特許第6763564号(P6763564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763564疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー含有自爪塗布用光硬化性人工爪組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763564
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー含有自爪塗布用光硬化性人工爪組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20200917BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20200917BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20200917BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20200917BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20200917BHJP
   A45D 29/18 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/87
   A61K8/35
   A61K8/55
   A61Q3/02
   A45D29/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-106350(P2016-106350)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-210457(P2017-210457A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一生
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−189668(JP,A)
【文献】 特開2011−020956(JP,A)
【文献】 特開2015−209390(JP,A)
【文献】 DYMAX,BomerTM BRC-443D Hydrophobic Urethane Acrylate [online],2014年,[検索日2020年3月26日], インターネット<URL:http://dymax-oc.com/oligomers/>
【文献】 DYMAX,Hydrophobic Oligomers [online],2014年,[検索日2020年3月26日], インターネット<URL:http://dymax-oc.com/oligomers/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A45D 29/00−29/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、及び光重合開始剤を含有し、前記疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、分岐を含みC5以上の炭素鎖セグメントを分子内に有する自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系モノマーが、イソボルニルアクリレートである請求項1に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル系モノマーが、リン酸エステル系(メタ)アクリレートである請求項1に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性人工爪組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
手や足の自爪に装飾を施したり、人工爪を接着してこれに装飾を施すというネイルアートの人気が高まっている。また、装飾や、外力による爪の割れ・剥がれを防止するための補強の目的で、いわゆるマニキュア、ペディキュア、スカルプチュアと呼ばれる樹脂含有の材料を爪に塗布することもなされている。
【0003】
ここで、装飾又は補強のために使用される爪装飾材料としては、ニトロセルロース系のラッカーを有機溶剤に溶解し、これに各種色調の顔料を加えたものがある。これらは、爪や人工爪に塗布した後、有機溶剤を揮発させて、光沢に優れた被膜を形成するものである。そして、この被膜はアセトン等の有機溶剤を用いて容易に拭き取ることができる。
特に最近、ウレタンアクリレート系オリゴマーとアクリル系モノマーを含むジェル状の爪被覆材料を爪に塗布し、紫外線を照射して硬化させる、ジェルネイルと呼ばれる光硬化性人工爪組成物が注目を集めている。
これらは、ラジカル重合反応により、架橋した高分子被膜を形成するため、爪から剥がれにくい強靱な被膜を形成できるとされている。
【0004】
このような光硬化性人工爪組成物として、特許文献1に記載されているように、該組成物中に紫外線の照射により重合可能な重量平均分子量3,000〜50,000のポリウレタンアクリレートやモノマー成分を含有する、爪への密着性や除去性に優れた光硬化性人工爪組成物は公知である。
また、特許文献2に記載されているように、ウレタンアクリレートオリゴマー及びヒドロキシエチルアクリレートを含有し、人体に安全なUVAにより短時間で十分に硬化させることができる光硬化性人工爪組成物も公知である。
特許文献3には、ネイル用の除去可能なゲル硬化性の組成物であって、ジ−[ヒドロキシエチルメタクリリック]トリメチルヘキシルジカルバメート、メタクリル酸エステル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート及び溶剤を含有する組成物であり、さらに配合し得る成分のうちの一種としてポリウレタンアクリレートオリゴマーも例示されている。
これらの文献に加えて、特許文献4に記載されるように、1分子内にラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性化合物、およびチオール化合物を含有する光硬化性人工爪原料組成物とすることによって、光を遮蔽した室温下にて保管の問題を発生させず、硬化後においても、人工爪内に未硬化の組成物が残存しないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−229725号公報
【特許文献2】特開2010−105967号公報
【特許文献3】特許第5756604号公報
【特許文献4】特開2014−005260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、公知の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物は、硬化性に優れ、かつ塗布し硬化した後の特性に優れるものである。しかしながら、自爪の表面に塗布した後、時間の経過と共に、指先内部から自爪表面、さらに自爪表面から外部にかけて、体内の水分が浸透・蒸発するので、自爪表面に形成された人工爪に対してその水分も浸透する。
自爪表面に対する人工爪組成物の接着性を考慮して、人工爪組成物の主要成分が親水性を有することが通常であるため、上記の体内の水分に由来する水分が該人工爪にも浸透し、その結果、該人工爪組成物も水分を含有し、ひいては膨潤する結果となる。また、そのような人工爪組成物からなる被膜表面に、入浴時等における耐水性を付与する等を目的としてトップコート層を設ける必要があった。
そうすると、人工爪組成物は自爪に対して十分に強い力で密着することができず、何らかの拍子で自爪表面から人工爪組成物が剥離することになりかねない。
本発明は自爪内部及び外部からの水分を人工爪組成物による被膜が十分に吸収することなく、その結果として、自爪表面に形成させた人工爪組成物の被膜を長期的に高い密着性によって密着させること、さらに耐水性を付与することを目的として、さらに被覆層を設ける必要がない人工爪組成物の被膜層を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の組成物からなる自爪塗布用光硬化性人工爪組成物とすることで、上記課題が解決できることを見出し、自爪に対する人工爪の密着性を向上させて本発明を完成するに至った。
具体的には以下の通りである。
1.疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリル系モノマー、及び光重合開始剤を含有する自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
2.疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが、分岐を含みC5以上の炭素鎖セグメントを分子内に有する1に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
3.(メタ)アクリル系モノマーが、イソボルニルアクリレートである1又は2に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
4.(メタ)アクリル系モノマーが、リン酸エステル系(メタ)アクリレートである1又は2に記載の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自爪表面に直に塗布した場合において、時間の経過と共に、自爪内部から自爪表面に浸透した水分が、疎水性の光硬化性人工爪組成物からなる被膜中に浸透することがなく、ひいては、自爪表面に対して長期にわたり密着性に優れる自爪塗布用光硬化性人工爪組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物は、いわゆる一般のマニキュアやペディキュア、ジェルネイルのように、爪の表面に、ベースコート層、中間層であるカラーコート層、あるいはトップコート層として被覆を行うための組成物とすることもできるが、特に自爪の表面に直に塗布して被膜を得るための組成物とすることもできる。
そして、従来の紫外線等により硬化されるラジカル重合性のマニキュア等と同様の設備、紫外線硬化用の設備を用いて爪表面を被覆するものである。
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物は特にジェルネイルとして使用することもできる。その中でも使用者の爪に直接塗布されるベースコート、該ベースコートの上に塗布されるカラーコート、さらにその上に塗布されるトップコートのいずれにも使用され得るものである。
自爪表面に直に塗布するベースコートは、一般的には透明又は僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することがある。
カラーコートはソリッドカラーやラメ調、金属光沢調、暗色や明色等多彩に着色されるコートである。
トップコートは、ベースコートと同様に、透明又は僅かに黄色、場合により微量の紫や青の色素を配合して、経時劣化による色調の変化を防止することがある。最上層であるため、ジェルネイルの艶を発揮させる作用を有する。本発明の光硬化性人工爪組成物は被膜表面の光沢度に優れるので、特にトップコート用として使用することが好ましい。
硬化後にも酸素による重合阻害等を原因とする、仮に未重合の光硬化性成分が被膜内に存在するときには、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチルやアセトン等の溶剤、特にエタノールを用いて拭き取る工程が必要である。但し、十分な硬化性を備えるときには、このような工程を要しない。
いずれの層に関しても硬化後少なくとも2週間、欠けることなく、剥がれず、また下層や使用者の爪に対して浮きが発生しない。
【0010】
以下に本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の具体的組成について説明する。
[疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明中の疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーに、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を加えて、前記ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基総数の10%以上のイソシアネート基に、前記水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を付加反応させて得ることができる。なお、ここで、該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基と反応するジオール化合物やジアミン化合物は、炭素鎖セグメントとして、炭素数が5以上のアルキル基、アルキレン基.不飽和結合を有する炭化水素基であって、直鎖構造又は分岐構造を有し、好ましくは炭素数6以上のアルキレン基を有することが必要である。
また、なかでも、平均アクリル当量が400〜10,000の疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーであることが好ましい。また、平均アクリル当量が400〜10,000の疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、このようにして得られた各種の平均アクリル当量(場合により一部はアクリル当量が400未満又は10,000を超える)を有する複数種の疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合計して、全体として平均アクリル当量が400〜10,000としてもよい。また、アクリロイル基に基づく官能基数は2〜6の範囲であることが好ましい。
なお、アクリル当量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが有するアクリロイル基の数で除した値である。
【0011】
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物において、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを全自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中に10〜99重量%、好ましくは30〜70重量%となるように含有させることができる。99重量%よりも多く含有すると硬化時に収縮が発生し、硬化後の被膜にしわが発生する可能性がある。含有する量が10重量%よりも少ないと、十分な硬度の被膜を形成させることができず、被膜表面に傷が付きやすくなる。
このような疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、硬化被膜も疎水性を有することになり、爪表面から被膜に浸透される水によって、該被膜が柔軟化したり、膨潤したりすることがない。また、臭いが少なく伸縮性に優れ、かつ被膜の透明度が高く黄変せず、艶を有する高い硬度に硬化した自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の被膜を得ることができる。そのため、場合によっては、トップコート用に適した光硬化性化合物とすることができる。
【0012】
[単官能(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、(メタ)アクリレートモノマーの中でも単官能(メタ)アクリレートモノマーは、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しない性質を備えることが必要である。
そのような単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
また、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ラジカル重合性不飽和基含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレートを使用することもできる。
単官能アクリルアミド化合物としては、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド化合物等、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート、2−オキセパノンホモポリマー、2−[(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ]エチルエステル等の酸性の重合性モノマーも使用することができる。
また、リン酸メタクリル酸ヘキサン酸エチル、リン酸メタクリル酸プロパン酸ペンチル等の単官能のリン酸エステル系メタクリレートも使用することができる。
この単官能(メタ)アクリレートモノマーを配合しないこともでき、配合するときの配合比率としては、全自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中に30.0重量%以下、好ましくは20.0重量%以下となるように含有させることができ、さらには含有しないことが好ましい。30.0重量%を超えて配合すると、硬化速度が減衰し、未硬化樹脂が残存する可能性がある。
なお、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレートを配合することが好ましく、このときに硬化後の被膜の硬度と屈曲性のバランスが良好になる。これらの化合物を配合する場合には、好ましくはその合計の配合量を20重量%以下とすることが好ましい。
【0013】
[多官能(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、上記のモノマー以外の(メタ)アクリレートモノマーの中でも多官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ラジカル重合しうる不飽和基を1分子中に2以上有する化合物であって、本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物に配合できる化合物の1種である。ラジカル重合しうる不飽和基としては、炭素−炭素間二重結合をもつ官能基であり(重合性二重結合ともいう)、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基等を挙げることができる。
そしてこれらの多官能(メタ)アクリレートモノマーには、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の臭いを少なくし、透明であって、低刺激性であり、反応性に優れ、黄変しない性質を備えることが必要である。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、等のトリ(メタ)アクリレート化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート等のエリスリトール類の(メタ)アクリレート類、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートを使用することができる。
また、リン酸ビス(メタクリル酸ヘキサン酸エチル)、リン酸ビス(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)、リン酸トリ(メタクリル酸ヘキサン酸エチル)、リン酸トリ(メタクリル酸プロパン酸ペンチル)等の多官能のリン酸エステル系メタクリレートも使用することができる。
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーは被膜の強度を調整するために配合することができ、配合するときの配合比率としては、0〜30.0重量%、好ましくは0〜25.0重量%である。30.0重量%を超えて配合すると、硬化時において被膜の収縮が大きくなる可能性がある。また、多官能(メタ)アクリレートモノマーを含まない場合においても、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの比率で補える可能性がある。
【0014】
[多官能チオール化合物]
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物にさらに含有させることが可能な、多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールが本来有する水酸基に、チオール基又は反応してチオール基になる基を有する化合物が反応して得たものが好ましい。
このような多官能チオール化合物としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
このような多官能チオール化合物を含有させることによって、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の粘度を調節することに加え、硬化した自爪塗布用光硬化性人工爪組成物を拭き取って除去する際の拭き取り性を向上させることができる。
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物において、多官能チオール化合物を全自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中に含有させる場合には、好ましくは1.0〜50.0重量%、さらに好ましくは2.0〜20.0重量%、より好ましくは7.0〜18.0重量%となるように含有させることができる。50.0重量%よりも多く含有すると硬化時の硬化速度が速すぎて、爪表面への塗布や、硬化時の取り扱いが困難になる可能性があり、含有する量が1.0重量%よりも少ないと、硬化速度が低下して、硬化後においても未硬化成分を含有する可能性がある。
【0015】
[光重合開始剤]
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物に配合する光重合開始剤は、LEDを光源とした紫外線や365〜410nm付近の波長の光(可視光の一部)によっても十分に硬化することができ、硬化時の発熱量を抑制することができるものが好ましい。
そのような光重合開始剤として、ベンゾインエーテル類、ベンジルケタール類、アシッドエステル類、α−アミノアルキルフェノン類、アシルフォスフィンオキシド類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、チタノセン類、を使用することができる。
これらの光重合開始剤として、具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、フェニル酢酸、α−オキソ− オキシジ−2,1−エタンジイルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、又はオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル、あるいはこれらの化合物の混合物、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル) −フェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチルプロパン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどが好適に用いられる。なかでも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンや2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドを使用することが好ましい。
【0016】
これらの光重合開始剤は、染料、顔料や重合性化合物の光吸収によってもラジカル生成反応が阻害されず、またラジカル発生効率が高く、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の硬化性を高めることができる点で好ましい。
これらの光重合開始剤は本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中0.5〜20.0重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%となるように配合することができる。20.0重量%を超えると、過剰な量のラジカルが発生することになるので、ラジカル重合反応が多くの開始点からなされ、その結果、硬化後のポリマーの分子量が小さくなって硬化膜が脆くなり、膜を維持できない可能性がある。また、0.5重量%未満であると十分な量のラジカルが発生できないので、ラジカル重合反応が長時間に及ぶこととなり、硬化不良となる可能性が高い。
【0017】
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物には、光沢度、粘度や透明性、硬化性などに悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、ポリオール類、シリコーン系やフッ素系の消泡剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、充填剤、表面張力調整剤、重合禁止剤、難燃剤、酸化防止剤、イオン吸着体、着色剤、顔料、低応力化剤、抗菌剤、可撓性付与剤、ワックス類、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤等の各種の添加剤を配合することができる。
なお、本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物に重合禁止剤を配合する場合には、重合禁止剤として、メトキノン等のキノン化合物、α−トコフェロール等のトコフェロール化合物、サリチル酸ヒドラジドを採用することが好ましい。
自爪塗布用光硬化性人工爪組成物中の重合禁止剤の含有量としては、重量の割合で500〜5000ppmが好ましく、より好ましくは1000〜2500ppm、更に好ましくは1300〜2300ppmである。5000ppmより含有量が多いときには、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物が黄変する可能性があり、500ppmよりも少ないときには、自爪塗布用光硬化性人工爪組成物が保管時において不用意に硬化してしまう可能性が高くなる。
また、本発明において、重合禁止剤は光重合開始剤による硬化を抑制する作用を有するので、光重合開始剤の含有量に対する重合禁止剤の含有量の比率を一定範囲とすることもできる。
このため、光重合開始剤1重量部に対して、好ましくは重合禁止剤を0.030〜0.100重量部、より好ましくは0.035〜0.080重量部の範囲とすることができる。
【0018】
着色剤としては公知の顔料、光輝材、染料を使用することができ、特に爪被覆用として使用されている無機顔料、光輝材有機顔料や染料を使用することができる。また、これらの着色剤を添加しない場合や透明となる程度の量、若しくは染料を添加することにより透明性がある光硬化性人工爪組成物とすることもできる。また、硬化前の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物には、顔料等のみではなく樹脂粒子や、公知の光硬化性人工爪組成物に配合できる装飾用材料等を配合しておくことも可能である。
使用できる顔料及び染料の種類、及びそれらの含有量としては、紫外線の照射による硬化を阻害しない程度のものとすることが必要である。
【0019】
[自爪塗布用光硬化性人工爪組成物による被覆方法]
本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物は、使用者自身の爪の表面にサンディングを施すことなく、爪表面に凹凸を形成させる必要がない他は、公知の紫外線硬化型の光硬化性人工爪組成物と同様の方法により爪表面に塗布することができる。また、爪へのベースコート層(下地層)として、あるいは中間層、さらにトップコート層として使用することができる。
そのため、本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物は筆等の塗布具によって十分に塗布することができる程度の粘度を有すればよい。もちろん、爪表面に本発明の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物を塗布後、硬化前に小さな飾りや粉体等を被膜表面に付着させることも可能である。
また、シートの片面に本発明の未硬化の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物からなり、かつ爪の形状を有する層を設けておき、この層を爪表面に重ねるようにして付着させ、この自爪塗布用光硬化性人工爪組成物からなる層からシートを剥離するか又は剥離せずに、紫外線を照射して硬化することもできる。このようなシート表面に予め自爪塗布用光硬化性人工爪組成物からなる層を設けておけば、使用時に筆等の塗布具を使用することなく、爪の表面に均一かつ正確な模様を被覆することが可能である。そして使用後においても該塗布具を洗浄等する必要がない。
被覆される爪は、人の手の爪と足の爪のいずれでもよく、犬や猫などの動物の爪でも良い。
塗布後の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の硬化に関しても公知の紫外線硬化用の装置を用いて行うことができる。含有される化合物や顔料等の成分によって、硬化に必要な照射エネルギーは異なるものの、その光照射による照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上1000mJ/cm以下であるのが好ましく、10mJ/cm以上800mJ/cm以下であるのがより好ましい。照射エネルギーがこの範囲内であれば、十分な密着性および耐擦性を有するネイルアートが得られる。
光源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザーダイオード(UV−LD)等の公知の紫外線の光源を用いることができる。
その中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザーダイオード(UV−LD)が好ましい。
【実施例】
【0020】
表1に示す全配合成分(表中数値は重量%)を容器内に投入し、ディゾルバーにより撹拌しつつ50℃に加温し撹拌した。これらの工程を全て遮光下にて行った。
<組成物の評価>
(耐水性)
厚さ100μmの自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の被膜を硬質塩ビ板上に形成し、この被膜に対して32WLED−UVライトで20秒間紫外線を照射して硬化させた。
次いで、硬化され得られた被膜を常温の水に浸漬し、20分放置した。
その後、ウッドスティックで被膜を削り、その欠損の程度によって、被膜の耐水性を目視で評価した。なお、市販の自爪塗布用光硬化性人工爪組成物はこのような試験により欠損する。
評価5:被膜に変化がなかった。
3:被膜が僅かに欠損した。
1:被膜が著しく欠損した。
【0021】
(密着性)
180Gのスポンジパフを用いて自爪表面を整え、自爪表面を消毒用エタノールで拭いた後、その自爪表面に自爪塗布用光硬化性人工爪組成物の被膜を形成し、この被膜に対して32WLED−UVライトで20秒間紫外線を照射して硬化させた。
次いで、市販のカラージェル、さらにトップジェルを塗布し、同条件で硬化させたものの、14日後の状態を観察した。
評価5:被膜に変化がなかった。
4:被膜が10本の指のうち1本以下で欠損が見られた。
3:被膜が10本の指のうち3本以下で欠損が見られた。
1:被膜が10本の指のうち4本以上欠損が見られた。
【0022】
疎水性オリゴマーA:ネオペンチルグリコール及びオキセパノン構造を有するウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:5000、アクリロイル基に基づく官能基数2、アクリル当量:5000/2=2500)
疎水性オリゴマーB:ネオペンチルグリコール及びオキセパノン構造を有するウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:15000、アクリロイル基に基づく官能基数2、アクリル当量:15000/2=7500)
親水性オリゴマーA:ポリプロピレン構造を有するウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:9000、アクリロイル基に基づく官能基数2、アクリル当量:9000/2=4500)
親水性オリゴマーB:ポリプロピレン構造を有するウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:3500、アクリロイル基に基づく官能基数2、アクリル当量:3500/2=1750)
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
HPMA:2−ヒドロキシプロピルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
BISGMA:イソプロピリデンジフェニルビス(メタクリル酸オキシヒドロキシプロピル)
PMA:リン酸メタクリル酸ヘキサン酸エチル
PMA2:リン酸ビス(メタクリル酸ヘキサン酸エチル)
光重合開始剤A:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
光重合開始剤B:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド
【0023】
【表1】
【0024】
上記実施例及び比較例の結果によると、疎水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いて本発明に沿った例である実施例1〜6によれば、得られた被膜の耐水性が良好であり、密着性は悪くても被膜がほんの僅かに欠損する程度であった。この結果によれば、本発明によると耐水性と密着性のバランスがとれた被膜を形成できる。
これに対して、親水性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いた比較例1〜3によれば、被膜の耐水性に劣り、かつ密着性も不良であった。