特許第6763513号(P6763513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763513
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】吊構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   E04B9/18 F
   E04B9/18 B
   E04B9/18 J
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-142768(P2016-142768)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-12965(P2018-12965A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152228
【氏名又は名称】株式会社内田洋行
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】秋本 恵三
(72)【発明者】
【氏名】立川 秀樹
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−055461(JP,A)
【文献】 特開2004−301187(JP,A)
【文献】 特開2007−285325(JP,A)
【文献】 特開2017−119994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 9/18
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井スラブに接続され、天井材の下方に対象物を吊り下げる棒状の吊部材と、
前記天井材の上方において前記吊部材を複数連結する梁部材と、
前記梁部材の下方に設けられ、前記吊部材を挿通する筒状の補強部材と、
前記補強部材の下方に設けられ、前記吊部材と螺合し、前記梁部材と共に前記補強部材を挟持するプレート部材と、
を備える対象物の吊構造。
【請求項2】
前記吊部材は、前記天井材の開孔を貫通して前記天井材の下方に前記対象物を吊り下げ、
前記プレート部材は、前記開孔を覆う
請求項1に記載の吊構造。
【請求項3】
前記吊部材を長手方向に連結する連結部材をさらに備え、
前記連結部材は、前記開孔近傍において前記吊部材を連結すると共に、前記連結部材の周囲に前記補強部材が配置される
請求項1又は2に記載の吊構造。
【請求項4】
前記プレート部材の下方に、前記吊部材を挿通する筒状の第2の補強部材をさらに備え、
前記第2の補強部材の下方に前記対象物を吊り下げる
請求項1から3のいずれか一項に記載の吊構造。
【請求項5】
前記プレート部材の下方に、2つの前記吊部材間を連結するブレース材をさらに含み
前記ブレース材の下方に前記対象物を吊り下げる
請求項1から3のいずれか一項に記載の吊構造。
【請求項6】
前記梁部材と前記吊部材とを互いに結合させる接続部材をさらに有し、
前記接続部材の下端が、前記補強部材の上端全体を支持する
請求項1から5のいずれか一項に記載の吊構造。
【請求項7】
前記梁部材に一端が接続されると共に、前記吊部材の前記天井スラブ近傍に他端が接続されるブレース材をさらに備え、
前記対象物は、水平方向に設けられる梁状体によって構成される空間構造体である
請求項1から6のいずれか一項に記載の吊構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上端を上部構造に接続し、下端側を吊り下げ対象物に接続して吊り下げ対象物を吊り下げ支持する吊りボルトを補強するための吊りボルト補強用部材が提案されていた(例えば、特許文献1)。この補強用部材は、上端側を上部構造に当接させ、吊りボルトに沿って上下方向に配設される補剛部材と、吊りボルトに螺着し、螺入させつつ補剛部材の下端を上方に押圧して補剛部材を保持する保持ナットとを備えて構成する。
【0003】
また、溝部を持つ梁部材を、天井スラブから吊り下げる吊装置も提案されている(例えば、特許文献2)。本装置は、第一軸部と、前記第一軸部の基端側に設けられ、前記天井スラブと接続する第一接続部と、前記第一軸部の先端側に設けられ、前記開口部から前記溝部内に挿入することで、前記溝部内のうち、前記開口部を基線とする一方側の溝部内と接触して該梁部材を支持する第一支持部と、を有する第一吊部材と、前記第一吊部材と着脱できる第二吊部材であって、前記第一吊部材の軸部と接する第二軸部と、前記第二軸部の先端側に設けられ、前記開口部から前記溝部内に挿入することで、前記溝部内のうち、前記開口部を基線とする他方側の溝部内と接触して該梁部材を支持する第二支持部と、を有する第二吊部材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−003491号公報
【特許文献2】特開2009−084858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
梁や天井パネルによって構成される吊天井を吊ボルトを用いて天井スラブから吊り下げるいわゆるシステム天井に関する技術がある。一方、空間構造体のような吊り下げ対象物を天井スラブから天井パネルの下方に吊り下げるような場合、天井パネルの吊り下げ構造との間で部材が干渉するおそれがある。また、振れ止め用の部材が十分に設置できない場合、耐振性能が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、何らかの対象物を天井スラブから天井パネルの下方に吊り下げる吊構造の耐振性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る対象物の吊構造は、天井スラブに接続され、天井材の下方に対象物を吊り下げる棒状の吊部材と、天井材の上方において吊部材を複数連結する梁部材と、梁部材の下方に設けられ、吊部材を挿通する筒状の補強部材と、補強部材の下方に設けられ、吊部材と螺合し、梁部材と共に補強部材を挟持するプレート部材とを備える。
【0008】
天井パネルよりも上方の空間には、天井パネル等を吊るための部材が配置されており、施工の都合上、空間構造体を吊るための梁部材等を天井パネルの近傍に設けることは難しい。上述のような補強部材を設けることによって、天井パネルから間隔を空けて梁部材を設ける場合であっても、梁部材の下方の部分の強度を向上させることができる。すなわち
、対象物を天井スラブから天井パネルの下方に吊り下げる吊構造の耐振性能を向上させることができる。
【0009】
また、吊部材は、天井材の開孔を貫通して天井材の下方に対象物を吊り下げ、プレート部材は、開孔を覆うようにしてもよい。このようにすれば、補強部材を支持するプレート部材に、天井材に設けられた開孔を覆う蓋の役割を兼ねさせることができ、少ない部材で美感を向上させることができる。
【0010】
また、吊部材を長手方向に連結する連結部材をさらに備え、連結部材は、開孔近傍において吊部材を連結すると共に、前記連結部材の周囲に前記補強部材が配置されるようにしてもよい。このようにすれば、室内に延伸する吊部材を追加したり、撤去したりすることが容易になる。
【0011】
また、プレート部材の下方に、吊部材を挿通する筒状の第2の補強部材をさらに備え、第2の補強部材の下方に対象物を吊り下げるようにしてもよい。このようにすれば、プレート部材の下方、すなわち吊構造の室内部分における耐振性能を向上させることができる。
【0012】
また、プレート部材の下方に、2つの吊部材間を連結するブレース材をさらに含み、ブレース材の下方に対象物を吊り下げるようにしてもよい。空間に余裕がある場合は、このようにブレース材を用いて吊構造の室内部分における耐振性能を向上させるようにしてもよい。
【0013】
また、梁部材と吊部材とを互いに結合させる接続部材をさらに有し、接続部材の下端が、補強部材の上端全体を支持するようにしてもよい。このようにすれば、梁部材と吊部材との結合を強固にすると共に、補強部材と梁部材との間の接続部分における断面積をできるだけ大きくとり、耐振性能を向上させることができる。
【0014】
また、梁部材に一端が接続されると共に、吊部材の天井スラブ近傍に他端が接続されるブレース材をさらに備え、対象物は、水平方向に設けられる梁状体によって構成される空間構造体であってもよい。具体的には、対象物としてこのような空間構造体を吊り下げることができ、また、梁部材の上方についてはブレース材によって耐振性能を担保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、何らかの対象物を天井スラブから天井パネルの下方に吊り下げる吊構造の耐振性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1に係るシステム天井及び空間構造体を含む吊構造の斜視図である。
図2】(A)は、システム天井を図1の梁部材の長手方向に直交する方向から見た図(正面図)であり、(B)は、システム天井を図1の梁部材の長手方向の延長上から見た図(側面図)である。
図3】振れ止め装置とその近傍の構成を示す斜視図である。
図4】振れ止め装置とその近傍の構成を示す分解斜視図である。
図5】接続装置を示す斜視図である。
図6】実施形態2に係る振れ止め装置とその近傍の構成を示す斜視図である。
図7】(A)は、実施形態3に係るシステム天井の正面図であり、(B)は、実施形態3に係るシステム天井の側面図である。
図8】実施形態3に係る振れ止め装置とその近傍の構成を示す斜視図である。
図9】梁状体を支持する接続部材の正面図である。
図10】梁状体を支持する接続部材の側面図である。
図11】接続部材の正面側を斜め上方から見た斜視図である。
図12】接続部材の正面側を斜め下方から見た斜視図である。
図13】接続部材の背面側を斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する実施形態は本発明を実施するための例示であり、本発明は以下で説明する態様に限定されない。
【0018】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るシステム天井及び空間構造体を含む吊構造の斜視図を示す。本実施形態に係るシステム天井1は、水平方向に延びる複数の梁部材2、梁部材2を天井スラブ3から吊り下げる吊部材4、梁部材2と吊部材4とを接続する接続装置5、当該吊構造の振れを抑制するブレース材6及び振れ止め装置7を備える。また、吊部材4は、天井パネル8の下方に、吊り下げ対象物である空間構造体9を吊り下げている。空間構造体9は、水平方向に設けられる梁状体92が組み合わされ、照明やプロジェクタを吊り下げたり、配線を巡らせたり、部分的に壁面を吊り下げて室内空間を仕切る構造体として形成されたものである。空間構造体9の構成は図1の例には限定されず、空間構造体9を構成する梁状体92、その他の部材の数及び配置は適宜変更することができ、鉛直方向又は水平方向にブレースをさらに有していてもよい。
【0019】
図2の(A)は、システム天井をある梁部材の長手方向に直交する方向から見た図(便宜上、「正面図」と呼ぶ)を示す。また、図2の(B)は、システム天井を図1の梁部材の長手方向の延長上から見た図(便宜上、「側面図」と呼ぶ)を示す。
【0020】
梁部材2は、所定形状の横断面を有し材軸方向(軸心方向)に延びる形鋼であり、本実施形態では溝形鋼(「チャンネル鋼」、「C形鋼材」とも呼ぶ)である。梁部材2は、その長手方向が水平方向にほぼ沿って設けられる。天井スラブ3は、一般的なコンクリートスラブであり、換言すれば上階の床スラブである。天井スラブ3の下方には、いわゆるアンカーボルト等の連結部材(図示せず)が設けられており、吊部材4を固定することができる。吊部材4は、天井スラブ3から対象物を吊り下げる棒状の吊り金具である。吊部材4は、例えば円柱状の鋼棒の全長にわたってその側面に雄ねじが切られた、いわゆる吊ボルトである。接続装置5は、梁部材2と吊部材4とをまとめて挟み、ボルト等を利用して互いに結合する金具である。ブレース材6は、所定形状の横断面を有し材軸方向に延びる形鋼であり、C形鋼材、L形鋼材、H形鋼材等を採用することができる。ブレース材6は、下部に設けられる一端が梁部材2にボルト及びナットを用いて接続され、上部に設けられる他端が吊部材4の上部に引掛けられ、梁部材2と接続される一端との間で斜めに接続されている。振れ止め装置7は、吊部材4を挿通する筒状の補強部材71と、補強部材71を下方から支持するプレート部材72とを含む。補強部材71は、梁部材2とプレート部材72とに挟持され、吊構造において補強部材71が配置される部分の断面積を大きくすることでシステム天井1及び空間構造体9の耐振性能を向上させる。プレート部材72は、吊部材4を挿通する穴を有するプレートに、吊部材4と螺合するナットを結合したものである。
【0021】
また、梁部材2から間隔を空けてその下方に天井パネル8も吊られている。天井パネル8は、天井パネル8を吊るための吊ボルト82によって天井スラブから吊られている。天井パネル8は、既存の天井材であるが、吊部材4を挿通するための開孔81が設けられて
いる。また、吊部材4は、開孔81を貫通し、天井パネル8の下方に空間構造体9を吊る。なお、吊ボルト82は、天井パネル8を貼るための下地となる野縁(図示せず)を吊るような構造であってもよい。また、吊ボルト82の上部と野縁とを接続するブレース材(図示せず)を設け、吊天井の耐振性能を向上させるようにしてもよい。
【0022】
天井パネル8の下方、且つ空間構造体9の上方には、2つの吊部材4の間にブレース材(第2のブレース材とも呼ぶ)10が設けられている。具体的には、下方に位置するブレース材10の一端はある吊部材4の空間構造体9近傍に接続され、上方に位置するブレース材10の他端は他の吊部材4の天井パネル8近傍に接続されている。このようなブレース材10により、室内空間における空間構造体9といわゆる天井との間の範囲について耐振性能を向上させることができる。
【0023】
図1及び図2に示すように、天井パネル8よりも上方のいわゆる天井裏の空間には、天井パネル8を吊るための部材が配置されており、施工の都合上、空間構造体9を吊るための梁部材2やブレース材6を天井パネル8の近傍に設けることは難しい。このような場合において、所定の耐振性能を担保するため、本実施形態では、梁部材2の上方から天井スラブ3の下方までの部分にはブレース材6を設け、梁部材2の下方には振れ止め装置7を設けている。
【0024】
図3は、振れ止め装置とその近傍の構成を示す斜視図である。図4は、振れ止め装置とその近傍の構成を示す分解斜視図である。図5は、接続装置を示す斜視図である。振れ止め装置7の補強部材71は、円筒状の部材であり、その内径は吊部材4の横断面の外径よりも大きくなっており、吊部材4を挿通することができる。また、補強部材71は、例えばアルミニウムやステンレス等で形成する。なお、補強部材71の形状は円筒に限らず、断面が多角形やその他の形状の筒状であってもよい。
【0025】
プレート部材72は、中央に挿通孔を有する円形のプレート721と、ナット722とが溶接等により結合されて形成されている。プレート721の挿通孔は、吊部材4の横断面の外径よりも大きく、また、プレート721の外径は、補強部材71の横断面の外径よりも大きい。ナット722は、吊部材4と螺合し、プレート部材72を吊部材4の任意の位置に設けることができる。また、本実施形態では、プレート部材72は、天井パネル8の開孔81の下方且つ近傍に設けられ、プレート部材72は、室内から見て開孔81を覆う蓋としても機能する。
【0026】
また、補強部材71は、梁部材2とプレート部材72とによって挟持される。すなわち、補強部材71の上端は、梁部材2の下面(より正確には接続装置5の下面)によって支持され、補強部材71の下端は、プレート部材72のプレート721の上面によって支持される。ナット722を締め付けることにより吊部材4にかかる軸力によって、補強部材71は梁部材2対して強固に固定されると共に、補強部材71を設けることで吊構造における当該部分の断面性が大きくなり、吊部材4の振れを抑制することができる。
【0027】
接続装置5は、梁部材2に結合されて吊部材4を挿通するループを形成する第1の接続部材51と、梁部材2及び吊部材4を互いに押さえつけるように挟む第2の接続部材52とを含む。なお、接続装置5は上下がほぼ対称の形状になっている。第1の接続部材51は、溝形鋼である梁部材2のウェブ21とほぼ平行に設けられるほぼ矩形の平面511と、平面511の水平方向の両端をウェブ21に対しほぼ垂直に屈曲させ、一端が平面511に接続された2つの側面512と、側面512の他端をウェブ21に沿って屈曲させ、ウェブ21と結合される2つの結合面513と、平面511の鉛直方向の両端を梁部材2のフランジ22とほぼ平行に屈曲させ、吊部材4を挿通する切欠き516が設けられた2つの吊部材挿通面515とを備える。2つの結合面513には、ボルトを挿通するボルト
穴514が2つずつ設けられている。また、本実施形態では、ドリルねじ517を用いて第1の接続部材51を梁部材2に固定している。なお、梁部材2に予めボルト穴をあけておき、ナットをさらに用いて第1の接続部材51と梁部材2とを接続するようにしてもよい。第1の接続部材51は、その高さが梁部材2の2つのフランジ22間とほぼ同じであり、第1の接続部材51の少なくとも一部は、梁部材2が有する溝の内部(すなわち2つのフランジ22間)に収まるようになっている。
【0028】
第2の接続部材52は、側面視においてコ字状の部材であり、梁部材2を覆うように設置される。また、第2の接続部材52は、梁部材2のウェブ21とほぼ平行に設けられるほぼ矩形の平面521と、平面521の鉛直方向の両端をウェブ21に対してほぼ垂直に屈曲させ、吊部材4を挿通させる切欠き524が設けられた2つの吊部材挿通面523とを有する。切欠き524は、ほぼ矩形である吊部材挿通面523の平面視上、平面521とほぼ平行に設けられると共に、吊部材4の横断面の外径よりも大きな幅を有し、吊部材4を挿入することができる。また、平面521は、その中央付近にボルト525を挿入するねじ穴522が設けられている。ボルト525は、ねじ穴522に挿入され、締めつけることにより、その先端が梁部材2のウェブ21をボルト525の挿入方向に押し込む。また、切欠き524は、ボルト525の挿入方向に向かって、吊部材4の横断面の外形と合致する凹みを有する。一方、ボルト525が梁部材2のウェブ21を押し込むと、梁部材2のフランジ22の端部は吊部材4と接触し、吊部材4は第2の接続部材52の切欠き524の上記凹みに固定される。以上のように、第2の接続部材52は、ボルト525を締めつけることで梁部材2と吊部材4とを強固に挟み、結合させることができる。また、第2の接続部材52の下面は、補強部材71の上端の全体と接する形状になっている。具体的には、ほぼ矩形である第2の接続部材52の下面の各辺の長さは、円形である補強部材71の上端の直径よりも大きくなっている。これにより、仮に梁部材2のフランジ22の幅が補強部材71の上端の直径よりも小さいような場合であっても、接続装置5の下面によって補強部材71の上面全体を支持することができる。すなわち、接続部分の断面積を大きくとることができ、耐振性能が向上する。
【0029】
また、プレート部材72の下方には、ブレース材10を固定する取付部材101が吊部材4の周囲に設けられる。取付部材101は、2つ重ねて吊部材4を挟む、平面視において半円状の部分と、当該部分の水平方向の両端に延び、重ね合わせてボルトとナットで接続するための結合部とを有する。また、ブレース材10の一端には、水平方向にボルトを通過させるボルト穴が設けられており、取付部材101と共にボルト及びナットで結合することができる。
【0030】
このように、本実施形態では、プレート部材72の下方(すなわち、天井パネル8の下方)から、空間構造体9の上方(梁状体92の上方)までの範囲について、第2のブレース材によって耐振性能を担保している。
【0031】
<実施形態2>
図6は、実施形態2に係る振れ止め装置とその近傍の構成を示す分解斜視図である。なお、本実施形態に係る構成の概略は実施形態1と同様であるため、対応する構成については対応する符号を付し、説明を省略する。
【0032】
本実施形態では、吊部材4は天井パネル8の上方且つ近傍で連結するための連結部材11を備える。連結部材11は、例えば両端にボルトを接続することができる連結ナット(高ナット)である。また、連結部材11の横断面外径は補強部材71の内径よりも小さく、補強部材71には吊部材4及び連結部材11を挿通することができる。
【0033】
このような構成にすることで、例えば空間構造体9の構成の変更に伴い、室内に延伸す
る吊部材4を追加したり、撤去したりすることが容易になる。すなわち、天井パネル8を取り外すことなく、開孔81の下から、連結部材11と吊部材4を取り付けたり、取り外したりすることができる。また、連結部材11の周囲に補強部材71が配置され、連結部分への応力の集中が抑制されている。
【0034】
<実施形態3>
図7(A)は、実施形態3に係るシステム天井の正面図を示す。図7の(B)は、本実施形態に係るシステム天井の側面図を示す。また、図8は、実施形態3に係る振れ止め装置7とその近傍の構成を示す斜視図である。なお、本実施形態においても、実施形態1と対応する構成については対応する符号を付し、説明を省略する。
【0035】
本実施形態では、例えば天井パネル8と空間構造体9との間にブレースを設けるだけの充分な空間がとれない場合に、補強部材71を利用する。具体的には、実施形態1において設けられていたブレース材10の代わりに、補強部材71を用いる。すなわち、本実施形態に係る吊構造は、プレート部材72の下方、且つ空間構造体9(梁状体92)の上方にも補強部材71を備える。なお、便宜上、プレート部材72の上方に設けられる補強部材71を第1の補強部材、プレート部材72の下方に設けられる補強部材71を第2の補強部材とも呼ぶ。また、第1の補強部材と、第2の補強部材とは設置する条件に応じて材軸方向の長さが異なっていてもよい。また、第2の補強部材の下端は、吊部材4を梁状体92と接続するための接続部材12と接続される。
【0036】
図9は、実施形態に係る梁状体92を支持する接続部材の正面図を示す。図10は、梁状体92を支持する接続部材の側面図を示す。梁状体92は、材軸方向に対して垂直に切断した横断面において均等に四分割された形状を含んでいる。すなわち、横断面視上において、中心部921から四方に放射状に隔壁922が伸び、隔壁922の先端は、梁状体92の断面における正方形の頂点Pを形成している。一つの頂点Pから隣接する頂点Pに向かって、壁面923が延びている。一の頂点Pから延びる壁面923と、それに隣接する他の頂点Pから延びる壁面923は、両頂点Pの中間手前まで延びており、両者は接触しない。従って、対向する壁面923同士の間、すなわち対向する壁面923の先端部分である蓋部926同士の間には、開口部924が形成される。また、一対の壁面923と隔壁922と中心部921とによって、溝部925が形成されている。これらの開口部924および溝部925は、梁状体92の材軸方向にその全長にわたって伸びている。そして、開口部924は、溝部925内の空間よりも狭く形成されている。壁面923の先端部分である蓋部926は、溝部925内へ挿入された、接続部材12が抜けるのを防止し、また、接続部材12によって支持される際の接触部分として機能する。
【0037】
なお、本実施形態の梁状体92には、更に、梁状体92の断面の各頂点Pにおいて、各頂点Pから梁状体92の外方向に延出し、該頂点Pにつながる二つの壁面923にそれぞれ直交する二つの外壁927が設けられている。その結果、一つの頂点Pから延出する外壁927と、それに隣接する他の頂点Pから延出する外壁927は対向する。そして、この対向する外壁927と、これらとつながる一対の壁面923とによって、梁状体92の表面上に半閉空間である収容部928が形成される。収容部928は、接続部材12の下部を覆う他、例えば照明器具のケーブルや情報機器のケーブル等を収納することができる。なお、収容部928にはカバーを設けてもよく、これにより美観を向上することができる。また、例えば溝部925にスライドナット1234を挿入し、開口部924を挟んで照明やプロジェクタ(図示せず)を梁状部91の下方に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
次に、接続部材12について説明する。図11は、接続部材12の正面側を斜め上方から見た斜視図を示す。図12は、接続部材12の正面側を斜め下方から見た斜視図を示す。図13は、接続部材12の背面側を斜め上方から見た斜視図を示す。
【0039】
接続部材12は、吊部材4と接続される、接続部材12の吊部材用接続部121と、接続部材12の吊部材用接続部121と連なり下方に延びる接続部材12の軸部122と、接続部材12の軸部122と連なり、梁状体92を支持する接続部材12の梁部材用支持部123とを備える。また、接続部材12の梁部材用支持部123は、接続部材12の吊部材用接続部121の直下に位置し、溝部125内に挿入されて梁状体92を支持する第1の梁部材用支持部1231と、接続部材12の吊部材用接続部121の斜め下方、かつ、溝部925上に位置し、梁状体92を支持する第2の梁部材用支持部1232とを含む。また、2つの水平板からなる第2の梁部材用支持部1232には、スライドナット1234とねじN1を用いて固定する際にねじN1が貫通する水平板のねじ孔1233が形成されている。
【0040】
接続部材12の吊部材用接続部121は、水平な四角形の平板部材によって形成され、吊部材4が貫通するU字形の切り欠き1211が形成されている。U字形の切り欠き1211は、梁状体92の溝部925の真上に位置する。また、接続部材12の吊部材用接続部121の上面は、角ワッシャー124と接する。
【0041】
接続部材12の軸部122は、平板部材が折り曲げられて形成されている。接続部材12の軸部122は、上部、折り曲げ部、下部を含む。接続部材12の吊部材用接続部121の1辺から連なる接続部材12の軸部の上部1221は、垂直板からなる。接続部材12の軸部の上部1221の下端には、水平坂からなる水平な折り曲げ部1222が連なっている。更に、水平な折り曲げ部1222には、接続部材12の軸部の下部1223が連なっている。接続部材12の軸部の下部1223は、接続部材12の軸部の上部1221と同じく垂直板であるが、接続部材12の軸部の上部1221よりも幅が広く形成されている。接続部材12の軸部の下部1223は、梁状体92の溝部925の真上、換言すると、吊部材4の軸心の真下に位置する。これにより、接続部材12は、安定的に、梁状体92を支持することができる。
【0042】
第1の梁部材用支持部1231は、接続部材12の軸部の下部1223に連なり、梁状体92の軸心方向(長手方向)と直交する方向に延びる2つの水平な小片からなる。2つの水平な小片からなる第1の梁部材用支持部1231は、梁状体92の溝部925内に収容され抜けないよう、相反する向きに形成されている。2つの水平な小片からなる第1の梁部材用支持部1231は、溝部925内に収容された際に、上面が蓋部926の下面と接する。
【0043】
第2の梁部材用支持部1232は、接続部材12の軸部の下部1223のうち、第1の梁部材用支持部1231の外側に連なる2つの水平板からなる。2つの水平板からなる第2の梁部材用支持部1232は、溝部925の一部を形成する蓋部926の上面と接するよう、2つの水平な小片からなる第1の梁部材用支持部1231よりも高い位置に形成されている。そして、接続体12は、第1の梁部材用支持部1231が梁状体92の壁面923の下方に、第2の梁部材用支持部1232が梁状体92の壁面923の上方に位置するように、梁状体92の端部から梁状体92の軸方向に沿ってスライドさせ、梁状体92と結合させることができる。さらに、梁状体92と接続部材12とは、図8〜10に示したねじN1を用い、スライドナット1234と第2の梁部材用支持部1232とを、梁状体92の壁面923を挟んで固定される。このようにすれば、揺れ等により梁状体92と接続部材12とが相対的に移動することが抑制される。
【0044】
角ワッシャー124は、補強部材71と吊部材用接続部121との間に挿入され、補強部材71の下端全体を支持する。すなわち、補強部材71との結合部分の断面積をできるだけ大きくすることで、耐振性能を向上させている。角ワッシャー124は、水平な四角
形の平板部材によって形成され、吊部材4が貫通するU字形の切り欠き(図示せず)が形成されている。
【0045】
例えば室内の床から天井パネル8までの高さが低く、空間構造体9の上方にブレース材10を設けることが難しい場合であっても、実施形態3の構成によれば、第2の補強部材によって耐振性能を向上させることができる。
【0046】
なお、説明した各実施形態に係る構成は、可能な限り組合せて実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 :システム天井
2 :梁部材
3 :天井スラブ
4 :吊部材
5 :接続装置
51 :第1の接続部材
52 :第2の接続部材
6 :ブレース材
7 :振れ止め装置
71 :補強部材
72 :プレート部材
721:プレート
722:ナット
8 :天井パネル
81 :開孔
82 :吊ボルト
9 :空間構造体
92 :梁状体
10 :ブレース材
11 :連結部材
12 :接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13