特許第6763553号(P6763553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763553ヌクレオシド誘導体またはその塩、ポリヌクレオチドの合成試薬、ポリヌクレオチドの製造方法、ポリヌクレオチド、および結合核酸分子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763553
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】ヌクレオシド誘導体またはその塩、ポリヌクレオチドの合成試薬、ポリヌクレオチドの製造方法、ポリヌクレオチド、および結合核酸分子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/10 20060101AFI20200917BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20200917BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20200917BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20200917BHJP
   C12Q 1/6811 20180101ALI20200917BHJP
【FI】
   C07H19/10CSP
   C07H21/04 B
   C12N15/10 ZZNA
   C12N15/11 Z
   C12Q1/6811 Z
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-552458(P2018-552458)
(86)(22)【出願日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2017037093
(87)【国際公開番号】WO2018096831
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2019年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-230196(P2016-230196)
(32)【優先日】2016年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業研究成果最適プログラム シーズ育成タイプ「人工核酸によるバイオマーカー簡易検出センサの技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】皆川 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】堀井 克紀
(72)【発明者】
【氏名】秋冨 穣
(72)【発明者】
【氏名】金子 直人
(72)【発明者】
【氏名】和賀 巌
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 正靖
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−056136(JP,A)
【文献】 特開2013−040118(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/064223(WO,A1)
【文献】 IMAIZUMI,Y. et al,Efficacy of Base-Modification on Target Binding of Small Molecule DNA Aptamers,Journal of the American Chemical Society,2013年,Vol.135, No.25,pp.9412-9419
【文献】 桑原正靖,高分子のリプログラミング 非天然分子を導入した核酸アプタマーの創製,高分子,2014年,Vol.63, No.10,pp.730-731
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 1/00− 99/00
C12N 15/00− 15/90
C12Q 1/00− 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されることを特徴とする、ヌクレオシド誘導体またはその塩。
【化1】
前記化学式(1)中、
Suは、ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団またはヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団であり、保護基を有しても有しなくてもよく、
およびLは、それぞれ独立して、直鎖もしくは分枝状の飽和または不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基であり、
は、イミノ基(−NR−)、エーテル基(−O−)、またはチオエーテル基(−S−)であり、
は、水素原子または直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基である。
【請求項2】
が、イミノ基(−NR−)である、請求項1記載のヌクレオシド誘導体またはその塩。
【請求項3】
が、ビニレン基(−CH=CH−)である、請求項1または2に記載のヌクレオシド誘導体またはその塩。
【請求項4】
が、エチレン基(−CH−CH−)である、請求項1から3のいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体またはその塩。
【請求項5】
が、水素原子である、請求項1から4のいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体またはその塩。
【請求項6】
前記ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団または前記ヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団が、下記化学式(2)で表される、請求項1から5のいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体またはその塩。
【化2】
前記化学式(2)中、
は、水素原子、保護基、または下記化学式(3)で表される基であり、
は、水素原子、保護基、またはホスホロアミダイト基であり、
は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはメルカプト基であり、
【化3】
前記化学式(3)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
Zは、ヒドロキシル基またはイミダゾール基であり、
mは、1〜10の整数である。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチドの合成試薬。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を用い、ポリヌクレオチドを合成する合成工程を含むことを特徴とする、ポリヌクレオチドの製造方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を構成単位として含むことを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
候補ポリヌクレオチドとターゲットとを接触させる接触工程、および
前記ターゲットと結合した前記候補ポリヌクレオチドを、前記ターゲットに結合する結合核酸分子として選抜する選抜工程を含み、
前記候補ポリヌクレオチドが、請求項記載のポリヌクレオチドであることを特徴とする、結合核酸分子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオシド誘導体またはその塩、ポリヌクレオチドの合成試薬、ポリヌクレオチドの製造方法、ポリヌクレオチド、および結合核酸分子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中のターゲットを分析するために、ターゲットと結合する結合分子が用いられている。また、前記ターゲットに結合する結合分子としては、抗体に加え、アプタマー等のターゲットに結合する結合核酸分子も用いられている(特許文献1)。
【0003】
前記結合核酸分子の取得方法としては、多数の候補ポリヌクレオチドと、ターゲットを接触させ、前記候補ポリヌクレオチドにおいて前記ターゲットと結合するポリヌクレオチドを前記結合核酸分子として選抜するSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential Enrichment)法等が知られている。また、前記SELEX法により、結合核酸分子を取得する場合、前記結合核酸分子を構成する天然のヌクレオシド分子に加え、前記天然のヌクレオシド分子を修飾した、修飾ヌクレオシド分子も使用されている。
【0004】
しかしながら、公知の天然ヌクレオシドおよびその誘導体では、十分な結合能を有する結合核酸分子が得られないターゲットが存在する。このため、例えば、アプタマーの作製に使用可能な修飾ヌクレオシド誘導体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−200204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、新たなヌクレオシド誘導体またはその塩、ポリヌクレオチドの合成試薬、ポリヌクレオチドの製造方法、ポリヌクレオチド、および結合核酸分子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩は、下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】

前記化学式(1)中、
Suは、ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団またはヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団であり、保護基を有しても有しなくてもよく、
およびLは、それぞれ独立して、直鎖もしくは分枝状の飽和または不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基であり、
は、イミノ基(−NR−)、エーテル基(−O−)、またはチオエーテル基(−S−)であり、
は、水素原子または直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基である。
【0008】
本発明のポリヌクレオチドの合成試薬は、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を用い、ポリヌクレオチドを合成する合成工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のポリヌクレオチドは、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を構成単位として含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の結合核酸分子の製造方法は、候補ポリヌクレオチドとターゲットとを接触させる接触工程、および
前記ターゲットと結合した前記候補ポリヌクレオチドを、前記ターゲットに結合する結合核酸分子として選抜する選抜工程を含み、
前記候補ポリヌクレオチドが、前記本発明のポリヌクレオチドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たなヌクレオシド誘導体またはその塩を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例2におけるアミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフである。
図2図2は、実施例2における分泌型免疫グロブリンA(sIgA)結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。
図3図3は、実施例2におけるアミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフである。
図4図4は、実施例2における分泌型免疫グロブリンA(sIgA)結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。
図5図5は、実施例2におけるキャピラリー電気泳動の結果を示す写真である。
図6図6は、比較例における結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ヌクレオシド誘導体またはその塩>
本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩は、前述のように、下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【化1】

前記化学式(1)中、
Suは、ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団またはヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団であり、保護基を有しても有しなくてもよく、
およびLは、それぞれ独立して、直鎖もしくは分枝状の飽和または不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基であり、
は、イミノ基(−NR−)、エーテル基(−O−)、またはチオエーテル基(−S−)であり、
は、水素原子または直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基である。
【0015】
本発明のヌクレオシド誘導体は、プリン環またはピリミジン環様の構造を2つ含む。このため、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、分子内または分子間で相互作用可能な原子の数が、プリン環またはピリミジン環様の構造を1つ含むヌクレオシド誘導体より相対的に多い。このため、本発明のヌクレオシド誘導体を含む結合核酸分子は、例えば、プリン環またはピリミジン環様の構造を1つ含むヌクレオシド誘導体と比較して、ターゲットに対する結合能が向上する。このため、本発明のヌクレオシド誘導体によれば、例えば、ターゲットに対し優れた結合能を示す結合核酸分子を製造できる。
【0016】
前記化学式(1)において、LおよびLは、それぞれ独立して、直鎖または分枝状の飽和または不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基である。Lの炭素数は、その下限が、2であり、その上限が、10であり、好ましくは、8、6であり、その範囲が、例えば、2〜8、2〜6である。Lの炭素数は、2が好ましい。Lの炭素数は、その下限が、2であり、その上限が、10であり、好ましくは、8、6であり、その範囲が、例えば、2〜8、2〜6である。Lの炭素数は、2が好ましい。LおよびLの具体例としては、例えば、エチレン基(−CH−CH−)、ビニレン基(−CH=CH−)、プロピレン基(−CH−CH−CH−)、イソプロピレン基(−CH−CH(CH)−)、ブチレン基(−CH−CH−CH−CH−)、メチルブチレン基(−CH−CH(CH)−CH−CH−)、ジメチルブチレン基(−CH−CH(CH)−CH(CH)−CH−)、エチルブチレン基(−CH−CH(C5)−CH−CH−)、ペンチレン基(−CH−CH−CH−CH−CH−)、へキシレン基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH−)、ヘプチレン基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−)、オクチレン基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−)等があげられる。Lは、ビニレン基(−CH=CH−)が好ましい。また、Lは、エチレン基(−CH−CH−)が好ましい。LおよびLは、同じ炭化水素基でもよいし、異なる炭化水素基でもよく、後者の具体例として、Lは、ビニレン基(−CH=CH−)であり、Lは、エチレン基(−CH−CH−)であることが好ましい。
【0017】
前記化学式(1)において、X、イミノ基(−NR−)、エーテル基(−O−)、またはチオエーテル基(−S−)である。前記イミノ基において、Rは、水素原子または直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基であり、水素原子が好ましい。前記直鎖もしくは分枝状の飽和もしくは不飽和の炭素数2〜10の炭化水素基は、LおよびLにおける説明を援用できる。Xは、イミノ基(−NR−)が好ましい。Xは、NH基がより好ましい。
【0018】
前記化学式(1)において、前記ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団は、特に制限されず、公知の天然または人工ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団があげられる。前記天然ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団は、例えば、リボヌクレオシド残基におけるリボース骨格を有する原子団、デオキシリボヌクレオシドにおけるデオキシリボース骨格を有する原子団等があげられる。前記人工ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団は、例えば、人工ヌクレオシド残基における二環式の糖骨格を有する原子団があげられ、具体例として、ENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)、LNA(Locked Nucleic Acid)等における2’位の酸素原子と4’位の炭素原子とが、架橋されたリボース骨格を有する原子団等があげられる。前記ヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団は、特に制限されず、公知の天然または人工ヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団があげられる。前記天然ヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団は、例えば、リボヌクレオチド残基におけるリボース−リン酸骨格を有する原子団、デオキシリボヌクレオチドにおけるデオキシリボース−リン酸骨格を有する原子団等があげられる。前記人工ヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団は、例えば、人工ヌクレオチド残基における二環式の糖リン酸骨格を有する原子団があげられ、具体例として、ENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)、LNA(Locked Nucleic Acid)等における2’位の酸素原子と4’位の炭素原子とが、架橋されたリボース−リン酸骨格を有する原子団等があげられる。
【0019】
前記化学式(1)において、前記ヌクレオシド残基における糖骨格を有する原子団またはヌクレオチド残基における糖リン酸骨格を有する原子団は、下記化学式(2)で表されることが好ましい。
【化2】

前記化学式(2)中、
は、水素原子、保護基、または下記化学式(3)で表される基であり、
は、水素原子、保護基、またはホスホロアミダイト基であり、
は、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはメルカプト基であり、
【化3】
前記化学式(3)中、
Yは、酸素原子または硫黄原子であり、
Zは、ヒドロキシル基またはイミダゾール基であり、
mは、1〜10の整数である。
【0020】
前記化学式(2)において、Rは、水素原子、保護基、または前記化学式(3)で表される基である。前記保護基は、特に制限されず、例えば、核酸の合成方法において使用されている公知のヒドロキシル基の保護基があげられ、具体例として、DMTr基(4,4’−ジメトキシ(トリフェニルメチル)基)等があげられる。Rが前記化学式(3)で表される基である場合、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、ヌクレオチド誘導体ということもできる。
【0021】
前記化学式(2)において、Rは、水素原子、保護基、またはホスホロアミダイト基である。前記保護基は、特に制限されず、例えば、Rにおける説明を援用できる。前記ホスホロアミダイト基は、下記化学式(5)で表される。Rがホスホロアミダイト基である場合、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、ヌクレオシド誘導体のホスホロアミダイト化物ということもできる。また、Rが前記化学式(3)で表される基であり、Rがホスホロアミダイト基である場合、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、ヌクレオチド誘導体のホスホロアミダイト化物ということもできる。
【化5】
【0022】
前記化学式(2)において、Rは、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、またはメルカプト基であり、水素原子またはヒドロキシル基が好ましい。Rが水素原子の場合、本発明のヌクレオシド誘導体は、糖骨格として、デオキシリボース骨格を有し、例えば、DNAの合成に使用できる。また、Rがヒドロキシル基の場合、本発明のヌクレオシド誘導体は、糖骨格として、リボース骨格を有し、例えば、RNAの合成に使用できる。
【0023】
前記化学式(3)において、Yは、酸素原子または硫黄原子である。Yが酸素原子の場合、本発明のヌクレオシド誘導体を構成単位として含むポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合を有するポリヌクレオチドということもできる。また、Yが硫黄原子の場合、本発明のヌクレオシド誘導体を構成単位として含むポリヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を有するポリヌクレオチドということもできる。
【0024】
前記化学式(3)において、Zは、ヒドロキシル基またはイミダゾール基である。前記イミダゾール基において、イミダゾールは、例えば、1位の窒素原子を介して、リン酸原子に結合している。
【0025】
前記化学式(3)において、mは、1〜10の整数であり、好ましくは、1〜3、1〜2、1である。
【0026】
本発明のヌクレオシド誘導体は、下記化学式(4)で表されることが好ましい。以下、下記化学式(4)で表されるヌクレオシド誘導体を、IA8ともいう。
【化4】
【0027】
本発明のヌクレオシド誘導体およびその塩は、その鏡像異性体、互変異性体、または幾何異性体、配座異性体および光学異性体等の立体異性体ならびにそれらの塩であってもよい。具体的に、前記化学式(1)および後述する化学式において、糖骨格は、D体としているが、本発明のヌクレオシド誘導体は、これに限定されず、糖骨格をL体としてもよい。
【0028】
前記本発明のヌクレオシド誘導体の塩は、酸付加塩でもよいが、塩基付加塩でもよい。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でもよく、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でもよい。前記無機酸としては、特に制限されず、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、および過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸は、特に制限されず、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基は、特に制限されず、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基は、特に制限されず、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。
【0029】
本発明のヌクレオシド誘導体の製造方法は、特に制限されず、公知の合成方法を組合せて製造することができる。具体例として、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、後述する実施例の合成方法のように、6-chloropurineを出発原料とする4段階の反応によりチミジン誘導体を生成し、続いて、前記チミジン誘導体における5’水酸基の三リン酸化およびO6位の保護基の除去により合成することができる。
【0030】
<ポリヌクレオチドの合成試薬>
本発明のポリヌクレオチドの合成試薬(以下、「合成試薬」ともいう)は、前述のように、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を含むことを特徴とする。本発明の合成試薬は、前記本発明のヌクレオシド誘導体を含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の合成試薬は、例えば、前記本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩の説明を援用できる。本発明の合成試薬によれば、例えば、後述する本発明のポリヌクレオチドを合成できる。
【0031】
本発明の合成試薬において、前記ヌクレオシド誘導体は、例えば、前記ホスホロアミダイト化物および前記ヌクレオチド誘導体の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0032】
本発明の合成試薬は、例えば、さらに、ポリヌクレオチドの合成に使用する他の試薬を含んでもよい。
【0033】
<ポリヌクレオチドの製造方法>
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、前述のように、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を用い、ポリヌクレオチドを合成する合成工程を含むことを特徴とする。本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、前記合成工程において、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を用いることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、例えば、前記本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩および合成試薬の説明を援用できる。本発明のポリヌクレオチドの製造方法によれば、例えば、後述する本発明のポリヌクレオチドを製造できる。
【0034】
本発明のポリヌクレオチドの製造方法において、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩として、前記本発明の合成試薬を用いてもよい。
【0035】
前記合成工程において、前記ポリヌクレオチドの合成方法は、特に制限されず、公知のポリヌクレオチドの合成方法により実施できる。前記ヌクレオチド誘導体またはその塩として、前記ホスホロアミダイト化物を用いる場合、前記合成工程は、ホスホアミダイト法によりポリヌクレオチドを合成できる。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドの製造方法は、例えば、前記合成工程で得られたポリヌクレオチドを精製する精製工程を含んでもよい。前記精製工程における精製方法は、特に制限されず、カラムクロマトグラフ等の公知の精製方法により実施できる。
【0037】
<ポリヌクレオチド>
本発明のポリヌクレオチドは、前述のように、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を構成単位として含むことを特徴とする。本発明のポリヌクレオチドは、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を構成単位として含むことが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、前記本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩、ポリヌクレオチドの合成試薬、およびポリヌクレオチドの製造方法の説明を援用できる。本発明のポリヌクレオチドによれば、例えば、後述するように、ターゲットに結合する結合核酸分子を製造できる。本発明のポリヌクレオチドにおいて、前記構成単位は、例えば、ポリヌクレオチドの一部であることを意味する。
【0038】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、下記化学式(6)で表される構造を含む。下記化学式(6)における各置換基の説明は、例えば、前述の各置換基の説明を援用できる。
【化6】
【0039】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、ターゲットに結合する結合核酸分子であってもよい。前記ターゲットは、特に制限されず、任意のターゲットとでき、具体例として、生体分子があげられる。前記生体分子は、例えば、分泌型免疫グロブリンA(sIgA)、アミラーゼ、クロモグラニンA、β−ディフェンシン(Defensin)2、カリクレイン、C-Reactive Protein(CRP)、カルプロテクチン、Statherins、コルチゾル、メラトニン等があげられる。前記結合核酸分子は、例えば、後述する本発明の結合核酸分子の製造方法により製造できる。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、前記ヌクレオチド誘導体に加え、例えば、他のヌクレオチドを含んでもよい。前記ヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドがあげられる。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、デオキシリボヌクレオチドのみから構成されるDNA、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含むDNA/RNA、リボヌクレオチドのみから構成されるRNA等があげられる。前記他のヌクレオチドは、例えば、修飾ヌクレオチドでもよい。
【0041】
前記修飾ヌクレオチドは、例えば、修飾デオキシリボヌクレオチドおよび修飾リボヌクレオチドがあげられる。前記修飾ヌクレオチドは、例えば、前記ヌクレオチドにおける糖が修飾されたものがあげられる。前記糖は、例えば、デオキシリボースまたはリボースがあげられる。前記ヌクレオチドにおける修飾部位は、特に制限されず、例えば、前記糖の2’位および/または4’位があげられる。前記修飾は、例えば、メチル化、フルオロ化、アミノ化、チオ化等があげられる。前記修飾ヌクレオチドは、例えば、塩基としてピリミジン塩基(ピリミジン核)を有するヌクレオチドが修飾されたもの、または、塩基としてプリン塩基(プリン核)を有するヌクレオチドが修飾されたものがあげられ、好ましくは前者である。以下、ピリミジン塩基を有するヌクレオチドをピリミジンヌクレオチドといい、修飾されたピリミジンヌクレオチドを修飾ピリミジンヌクレオチドといい、プリン塩基を有するヌクレオチドをプリンヌクレオチドといい、修飾されたプリンヌクレオチドを修飾プリンヌクレオチドという。前記ピリミジンヌクレオチドは、例えば、ウラシルを有するウラシルヌクレオチド、シトシンを有するシトシンヌクレオチド、チミンを有するチミンヌクレオチド等があげられる。前記修飾ヌクレオチドにおいて、塩基がピリミジン塩基の場合、例えば、前記糖の2’位および/または4’位が修飾されていることが好ましい。前記修飾ヌクレオチドの具体例は、例えば、リボースの2’位が修飾された、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド等があげられる。
【0042】
前記他のヌクレオチドにおける塩基は、例えば、アデニン(a)、シトシン(c)、グアニン(g)、チミン(t)およびウラシル(u)の天然塩基(非人工塩基)でもよいし、非天然塩基(人工塩基)でもよい。前記人工塩基は、例えば、修飾塩基および改変塩基等があげられ、前記天然塩基(a、c、g、tまたはu)と同様の機能を有することが好ましい。前記同様の機能を有する人工塩基は、例えば、グアニン(g)に代えて、シトシン(c)に結合可能な人工塩基、シトシン(c)に代えて、グアニン(g)に結合可能な人工塩基、アデニン(a)に代えて、チミン(t)またはウラシル(u)に結合可能な人工塩基、チミン(t)に代えて、アデニン(a)に結合可能な人工塩基、ウラシル(u)に代えて、アデニン(a)に結合可能な人工塩基等があげられる。前記修飾塩基は、例えば、メチル化塩基、フルオロ化塩基、アミノ化塩基、チオ化塩基等があげられる。前記修飾塩基の具体例としては、例えば、2’−メチルウラシル、2’−メチルシトシン、2’−フルオロウラシル、2’−フルオロシトシン、2’−アミノウラシル、2’−アミノシトシン、2’−チオウラシル、2’−チオシトシン等があげられる。本発明において、例えば、a、g、c、tおよびuで表わされる塩基は、前記天然塩基の他に、前記天然塩基のそれぞれと同様の機能を有する前記人工塩基の意味も含む。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、前記ヌクレオチド誘導体に加え、例えば、人工核酸モノマーを含んでもよい。前記人工核酸モノマーは、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA、ENA等があげられる。前記モノマー残基における塩基は、例えば、前述と同様である。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドの長さは、特に制限されず、例えば、その下限は、10塩基、20塩基、25塩基であり、その上限は、例えば、150塩基、100塩基、70塩基であり、その範囲は、例えば、10〜150塩基、20〜100塩基、25〜70塩基である。
【0045】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、さらに付加配列を有してもよい。前記付加配列は、例えば、前記ポリヌクレオチドの5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは3’末端である。前記付加配列は、特に制限されず、また、その長さも特に制限されない。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、さらに標識物質を有してもよい。前記標識物質は、例えば、前記ポリヌクレオチドの5’末端および3’末端の少なくとも一方に結合していることが好ましく、より好ましくは5’末端である。前記標識物質は、特に制限されず、例えば、蛍光物質、色素、同位体、酵素等があげられる。前記蛍光物質は、例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy(登録商標)3色素、Cy(登録商標)5色素、FAM色素、ローダミン色素、テキサスレッド色素、JOE、MAX、HEX、TYE等の蛍光団があげられ、前記色素は、例えば、Alexa(登録商標)488、Alexa(登録商標)647等のAlexa色素等があげられる。
【0047】
前記標識物質は、例えば、前記核酸分子に直接的に連結してもよいし、前記付加配列を介して、間接的に連結してもよい。
【0048】
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、担体に固定化して使用できる。前記本発明のポリヌクレオチドは、例えば、5’末端および3’末端のいずれかを固定化することが好ましく、より好ましくは3’末端である。本発明のポリヌクレオチドを固定化する場合、例えば、前記ポリヌクレオチドは、前記担体に、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。後者の場合、例えば、前記付加配列を介して固定化することが好ましい。
【0049】
<結合核酸分子の製造方法>
本発明の結合核酸分子の製造方法は、前述のように、候補ポリヌクレオチドとターゲットとを接触させる接触工程、および前記ターゲットと結合した前記候補ポリヌクレオチドを、前記ターゲットに結合する結合核酸分子として選抜する選抜工程を含み、前記候補ポリヌクレオチドが、前記本発明のポリヌクレオチドであることを特徴とする。本発明の結合核酸分子の製造方法は、例えば、前記候補ポリヌクレオチドが、前記本発明のポリヌクレオチドであることが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。本発明の結合核酸分子の製造方法は、例えば、前記本発明のヌクレオシド誘導体またはその塩、合成試薬、ポリヌクレオチドの製造方法、およびポリヌクレオチドの説明を援用できる。本発明の結合核酸分子の製造方法において、前記候補ポリヌクレオチドは、前記本発明のヌクレオシド誘導体もしくはその塩を含むヌクレオチド誘導体またはその塩を構成単位として含む。このため、本発明の結合核酸分子の製造方法によれば、例えば、ターゲットに対し優れた結合能を示す結合核酸分子を製造できる。
【0050】
本発明の結合核酸分子の製造方法において、前記接触工程および前記選抜工程は、例えば、SELEX法に基づき実施できる。
【0051】
前記接触工程における候補ポリヌクレオチドの数は、特に制限されず、例えば、420〜4120種類(約1012〜1072)種類、430〜460(約1018〜1036)種類である。
【0052】
前記接触工程では、候補ポリヌクレオチドとターゲットとを接触させる。そして、この接触により、前記候補ポリヌクレオチドと前記ターゲットとを反応させ、前記候補ポリヌクレオチドと前記ターゲットとの複合体を形成する。前記接触工程において使用する前記ターゲットは、例えば、前記ターゲットそのものであってもよいし、前記ターゲットの分解物であってもよい。前記候補ポリヌクレオチドと前記ターゲットとの結合条件は、特に制限されず、例えば、前記両者を溶媒中で一定時間インキュベートすることで実施できる。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、前記両者の結合等が保持されるものが好ましく、具体例として、各種緩衝液があげられる。
【0053】
つぎに、前記選抜工程では、前記ターゲットと結合した前記候補ポリヌクレオチドを、前記ターゲットに結合する結合核酸分子として選抜する。具体的には、前記ターゲットと複合体を形成した候補ポリヌクレオチドを、前記結合核酸分子として回収する。なお、前記接触工程後の前記候補ポリヌクレオチドと前記ターゲットとの混合物には、前記複合体の他に、例えば、前記複合体形成に関与しない候補ポリヌクレオチドが含まれる。このため、例えば、前記混合物から、前記複合体と、前記未反応の候補ポリヌクレオチドとを、分離することが好ましい。前記分離方法は、特に制限されず、例えば、前記ターゲットと前記候補ポリヌクレオチドとの吸着性の違いや、前記複合体と前記候補ポリヌクレオチドとの分子量の違いを利用する方法等があげられる。
【0054】
この他にも、例えば、前記複合体の形成時において、担体に固定化したターゲットを使用する方法もあげられる。すなわち、前記ターゲットを予め担体に固定化し、前記担体と前記候補ポリヌクレオチドとを接触させ、前記固定化ターゲットと候補ポリヌクレオチドとの複合体を形成させる。そして、前記固定化ターゲットに結合していない未反応の候補ポリヌクレオチドを除去した後、前記担体から、前記ターゲットと前記候補ポリヌクレオチドとの複合体を解離させればよい。前記ターゲットの担体への固定化方法は、特に制限されず、公知の方法により実施できる。前記担体は、特に制限されず、公知の担体が使用できる。
【0055】
このようにして、前記ターゲットに結合する結合核酸分子を製造できる。
【0056】
本発明の製造方法は、例えば、前記選抜された結合核酸分子の塩基配列を決定する塩基配列決定工程を含んでもよい。前記塩基配列の決定方法は、特に制限されず、公知の塩基配列の決定方法により実施できる。
【0057】
本発明の結合核酸分子の製造方法は、例えば、前記接触工程および前記選抜工程の1セットを1サイクルとして、合計2サイクル以上実施してもよく、具体例として、3〜15サイクルがあげられる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0059】
[実施例1]
以下に示す合成例により、IA8を調製した。
【0060】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、質量分析装置(API2000、販売元:Applied Biosystems社製)を用い、ポジティブイオンモードまたはネガティイオンモードで実施した。1H NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(JNM-ECS400、JEOL社製)を用い、取得した。化学シフトは、内部標準であるテトラメチルシラン(MeSi)に対する相対値δ(ppm)として表される。イオン交換クロマトグラフは、クロマトグラフシステム(ECONO system、Bio-Rad社製)を用いて実施した。前記イオン交換クロマトグラフでは、diethylaminoethyl(DEAE)A-25-Sephadex(Amershambiosciences社製)を充填したガラスカラム(φ25×500mm)を使用した。
【0061】
(合成例1)TB4の合成
【化7】
【0062】
2-Bromethylamine Hydrobromide(501mg、2.28mmol)を量り取り1.4-dioxan(5ml)で懸濁させ、氷浴で30分撹拌させた。Di-tert-butyl dicarbonate(558mg、2.56mmol、1.1eq.)を入れ、トリエチルアミン(318μL、2.28mmol、1eq.)を滴下した。そのまま氷浴下で30分撹拌させた後、室温で48時間撹拌させた。吸引濾過で沈殿物を除去し、ろ液を回収した。ジクロロメタンで溶解させ、蒸留水で二回分液した。有機相に硫酸マグネシウムを入れろ過した。ろ液を減圧留去し、液状のTB4を得た。TB4の物性値を以下に示す。
収量:0.443g 収率:86.7%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found= 223.2, calculated for [(M+H)+]= 223.0
1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ7.27 (1H, s) 3.53 (2H, t) 3.46 (2H, t) 1.45 (9H, s)
【0063】
(合成例2)IA1の合成
【化8】
【0064】
6-chloropurine(107mg、692μmol)をAr置換し、dry-DMFで懸濁させ、氷浴で30分撹拌させた。NaH(32mg、1.31mmol、1.9eq.)を入れ、氷冷下で2時間撹拌させた。dry-DMFで溶かしたTB4(352mg、1.57mmol、2.2eq.)を加え、室温で撹拌させた。反応終了後、減圧留去した。クロロホルムで懸濁させろ過し、ろ液を回収した。回収したろ液を水で分液し、有機相をカラムクロマトグラフで精製しIA1を得た。IA1の物性値を以下に示す。
収量:108mg 収率:52.4%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found= 296.2, calculated for [(M+H)+]= 296.1
1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ8.75 (1H, s) 8.10 (1H, s) 4.47 (2H, t) 3.60 (2H, q) 1.39 (9H, s)
【0065】
(合成例3)IA2の合成
【化9】
【0066】
IA1(130mg、4.38×10−4mol)をAr置換しdry-CH2Cl2(1.5mL)で懸濁させ、氷浴で30分撹拌し1-Methylpyrrolidine(126μL、1.21mmol、3eq.)を入れ氷浴でさらに30分撹拌した。Ethylene Cyanohydrin(90μL、1.32mmol、3eq.)とDBU(29μL、1.94×10−4mol、0.46eq.)を加え氷浴で反応した。反応終了後、水で2回分液し、有機相をカラムクロマトグラフで精製しIA2を得た。IA2の物性値を以下に示す。
収量:78mg 収率:53%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 333.1, calculated for [(M+H)+] = 333.2
found = 355.3, calculated for [(M+Na)+] = 355.2
1HNMR (400 MHz, CDCl3) δ8.53 (1H, s), 7.94 (1H, s), 4.85 (2H, t), 4.43 (2H, t), 3.59 (2H, q), 3.00 (2H, t), 1.41 (1H, s)
【0067】
(合成例4)IA3の合成
【化10】
【0068】
IA2(118mg、3.55mmol)をメタノール(1mL)で溶解し、Trifluoroacetate(5mL)を滴下し、室温で反応した。反応終了後、減圧留去しジエチルエーテルで懸濁させろ過した。ろ物を回収しIA3を得た。IA3の物性値を以下に示す。
収量:128mg 収率:104.1%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 233.1, calculated for [(M+H)+] = 233.2
found = 255.2, calculated for [(M+Na)+] = 255.2
found = 271.2, calculated for [(M+K)+] = 271.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.68 (1H, s), 8.49 (1H, s), 4.84 (2H, t), 4.60 (2H, t), 3.24 (2H, t)
【0069】
(合成例5)IA4の合成
【化11】
【0070】
Ar置換した(E)-5-(2-Carboxyrinyl)-2′-deoxyuridine(98mg、3.29×10−4mol)にHOBt・H2O(69mg、4.51×10−4mol、1.3eq.)とPyBOP(223mg、4.42×10−4mol、1.3eq.)を加え、dry-DMF(1mL)で溶解し、DIPEA(1.18mL、6.61mmol、20eq.)を加えた。これを、Ar置換しdry-DMF(0.5mL)で溶かしたIA3(128mg、3.70×10−4mol、1.1eq.)に滴下し、室温で反応した。反応終了後、減圧留去し、CDCl3で懸濁させソニケーションし、ろ過した。ろ物を回収し、MeOHで懸濁させソニケーションしろ過した。ろ物を回収しIA4を得た。IA4の物性値を以下に示す。
収量:84mg 収率:49.7%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 513.1, calculated for [(M+H)+] = 513.2,
found = 535.2, calculated for [(M+Na)+] = 535.2,
found = 551.1, calculated for [(M+K)+] = 551.2,
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 511.3, calculated for [(M-H)-] = 511.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.51 (1H, s), 8.30 (1H, s), 8.22 (1H,s), 7.05 (1H, d), 6.89 (1H, d), 6.11 (1H, t), 5.25 (2H, d), 5.13 (1H, t), 4.70 (2H, t), 4.32 (2H, t), 3.77 (1H, d), 3.58 (2H, m), 3.11 (2H, t), 2.12 (2H, m)
【0071】
(合成例6)IA5の合成
【化12】
【0072】
真空乾燥させたIA4(80mg、1.56×10−4mol)をアルゴン下でdry-DMF(20mL)で2回、dry-MeCN(10mL)で3回共沸し、dry-Trimetyl phosphate(30mL)で懸濁させ、氷浴下でPhosphoryl chloride(620μL、6.65×10−4mol、42.6eq.)を加えて19時間撹拌させた。その後、1mol/L TEAB bufferを加え15分程撹拌した。減圧留去し、EtherとMeCNで結晶化させ、ろ過し黄色沈殿物を回収した。これを水に溶かし、陰イオン交換カラムクロマトグラフにより精製し凍結乾燥させることでIA5を得た。IA5の物性値を以下に示す。
収量:57.96μmol 収率:37%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 590.9, calculated for [(M-H)-] = 591.1
【0073】
(合成例7)IA6の合成
【化13】
【0074】
真空乾燥させたIA5(57.96μmol)をdry-Pyridine(5ml)で3回共沸し、一晩真空乾燥させた。Ar置換しdry-DMF(2mL)とdry-TEA(55μL、3.95×10−4mol、6.8eq.)で溶かし、Imidazole(26mg、3.82×10−4mol、6.6eq.)、2,2’-Dithiodipyridine(24mg、1.09×10−4mol、1.9eq.)、Triphenylphosphine(30mg、1.37×10−4mol、2eq.)を加えて室温で撹拌した。9時間後、Sodium perchlorate(86mg、7.02×10−4mol、12eq.)をdry-Acetone(18mL)、dry-Ether(27mL)、dry-TEA(2mL)で溶かした溶液に反応液を入れ、4℃で30分静置し、沈殿物をdry-Ether(12mL)で2回デカンテーションした。この沈殿物を真空乾燥させIA6をクルードとして得た。IA6の物性値を以下に示す。
理論収量:57.96μmol
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 641.3, calculated for [(M-H)-] = 641.2
【0075】
(合成例8)IA7の合成
【化14】
【0076】
真空乾燥させたIA6(57.96μmol)をAr置換し、dry-Pyridine(5mL)で2回共沸した後、dry-DMF(1mL)で懸濁させ、dry-n-Tributylamine(55μL、2.30×10−4mol、4eq.)と0.5mol/L n-Tributylamine pyrophosphate in DMF(0.6mL、2.96×10−4mol、5eq.)を加え、室温で撹拌させた。12時間後、1mol/L TEAB buffer(5mL)を加え30分撹拌させ、減圧留去した。これに水を加えてEtherで2回分液し水層を陰イオン交換カラムクロマトグラフと逆相カラムクロマトグラフを用いて精製し、凍結乾燥することでIA7を得た。IA7の物性値を以下に示す。
粗収量:16.65μmol 収率:28.7%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 751.0, calculated for [(M-H)-] = 751.1
【0077】
(合成例9)IA8の合成
【化15】
【0078】
IA7(12.49μmol)をMeOH(500μL)に溶解し28%NH3(1500μL)、トリエチルアミン(300μL)を加え、1.5時間室温で反応した。反応終了後、減圧留去し凍結乾燥することでIA8を得た。IA8の物性値を以下に示す。
収量:8.39μmol 収率:67.2%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 697.9, calculated for [(M-H)-] = 699.1
【0079】
[実施例2]
IA8を用いて、sIgAに結合する結合核酸分子およびアミラーゼに結合する結合核酸分子を取得できることを確認した。
【0080】
(1)結合核酸分子
アデニン、グアニンまたはシトシンを含むデオキシリボヌクレオチド(それぞれ、dATP、dGTP、およびdCTP)に加え、デオキシリボヌクレオチドとしてIA8を用いて作製した候補ポリヌクレオチドを用いた以外は、SELEX法によりターゲットに対する結合核酸分子を取得した。具体的には、ビーズ(Dynabeads MyOne Carboxylic Acid、Invitrogen社)にターゲットであるsIgA(MP Biomedicals,LLC-Cappel Products社製)またはヒト唾液アミラーゼ(Lee BioSolutions, Inc社製)を、添付のプロトコルに基づいて結合させた。前記結合後、セレクションバッファー(SBバッファー:40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl、0.01%Tween(登録商標)20、pH7.5)で洗浄し、ターゲットビーズを調製した。5’末端をビオチン修飾した相補鎖(フォワード(Fw)プライマー領域−N30(30塩基)−リバース(Rv)プライマー領域)と、フォワードプライマーおよびDNAポリメラーゼ(KOD Dash、東洋紡社製)と、dATP、dGTP、dCTPおよびIA8とを用いて、IA8が挿入されたdsDNAを調製した。つぎに、前記ビーズ(Dynabeads MyOne Carboxylic Acid)に前記dsDNAを結合させた後、0.02mol/L NaOH水溶液によりss(single strand)DNAを溶出した。さらに、0.08mol/L 塩酸水溶液で中和することで、ssDNAのライブラリを調製した。20pmolのライブラリを250μgの前記ターゲットビーズと25℃、15分の条件で混合後、前記SBバッファーでビーズを洗浄した。そして、7mol/Lの尿素水溶液によりビーズ結合ssDNAを溶出した。溶出したssDNAを前記フォワードプライマーとビオチン修飾したリバースプライマーとを用いてPCRにより増幅した。なお、前記PCRでは、デオキシリボヌクレオチドとして、dATP、チミンを含むデオキシリボヌクレオチド(dTTP)、dGTP、およびdCTPを用いた。得られたdsDNAを磁気ビーズ(Dynabeads MyOne SA C1 magnetic beads、Invitrogen社製)に結合させた後、0.02mol/L NaOH水溶液によりフォワード鎖を溶出し、除去した。前記除去後、前記磁気ビーズを前記SBバッファーで洗浄した。前記相補鎖が固相化された磁気ビーズと、フォワードプライマーおよびDNAポリメラーゼ(KOD Dash、東洋紡社製)と、dATP、dGTP、dCTP、およびIA8とを用いて、前述の方法でIA8が挿入されたdsDNAを調製した。つぎに、0.02mol/L NaOH水溶液によりフォワード鎖を溶出することによりssDNAのライブラリを調製し、このライブラリを次のラウンドに使用した。同様の工程を8ラウンド実施することで、sIgAまたはアミラーゼに結合する核酸分子をセレクション後、フォワードプライマーと、ビオチン修飾していないリバースプライマーを用いてPCRを行なった。そして、シーケンサー(GS junior sequencer、Roche社製)により、得られた核酸分子のシーケンスを行った。
【0081】
この結果、アミラーゼに対する結合核酸分子として、下記配列番号1の塩基配列からなる結合核酸分子が、sIgAに対する結合核酸分子として、下記配列番号2の塩基配列からなる結合核酸分子が得られた。下記配列番号1および2の塩基配列において、下線で示すTが、IA8である。
アミラーゼ結合核酸分子(配列番号1)
5’-GGAATCAGTCCGCCGCTAATACGCTGGTATGGTTGAAGTGCGTATTAGACATGTGAACGATCCTGTGCCCGATAAAG-3’
sIgA結合核酸分子(配列番号2)
5’-GGAATCAGTCCGCCGCTAATACTAGTCATCGCTTTTAATTTCGCATTGTACCGTGAACGATCCTGTGCCCGATAAAG-3’
【0082】
(2)表面プラズモン共鳴(SPR)による結合の確認
前記アミラーゼ結合核酸分子とアミラーゼとの結合および前記sIgA結合核酸分子とsIgAとの結合を下記SPR条件により測定した。なお、前記アミラーゼ結合核酸分子および前記sIgA結合核酸分子は、下記リガンド2として、その3’末端に20塩基長のポリdTを付加したものを使用した。さらに、コントロールは、前記アミラーゼ結合核酸分子の結合を確認する系では、下記アナライトとして、前記sIgA、クロモグラニンA(CgA、Creative BioMart社製)、および牛血清アルブミン(BSA)を用い、前記sIgA結合核酸分子の結合を確認する系では、下記アナライトとして、前記アミラーゼ、CgA、およびBSAを用いた以外は、同様にして結合を確認した。
【0083】
(SPR測定条件)
測定装置:ProteOn(商標)XPR36(BioRad社製)
測定チップ:ProteOn(商標)NLC Sensor Chip(BioRad社製)
リガンド1:5’末端をビオチン修飾したpolydT(20塩基長):5μmol/L
バッファー:40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、1mmol/L MgCl、5mmol/L KCl、0.01% Tween(登録商標)20、pH7.4
リガンド2:200nmol/Lの3’末端にpolyA(20塩基長)を付加した結合核酸分子を含むバッファー
Ligand Flow Rate:25μL/min、80sec
アナライト(Analyte):400nmol/Lのターゲットを含むバッファー
Analyte Flow Rate:50μL/min
Contact Time:120sec
Dissociation:300sec
・アミラーゼ:α−アミラーゼ(Lee Biosolutions社製、カタログ番号:#120-10)
・sIgA: IgA (Secretory) ,Human(MP Biomedicals, LLC-Cappel Products社製、カタログ番号:#55905)
・CgA:Recombinant full length Human Chromogranin A(Creative BioMart社製、カタログ番号:#CHGA-26904TH)
・BSA:Bovine Serum Albumin(SIGMA社製、カタログ番号:#A7906)
【0084】
前記リガンド2のインジェクション後、シグナル強度(RU)の測定を行い、前記リガンド2のインジェクション開始を0秒として、115〜125秒におけるRUの平均値(RU115−125)を求めた。そして、前記ビオチン化ポリdAに前記ポリT付加アプタマーを結合させた時におけるRU値(RUimmob)とRU115−125との比(RU115−125/RUimmob)を算出した。
【0085】
図1(A)および(B)は、前記アミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフである。図1(A)において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。図1(B)において、横軸は、アナライトの種類を示し、縦軸は、RU115−125/RUimmobを示す。図1(A)および(B)に示すように、前記アミラーゼ結合核酸分子は、いずれのコントロールに対しても結合しないのに対し、前記アミラーゼ結合核酸分子は、アミラーゼに結合した。
【0086】
図2(A)および(B)は、前記sIgA結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。図2(A)において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。図2(B)において、横軸は、アナライトの種類を示し、縦軸は、RU115−125/RUimmobを示す。図2(A)および(B)に示すように、前記sIgA結合核酸分子は、いずれのコントロールに対しても結合しないのに対し、前記sIgA結合核酸分子は、sIgAに結合した。
【0087】
これらのことから、本発明のヌクレオシド誘導体であるIA8を用いて、アミラーゼに結合する結合核酸分子およびsIgAに結合する結合核酸分子を取得できることがわかった。
【0088】
(3)結合力の確認
前記リガンド2として、3’末端に20塩基長polyTを付加した前記アミラーゼ結合核酸分子を用い、アナライトであるアミラーゼの濃度を、12.5、25、50、100、または200nmol/Lとした以外は、前記(2)と同様にして、結合力の相対値(RU)を測定した。また、前記リガンド2として、3’末端に20塩基長polyTを付加した前記sIgA結合核酸分子を用い、アナライトであるsIgAの濃度を、12.5、25、50、100、または200nmol/Lとした以外は、前記(2)と同様にして、結合力の相対値(RU)を測定した。
【0089】
図3は、前記アミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフであり、図4は、前記sIgA結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。図3および図4において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。図3に示すように、前記アミラーゼ結合核酸分子は、アミラーゼの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。また、図4に示すように、前記sIgA結合核酸分子は、sIgAの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
【0090】
前記結合力の相対値(RU)に基づき、前記アミラーゼ結合核酸分子と前記アミラーゼとの解離定数、および前記sIgA結合核酸分子と前記sIgAとの解離定数を算出した。この結果、前記アミラーゼ結合核酸分子と前記アミラーゼとの解離定数は、38.6nMであり、前記sIgA結合核酸分子と前記sIgAとの解離定数は、3.61nMであった。これらの結果から、いずれの結合核酸分子も極めて優れたターゲットとの結合能を有することがわかった。
【0091】
(4)キャピラリー電気泳動による結合の確認
前記アミラーゼ結合核酸分子とアミラーゼとの結合を下記キャピラリー電気泳動条件により測定した。なお、前記アミラーゼ結合核酸分子は、キット付属の蛍光色素で標識化したものを使用した。コントロールは、前記ターゲットにおいて、アミラーゼを添加しなかった以外は同様にして、測定した。
【0092】
(キャピラリー電気泳動条件)
測定装置:SV1210形コスモアイ(日立ハイテクノロジー社)
測定チップ:i-チップ12(HitachiChemical社)
泳動ゲル:0.6%(Hydroxypropyl)methyl cellulose, viscosity 2.600-5,600(SIGMA社製、カタログ番号: #H7509)
ゲル溶解バッファー:40mmol/L HEPES(pH7.5)、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
クローン:600nmol/Lのキット付属の蛍光色素で標識化したアミラーゼ結合核酸分子、40mmol/L HEPES(pH7.5)、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgClを含む溶液
ターゲット:5.9μmol/Lのアミラーゼ(α-Amylase - High Purity ,Human 、Lee BioSolutions, Inc.社製、カタログ番号:#120-10)、40mmol/L HEPES(pH7.5)、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgClを含む溶液
Folding:95℃、5min後、On ice 5min
Mixing:ターゲットを添加後、室温(25℃前後)、30分間、1000rpm
Injection Voltage:300V
Injection Time:120sec
Separation Voltage:350V
Separation Time:260sec
【0093】
この結果を図5に示す。図5は、キャピラリー電気泳動の結果を示す写真である。図5において、写真の左側は、泳動時間を示し、各レーンは、左から、コントロール(アミラーゼ無し)およびアミラーゼありの結果を示す。図5に示すように、アミラーゼ無しのコントロールと比較して、アミラーゼありの場合、泳動時間が長くなった。これらの結果から、前記アミラーゼ結合核酸分子が、アミラーゼと結合することが分かった。
【0094】
[比較例]
天然塩基のみを用いた場合、アミラーゼに結合する結合核酸分子を取得できないことを確認した。特に示さない限り、実施例2と同様の操作を行った。
【0095】
アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンを含むデオキシリボヌクレオチド(それぞれ、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTP)を用いて候補ポリヌクレオチドを合成し、SELEX法を行った。そして、得られた結合核酸分子について、SPRによるアミラーゼへの結合の確認を行った。前記核酸分子の配列を以下に示す。
AML2196R8m4(配列番号3)
GGTAAGACTCCCGCCAGATTTGGGTGGGGGGCGGGGGTGGAGGAGGTGGCGGTGAAGCCCTCGGTCGAAATC
AML1217R8m4(配列番号4)
GGAAACCCTGCGTCCTGAAATTGCGCTGCGATAGTGAAGGCATAACAGGTTCACTCATCTGTGCTGGCGGAATAG
【0096】
この結果を図6に示す。図6は、前記結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフであり、横軸は、結合核酸分子の種類を示し、縦軸は、RU115−125/RUimmobを示す。各グラフにおいて、左から、アミラーゼ、sIgA、CgA、BSAの結果を示す。図6において、得られた核酸分子は、いずれも、アミラーゼに対する結合力(RU115−125/RUimmob)が、約0であった。また、ターゲット以外の物質に対する交差反応もみられた。
【0097】
このことから、天然塩基のみでは、アミラーゼに結合する結合核酸分子を得ることができないことがわかった。
【0098】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0099】
この出願は、2016年11月28日に出願された日本出願特願2016−230196を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、新たなヌクレオシド誘導体またはその塩を提供できる。また、本発明のヌクレオシド誘導体は、プリン環またはピリミジン環様の構造を2つ含む。このため、本発明のヌクレオシド誘導体は、例えば、分子内または分子間で相互作用可能な原子の数が、プリン環またはピリミジン環様の構造を1つ含むヌクレオシド誘導体より相対的に多い。このため、本発明のヌクレオシド誘導体を含む結合核酸分子は、例えば、プリン環またはピリミジン環様の構造を1つ含むヌクレオシド誘導体と比較して、ターゲットに対する結合能が向上する。このため、本発明のヌクレオシド誘導体によれば、例えば、ターゲットに対し優れた結合能を示す結合核酸分子を製造できる。したがって、本発明は、例えば、分析分野、医療分野、ライフサイエンス分野等の分野において、極めて有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]