特許第6763631号(P6763631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6763631熱式流量センサの製造方法及び熱式流量センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763631
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】熱式流量センサの製造方法及び熱式流量センサ
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/684 20060101AFI20200917BHJP
【FI】
   G01F1/684 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-29000(P2017-29000)
(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公開番号】特開2018-136138(P2018-136138A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 紘久
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4962489(JP,B2)
【文献】 特許第4844252(JP,B2)
【文献】 特許第4797866(JP,B2)
【文献】 特許第4935225(JP,B1)
【文献】 特許第4888040(JP,B2)
【文献】 特許第4893370(JP,B2)
【文献】 特許第6518486(JP,B2)
【文献】 特開2017−26428(JP,A)
【文献】 米国特許第6779712(US,B2)
【文献】 米国特許第7408133(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に貼り付けられた2枚のセンサチップと、前記2枚のセンサチップ間で間隙を有して前記配管に貼り付けられた基板とを備えた熱式流量センサの製造方法において、
前記基板上に、接着剤を塗布する領域を示すマークを表示するマーク表示ステップと、
前記基板上の前記マークが示す領域に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、
接着剤が塗布された前記基板を前記配管に貼り付ける貼り付けステップと
を有することを特徴とする熱式流量センサの製造方法。
【請求項2】
前記マークは、前記領域が塗りつぶされたマーク、又は、当該領域の外形を示す枠である
ことを特徴とする請求項1記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、突設片を有する凸型形状であり、
前記マークは、前記突設片に表示された
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項4】
前記基板は、前記2枚のセンサチップと対向するそれぞれの箇所に開口を有する板状部材である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項5】
前記接着剤塗布ステップにおいて、前記基板上の、前記2枚のセンサチップの外側に相当する領域にも接着剤を塗布する
ことを特徴とする請求項4記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項6】
前記貼り付けステップにおいて前記基板が前記配管に貼り付けられる前に、前記マークが示す領域と接着剤が位置する領域とを比較し、当該接着剤の塗布不良を検査する検査ステップを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項7】
前記貼り付けステップにおいて前記基板が前記配管に貼り付けられた後に、前記マークが示す領域と接着剤が位置する領域とを比較し、当該接着剤の塗布不良を検査する検査ステップを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の熱式流量センサの製造方法。
【請求項8】
配管に貼り付けられた2枚のセンサチップと、
前記2枚のセンサチップ間で間隙を有して、接着剤により前記配管に貼り付けられた基板とを備え、
前記基板は、接着剤を塗布する領域を示すマークを有し、当該領域に接着剤が塗布された
ことを特徴とする熱式流量センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管に2枚のセンサチップ及び基板が貼り付けられた熱式流量センサを製造する製造方法及び熱式流量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒータを用いて、配管内を流れる流体の流量を測定する熱式流量センサが知られている(例えば特許文献1参照)。この熱式流量センサでは、ヒータが設けられたセンサチップと、温度センサが設けられたセンサチップと、接着部がセンサチップ間に位置する基板とが、接着剤により配管に貼り付けられている。そして、ヒータが、温度センサにより測定された温度よりも一定温度高くなるように加熱を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2001/084087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、基板への接着剤の塗布は自動又は手動で行われるが、常に均一に塗布できるわけではなく、塗布量又は塗布範囲にバラツキが生じてしまう。そして、配管と基板との間の接着領域が広くなると、ヒータからの熱が伝わる経路が大きくなる。よって、この熱が配管を介して温度センサまで伝わってしまい、温度センサによる測定に影響し、ヒータでの加熱温度に誤差が生じてしまう。その結果、熱式流量センサにおいて、微小流量域での流量測定精度が低下し、特に最大計測流量が小さくなると精度保証流量範囲が狭くなる。一方、熱式流量センサは、流量を測定する様々な分野で利用されており、測定環境において安定した計測が求められている。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ヒータにより生じた熱が温度センサに伝わることを抑制できる熱式流量センサの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る熱式流量センサの製造方法は、基板上に、接着剤を塗布する領域を示すマークを表示するマーク表示ステップと、基板上のマークが示す領域に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップと、接着剤が塗布された基板を配管に貼り付ける貼り付けステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、ヒータにより生じた熱が温度センサに伝わることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A図1Bは、この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの構成例を示す図であり、図1Aは斜視図であり、図1Bは底面図である。
図2】この発明の実施の形態1における基板の構成例を示す上面図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの製造装置の構成例を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5A図5Cは、この発明の実施の形態1におけるマークの別の表示例を示す図である。
図6】この発明の実施の形態1における基板の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る熱式流量センサの構成例を示す図である。図1では、センサチップ2,3と基板4とを接続する信号線の図示を省略している。
熱式流量センサは、ヒータ22を用いて、配管(キャピラリ)1内を流れる流体(液体又は気体)の流量を測定するセンサである。この熱式流量センサは、図1に示すように、ガラス管から成り、流体が流れる配管1と、配管1の座繰り面11に貼り付けられたセンサチップ2,3と、センサチップ2,3に接続されて信号の入出力を行う基板4とを備えている。
【0010】
センサチップ2には、配管1に貼り付けられる薄膜であるダイヤフラム部21に、配管1内の流体に熱を加えるヒータ22が設けられている。
センサチップ3には、配管1内の流体の温度を測定する温度センサ31が設けられている。なお、センサチップ2とセンサチップ3との間には間隙が設けられている。
【0011】
図1に示す基板4は、一辺から突設された突設片41を有する凸型形状に構成されたプリント基板である。突設片41は、センサチップ2とセンサチップ3との間に間隙を有して位置し、配管1に貼り付けられる部位である。また図2に示すように、基板4上には、突設片41に、基板4を配管1へ貼り付ける際に接着剤5を塗布する領域を示すマーク42が表示されている。図2に示すマーク42は、接着剤5を塗布する領域が塗りつぶされた矩形状のマークである。そして、このマーク42が示す領域に接着剤5が塗布され、基板4が配管1の座繰り面11に貼り付けられる。
【0012】
そして、基板4は、温度センサ31により測定された温度を示す信号を取得し、当該温度よりも一定温度高くなるようにヒータ22を制御する。そして、基板4は、ヒータ22におけるパワーを示す信号を取得することで、流体の流量を測定する。すなわち、熱式流量センサでは、配管1内の流体が静止している場合に周囲に対して一定温度高くなるようにヒータ22により熱を加えた際の熱量と、配管1内の流体が上流側から下流側へ流れている場合に周囲に対して一定温度高くなるようにヒータ22により熱を加えた際の熱量とに、差が生じる。この熱量の差は、配管1内の流体の流量と相関関係がある。よって、熱式流量センサでは、この熱量の差から配管1内を流れる流体の流量を測定できる。
【0013】
次に、熱式流量センサを製造する製造装置6の構成例について、図3を参照しながら説明する。なお以下では、熱式流量センサの製造工程のうち、基板4の配管1への貼り付けに関する工程のみを示す。また以下では、製造装置6が自動で各工程を行う場合を示すが、手動で行ってもよい。
製造装置6は、図3に示すように、マーク表示部61、接着剤塗布部62及び貼り付け部63を備えている。
【0014】
マーク表示部61は、基板4上に、接着剤5を塗布する領域を示すマーク42を表示する。図2の例では、マーク表示部61は、凸型形状である基板4の突設片41上に、マーク42を表示する。
なお、接着剤5を塗布する領域は、基板4の配管1への接着強度が既定値を満たす範囲内で、センサチップ2,3間方向における幅が狭くなるように設定する。これにより、ヒータ22により生じた熱が、基板4を介して、センサチップ3に設けられた温度センサ31に伝わることを抑制できる。
【0015】
接着剤塗布部62は、基板4上のマーク42が示す領域に、接着剤5を塗布する。この際、接着剤塗布部62は、例えば画像処理によって基板4上に表示されたマーク42の位置を認識し、当該マーク42が示す領域への接着剤5の塗布を行う。また、接着剤塗布部62における接着剤5の塗布量は、貼り付け後の配管1と基板4との間の接着層の厚みが既定値となるような量に設定される。
【0016】
貼り付け部63は、接着剤5が塗布された基板4を配管1に貼り付ける。この際、貼り付け部63は、接着剤5が塗布された基板4上に配管1を載せ、一定の荷重で配管1を基板4側に押し付けることで、基板4を配管1に貼り付ける。
【0017】
次に、熱式流量センサの製造方法の一例について、図4を参照しながら説明する。
熱式流量センサの製造方法では、図4に示すように、まず、マーク表示部61が、基板4上に、接着剤5を塗布する領域を示すマーク42を表示する(ステップST1、マーク表示ステップ)。
次いで、接着剤塗布部62は、基板4上のマーク42が示す領域に、接着剤5を塗布する(ステップST2、接着剤塗布ステップ)。
次いで、貼り付け部63は、接着剤5が塗布された基板4を配管1に貼り付ける(ステップST3、貼り付けステップ)。
【0018】
このように、基板4上にマーク42を表示して接着剤5を塗布する領域を指定することで、接着剤5の塗布量及び塗布範囲のバラツキを抑制でき、安定化できる。
ここで、接着剤5の塗布量が多くなるにつれて、伝熱量が増える。そのため、接着剤5の塗布量及び塗布範囲を安定させることで、伝熱量を所望の範囲に管理できる。その結果、センサチップ2に設けられたヒータ22により生じた熱が、基板4を介して、センサチップ3に設けられた温度センサ31に伝わることを抑制できる。
【0019】
一方、接着剤5の塗布量が少ない場合、基板4の配管1への接着強度が弱くなる。それに対し、実施の形態1に係る熱式流量センサでは、マーク42を用いて接着剤5を塗布する領域を指定しているため、接着剤5の塗布量を管理でき、基板4の配管1への接着強度が既定値を満たすように構成できる。
【0020】
以上のように、この実施の形態1によれば、基板4上に、接着剤5を塗布する領域を示すマーク42を表示し、基板4上のマーク42が示す領域に接着剤5を塗布し、接着剤5が塗布された基板4を配管1に貼り付けるように構成したので、ヒータ22により生じた熱が温度センサ31に伝わることを抑制できる。
【0021】
なお上記では、基板4として、プリント基板を用いた場合を示した。しかしながら、これに限らず、基板4は、信号の入出力が可能な基板であればよく、フレキシブルプリント基板等を用いてもよい。
【0022】
また上記では、マーク42として、矩形状のマークを用いたが、形状はこれに限らず、例えば図5Aに示すような円形状のマークを用いてもよい。また上記では、マーク42として、接着剤5を塗布する領域が塗りつぶされたマークを用いたが、これに限らず、当該領域の外形を示す枠を用いてもよい。この際、例えば、図5Bに示すような複数のL字から成る枠や、図5Cに示すような複数の破線から成る枠を用いることができる。このように、マーク42は、接着剤5を塗布する領域を指定できるものであればよい。
【0023】
また上記では、基板4が突設片41を有する凸型形状である場合を示した。しかしながら、基板4の形状はこれに限らず、例えば図6に示すような形状としてもよい。図6では、基板4として、センサチップ2,3と対向するそれぞれの箇所に開口43を有する板状部材とした場合を示している。なお図6に示す基板4では、センサチップ2,3も図示している。
また、この場合には、接着剤塗布部62は、基板4上のセンサチップ2,3間の領域だけではなく、基板4上のセンサチップ2,3の外側に相当する領域44にも接着剤5を塗布してもよい。これにより、接着強度が高まるため、センサチップ2,3間での配管1と基板4との接着領域を更に狭めることができ、ヒータ22により生じた熱が基板4を介してセンサチップ3に設けられた温度センサ31に伝わることを更に抑制できる。
【0024】
また、制御装置に検査部を追加し、図4に示す工程に対し、マーク42を用いた検査工程(検査ステップ)を追加してもよい。
すなわち、接着剤5が不透明である場合、基板4上のマーク42が示す領域と塗布された接着剤5が位置する領域とから、接着剤5の塗布不良を検査可能である。
この場合、検査部は、貼り付け部63により基板4が配管1に貼り付けられる前後のうちの少なくとも一方において、マーク42が示す領域と接着剤5が位置する領域とを比較する。そして、検査部は、マーク42が示す領域と接着剤5が位置する領域とのずれが一定割合以上であると判断した場合には、接着剤5の塗布不良であると判断する。これにより、接着剤5の塗布量及び塗布範囲が適正であるかを検査可能となる。
【0025】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 配管
2 センサチップ
3 センサチップ
4 基板
5 接着剤
6 製造装置
11 座繰り面
21 ダイヤフラム部
22 ヒータ
31 温度センサ
41 突設片
42 マーク
43 開口
44 領域
61 マーク表示部
62 接着剤塗布部
63 貼り付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6