【実施例】
【0058】
以下に実施例を示して、本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコルに基づいて使用した。
【0059】
[実施例1]
以下に示す合成例により、IA8を調製した。
【0060】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、質量分析装置(API2000、販売元:Applied Biosystems社製)を用い、ポジティブイオンモードまたはネガティイオンモードで実施した。
1H NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(JNM-ECS400、JEOL社製)を用い、取得した。化学シフトは、内部標準であるテトラメチルシラン(Me
4Si)に対する相対値δ(ppm)として表される。イオン交換クロマトグラフは、クロマトグラフシステム(ECONO system、Bio-Rad社製)を用いて実施した。前記イオン交換クロマトグラフでは、diethylaminoethyl(DEAE)A-25-Sephadex(Amershambiosciences社製)を充填したガラスカラム(φ25×500mm)を使用した。
【0061】
(合成例1)TB4の合成
【化7】
【0062】
2-Bromethylamine Hydrobromide(501mg、2.28mmol)を量り取り1.4-dioxan(5ml)で懸濁させ、氷浴で30分撹拌させた。Di-tert-butyl dicarbonate(558mg、2.56mmol、1.1eq.)を入れ、トリエチルアミン(318μL、2.28mmol、1eq.)を滴下した。そのまま氷浴下で30分撹拌させた後、室温で48時間撹拌させた。吸引濾過で沈殿物を除去し、ろ液を回収した。ジクロロメタンで溶解させ、蒸留水で二回分液した。有機相に硫酸マグネシウムを入れろ過した。ろ液を減圧留去し、液状のTB4を得た。TB4の物性値を以下に示す。
収量:0.443g 収率:86.7%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found= 223.2, calculated for [(M+H)
+]= 223.0
1HNMR(400 MHz, CDCl
3) δ7.27 (1H, s) 3.53 (2H, t) 3.46 (2H, t) 1.45 (9H, s)
【0063】
(合成例2)IA1の合成
【化8】
【0064】
6-chloropurine(107mg、692μmol)をAr置換し、dry-DMFで懸濁させ、氷浴で30分撹拌させた。NaH(32mg、1.31mmol、1.9eq.)を入れ、氷冷下で2時間撹拌させた。dry-DMFで溶かしたTB4(352mg、1.57mmol、2.2eq.)を加え、室温で撹拌させた。反応終了後、減圧留去した。クロロホルムで懸濁させろ過し、ろ液を回収した。回収したろ液を水で分液し、有機相をカラムクロマトグラフで精製しIA1を得た。IA1の物性値を以下に示す。
収量:108mg 収率:52.4%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found= 296.2, calculated for [(M+H)
+]= 296.1
1HNMR(400 MHz, CDCl
3) δ8.75 (1H, s) 8.10 (1H, s) 4.47 (2H, t) 3.60 (2H, q) 1.39 (9H, s)
【0065】
(合成例3)IA2の合成
【化9】
【0066】
IA1(130mg、4.38×10
−4mol)をAr置換しdry-CH2Cl2(1.5mL)で懸濁させ、氷浴で30分撹拌し1-Methylpyrrolidine(126μL、1.21mmol、3eq.)を入れ氷浴でさらに30分撹拌した。Ethylene Cyanohydrin(90μL、1.32mmol、3eq.)とDBU(29μL、1.94×10
−4mol、0.46eq.)を加え氷浴で反応した。反応終了後、水で2回分液し、有機相をカラムクロマトグラフで精製しIA2を得た。IA2の物性値を以下に示す。
収量:78mg 収率:53%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 333.1, calculated for [(M+H)
+] = 333.2
found = 355.3, calculated for [(M+Na)
+] = 355.2
1HNMR (400 MHz, CDCl
3) δ8.53 (1H, s), 7.94 (1H, s), 4.85 (2H, t), 4.43 (2H, t), 3.59 (2H, q), 3.00 (2H, t), 1.41 (1H, s)
【0067】
(合成例4)IA3の合成
【化10】
【0068】
IA2(118mg、3.55mmol)をメタノール(1mL)で溶解し、Trifluoroacetate(5mL)を滴下し、室温で反応した。反応終了後、減圧留去しジエチルエーテルで懸濁させろ過した。ろ物を回収しIA3を得た。IA3の物性値を以下に示す。
収量:128mg 収率:104.1%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 233.1, calculated for [(M+H)
+] = 233.2
found = 255.2, calculated for [(M+Na)
+] = 255.2
found = 271.2, calculated for [(M+K)
+] = 271.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ8.68 (1H, s), 8.49 (1H, s), 4.84 (2H, t), 4.60 (2H, t), 3.24 (2H, t)
【0069】
(合成例5)IA4の合成
【化11】
【0070】
Ar置換した(E)-5-(2-Carboxyrinyl)-2′-deoxyuridine(98mg、3.29×10
−4mol)にHOBt・H2O(69mg、4.51×10
−4mol、1.3eq.)とPyBOP(223mg、4.42×10
−4mol、1.3eq.)を加え、dry-DMF(1mL)で溶解し、DIPEA(1.18mL、6.61mmol、20eq.)を加えた。これを、Ar置換しdry-DMF(0.5mL)で溶かしたIA3(128mg、3.70×10
−4mol、1.1eq.)に滴下し、室温で反応した。反応終了後、減圧留去し、CDCl3で懸濁させソニケーションし、ろ過した。ろ物を回収し、MeOHで懸濁させソニケーションしろ過した。ろ物を回収しIA4を得た。IA4の物性値を以下に示す。
収量:84mg 収率:49.7%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 513.1, calculated for [(M+H)
+] = 513.2,
found = 535.2, calculated for [(M+Na)
+] = 535.2,
found = 551.1, calculated for [(M+K)
+] = 551.2,
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 511.3, calculated for [(M-H)
-] = 511.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d
6) δ8.51 (1H, s), 8.30 (1H, s), 8.22 (1H,s), 7.05 (1H, d), 6.89 (1H, d), 6.11 (1H, t), 5.25 (2H, d), 5.13 (1H, t), 4.70 (2H, t), 4.32 (2H, t), 3.77 (1H, d), 3.58 (2H, m), 3.11 (2H, t), 2.12 (2H, m)
【0071】
(合成例6)IA5の合成
【化12】
【0072】
真空乾燥させたIA4(80mg、1.56×10
−4mol)をアルゴン下でdry-DMF(20mL)で2回、dry-MeCN(10mL)で3回共沸し、dry-Trimetyl phosphate(30mL)で懸濁させ、氷浴下でPhosphoryl chloride(620μL、6.65×10
−4mol、42.6eq.)を加えて19時間撹拌させた。その後、1mol/L TEAB bufferを加え15分程撹拌した。減圧留去し、EtherとMeCNで結晶化させ、ろ過し黄色沈殿物を回収した。これを水に溶かし、陰イオン交換カラムクロマトグラフにより精製し凍結乾燥させることでIA5を得た。IA5の物性値を以下に示す。
収量:57.96μmol 収率:37%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 590.9, calculated for [(M-H)
-] = 591.1
【0073】
(合成例7)IA6の合成
【化13】
【0074】
真空乾燥させたIA5(57.96μmol)をdry-Pyridine(5ml)で3回共沸し、一晩真空乾燥させた。Ar置換しdry-DMF(2mL)とdry-TEA(55μL、3.95×10
−4mol、6.8eq.)で溶かし、Imidazole(26mg、3.82×10
−4mol、6.6eq.)、2,2’-Dithiodipyridine(24mg、1.09×10
−4mol、1.9eq.)、Triphenylphosphine(30mg、1.37×10
−4mol、2eq.)を加えて室温で撹拌した。9時間後、Sodium perchlorate(86mg、7.02×10
−4mol、12eq.)をdry-Acetone(18mL)、dry-Ether(27mL)、dry-TEA(2mL)で溶かした溶液に反応液を入れ、4℃で30分静置し、沈殿物をdry-Ether(12mL)で2回デカンテーションした。この沈殿物を真空乾燥させIA6をクルードとして得た。IA6の物性値を以下に示す。
理論収量:57.96μmol
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 641.3, calculated for [(M-H)
-] = 641.2
【0075】
(合成例8)IA7の合成
【化14】
【0076】
真空乾燥させたIA6(57.96μmol)をAr置換し、dry-Pyridine(5mL)で2回共沸した後、dry-DMF(1mL)で懸濁させ、dry-n-Tributylamine(55μL、2.30×10
−4mol、4eq.)と0.5mol/L n-Tributylamine pyrophosphate in DMF(0.6mL、2.96×10
−4mol、5eq.)を加え、室温で撹拌させた。12時間後、1mol/L TEAB buffer(5mL)を加え30分撹拌させ、減圧留去した。これに水を加えてEtherで2回分液し水層を陰イオン交換カラムクロマトグラフと逆相カラムクロマトグラフを用いて精製し、凍結乾燥することでIA7を得た。IA7の物性値を以下に示す。
粗収量:16.65μmol 収率:28.7%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 751.0, calculated for [(M-H)
-] = 751.1
【0077】
(合成例9)IA8の合成
【化15】
【0078】
IA7(12.49μmol)をMeOH(500μL)に溶解し28%NH3(1500μL)、トリエチルアミン(300μL)を加え、1.5時間室温で反応した。反応終了後、減圧留去し凍結乾燥することでIA8を得た。IA8の物性値を以下に示す。
収量:8.39μmol 収率:67.2%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 697.9, calculated for [(M-H)
-] = 699.1
【0079】
[実施例2]
IA8を用いて、sIgAに結合する結合核酸分子およびアミラーゼに結合する結合核酸分子を取得できることを確認した。
【0080】
(1)結合核酸分子
アデニン、グアニンまたはシトシンを含むデオキシリボヌクレオチド(それぞれ、dATP、dGTP、およびdCTP)に加え、デオキシリボヌクレオチドとしてIA8を用いて作製した候補ポリヌクレオチドを用いた以外は、SELEX法によりターゲットに対する結合核酸分子を取得した。具体的には、ビーズ(Dynabeads MyOne Carboxylic Acid、Invitrogen社)にターゲットであるsIgA(MP Biomedicals,LLC-Cappel Products社製)またはヒト唾液アミラーゼ(Lee BioSolutions, Inc社製)を、添付のプロトコルに基づいて結合させた。前記結合後、セレクションバッファー(SBバッファー:40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2、0.01%Tween(登録商標)20、pH7.5)で洗浄し、ターゲットビーズを調製した。5’末端をビオチン修飾した相補鎖(フォワード(Fw)プライマー領域−N30(30塩基)−リバース(Rv)プライマー領域)と、フォワードプライマーおよびDNAポリメラーゼ(KOD Dash、東洋紡社製)と、dATP、dGTP、dCTPおよびIA8とを用いて、IA8が挿入されたdsDNAを調製した。つぎに、前記ビーズ(Dynabeads MyOne Carboxylic Acid)に前記dsDNAを結合させた後、0.02mol/L NaOH水溶液によりss(single strand)DNAを溶出した。さらに、0.08mol/L 塩酸水溶液で中和することで、ssDNAのライブラリを調製した。20pmolのライブラリを250μgの前記ターゲットビーズと25℃、15分の条件で混合後、前記SBバッファーでビーズを洗浄した。そして、7mol/Lの尿素水溶液によりビーズ結合ssDNAを溶出した。溶出したssDNAを前記フォワードプライマーとビオチン修飾したリバースプライマーとを用いてPCRにより増幅した。なお、前記PCRでは、デオキシリボヌクレオチドとして、dATP、
チミンを含むデオキシリボヌクレオチド(dTTP)、dGTP、およびdCTPを用いた。得られたdsDNAを磁気ビーズ(Dynabeads MyOne SA C1 magnetic beads、Invitrogen社製)に結合させた後、0.02mol/L NaOH水溶液によりフォワード鎖を溶出し、除去した。前記除去後、前記磁気ビーズを前記SBバッファーで洗浄した。前記相補鎖が固相化された磁気ビーズと、フォワードプライマーおよびDNAポリメラーゼ(KOD Dash、東洋紡社製)と、dATP、dGTP、dCTP、およびIA8とを用いて、前述の方法でIA8が挿入されたdsDNAを調製した。つぎに、0.02mol/L NaOH水溶液によりフォワード鎖を溶出することによりssDNAのライブラリを調製し、このライブラリを次のラウンドに使用した。同様の工程を8ラウンド実施することで、sIgAまたはアミラーゼに結合する核酸分子をセレクション後、フォワードプライマーと、ビオチン修飾していないリバースプライマーを用いてPCRを行なった。そして、シーケンサー(GS junior sequencer、Roche社製)により、得られた核酸分子のシーケンスを行った。
【0081】
この結果、アミラーゼに対する結合核酸分子として、下記配列番号1の塩基配列からなる結合核酸分子が、sIgAに対する結合核酸分子として、下記配列番号2の塩基配列からなる結合核酸分子が得られた。下記配列番号1および2の塩基配列において、下線で示すTが、IA8である。
アミラーゼ結合核酸分子(配列番号1)
5’-GGAATCAGTCCGCCGCTAATACGC
TGG
TA
TGG
TTGAAG
TGCG
TA
TTAGACA
TG
TGAACGA
TCC
TG
TGCCCGA
TAAAG-3’
sIgA結合核酸分子(配列番号2)
5’-GGAATCAGTCCGCCGCTAATAC
TAG
TCA
TCGC
TTTTAA
TTTCGCA
TTG
TACCG
TGAACGA
TCC
TG
TGCCCGA
TAAAG-3’
【0082】
(2)表面プラズモン共鳴(SPR)による結合の確認
前記アミラーゼ結合核酸分子とアミラーゼとの結合および前記sIgA結合核酸分子とsIgAとの結合を下記SPR条件により測定した。なお、前記アミラーゼ結合核酸分子および前記sIgA結合核酸分子は、下記リガンド2として、その3’末端に20塩基長のポリdTを付加したものを使用した。さらに、コントロールは、前記アミラーゼ結合核酸分子の結合を確認する系では、下記アナライトとして、前記sIgA、クロモグラニンA(CgA、Creative BioMart社製)、および牛血清アルブミン(BSA)を用い、前記sIgA結合核酸分子の結合を確認する系では、下記アナライトとして、前記アミラーゼ、CgA、およびBSAを用いた以外は、同様にして結合を確認した。
【0083】
(SPR測定条件)
測定装置:ProteOn(商標)XPR36(BioRad社製)
測定チップ:ProteOn(商標)NLC Sensor Chip(BioRad社製)
リガンド1:5’末端をビオチン修飾したpolydT(20塩基長):5μmol/L
バッファー:40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、1mmol/L MgCl
2、5mmol/L KCl、0.01% Tween(登録商標)20、pH7.4
リガンド2:200nmol/Lの3’末端にpolyA(20塩基長)を付加した結合核酸分子を含むバッファー
Ligand Flow Rate:25μL/min、80sec
アナライト(Analyte):400nmol/Lのターゲットを含むバッファー
Analyte Flow Rate:50μL/min
Contact Time:120sec
Dissociation:300sec
・アミラーゼ:α−アミラーゼ(Lee Biosolutions社製、カタログ番号:#120-10)
・sIgA: IgA (Secretory) ,Human(MP Biomedicals, LLC-Cappel Products社製、カタログ番号:#55905)
・CgA:Recombinant full length Human Chromogranin A(Creative BioMart社製、カタログ番号:#CHGA-26904TH)
・BSA:Bovine Serum Albumin(SIGMA社製、カタログ番号:#A7906)
【0084】
前記リガンド2のインジェクション後、シグナル強度(RU)の測定を行い、前記リガンド2のインジェクション開始を0秒として、115〜125秒におけるRUの平均値(RU
115−125)を求めた。そして、前記ビオチン化ポリdAに前記ポリT付加アプタマーを結合させた時におけるRU値(RU
immob)とRU
115−125との比(RU
115−125/RU
immob)を算出した。
【0085】
図1(A)および(B)は、前記アミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフである。
図1(A)において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。
図1(B)において、横軸は、アナライトの種類を示し、縦軸は、RU
115−125/RU
immobを示す。
図1(A)および(B)に示すように、前記アミラーゼ結合核酸分子は、いずれのコントロールに対しても結合しないのに対し、前記アミラーゼ結合核酸分子は、アミラーゼに結合した。
【0086】
図2(A)および(B)は、前記sIgA結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。
図2(A)において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。
図2(B)において、横軸は、アナライトの種類を示し、縦軸は、RU
115−125/RU
immobを示す。
図2(A)および(B)に示すように、前記sIgA結合核酸分子は、いずれのコントロールに対しても結合しないのに対し、前記sIgA結合核酸分子は、sIgAに結合した。
【0087】
これらのことから、本発明のヌクレオシド誘導体であるIA8を用いて、アミラーゼに結合する結合核酸分子およびsIgAに結合する結合核酸分子を取得できることがわかった。
【0088】
(3)結合力の確認
前記リガンド2として、3’末端に20塩基長polyTを付加した前記アミラーゼ結合核酸分子を用い、アナライトであるアミラーゼの濃度を、12.5、25、50、100、または200nmol/Lとした以外は、前記(2)と同様にして、結合力の相対値(RU)を測定した。また、前記リガンド2として、3’末端に20塩基長polyTを付加した前記sIgA結合核酸分子を用い、アナライトであるsIgAの濃度を、12.5、25、50、100、または200nmol/Lとした以外は、前記(2)と同様にして、結合力の相対値(RU)を測定した。
【0089】
図3は、前記アミラーゼ結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフであり、
図4は、前記sIgA結合核酸分子のsIgAに対する結合能を示すグラフである。
図3および
図4において、横軸は、リガンドをインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。
図3に示すように、前記アミラーゼ結合核酸分子は、アミラーゼの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。また、
図4に示すように、前記sIgA結合核酸分子は、sIgAの濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加した。
【0090】
前記結合力の相対値(RU)に基づき、前記アミラーゼ結合核酸分子と前記アミラーゼとの解離定数、および前記sIgA結合核酸分子と前記sIgAとの解離定数を算出した。この結果、前記アミラーゼ結合核酸分子と前記アミラーゼとの解離定数は、38.6nMであり、前記sIgA結合核酸分子と前記sIgAとの解離定数は、3.61nMであった。これらの結果から、いずれの結合核酸分子も極めて優れたターゲットとの結合能を有することがわかった。
【0091】
(4)キャピラリー電気泳動による結合の確認
前記アミラーゼ結合核酸分子とアミラーゼとの結合を下記キャピラリー電気泳動条件により測定した。なお、前記アミラーゼ結合核酸分子は、キット付属の蛍光色素で標識化したものを使用した。コントロールは、前記ターゲットにおいて、アミラーゼを添加しなかった以外は同様にして、測定した。
【0092】
(キャピラリー電気泳動条件)
測定装置:SV1210形コスモアイ(日立ハイテクノロジー社)
測定チップ:i-チップ12(HitachiChemical社)
泳動ゲル:0.6%(Hydroxypropyl)methyl cellulose, viscosity 2.600-5,600(SIGMA社製、カタログ番号: #H7509)
ゲル溶解バッファー:40mmol/L HEPES(pH7.5)、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2
クローン:600nmol/Lのキット付属の蛍光色素で標識化したアミラーゼ結合核酸分子、40mmol/L HEPES(pH7.5)、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2を含む溶液
ターゲット:5.9μmol/Lのアミラーゼ(α-Amylase - High Purity ,Human 、Lee BioSolutions, Inc.社製、カタログ番号:#120-10)、40mmol/L HEPES(pH7.5)、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2を含む溶液
Folding:95℃、5min後、On ice 5min
Mixing:ターゲットを添加後、室温(25℃前後)、30分間、1000rpm
Injection Voltage:300V
Injection Time:120sec
Separation Voltage:350V
Separation Time:260sec
【0093】
この結果を
図5に示す。
図5は、キャピラリー電気泳動の結果を示す
写真である。
図5において、写真の左側は、泳動時間を示し、各レーンは、左から、コントロール(アミラーゼ無し)およびアミラーゼありの結果を示す。
図5に示すように、アミラーゼ無しのコントロールと比較して、アミラーゼありの場合、泳動時間が長くなった。これらの結果から、前記アミラーゼ結合核酸分子が、アミラーゼと結合することが分かった。
【0094】
[比較例]
天然塩基のみを用いた場合、アミラーゼに結合する結合核酸分子を取得できないことを確認した。特に示さない限り、実施例2と同様の操作を行った。
【0095】
アデニン、グアニン、シトシンまたはチミンを含むデオキシリボヌクレオチド(それぞれ、dATP、dGTP、dCTP、およびdTTP)を用いて候補ポリヌクレオチドを合成し、SELEX法を行った。そして、得られた結合核酸分子について、SPRによるアミラーゼへの結合の確認を行った。前記核酸分子の配列を以下に示す。
AML2196R8m4(配列番号3)
GGTAAGACTCCCGCCAGATTTGGGTGGGGGGCGGGGGTGGAGGAGGTGGCGGTGAAGCCCTCGGTCGAAATC
AML1217R8m4(配列番号4)
GGAAACCCTGCGTCCTGAAATTGCGCTGCGATAGTGAAGGCATAACAGGTTCACTCATCTGTGCTGGCGGAATAG
【0096】
この結果を
図6に示す。
図6は、前記結合核酸分子のアミラーゼに対する結合能を示すグラフであり、横軸は、結合核酸分子の種類を示し、縦軸は、RU115−125/RUimmobを示す。各グラフにおいて、左から、アミラーゼ、sIgA、CgA、BSAの結果を示す。
図6において、得られた核酸分子は、いずれも、アミラーゼに対する結合力(RU
115−125/RU
immob)が、約0であった。また、ターゲット以外の物質に対する交差反応もみられた。
【0097】
このことから、天然塩基のみでは、アミラーゼに結合する結合核酸分子を得ることができないことがわかった。
【0098】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0099】
この出願は、2016年11月28日に出願された日本出願特願2016−230196を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。