特許第6763708号(P6763708)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6763708
(24)【登録日】2020年9月14日
(45)【発行日】2020年9月30日
(54)【発明の名称】接合材、接合材の製造方法、及び接合体
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/08 20060101AFI20200917BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20200917BHJP
【FI】
   B22F7/08 E
   B22F1/00 L
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-131104(P2016-131104)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-3088(P2018-3088A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆之
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 弘
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 裕二
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−129327(JP,A)
【文献】 特開昭60−223680(JP,A)
【文献】 特開平04−158994(JP,A)
【文献】 特開2013−039580(JP,A)
【文献】 特開2012−028774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00−8/00,
B23K 20/00,35/00−35/20,35/40,
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が300nm以下の、銅元素を95質量%以上含む微粒子のみを含み、前記微粒子同士が密着した、板状又はシート状の接合材であって、
当該接合材の空隙率が、0.30未満である、接合材。
【請求項2】
厚さが、200μm以下である、請求項1に記載の接合材。
【請求項3】
平均粒子径が300nm以下の、銅元素を95質量%以上含む微粒子を準備する第1工程と、
前記微粒子のみを0.5GPa以上に加圧して、板状又はシート状に形成する第2工程と、を備え
前記第2工程を、大気雰囲気中、5℃以上35℃以下で行う、接合材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の接合材と、第1被接合部材と、第2被接合部材と、を備え、
前記第1被接合部材と、前記第2被接合部材との間に前記接合材が設けられた、接合体。
【請求項5】
せん断強度が、30MPa以上である、請求項に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材、接合材の製造方法、及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の接合材として、半田の材料が広く用いられていた。しかしながら、半田の材料は、耐熱性に乏しいという問題があった。そのため、例えば、150℃以上の高温が見込まれるSiC素子を用いたパワーデバイス(以下、「SiCパワーデバイス」という)では、接合材として半田の材料の使用が困難であった。
【0003】
そのため、SiCパワーデバイス向けの接合材として、耐熱性を有する銀もしくは銀合金を主成分として含む接合材が用いられるようになった(特許文献1)。しかしながら、銀もしくは銀合金を主成分として含む接合材では、イオンマイグレーションの発生など、物性的な問題があった。
【0004】
そこで、銀もしくは銀合金を主成分として含む接合材の代替として、銅を主成分として含む接合材が検討されるようになった。特許文献2には、ペースト状の銅ナノ粒子を原料とする接合材が開示されている。
【0005】
しかしながら、通常、ペースト状の接合材には、粘度を調整するために有機溶媒が用いられており、被接合材の接合時の焼成温度が有機成分の分解温度に依存してしまうという問題があった。また、銅ナノ粒子の表面などに有機成分が残存することで、ボイドやクラックの原因となるため、接合力の低下の要因となるという問題があった。このため、ペースト状の接合材を利用するためには、予備乾燥など、有機成分を除去する工程が必要となるという課題があった。
【0006】
また、ペースト状の接合材には、被接合材の接合面に均一に塗布することが困難であり、扱いにくいという問題もあった。さらに、ペースト状の接合材には、長期間保存する場合、銅ナノ粒子の分散性の維持が困難であり、冷凍して保存したり、あるいは銅ナノ粒子の分散剤を過大に混合したりする必要があるという問題もあった。これらは、いずれも接合後の品質の悪化を引き起こす要因となるという課題があった。
【0007】
そこで、近年、銅ナノ粒子を原料とするシート状の接合材(以下、「接合用シート」という)が用いられるようになった(特許文献2〜5)。ここで、銅ナノ粒子を原料とする接合用シートは、銅箔や銅ナノ粒子単体(集合体)と異なり、強い接合力を有している。また、シート状であることから、接合の際に扱いやすいという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−071301号公報
【特許文献2】特開2014−167145号公報
【特許文献3】特開2013−039580号公報
【特許文献4】特開2013−236090号公報
【特許文献5】特開2015−104748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2〜4に開示された接合用シートは、銅ナノ粒子を含んだペーストを焼結することでシート化している。このように、ペーストを焼結して製造した接合用シートでは、被接合部材を接合する際の加熱および加圧によって接合用シート内に応力がかかり、銅ナノ粒子同士が焼結した部分に微小なクラックが発生してしまうため、十分な接合力を実現できないという課題があった。
【0010】
また、特許文献5に開示された接合用シートは、バルク状態の合金箔などを多孔質化することでシート化するものであるが、銀などの貴金属やそれらの混合物を原料した場合に限られており、銅のみを原料とした接合用シートを製造することは不可能であった。
【0011】
このように、銅ナノ粒子を原料とし、高い接合力を有する接合材の実現が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い接合力を有する、銅ナノ粒子を原料とする接合材を提供することを課題とする。
【0013】
また、上記接合材の製造方法を提供すること、並びに、上記接合材を用いて2以上の部材を接合した接合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(1) 平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を含み、前記微粒子同士が密着した、板状又はシート状の接合材であって、当該接合材の空隙率が、0.30未満である、接合材。
(2) 厚さが、200μm以下である、前項1に記載の接合材。
【0015】
(3) 平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を準備する第1工程と、前記微粒子を0.5GPa以上に加圧して、板状又はシート状に形成する第2工程と、を備える接合材の製造方法。
(4) 前記第2工程を大気雰囲気中で行う、前項3に記載の接合材の製造方法。
(5) 前記第2工程を常温で行う、前項3又は4に記載の接合材の製造方法。
【0016】
(6) 前項1に記載の接合材と、第1被接合部材と、第2被接合部材と、を備え、前記第1被接合部材と、前記第2被接合部材との間に前記接合材が設けられた、接合体。
(7) せん断強度が、30MPa以上である、前項6に記載の接合体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の接合材は、平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を含み、これらの微粒子同士が密着して、空隙率が0.30未満であるため、強度的に安定したシートとなり、かつ高い接合力を有する。
【0018】
本発明の接合材の製造方法は、平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を用意し、これを念入りに分級することなく0.5GPa以上に加圧して板状又はシート状に形成することで、上述した接合材を容易に製造することができる。
【0019】
本発明の接合体は、第1及び第2被接合部材の間に、上述した接合材が設けられているため、第1及び第2被接合部材が高い接合力で接合された接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の検証試験に用いる接合材を製造するための冶具の構成の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の検証試験に用いる接合材の構成の一例を示す写真である。
図3】本発明の検証試験に用いる接合材の断面のSEM観察の結果を示す図である。
図4】本発明の検証試験に用いる接合材を加圧成型する際の圧力と空隙率との関係を示す図である。
図5】本発明の検証試験に用いる接合体の構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態である接合材、及びその製造方法について、この接合材を用いた接合体と併せて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0022】
<接合材>
先ず、本発明を適用した一実施形態である接合材の構成の一例について説明する。
本実施形態の接合材は、空隙率が0.30未満となるように、銅を主成分とする微粒子(以下、単に「銅ナノ粒子」ともいう)が密着して、板状又はシート状の形態をなしたものである。
【0023】
銅を主成分とする微粒子(銅ナノ粒子)としては、成分中に銅(Cu)を含むものであれば特に限定されるものではないが、微粒子全体に対して銅元素を95質量%以上、100質量%以下含むことが好ましく、97質量%以上含むことがより好ましい。
【0024】
微粒子の平均粒子径としては、300nm以下であることが好ましい。
【0025】
微粒子の粒子径としては、粒子径5nm以上、500nm以下の範囲であることが好ましい。また、微粒子の粒子径を揃えてもよいが、粒子径が平均粒子径を中心に分布していてもよい。
【0026】
なお、微粒子の粒子径とは、球形の場合は球の直径をいうが、楕円球形の場合は長径方向の長さをいう。また、粒子径の測定方法は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定する。
【0027】
本実施形態の接合材は、後述するように、上記微粒子を所要の圧力で加圧して、板状又はシート状に形成したものである。ここで、接合材の厚さ(加圧方向の厚さ)としては、特に限定されるものではなく、板状やシート状等の接合材の態様に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、20〜200μmの範囲とすることが好ましく、50〜100μmの範囲とすることがより好ましい。
【0028】
また、接合材を平面視した際の形状は、特に限定されるものではなく、被接合部材の接合面の形状等に応じて、適宜選択することができる。また、後述するように、上述した微粒子を所要の圧力で加圧して、板状又はシート状に形成する際の加圧面の形状としてもよい。具体的には、例えば、矩形や円形等が挙げられる。
【0029】
また、本実施形態の接合材は、後述するように、上述した微粒子を所要の圧力で加圧して、板状又はシート状に形成したものであり、空隙率が0.30未満である。空隙率が0.30未満となるように、上述した銅ナノ粒子同士が密着して板状又はシート状となった接合材であるため、高い接合力を実現することができる。
【0030】
なお、本明細書では、空隙率とは、製作された接合シートの体積から微粒子の体積を削除した割合と定義する。また、空隙率は、接合シートの平均膜厚と面積とを測定することで体積を算出し、また、微粒子の重量を測定することで微粒子の平均密度から占有体積を算出し、これらの値から算出することができる。
【0031】
<接合材の製造方法>
次に、上述した接合材の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の接合材の製造方法は、上述した微粒子(銅ナノ粒子)を準備する工程(第1工程)と、微粒子を0.5GPa以上に加圧して、板状又はシート状に形成する工程(第2工程)と、を備えて概略構成されている。
【0032】
(第1工程)
先ず、所要の平均粒子径を有する、銅を主成分とする微粒子(銅ナノ粒子)を原料として準備する。ここで、原料となる銅ナノ粒子としては、保護剤、分散剤などを必要としないものを用いる事が望ましい。このような銅ナノ粒子としては、例えば、特許文献(特許第4304221号公報)に記載された製造方法によって得られるものが挙げられる。
【0033】
なお、原料となる銅ナノ粒子には、有機溶媒を用いないことが望ましい。ただし、粒子の均一化や形状調整のため、揮発性の高いアルコール(例えば、エタノール、2−プロパノール等)などを、銅ナノ粒子を分散させる程度の量を用いてもよい。また、使用したアルコールなどは、第2工程までに揮発させておくことが好ましい。
このようにして、所要の平均粒子径を有する、銅ナノ粒子を準備する。
【0034】
(第2工程)
次に、上記第1工程で準備した銅ナノ粒子を所要の圧力以上に加圧して、板状又はシート状の接合材を成型(加圧成型)する。ここで、加圧成型に用いる装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属製の冶具、圧縮成型機等を用いることができる。
【0035】
加圧成型の際の圧力は、0.5GPa以上であれば、特に限定されるものではないが、0.5〜1.40GPaの範囲とすることが好ましい。加圧成型の際の圧力を上記範囲内とすることにより、空隙率が0.30未満の接合材を成型することができる。
【0036】
なお、本実施形態の接合材の製造方法では、後述する接合体を製造する際の、2以上の被接合部材の接合時において、接合材の変質や変形を防ぐために、加圧成型時の圧力を、接合体の接合時よりも高い圧力とすることが好ましい。
【0037】
加圧成型の際の温度は、5℃以上、150℃以下であることが好ましい。特に、5℃以上、35℃以下の常温で加圧成型することで、銅ナノ粒子の表面を酸化させることなく、接合材を成型することができる。
【0038】
加圧成型の際の加圧時間は、5秒以上、30秒以下であることが好ましく、10秒以上、20秒以下であることがより好ましい。
【0039】
加圧成型は、大気雰囲気中で行うことができるが、特に限定されるものではなく、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、接合力を向上させる目的で、加圧成型を還元性ガス雰囲気中で行ってもよい。なお、還元性ガスとしては、特に限定されるものではないが、例えば、窒素ガス中に還元性物質として水素や蟻酸等を含むものが挙げられる。
以上より、十分な接合力を有する本実施形態の接合材を成型することができる。
【0040】
<接合体>
次に、上述した接合材を用いて接合した接合体の構成の一例について説明する。
本実施形態の接合体は、上述した接合材と、第1被接合部材と、第2被接合部材と、を備えており、第1及び第2被接合部材の間に設けられた接合材によって第1被接合部材と第2被接合部材とが接合されたものである。
【0041】
接合対象となる第1及び第2被接合部材の材質としては、例えば、銅、シリコン、アルミニウム、酸化銅、酸化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素等、あるいはそれらの合金、混合物等が挙げられる。なお、第1及び第2被接合部材は、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0042】
本実施形態の接合体は、接合材によって接合された第1被接合部材と第2被接合部材とのせん断強度が、30MPa以上となる。換言すると、上述した接合材は、当該接合材を用いて接合した被接合部材間のせん断強度が30MPa以上となる接合強度を奏するものである。
【0043】
本実施形態の接合体のせん断強度は、市販のボンドテスター装置(例えば、デイジ社製、「400Plus」等)によって測定することができる。
【0044】
本実施形態の接合体の製造方法(接合条件)としては、特に限定されるものではなく、被接合部材の材質や組合せ等によって適宜選択することができる。具体的には、例えば、水素ガスを3体積%添加した窒素ガス雰囲気中において、圧力:10MPa、温度:300℃、時間:10分間とすることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の接合材によれば、平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を含み、これらの微粒子同士が密着して、空隙率が0.30未満であるため、これを用いて複数の部材を接合した際に、高い接合力を奏する。
【0046】
本実施形態の接合材の製造方法によれば、平均粒子径が300nm以下の銅を主成分とする微粒子を、0.5GPa以上に加圧して板状又はシート状に形成するため、上述した接合材を容易に製造することができる。
【0047】
本実施形態の接合体によれば、第1及び第2被接合部材の間に接合材が設けられており、第1及び第2被接合部材が接合材によって接合されているため、せん断強度が30MPa以上の高い接合力で接合された接合体となる。
【0048】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
以下、本発明の効果を検証試験によって詳細に説明する。なお、本発明は、以下の検証試験の内容に限定されるものではない。
【0050】
<検証試験1>
図1に示す冶具を用いて、シート状の接合材(接合用シート)を製造した。
具体的には、先ず、特許文献(特許第4304221号公報)に記載された製造方法によって得られる銅ナノ粒子を原料として準備した。銅ナノ粒子の平均粒子径を算出した結果、300nm以下であった。
【0051】
次に、図1に示すように、中心に直径6mmの穴が開いた、炭化タングステン製の長さ50mmの円筒状の冶具の中心穴に、原料として準備した粉末の銅ナノ粒子を添加した。次いで、冶具の中心穴の両端から、直径6mmの炭化タングステン製の円柱を中心穴に対して垂直に差込み、加圧成型を行った。
【0052】
加圧成型は、常温(20℃)の大気中で、圧力0.5GPa、10秒間行った。これにより、図2に示すような、直径が6mm、厚さが50μm、空隙率が0.25の接合用シートが得られた。なお、空隙率は、接合シートの平均膜厚と面積とを測定することで体積を算出し、また、微粒子の平均密度から重量を測定することで微粒子の占有体積を算出し、これらの値から算出した。
【0053】
図3に、得られた接合用シートの断面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。図3に示すように、接合用シートの断面を確認したところ、接合用シート中の銅ナノ粒子の粒子径が約5nmから300nmであり、平均粒子径が300nm以下であるとともに、銅ナノ粒子同士が密着した状態を保っていることが確認できた。
【0054】
<検証試験2>
次に、上述した検証試験1において加圧成型する際の圧力を0.05〜1.4GPaに変更して接合用シートを製造し、得られた接合用シートの空隙率を測定して加圧成型の圧力との関係を検証した。また、得られた接合用シートの強度を確認した。
【0055】
図4に、接合材を加圧成型する際の圧力と、得られた接合材の空隙率との関係を示す。図4に示すように、加圧成型する際の圧力が0.5GPa以上では、接合用シートの空隙率が約0.24(0.30未満)で安定しているのに対し、0.5GPa未満では圧力が高くなるほど、空隙率が減少する傾向を示すことを確認した。
【0056】
このことから、加圧成型する際の圧力が0.5GPa以上において、銅ナノ粒子同士がほぼ限界に近い状態(密着状態)で強く接合して、強度的に安定したシートとなるのに対し、0.5GPa未満では銅ナノ粒子同士の接合が不十分となることを確認した。実際に、0.5GPa未満の圧力で加圧成型した接合材は、脆く、シートの形状を保つことが困難であった。
【0057】
<検証試験3>
次に、銅板と銅円柱とを接合材(接合用シート)を用いて接合して接合体を製造し、接合体のせん断強度(すなわち、接合材の接合強度)を比較検証した。
【0058】
(接合材)
上述した検証試験1において、常温(20℃)の大気中で、圧力を0.50,0.71,1.40GPa、10秒間の条件で加圧成型を行って、直径が6mm、厚さが50μmの接合材1〜3を製造した。また、接合材1〜3の空隙率を下記の表1に示す。
なお、圧力を0.50GPa未満とした条件で加圧成型を行った場合では、シートの形状を保つことが困難であったため、後述の接合に用いることができなかった。
また、厚さ50μmの銅箔(福田金属箔工業社製、無酸素銅箔)を用意し、接合材4とした。
さらに、上記接合材1〜3の原料として用いた、平均粒子径が300nm以下の銅ナノ粒子そのものを接合材5とした。
【0059】
(接合体)
図5に示すように、直径6mmの銅円柱(第1被接合部材)と、18mm四方の銅板(第2被接合部材)とを、上述のように準備した接合材1〜5を用いて接合し、接合体を形成(製造)した。接合体の接合条件としては、水素ガスを3体積%添加した窒素ガス雰囲気中において、圧力:10MPa、温度:300℃、時間:10分間とした。
【0060】
(せん断強度)
接合材1〜5を用いて接合した接合体のせん断強度を、ボンドテスター(デイジ社製、「4000Plus」)を用いて測定した。結果を下記の表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、0.50GPa以上の加圧圧力を用いて成形した、本発明の接合材1〜3を用いて接合した接合体は、いずれもせん断強度が20MPa以上であることを確認した。すなわち、本発明の接合材1〜3は、高い接合力を有することを確認した。
【0063】
これに対して、接合材4,5を用いて接合した接合体は、いずれもせん断強度が20MPa未満であることを確認した。すなわち、接合材4,5では、高い接合力が得られないことを確認した。
【0064】
なお、0.50GPa未満の圧力で加圧成型を行った接合材では、形状が非常に不安定でありシート状を保つことが困難であった。このため、接合体を形成することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の接合材、接合材の製造方法、及び接合体は、電子部品を接合する用途、より具体的には、パワーデバイスと呼ばれる電子デバイス内など、半田などの接合材では使用が困難である高温環境において、基盤や素子などの部品の接合用途に利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5