【実施例】
【0012】
以下本発明の一実施例による吸引作業車について説明する。
図1は本実施例による吸引作業車の構成図である。
本実施例による吸引作業車1は、車輌に搭載されるタンク11と、タンク11の内圧を低下させる真空ポンプ12と、車輌の走行に用いるとともに真空ポンプ12を駆動する電動モータ13と、車輌の走行に用いるとともに真空ポンプ12を駆動するエンジン14と、電動モータ13およびエンジン14の駆動力を真空ポンプ12の駆動のために取り出すPTO(Power Take Off:パワーテイクオフ)15と、電動モータ13とエンジン14との間に設けたクラッチ16と、電動モータ13の電力源として用いるとともに電動モータ13によって充電される電池17とを備えている。電動モータ13は発電機としても使用することができる。
真空ポンプ12は電動モータ13またはエンジン14によって駆動される。PTO15がOFFの場合には、電動モータ13またはエンジン14は真空ポンプ12から切り離されており、PTO15がONの場合には、電動モータ13またはエンジン14の駆動が真空ポンプ12に伝えられる。
【0013】
クラッチ16が切り離されている場合には、エンジン14は電動モータ13と切り離されており、真空ポンプ12は電動モータ13によって駆動される。電動モータ13によって真空ポンプ12を駆動する場合には、電動モータ13の電力源として電池17が用いられる。
クラッチ16を接続することで、電動モータ13はエンジン14によって駆動されて電池17を充電する。クラッチ16の接続時には、真空ポンプ12はエンジン14によって駆動される。
【0014】
本実施例による吸引作業車1は、電池17の残量を検出する残量検出手段18と、エンジン駆動状態とモータ駆動状態とを切り替える制御手段19と、電池残量が少ないことを報知する電池残量報知手段20と、少なくとも電動モードと自動モードとを選択できる駆動モード切替スイッチ21とを備えている。
報知手段20は、電球やLEDなどのランプ、ブザー音やアナウンス音などの音声アラーム、または液晶モニターのいずれかを少なくとも一つ含んで構成される。
報知手段20は、吸引作業車1の運転室内、タンク11の後端周囲、又は吸引作業者(吸引作業場)の周囲の少なくともいずれかに配置されることで、それぞれの情報を容易に確認することが可能となる。
吸引作業者周囲における報知手段20は、電球やLEDなどのランプ、ブザー音やアナウンス音などの音声アラーム、液晶モニターに加え、バイブレータなどの振動機であることが好ましく、作業者が装着でき、吸引作業車11からの無線によって情報が送られる。
真空ポンプ12の駆動状態には、エンジン14で駆動されるエンジン駆動状態と、電動モータ13で駆動されるモータ駆動状態とがあり、エンジン駆動状態では、電動モータ13によって電池17が充電され、モータ駆動状態では、電池17によって電動モータ13を駆動する。
【0015】
制御手段19は、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値未満では、モータ駆動状態をエンジン駆動状態に切り替え、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値よりも大きい第2規定値以下では電池残量報知手段20によって電池残量が少ないことを報知する。
また、制御手段19は、駆動モード切替スイッチ21で電動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値以上で第2規定値以下では、電動モードを維持し、駆動モード切替スイッチ21で自動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下では、モータ駆動状態をエンジン駆動状態に切り替える。
また、制御手段19は、駆動モード切替スイッチ21で電動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下では、電池残量報知手段20による報知を維持し、駆動モード切替スイッチ21で自動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下でも、エンジン駆動状態では電池残量報知手段20による報知を行わない。
また、制御手段19は、モータ駆動状態からエンジン駆動状態に切り替える時には、真空ポンプ12を停止させた後にPTO15をOFFとし、PTO15をOFFにした後にエンジン14を駆動させ、エンジン14を駆動させた後にPTO15をONとしてエンジン駆動状態に切り替える。
【0016】
図2は同吸引作業車におけるモータ駆動状態を示す構成図、
図3は同吸引作業車におけるエンジン駆動状態を示す構成図である。
図2に示すように、モータ駆動状態では、真空ポンプ12は電動モータ13で駆動され、電動モータ13は電池17を電力源として用いる。
図3に示すように、エンジン駆動状態では、真空ポンプ12はエンジン14で駆動され、電動モータ13によって電池17は充電される。
【0017】
次に、
図4から
図6を用いて本実施例による吸引作業車の制御を説明する。
図4は、真空ポンプの駆動を示す全体制御フローである。
図4では、電動モード、自動モード、またはエンジン駆動による吸引作業が、駆動モード切替スイッチ21による操作で選択されることを示している。
制御手段19は、PTO15のスイッチのON、OFFを判断する(ステップ1)。
制御手段19は、ステップ1において、PTO15のスイッチがOFFの時は、エンジン始動待機フラグがONか否かを判断する(ステップ2)。
制御手段19は、ステップ2において、エンジン始動待機フラグがON、すなわちエンジン14が駆動されていなければ、電池残量報知手段20での報知をOFF、例えば報知ランプをOFFとし(ステップ3)、エンジン14を始動する(ステップ4)。
制御手段19は、ステップ2において、エンジン始動待機フラグがOFFの場合、またはステップ4でエンジン14を始動する。
【0018】
制御手段19は、ステップ1において、PTO15のスイッチがONの時は、モータ駆動による真空ポンプ12が回転中か(ステップ5)、エンジン始動待機フラグがONか(ステップ6)を判断する。ステップ6において、エンジン始動待機フラグがOFFの場合、エンジン14を始動して真空ポンプ12の回転を行う(ステップ7)。
制御手段19は、ステップ5でエンジン始動待機フラグがONの場合、ステップ6でエンジン始動待機フラグがONの場合、またはステップ7の後に、駆動モード切替スイッチ21が「電動」か(ステップ8)、「電動」ではない時は、駆動モード切替スイッチ21が「自動」か(ステップ9)、「自動」ではない時は、駆動モード切替スイッチ21が「エンジン」か(ステップ10)を判断する。
制御手段19は、ステップ8において、駆動モード切替スイッチ21が「電動」の時は、電動モードで制御するものと判断する(ステップ11)。
【0019】
制御手段19は、ステップ9において、駆動モード切替スイッチ21が「自動」の時は、ステップ12でエンジン始動待機フラグがONの場合には、電池残量報知手段20での報知ランプをOFFとし(ステップ13)、エンジン14を始動して真空ポンプ12の回転を行い(ステップ14)、自動モードで制御するものと判断する(ステップ15)。また、ステップ12でエンジン始動待機フラグがOFFの場合には、ステップ13及びステップ14の処理を行うことなく自動モードで制御するものと判断する(ステップ15)。 制御手段19は、ステップ10において、駆動モード切替スイッチ21が「エンジン」の時は、ステップ16でエンジン始動待機フラグがONの場合には、電池残量報知手段20での報知ランプをOFFとし(ステップ17)、エンジン14を始動して真空ポンプ12の回転を行い(ステップ18)、エンジン駆動吸引作業で制御するものと判断する(ステップ19)。また、ステップ16でエンジン始動待機フラグがOFFの場合には、ステップ17及びステップ18の処理を行うことなくエンジン駆動吸引作業で制御するものと判断する(ステップ19)。
【0020】
図5は、
図4に示すステップ11における電動モードでの制御フローである。
制御手段19は、電動モードの時は、エンジン始動待機フラグがOFFか否かを判断する(ステップ31)。
制御手段19は、ステップ31においてエンジン始動待機フラグがOFFの場合には、残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値以上か否かを判断する(ステップ32)。
ステップ32において電池残量が第1規定値以上と判断された場合には、エンジン駆動により真空ポンプ12が回転中か否かを判断する(ステップ33)。
ステップ33においてエンジン駆動により真空ポンプ12が回転中であると判断された場合には、エンジン14を停止し、真空ポンプ12の回転動作を停止する(ステップ34)。
制御手段19は、ステップ34において真空ポンプ12の回転動作を停止した後にクラッチ16を切り離し、電動モータ13を始動して真空ポンプ12の回転を行う(ステップ35)。
ステップ33においてエンジン駆動による真空ポンプ12の回転中で無いと判断された場合には、電動モータ13を始動して真空ポンプ12の回転を行う(ステップ35)。
【0021】
制御手段19は、残量検出手段18で検出される電池残量が第2規定値以下か否かを判断し(ステップ36)、第2規定値以下と判断した場合には、電池残量報知手段20での報知をON、例えば報知ランプをONとする(ステップ37)。
制御手段19は、残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値未満か否かを判断し(ステップ38)、第1規定値未満と判断した場合には、電動モータ13を停止し(ステップ39)、エンジン始動待機フラグをONとする(ステップ40)。
制御手段19は、ステップ32において、残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値未満であると判断すると、クラッチ16を接続して電動モータ13による電池17への充電を開始し(ステップ41)、エンジン駆動による真空ポンプ12の回転を行う(ステップ42)。
ステップ36において残量検出手段18で検出される電池残量が第2規定値以下ではないと判断された場合、またはステップ38において残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値以上と判断された場合にはステップ31に戻る。
【0022】
図6は、
図4に示すステップ15における自動モードでの制御フローである。
制御手段19は、残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値以上か否かを判断する(ステップ51)。
ステップ51において電池残量が第1規定値以上と判断された場合には、エンジン駆動により真空ポンプ12が回転中か否かを判断する(ステップ52)。
ステップ52においてエンジン駆動により真空ポンプ12が回転中であると判断された場合には、エンジン14を停止し、真空ポンプ12の回転動作を停止する(ステップ53)。
制御手段19は、ステップ53において真空ポンプ12の回転動作を停止した後にクラッチ16を切り離し、電動モータ13を始動して真空ポンプ12の回転を行う(ステップ54)。
ステップ52においてエンジン駆動による真空ポンプ12の回転中で無いと判断された場合には、電動モータ13を始動して真空ポンプ12の回転を行う(ステップ54)。
【0023】
制御手段19は、残量検出手段18で検出される電池残量が第2規定値以下か否かを判断し(ステップ55)、第2規定値以下と判断した場合には、電池残量報知手段20での報知をON、例えば報知ランプをONとし(ステップ56)、電動モータ13を停止して真空ポンプ12を停止する(ステップ57)。
ステップ57において真空ポンプ12を停止した後に報知ランプをOFFとする(ステップ58)。
ステップ58において報知ランプをOFFとし、エンジン駆動切替処理を行う(ステップ59)。ステップ59におけるエンジン駆動切替処理は、PTO15をOFFにした後にエンジン14を駆動させ、エンジン14を駆動させた後にPTO15をONとし、クラッチ16を接続する。
ステップ59におけるエンジン駆動切替処理を行うことでエンジン駆動による真空ポンプ12の回転を行う(ステップ60)。
制御手段19は、ステップ51において、残量検出手段18で検出される電池残量が第1規定値未満であると判断されると、クラッチ16を接続して電動モータ13による電池17への充電を開始し(ステップ61)、エンジン駆動による真空ポンプ12の回転を行う(ステップ60)。
【0024】
以上のように本実施例によれば、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値未満では、モータ駆動状態をエンジン駆動状態に切り替え、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値よりも大きい第2規定値以下では電池残量報知手段20によって電池残量が少ないことを報知することで、モータ駆動状態をエンジン駆動状態に切り替える可能性があることを、モータ駆動状態で作業員に意識させることができる。
また、本実施例によれば、駆動モード切替スイッチ21で電動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第1規定値以上で第2規定値以下では、電動モードを維持し、駆動モード切替スイッチ21で自動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下では、モータ駆動状態をエンジン駆動状態に切り替えることで、電動モードが選択されている時には、自動モードが選択されている時よりも優先的にモータ駆動を行える。
また、本実施例によれば、駆動モード切替スイッチ21で電動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下では、電池残量報知手段20による報知を維持し、駆動モード切替スイッチ21で自動モードが選択されている時には、残量検出手段18で検出される電池残量が、第2規定値以下でも、エンジン駆動状態では電池残量報知手段20による報知を行わないことで、電動モードが選択されている時には、電池残量を把握できる。
また、本実施例によれば、モータ駆動状態からエンジン駆動状態に切り替える時には、真空ポンプ12を停止させた後にPTO15をOFFとし、PTO15をOFFにした後にエンジン14を駆動させ、エンジン14を駆動させた後にPTO15をONとしてエンジン駆動状態に切り替えることで、モータ駆動状態からエンジン駆動状態への切り替え時に、PTO15をOFFとしてエンジン14を駆動するため安全性が高い。