特許第6763610号(P6763610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭北ラミネート工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000002
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000003
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000004
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000005
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000006
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000007
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000008
  • 特許6763610-PTP包装体の製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763610
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】PTP包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/03 20060101AFI20200917BHJP
   B65B 9/04 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   A61J1/03 370
   B65B9/04
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-157559(P2017-157559)
(22)【出願日】2017年8月17日
(65)【公開番号】特開2019-33921(P2019-33921A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2019年4月25日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月28日東京ビッグサイトにおいて開催された第30回インターフェックスジャパンで発表
(73)【特許権者】
【識別番号】511069932
【氏名又は名称】昭北ラミネート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】石原 沙知
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−048136(JP,A)
【文献】 実開平04−104436(JP,U)
【文献】 特開2015−030507(JP,A)
【文献】 特開2006−206070(JP,A)
【文献】 特開昭61−244707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/03
B65B 9/04
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体の収容部の開口を蓋材で閉鎖したPTP包装体の製造方法において、
前記容器体が一方向に連続した帯状の容器シートと、基材である帯状のアルミニウム箔であって、PTP包装体の蓋材として用いられる硬質アルミニウム箔を熱処理した軟質アルミニウム箔、前記軟質アルミニウム箔の一方の面に設けられた層であって前記容器体毎の情報表示である印刷部が前記軟質アルミニウム箔の長さ方向に並設された情報印刷層、及び前記軟質アルミニウム箔の他方の面を覆う層であって、加熱されることによって前記容器シートに溶着可能なヒートシール層を備えた包装シートとを用意する準備工程と、
前記容器シート及び前記包装シートを重ね合わせて加熱ロールと受けロールとの間に通し、前記加熱ローラの表面に形成された凹凸により前記包装シートを前記容器シートの表面に食い込ませ、前記包装シートの前記ヒートシール層を容器シートに熱接着するシール工程と、
互いに熱接着した前記容器シート及び前記包装シートを、前記硬質アルミニウム箔を用いる場合と同じ仕様のPTP包装体製造装置を用いて、前記硬質アルミニウム箔の打ち抜きと同じ条件で前記PTP包装体に打ち抜く打ち抜き工程とを備え、
前記準備工程で用意される包装シートは、前記印刷部の並設方向の長さが、前記打ち抜き工程後の前記PTP包装体毎の長さの目標値の98.0〜99.7%の範囲に設定され、
前記準備工程から前記シール工程を経て打ち抜き工程を終了するまでの、前記包装シートを移送する時に前記包装シートに加える張力の値、及び前記シール工程の条件を、前記硬質アルミニウム箔で成る包装シートの場合と同様に設定し、
前記打ち抜き工程により打ち抜かれた後の前記包装シートの長さが、前記目標値になるように調節することを特徴とするPTP包装体の製造方法。
【請求項2】
前記シール工程の前に、前記加熱ロールの位置に移送される前記容器体と前記印刷部との位置ずれを検出し、前記包装シートに対し、前記シール装置への移送を妨げる方向の引っ張り力を加え、前記包装シートを引き延ばすことによって前記位置ずれを修正する長さ調節工程を備える請求項1記載のPTP包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTP包装体を構成する容器体の収容部の開口を蓋材の包装シートで閉鎖したPTP包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTP(press through package)は、図5に示すPTP包装体10のように、樹脂製の容器体12に形成された収容部12a内に小形の固形物14を入れ、蓋材16を容器体12の平面部12bに貼りつけることによって、収容部12aを閉鎖する包装形態であり、従来から、薬用の錠剤やカプセル等を包装する用途に広く用いられている。
【0003】
PTP包装体10は、開封するとき、収容された固形物14を収容部12aの外側から蓋材16内面側へ強く押し当て、蓋材16を突き破って取り出すものであり、蓋材16の基材は、硬質アルミニウム箔が広く使用されている。蓋材16を容器体12に貼り付ける場合、蓋材16の一方の面に設けたヒートシール層を容器体12の平面部12bに当接させ、蓋材16の他方の面に設けた耐熱コート層の側から加熱し、ヒートシール層を平面部12bに溶着させる方法が用いられる。また、蓋材16の、耐熱コート層側の面には、例えば固形物14の名称、メーカ名、使用期限等の情報表示が印刷される。従来は、固形物14の位置と関係なく情報を印刷する形態(図6(a)に示すエンドレス印刷)が一般的だったが、最近は、使用者の要望を受け、固形物14の位置に合わせて情報を印刷する形態(図6(b)に示すピッチ印刷)が増えてきた。
【0004】
PTP包装体10の製造は、例えば図7に示すように、シール装置18と打ち抜き装置20とを備えたPTP包装体製造装置22を用いて行われる。シール装置18は、帯状の容器シート24と帯状の包装シート26とを重ね合わせて熱接着する装置である。容器シート24は、容器体12が一方向で連続したものであり、包装シート26は、蓋材16が一方向に連続したものである。
【0005】
容器シート24は、図示しない移送装置に引っ張られ、充填装置28によって収容部12aに固形物14が入れられた後、シール装置18に送られる。包装シート26は、ロール状に巻かれてセットされ、図示しない移送装置に引っ張られ、シール装置18に送られる。
【0006】
シール装置18は、加熱ロール18aと受けロール18bを有し、容器シート24及び包装シート26を重ね合わせて加熱ロール18aと受けロール18bとの間に通し、互いに熱接着させる。このとき、加熱ロール18aは、包装シート26の耐熱コート層側の面を加熱し、受けロール18bは、容器シート24の平面部12b(収容部12aが突出している側の面)に当接し、加熱ロール18aからの押圧力を受け止める。加熱ロール18aは、図8(a)に示すように、表面に凹凸(例えば、格子状の筋目)が設けられることが多い。これにより、図8(b)に示すように、包装シート26が容器シート24の表面に食い込み、強固に熱接着させることができる。
【0007】
その後、容器シート24及び包装シート26は、図示しない移送装置に引っ張られ、打ち抜き装置20に送られる。そして、打ち抜き装置20で、互いに熱接着した容器シート24及び包装シート26が規定サイズに打ち抜かれ、PTP包装体10が形成される。以上が製造方法の概要である。
【0008】
ここで問題になるのは、包装シート26にピッチ印刷がされている場合に、熱接着や打ち抜きの工程が行われる過程で、容器シート24及び包装シート26の長さ寸法が各々変化するので、容器体12と情報表示の位置合わせが難しいということである。各長さ寸法が変化する要因としては、例えば、容器シート24及び包装シート26が移送装置で引っ張られて長さ方向に延びて長くなることや、熱接着時に包装シート26が容器シート24の表面に食い込み、食い込んだ分だけ包装シート26が長さ方向に短くなることが挙げられる。
【0009】
従来、容器体と情報表示の位置ずれ検出し、この位置ずれを修正することが行われていた。例えば、特許文献1には、背景技術として、包装シートを移送するとき、容器体と情報表示との位置ずれを検出し、包装シートにわざと引っ張りを掛けて包装シートを引き延ばし、位置ずれを修正する方法が記載されている。また、特許文献1の発明の技術として、情報表示のピッチを容器体のピッチよりも僅かに大きく設定するとともに、互いに隣り合う容器体の境界部に沿って溝を形成しておき、容器体と情報表示との位置ずれを検出すると、このずれに相当する分を溝に押し込んで包装シートの送り量を調節する印刷合わせ方法も記載されている。
【0010】
近年、発明者は、蓋材16の基材として、例えば特許文献2に開示されているような軟質アルミニウム箔を使用することを検討してきた。従来から広く使用されている硬質アルミニウム箔は、比較的延びにくくて破れやすい性質があるため、PTP包装体10を鞄やポケットに入れて携帯した時に蓋材16が簡単に破れて固形物14が外に出てしまったり、小児が簡単に取り出して誤飲してしまったりするという問題がある。これに対して、硬質アルミニウム箔を熱処理して柔らかくした軟質アルミニウム箔は、硬質アルミニウム箔より延びやすく破れにくいので、これらの問題を発生しにくくすることができる。したがって、軟質アルミニウム箔を使用することによって、硬質アルミニウム箔では実現できない付加価値を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭57−46724号公報
【特許文献2】実開平4−104436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1の背景技術の方法は、特許文献1の中で、「アルミ箔のような延びにくく固いフィルムには適用できない」と指摘されているように、包装シートの基材が硬質アルミニウム箔のように延びにくい場合、大きい位置ずれが発生したときに適切に修正することが難しい。また、特許文献1の発明の方法は、既存の容器シート製造装置に、容器シートに溝を形成するための溝成形装置を付設したり、既存のシール装置に、包装シートを溝に押し込むためのシリンダ装置を付設したりしなければならないので、設備を改造するため費用や時間の負担が大きい。
【0013】
また、軟質アルミニウム箔で成る包装シートを使用する場合、軟質アルミニウム箔は硬質アルミニウム箔と延びやすさが異なるので、硬質アルミニウム箔の場合と同じ条件でPTP包装体を製造すると、容器体と情報表示の位置ずれの問題を解決することはできない。
【0014】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、基材が軟質アルミニウム箔で成り、容器シートに対する情報表示の位置合わせが容易なPTP包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のPTP包装体の製造方法は、PTP包装体を構成する容器体の収容部の開口を閉鎖する蓋材の基材であるアルミニウム箔が、PTP包装体の蓋材として用いられる硬質アルミニウム箔を熱処理した軟質アルミニウム箔を基材として使用するものである。
【0016】
本発明は、容器体の収容部の開口を蓋材で閉鎖したPTP包装体の製造方法であって、前記容器体が一方向に連続した帯状の容器シートと、基材である帯状のアルミニウム箔であって、PTP包装体の蓋材として用いられる硬質アルミニウム箔を熱処理した軟質アルミニウム箔、前記軟質アルミニウム箔の一方の面に設けられた層であって、前記容器体毎の情報表示である印刷部が、前記軟質アルミニウム箔の長さ方向に並設された情報印刷層、及び前記軟質アルミニウム箔の他方の面を覆う層であって、加熱されることによって前記容器シートに溶着可能なヒートシール層を備えた包装シートとを用意する準備工程と、
前記容器シート及び前記包装シートを重ね合わせて加熱ロールと受けロールとの間に通し、前記加熱ローラの表面に形成された凹凸により前記包装シートを前記容器シートの表面に食い込ませ、前記包装シートを容器シートに熱接着するシール工程と、
互いに熱接着した前記容器シート及び前記包装シートを、前記硬質アルミニウム箔を用いる場合と同じ仕様のPTP包装体製造装置を用いて、前記硬質アルミニウム箔の打ち抜きと同じ条件で前記PTP包装体に打ち抜く打ち抜き工程とを備え、
前記準備工程で用意される包装シートは、前記印刷部の並設方向の長さが、前記打ち抜き工程後の前記PTP包装体毎の当該長さの目標値の98.0〜99.7%の範囲に設定され、前記準備工程から前記シール工程を経て打ち抜き工程を終了するまでの、前記包装シートを移送する時に前記包装シートに加える張力の値、及び前記シール工程の条件を、前記硬質アルミニウム箔で成る包装シートの場合と同様に設定し、前記打ち抜き工程により打ち抜かれた後の前記包装シートの長さが、前記目標値になるように調節するPTP包装体の製造方法である。
【0017】
前記シール工程の前に、前記加熱ロールの位置に移送される前記容器体と前記印刷部との位置ずれを検出し、前記包装シートに対し、前記シール装置への移送を妨げる方向の引っ張り力を加え、前記包装シートを引き延ばすことによって前記位置ずれを修正する長さ調節工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のPTP包装体の製造方法によれば、軟質アルミニウム箔を基材とする包装シートを使用するので、鞄やポケットに入れて携帯したとき等に蓋材が簡単に破れないPTP包装体を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明のPTP包装体の製造方法によれば、包装シートに容器体毎の情報表示である印刷部が並設され(ピッチ印刷され)、各印刷部の並設方向の長さの初期値が、シール工程と打ち抜き工程を順に行った時の容器シート及び包装シートの長さの変化を考慮した適切な値に設定されるので、従来の硬質アルミニウム箔で成る包装シート用の設備に特別な改造を加えなくても、軟質アルミニウム箔の包装シートを使用して、容器体と印刷部の位置合わせを容易に行うことができ、PTP包装体を効率よく綺麗に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のPTP包装体の製造方法の一実施形態において、準備工程で用意する包装シートの例を示す平面図(a)、拡大断面図(b)である。
図2】本発明のPTP包装体の製造方法の一実施形態を実施している時の、包装シートの印刷部の並設方向長さの変化を実測したグラフである。
図3】本発明のPTP包装体の製造方法の一実施形態を実施している時の、包装シートの印刷部の並設方向長さの変化を概念的に示したグラフである。
図4】長さ調節装置を付設したPTP包装体製造装置を示す図である。
図5】従来のPTP包装体を容器体側から見た図(a)、A−A断面図(b)である。
図6図5のPTP包装体を蓋材側から見た図であって、蓋材にエンドレス印刷がされたPTP包装体を示す図(a)、ピッチ印刷がされたPTP包装体を示す図(b)である。
図7】従来のPTP包装体製造装置を示す図である。
図8図7のシール装置の詳細な構成を示す平面図(a)、PTP包装体の熱接着された部分を拡大した断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明PTP包装体の製造方法の一実施形態について、図面に基づいて説明する。ここで、上記と同様の構成は、同一の符号を付して説明する。
【0022】
この実施形態に用いられる包装シート30は、軟質アルミニウム箔32により形成され、従来の包装シート26に代えて使用され、最終的にPTP包装体10の蓋材16になるものである。この実施形態のPTP包装体の製造方法は、包装シート30と容器シート24を用いてPTP包装体10を製造する方法であり、上記のPTP包装体製造装置22を用いて実施することができる。以下、この実施形態の製造方法の各工程に沿って、詳しく説明する。
【0023】
まず、準備工程で、容器シート24及び包装シート30を用意する。容器シート24は、エンボス状の収容部12aを有した容器体12が一方向に連続した帯状のシート材である。材質は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等の樹脂である。容器シート24は、約150〜350μmの厚みに形成された平坦な樹脂シートの内側をエンボス成形することによって製作される。容器体12の連続方向の長さはd(12)である。
【0024】
包装シート30は、図1(a)、(b)に示すように、複数の層を備えた帯状のシート材であり、総厚みは約15〜40μmである。包装シート30の基材は軟質アルミニウム箔32で成り、その厚みは約10〜30μmである。
【0025】
軟質アルミニウム箔32の一方の面には、情報印刷層34が設けられている。図1(a)の中の一点鎖線で囲んだ内側の領域は、PTP包装体10の蓋材16になる領域であり、軟質アルミニウム箔32の長さ方向に並設された各領域に、各容器体12に対する情報表示である印刷部34aがピッチ印刷されている。各印刷部34aの並設方向の長さはd(34a)であり、ここでは蓋材16の長さと同じである。
【0026】
情報印刷層34は、例えば塩化ビニル樹脂に黒色顔料や茶色顔料等を配合したインキをグラビア塗工方式等により印刷し、乾燥させることによって形成される。表示の内容は、例えば、収容部12aから離れた端部に配置された「SHL製薬株式会社(メーカ名)」の文字と、収容部12aに対応する位置に各々配置された「SHL-01錠(商品名)」及び「使用期限2019年10月」の文字である。
【0027】
軟質アルミニウム箔32及び情報印刷層34の表面は、透明又は半透明の耐熱コート層36で覆われている。耐熱コート層36は、包装シート30を容器シート24に熱接着させる際に加熱されるので、例えば、190〜230℃のヒートシールバーで3kg/cm、2secの加圧を行って、表面状態に変色、炭化、粘り等の変化が生じない等の条件を満たす耐熱性が求められる。したがって、耐熱コート層36は、エポキシ樹脂、ニトロセルロース、又はアクリル系樹脂を主剤とするコート剤を用いて印刷形成される。
【0028】
なお、情報印刷層34の情報表示の視認性を良くするため、軟質アルミニウム箔32の表面に、白色又は白濁色のベタである白濁色印刷層(図示せず)を設け、その上面に情報印刷層34及び耐熱コート層36を設けてもよい。
【0029】
軟質アルミニウム箔32の反対側の表面は、ヒートシール層38で覆われている。ヒートシール層38は、包装シート30を容器シート24に熱接着するときに、容器シート24の平面部12bに溶着する層であり、容器シート24と軟質アルミニウム箔32を良好に接着できる材料が選択される。この実施形態で良好な接着とは、140〜160℃のヒートシールバーを用いて2〜3kg/cm2、1secの加圧を行って熱接着したとき、0.6〜1kg/m以上の剥離強度が得られる場合を指す。例えば、容器シート24の材質がポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)の場合、ヒートシール層38の材料はポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)とポリエステル樹脂との混合物が好適である。容器シート24の材質がポリプロピレン樹脂(PP樹脂)の場合、ヒートシール層38の材料もポリプロピレン樹脂(PP樹脂)であることが好ましい。容器シート24の材質がポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の場合、ヒートシール層38の材料もポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)であることが好ましい。
【0030】
図4に示すように、容器シート24及び包装シート30をPTP包装体製造装置22にセットすると、容器シート24は、図示しない移送装置に引っ張られ、充填装置28によって収容部12aに固形物14が入れられた後、シール装置18に送られる。また、包装シート30は、図示しない移送装置に引っ張られ、シール装置18に送られる。
【0031】
そして、シール装置18がシール工程を行う。シール工程は、容器シート24及び包装シート30を重ね合わせてシール装置18の加熱ロール18a及び受けロール18bの間に通し、互いに熱接着させる工程である。このとき、加熱ロール18aは、包装シート26の耐熱コート層36側の面を加熱し、受けロール18bは、容器シート24の平面部12b(収容部12aが突出している側の面)を保持し、加熱ロール18aからの押圧力を受け止める。加熱ロール18aの表面には凹凸(例えば、格子状の筋目)が設けてあり、図8(b)に示すように、包装シート30が容器シート24の表面に食い込んで強固に熱接着させる。格子状の食い込み27は、例えば、ピッチが約0.5〜1mm、深さが約20〜60μmである。
【0032】
その後、容器シート24及び包装シート30は、図示しない移送装置に引っ張られて打ち抜き装置20に送られ、打ち抜き装置20が打ち抜き工程を行う。打ち抜き工程は、容器シート24及び包装シート30を規定サイズに打ち抜く工程で、この打ち抜き工程を行うことによって、図5に示すPTP包装体10が形成される。打ち抜かれたPTP包装体10の一辺の長さd(10)は、容器体12の長さd(12)と等しく、印刷部34aの長さd(34a)と等しい。打ち抜き装置20は、各長さd(10),d(12),d(34a)が目標値になるように、PTP包装体10を正確に打ち抜くことができる。
【0033】
次に、上記の製造方法を実施したときの、印刷部34aの長さd(34a)の変化について説明する。図2は、長さd(34a)の初期値、熱接着前の値、熱接着後の値、打ち抜き後の値の実測データを示すグラフであり、縦軸の長さd(34a)は、打ち抜き後の値を100%として表記している。実験に使用した包装シートは、この実施形態の包装シート30の試作品と、基材が硬質アルミニウム箔の包装シート(比較例)の2種類である。
【0034】
包装シート30の試作品は、総厚みが約25μm、軟質アルミニウム箔32の厚みが約20μmで、印刷部34aの長さd(34a)は99.3%に設定されている。この包装シート30は、ロール状に巻かれてセットされ、シール装置18の近くまで移送された時点で、長さd(34a)が100.2%になった。初期の長さより長くなったのは、移送装置によって引っ張られて軟質アルミニウム箔32が長さ方向に延びたからである。
【0035】
その後、シール装置18を通過した時点で、長さd(34a)が98.9%になった。熱接着前の長さより短くなったのは、図8に示すように、包装シート30が容器シート24の表面に食い込み、食い込んだ分だけ軟質アルミニウム箔32が長さ方向に短くなったからである。
【0036】
そして、打ち抜き装置20まで移送され、打ち抜かれた後の長さd(34a)は100%となり、目標値になった。熱接着後の長さより長くなったのは、移送装置によって引っ張られて容器シート24及び軟質アルミニウム箔32が長さ方向に延びたからである。包装シート30の試作品を用いてPTP包装体10を製造した結果、容器体12と印刷部34aの位置ずれの問題は発生しなかった。
【0037】
比較例の包装シート40は、包装シート30の試作品の軟質アルミニウム箔32を、同じ厚みの硬質アルミニウム箔に置き換えたもので、印刷部34aの長さd(34a)は99.9%に設定されている。この包装シート40は、ロール状に巻かれてセットされ、シール装置18の近くまで移送された時点で、長さd(34a)が101.0%になった。初期の長さより長くなったのは、上記と同様に、移送装置によって引っ張られて硬質アルミニウム箔が長さ方向に延びたからである。
【0038】
その後、シール装置18を通過した時点で、長さd(34a)が98.9%になった。熱接着前の長さより短くなったのは、上記と同様に、包装シート40が容器シート24の表面に食い込み、食い込んだ分だけ軟質アルミニウム箔32が長さ方向に短くなったからである。
【0039】
そして、打ち抜き装置20まで移送され、打ち抜かれた後の長さd(34a)は100%となり、目標値になった。熱接着後の長さより長くなったのは、上記と同様に、移送装置によって引っ張られて容器シート24及び硬質アルミニウム箔が長さ方向に延びたからである。包装シート40を使用してPTP包装体10を製造した結果、容器体12と印刷部34aの位置ずれの問題は発生しなかった。
【0040】
包装シート30の試作品と比較例の包装シート40のデータを比較すると、初期から熱接着前までの間の長さd(34a)の延び量はほぼ同じである。また、熱接着後から打ち抜き後までの間の長さd(34a)の延び量もほぼ同じである。これは、軟質アルミニウム箔の方が硬質アルミニウム箔よりも延びやすいものの、常温環境下では延びやすさの差は小さいことを示している。
【0041】
一方、熱接着前から熱接着後までの間の長さd(34a)の縮み量は、約1.6倍の違いがある発生している。これは、軟質アルミニウム箔の方が硬質アルミニウム箔よりも延びやすく、特にシール工程の高温環境下では、延びやすさの差が大きくなることを示している。つまり、包装シート30の試作品の場合、加熱されて容器シート24の表面に食い込むとき、軟質アルミニウム箔32が柔軟に延びたため、長さd(34a)の縮み量が小さくなったと考えられる。反対に、比較例の包装シート40の場合、加熱されて容器シート24の表面に食い込むとき、硬質アルミニウム箔があまり延びなかったため、長さd(34a)の縮み量が大きくなったと考えられる。
【0042】
この実験結果から、軟質アルミニウム箔32で成る包装シート30を用いてPTP包装体10を製造する場合、包装シート30の印刷部34aの長さd(34a)の初期値は、従来の硬質アルミニウム箔で成る包装シートと同じに設定すると、容器体12と印刷部34aの位置合わせが上手くできないことが分かる。
【0043】
上記のような包装シート30の試作と実験を繰り返した結果、印刷部34aの長さd(34a)の初期値を、打ち抜き後の値(仕上がりの目標値)の98.0〜99.7%の範囲に設定することによって、容器体12と印刷部34aの位置ずれの問題がほぼ発生しなくなることが分かった。98.0〜99.7%という数値は、薬用の錠剤等の包装に使用される一般的なPTP包装体10に使用されるものであれば、容器シート24の材質や厚み、軟質アルミニウム箔32の厚みや特性、加熱ローラ18aの凹凸の形状等が多少変更になっても適用できる数値である。
【0044】
図3は、印刷部の長さd(34a)の初期値を98.0〜99.7%の範囲に設定したときの、長さd(34a)の変化のしかたを概念的に示したグラフである。初期値に幅があると、熱接着前の値に幅が発生し、熱接着後の値にも幅が発生するので、容器体12と印刷部34aの位置ずれをゼロにすることはできないが、この程度あれば、ほぼ許容範囲に収めることができる。
【0045】
例えば、図4に示すように、PTP包装体製造装置22の、包装シート30をシール装置18に向けて移送する経路に、長さ調節装置42を付設し、包装シート30の長さを調節する長さ調節工程を実施すれば、熱接着前の値の幅と熱接着後の値の幅をもっと小さくすることができる。長さ調節装置42は、包装シート30に対し、シール装置18への移送を妨げる方向の引っ張り力を加える装置であり、図示しないセンサを使用して、シール装置18に移送される容器シート24(容器体12)と印刷部34aとの位置ずれを検出し、包装シート30にかかる張力を調節することによって位置ずれを修正する。
【0046】
長さ調節工程を設けることによって、印刷部の長さd(34a)の初期値の幅(98.0〜99.7%)を狭くせずに、熱接着前の値の幅や熱接着後の値の幅を小さくすることができる。特に、包装シート30は、基材が硬質アルミニウム箔よりも延びやすい軟質アルミニウム箔32なので、従来よりも容易且つ適切に位置ずれを修正することができ、容器体12と印刷部34aの位置ずれを確実に許容範囲に収めることが可能になる。
【0047】
なお、長さ調節工程を設けない場合、容器体12と印刷部34aの位置ずれが確実に許容範囲に収まるようにするため、印刷部34の長さd(34a)の初期値は、打ち抜き後の値(仕上がりの目標値)の98.5〜99.7%の範囲に設定することが好ましく、98.9〜99.7%の範囲に設定することがより好ましい。
【0048】
以上説明したように、この実施形態のPTP包装体の製造方法によれば、軟質アルミニウム箔32を基材とした包装シート30を使用するので、製造されたPTP包装体10は、鞄やポケットに入れて携帯したとき等に蓋材16が簡単に破れないものである
【0049】
また、包装シート30に容器体12毎に情報表示である印刷部34aが並設され(ピッチ印刷され)、各印刷部34aの並設方向の長さd(34a)の初期値を、打ち抜き後の値(仕上がりの目標値)の98.0〜99.7%の範囲に設定することによって、従来の硬質アルミニウム箔で成る包装シート用のPTP包装体製造装置22に特別な改造を加えなくても、容器体12と印刷部34aの位置合わせを容易に行うことができ、PTP包装体10を効率よく綺麗に製造することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 PTP包装体
12 容器体
12a 収容部
16 蓋材
18 加熱装置
18a 加熱ロール
18b 受けロール
20 打ち抜き装置
22 PTP包装体製造装置
24 容器シート
30 包装シート
32 軟質アルミニウム箔
34 情報印刷層
34a 印刷部
36 耐熱コート層
38 ヒートシール層
42 長さ調節装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8