【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る循環水系統の水質管理システムは、
循環水塩化物イオンが循環する循環ラインと、前記循環ラインに設けられて前記循環水の蒸発潜熱により前記循環水を冷却する冷却塔と、を備えるプラントの循環水系統の水質管理システムであって、
前記循環ラインに補給水を供給するための補給水供給部と、
前記循環ラインから前記循環水を排出するための循環水排出部と、
前記循環ラインにpH調整剤又はインヒビターの少なくとも一方の薬剤を供給するための薬剤供給部と、
前記循環ラインに設けられる機器の内部流路又は前記循環ラインを構成する配管の全面腐食を検出するための全面腐食センサと、
前記配管の局部腐食を検出するための局部腐食センサと、
前記全面腐食センサ及び前記局部腐食センサの検出結果に基づいて、前記補給水供給部、前記循環水排出部及び前記薬剤供給部を制御するためのコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記全面腐食センサにより前記配管の全面腐食が検出されたとき、前記薬剤を前記循環ラインに供給するように前記薬剤供給部を制御し、
前記局部腐食センサにより前記配管の局部腐食が検出されたとき、前記補給水を前記循環ラインに供給するように前記補給水供給部を制御するとともに、前記循環水の一部を前記循環ラインから排出するように前記循環水排出部を制御する
ように構成される。
【0009】
配管の全面腐食とは、配管材料の表面全体が活性面であるために腐食反応が広い範囲で起きて、配管の減肉として現れる腐食態様である。これに対し、配管の局部腐食とは、配管の局所的な腐食に起因して配管のき裂の発生として現れる腐食態様である。局部腐食は、循環水中の塩化物イオン等の皮膜破壊型イオンの存在により配管材料の酸化皮膜が局所的に破壊されて当該部分において腐食が進行することで発生する。
局部腐食の発生メカニズムは、循環水中の皮膜破壊型イオン(例えば、塩化物イオン)の濃度が所定の値以上になったときに配管材料の酸化被膜が局所的に破壊される結果、局部的に腐食が進行するというものである。このため、局部腐食が発生した場合には、補給水を循環ラインに供給するとともに、循環ラインから循環水の一部を排出することで、循環ラインにおける皮膜破壊型イオンの濃度を下げる必要がある。一方、全面腐食の場合、pH調整剤やインヒビターのような薬剤の供給により腐食を抑制することが可能である。
上記(1)の構成によれば、循環ライン又は循環ライン上の機器の内部流路を構成する配管に生じる腐食が全面腐食又は局部腐食であるかを識別した上で、全面腐食が生じている場合に薬剤供給で腐食抑制を図るようにしたので、配管の腐食を抑制しながら、水質管理システムの運用中に消費する補給水量を削減することができる。
なお、全面腐食センサと、局部腐食センサとを別体として構成してもよいし、両センサを同一センサで兼用することも可能である。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記循環水系統は、前記循環ラインに設けられる復水器を備え、
前記復水器は、
冷却水としての前記循環水が内部を流れ、外部を流れる蒸気を復水させるように構成された複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の入口側に設けられる入口ヘッダと、
前記複数の伝熱管の出口側に設けられる出口ヘッダと、
を含み、
前記全面腐食センサは、少なくとも一つの前記伝熱管に設置される。
【0011】
復水器の伝熱管は入口ヘッダに比べて流路断面積が小さいため、伝熱管内における循環水(冷却水)の流速は比較的大きくなる。また、伝熱管内を流れる循環水は蒸気との熱交換により加熱され、比較的温度が高い。このため、復水器の伝熱管は、循環水の流速が大きく、循環水の温度が高いため、全面腐食の反応速度が比較的大きい。
この点、上記(2)の構成によれば、全面腐食が起きやすい復水器の伝熱管に全面腐食センサを設けたので、水質管理システムの運用により、復水器伝熱管の全面腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記循環水系統は、前記循環ラインに設けられる循環水ポンプを備え、
前記全面腐食センサは、前記循環ラインのうち前記循環水ポンプの出口側の前記配管に設けられる。
【0013】
循環水ポンプの出口側配管は、循環水ポンプから吐出された流速が大きい循環水が流れるので、全面腐食の反応速度が比較的大きい。
この点、上記(3)の構成によれば、全面腐食が起きやすい循環水ポンプの出口側配管に全面腐食センサを設けたので、水質管理システムの運用により、循環水ポンプの出口側配管の全面腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか一つに記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記循環水系統は、前記循環ラインに設けられる復水器又は熱交換用配管を備え、
前記復水器は、冷却水としての前記循環水が内部を流れ、外部を流れる蒸気を復水させるように構成された複数の伝熱管を含み、
前記局部腐食センサは、少なくとも一つの前記伝熱管又は前記熱交換用配管のUベンド部に設置される。
【0015】
復水器の伝熱管やその他熱交換機の管板部、熱交換用配管のUベンド部等には、比較的大きな引張り応力が作用するため、例えば、引張応力が高くなりやすい復水器の伝熱管や熱交換器のUベンド部をステンレス材料で形成した場合には局部腐食の一形態であるSCC(応力腐食割れ)が発生しやすい。また、伝熱効率を向上させる観点から伝熱管の肉厚は薄いため、局部腐食による伝熱管の破損のリスクは比較的大きい。
この点、上記(4)の構成によれば、局部腐食(例えば、復水器の伝熱管や、他の熱交換機のUベンド部、等をステンレス材料で形成した場合にはSCC等)が発生しやすく破損リスクが高い伝熱管や、熱交換器のUベンド部に局部腐食センサを設けたので、水質管理システムの運用により、復水器伝熱管の局部腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか一つに記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記循環水系統は、前記循環ラインに設けられる復水器を備え、
前記復水器は、
冷却水としての前記循環水が内部を流れ、外部を流れる蒸気を復水させるように構成された複数の伝熱管と、
前記複数の伝熱管の入口側に設けられる入口ヘッダと、
前記複数の伝熱管の出口側に設けられる出口ヘッダと、
を含み、
前記局部腐食センサは、前記入口ヘッダと前記複数の伝熱管との接続部、または、前記出口ヘッダと前記複数の伝熱管との接続部の少なくとも一方に設置される。
【0017】
復水器の伝熱管とヘッダ(例えば、水室など)との接続部には、拡管や溶接などにより比較的大きな引張り応力が作用する。このため、仮に、伝熱管をステンレス材料等で形成した場合は局部腐食の一形態であるSCC(応力腐食割れ)が発生しやすい。
この点、上記(5)の構成によれば、局部腐食(例えば、伝熱管材料としてステンレスを用いた場合はSCC等)が発生しやすい伝熱管とヘッダとの接続部に局部腐食センサを設けたので、水質管理システムの運用により、復水器の伝熱管−ヘッダの接続部における局部腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れか一つに記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記循環ラインは、
第1配管と、
前記第1配管とフランジ締結又は溶接により接続される第2配管と
を含み、
前記局部腐食センサは、前記第1配管と前記第2配管との接続部に設置される。
【0019】
上記(6)の構成によれば、塩化物イオン濃度が高い循環水が滞留しやすい配管接続部に局部腐食センサを設けたので、水質管理システムの運用により、配管接続部における局部腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れか一つに記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記全面腐食センサは、UTセンサを含む。
【0021】
UTセンサは、配管材料の外表面からの超音波反射波と、配管材料の内表面からの超音波反射の受信タイミングの差に基づいて配管の肉厚を高精度に測定可能である。
このため、上記(7)の構成のように、全面腐食センサとしてUTセンサを用いることで、配管の減肉として現れる全面腐食を適切に検出することができる。よって、水質管理システムの運用により、全面腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れか一つに記載の循環水系統の水質管理システムにおいて、
前記局部腐食センサは、ECTセンサを含む。
【0023】
ECTセンサは、配管材料(金属)に渦電流を発生させ、配管材料におけるき裂に起因したインピーダンス信号の乱れを検知することで、局部腐食を検出可能である。
このため、上記(8)の構成のように、局部腐食センサとしてECTセンサを用いることで、配管のき裂として現れる局部腐食を適切に検出することができる。よって、水質管理システムの運用により、局部腐食を抑制可能な水質に維持可能となる。
【0024】
(9)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るプラントは、
循環水塩化物イオンが循環する循環ラインと、前記循環ラインに設けられて前記循環水の蒸発潜熱により前記循環水を冷却する冷却塔と、を含む循環水系統と、
前記循環水系統の水質を管理するように構成された、請求項1乃至8の何れか一項に記載の水質管理システムと、
を備える。
【0025】
上記(9)の構成によれば、循環ライン又は循環ライン上の機器の内部流路を構成する配管に生じる腐食が全面腐食又は局部腐食であるかを識別した上で、全面腐食が生じている場合に薬剤供給で腐食抑制を図るようにしたプラントが提供される。したがって、配管の腐食を抑制しながら、水質管理システムの運用中に消費する補給水量を削減することが可能なプラントを提供することができる。
【0026】
(10)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る循環水系統の水質管理方法は、
循環水塩化物イオンが循環する循環ラインと、前記循環ラインに設けられて前記循環水の蒸発潜熱により前記循環水を冷却する冷却塔と、前記循環ラインに補給水を供給するための補給水供給部と、前記循環ラインから前記循環水を排出するための循環水排出部と、前記循環ラインにpH調整剤又はインヒビターの少なくとも一方の薬剤を供給するための薬剤供給部と、を備えるプラントの循環水系統の水質管理方法であって、
全面腐食センサを用いて、前記循環ラインに設けられる機器の内部流路又は前記循環ラインを構成する配管の全面腐食を検出するステップと、
局部腐食センサを用いて、前記配管の局部腐食を検出するステップと、
前記全面腐食センサ及び前記局部腐食センサの検出結果に基づいて、前記補給水供給部、前記循環水排出部及び前記薬剤供給部を制御するステップと、を備え、
前記制御するステップでは、
前記全面腐食センサにより前記配管の全面腐食が検出されたとき、前記薬剤を前記循環ラインに供給するように前記薬剤供給部を制御し、
前記局部腐食センサにより前記配管の局部腐食が検出されたとき、前記補給水を前記循環ラインに供給するように前記補給水供給部を制御するとともに、前記循環水の一部を前記循環ラインから排出するように前記循環水排出部を制御する。
【0027】
上記(10)の構成によれば、上記(1)同様に、循環ライン又は循環ライン上の機器の内部流路を構成する配管に生じる腐食が全面腐食又は局部腐食であるかを識別した上で、全面腐食が生じている場合に薬剤供給で腐食抑制を図るようにしたので、配管の腐食を抑制しながら、水質管理システムの運用中に消費する補給水量を削減することができる。