(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763546
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ヒートシンク、及びヒートシンクの組立方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20200917BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-20533(P2018-20533)
(22)【出願日】2018年2月7日
(65)【公開番号】特開2019-140190(P2019-140190A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】榊原 直樹
【審査官】
河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−009498(JP,A)
【文献】
特開平08−288437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体から伝達された熱を吸収する吸熱面、及び熱を外部に放射する放熱面を有するヒートシンク本体と、
前記吸熱面に対して保持され、各辺から内側に向かって後退している切欠部を有する保持部材と、
前記ヒートシンク本体に設けられ、前記保持部材を前記ヒートシンク本体から脱落不能に固定するとともに、前記吸熱面の広がる面方向における変位を抑制する固定部と、
を備え、
前記固定部は、前記吸熱面の4つの角部の各角部、又は前記吸熱面の4辺の各辺において、前記切欠部に係合している第二固定部を有するヒートシンク。
【請求項2】
前記固定部は、前記吸熱面から前記保持部材に向かって突出するとともに、該保持部材に形成された貫通孔に挿通される挿通部、及び該挿通部の先端に設けられて前記貫通孔に係合する係合部をさらに有する第一固定部を有する請求項1に記載のヒートシンク。
【請求項3】
互いに間隔をあけて配列された複数の前記第一固定部を有する請求項2に記載のヒートシンク。
【請求項4】
前記第二固定部は、前記ヒートシンク本体における前記吸熱面の端縁の少なくとも一部に設けられ、前記保持部材における前記吸熱面とは反対側を向く伝熱面に当接する当接部、及び該当接部と前記ヒートシンク本体とを接続する接続部を有する請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク。
【請求項5】
前記吸熱面の端縁に沿って互いに間隔をあけて配列された複数の前記第二固定部を有する請求項4に記載のヒートシンク。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヒートシンクの組立方法であって、
前記切欠部が形成されている前記保持部材を準備する保持部材準備工程と、
前記保持部材に前記ヒートシンク本体と前記固定部とを一体成形する一体成形工程と、を含むヒートシンクの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の発熱を外部に放熱するためのヒートシンク、及びヒートシンクの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に使用されるIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale IC)等の半導体集積回路では、より高密度な集積化が進められている。内部回路の高集積化に伴い、消費電力も従来に比して増大している。そして、消費電力の増大に比例して、半導体集積回路の内部抵抗等に起因する発熱量も増加している。
発熱が亢進すると回路動作の効率が低下するのみならず、電子回路の熱暴走や回路素子の損壊を誘発するため、熱源である集積回路の放熱手段を設けることは肝要である。このような放熱手段として、発熱体としての電子部品よりも大きな熱容量を有するアルミニウム等の金属部材で形成されたヒートシンクが知られている。ヒートシンクは、サーマルグリス等の伝熱材料を介して電子部品の外表面に密着させられることで、電子部品の放熱を促すものである。
【0003】
このようなヒートシンクとしては、例えば以下の特許文献1、2に記載のものが知られている。特許文献1には、熱源からの熱を吸収する熱吸収部材である金属部材と、金属部材に対して一体に成形された放熱部材と、を有する放熱構造体が記載されている。特許文献2には、熱を放熱する放熱部材であるヒートシンク本体と、当該ヒートシンク本体に対して成形されるとともに高輝度LEDで生じた熱を吸収する熱吸収部材である熱伝達板と、を有するLED用ヒートシンクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−229714号公報
【特許文献2】特開2011−61157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1、及び特許文献2に係る装置では、熱吸収部材と、放熱部材との間で線膨張係数に差がある。加えて、特許文献1、及び特許文献2に係る装置では、熱吸収部材に対して放熱部材は、成形時の保持力のみによって固定されているに過ぎない。このため、長期にわたる使用に伴って継続的な入熱が生じると、熱吸収部材と放熱部材との間に、線膨張係数の差に基づくズレや隙間が生じる可能性がある。このようなズレや隙間が生じると、所期の放熱性能を得られなくなってしまう。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、長期にわたって良好な放熱性能を発揮することが可能なヒートシンク、及びヒートシンクの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決するヒートシンク、及びヒートシンクの組立方法を提供するものである。
本発明の態様に係るヒートシンクは、発熱体から伝達された熱を吸収する吸熱面、及び熱を外部に放射する放熱面を有するヒートシンク本体と、前記吸熱面に対して保持される保持部材と、前記ヒートシンク本体に設けられ、前記保持部材を前記ヒートシンク本体から脱落不能に固定するとともに、前記吸熱面の広がる面方向における変位を抑制する固定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
上述した態様によれば、長期にわたって良好な放熱性能を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るヒートシンクの構成を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る保持部材の平面図である。
【
図4】
図1のIII−III線における断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るヒートシンクの組立方法を示す工程図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るヒートシンクの組立方法における保持部材準備工程を実行した後の状態を示す断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るヒートシンクの組立方法における一体成形工程を実行した後の状態を示す断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るヒートシンクの最小構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るヒートシンク100は、LSI、IC等の集積回路素子を含む電子部品に密着配置されることで、発熱体としての電子部品の熱を放熱するために用いられる。
図1から
図4に示すように、ヒートシンク100は、ヒートシンク本体1と、保持部材3と、固定部4と、を備えている。
【0011】
ヒートシンク本体1は、矩形板状の基部11と、基部11に一体に設けられた複数のフィン12と、を有している。各フィン12は、基部11の広がる面に対して直交する方向に広がる板状をなしている。複数のフィン12は、基部11の一方側の面上に互いに間隔をあけて配列されている。なお、フィン12の形状は板状に限定されず、柱状をなしていてもよい。
本実施形態において、ヒートシンク本体1は、熱伝導性樹脂で形成されている。ヒートシンク本体1は、熱伝導性樹脂を材料として、固定部4とともにインサート成形によって形成されている。
基部11の両面のうち、フィン12が設けられている面とは反対側の面は吸熱面1Aとされている。吸熱面1Aには、保持部材3が当接する。
基部11の両面のうち、フィン12が設けられている面は放熱面1Bとされている。複数のフィン12は、放熱面1Bから延びている。
【0012】
図2に示すように、保持部材3は略矩形板状をなしている。
保持部材3は、ヒートシンク本体1によって、吸熱面1Aに対して保持されている。
本実施形態において、保持部材3は、金属(例えばアルミニウム)で形成されている。
保持部材3の4つの角部には切欠部31が形成されている。各切欠部31は、保持部材3の各辺から内側に向かって後退することでL字状をなしている。これら切欠部31には、後述する固定部4(第二固定部42)が係合する。保持部材3の中央の領域には、複数(2つ)の貫通孔32が形成されている。それぞれの貫通孔32は保持部材3を厚さ方向に貫通する円形の開口である。これら貫通孔32には、後述する固定部4(第一固定部41)が係合する。
【0013】
図3、又は
図4に示すように、保持部材3の両面のうち、上記吸熱面1A側を向く面は当接面3Aとされ、吸熱面1Aとは反対側を向く面は伝熱面3Bとされている。
図3に示すように、ヒートシンク本体1の保持部材3へのインサート成形によって、ヒートシンク本体1の吸熱面1Aは、保持部材3の当接面3Aに対して密着固定されている。
【0014】
保持部材3は、ヒートシンク本体1に対して固定部4によって脱落不能に固定されている。固定部4の構成について説明する。固定部4は、第一固定部41と、第二固定部42と、を有している。
【0015】
図3に示すように、第一固定部41は、ヒートシンク本体1の基部11(吸熱面1A)から保持部材3の当接面3Aに向かって突出する挿通部41Aと、挿通部41Aの先端に一体に設けられた係合部41Bと、を有している。挿通部41Aは、保持部材3に形成された貫通孔32に挿通されている。係合部41Bは、挿通部41Aの延びる方向に直交する面方向(即ち、保持部材3の伝熱面3Bが広がる面方向)に広がるフランジ状をなしている。
図3に示すように、本実施形態では、第一固定部41の係合部41Bは、貫通孔32から保持部材3の伝熱面3Bに沿って広がるとともに、貫通孔32周辺において伝熱面3Bに当接している。
【0016】
図4に示すように、第二固定部42は、吸熱面1Aの端縁の少なくとも一部(本実施形態では吸熱面1Aの4つの角部)に設けられた当接部42Aと、当接部42Aとヒートシンク本体1(基部11)とを接続する接続部42Bと、を有している。当接部42Aは、保持部材3の伝熱面3Bに沿って広がっている。当接部42Aは、伝熱面3Bの角部における端縁を含む部分に当接している。接続部42Bは、当接部42Aと一体に設けられている。これにより、第二固定部42は断面視で略L字状をなしている。
【0017】
これら第一固定部41、及び第二固定部42によって、保持部材3がヒートシンク本体1に対して固定されている。より具体的には、保持部材3は、第一固定部41、及び第二固定部42によって、ヒートシンク本体1の吸熱面1Aの広がる面方向における変位が抑制されている。なお、本実施形態では、固定部4として第一固定部41、及び第二固定部42をともに備えている構成を例に説明した。しかしながら、固定部4として第一固定部41のみ、又は第二固定部42のみを備える構成を採ることも可能である。
また、本実施形態では、切欠部31及び第二固定部42が、吸熱面1Aの4つの角部に設けられているが、吸熱面1Aの端縁であればどのような位置に設けられてもよい。変形例として、切欠部31及び第二固定部42は、吸熱面1Aの4辺に設けられてもよい。吸熱面1Aの4辺に設けた場合も、吸熱面1Aの4つの角部に設けた場合と同様な効果を有する。
【0018】
続いて、本実施形態に係るヒートシンク100の組立方法について
図5を参照して説明する。
図5に示すように、ヒートシンク100の組立方法は、保持部材準備工程S1と、一体成形工程S2と、を含む。
【0019】
まず、保持部材準備工程S1を実行する。
図6に示すように、保持部材準備工程S1では、各切欠部31及び各貫通孔32が形成されている保持部材3を準備する。
【0020】
次いで、一体成形工程S2を実行する。
一体成形工程S2では、各切欠部31及び各貫通孔32が形成されている保持部材3を金型内にセットし、熱伝導性樹脂を金型内に流し込む。熱伝導性樹脂を金型内に流し込むことで、各切欠部31及び各貫通孔32に熱伝導樹脂が入り込む。
これにより、
図7に示すように、保持部材3に、ヒートシンク本体1と、固定部4とが一体成形される。具体的には、保持部材3に、第一固定部41と、第二固定部42と、基部11とフィン12とを含むヒートシンク本体1と、が、インサート成形によって、一体成形される。
また、これにより、保持部材3に、ヒートシンク本体1及び固定部4を形状的に密着させることが可能となる。
以上により、ヒートシンク100の組立工程の全工程が完了する。
【0021】
ヒートシンク100を使用するに当たっては、例えばLSIやIC等の集積回路素子に、保持部材3の伝熱面3Bを当接させた状態で配置する。なお、伝熱面3Bと集積回路素子の表面との間にサーマルグリス等を介在させることも可能である。この状態で集積回路素子に通電すると、内部抵抗等に起因した発熱が生じる。熱は、保持部材3に吸収され、保持部材3を経て、ヒートシンク本体1に伝播し、ヒートシンク本体1のフィン12を通じて外部に放散する。その結果、集積回路素子の温度を下げることができ、長期にわたって当該素子を使用することができる。
【0022】
ここで、長期にわたって回路素子への通電と停止を繰り返すと、熱の授受に伴う膨張と収縮がヒートシンク100に生じる。より具体的には、上述のヒートシンク本体1と保持部材3との間で大きな膨張と収縮とが生じる。このような膨張・収縮が繰り返された場合、保持部材3に対するヒートシンク本体1の密着が変位に伴う応力に抗しきれず、保持部材3がヒートシンク本体1から剥離したり、両者の間にズレが生じたりする可能性がある。
【0023】
しかしながら、本実施形態に係るヒートシンク100では、保持部材3は固定部4によってヒートシンク本体1に脱落不能に固定される。さらに、固定部4は、ヒートシンク本体1の吸熱面1Aの広がる面方向における変位を抑制する。具体的には、第一固定部41の係合部41Bによって保持部材3の中央領域における相対変位が抑制される。さらに、第二固定部42の当接部42Aによって保持部材3の端縁を含む領域における相対変位が抑制される。その結果、ヒートシンク100に入熱が生じた場合、ヒートシンク本体1の線膨張係数と保持部材3の線膨張係数とに差があっても、収縮や膨張に抗して固定部4が保持部材3を固定する。したがって、両者の間で剥離やズレが生じる可能性を低減することができる。その結果、長期にわたって良好な放熱性能を発揮することが可能となる。
【0024】
さらに、本実施形態に係るヒートシンク100では、複数の第一固定部41、及び複数の第二固定部42が設けられていることから、ヒートシンク本体1に対して保持部材3をさらに強固かつ安定的に固定することができる。
【0025】
加えて、本実施形態に係るヒートシンク100の組立方法では、保持部材3に対して、一体成形加工によって、ヒートシンク本体1、第一固定部41、及び第二固定部42を形成することで、保持部材3をヒートシンク本体1に固定する。したがって、保持部材3をヒートシンク本体1に強固に固定することができる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成や方法に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、発熱体として集積回路素子を用いた場合を例に説明したが、熱の放散が要求される素子である限りにおいて、いかなる回路素子にもヒートシンク100を適用することができる。
【0027】
なお、
図8は、ヒートシンク100の最小構成を示す図である。ヒートシンク100は少なくとも、吸熱面1A、及び放熱面1Bを有するヒートシンク本体1と、保持部材3と、固定部4と、を備えればよい。
【符号の説明】
【0028】
100…ヒートシンク
1…ヒートシンク本体
3…保持部材
4…固定部
11…基部
12…フィン
1A…吸熱面
1B…放熱面
31…切欠部
32…貫通孔
3A…当接面
3B…伝熱面
41…第一固定部
41A…挿通部
41B…係合部
42…第二固定部
42A…当接部
42B…接続部
S1…保持部材準備工程
S2…一体成形工程