(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763507
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】枕製造方法及び枕製造装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20200917BHJP
G01B 3/14 20060101ALI20200917BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
G01B5/00 U
G01B3/14
A47G9/10 M
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-77107(P2016-77107)
(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公開番号】特開2017-187412(P2017-187412A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592150930
【氏名又は名称】富士ベッド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】伊能 教夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁
(72)【発明者】
【氏名】倉元 昭季
(72)【発明者】
【氏名】関山 直人
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘幸
【審査官】
草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−022081(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0113262(US,A1)
【文献】
特開2006−334299(JP,A)
【文献】
特開2005−237811(JP,A)
【文献】
特開2006−223621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00
A47G 9/10
G01B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位姿勢時の被験者の頸部及び後頭部の稜線曲線を抽出し、前記後頭部に対する最も凹な部分を頸部凹み深さとして演算する頸部凹み深さ演算工程と、
前記頸部凹み深さのみに応じて前記被験者の頸部に対応する目標枕頸部高さを演算する目標枕頸部高さ演算工程と、
前記頸部凹み深さのみに応じて前記被験者の後頭部に対応する目標枕後頭部高さを演算する目標枕後頭部高さ演算工程と、
前記被験者の頸部及び後頭部に対応する枕の頸部位置及び後頭部位置の枕頸部高さ及び枕後頭部高さが前記目標枕頸部高さ及び前記目標枕後頭部高さに到達しかつ前記枕の頸部位置及び後頭部位置の荷重が所定頸部荷重及び該所定頸部荷重より大きい所定後頭部荷重に到達するまで、前記枕に充填材を充填する充填材充填工程と
を具備し、前記被験者の頸部と前記枕の頸部位置との間に前記頸部凹み深さに応じた高さの設計上の空隙を設け、前記被験者の実際に眠る姿勢においては前記設計上の空隙が消滅して前記被験者の頸部は前記枕の頸部位置にフィットするようにした枕製造方法。
【請求項2】
前記目標枕頸部高さ演算工程は前記頸部凹み深さの第1の1次関数を用いて前記目標枕頸部高さを演算し、
前記目標枕後頭部高さ演算工程は前記頸部凹み深さの第2の1次関数を用いて前記目標枕後頭部高さを演算する
請求項1に記載の枕製造方法。
【請求項3】
前記第1の1次関数は、
Hn’(mm)=αd+β
であり、前記第2の1次関数は、
Hh’(mm)=γd+δ
であり、
但し、Hn’は前記目標枕頸部高さ、
Hh’は前記目標枕後頭部高さ、
dは前記頸部凹み深さ、
α、β、γ、δは|α|>|γ|、β>δを満足する定数である
請求項2に記載の枕製造方法。
【請求項4】
立位姿勢時の被験者の頸部及び後頭部に押し当てられる先端及びマーカが付された後端を有する複数のロッドと、
前記各ロッドを2次元に平行に配列して保持するロッド保持機構と、
前記各ロッドの前記マーカを撮影するカメラと、
枕に充填材を充填するための充填材充填ユニットと、
前記カメラによって撮影された前記各マーカの位置から前記被験者の後頭部に対する頸部凹み深さを演算し、前記頸部凹み深さに基づいて前記充填材充填ユニットを制御する制御ユニットと
を具備し、
前記ロッドの長さは前記カメラによって撮影された前記各ロッドのマーカが重複しないように異なっており、前記被験者の頸部と前記枕の頸部位置との間に前記頸部凹み深さに応じた高さの設計上の空隙を設け、前記被験者の実際に眠る姿勢においては前記設計上の空隙が消滅して前記被験者の頸部は前記枕の頸部位置にフィットするようにした枕製造装置。
【請求項5】
前記ロッドの長さは前記カメラより遠い程、大きい請求項4に記載の枕製造装置。
【請求項6】
前記ロッドの長さは前記ロッドの前記2次元の配列における前記カメラに対して相対的に距離が異なる列毎に異なる請求項4又は5に記載の枕製造装置。
【請求項7】
前記マーカは色マーカである請求項4に記載の枕製造装置。
【請求項8】
前記マーカは色マーカであり、
前記カメラに対して相対的に距離が異なる少なくとも隣合う2つの列の色マーカの色を異ならせた請求項6に記載の枕製造装置。
【請求項9】
前記充填材充填ユニットは、
前記枕を支持するための台座と、
前記台座に設けられ、前記枕の頸部位置の枕頸部高さを規定する第1の電動シリンダと、
前記第1の電動シリンダの下端に設けられ、前記枕の頸部位置の荷重を検出するための第1の荷重検出手段と、
前記台座に設けられ、前記枕の後頭部位置の枕後頭部高さを規定する第2の電動シリンダと、
前記第2の電動シリンダの下端に設けられ、前記枕の後頭部位置の荷重を検出するための第2の荷重検出手段と、
前記枕に充填材を充填するための充填機と
を具備する請求項4〜8のいずれかに記載の枕製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者に最適な枕を製造するための枕製造方法及び枕製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、枕は快適な睡眠を行う上で不可欠な寝具であり、枕を利用して仰臥位で眠る姿勢は自然体の立位姿勢に近いと医学関係者が提唱している。
【0003】
従来の枕製造方法は、立位姿勢時の被験者の頸部及び後頭部の1次元形状または2次元形状を測定し、マットレス(敷寝具)と被験者の頸部及び後頭部との空隙を埋めるように枕の形状を決定する。従って、枕と被験者の頸部との間に空隙は存在しない。上述の立位姿勢の測定は被験者の背中の延長線に対して顔面を5°程度傾斜させた状態で背中の延長線に対する頸部及び後頭部の寸法を測定することによって実現する(参照:特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−87802号公報
【特許文献2】特開2006−334299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来の枕製造方法によれば、枕が被験者の頸部に接触するように枕の形状を決定しているので、実際には、被験者の最適な寝心地を得られないという課題がある。また、立位姿勢時の被験者の頸部及び後頭部の1次元形状または2次元形状を基準として、被験者は充填材を調整して枕の剛性を変化させた複数の枕から最適な枕を選択しなければならず、この結果、枕の製造が複雑となり、この結果、枕の製造コストが高いという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明に係る枕製造方法は、立位姿勢時の被験者の
頸部及び後頭部
の稜線曲線を抽出し、後頭部に対する
最も凹な部分を頸部凹み深さ
として演算する頸部凹み深さ演算工程と、頸部凹み深さ
のみに応じて被験者の頸部に対応する目標枕頸部高さを演算する目標枕頸部高さ演算工程と、頸部凹み深さ
のみに応じて被験者の後頭部に対応する目標枕後頭部高さを演算する目標枕後頭部高さ演算工程と、被験者の頸部及び後頭部に対応する枕の頸部位置及び後頭部位置の枕頸部高さ及び枕後頭部高さが目標枕頸部高さ及び目標枕後頭部高さに到達しかつ枕の頸部位置及び後頭部位置の荷重が所定頸部荷重及び
所定頸部荷重より大きい所定後頭部荷重に到達するまで、枕に充填材を充填する充填材充填工程とを具備し、被験者の頸部と枕
の頸部位置との間に頸部凹み深さに応じた高さの
設計上の空隙を設け
、被験者の実際に眠る姿勢においては設計上の空隙が消滅して被験者の頸部は枕の頸部位置にフィットするようにしたものである。
【0007】
また、本発明に係る枕製造装置は、立位姿勢時の被験者の頸部及び後頭部に押し当てられる先端及びマーカが付された後端を有する複数のロッドと、各ロッドを2次元に平行に配列して保持するロッド保持機構と、各ロッドのマーカを撮影するカメラと、枕に充填材を充填するための充填材充填ユニットと、カメラによって撮影された各マーカの位置から被験者の後頭部に対する頸部凹み深さを演算し、頸部凹み深さに基づいて充填材充填ユニットを制御する制御ユニットとを具備し、ロッドの長さはカメラによって撮影された各ロッドのマーカが重複しないように異なって
おり、被験者の頸部と枕の頸部位置との間に頸部凹み深さに応じた高さの設計上の空隙を設け、被験者の実際に眠る姿勢においては設計上の空隙が消滅して被験者の頸部は枕の頸部位置にフィットするようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被験者の後頭部に対する頸部凹み深さに応じて被験者の頸部と枕頸部との間に空隙を設けたので、被験者の最適な寝心地を得ることができる。また、充填材の種類(剛性の大きさ)を問わずに被験者の後頭部に対する頸部凹み深さのみで枕の形状を決定するので、枕の製造は単純となり、この結果、枕の製造コストも低くできる。さらに、被験者の好みの所定頸部荷重及び所定後頭部荷重に到達するまで、充填材を充填するので、被験者の好みの充填材(剛性の大きさ)で枕を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る被験者の立位姿勢の正中矢状面(左右中心面)における後頭部に対する頸部凹み深さを説明する図である。
【
図2】本発明の原理を説明するための被験者の仰臥位姿勢と枕との関係を示す図である。
【
図3】
図2の被験者の頸部凹み深さdと最適な枕の頸部高さH
nとの関係を示すグラフである。
【
図4】
図2の被験者の頸部凹み深さdと最適な枕の後頭部高さH
hとの関係を示すグラフである。
【
図5】
図2の被験者の頸部凹み深さdと最適な枕の差ΔH=H
n−H
hとの関係を示すグラフである。
【
図6】本発明に係る枕製造装置の実施の形態を示す写真である。
【
図7】
図6の枕製造装置の実機状態を示す写真である。
【
図8】
図6の枕製造装置による被験者の立位姿勢を説明するための写真である。
【
図9】
図6の充填材充填ユニットの詳細を示す斜視図である。
【
図10】
図6の制御ユニットの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図10のステップ1102における正中矢状面のS字曲線を示す図である。
【
図12】
図10の正中矢状面演算ステップの詳細なフローチャートである。
【
図13】
図12のステップ1301において取得されたカメラ画像の例を示す写真である。
【
図14】
図12のステップ1302において抽出された色マーカの2値データである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る被験者の立位姿勢の正中矢状面(左右中心面)における後頭部に対する頸部凹み深さdを説明する図である。
【0011】
図1において、11は被験者1の頸部、12は被験者1の後頭部であり、頸部凹み深さdは、被験者1の頸部11及び後頭部12の稜線曲線Sにおいて後頭部12に対する頸部11の最も凹な部分の深さで定義される。
【0012】
図2は本発明の原理を説明するための被験者が仰臥位姿勢で寝ている状態を示す図である。
【0013】
図2において、被験者1はマットレス2上の枕3で仰臥位で寝ている。このとき、充填材Fが充填された枕3の枕形状Pは、枕3が被験者1の頸部11との間で頸部凹み深さdに応じた差Dを有する空隙を有しかつ被験者1の後頭部12に接触するように、定められる。そこで、最適な枕形状Pを製造するために、被験者1の頸部11及び後頭部12の各荷重を0.85kgf及び2.12kgfの状態で頸部高さH
n及び後頭部高さH
hを調整した21種類の枕3から7人の被験者によって最も快適に感じる枕を選択してもらった。この選択の方法は2分法で行った。つまり、現時点で最上の枕と別の形状の枕を次々に比較して探索して被験者に最も合った枕を選択してもらった。これらの選択結果について
図3〜
図6を参照して説明する。
【0014】
図3は
図2の被験者1の頸部凹み深さdと最適な枕3の頸部高さH
nとの関係を示すグラフである。
図3に示すように、枕3の頸部高さH
nは、回帰直線:
H
n(mm)=−0.25d+73 (1)
寄与度R
2=0.26
で表せ、この場合、頸部凹み深さdの寄与度R
2は大きかった。
【0015】
図4は
図2の被験者1の頸部凹み深さdと最適な枕の後頭部高さH
hとの関係を示すグラフである。
図4に示すように、枕3の後頭部高さH
hは、回帰直線:
H
h(mm)=0.15d+43 (2)
寄与度R
2=0.04
で表せ、この場合、頸部凹み深さdの寄与度R
2は小さかった。
【0016】
図5は
図2の被験者1の頸部凹み深さdと最適な枕3の差ΔH=H
h−H
nとの関係を示すグラフである。
図5に示すように、枕3の差ΔHは、回帰直線:
ΔH(mm)=−0.40d+31 (3)
寄与度R
2=0.32
で表せ、この場合、頸部凹み深さdの寄与度R
2は大きかった。
【0017】
上述のごとく、頸部凹み深さdの頸部高さH
n及び差ΔHに対する寄与度R
2は有意な値となり、従って、頸部凹み深さdと頸部高さH
n及び差D(=d−ΔH)との相関はある。他方、頸部凹み深さdの後頭部高さH
hに対する寄与度R
2は小さいが、最適な枕3の後頭部高さH
hと頸部高さH
nとの差ΔH(=H
h−H
n)は、
図5に示すように、頸部凹み深さdとの相関があるので、(2)式はやはり有効と考えられる。従って、頸部凹み深さdに対して最適な寝心地が得られる頸部高さH
n及び後頭部高さH
hが存在すると考えられる。このとき、被験者1の頸部11と枕との間には、頸部凹み深さdに応じた差D=d−ΔHが設計上生じる。しかし、被験者の実際の眠る姿勢においては、枕の後頭部部分に後頭部12の荷重がかかり、従って、枕の後頭部部分が変形して被験者の後頭部12は沈む。この結果、被験者の頸部11は枕の頸部部分にフィットすることになる。
【0018】
図6は本発明に係る枕製造装置の実施の形態を示す写真である(参照:特願2014−215071号明細書及び図面)。但し、動作説明し易くするために、
図6の枕製造装置は、本来の大きい枕の被験者に対する
図7に示す実機枕製造装置より小さくしてある。尚、
図7においては、縦×横=40×5本のロッドRよりなるロッド群101が設けられ、ロッドRの後端に色マーカMが付されている。また、ロッド保持機構102には、ロッド保持機構102をロッド摺動状態、ロッド固定状態(ブレーキ状態)にするための電動ポンプ106が接続されている。さらに、色マーカMを撮影するための2台のカメラ104が設けられている。この場合、上方のカメラ104は上半分の色マーカMを撮影し、下方のカメラ104は下半分の色マーカMを撮影する。
【0019】
図6においては、ロッド群101はステンレス等の剛性材料よりなる5×5本のロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55よりなり、これらのロッドは2次元状に等間隔でロッド保持機構102によって保持されている。ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の
図6の右方の先端は
図8に示す枕の被験者の頸部及び後頭部に押し当てられ、他方、ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の後端には特定色たとえば赤色の色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55が付されている。尚、特定色は2色以上、たとえば赤、青を交互にマーカに付してもよい。
【0020】
ロッド保持機構102は枠機構103によって支持されている。枠機構103のロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55に対向する位置に色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55を撮影するためのカメラ104が設けられ、カメラ104はマイクロコンピュータにより構成される制御ユニット105が接続されている。
【0021】
ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の長さは、カメラ104によって撮影された色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55が重複しないように、異ならせてある。たとえば、
L
1<L
2<L
3<L
4<L
5
L
2−L
1=L
3−L
2=L
4−L
3=L
5−L
4≧ΔL
但し、L
1はロッドR
11、R
12、…、R
15の長さ、
L
2はロッドR
21、R
22、…、R
25の長さ、
L
3はロッドR
31、R
32、…、R
35の長さ、
L
4はロッドR
41、R
42、…、R
45の長さ、
L
5はロッドR
51、R
52、…、R
55の長さ、
ΔLは測定対象によって決定される正の値
と設定される。これにより、ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の長さは、カメラ104より遠い程、大きくされ、カメラ104によって撮影された色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55が重複しないようになる。
【0022】
制御ユニット105は枕に充填材を充填するための充填材充填ユニット107をも制御する。
【0023】
図9は
図6の充填材充填ユニット107の詳細を示す斜視図である。
図9において、充填材充填ユニット107は、枕3を支持するための台座1070と、台座1070に設けられ、枕3の枕頸部高さを規定するための電動シリンダ1071と、電動シリンダ1071の下端に設けられ、枕3の枕頸部位置の荷重を検出するためのロードセル1072及び圧子1073と、台座1070に設けられ、枕3の枕後頭部高さを規定するための電動シリンダ1074と、電動シリンダ1074の下端に設けられ、枕3の枕後頭部位置の荷重を検出するためのロードセル1075及び圧子1076と、そば殻、柔軟な樹脂パイプ等の充填材を枕3の開口(図示せず)から充填するための充填機1077とによって構成されている。
【0024】
図9の充填材充填ユニット107においては、オペレータが予め手動にて電動シリンダ1071、1074の位置を矢印に示すごとく被験者の頸部及び後頭部に対応する枕3の頸部位置及び後頭部位置に固定しておく。制御ユニット105は電動シリンダ1071、1074の下部の圧子1073,1076の位置を目標頸部高さH
n’、目標後頭部高さH
h’に合わせ、頸部位置及び後頭部位置の枕頸部高さ及び枕後頭部高さが目標頸部高さH
n’及び目標後頭部高さH
h’に到達しかつ枕3の頸部位置及び後頭部位置の荷重が所定頸部荷重たとえば0.85kgf及び所定後頭部荷重たとえば2.12kgfに到達するまで、枕3の開口(図示せず)を介して枕3に充填材を充填する。尚、各荷重の検出はロードセル1072、1075の出力信号を受信することによって行える。その後、枕3の開口を閉じて枕3の形状を固定する。
【0025】
図10は
図6の制御ユニット105の動作を説明するためのフローチャートである。このフローチャートは制御ユニット105のリードオンリメモリ(ROM)もしくはフラッシュメモリに格納される。また、制御ユニット105の動作前に、オペレータは電動モータ106をオフにしてロッド保持機構102のロッド摺動状態でロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の先端を枕の被験者の後頭部及び頸部に押し当て、その後、電動モータ106をオンにしてロッド保持機構102のロッド固定状態(ブレーキ状態)にしてカメラ104でロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の後端の色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55の撮影を行って
図13に示すカメラ画像を得ているものとする。
【0026】
始めに、ステップ1101にて、枕3の被験者1の正中矢状面(左右中心面)を演算する。正中矢状面演算ステップ1101については後述する。
【0027】
次に、ステップ1102にて、ステップ1101にて演算された被験者1の正中矢状面から
図11に示す被験者1の頸部11及び後頭部12の稜線曲線Sを抽出し、稜線曲線Sにおいて後頭部12に対する頸部11の最も凹な部分の深さを頸部凹み深さdとする。
【0028】
次に、ステップ1103にて、枕3の目標頸部高さH
n’及び目標後頭部高さH
h’を(1)、(2)式を用いて演算する。すなわち、
H
n’(mm)← −0.25d+73
H
h’(mm)← 0.15d+43
【0029】
尚、目標頸部高さH
n’及び目標後頭部高さH
h’は、一般的には、次にごとく、表せる。
H
n’(mm)← αd+β
H
h’(mm)← γd+δ
但し、α、β、γ、δは|α|>|γ|、β>δを満足する定数であり、頸部荷重及び後頭部荷重に応じて変化する。これにより、被験者1の頸部と枕との間に、頸部凹み深さdに応じた高さの空隙が生じるようになる。尚、頸部荷重及び後頭部荷重は、たとえば日本人成人であれば、0.85kgf及び2.12kgfとする。
【0030】
次に、ステップ1104にて、ステップ1103にて演算された目標頸部高さH
n’及び目標後頭部高さH
h’に基づいて枕3に充填材Fを充填する。すなわち、制御ユニット105は充填材充填ユニット107の電動シリンダ1071、1074を駆動して電動シリンダ1071、1074の各圧子1073,1076の位置を目標頸部高さH
n’、目標後頭部高さH
h’に合わせる。次いで、頸部位置及び後頭部位置の枕頸部高さ及び枕後頭部高さが目標枕頸部高さH
n’及び目標枕後頭部高さH
h’に到達しかつ枕頸部位置及び枕後頭部位置の荷重が所定頸部荷重たとえば0.85kgf及び所定後頭部荷重たとえば2.12kgfに到達するまで、充填機1077から枕3に充填材Fを充填する。尚、この場合も、各荷重の検出はロードセル1072、1075の出力信号を受信することによって行える。その後、枕3の開口を閉じて固定する。
【0031】
そして、ステップ1105にて、
図10のルーチンは終了する。
【0032】
次に、
図10の正中矢状面演算ステップ1101を
図12を参照して説明する。
【0033】
ステップ1301にて、カメラ104より
図13に示すカメラ画像を取得する。
【0034】
次に、ステップ1302にて、色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55の特定色から
図14に示す2値データとしての色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55を抽出する。
【0035】
次に、ステップ1303にて、色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55の数が所定数たとえば25か否かを判別する。ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55が正常な動作をしていれば、色マーカの数は25である。従って、色マーカの数が25である場合のみ、ステップ1304に進み、他の場合には、ステップ1308に進んでエラーとする。
【0036】
ステップ1304では、各色マーカM
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55の重心座標を演算する。
【0037】
次に、ステップ1305では、ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の先端座標をステップ1304にて演算された重心座標及びロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の予め定められた長さL
11、L
12、…、L
15;L
21、L
22、…、L
25;…;L
51、L
52、…、L
55を用いて演算する。
【0038】
次に、ステップ1306にて、ロッドR
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55の先端座標に基づいて被験者の正中矢状面を補間演算する。
【0039】
そして、ステップ1307にて、
図10のステップ1102に戻る。
【0040】
上述のごとく、被験者の後頭部に対する頸部凹み深さdを得て枕3の目標頸部高さH
n’及び目標後頭部高さH
h’を得るだけで、所定荷重状態で目標値H
n’及びH
h’を達成するように、そば殻、柔軟な樹脂パルプ等の充填材の量を調整し、この結果、各被験者の枕形状及び枕剛性を実現できる。従って、従来のごとく、各被験者に対して複数の枕を比較して選択する必要がなくなる。
【0041】
本発明に係る枕製造方法及び装置によって製造された枕について、年令、性別及び体型のことなる13人の被験者が仰臥位で体験した。この体験結果、11人の被験者が寝心地がよいと回答した。尚、寝心地が悪いと回答した2人の被験者は頭蓋後頭部が扁平であった。
【0042】
尚、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲のいかなる変更も適用し得る。
【符号の説明】
【0043】
1:被験者
11:頸部
12:後頭部
S:稜線曲線
H
n:頸部高さ
H
n’:目標頸部高さ
H
h:後頭部高さ
H
h’:目標後頭部高さ
F:充填材
101:ロッド群
R、R
11、R
12、…、R
15;R
21、R
22、…、R
25;…;R
51、R
52、…、R
55:ロッド
102:ロッド保持機構
103:枠機構
104:カメラ
105:制御ユニット
106:電動ポンプ
107:充填材充填ユニット
1070:台座
1071:電動シリンダ
1072:ロードセル
1073:圧子
1074:電動シリンダ
1075:ロードセル
1076:圧子
1077:充填機
M
11、M
12、…、M
15;M
21、M
22、…、M
25;…;M
51、M
52、…、M
55:色マーカ