特許第6763535号(P6763535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バイオアパタイトの特許一覧 ▶ 株式会社アドバンテックの特許一覧 ▶ 合同会社トレスバイオ技研の特許一覧

特許6763535卵殻膜分離システム、及び卵殻膜分離方法
<>
  • 特許6763535-卵殻膜分離システム、及び卵殻膜分離方法 図000002
  • 特許6763535-卵殻膜分離システム、及び卵殻膜分離方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6763535
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】卵殻膜分離システム、及び卵殻膜分離方法
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/28 20060101AFI20200917BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   B03B5/28 Z
   B02C19/00 101Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-93853(P2020-93853)
(22)【出願日】2020年5月29日
【審査請求日】2020年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】517450703
【氏名又は名称】株式会社バイオアパタイト
(73)【特許権者】
【識別番号】599176344
【氏名又は名称】株式会社アドバンテック
(73)【特許権者】
【識別番号】514081760
【氏名又は名称】合同会社トレスバイオ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】金島 敬之介
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘一
(72)【発明者】
【氏名】苅田 傑
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−519712(JP,A)
【文献】 特開平8−173838(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103330237(CN,A)
【文献】 特開2011−184269(JP,A)
【文献】 特開平1−275512(JP,A)
【文献】 特開2013−233120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03B 5/28
A23L 15/00
B02C 19/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離システムであって、
割卵を粉砕する粉砕機と、
アルカリ水を合成するアルカリ水槽と、
前記アルカリ水槽から前記アルカリ水を供給して、前記粉砕機で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽と、を備え、
前記分離槽から排出された前記アルカリ水を前記アルカリ水槽に戻して再利用することを特徴とする卵殻膜分離システム。
【請求項2】
前記分離槽は、前記アルカリ水槽から供給された前記アルカリ水により渦水流を発生させるアルカリ水供給ノズルと、槽内の前記アルカリ水を撹拌するように垂直の撹拌軸の先端部に設けた撹拌羽根と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の卵殻膜分離システム。
【請求項3】
前記分離槽で分離された卵殻は、当該分離槽の下端部から自然落下により排出され、
前記分離槽で分離された卵殻膜は、当該分離槽内の上部に設けた卵殻膜排出水路を介して卵殻膜排出口から排出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の卵殻膜分離システム。
【請求項4】
前記卵殻膜排出水路は、前記卵殻膜排出口に向かって上昇するように、水平面に対してわずかに傾斜していることを特徴とする請求項3に記載の卵殻膜分離システム。
【請求項5】
前記アルカリ水槽では、卵殻を加工した水酸化カルシウムと水とからアルカリ水を合成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の卵殻膜分離システム。
【請求項6】
前記粉砕機は、遠心分離機で構成することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の卵殻膜分離システム。
【請求項7】
割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離方法であって、
卵殻を粉砕する粉砕工程と、
アルカリ水を合成するアルカリ水合成工程と、
前記アルカリ水合成工程で合成された前記アルカリ水を供給して、前記粉砕工程で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離工程と、
前記分離工程で使用した前記アルカリ水を、再度利用するアルカリ水再利用工程と、を備えたことを特徴とする卵殻膜分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
卵黄卵白を回収した後の割卵は卵殻に卵殻膜が付着した状態であるが、卵殻も卵殻膜もそれぞれ利用価値があり、効率的に分離するための開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、卵殻と卵殻膜とを分離するために、遠心分離機を用いて粉砕した後、粉砕された卵殻の粉粒体と卵殻膜との比重差を利用して分離する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1:特許第3305538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、卵殻同士や卵殻と分離槽の金属との接触抵抗が高く、卵殻と卵殻膜とが分離されないことがあるとともに、分離槽で沈殿したまま排出できなくなる恐れがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離システムであって、
割卵を粉砕する粉砕機と、
アルカリ水を合成するアルカリ水槽と、
前記アルカリ水槽から前記アルカリ水を供給して、前記粉砕機で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽と、を備え、
前記分離槽から排出された前記アルカリ水を前記アルカリ水槽に戻して再利用することを特徴とする卵殻膜分離システムを提供するものである。
【0008】
この構成により、卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽にアルカリ水を供給することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻をスムーズに排出できるようにすることができる。
また、アルカリ水を無駄にすることなく卵殻と卵殻膜を分離することができる。
【0009】
卵殻膜分離システムであって、前記分離槽は、前記アルカリ水槽から供給された前記アルカリ水により渦水流を発生させるアルカリ水供給ノズルと、槽内の前記アルカリ水を撹拌するように垂直の撹拌軸の先端部に設けた撹拌羽と、を備えた構成としてもよい。
【0010】
この構成により、効率的に割卵を卵殻と卵殻膜とに分離することができる。
【0011】
卵殻膜分離システムであって、前記分離槽で分離された卵殻は、当該分離槽の下端部から自然落下により排出され、
前記分離槽で分離された卵殻膜は、当該分離槽内の上部に設けた卵殻膜排出水路を介して卵殻膜排出口から排出される構成としてもよい。
【0012】
この構成により、分離槽で分離された卵殻が当該分離槽の下端部からアルカリ水とともに自然落下により排出されるため、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出することができるとともに、比重の軽い卵殻膜は上部の卵殻膜排出口からスムーズに排出することができる。
【0013】
卵殻膜分離システムであって、前記卵殻膜排出水路は、前記卵殻膜排出口を設けた位置が高くなるように、水平面に対してわずかに傾斜している構成としてもよい。
【0014】
この構成により、卵殻膜排出水路に紛れ込んだ卵殻が比重により分離槽内に沈殿することで、卵殻膜排出口から卵殻が排出されることを防止できる。
【0015】
卵殻膜分離システムであって、前記アルカリ水槽では、卵殻を加工した水酸化カルシウムと水とからアルカリ水を合成する構成としてもよい。
【0016】
この構成により、卵殻を加工してアルカリ水を合成することで、原料を効果的に利用できるとともに、安心、安全な卵殻膜分離システムとすることができる。
【0017】
卵殻膜分離システムであって、前記粉砕機は、遠心分離機で構成してもよい。
【0018】
この構成により、極力、水分を含まないように割卵を粉砕できる。
【0019】
また、上記課題を解決するために本発明は、割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離方法であって、
卵殻を粉砕する粉砕工程と、
アルカリ水を合成するアルカリ水合成工程と、
前記アルカリ水合成工程で合成された前記アルカリ水を供給して、前記粉砕工程で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離工程と、
前記分離工程で使用した前記アルカリ水を再度利用するアルカリ水再利用工程と、を備えたことを特徴とする卵殻膜分離方法を提供するものである。
【0020】
この構成により、卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽にアルカリ水を供給することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることができる。
また、アルカリ水を無駄にすることなく卵殻と卵殻膜を分離することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の卵殻膜分離システムにより、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1における卵殻膜分離システムを説明する図である。
図2】本発明の実施例1における分離槽を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1について、図1図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1における卵殻膜分離システムを説明する図である。図2は、本発明の実施例1における分離槽を説明する図である。
【0024】
(卵殻膜分離システム)
実施例1における卵殻膜分離システム100は、投入された割卵1を卵殻膜2と卵殻3とに分離するものであり、粉砕機10、アルカリ水槽20、分離槽30、卵殻膜採集籠40、及び卵殻採集籠50を備えている。
【0025】
卵黄及び卵白を取り除いた割卵1は、割卵供給口91から投入され、割卵供給コンベア87で搬送され、粉砕機10に供給される。実施例1における粉砕機10は、遠心分離機で構成され、供給された割卵1は、約5mm程度に粉砕される。粉砕機10を遠心分離機で構成することにより、水分が分離されるので、後述するアルカリ水に投入した際に、アルカリ水が希釈されることがなくなる。
【0026】
なお、実施例1における粉砕機10は、遠心分離機で構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、撹拌式の粉砕機でもよいし、他の任意の粉砕機でもよい。
【0027】
粉砕された卵殻は、粉砕後卵殻供給コンベア88で搬送されて、分離槽30に供給される。実施例1における分離槽30は、1.5mの容積を有する略円筒形状の分離槽本体31と、分離槽本体31内の底部近くで撹拌を行う撹拌羽根34と、この撹拌羽根34を回転させる撹拌モータ32及び撹拌モータ32の回転力を撹拌羽根34に伝える撹拌軸33と、撹拌パイプ38と、アルカリ水を分離槽30に供給するアルカリ水供給口37と、分離した卵殻膜2をアルカリ水とともに外部に排出する卵殻膜排出口36と、分離した卵殻3をアルカリ水とともに外部に排出する卵殻排出口35とを有している。撹拌軸33は、撹拌モータ32から撹拌羽根34まで垂直に設けられ、撹拌羽根34は撹拌軸33に対して直角に、つまり水平に設けられている。撹拌軸33を垂直に設け、撹拌羽根34を水平に設けることで、必要以上に撹拌力が強くならないようにしている。撹拌力が強くなり過ぎると、分離槽本体31内に沈殿した卵殻3が舞い上がり、上昇している卵殻膜2に混じってしまう恐れがある。
【0028】
撹拌パイプ38は、円筒状を有し、分離槽本体31の中心部に垂直に、撹拌羽根34よりも上方に設けられている。上述した撹拌軸33は、撹拌パイプ38の中心部に非接触に設けている。撹拌パイプ38を設けることで、大きな渦が分離槽本体31内部の中心部に発生することを抑えて、分離した卵殻膜2が渦中心に集まることを防いでいる。分離した卵殻膜2が渦中心に集まると、後述する卵殻膜水路39に出る卵殻膜2の量が減り、外部に排出されにくくなる。
【0029】
アルカリ水供給口37は、分離槽本体31の下方に設けられ、図2に示すように、分離槽本体31の内壁に向かってアルカリ水を噴出するノズル37´を有している。このノズル37´から噴出したアルカリ水は、分離槽本体31の内壁に沿って水流を発生させ、撹拌羽根34とともにアルカリ水中の粉砕された割卵1を撹拌させる。割卵1は、撹拌されることで卵殻膜2と卵殻3に分離され易くなり、比重の軽い卵殻膜2は浮き上がり、比重の重い卵殻3は沈殿していく。
【0030】
浮き上がった卵殻膜2は、分離槽本体31内上部の内壁に沿って設けられた卵殻膜水路39に水流によって導かれて卵殻膜排出口36へと近づく。卵殻膜水路39は、卵殻膜排出口36とは反対側から卵殻膜排出口36に向かって上昇するように、水平面に対してわずかに傾斜して設けられている。これにより、誤って卵殻膜水路39に入り込んだ卵殻3が分離槽本体31下方へと沈殿して卵殻膜排出口36に向かうことを防止している。卵殻膜排出口36まで到達した卵殻膜2は、アルカリ水とともに外部に排出される。
【0031】
分離槽本体31内で分離され、沈殿した卵殻3は、分離槽本体31の底面に設けられた卵殻排出口35からアルカリ水とともに自然落下で外部に排出される。分離槽本体31の底面に設けた卵殻排出口35から自然落下で卵殻3を排出することにより、排出口や配管がつまりにくくしている。仮に、分離槽本体31の上方に卵殻の排出口を設けるとその後の配管が詰まる恐れがある。
【0032】
アルカリ水中で割卵1を卵殻膜2と卵殻3とに分離することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることができる。
【0033】
卵殻排出口35から自然落下で排出された分離後の卵殻3は、卵殻排出桶98で流されて網で構成された卵殻採集籠50に排出され蓄積される。いっしょに排出されたアルカリ水は卵殻採集籠50から図示しない水路に排出されるようにしているが、後述するように、汚れを取り除いたアルカリ水をアルカリ水槽20に戻して再利用するようにしてもよい。
【0034】
ここで、卵殻排出口35から自然落下で排出された分離後の卵殻3が詰まらずに卵殻排出桶98で流されやすくするため、卵殻排出桶98に補助水を流すようにしてもよい。
【0035】
卵殻膜排出口36から排出された分離後の卵殻膜2は、卵殻膜排出コンベア89で搬送され、卵殻膜採集籠40で採集される。いっしょに排出されたアルカリ水は、沈殿槽41で卵殻粉等の汚れを沈殿させることで除去して、後述するように、アルカリ水のみをアルカリ水槽2に再び蓄えて再利用される。これにより、アルカリ水を無駄なく利用することができる。
【0036】
アルカリ水槽20は、水と水酸化カルシウムとからアルカリ水を合成するものである。すなわち、略円筒形状の水槽本体21に、水供給口93から水を供給し、水酸化カルシウム供給口92から水酸化カルシウムを供給して、水槽本体21内で撹拌羽根24が回転することにより撹拌してアルカリ水を合成する。アルカリ水のアルカリ性は、pH11以上が好ましく、pH12.4がより好ましい。水酸化カルシウムは、卵殻を約1000℃で焼成し、その後、加水してCa(OH)とすることで、低コストで安全、安心なアルカリ水を合成している。撹拌羽根24は、垂直よりわずかに傾斜させた撹拌軸23の先端に設けられ、撹拌軸23の他の先端に設けた撹拌モータ22が回転することにより、撹拌羽根24が水平よりもわずかに傾斜した状態で回転して強い撹拌力を持たせることができる。
【0037】
合成されたアルカリ水は、アルカリ水供給配管85を介してマグネットポンプ82に達し、さらにアルカリ水供給配管86を介して分離槽30のアルカリ水供給口37から分離槽本体31内に供給される。ここで、アルカリ水を供給するためのポンプは、最低でも約100&#8467;/分のアルカリ水を供給できるもので、流量の正確な管理を行うために、エアを加えないマグネットポンプ82としたが、これに限定されず適宜変更が可能である。例えば、ダイヤフラムポンプ等の任意のポンプでもよい。
【0038】
沈殿槽41から回収したアルカリ水は、再利用のために、アルカリ水再利用配管83、ダイヤフラムポンプ81、アルカリ水再利用配管84を介して、アルカリ水槽20に戻される。アルカリ水を戻すためのポンプは、空気の噛み込みがあっても水を送れるダイヤフラムポンプ81を用いることでスムーズにアルカリ水を戻すことができる。
【0039】
なお、実施例1においては、沈殿槽41から回収したアルカリ水は、アルカリ水再利用配管83、ダイヤフラムポンプ81、アルカリ水再利用配管84を介して、アルカリ水槽20に戻す構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、アルカリ水再利用配管等を介さずに、沈殿槽41から直接、アルカリ水槽20に戻すように構成してもよい。また、ダイヤフラムポンプ81を用いずにアルカリ水再利用配管83から直接、アルカリ水槽20に戻すように構成してもよい。
【0040】
(卵殻膜分離方法)
次に、卵殻膜分離方法について説明する。まず、卵黄と卵白とを除去した割卵1を粉砕機10で約5mm程度に粉砕する粉砕工程を実施する。約5mm程度に粉砕することで、卵殻膜と卵殻とを分離しやすくすることができる。
【0041】
粉砕工程で粉砕された割卵1は、分離工程を実施して卵殻膜2と卵殻3とに分離する。分離工程は、分離槽30に供給された粉砕後の割卵1の高さより多くのアルカリ水を供給して撹拌する。これにより、割卵1は、卵殻膜2と卵殻3とに分離され、比重の軽い卵殻膜2は浮き上がり、比重の重い卵殻3は沈殿する。このとき、撹拌によって卵殻膜2が中心に集まることなく、また、卵殻3が混じらないようにやや傾斜させた卵殻膜水路39に沿って上昇させながら卵殻膜排出口36から排出する。卵殻3は、配管が詰まらないように、分離槽本体31の底面から自然落下により卵殻排出口から排出する。
【0042】
アルカリ水中で割卵1を卵殻膜2と卵殻3とに分離することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることができる。
【0043】
分離槽30に供給するアルカリ水は、分離工程に先立って、アルカリ水槽20にて水と水酸化カルシウムとから合成するアルカリ水合成工程を実施する。アルカリ水合成工程で使用する水酸化カルシウムは事前に、卵殻を加工して準備しておく。
【0044】
分離槽30で使用し、卵殻膜2とともに排出されたアルカリ水は、汚れを取り除いた後、アルカリ水槽20に戻して再利用するアルカリ水再利用工程を実施する。
【0045】
このように、実施例1においては、割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離システムであって、
割卵を粉砕する粉砕機と、
アルカリ水を合成するアルカリ水槽と、
前記アルカリ水槽から前記アルカリ水を供給して、前記粉砕機で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽と、を備え、
前記分離槽から排出された前記アルカリ水を前記アルカリ水槽に戻して再利用することを特徴とする卵殻膜分離システムにより、卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽にアルカリ水を供給することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることができる。
また、アルカリ水を無駄にすることなく卵殻と卵殻膜を分離することができる。
【0046】
また、割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離方法であって、
卵殻を粉砕する粉砕工程と、
アルカリ水を合成するアルカリ水合成工程と、
前記アルカリ水合成工程で合成された前記アルカリ水を供給して、前記粉砕工程で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離工程と、
前記分離工程で使用した前記アルカリ水を再度利用するアルカリ水再利用工程と、を備えたことを特徴とする卵殻膜分離方法により、卵殻と卵殻膜とを分離する分離槽にアルカリ水を供給することで、アルカリ水の表面活性化能力によって、卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることができる。
また、アルカリ水を無駄にすることなく卵殻と卵殻膜を分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明における卵殻膜分離システム、及び卵殻膜分離方法は、卵殻や卵殻膜を利用する分野に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
1: 割卵 2:卵殻膜 3:卵殻
10:粉砕機
20:アルカリ水槽 21:水槽本体 22:撹拌モータ
23:撹拌軸 24:撹拌羽根
30:分離槽 31:分離槽本体 32:撹拌モータ
33:撹拌軸 34:撹拌羽根
35:卵殻排出口 36:卵殻膜排出口 37:アルカリ水供給口
38:拡散パイプ 39:卵殻膜水路
40:卵殻膜採集籠 41:沈殿槽 50:卵殻採集籠
81:ダイヤフラムポンプ 82:マグネットポンプ
83:アルカリ水再利用配管 84:アルカリ水再利用配管
85:アルカリ水供給配管 86:アルカリ水供給配管
87:割卵供給コンベア 88:粉砕後卵殻供給コンベア
89:卵殻膜排出コンベア
91:割卵供給口 92:水酸化カルシウム供給口 93:水供給口
98:卵殻排出桶
100:卵殻膜分離システム
【要約】
【課題】卵殻と卵殻膜との分離性を向上するとともに、分離槽に沈殿した卵殻がスムーズに排出できるようにすることを課題とする。
【解決手段】割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する卵殻膜分離システムであって、
割卵を粉砕する粉砕機10と、
アルカリ水を合成するアルカリ水槽20と、
前記アルカリ水槽から前記アルカリ水を供給して、前記粉砕機で粉砕された割卵を卵殻と卵殻膜とに分離する分離槽30と、を備え、
前記分離槽から排出された前記アルカリ水を前記アルカリ水槽20に戻して再利用することを特徴とする卵殻膜分離システム100とした。
【選択図】図1
図1
図2