特許第6763641号(P6763641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763641
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】自動車用エアクリーナ
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/024 20060101AFI20200917BHJP
   F02M 35/08 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   F02M35/024 511A
   F02M35/024 511C
   F02M35/08 J
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-227849(P2016-227849)
(22)【出願日】2016年11月24日
(65)【公開番号】特開2018-84200(P2018-84200A)
(43)【公開日】2018年5月31日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】山下 晋平
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−022714(JP,A)
【文献】 特開平07−071333(JP,A)
【文献】 特開2016−089766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00−35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルームに配置されるエンジン用に使用するエアクリーナであって、
空気入口を側面部又は底部に設けたロアケースと、空気出口を設けたアッパケースと、前記アッパケースとロアケースとの間に介在させたフィルターエレメントと、前記フィルターエレメントの下方でかつ前記空気入口よりも上に配置されたガイド部材とを備えており、
前記ガイド部材に、前記空気入口から流入した空気をいったん下向きに方向変換させる第1方向変換部を設けて、前記ロアケースに、前記ガイド部材の第1方向変換部によって下向きに方向変換された空気を上向きに反転させて前記第1方向変換部の方向に向かわせるガイド壁が形成されており、
更に、前記ガイド部材に、前記ガイド壁によって上向きに方向変換した空気が通過する開口を、前記第1方向変換部と隣り合うように形成して、前記ガイド部材の第1方向変換部に、前記開口を通過した空気の拡散機能を持たせている、
自動車用エアクリーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車のエンジンルームに配置してエンジンに清浄空気を供給するエアクリーナに関するものである。
【0002】
エアクリーナは、空気入口(インレット)と空気出口(アウトレット)とを備えており、自動車用のエアクリーナでは、空気入口を横向きに配置していることが多い。これは、取り込む空気に雨水が入り込むことを防止するためであるが、エンジンルーム内の空気は機関の熱で昇温しているため、空気入口を横向きに開口させていると、エンジンの充填効率が悪化するという問題である。
【0003】
そこで、エアクリーナの空気入口を前向きに(車両前方に向けて)開口させることにより、昇温していない空気(走行風)をエアクリーナに取り込みつつ、雨水(水滴)の侵入を防止する工夫が成されている。
【0004】
その例として特許文献1には、エアクリーナを構成するロアケースに、空気入口をそのまま延長した筒状のインレット通路を形成し、インレット通路に横向きの穴を開口させることにより、取り込んだ空気の流れを横向きに方向変換させることが開示されている。この特許文献1では、雨粒は筒体の底部に衝突して霧化するため、雨粒(水滴)がフィルターエレメントに侵入することを防止できる。
【0005】
他方、特許文献2には、ロアケースの側面部に空気入口を形成した場合において、ロアケースの内部に、流入した空気の流れ方向を直角に方向変換させてフィルターエレメントに向かわせる分離室を設けることが開示されている。つまり、特許文献2は、ロアケースの内部に、空気入口と連通した分離室を形成して、この分離室に、フィルターエレメントの側に向いて開口したスリットを形成することにより、空気が方向変換してスリットを通過し、フィルターエレメントに向かうように形成したもので、雨水は、特許文献1と同様に分離室の内面に衝突して霧化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−219482号公報
【特許文献2】特開2016−089766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2では、空気入口を前向きにしてフロントグリルの近傍部に配置しても、雨粒(水滴)がフィルターエレメントに当たることを防止できるため、吸気系や気筒内への水滴の侵入を防止しつつ、充填効率を向上できる利点がある。
【0008】
しかし、特許文献1,2では、空気は、インレット通路や分離室に流入してから直角に方向変換してロアケースの内部に噴出するものであり、空気の流れがいったん止まるような状態になるため、空気の流れ抵抗が大きくならざるを得ず、すると、空気の取り込み効率が良くなくて、加速の応答性もよくないというおそれがある。
【0009】
また、空気は方向性(直進性)を持ってインレット通路や分離室から噴出するため、フィルターエレメントの特定の部位に空気が強く当たる傾向を呈しており、このため、フィルターエレメントは全体を使用できずに寿命が短くなりやすいというおそれもある。
【0010】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明のエアクリーナは、自動車のエンジンルームに配置されるエンジン用に使用するものであり、このエアクリーナは、
空気入口を側面部又は底部に設けたロアケースと、空気出口を設けたアッパケースと、前記アッパケースとロアケースとの間に介在させたフィルターエレメントと、前記フィルターエレメントの下方でかつ前記空気入口よりも上に配置されたガイド部材とをを備えており、
前記ガイド部材に、前記空気入口から流入した空気をいったん下向きに方向変換させる第1方向変換部を設けて、前記ロアケースに、前記ガイド部材の第1方向変換部によって下向きに方向変換された空気を上向きに反転させて前記第1方向変換部の方向に向かわせるガイド壁が形成されており、
更に、前記ガイド部材に、前記ガイド壁によって上向きに方向変換した空気が通過する開口を、前記第1方向変換部と隣り合うように形成して、前記ガイド部材の第1方向変換部に、前記開口を通過した空気の拡散機能を持たせている」
という構成になっている。
【0012】
本願発明のように、ロアケースの一部をガイド部に兼用すると、それだけ構造を簡単化できる利点がある。
【発明の効果】
【0013】
本願発明では、空気入口からロアケースに流入した空気は、流れ方向をいったん下向きに変えてから、ロアケースの底面によって上向きに方向変換し、それからフィルターエレメントを通過してアッパケースの空間に流入するが、まず、空気入口から流入した空気がいったん下向きに方向変換するため、取り込んだ空気に雨水が混入していても、雨水はまず第1方向変換部に衝突して霧化する。更に、ロアケース底部に衝突して霧化を促進させることも可能になる。
【0014】
従って、空気を取り込むダクトを自動車の進行方向に向けて開口させつつ、雨粒が吸気系に侵入することを防止して、充填効率を向上できる。また、空気はロアケースの底部の反射作用で上向きに方向を反転させるため、ロアケースの内部からフィルターエレメントに至る空気の流れはスムースであり、流れ抵抗は特許文献1,2に比べて著しく小さい。このため、高い加速応答性を確保できる。
【0015】
しかも、本願発明では、流れ方向を上向きに反転させた空気は、第1方向変換部にガイドされながらガイド部材の開口を通過してから水平方向に拡散してフィルターエレメントの下面全体に広がるため、フィルターエレメントの全体を濾過に均等に使用できる。これにより、空気の流れ抵抗を低減して加速応答性の更なる向上に貢献できると共に、フィルターエレメントの寿命も長くすることができる。
【0016】
実施形態のように、円弧状の(彎曲した)第1方向変換部(第1ガイド部を形成して、この第1ガイド部に空気が当たって下向きにガイドされる構成を採用すると、空気の下向きへの方向変換が一層スムースになると共に、第1方向変換部は、上向きに流れる空気を水平方向に拡散させる作用も有するため、空気をフィルターエレメントの全体に広がらせることを、簡単な構造で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)はエアクリーナの斜視図、(B)は実施形態に搭載した状態での模式的な平面図である。
図2】エアクリーナの分離斜視図である。
図3】(A)は中間部材を上方から見た斜視図、(B)は中間部材を下方から見た斜視図である。
図4】(A)はエアクリーナを空気入口の箇所で切断した縦断正面図で(B)のA−A視断面図、(B)は中間部材とロアケースとをセットした状態での平面図である。
図5図4(B)の V-V視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1).概略
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、概略を説明する。以下では、方向を特定するため前後左右の文言を使用するが、この方向は、運転者から見た状態を基準にしている。正面視は、運転者と対向した方向から見た状態である。
【0019】
図1(B)に、エンジンルーム1をおおまかに表示している。エンジンルーム1には、エンジン本体2が、例えばクランク軸を前後方向に向けた縦置きで配置されており、その横にエアクリーナ3を配置している。エアクリーナ3は、空気入口4を外周の一部に開口させたロアケース5と、空気出口6を外周の一部に開口させたアッパケース7と、両者の間に介在した中間部材8とを有しており、図2のとおり、フィルターエレメント9は中間部材8に入り込んでいる。アッパケース7、中間部材8、ロアケース5は樹脂の成形品である。
【0020】
図では省略しているが、アッパケース7は、左右短手側縁のうち片方の短手側縁の箇所を中心にして回動するようにロアケース5に連結されており、弾性変形するクリップによって連結状態が維持されている。アッパケース7を空けると、フィルターエレメント9を交換できる。なお、アッパケース7は着脱式であってもよい。
【0021】
各部材は長手辺と短手辺とを有する平面視長方形の形態であり、空気入口4は、ロアケース5における一方の短手側面5aの下部に設けている。正確に述べると、空気入口4は、ロアケース5における1つの短手側面5aのうち、下端寄り部位で、かつ、ロアケース5の1つの長手側面5bに寄った部位に設けており、斜め下向きに開口している。従って、空気は、正面視では図4(A)のとおり斜め上向きロアケース5に向かっている。
【0022】
エアクリーナ3は、エンジンルーム1には左右横長の姿勢で配置している。従って、空気入口4は左横向きに開口しているが、図1(B)のとおり、手前側に若干傾斜している。従って、図4(B)に明示するように、空気入口4は、平面視では、ロアケース5の中央部に向かうように少し傾斜している。
【0023】
空気入口4にはインレットダクト10が接続されており、インレットダクト10の前端は、自動車のフロントグリルの近くにおいて前向きに開口している。従って、エアクリーナ3には、エンジン本体2で加熱されていない空気が取り込まれる。エアクリーナ3の空気出口6にはアウトレットダクト11が接続されており、アウトレットダクト11の終端はスロットルボデー12に接続されている。
【0024】
(2).エアクリーナの詳細
次に、エアクリーナ3の詳細を説明する。ロアケース5は上向きに開口した箱状の形態であるが、空気入口4と反対側の部分は湾曲した状態に抉られている。従って、底部14の左右幅は上辺の左右幅に比べて数分の一の寸法しかなく、底部14の短手他側面は、湾曲後ろ壁(ガイド壁)15になっている。また、ロアケース5における一方の短手側面5aは、空気入口4の下方において内側に入り込んでいる。このため、底部14の左右幅は一層小さくなっている。
【0025】
アッパケース7は下向きに開口した略箱形であり、下端にはフランジ16を設けている。そして、上面(天面)は、空気入口4の側のコーナーが低くて空気入口4と反対側のコーナーが高くなるように傾斜しており、空気入口4と反対側の短手他側面に空気出口6を設けている。なお、図4に一点鎖線で示すように、空気出口6を一方の長手側面部に設けることも可能である。或いは、空気出口6を天面に設けることも可能である。
【0026】
図2に示すように、フィルターエレメント9の上端にはフランジ17を設けており、フランジ17が中間部材8とアッパケース7とで挟まれている。敢えて述べるまでもないが、フィルターエレメント9の本体部は、例えばジグザグ状に折った濾紙で構成されている。
【0027】
中間部材8は、フィルターエレメント9が入り込む平面視四角形(長方形)の枠部18を備えている。枠部18の下端はフィルターエレメント9の下端よりも少し下に位置している。従って、枠部18の下端とフィルターエレメント9との間には、空気が流れる空間が空いている。
【0028】
そして、枠部18の下端に、空気入口4に流入した空気をいったん下向きに方向変換させてから上向きに反転させて、フィルターエレメント9の下面全体に拡散させるガイド部材19が設けられている。このガイド部材19は、まず、ロアケース5に流入した空気をフィルターエレメント9に向けて流す開口(連通穴)20を備えている。開口20は空気入口4の側に寄せて形成されており、前後方向(ロアケース5の短手方向)に長くて、平面視ではロアケース5の短手一側面5aに向けて凸の状態に湾曲している。従って、開口20は、平面視ではカマボコ形の形態である。
【0029】
開口20を挟んで空気入口4の側には、空気入口4の延長方向に位置した第1方向変換部21と、空気入口4から前後方向にずれた第2方向変換部22とが前後に隣り合って形成されている。第1方向変換部21は、正面視で空気入口4の側に向けて凹んだ状態に湾曲しており、逆に、第2方向変換部22は、第1方向変換部21の側(短手一側面5a)に向けて凸の上端に湾曲しており、これら第1方向変換部21と第2方向変換部22とは、前部隔壁23を介して一体に繋がっている。開口20のうち空気入口4の側の面は、第1方向変換部21と第2方向変換部22との先端で構成されている。
【0030】
また、第1方向変換部21の下端は、ロアケース5の深さの中間点よりも上に位置している。従って、第1方向変換部21と底部14との間には大きな間隔が空いている。従って、空気は第1方向変換部21の下方を速やかに通過する。他方、第2方向変換部22の下端は、ロアケース5の深さの中間点よりも底部14に寄った箇所に位置している。従って、第1方向変換部21に向かった空気が第2方向変換部22の下方に逃げることはあまりない。
【0031】
開口20を挟んで第1方向変換部21と反対の側には第3方向変換部24が形成されて、開口20を挟んで第2方向変換部22と反対の側には第4方向変換部25が形成されている。第3方向変換部24と第4方向変換部25とは概ね水平状に近い姿勢であり、両者とも、湾曲後ろ壁15から短手一側面5aの側に向けて突出している。この場合、第3方向変換部24はロアケース5の枠部18の下端近くに位置しており、第4方向変換部25は、第3方向変換部24よりも低い位置(ロアケース5の深さの中間位置よりも少し高い部位)に位置している。第4方向変換部25は、先端に向けて高さが高くなるように、若干傾斜している。
【0032】
第3方向変換部24と第4方向変換部25とは、傾斜した後部隔壁26を介して一体に連結されている。従って、開口20のうち空気入口4と反対側の面は、第3方向変換部24と第4方向変換部25の先端で形成されている。第3方向変換部24と第4方向変換部25とは、ロアケース5の湾曲後ろ壁15に密接した湾曲部27を介して枠部18に連続している。また、中間部材8の枠部18は、ロアケース5に形成した土手部28に嵌まっている。
【0033】
(3).空気の流れ
空気入口4に流入した空気は、第1方向変換部21で下向きに方向変換し、底部14に向かう。そして、底部14の上で反転して上向きに方向を変えて、開口20に向かう。このとき、空気に雨粒(水滴)28が混入していると、図4(A)にドットで示すように、雨粒29はまず第1方向変換部21に衝突して霧化し、さらに、底部14への衝突によっても霧化が促進されている。
【0034】
従って、図1(B)のように、インレットダクト10の前端を前向きに開口させていることによって雨粒が取り込まれても、雨粒がそのままフィルターエレメント9に侵入することはない。このため、雨粒が吸気系や気筒に侵入することによるトラブルを防止しつつ、充填効率を向上できる。また、フィルターエレメント9の濡れも抑制できるため、濾過性能悪化も防止できる。
【0035】
第1方向変換部21は正断面視で直線状の姿勢でもよいが、実施形態のように、第1方向変換部21の側に凹状に湾曲させると、空気を下向きにスムースに方向変換できるため、整流機能に優れている。また、既述のとおり、第2方向変換部22は底部14の近くまで延びているため、空気が第2方向変換部22の下方に流れることは殆ど無くて、空気流の方向変換機能に優れている。
【0036】
第1方向変換部21で方向変換された空気のうち、その一部は第3方向変換部24に向かって反転し、開口20のうち手前側の部分からフィルターエレメント9に向かう。この場合、第1方向変換部21が湾曲しているため、開口20に流入した空気は第1方向変換部21にガイドされて、ロアケース5の短手一側面5aの側に流れるようにガイドされながら拡散していく。従って、第1方向変換部21は、空気を下向きにガイドする役割と、空気をフィルターエレメント9の下面に向けて拡散させる役割とを併有している。
【0037】
第3方向変換部24と湾曲後ろ壁15との間の空間は、袋状のバッファ空間30になっている。このため、湾曲後ろ壁15に沿って上向きに反転した空気は、バッファ空間30で勢いを削がれてから、第1方向変換部21にガイドされて上向きにスムースに流れていく。より正確に述べると、ロアケース5が湾曲後ろ壁15を備えていることと、第2方向変換部22の先端は第1方向変換部21の下端よりも上に位置しているととにより、空気は、バッファ空間30による流速低下作用とガイド作用とを受けて、第1方向変換部21の上の空間に向けてスムースに流れていき、それから、フィルターエレメント9の下面に広がるように拡散していく。従って、ロアケース5の湾曲後ろ壁15もガイド部の一部を構成している。
【0038】
第1方向変換部21で下向きに方向変換した空気の一部は、底部14に沿って第2方向変換部22の下方に向かって流れて、第2方向変換部22の箇所において、湾曲後ろ壁15にガイドされながら上向きに方向変換する。つまり、空気はロアケース5の内部で均一の圧力になろうとして圧力が低い場所に流れるため、第1方向変換部21で方向変換された空気の一部(大まかには、半分程度かそれ以上)は、底部14に沿って横移動するような状態で第2方向変換部22の下方に向けて流れて、第2方向変換部22の箇所において上向きに反転する。
【0039】
すると、第4方向変換部25が存在するため、空気は第2方向変換部22の側に向かいつつ上向きに流れるが、第2方向変換部22と湾曲部27とでジョウゴのような形態を成しているため、空気はフィルターエレメント9の下面全体に広がるように拡散していく(従って、第3方向変換部24と第4方向変換部25とは、空気を上向きに案内する役割と、フィルターエレメント9に向けて拡散する役割とを併有している。)。
【0040】
また、第2方向変換部22の上方に流入した空気の一部は第4方向変換部25の上方に向かうが、第4方向変換部25と第3方向変換部24とを繋ぐ後部隔壁26が傾斜しているため、第4方向変換部25の上方に流れ込んだ空気の一部は、後部隔壁26にガイドされて、第3方向変換部24の上方にスムースに流れ込む。このように、空気が水平方向に広く拡散していく。
【0041】
結局、第1方向変換部21と第2方向変換部22と第3方向変換部24と第4方向変換部25と湾曲部27(及び後ろ壁15、後部隔壁26)が、全体としてジョウゴのような形態になっているため、開口20から上向きに流れ込んだ空気は、フィルターエレメント9の下面に均等に広がるように拡散していく。このため、フィルターエレメント9の濾過効率を向上できると共に、寿命も長くすることができる。
【0042】
更に述べると、本実施形態では、底部で上向きに流れ方向を反転させた空気は、第3方向変換部24と第4方向変換部25とによって勢いが削がれて第1方向変換部21及び第2方向変換部22の方向に流れるが、このときの方向変換によって空気の直進性が著しく低下するため、各変換部や湾曲部27(及び湾曲後ろ壁15)等からなる仕切りの上方の空間にまんべんなく広がっていくのであり、これにより、空気をフィルターエレメント9の下面全体に均等に拡散させることができるのである。なお、中間部材8は、容易に型抜きできる状態で製造できるので、コストアップも抑制できる。
【0043】
本願発明は、上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、開口20を挟んで空気入口4の側に第1方向変換部21のみを形成し、開口20を挟んで湾曲後ろ壁15の側に第4方向変換部25のみを形成することも可能である。この場合は、第1方向変換部21は、ロアケース5における短手一側面5aの前後中間部に設けたらよい。
【0044】
また、実施形態の中間部材8は枠部18を備えているが、枠部18をロアケース5又はアッパケース7に形成して、ガイド部材19のみを独立して形成することも可能である。更に、製造上の問題がなければ、ガイド部材の全部又は一部をロアケース5に一体形成することも可能であるし、ガイド部材をロアケース5に溶着するといったことも可能である。エアクリーナ3の形状は平面視四角形には限らず、円形なども採用できる。
【0045】
空気入口は、ロアケースの底面に設けることも可能である。この場合は、空気はガイド部によってUターンして底部に向かい、次いで、上向きに方向変換して、拡散しつつフィルターエレメントの下面に広がっていく。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、自動車用のエアクリーナに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 エンジンルーム
2 エンジン本体
3 エアクリーナ
4 空気入口
5 ロアケース
6 空気出口
7 アッパケース
8 中間部材
9 フィルターエレメント
10 インレットダクト
11 アウトレットダクト
14 底部
15 湾曲後ろ壁(ガイド壁)
19 ガイド部材
20 開口
21 第1方向変換部
22〜24 ガイド部を構成する他の方向変換部
図1
図2
図3
図4
図5