【文献】
宇土 顕彦 Akihiko Udo,流出量の圧力依存性を考慮した配水管網の定常流解析 Steady-State Flow Analysis of Pipe Networks under the Condition that Outflows are Given as Functions of Pressures,システム/制御/情報 第47巻 第1号 SYSTEMS,CONTROL AND INFORMATION,日本,システム制御情報学会 The Institute of Systems,Control and Information Engineers,2003年 1月15日,第16巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管路要素を示す管路枝と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である節点又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である有効水頭を地盤高とともに扱う水頭及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析装置であって、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である水頭差及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定する手段と、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出する手段と、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出する手段と、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、を備え、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する管網解析装置。
前記特性式は、各需要箇所での流出量について、圧力が0であれば0であり、圧力が増加するにつれて増加し、圧力が閾値に到達すれば需要量に等しくなり、その増加の割合は圧力が0と閾値の近傍で小さく、両者の中間付近で最大となる曲線であって、圧力が0を下回る場合及び、閾値を上回る場合の前記流出量を与える傾きが小さな正の直線が外挿されており、
前記圧力依存管網解析処理において反復計算を行う中で、前記圧力不足節点からの流出量が負又は需要量を超える場合、前記外挿された直線によって与えられる有効水頭から計算される水頭差が、前記反復計算中における前記仮想接続枝の水頭差として決定される請求項1又は請求項2に記載の管網解析装置。
ポンプ車による消火栓取水時を含む第1の特定取水時の計算を実施する為に、取水節点に対して、ポンプ車による消火栓取水時の流出量を付加し、前記木枝固定流量に加入して、前記圧力依存管網解析処理を行う請求項1〜4の何れかに記載の管網解析装置。
ホース直結による消火栓取水時又は、放水銃による取水を含む第2の特定取水時の計算を実施する為に、取水節点における前記流出量を、ホース直結による消火栓取水時又は、放水銃による取水についての流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて決定される圧力依存量として更新して、当該流出量を前記木枝固定流量に加入せずに、前記圧力依存管網解析処理を行う請求項1〜5の何れかに記載の管網解析装置。
管路要素を示す管路枝と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である節点又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である有効水頭を地盤高とともに扱う水頭及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析プログラムであって、コンピュータを、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である水頭差及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定する手段と、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出する手段と、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出する手段と、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段として機能させ、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する管網解析プログラム。
管路要素を示す管路枝と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である節点又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である有効水頭を地盤高とともに扱う水頭及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析方法であって、コンピュータが、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である水頭差及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定するステップと、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出するステップと、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続するステップと、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出するステップと、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続するステップと、を備え、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する管網解析方法。
【背景技術】
【0002】
管網解析は配水池の水位と各需要箇所での需要量、配水池と需要箇所を結ぶ管路要素(管路、ポンプ、バルブ)の特性がすべて与えられた時に、管網各部の圧力と流量を求める定常流解析問題である。従来、上水道の配水管網については各管路要素を線(枝)、それらの繋がりを点(節点)で表す解析グラフで扱って、管網解析を行う為の技術が提案されている。
【0003】
初期の管網解析では、管網からの流出量(需要量、流出水量)をすべて与件として、圧力に係わらず一定の非圧力依存量とするものであった。解析手法は、主要変数の取り方によって大きく節点水頭法とメッシュ流量法に分けられる。
【0004】
非特許文献1には、メッシュ流量法による配水管網の解析に係る技術が開示されている。ここでのメッシュは、解析グラフにおいて「構成枝の枝数ができるだけ小さくなるように順次選ばれたループ(閉路)の組」と定義されている。非特許文献2には、流向変化や閉止弁の開閉の変更に際して計算精度の向上を図る為の管路取り出しモデルに係る技術が開示されている。
【0005】
更に近年、流出量が圧力に依存するという現実に即した解析の性質が明らかにされた。非特許文献3−5には、流出量の圧力依存性を考慮した管網解析を実現する為の手法が開示されている。また、特許文献1、2にも、圧力依存性を考慮した管網解析手法が開示されている。
【0006】
非特許文献6には、管路に沿って多くの需要点で水が取り出されるという現実を直接的に扱った離散型取り出しモデルが開示されている。これにより管路取り出しモデルで圧力依存性を扱うことが可能となった。
【0007】
非特許文献7には、2次側圧力を一定に保つ働きをする各種配水機器・設備(2次圧固定要素)を含む管網を対象とした管網解析の手法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般には、節点水頭法における変数の数に比べて、メッシュ流量法における変数の数が大幅に少なく、後者でコンパクトな定式化が可能である。また、節点水頭法では、変数に対して管路の特性式の傾きが無限大となる箇所を含むため、定式化される非線形連立代数方程式の求解計算の収束性に問題が生じる場合があるが、メッシュ流量法での収束性は良好である。
【0011】
そのため、実在管網についての計算時間を比較すると、メッシュ流量法が節点水頭法の1/10〜1/100となる場合が多いことが知られている。一方で、圧力依存性を考慮したメッシュ流量法による求解手法は、従来存在しなかった。
【0012】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、流出量の圧力依存性を考慮し、管網解析をメッシュ流量法で実現する為の新規な手法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、管路要素を示す「管路枝」と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である「節点」又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す「水頭既知節点」を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である「有効水頭」を地盤高とともに扱う「水頭」及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析装置であって、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である「水頭差」及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定する手段と、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出する手段と、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出する手段と、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、を備え、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する。
【0014】
また、本発明は、管路要素を示す管路枝と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である節点又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である有効水頭を地盤高とともに扱う水頭及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析プログラムであって、コンピュータを、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である水頭差及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定する手段と、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出する手段と、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段と、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出する手段と、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続する手段として機能させ、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する。
【0015】
また、本発明は、管路要素を示す管路枝と、管路枝の一端および他端に前記管路枝同士の接続点である節点又は、前記管路枝と配水池の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフに対して、前記節点における水圧である有効水頭を地盤高とともに扱う水頭及び節点あるいは管路からの流出量を圧力依存量として算出する管網解析方法であって、コンピュータが、
水頭を0とする基準節点並びに、前記基準節点及び水頭既知節点を接続する基準節点接続枝を付加して、前記水頭既知節点の前記水頭及び流入量を、前記基準節点接続枝における両端の水頭の差である水頭差及び流量として扱い、前記解析グラフにおいて、すべての前記節点を結び、ループは構成しない枝集合である木及びメッシュ群を決定するステップと、
前記木に含まれる枝の木枝固定流量及び前記メッシュ群のメッシュ流量を用いて反復計算による非圧力依存管網解析処理を行って、各節点の有効水頭を算出するステップと、
管網解析処理に基づいて得られる前記有効水頭を閾値と比較して、前記有効水頭が前記閾値に満たない圧力不足節点を、仮想接続枝により前記基準節点と接続するステップと、
前記圧力不足節点における流出量を、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて得られる圧力依存量として更新して、前記圧力不足節点が仮想接続枝により基準節点と接続された新たな解析グラフに対して、前記仮想接続枝によって追加された新たなメッシュを含むメッシュ群のメッシュ流量を変数として、反復計算による圧力依存管網解析処理を行い、各節点の前記有効水頭を算出するステップと、
前記圧力依存管網解析処理に基づいて得られる前記仮想接続枝が接続された節点における有効水頭が前記閾値以上又は0以下の場合、前記仮想接続枝を除去し、前記仮想接続枝が接続されていない節点における有効水頭が前記閾値に満たない場合、圧力不足節点として、新たな前記仮想接続枝により前記基準節点と接続するステップと、を備え、
前記仮想接続枝の追加及び削除がなくなるまで圧力依存管網解析処理を繰り返し、前記追加及び削除がなくなった際の各節点における有効水頭を、圧力依存量としての流出量を与える有効水頭として出力する。
【0016】
このような構成とすることで、メッシュ流量法を用いて流出量の圧力依存性を考慮した管網解析を実行することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記圧力依存管網解析処理は、前記仮想接続枝における流量を前記木枝固定流量に加入しない。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記特性式は、各需要箇所での流出量について、圧力が0であれば0であり、圧力が増加するにつれて増加し、圧力が所定の値(閾値)に到達すれば需要量に等しくなり、その増加の割合は圧力が0と閾値の近傍で小さく、両者の中間付近で最大となる曲線であって、圧力が0を下回る場合及び、閾値を上回る場合の前記流出量を与える傾きが小さな正の直線が外挿されており、
前記圧力依存管網解析処理において反復計算を行う中で、前記圧力不足節点からの流出量(仮想接続枝の流量)が負又は需要量を超える場合、前記外挿された直線によって与えられる有効水頭から計算される水頭差が、前記反復計算中における前記仮想接続枝の水頭差として決定される。
【0019】
このような構成とすることで、非線形連立方程式の求解反復計算中に、負の流出量又は需要量を超えた流出量が計算された場合に、圧力依存性を考慮した流出量を与えながら収束性を良好に、管網解析処理を行うことができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記管網解析処理は、各管路枝において取り出される合計流出量を一定として実行され、
管路に対応した前記管路枝の一部又は全部に対して、管網解析処理結果に基づいて得られる前記管路枝の起点流量及び水頭差を与えるような点を決定し、前記点に合計流出量を集約した節点を含む解析グラフに対して、前記圧力依存管網解析処理を実行する。
【0021】
このような構成とすることで、水が管路に沿って一様に取り出されると仮定した管路取り出しモデルを、圧力依存性を考慮した管網解析処理に適用することができる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、ポンプ車による消火栓取水時を含む第1の特定取水時の計算を実施する為に、取水節点に対して、ポンプ車による消火栓取水時の流出量を付加し、前記木枝固定流量に加入して、前記圧力依存管網解析処理を行う。
【0023】
このような構成とすることで、第1の特定取水時において、圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、ホース直結による消火栓取水時又は、放水銃による取水を含む第2の特定取水時の計算を実施する為に、取水節点における前記流出量を、ホース直結による消火栓取水時又は、放水銃による取水についての流出量の圧力依存性を示す特性式に基づいて決定される圧力依存量として更新して、当該流出量を前記木枝固定流量に加入せずに、前記圧力依存管網解析処理を行う。
【0025】
本発明の好ましい形態では、前記第2の特定取水時における流出量の圧力依存性を示す特性式は、少なくとも、流出量が負の場合の圧力を与える式が外挿されている。
【0026】
このような構成とすることで、ホース直結による消火栓取水時や、放水銃の使用時といった第2の特定取水時において、圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、流出量の圧力依存性を考慮し、管網解析をメッシュ流量法で実現する為の新規な手法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係る管網解析装置について説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではなく、様々な構成を採用することもできる。
【0030】
例えば、本実施形態では管網解析装置の構成、動作などについて説明するが、同様の構成の方法、コンピュータプログラム、記録媒体、システムなども、同様の作用効果を奏することができる。プログラムは、記録媒体に記憶させてもよい。この記録媒体を用いれば、例えばコンピュータに前記プログラムをインストールすることができる。前記プログラムを記憶した記録媒体は、例えばCD−ROM等の非一過性の記録媒体であっても良い。システムは、例えば管網解析装置をサーバ、利用者端末をクライアントとするサーバクライアント型の管網解析システムの態様であってもよい。
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る管網解析装置のハードウェア構成図である。管網解析装置1は、管網解析プログラムを記憶した情報処理装置である。管網解析装置1として具体的には、パーソナルコンピュータなどを用いることができる。
【0032】
つまり、管網解析装置1は、ハードウェア構成要素として、演算装置(CPU(Central Processing Unit))11と、作業用メモリとしての主記憶装置(RAM(Random Access Memory))12とを備える。また、管網解析装置1は、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、および各種情報(データを含む)を書換え可能に格納するHDDやSSD、フラッシュメモリ等の補助記憶装置13と、通信制御部14と、NIC(Network Interface Card)などの通信インタフェース(IF)部15と、表示制御部16と、表示部17と、情報入力・指定部18と、を備える。
【0033】
管網解析装置1において、後に詳述する処理手段を論理的に実現するには、補助記憶装置13に、管網解析プログラムなどをアプリケーションプログラムとしてインストールしておく。そして、管網解析装置1においては、電源投入またはユーザによる指示を契機に、演算装置(CPU)11がアプリケーションプログラムを主記憶装置(RAM)12に展開して実行する。
【0034】
次に、
図1および関連図(
図2〜
図7)を参照して、管網解析装置1における処理について更に詳述する。
【0035】
図2(a)は、配水系の例を示す図である。配水系は、配水池R1、R2や複数の管路要素j(管路、バルブ、ポンプ等)同士の接続点i(i=3〜9)を有する。各接続点から伸びる矢印に付されたc
iは、需要者に取り出される水の流出量(需要量)を示す。図示例の2配水池、7接続点によって表される配水系を例として、本実施形態において管網解析装置が実行する管網解析処理について説明する。
【0036】
図2(b)は、
図2(a)で示す配水系についての解析グラフである。解析グラフにおいて、管路要素jを示す枝B
jとしての管路枝B
j(図示例では、B
1〜B
11)と、それらの一端および他端には、管路枝B
j同士の接続点iである節点N
i(図示例では、N
3〜N
9)又は、管路枝B
jと配水池の接続点iを示す節点N
iである水頭既知節点N
i(図示例では、N
1、N
2)が接続される。なお、管路枝B
jには任意に決定した向きが設定されるが、実際の流向と異なったものであってもよい。
【0037】
更に、解析グラフには、水頭がゼロの節点N
iである基準節点N
0を与える。また、基準節点N
0並びに、水頭既知節点N
1及び水頭既知節点N
2を接続する枝B
jとして基準節点接続枝B
j(図示例では、B
12及びB
13)を定義して、水頭既知節点N
1、N
2の水頭を基準節点接続枝の水頭差として与える。N
1、N
2からの流入量はB
12、B
13の流量として求められる。
【0038】
p
iは、節点N
iの水頭(節点水頭)を示し、水頭p
iから地盤高を引いた値を有効水頭e
iとする。水頭差h
j(損失水頭)は、(1)式により表される。(1)式においてp
jo及びp
jdは、それぞれB
jの起点と終点の節点における水頭を示す。また、枝B
jの流量を枝流量q
jとする。
【0040】
<管路特性式>
ここで、管路枝B
jで表される管路要素jのうち、管路の特性は、Hazen-Williamsの実験式に従うものとして、(2)式により表される管路特性式を用いる。ここで、r
jは管路の性状に応じて決定される管路の抵抗係数であり、(3)式に示すように、流速係数CH
j、管口径d
j及び管路長l
jにより決定される。
【0042】
一方、バルブの特性は、(4)式により表される。ここで、r
vjはバルブの性状に応じて決定されるバルブの抵抗係数であり、損失係数及び口径により決定される。
【0044】
また、管路及びバルブの変分抵抗(損失偏微分係数)を(5)式により定義する。
【0046】
<流量連続条件式>
各節点iにおいて流入量の総和と流出量の総和が等しくなる、とする流量連続条件式を用いる。メッシュ流量を変数とする場合にはこの条件は自動的に満たされる。
【0047】
<水頭閉合条件式>
また、2点間の水頭差h
jの総和は、いずれの経路を通っても等しくなる、あるいは、メッシュ(ループ)を構成する管路の水頭差h
jの総和はゼロになる、とする水頭閉合条件式を用いる。
【0048】
既述の管路特性式、流量連続条件式及び水頭閉合条件式を連立させて、各管路要素j(枝B
j)の枝流量q
jと水頭差h
j、各節点N
iの水頭p
i(有効水頭e
i)を求める問題が管網解析である。本実施形態では、更にメッシュ流量を定義し、非線形連立代数方程式として定式化して、Newton-Raphson法(NR法)により求解計算を行うものとする。
【0049】
<木枝固定流量>
解析グラフにおいて、すべての節点N
iを結ぶがループは構成しない枝集合を木という。木の探索を開始する節点を根、根からできるだけ枝分かれするように探索した木を広さ優先木という。
図2(b)において、木に含まれる枝B
jを実線の矢印で示し(管路枝B
1〜B
4、B
7〜B
9及び基準節点接続枝B
12、B
13)、木に含まれない枝B
j(補木枝:管路枝B
5、B
6、B
10及びB
11)を破線の矢印で示す。
【0050】
基準節点N
0を根とした広さ優先木を張り、各需要節点N
3〜N
9からの流出量がすべて木を通って基準節点N
0から供給されるものとしたときの各枝B
jの流量を固定流量a
jと呼ぶ。ここで、補木枝の固定流量はゼロとする。
【0051】
図2(b)の解析グラフにおいて、広さ優先木が実線のように張られたとき、各枝B
jの固定流量a
jは(6)式のように、各節点N
iからの流出量c
iにより表される。
【0053】
<メッシュ流量法による定式化>
メッシュM
kは一般に、平面グラフにおいて、枝で囲まれ、内部に他の枝を含まない領域、あるいはその領域を囲む枝集合と定義される。本実施形態では、メッシュM
kを構成する枝B
jの数ができるだけ少なくなるように、順次選ばれたループのそれぞれとして、メッシュM
kを立体グラフにも適用可能となるように拡張する。これによりメッシュ群が定義される。また、それぞれのメッシュM
kには、任意の基準方向を定義する。メッシュM
kを構成する枝B
jには、枝の方向を任意に定義したメッシュM
kの基準方向と同方向なら正、逆方向なら負の符号を付ける。
図3のようにメッシュが探索された場合、各メッシュM
kを構成する枝B
jは以下のようになる。
【0054】
メッシュM
1: B
13, −B
12, B
1, B
3, B
6, −B
4
メッシュM
2: B
2, B
5, −B
3, −B
1
メッシュM
3: B
5, B
8, −B
10, −B
7
メッシュM
4: B
8, B
11, −B
9, −B
6
【0055】
図3は、解析グラフで探索されたメッシュの一例を示す図である。各メッシュM
kを構成するすべての枝B
jに共通な流量成分(循環流量)を考え、メッシュ流量m
kと呼ぶ。枝B
jの枝流量q
jは、各枝の固定流量a
jにその枝を同方向に含むメッシュ流量m
kをすべて加え、逆方向に含むメッシュ流量m
kをすべて引いた値である。
図3の例において、枝流量q
jを固定流量a
j及びメッシュ流量m
kで示すと、(7)式のようになる。
【0057】
ここで、各メッシュM
kについての水頭閉合条件式は、(8)式のようになる。
【0058】
【数8】
p
1、p
2はそれぞれ節点N
1とN
2の既知水頭であり、基準節点接続枝B
12、B
13の水頭差として扱われる。
【0059】
各枝の水頭差h
jを枝流量q
jで表し、更に、枝流量q
jをメッシュ流量m
kで表すと、(9)式として、メッシュ流量m
kを変数とする非線形連立代数方程式が導かれる。
(9)式は、(10)式を変数とする4次元方程式(11)式と把握される。
【0060】
【数9】
【数10】
Tはベクトルの転置を表す。
【数11】
【0061】
それを所定の求解アルゴリズムによって解くことでMが求められ、その値から各枝B
jの枝流量q
jと水頭差h
j、各節点N
iの水頭p
i(有効水頭e
i)を求めることができる。本実施形態では、この非線形連立代数方程式を、一例として、ニュートン法(NR法:Newton-Raphson法)によって解くこととする。任意に仮定したM
νの初期値M
0から出発して(12)式及び(13)式からなる修正方程式によりMの値を逐次計算し、Z(M
ν+1)の値が0に十分近づいたと判断したとき、計算を終了する。J
νは以下で述べるヤコビ行列、上添え字νは反復回数である。
【0063】
M=M
νの時の管路要素jの変分抵抗の値rを(14)式で表すとする。このとき、ヤコビ行列J
νは(15)式で与えられる。ここで、対角成分C
llは、メッシュM
kに含まれる各枝の変分抵抗(基準節点接続枝の変分抵抗は0)の総和である。また、非対角成分C
mnは、メッシュM
mとメッシュM
n(mは行、nは列番号と対応)の両方に含まれる枝の変分抵抗の和に、それらの枝が両メッシュに同方向に含まれるときは正、逆方向に含まれるときは負の符号をつけたものである。
【0065】
<流出量の圧力依存性を考慮した管網解析処理>
図4は、本実施形態における流出量の圧力依存性を考慮した管網解析処理の処理フローチャートである。
【0066】
ステップS1において、管網解析装置1を用いて、メッシュ流量法によって圧力依存性を考慮しない従前の管網解析処理(非圧力依存管網解析処理)を行う。管網解析装置1のプロセッサは、配水池や領域等の指定を受け付けることで、データベースに格納された管路要素及び、接続点に関する情報を用いて、解析グラフを生成する。データベースに格納された情報とは、例えば、管路要素の性状に関する情報(長さ、口径、使用年数、材質、等)、接続点の位置(緯度、経度、地盤高(標高)、等)に関する情報等である。管網解析装置1のプロセッサは、探索を行って木を張るとともにメッシュを求め、各節点N
iの流出量c
iが、事前に定義された需要量に等しく一定として、メッシュ流量法による管網解析処理を行う。それにより、非圧力依存量としての各枝B
jの枝流量q
jと水頭差h
j、各節点N
iの水頭p
iを求める。
【0067】
ここで、管網解析装置1のプロセッサは、各節点N
iの有効水頭e
iを閾値e
dと比較する。一般に、節点N
iにおいて、有効水頭e
iが19mあれば、需要量c
idに対してその値に等しい流出量c
iが得られると言われている。需要量c
idに対してその値に等しい流出量c
iが得られる有効水頭e
iを閾値e
dとする。0<有効水頭e
i<閾値e
dとなる節点N
iを、圧力不足節点に決定する。また、本実施形態では、有効水頭e
i≦0となる節点N
iでは、流出量c
i=0の一定量として、閾値e
d≦有効水頭e
iとなる節点N
iでは、流出量c
i=需要量c
idの一定量として扱う。
【0068】
図5は、上水道配水管網における流出量の圧力依存性を扱う場合の給水管接続点における有効水頭e
iと流出量c
iの関係を示す特性式(以下、e-c特性式と呼ぶ)である。本実施形態におけるe-c特性式は、各需要箇所での流出量について、圧力が0であれば0であり、圧力が増加するにつれて増加し、圧力が所定の値(閾値e
d)に到達すれば需要量c
idに等しくなり、その増加の割合は圧力が0と閾値の近傍で小さく、両者の中間付近で最大となる曲線である。このe-c特性式の妥当性は非特許文献4などに示されている。本実施形態では、後述する管網解析処理の反復計算時の流出量c
iに基づいて有効水頭から水頭差を決定するため、圧力が0を下回る場合及び、閾値を上回る場合の前記流出量を与える傾きが小さな正の値の直線が外挿されている。圧力依存管網解析処理において反復計算を行う中で、圧力不足節点からの流出量(仮想接続枝の流量)が負又は需要量を超える場合、外挿された直線によって与えられる有効水頭から計算される水頭差が、反復計算中における仮想接続枝の水頭差として決定される。
【0069】
<管路取り出しモデルへの応用>
ステップS2では、水が管路に沿って一様に取り出されると仮定した管路取り出しモデルを考慮する。管網解析装置1のプロセッサは、各管路jに沿っての合計流出量c
jおよびステップS1で計算された起点流量q
j*と水頭差h
jから、同じ起点流量q
j*と水頭差h
jを与えるように管路j内の1点Pに流出量c
jを集約する集約点決定処理を、各管路jに対して行う。管路jの起点からPまでの流量がq
j*、Pから終点までの流量が(q
j*−c
j)となる。
管路取り出しモデルを考慮に入れる場合、各枝B
jに流出量c
jが集約された節点P
jを配置した解析グラフに対して管網解析処理を実行する。後述の数式では、説明の簡略化のため、節点P
jを考えずに、
図3に示す解析グラフに基づいた計算例を示すこととする。なお、管路取り出しモデルを扱う場合は、節点P
jが増加するが、メッシュ数には影響がないため、メッシュ流量法の計算時間には影響しない。
【0070】
ステップS3では、圧力不足節点N
iと基準節点N
0を結ぶ仮想接続枝A
jを付加する。この時、仮想接続枝A
jの流量として扱われる節点N
iからの流出量c
jは、木枝固定流量a
jに加算しない。
【0071】
図6は、仮想接続枝A
jを付加した解析グラフの一例を示す図である。例えば、ステップS1の処理結果から、節点N
8及びN
9が圧力不足節点と決定された場合、図示するように、解析グラフに対して、節点N
8から伸びる仮想接続枝A
14及び、節点N
9から伸びる仮想接続枝A
15を付加する。
【0072】
管網解析装置1のプロセッサは、仮想接続枝A
jが付加された新たな解析グラフに対してメッシュの探索を実施し、メッシュを取り直す。それにより、新たなメッシュM
kが追加される。図示例では、仮想接続枝A
14及びA
15により、新たなメッシュM
5及びM
6が追加される。
【0073】
メッシュM
1: B
13, −B
12, B
1, B
3, B
6,−B
4
メッシュM
2: B
2, B
5, −B
3, −B
1
メッシュM
3: B
5, B
8, −B
10, −B
7
メッシュM
4: B
8, B
11, −B
9, −B
6
メッシュM
5: A
14, −A
15, −B
11
メッシュM
6: A
15, −B
13, B
4, B
9
【0074】
ステップS4において、圧力不足節点に対して所定の処理を行い、圧力依存性を考慮したメッシュ流量法による管網解析処理を行う。管網解析装置1のプロセッサは、圧力不足節点に対して、
図5のe-c特性式に基づいて、NR反復により新たな流出量を決定する。圧力不足節点N
8及びN
9に対しては、その有効水頭e
iに応じて、e-c特性式より求められる流出量を付与する。また、本実施形態では、有効水頭e
i≦0となる節点N
iには流出量c
i=0を付与し、閾値e
d≦有効水頭e
iとなる節点N
iには流出量c
i=需要量c
idを付与する。
【0075】
仮想接続枝A
jが追加されることで、仮想接続枝A
jについての枝流量q
jが定義されると共に、既定義の枝流量q
jが、追加されたメッシュM
kによって再定義される。ただし、仮想接続枝A
jからの流出量c
jは、木枝固定流量a
jに加算されず、各枝B
jの固定流量a
jは(16)式のように変化しない。
図6の例において、枝流量q
jを固定流量a
j及びメッシュ流量m
kで示すと、(17)式のようになる。ここで、各メッシュM
kについての水頭閉合条件式は、(18)式のようになる。
【0077】
以上から、(19)式として、メッシュ流量m
kを変数とする非線形連立代数方程式が導かれる。(19)式は、(20)式を変数とする6次元方程式(21)式と把握される。これをステップS1と同様、所定の求解アルゴリズムによって求解する。この場合のヤコビ行列J
νは(22)式で与えられる。
【0078】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【0079】
求解アルゴリズムによる反復計算時に、節点N
iからの流出量である枝A
jの流量が負あるいは需要量を超えた場合は、その枝の水頭差を、有効水頭e
i≦0、閾値e
d≦有効水頭e
iの場合にe-c特性式において外挿された、傾きが極めて小さな正の値の直線から求めた値を使用する。管網解析装置1は、メッシュ流量法による管網解析処理を行い、圧力依存量としての各枝Ajの枝流量q
jと水頭差h
j、各節点N
iの水頭p
iを求める。
【0080】
ステップS5において、仮想接続枝A
jが接続されている節点N
iについて:
・ステップS4で得られた有効水頭e
iが閾値e
dを超える場合(閾値e
d≦有効水頭e
i)、仮想接続枝A
jを除去し、一定流出量(需要量c
id)として木枝固定流量a
jに加入して扱う。
・ステップS4で得られた有効水頭e
iが0以下の場合(有効水頭e
i≦0)、仮想接続枝A
jを除去し、流出量c
iを0で扱う。
・圧力不足節点として判断された場合(0<有効水頭e
i<閾値e
d)、仮想接続枝A
jの接続を維持する。
【0081】
一方、ステップS5において、仮想接続枝A
jが接続されていない節点N
iについて:
・ステップS4で得られた有効水頭e
iが0以下又は、閾値e
dを超える場合(有効水頭e
i≦0、閾値e
d≦有効水頭e
i)、そのまま、流出量一定(流出量=0、もしくは、需要量c
id)として扱う。
・圧力不足節点として判断された場合(0<有効水頭e
i<閾値e
d)、新たな仮想接続枝A
jを接続する。
【0082】
ステップS6では、ステップS5において仮想接続枝A
jの追加及び削除がなかった場合(ステップS6でYES)、圧力依存性を考慮した管網解析処理が完了したと判断して、枝流量q
j、水頭差h
j、水頭p
iを出力する(ステップS7)。ステップS5において仮想接続枝A
jの追加及び/又は削除があった場合(ステップS6でNO)、ステップS4に戻り、新たな仮想接続枝A
jが接続されたグラフに対して、圧力依存性を考慮した管網解析処理を行う。
【0083】
本実施形態では、まず、需要量として一般の家庭や事務所における平常時の使用を想定し、給水管接続点における有効水頭と流出量を
図5の特性式で扱う場合について説明したが、圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことにより、種々の利用形態における流出量の高精度な算出が可能となる。
【0084】
<ポンプ車による消火栓取水時の解析>
以上の拡張として、ポンプ車による消火栓取水時といった第1の特定取水時における圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことができる。ポンプ車で消火用水を消火栓から取水する場合、通常1台のポンプで毎分1トン程度の取水量となる。ポンプ車による消火栓からの取水量については、圧力に係わらず一定の流出量として考えることができるため、一定流出量として木枝固定流量a
jに算入する。ポンプ車による消火栓からの取水量は大きな値となる為、周辺地区における圧力は大幅に低下する。そのため、ポンプ車による消火栓からの取水量を一定流出量c
j、一般家庭等における取出し量を圧力依存量として扱うことで、周辺の一般家庭等での流出量が減少するという現実の状況に即した計算結果が得られる。
【0085】
<ホース直結による消火栓取水時の解析>
消火栓、消火栓に直結するホースと放水ノズルの流出量・圧力特性式(圧力損失の式)を仮想接続枝A
jとして加えて、ホース直結による消火栓取水時や、放水銃による取水時といった第2の特定取水時における圧力依存性を考量した管網解析処理を行うことができる。放水量c
iと放水圧が仮想接続枝A
jの流量及び水頭差(放水圧+地盤高)として求められる。
【0086】
<放水銃による消火のための管網の解析>
図7は、放水銃の流出量・圧力特性式を示す。
図7に示すように、放水量が放水銃の元圧pの平方根√pの関数となる。使用される放水銃について、放水銃が接続される節点に仮想接続枝A
jを加え、特性式に基づいて圧力依存量としての流出量を与えることで、圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことができる。
【0087】
なお、消火栓、ホースと放水ノズルの流出量・圧力特性式、放水銃の流出量・圧力特性式については、解析途中の反復計算時に流量が実用上考えにくい値となることがあるので、
図5のe-c特性式で有効水頭が0以下、閾値e
d以上の場合に、傾きの極めて小さい正の直線で外挿したように、想定外の流量に対しても、所定の式で外挿しておく。
【0088】
<2次圧一定要素を含む管網の解析>
配水管網における配水圧の制御を容易にするために、2次圧を一定に保つ減圧弁や調圧槽が多く用いられる。これら2次圧固定要素を含む管網を対象とする場合であっても、流出量の圧力依存性を考慮した管網解析処理を行うことができる。
【解決手段】管路枝と、管路枝の両端に管路枝同士の節点又は管路枝と配水池R1,R2の接続点を示す水頭既知節点を配置した解析グラフと、節点の水頭及び節点又は管路流出量を圧力依存量として算出する管網解析装置であり、解析グラフの全節点を結びループ非構成の枝集合の木及びメッシュ群決定手段と、木枝固定流量とメッシュ流量で非圧力依存管網解析処理を行う各節点有効水頭算出手段と、圧力不足節点を仮想接続枝で基準節点と接続する手段と、圧力不足節点の流出量を配水管網の圧力依存量を更新し、圧力不足節点が仮想接続枝で基準節点と接続された新解析グラフに対し、新メッシュ流量を変数とし、圧力依存管網解析処理を行う各節点有効水頭算出手段と、有効水頭が閾値未満の場合圧力不足節点として、新仮想接続枝で基準節点との接続手段とを備える。