用いた。
【0066】
(4−2)本発明の保存安定性評価用試料の調製
上記(3−2)で調製した実便試料
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、実便試料
(本発明:1日間)を調製した。同様に、実便試料
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で2日間保存し、実便試料
(本発明:2日間)を調製した。同様に、実便試料
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で3日間保存し、実便試料
(本発明:3日間)を調製した。同様に、実便試料
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で5日間保存し、実便試料
(本発明:5日間)を調製した。
調製した本発明の各実便試料を含有する各スクリュースピッツに、ヘモオートMC採便器中に含まれる便溶解液N(4mL)を添加した後、スクリューキャップでスクリュースピッツに蓋をして、ボルテックスミキサーにて各スクリュースピッツを1分間攪拌し、各スクリュースピッツ中で、実便を含有するシリカゲルと便溶解液Nとを撹拌した。攪拌後、各スクリュースピッツを静置し、各スクリュースピッツ中の上澄を本発明の保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料3
(本発明:0日間);保存安定性評価用試料3
(本発明:1日間);保存安定性評価用試料3
(本発明:2日間);保存安定性評価用試料3
(本発明:3日間);保存安定性評価用試料3
(本発明:5日間)]とした。
【0067】
(5)保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
(5−1)対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、上記(4−1)で調製した対照用保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料3
(対照:0日間)、保存安定性評価用試料3
(対照:1日間)、保存安定性評価用試料3
(対照:2日間)、保存安定性評価用試料3
(対照:3日間)、保存安定性評価用試料3
(対照:5日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。対照用保存安定性評価用試料3
(対照:0日間)中のヘモグロビン濃度を100としたときの、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表3及び
図9に示す。
【0068】
(5−2)本発明の保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、対照用保存安定性評価用試料の代わりに、上記(4−2)で調製した本発明の保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料3
(本発明:0日間)、保存安定性評価用試料3
(本発明:1日間)、保存安定性評価用試料3
(本発明:2日間)、保存安定性評価用試料3
(本発明:3日間)、保存安定性評価用試料3
(本発明:4日間)、保存安定性評価用試料3
(本発明:5日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。保存安定性評価用試料
(本発明:0日間)中のヘモグロビン濃度を100とした時の、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表3及び
図9に示す。
【0069】
【表3】
【0070】
表3及び
図9より明らかな様に、便溶解液Nに実便を溶解して調製した対照用保存安定性評価用試料においては、40℃で1日間保存しただけで、ヘモグロビン濃度が9%に低下したのに対して、シリカゲルと実便とを接触させることにより実便をシリカゲル中に保存して調製した本発明の保存安定性評価用試料においては、40℃で3日間保存してもヘモグロビン濃度が40%以上であった。したがって、便検体として実便を用いた場合でも、シリカゲルと接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体をシリカゲル中に保存することにより便検体が安定化され、便検体中のヘモグロビンが安定化され、40℃で3日間保存しても、便検体中のヘモグロビンが安定に保持されることが判明した。
【実施例4】
【0071】
擬似便中のヘモグロビンの安定性(3)〜酸化アルミニウム充填容器を用いた検討
(1)擬似便の調製
実施例1の(1)で調製した擬似便を使用した。
【0072】
(2)酸化アルミニウム充填容器の調製
スクリュースピッツ(10mL用;栄研化学社製)に酸化アルミニウム200mgを充填し、酸化アルミニウム充填容器を調製した。
【0073】
(3)擬似便試料の調製
(3−1)対照用擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した擬似便を保持する採便棒をヘモオートMC採便器の本体へねじ込みながら挿入し、ヘモオートMC採便器中の便溶解液Nに擬似便を溶解し、擬似便試料3
(対照:0日間)を調製した。
【0074】
(3−2)本発明の擬似便試料
上記(1)で調製した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成部品である採便棒を用いて採取した。採取した擬似便を、ヘモオートMC採便器の構成パーツである下方嵌合ブロック(セパレータ)[前記特許文献1(
図9の40)を参照のこと]の擦切り孔に直接挿入し、採便棒に付着した過剰の擬似便を除去した。その後、過剰の擬似便が除去された採便棒の先端部分(先端部より約2cmの部位)をニッパで切り取り、上記(2)のスクリュースピッツに添加した。次いで、擬似便を保持する採便棒の先端部分を含有するスクリュースピッツをスクリューキャップで蓋をして、十分にスクリュースピッツを撹拌し、擬似便をスクリュースピッツ中のシリカゲルと混合させ、擬似便試料3
(本発明:0日間)を調製した。
【0075】
(4)保存安定性評価用試料の調製
(4−1)対照用保存安定性評価用試料の調製
上記(3−1)で調製した擬似便試料3
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、擬似便試料3
(対照:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料3
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で3日間保存し、擬似便試料3
(対照:3日間)を調製した。同様に、擬似便試料3
(対照:0日間)をインキュベータ内で40℃で6日間保存し、擬似便試料3
(対照:6日間)を調製した。調製した擬似便試料3
(対照:0日間)、擬似便試料3
(対照:1日間)、擬似便試料3
(対照:3日間)、擬似便試料3
(対照:6日間)の各擬似便試料を、対照用保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料3
(対照:0日間);保存安定性評価用試料3
(対照:1日間);保存安定性評価用試料3
(対照:3日間);保存安定性評価用試料3
(対照:6日間)]として用いた。
【0076】
(4−2)本発明の保存安定性評価用試料の調製
上記(3−2)で調製した擬似便試料3
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で24時間保存し、擬似便試料3
(本発明:1日間)を調製した。同様に、擬似便試料3
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で3日間保存し、擬似便試料3
(本発明:3日間)を調製した。同様に、擬似便試料3
(本発明:0日間)をインキュベータ内で40℃で6日間保存し、擬似便試料3
(本発明:6日間)を調製した。
調製した本発明の各擬似便試料を含有する各スクリュースピッツに、ヘモオートMC採便器中に含まれる便溶解液N(4mL)を添加した後、スクリューキャップでスクリュースピッツに蓋をして、ボルテックスミキサーにて各スクリュースピッツを1分間攪拌し、各スクリュースピッツ中の擬似便を含有するシリカゲルと便溶解液Nとを撹拌した。攪拌後、各スクリュースピッツを静置し、各スクリュースピッツ中の上澄を本発明の保存安定性評価用試料[保存安定性評価用試料4
(本発明:0日間);保存安定性評価用試料4
(本発明:1日間);保存安定性評価用試料4
(本発明:3日間);保存安定性評価用試料4
(本発明:6日間)]とした。
【0077】
(5)保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
(5−1)対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、上記(4−1)で調製した対照用保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料4
(対照:0日間)、保存安定性評価用試料4
(対照:1日間)、保存安定性評価用試料4
(対照:3日間)、保存安定性評価用試料4
(対照:6日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。対照用保存安定性評価用試料4
(対照:0日間)中のヘモグロビン濃度を100としたときの、各対照用保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表4及び
図10に示す。
【0078】
(5−2)本発明の保存安定性評価用試料中のヘモグロビンの測定
保存安定性評価用試料として、対照用保存安定性評価用試料の代わりに、上記(4−2)で調製した本発明の保存安定性評価用試料、すなわち、保存安定性評価用試料4
(本発明:0日間)、保存安定性評価用試料4
(本発明:1日間)、保存安定性評価用試料4
(本発明:3日間)、保存安定性評価用試料4
(本発明:6日間)の各保存安定性評価用試料を用いる以外は、実施例1の(5−1)と同様の方法により、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を決定した。保存安定性評価用試料4
(本発明:0日間)中のヘモグロビン濃度を100とした時の、各保存安定性評価用試料中のヘモグロビン濃度を表4及び
図10に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
表4及び
図10より明らかな様に、便溶解液Nに擬似便を溶解して調製した対照用保存安定性評価用試料においては、40℃で1日間保存しただけで、ヘモグロビン濃度が40%に低下したのに対して、酸化アルミニウムと擬似便とを接触させることにより擬似便を酸化アルミニウム中に保存して調製した本発明の保存安定性評価用試料においては、40℃で3日間保存してもヘモグロビン濃度が60%以上であり、40℃で6日間保存してもヘモグロビン濃度が50%以上であった。したがって、便検体を酸化アルミニウムと接触させて便検体を乾燥させ、乾燥状態の便検体を酸化アルミニウム中に保存することにより便検体が安定化され、便検体中のヘモグロビンが安定化され、40℃で3日間保存しても、便検体中のヘモグロビンが安定に保持されることが判明した。