(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板に実装される第1のコネクタと同軸ケーブルに接続された第2のコネクタとを備え、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合して、前記基板と前記同軸ケーブルとを接続する電気コネクタであって、
前記第1のコネクタは、
前記基板と接続する基板接続部が形成され、前記基板接続部の一端で前記基板から離れる方向に折れ曲がって延びる立ち上がり部が形成され、前記立ち上がり部の一端で前記基板に沿う方向に折れ曲がって延びて前記第2のコネクタに設けられた相手コンタクトと接触する第1のコンタクト接触部が形成された、一列に配列された導電性を有する複数の第1のコンタクトと、
前記第1のコンタクトに沿って延びる下縁部全体で前記基板の接地電極に接続し、前記下縁部の反対側に前記第1のコンタクトに沿って延びる上縁部が設けられ、前記第1のコンタクトにおける配列の両端と伝送される信号毎に前記第1のコンタクトを仕切る部分とに立設されるとともに、前記相手コンタクトの配列の両端と伝送される信号毎に前記相手コンタクトを仕切る部分に張り出す導電性の壁部と、
前記第1のコンタクト及び前記壁部を保持する絶縁性の第1のハウジングと、
前記第1のコンタクト及び前記壁部から離隔しつつ、前記第1のコンタクト及び前記壁部を覆うように前記第1のハウジングに取り付けられ、前記基板の接地電極に接続する導電性の第1のシェルと、
を備え、
前記第2のコネクタは、
前記同軸ケーブルの内部導体と接続するケーブル接続部が形成され、前記第1のコネクタと嵌合すると前記第1のコンタクト接触部と接触する第2のコンタクト接触部が形成された、前記基板に沿う方向に延びるとともに前記第1のコンタクトに対応して一列に配列された前記相手コンタクトとしての導電性を有する複数の第2のコンタクトと、
前記第2のコンタクトを保持するとともに、前記第1のコネクタから張り出す前記壁部を収容する空隙が設けられた絶縁性の第2のハウジングと、
前記第2のコンタクト及び前記壁部から離隔しつつ、前記第2のコンタクト及び前記壁部を覆うように前記第2のハウジングに取り付けられ、前記第1のコネクタと嵌合すると前記第1のシェルと接続する導電性の第2のシェルと、
前記同軸ケーブルの外部導体と接続し、前記第2のシェルと接続する導電性のグランドバーと、
を備え、
前記壁部の上縁部と、前記第1のシェル及び前記第2のシェルとの間に前記基板に沿って延びる隙間が設けられている、
電気コネクタ。
前記基板からの前記壁部の高さが低くなるにつれて、前記第1のコンタクト及び前記第2のコンタクトを含む伝送線路の共振周波数が高くなる現象に基づいて、前記基板からの前記壁部の高さが、抑圧する対象となるノイズの周波数帯域に応じた高さに規定されている、
請求項1に記載の電気コネクタ。
前記基板からの前記壁部の高さは、前記第1のコンタクト、前記第2のコンタクト及び前記同軸ケーブルの内部導体で構成される伝送線路の前記基板からの最大高さに等しい、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された電気コネクタでは、クロストークの抑制に限界がある。このため、信号が伝送される周波数帯域において共振が発生し、信号の伝送品質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、信号の伝送品質の低下を防止することができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の電気コネクタは、基板に実装される第1のコネクタと同軸ケーブルに接続された第2のコネクタとを備え、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが嵌合して、前記基板と前記同軸ケーブルとを接続する電気コネクタであって、
前記第1のコネクタは、
前記基板と接続する基板接続部が形成され、前記基板接続部の一端で前記基板から離れる方向に折れ曲がって延びる立ち上がり部が形成され、前記立ち上がり部の一端で前記基板に沿う方向に折れ曲がって延びて前記第2のコネクタに設けられた相手コンタクトと接触する第1のコンタクト接触部が形成された、一列に配列された導電性を有する複数の第1のコンタクトと、
前記第1のコンタクトに沿って延びる下縁部全体で前記基板の接地電極に接続し、
前記下縁部の反対側に前記第1のコンタクトに沿って延びる上縁部が設けられ、前記第1のコンタクトにおける配列の両端と伝送される信号毎に前記第1のコンタクトを仕切る部分とに立設されるとともに、前記相手コンタクトの配列の両端と伝送される信号毎に前記相手コンタクトを仕切る部分に張り出す導電性の壁部と、
前記第1のコンタクト及び前記壁部を保持する絶縁性の第1のハウジングと、
前記第1のコンタクト及び前記壁部から離隔しつつ、前記第1のコンタクト及び前記壁部を覆うように前記第1のハウジングに取り付けられ、前記基板の接地電極に接続する導電性の第1のシェルと、
を備え
、
前記第2のコネクタは、
前記同軸ケーブルの内部導体と接続するケーブル接続部が形成され、前記第1のコネクタと嵌合すると前記第1のコンタクト接触部と接触する第2のコンタクト接触部が形成された、前記基板に沿う方向に延びるとともに前記第1のコンタクトに対応して一列に配列された前記相手コンタクトとしての導電性を有する複数の第2のコンタクトと、
前記第2のコンタクトを保持するとともに、前記第1のコネクタから張り出す前記壁部を収容する空隙が設けられた絶縁性の第2のハウジングと、
前記第2のコンタクト及び前記壁部から離隔しつつ、前記第2のコンタクト及び前記壁部を覆うように前記第2のハウジングに取り付けられ、前記第1のコネクタと嵌合すると前記第1のシェルと接続する導電性の第2のシェルと、
前記同軸ケーブルの外部導体と接続し、前記第2のシェルと接続する導電性のグランドバーと、
を備え、
前記壁部の上縁部と、前記第1のシェル及び前記第2のシェルとの間に前記基板に沿って延びる隙間が設けられている。
【0008】
また、前記基板からの前記壁部の高さが低くなるにつれて、前記第1のコンタクト及び前記第2のコンタクトを含む伝送線路の共振周波数が高くなる現象に基づいて、前記基板からの前記壁部の高さが、抑圧する対象となるノイズの周波数帯域に応じた高さに規定されている、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記基板からの前記壁部の高さは、前記第1のコンタクト、前記第2のコンタクト及び前記同軸ケーブルの内部導体で構成される伝送線路の前記基板からの最大高さに等しい、
こととしてもよい。
【0010】
前記基板からの前記壁部の高さは、配列された前記第1のコンタクト、前記第2のコンタクト及び前記同軸ケーブルの内部導体の高さに沿って変化している、
こととしてもよい。
【0011】
前記基板からの前記壁部の高さは、前記同軸ケーブルの内部導体の前記基板からの高さよりも高い、
こととしてもよい。
【0012】
前記基板に沿った前記壁部の長さは、
前記第1のコンタクト及び前記第2のコンタクトで構成される伝送線路の前記基板に沿った長さよりも長い、
こととしてもよい。
【0013】
前記壁部と、前記第1のシェル及び前記第2のシェルとの隙間の間隔が、前記第1のコンタクト及び前記第2のコンタクトを介して伝送される信号の半波長より短い、
こととしてもよい。
【0014】
前記壁部は、
差動信号を伝送する一対のコンタクト単位で、前記コンタクト同士を仕切る、
こととしてもよい。
【0015】
前記同軸ケーブルは、差動信号を伝送する一対の内部導体を有し、
前記一対の内部導体が、前記壁部に挟まれる一対の前記第2のコンタクトと接続されている、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1のコンタクト及び相手コンタクトの配列の両端と、伝送される信号毎に第1のコンタクト及び相手コンタクトを仕切る部分とに、基板に対して立設された導電性の壁部が設けられており、壁部はシェルから離隔している。このようにすれば、壁部の縁部を、第1のコンタクト及び相手コンタクトに近接させることができるので、コンタクトを含む伝送線路の共振により発生するノイズ成分が壁部に伝わりやすくなる。この結果、信号の伝送品質の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る電気コネクタについて、図面を参照して詳細に説明する。全図において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号が付されている。本実施の形態に係る電気コネクタでは、伝送線路間のクロストークを軽減すべく、導体から成る壁部が、伝送線路間に設けられている。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ1は、第1のコネクタとしてのリセプタクルコネクタ2と、第2のコネクタとしてのプラグコネクタ3と、を備える。リセプタクルコネクタ2は、基板5に実装されており、プラグコネクタ3には、16本の同軸ケーブル4が接続されている。
【0020】
リセプタクルコネクタ2とプラグコネクタ3とが嵌合することにより、16本の同軸ケーブル4と基板5の回路とが接続される。本実施の形態では、同軸ケーブル4は、一対の内部導体4aを有しており、1本で1つの差動信号を伝送する。したがって、電気コネクタ1は、16の差動信号を同時に伝送可能である。
【0021】
まず、リセプタクルコネクタ2の構成について説明する。
図2(A)、
図2(B)、
図3(A)、
図3(B)及び
図3(C)に総合的に示すように、リセプタクルコネクタ2は、第1のコンタクト20と、第1のハウジング21と、壁部22Aと、第1のシェル23と、を備える。
【0022】
第1のコンタクト20は、
図4(A)に示すように、x軸方向を長手方向とする金属から成る導電性の部材である。
図3(A)乃至
図3(C)に示すように、第1のコンタクト20は、同軸ケーブル4の内部導体4aの数に合わせて32本設けられている。第1のコンタクト20は、相手コンタクト(後述のプラグコネクタ3の第2のコンタクト30)に対応してy軸方向に一列に配列されている。本実施の形態では、第1のコンタクト20は、隣接する一対のものが一組となって、差動信号を伝送する。
【0023】
図4(A)に示すように、第1のコンタクト20には、基板5と接続する基板接続部20aが形成されている。基板接続部20aは、はんだ付けにより、基板5の信号電極5aと接続する。さらに、第1のコンタクト20には、基板接続部20aの一端で基板5から離れる方向に折れ曲がって延びる立ち上がり部20bが形成されている。
【0024】
さらに、第1のコンタクト20には、立ち上がり部20bの一端で基板5に沿う方向に折れ曲がって延びて相手コンタクト(第2のコンタクト30)と接触する第1のコンタクト接触部20cが形成されている。立ち上がり部20bと第1のコンタクト接触部20cとの間には、第1のハウジング21と係止する係止部20dが設けられている。
【0025】
上述のように、第1のコンタクト20では、基板接続部20aは基板5に沿って配置されているが、係止部20d及び第1のコンタクト接触部20cは、基板5を基準とする高さ、すなわち基板5からの高さがh1となっている。このh1が、基板5からの第1のコンタクト20の最大高さとなっている。
【0026】
第1のハウジング21は、樹脂から成る絶縁性の部材である。第1のハウジング21は、
図3(C)及び
図4(A)に示すように、複数の第1のコンタクト20がx軸方向に延び、y軸方向に一列に配列された状態で、第1のコンタクト20を保持する。さらに、第1のハウジング21は、
図3(C)及び
図4(B)に示すように、壁部22Aがx軸方向に延び、y軸方向に一列に配列された状態で、壁部22Aを保持する。
【0027】
壁部22Aは、第1のハウジング21内に圧入された導電性の部材である。
図4(B)に示すように、壁部22Aは、第1のコンタクト20の配列の両端にx軸方向に延びた状態で基板5上に立設されている。さらに、壁部22Aは、
図3(A)及び
図3(C)に示すように、基板5上において、伝送される信号(差動信号)毎に第1のコンタクト20を仕切る部分に立設されている。
図4(B)に示すように、壁部22Aは、基板5の接地電極5bにそれぞれはんだ付けされている。
【0028】
本実施の形態では、壁部22Aについて、第1のコンタクト20に対向する部分の基板5からの最大高さはh2であり、後述する相手コンタクト及び同軸ケーブル4の内部導体4aに対向する部分の基板5からの最大高さはh4となっている。
【0029】
図2(A)に示すように、第1のシェル23は、第1のコンタクト20及び壁部22Aを覆うように第1のハウジング21に取り付けられている。第1のシェル23は、基板5の接地電極5bに接続し、第1のコンタクト20を含む伝送線路に対する電磁遮蔽材として機能する。
図2(A)に示すように、第1のシェル23には、後述の第2のシェル(シェルB)34と接触するための接触片23aがy軸方向に沿って複数設けられている。
【0030】
図4(A)及び
図4(B)に示すように、第1のシェル23は、第1のコンタクト20及び壁部22Aから離隔している。具体的には、第1のシェル23は、壁部22Aと接続しておらず、壁部22Aには上縁部22aが形成されている。また、第1のシェル23は、壁部22Aとつなげないようにすれば、第1のコンタクト20との間の間隔を広げることができるので、第1のコンタクト20を伝送される信号の伝送品質を示す指標の1つであるリターンロスを低減して、伝送線路の反射特性を向上することができる。
【0031】
次に、プラグコネクタ3の構成について説明する。
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)、
図6(B)及び
図6(C)に総合的に示すように、プラグコネクタ3は、相手コンタクトとしての第2のコンタクト30と、第2のハウジング31と、グランドバー32と、第2のシェル(シェルA)33と、第2のシェル(シェルB)34と、を備える。
【0032】
図7(A)に示すように、第2のコンタクト30は、x軸方向を長手方向とする導電性の部材である。第2のコンタクト30は、
図5(B)に示すように、相手コンタクト(リセプタクルコネクタ2の第1のコンタクト20)に対応してy軸方向に一列に配列されている。本実施の形態では、第2のコンタクト30は、隣接する一対のものが一組となって、差動信号を伝送する。
【0033】
図7(A)に示すように、第2のコンタクト30には、同軸ケーブル4の内部導体4aと接続するケーブル接続部30aが形成されている。さらに、第2のコンタクト30には、第1のコンタクト20と接触する第2のコンタクト接触部30bが形成されている。さらに、第2のコンタクト30には、第2のハウジング31に係止する係止部30cが形成されている。
【0034】
第2のハウジング31は、絶縁性の部材である。第2のハウジング31は、
図7(A)に示すように、複数の第2のコンタクト30がx軸方向に延び、
図5(B)に示すように、y軸方向に一列に配列された状態で、第2のコンタクト30を保持する。さらに、第2のハウジング31は、グランドバー32及び第2のシェル(シェルA)33と、第2のシェル(シェルB)34を保持する。
図6(B)、
図6(C)に示すように、第2のハウジング31には、リセプタクルコネクタ2から張り出す壁部22Aが差し込まれる溝部31aが設けられている。
【0035】
図5(B)に示すように、グランドバー32は、y軸方向に延びる板状の導電性の部材である。グランドバー32は、
図7(B)に示すように、一対の同軸ケーブル4の外部導体4bを挟んで外部導体4bと接続されており、第2のシェル34(シェルB)と接続されている。なお、
図7(A)に示すように、同軸ケーブル4において、内部導体4aと外部導体4bとの間には絶縁体4cが挿入されており、外部導体4bの外側、すなわち最外部に外部被膜4dが形成されている。
【0036】
図7(A)及び
図7(B)に示すように、第2のシェル(シェルA)33と、第2のシェル(シェルB)34とは、導電性の部材である。第2のシェル(シェルA)33は、同軸ケーブル4が第2のコンタクト30と結線された後に第2のハウジング31に取り付けられる。第2のシェル(シェルB)34は、第2のハウジング31の樹脂成形時に同時に一体成形される。
図5(A)、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、第2のシェル(シェルA)33と、第2のシェル(シェルB)34とは、互いに接触している。
図7(A)に示すように、第2のシェル(シェルA)33及び第2のシェル(シェルB)34とは、第2のコンタクト30から離隔しつつ、第2のコンタクト30を覆うように第2のハウジング31に取り付けられ、リセプタクルコネクタ2と嵌合すると第1のシェル23と接触する。また、第2のシェル33には、リセプタクルコネクタ2との接続状態を補強するためのプルバー33aが設けられている。
【0037】
図1に示すように、基板5に実装されたリセプタクルコネクタ2にプラグコネクタ3が嵌め込まれ、プルバー33aが回動してリセプタクルコネクタ2に係合すると、
図8(A)及び
図8(B)に示す状態となる。
【0038】
この場合、
図8(A)に示すように、第1のコンタクト20の第1のコンタクト接触部20cと第2のコンタクト30の第2のコンタクト接触部30bとが接触する。これにより、基板5の信号電極5a→第1のコンタクト20→第2のコンタクト30→同軸ケーブル4の内部導体4aという信号の伝送線路が形成される。
【0039】
さらに、この状態で、
図8(A)に示すように、第1のシェル23の接触片23aが、第2のシェル34に接触する。これにより、同軸ケーブル4の外部導体4b→グランドバー32→第2のシェル(シェルA)33→第2のシェル(シェルB)34→第1のシェル23→基板5の接地電極5bという接地用の伝送線路が形成される。
【0040】
また、基板5に実装されたリセプタクルコネクタ2にプラグコネクタ3が嵌め込まれると、リセプタクルコネクタ2の壁部22Aがプラグコネクタ3の溝部31aに差し込まれる。この状態で、
図8(B)に示すように、第2のシェル33は、リセプタクルコネクタ2を構成する壁部22Aから離隔しつつ、壁部22Aを覆う状態となる。
【0041】
また、壁部22Aは、基板5の接地電極5bに接続されている。したがって、壁部22Aは、同軸ケーブル4の外部導体4bと同電位となる。
【0042】
同軸ケーブル4の一対の内部導体4aは、差動信号を伝送する。したがって、
図9(A)に示すように、電気コネクタ1においても、隣接する一対の伝送線路で差動信号が伝送される。電気コネクタ1では、壁部22Aが、差動信号を伝送する一対の伝送線路を挟むように形成されている。すなわち、壁部22Aは、差動信号を伝送する一対の伝送線路単位(コンタクト単位)で、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30同士を仕切っている。これにより、壁部22Aは、一対の伝送線路から、隣接する一対の伝送線路へ放射するノイズを遮蔽する導体として機能する。
【0043】
また、
図9(A)に示すように、壁部22Aは、x軸方向に関して、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30で構成される信号の伝送線路の長さよりも長くなっている。これにより、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び露出した内部導体4aから成る伝送線路をカバーすることができる。
【0044】
図9(B)に示すように、一対の伝送線路から、電磁波ノイズ成分が放射された場合に、上方に放射されたノイズについては、第1のシェル23及び第2のシェル(シェルA)33、第2のシェル(シェルB)34に伝送される。また、横方向、下方に放射されるノイズについては、壁部22Aに伝送される。これにより、差動信号を伝送する一対の伝送線路同士のクロストークを低減することができる。なお、電気コネクタの中には、壁部22Aの代わりに、グラウンド用の同軸ケーブル4に接続されたコンタクトを備えるコネクタもある。しかし、この種の電気コネクタでは、コンタクトから下方に放射されたノイズをとらえるのが困難になる。電気コネクタ1は、コンタクトから下方に放射されたノイズも壁部22Aに伝送可能である。
【0045】
また、壁部22Aの上縁部22aと、第2のシェル33との間の隙間L(
図9(B)参照)は、伝送される信号の周波数の半波長以下となっている。このようにすれば、第2のシェル33と壁部22Aとの隙間からノイズが漏れるのを防止することができる。このことは、壁部22Aと、第1のシェル23との間の隙間についても同様である。例えば、伝送される信号の周波数が30GHzである場合には、信号の波長は10mmとなるため、隙間は5mm以下とすればよい。
【0046】
図10に示すように、本実施の形態では、第1のコンタクト20に対向する部分の壁部22Aの高さh2は、基板5からの第1のコンタクト20の最大高さh1に等しくなっており、第2のコンタクト30及び内部導体4aに対向する部分の壁部22Aの高さh4は、基板5からの内部導体4aの最大高さh3と等しくなっている。すなわち、基板5からの壁部22Aの高さは、配列された第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aの高さに沿って変化している。なお、第2のコンタクト30に対向する部分の壁部22Aの高さh4は、第2のコンタクト30の最大高さと同じとしてもよい。また、第2のコンタクト30に対向する部分については、壁部22Aの高さを第2のコンタクト30の最大高さとし、内部導体4aと対向する部分については、壁部22Aの高さを内部導体4aの最大高さと同じとしてもよい。
【0047】
このようにすれば、第1のコンタクト20、第2のコンタクト40及び内部導体4aと、壁部22Aの上縁部22aとの間隔を短くすることができるので、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び内部導体4aを含む伝送線路から放出されるノイズ成分を壁部22Aの上縁部22aに伝送しやすくなり、隣接する伝送線路へのノイズ成分の放出を抑制し易くなる。
【0048】
このように、壁部22Aは、差動信号を伝送する一対の信号の伝送線路同士でのクロストークを低減するために設けられている。ここで、伝送線路の周波数特性である近端クロストーク(S−Parameter NEXT(Near End Crosstalk))がどの程度低減されているかについて説明する。
【0049】
図11の太い実線で示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ1では、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び内部導体4aの最大高さと同じ高さを有する壁部22Aにより、壁部22Aがない場合(細い実線)と比べ、周波数全域に渡って、近端クロストークが低減している。
【0050】
また、
図12の実線に示すように、壁部22Aと第1のシェル23及び第2のシェル(シェルA)33、第2のシェル(シェルB)34とを接触させて、差動信号を伝送する一対の信号の伝送線路の周囲を導電性のシェルで囲んだ場合には、近端クロストークは、信号の周波数が高くなるとかえって増大した。
図12では、点線が、本実施の形態に係る電気コネクタ1の周波数特性(近端クロストーク)を示している。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係る電気コネクタ1のように、差動信号を伝送する第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aから成る一対の伝送線路同士の間にその最大高さと同じ高さを有する壁部22Aを挿入すれば、伝送線路の周波数特性を改善することができることが明らかとなった。そして、その改善の度合いは、伝送線路の周囲を導体シェルで囲んだ場合よりも良好なものとなった。
【0052】
さらに、壁部22Aの高さに応じて、信号の伝送線路の周波数特性は変化する。
図11の点線で示すように、壁部22Aの高さh2,h4を、第1のコンタクト20の高さh1,第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh3よりも高く(h2>h1、h4>h3)した場合には、近端クロストークには、周波数F1(GHz)より高い周波数帯域に共振周波数に対応する2つのピークが現れている。
【0053】
一方、
図11の一点鎖線で示すように、壁部22Aの高さh2、h4を、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh1、h3よりも低く(h2<h1、h4<h3)した場合には、信号の伝送線路の共振周波数はF2(GHz)を超えるようになり、周波数F1(GHz)以上F2(GHz)の範囲では近端クロストークがh2>h1の場合に比べて小さくなっている。
【0054】
以上のことから、基板5からの壁部22Aの高さh2及びh4が低くなるにつれて、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び内部導体4aを含む伝送線路の共振周波数が高くなる現象があることが明らかとなった。この現象を利用すれば、伝送線路の共振周波数を、伝送される信号の周波数帯域から外れるように、すなわち、抑圧対象となるノイズの周波数帯域に応じて、壁部22Aの高さh2及びh4を調整することが可能となる。
【0055】
例えば、伝送される信号の周波数帯域がF1(GHz)以上F2(GHz)以下である場合には、壁部22Aの高さh2,h4を第1のコンタクト20の高さh1、第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh3よりも低くして、伝送線路の共振周波数をF2(GHz)以上とすればよい。このようにすれば、伝送される信号の周波数帯域周辺のノイズ成分を抑制することが可能となる。また、伝送される信号の周波数帯域がF2(GHz)以上である場合には、壁部22Aの高さh2,h4を、第1のコンタクト20の高さh1、第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh3よりも高くして、伝送線路の共振周波数をF1(GHz)以上F2(GHz)以下とすればよい。このようにすれば、伝送される信号の周波数帯域周辺のノイズ成分を抑制することが可能となる。
【0056】
なお、
図13に示すように、壁部22Aの代わりに、基板5からの壁部22Bの高さh2、h4が同一な(高さが均一な)壁部22Bを用いてもよい。基板5からの壁部22Bの高さh2,h4は、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び同軸ケーブル4の内部導体4aで構成される伝送線路の基板5からの最大高さに等しくなる。
【0057】
図14には、壁部22Aを備える電気コネクタ1の周波数特性(近端クロストーク)が、太い実線で示されている。比較対象として、壁部22Bを備える電気コネクタ1の周波数特性(近端クロストーク)が点線で示され、一対の伝送線路間に壁部が設けられていない電気コネクタの周波数特性(近端クロストーク)が細い実線で示されている。
図14に示すように、本実施の形態に係る電気コネクタ1によれば、壁部がない場合にくらべて、壁部22Bを備える電気コネクタとほぼ同様に近端クロストークが低減されている。また、周波数F3(GHz)以上の周波数帯域では、壁部22Aを備える電気コネクタ1の近端クロストークが、壁部22Bを備える電気コネクタ1よりも小さくなっている。
【0058】
以上詳細に説明したように、上記実施の形態によれば、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30の配列の両端と、伝送される信号(差動信号)毎に第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30を仕切る部分とに、基板5に対して立設された導電性の壁部22A,22Bが設けられており、壁部22A,22Bを第1のシェル23及び第2のシェル33から離隔している。このようにすれば、壁部22A,22Bの上縁部22aを、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30に近接させることができるので、第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30を含む伝送線路の共振により発生するノイズ成分が壁部22A,22Bに伝わりやすくなる。この結果、共振によるクロストークの増大を抑制して、信号の伝送品質の低下を防止することができる。
【0059】
ここで、クロストークを最も抑制できるのは(すなわち近端クロストークの値が低いのは)、壁部22Aの高さを、基板5を基準としたときの第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30及び内部導体4aを含むコネクタ内の信号の伝送線路の高さに沿わせた場合である。
【0060】
伝送される信号の周波数、すなわち低減すべきノイズの周波数と伝送線路の共振周波数をずらす場合について考える。例えば、共振周波数を低くする場合には、コネクタ内の伝送線路の最大高さh1,h3よりも壁部22A,22Bの高さh2,h4を高くするのが望ましい。一方、共振周波数を高くする場合には、コネクタ内の伝送線路の最大高さh1,h3よりも、壁部22A,22Bの高さh3,h4を低くするのが望ましい。壁部22A,22Bの高さh2,h4と第1のコンタクト20,第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh1,h3の差の許容範囲としては、±1.5mmとしてもよいし、その差を第1のコンタクト20及び第2のコンタクト30及び内部導体4aの幅以内としてもよい。また、壁部22A,22Bの高さh2,h4については、コネクタ内の伝送線路と、その伝送線路に隣接する伝送線路との間の少なくとも一部を遮ることができる高さとするだけでもよい。また、基板5からの壁部22A,22Bの高さh2,h4は、同軸ケーブル4の内部導体4aの基板5からの高さh3よりも高くてもよい。
【0061】
このように、第1のコンタクト20、第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さh1,h3よりも壁部22Aの高さh2,h4を低くしたり、第1のコンタクト20,第2のコンタクト30及び内部導体4aの高さよりも壁部22Aの高さを高くしたりすれば、信号の伝送線路の共振周波数を信号の周波数からずらして、共振によるクロストークを低減することが可能となる。
【0062】
壁部22A,22Bは、コネクタ内の伝送線路から放射されたノイズを伝送する部材として機能するが、その壁部22A,22Bの高さh2,h4が変われば、伝送線路の共振周波数が変化する。したがって、壁部22A,22Bの高さh2,h4は、伝送される信号の周波数に応じて決定されるのが望ましい。
【0063】
なお、上記実施の形態では、プラグコネクタ3を構成する第2のシェルは、第2のシェル(シェルA)33と、第2のシェル(シェルB)34とに分かれているが、これらは一体のものであってもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、一対の内部導体4aを有する同軸ケーブル4を接続する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれには限られない。1本の内部導体を有する同軸ケーブルを基板と接続する電気コネクタに本発明を適用することが可能である。
【0065】
なお、上記実施の形態では、差動信号を伝送する電気コネクタ1について説明したが、本発明はこれには限られない。シングルエンド信号を伝送する電気コネクタにも本発明を適用することができる。
【0066】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。