(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数形状の誘導標識の設置間隔は、誘導路が煙で充満した場合でも次の誘導標識が床面ぎりぎりの視線高さにて視認できる程度の間隔である0.5mから3mの間隔である請求項3に記載の構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
災害の中でも特に火災が発生した場合においては、床面(路面、地面)上に数cmから数十cm程度の位置まで煙が垂れ込める形で充満し、極めて狭い範囲に視界が限定される状況が予想される。さらに、このような状況下では、呼吸を確保するため、床面(路面、地面)上を這うようにして移動しなければならず、これにより、見通すことができる範囲がさらに狭められてしまうことも予想される。
【0006】
特許文献1に開示されているような誘導用ラインの場合、非常口などの避難場所の位置を視認できる場合には、誘導用ラインをその方向にたどっていけばよいことがわかるので、避難すべき方向を知ることは容易である。しかし、煙で視界が極めて限定されている場合には、非常口などの避難場所の位置を視認できず、せいぜい誘導用ラインの一部が視認できるだけであるため、どちらの方向に避難すればよいかを判断することは困難である。この点は特許文献2に開示されている誘導用のブロックも同様であり、地下鉄の出口の位置などが視認できず、誘導用ブロックの一部だけを視認できるだけでは、どちらの方向に避難すればよいかを判断することはやはり困難である。
【0007】
さらに、特許文献2に開示されている誘導用のブロックでは、凸部の形状の違いによって視覚に頼らずに意味を示すことが可能になってはいるものの、それが示す意味はそれ以上進むとプラットホームから転落する危険があるといった情報に限られており、避難すべき方向を知ることまではできない。従って、特許文献2に開示された誘導用ブロックは、視覚障害者に対して避難すべき方向を示すという機能を果たすものではないといえる。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みたものである。即ち、本発明が解決すべき課題は、災害時において、発光する誘導標識を視認できる範囲が極めて限られている状況に置かれた者や視覚障害者に対して、避難すべき方向を示すことが可能な誘導標識を備える構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明のうち、第一の発明は、誘導標識を備える構造物であって、前記複数形状の誘導標識のそれぞれ単独に、その枠形状に応じた所定の意味付けがなされ、前記意味づけに従ってたどっていくことで被誘導者を所定の誘導先まで誘導することができるように構成されている構造物を提供する。
【0010】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、前記誘導標識の枠形状には、略円形状、略二等辺三角形形状、略四角形形状のいずれか一以上が含まれ、前記略円形状の誘導標識には、前記所定の意味付けとして、来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進めという意味付けがなされ、前記略二等辺三角形形状の誘導標識には、前記所定の意味付けとして、頂角の方向に進めという意味付けがなされ、前記略四角形形状の誘導標識には、前記所定の意味付けとして、一旦止まれという意味付けがなされている構造物を提供する。
【0011】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記複数形状の誘導標識は、床面ないし路面、地面またはその近傍に板状体の枠が手又は足にてなぞれる程度に凸設配置されている構造物を提供する。
【0012】
また、第四の発明は、第三の発明を基礎として、複数形状の誘導標識の設置間隔は、誘導路が煙で充満した場合でも次の誘導標識が床面ぎりぎりの視線高さにて視認できる程度の間隔である0.5mから3mの間隔である構造物を提供する。
【0013】
また、第五の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、さらに蓄光材又は蛍光材の発光色を異ならせ、発光色ごとに異なる意味を持たせた構造物を提供する。
【0014】
また、第六の発明は、第一から第五のいずれか一の発明を基礎として、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置した構造物を提供する。
【0015】
また、第七の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を壁面に配置した構造物を提供する。
【0016】
また、第八の発明は、第五又は第五の発明を基礎とする第六もしくは第七の発明を基礎として、蓄光材又は蛍光材の発光色に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置した構造物を提供する。
【0017】
また、第九の発明は、第五又は第五の発明を基礎とする第六、第七もしくは第八の発明を基礎として、蓄光材又は蛍光材の発光色に応じた所定の意味付けを示す表示部を壁面に配置した構造物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、災害時において、発光する誘導標識を視認できる範囲が極めて限られている状況に置かれた者や視覚障害者に対して、避難すべき方向を示すことが可能な誘導標識を備える構造物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。
実施例1は主に請求項1、請求項2などに関し、実施例2は主に請求項3、請求項4などに関し、実施例3は主に請求項5などに関し、実施例4は主に請求項1、請求項6などに関し、実施例5は主に請求項7、請求項8などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0022】
<概要>
【0023】
本実施例の構造物は、枠付き板状体の枠で囲まれたくぼみに蓄光材又は蛍光材(以下「蓄光材等」ということがある)を備える複数形状の誘導標識を備える構造物であり、複数形状の誘導標識のそれぞれ単独に、その枠形状に応じた所定の意味付けがなされ、この意味づけに従ってたどっていくことで被誘導者を所定の誘導先まで誘導することができるようにしたものである。また、誘導標識の枠形状に略円形状、略二等辺三角形形状、略四角形形状のいずれか一以上が含まれ、所定の意味付けとして、略円形状の誘導標識には、来た方向を保ってそのまま直進し次の誘導標識の位置まで進めという意味付けが、略二等辺三角形形状の誘導標識には、頂角の方向に進めという意味付けが、略四角形形状の誘導標識には、一旦止まれという意味付けが、それぞれなされているものも本実施例の構造物に含まれる。
【0024】
<構成>
【0025】
(全般)
【0026】
図1は、本実施例の構造物の構成の一例を示す図である。本発明における構造物には、オフィス、店舗、公共施設(駅、庁舎など)、住居などの建物のほか、道路、橋、公園などの屋外構造物が広く含まれる。本図は、構造物0100の一部の外観を示したものであり、建物である構造物の床面0101に、複数形状の誘導標識0110、0120、0130、0140、0150が備えられている状態を示したものである。後述するように、それぞれの誘導標識は、蓄光材又は蛍光材を備えており、暗闇で発光するように構成されている。また、それぞれの誘導標識には、形状に応じて所定の意味付けがなされている。
図1の例では、略円形状の誘導標識0110、0120、0140には、「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされ、略二等辺三角形形状の誘導標識0130には、「頂角0131の方向に進め」という意味付けがなされ、略四角形形状の誘導標識0150には、「一旦止まれ」という意味付けがなされている。そこで、被誘導者は、煙などで視界が限られ一個の誘導標識しか視認できないような状況であっても、この意味づけに従って移動していくことにより、避難先である非常口0102の位置までたどりつくことができる。なお、被誘導者が避難行動を開始する時点では、略円形状の誘導標識を見てもどちらの方向が「来た方向」にあたるのか特定できないことも考えられることから、このような事態に対応できるようにするため、従来から用いられているような非常口の方向を示す誘導標識を適宜併設してもよい。
図5は、このような非常口の方向を示す誘導標識0560を併設した構造物0500の構成の一例を示したものである。
【0027】
上の例では、枠形状のみに応じて所定の意味付けがなされている例を示したが、これとは異なり、枠形状に加えて誘導標識の表面に描かれた誘導マークなどの模様や文字に応じて所定の意味づけがなされるようにしてもよい。また、このような模様や文字に応じて所定の意味づけがなされるものと形状に応じて所定の意味づけがなされるものの組み合わせによって避難すべき方向を示すようにしたものであってもよい。
【0028】
図7は、本実施例の構造物の構成の一例を示す図であって、このような模様や文字に応じて所定の意味づけがなされる誘導標識を備える構造物の一例を示す。本図の例では、
図1で示したのと同様の枠形状のみに応じて所定の意味付けがなされている誘導標識0710、0720、0740、0750とともに、表面に矢印の模様が描かれた誘導標識0730が備えられている。この誘導標識には、例えば「一旦止まった後、矢印の方向に進め」という意味付けがなされている。
【0029】
図8は、模様や文字に応じて所定の意味づけがなされる誘導標識の一例を示す図である。このうち、(a)に示したものは
図7に示した誘導標識0730と同様のものである。また、(b)に示したものは模様と文字の両方を用いて意味付けを行った誘導標識0810の例であり、例えば「一旦止まった後、矢印の方向10メートル先にある非常口の位置まで進め」という意味付けがなされている。さらに、(c)は、このような誘導標識と上述の枠形状のみの誘導標識を組み合わせてあたかも一つの誘導標識のように用いる場合の例であり、これらの標識によって「頂角0821の方向に5メートル進め」という意味付けがなされているものである。
【0030】
以上の例は、換言すれば、構造物に備えられる誘導標識のうち、略四角形形状の誘導標識については、枠形状のみならず枠内に現されている模様や文字にも応じてその意味付けを理解するとのルールが定められているように構成される例である。本例では、こうした模様や文字に応じて意味付けがなされている例を示したが、このような意味付けは、略四角形形状の誘導標識に限らず、他の形状の誘導標識になされてもよいし、複数種類の形状の誘導標識についてなされてもよい。
【0031】
なお、誘導標識に模様や文字を表す場合には、視覚障害者に対する誘導のため、模様に凹凸を設けたり、点字を添えたりすることが望ましい。
【0032】
図1に戻ると、本図に示した誘導標識の枠形状は一例であって、他の形状であってもよく、例えば略多角形形状や、これらを組み合わせた形状などであってもよい。また、本図では、誘導標識が床面(路面、地面)に配置されている例を示したが、本実施例における構造物における誘導標識の配置場所はこれに限定されず、例えば建物の壁面(外壁、内壁のどちらであってもよい)や天井面などであってもよい。ただし、火災の発生により床面(路面、地面)上に数cmから数十cm程度の位置まで煙が垂れ込める形で充満したような場合を想定すれば、誘導標識の配置場所は、床面(路面、地面)もしくはその近傍の低位置であることが望ましい。
【0033】
本発明における構造物には誘導標識が複数備えられる。これは複数形状の誘導標識のそれぞれが有する意味付けの組み合わせによって、被誘導者を適切に誘導場所へ導くための誘導路を形成できるようにするためである。また、火災時の煙により視界が極めて限定されている状況下で、被誘導者がどこにいても少なくとも一つの誘導標識を視認できるようにすることが望ましいことから、複数形状の誘導標識の設置間隔はかかる観点から適切に設置される。
【0034】
(誘導標識)
【0035】
図2は、本実施例の構造物に備えられる誘導標識の構成の一例を示す図である。本図の(a)は、
図1に示したうち略円形状の誘導標識の一例、(b)は略二等辺三角形形状の誘導標識の一例、(c)は略四角形状の誘導標識の一例を示し、それぞれ上段は平面図、下段は上段のX−X線断面図である。なお、断面図には当該誘導標識が備えられる構造物の床面(路面、地面)の一部をも示した。
【0036】
図2(a)に示すように、誘導標識0210は、枠付き板状体0211の枠0212で囲まれたくぼみ0213に蓄光材又は蛍光材0214を備えて構成される。枠付き板状体とは、周縁に枠が立設されることで中央にくぼみを有する盆状の板状部材をいう。枠付き板状体の素材としては、アルミニウム、ステンレスなどの金属や、セラミック、樹脂などが用いられる。
【0037】
くぼみへの蓄光材等の配置は、例えば蓄光塗料や蛍光塗料を塗布したり、液状の蓄光材料や蛍光材料を流し込んで固化させたり、蓄光シールや蛍光シールを貼り付けたりといった方法によって行えばよい。その際、くぼみに反射材を配置した上でその上層に蓄光材等を配置してもよい。反射材は蓄光材等から下方向に発せられた光を上方向に反射させて蓄光材をより高輝度で発光させるためのものであり、反射材料としては酸化チタン等が用いられる。また、蓄光材等を汚れや損傷から保護するため、蓄光材等の上層に透明ガラス・透明樹脂などからなる透明保護層を配置してもよい。
【0038】
誘導標識の構造物への設置は、例えば、
図2(a)の下段に示すように、誘導標識を構造物の床面(路面、地面)0201に凹部0201aを設けて、当該凹部に誘導標識を接着剤で接着するなどにより埋め込み、誘導標識の表面0210aが構造物の床面(路面、地面)と同一平面を形成するようにすることで行われる。これは、美観や人がつまずくおそれなどの防止に配意したものである。(b)に示す誘導標識0230、(c)に示す誘導標識0250についても同様である。
【0039】
一方、視覚障害者に対する誘導のためには、視覚に頼らずに、手や足でなぞることで誘導標識の枠形状を把握でき、これによりその意味付けを知ることができるようにすることが重要である。このような観点からは、誘導標識は、床面(路面、地面)から凸設されていることが望ましい。かかる構成の詳細については次実施例にて述べる。
【0040】
誘導標識の寸法は、肉眼や手足の感触で容易に形状を把握できるようにするためある程度の大きさが必要である一方、視界が極めて限られている中でも瞬時に全体形状を把握できる程度の大きさにとどまる必要もあるという観点から、適切に設計される。具体的には、略円形状の誘導標識の場合、枠付き板状体の直径5〜20cm程度、略二等辺三角形形状や略四角形形状の誘導標識の場合、一辺の長さ5〜20cm程度であることが望ましく、さらに好適には、それぞれ上記の寸法が10cm程度であるものが挙げられる。他の形状の誘導標識にあっても、概ね同様の寸法のものが望ましい。また、その場合、枠付き板状体の厚み(底面から枠の最上端までの高さ)は例えば2〜5mm程度であり、くぼみの深さは1〜3mm程度であるものが考えられる。
【0041】
前述のように、誘導標識には、形状に応じて所定の意味付けがなされ、この組み合わせによって被誘導者を適切に避難場所の方向に誘導することができる。その際、被誘導者が瞬時にその誘導標識の意味づけを理解して迅速な行動を行えるようにするためには、誘導標識の意味づけが全国的に統一されるなどにより国民に浸透しており、かつ直感的な印象にできるだけ合致したものであることが望ましい。
図1に示した例は、直感的な印象にも合致したものであると考えられ、これが公的基準などによって全国的に統一されることなどによって国民に浸透することとなれば、被誘導者の迅速な避難行動に大いに資するものとなることが期待される。あるいは、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を設けることによって被誘導者に誘導標識の意味づけを理解させるようにしてもよく、かかる構成の詳細については別の実施例にて後述する。
【0042】
(蓄光材・蛍光材を保護するための構成)
【0043】
ところで、火災時に煙が充満し視界が悪い中でも誘導標識を視認しやすくするためには、蓄光材等が人や物に直接ぶつかって損傷を受けることがないように保護されていることが望ましい。前述した透明保護層はそのための構成の一例である。さらに、蓄光材等が損傷しにくいようにするための構成として、枠付き板状体のくぼみの部分に複数形状の突起を立設するとともに、突起以外のくぼみの部分に蓄光材等を配置するようにしてもよい。
【0044】
図3は、本実施例の構造物に備えられる誘導標識の構成の一例を示す図であって、このような構成を有するものの形状の一例を示す。
図3(a)に示すように、誘導標識0310の枠付き板状体0311の枠0312で囲まれたくぼみには複数形状の突起0315(煩雑を避けるため一個にのみ符号を付した)が立設され、突起以外のくぼみの部分にのみ蓄光材等0314が配置されている。さらに、蓄光材等の上層に透明ガラス・透明樹脂などからなる透明保護層を配置してもよい。これにより例えば床面に設置された誘導標識を人や車両が踏んでも、突起に遮られて靴やタイヤが直接蓄光材等や透明保護層に触れることがなく、蓄光材等や透明保護層を損傷から保護することができる。以上に述べた構成は、
図3(b)に示す誘導標識0330及び
図3(c)に示す誘導標識0350についても同様である。
【0045】
(蓄光材・蛍光材を高輝度で発光させるための構成)
【0046】
また、火災時に煙が充満し視界が悪い中でも誘導標識を視認しやすくするためには、蓄光材等が高輝度で発光するものであることが望ましい。前述した反射層はそのための構成の一例である。さらに、本発明においては、液状の蓄光材料を枠付き板状体のくぼみに流し込んで誘導標識を形成する方法を用いる場合において、特開2015−049396号公報に開示されている方法を用いてもよい。この方法は、アルミン酸ストロンチウム系蓄光粉末と液体のフェニルシリコーンの混合液を流し込んで所定時間静置し、前記の蓄光粉末が沈殿した状態でこれを硬化させて蓄光層を形成するものであり、これにより蓄光層を高輝度で発光させることを可能にしたものである。
【0047】
<効果>
【0048】
本実施例の発明により、災害時において、発光する誘導標識を視認できる範囲が極めて限られている状況に置かれた者や視覚障害者に対して、避難すべき方向を示すことが可能な誘導標識を備える構造物を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0049】
<概要>
【0050】
本実施例の構造物は、複数形状の誘導標識が、床面(路面、地面)またはその近傍に板状体の枠が手又は足にてなぞれる程度に凸設配置されているものである。また、複数形状の誘導標識の設置間隔が、誘導路が煙で充満した場合でも次の誘導標識が床面ぎりぎりの視線高さにて視認できる程度の間隔である0.5mから3mの間隔であるものも本実施例の構造物に含まれる。
【0051】
<構成>
【0052】
(全般)
【0053】
本実施例の構造物は、実施例1で述べたものと基本的に共通するが、本実施例では、当該構造物が備える複数形状の誘導標識は、床面ないし路面、地面またはその近傍に板状体の枠が手又は足にてなぞれる程度に凸設配置されている点に特徴がある。以下、かかる構成について説明する。その余の構成は実施例1の構造物と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
(誘導標識:凸設配置)
【0055】
図4は、本実施例の構造物に備えられる誘導標識の構成の一例を示す図であり、
図2(a)〜(c)の各下段に示したものと同様の断面図で示したものである。このうち
図4(a)に示したものは、誘導標識0410の一部を構造物の床面(路面、地面)0401の凹部0401aに接着剤で接着するなどにより埋め込み、誘導標識の残部が床面(路面、地面)上に凸設されるようにしたものである。この場合、人が凸設部分につまずいたり物が凸設部分にぶつかったりするおそれがないように、本図にも示したように誘導標識の枠0412に外方に向かってなだらかに下降する傾斜面0412aを形成してもよい。また、
図4(b)に示したものは、誘導標識0420を床面(路面、地面)0401上に接着剤で接着するなどにより、誘導標識の全部が凸設されるようにしたものである。この場合にも、誘導標識の枠0422に外方に向かってなだらかに下降する傾斜面0422aを形成してもよい。
【0056】
(誘導標識:配置位置)
【0057】
また、本実施例の構造物における誘導標識の配置位置は、床面(路面、地面)もしくはその近傍に限定される。これは、本実施例が、特に火災の発生により床面(路面、地面)上に数cmから数十cm程度の位置まで煙が垂れ込める形で充満し、誘導標識をほとんど視認できないような状況や、さらには、このような状況下で呼吸を確保するため、床面(路面、地面)上を這うようにして移動しなければならないような状況を想定したためである。このような位置に誘導標識を配置することにより、かかる状況下であっても、ごく近傍の誘導標識を視認することができ、あるいは手や足でなぞることができ、その表す意味に従って次の誘導標識の位置まで移動することなどが可能となる。
【0058】
かかる観点から、凸設部分の寸法は、人が手や足でなぞって形状を把握することができる程度に設計される。具体的には、例えば、実施例1で述べたのと同程度の平面寸法を有し、凸設部分の高さが1〜5mm程度のものが望ましい。
【0059】
(誘導標識:配置間隔)
【0060】
また、複数形状の誘導標識の設置間隔は、誘導路が煙で充満した場合でも次の誘導標識が床面(路面、地面)ぎりぎりの視線高さにて視認できる程度の間隔であることが望ましく、具体的にはかかる間隔である0.5mから3mの間隔であることが望ましく、特に0.5mから1.5mの間隔であることがさらに望ましい。「床面(路面、地面)ぎりぎりの視線高さ」とは、人がしゃがんだり腹這いになったりした状態における通例の視線の高さである床面(路面、地面)から数cm〜0.5m程度の高さをいう。
【0061】
<効果>
【0062】
本実施例の発明により、特に火災の発生により煙が充満しているような状況下であっても、避難すべき方向を示すことが可能な誘導標識を備える構造物を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0063】
<概要>
【0064】
本実施例の構造物は、蓄光材又は蛍光材の発光色を異ならせ、発光色ごとに異なる意味を持たせたものである。
【0065】
<構成>
【0066】
(全般)
【0067】
本実施例の構造物は、実施例1又は2で述べたものと基本的に共通するが、本実施例では、蓄光材又は蛍光材の発光色を異ならせ、発光色ごとに異なる意味を持たせたものである点に特徴がある。以下、かかる構成について説明する。その余の構成は実施例1又は2の構造物と同様であるので、説明を省略する。
【0068】
(誘導標識:異なる発光色)
【0069】
近年、蓄光材や蛍光材の発光色として、赤色、黄色、緑色、青緑色、青色など様々なものが知られている。蓄光材に関しては、例えば、特開2011−189558号公報に、硫化亜鉛の結晶に少量の銅を賦活剤として加えた蓄光材料(発光色は、その組成によって黄〜赤色)、硫化亜鉛に少量の銅を賦活剤として加えた蓄光材料(発光色は緑色)、アルミン酸塩に賦活剤としてユーロピウムを加えたり共賦活剤として希土類元素又は遷移金属を加えたりした蓄光材料(発光色は緑色又は青色)が開示されている。また、蛍光材に関しても、赤色、橙色、黄色、緑色、青色など様々な発光色のものが知られている。そこで、本実施例ではこれを利用して、蓄光材等の発光色を異ならせ、発光色ごとに異なる意味を持たせることで、被誘導者がより容易かつ確実に誘導標識の意味づけを理解できるようにしたものである。
【0070】
その際には、形状に応じた意味づけの場合と同様に、発光色に応じた意味づけが全国的に統一されるなどにより国民に浸透しており、かつ直感的な印象にできるだけ合致したものであることが望ましい。例えば、既述の略円形状の誘導標識に与えられた意味付けが「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」というものである場合に、同形状のうち、青緑色(又は青色)の発光色の誘導標識には、単に「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされ、黄色の発光色の誘導標識には、「周囲に注意しながら、来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされるといったものが考えられる。
【0071】
また、誘導標識の枠形状と発光色を一対一に対応させて、これらの組み合わせにより意味づけを行ってもよい。例えば、略円形状の誘導標識はその発光色を青緑色とし、これに「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされるようにすることが考えられる。このようにすることで、被誘導者に瞬時に意味づけを理解させて迅速に避難させることをより確実に実現することが期待できる。
【0072】
なお、本実施例には含まれないが、異なる形状に応じた意味づけは行わず、専ら発光色に応じた意味づけをするということも考えられる。例えば、誘導標識の枠形状はすべて略円形状に統一した上で、青緑色(又は青色)の発光色の誘導標識には、「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされ、黄色の発光色の誘導標識には、「周囲に注意しながら、来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という意味付けがなされ、赤色の発光色の誘導標識には、「一旦止まれ」という意味付けがなされているといったものが考えられる。
【0073】
<効果>
【0074】
本実施例の発明により、災害時において、被誘導者に対しより確実に避難すべき方向を示すことが可能な誘導標識を備える構造物を提供することが可能となる。
【実施例4】
【0075】
<概要>
【0076】
本実施例の構造物は、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置した構造物である。また、そのような意味付けを示す表示部を壁面に配置した構造物も本実施例の構造物に含まれる。
【0077】
<構成>
【0078】
(全般)
【0079】
本実施例の構造物は、実施例1などで述べたものと基本的に共通するが、本実施例の構造物は、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置したものである。又は、本実施例の構造物は、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部を壁面に配置したものである。以下、かかる構成について説明する。その余の構成は実施例1などの構造物と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
(表示部)
【0081】
本実施例の「表示部」は、枠形状に応じた所定の意味付けを示すためのものであり、その意味付けを一義的・客観的に示すことを目的として構造物に配置されるものである。この目的から、典型的には意味づけを文字(言語)で表したものが該当する。
【0082】
図6は、本実施例の構造物の構成の一例を示す図であって、表示部を配置した構造物の形状を示すものである。このうち、(a)は、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部0660を床面に配置した誘導標識0610の近傍の床面に配置した例である。本図の例は、表示部が枠形状に応じた所定の意味付けを文字で示している例であり、当該表示部が略円形状の誘導標識に対応したものであることを示す文言及びその意味付けである「来た方向を保ってそのまま直進し、次の誘導標識の位置まで進め」という文字が示されている。この表示部も、暗闇時で煙が充満しているような状況でもその機能を果たせるように、誘導標識と同様に蓄光材等の発光体を備えていることが望ましい。また、本図の例と異なり、表示部は対応する誘導標識自体に備えられていてもよく、この場合には誘導標識との対応関係を示す表示部分は不要となる。
【0083】
また、
図6(b)は、枠形状に応じた所定の意味付けを示す表示部0660を壁面に配置した例である。この場合における表示部の配置のしかたは、床面に配置する場合と基本的に同様でよいが、さらに壁面の表示部を視認できるのは、煙が充満していない状況であることが多いと考えられることから、誘導標識の近傍である必要はなく、本図の例のように床面に配置された誘導標識0610に対応するものとして壁面に配置するようなものであってもよい。また、このような状況下では複数の形状の誘導標識を一度に見ることができることが多いと考えられることに照らし、複数の枠形状のすべてに応じた意味づけを一覧できるようにすることも有効である。
図6(c)は、かかる表示部0660の配置の一例を示している。これにより、被誘導者は、各枠形状に応じた意味づけを一度に把握することができるので、より迅速に避難行動をとることが可能となる。また、このような壁面への一覧表示は、平時における通行時に歩行者の目に触れやすいようにすることでその一義的な意味付けを予め浸透させておくことができるという効果も期待できる。
【0084】
<効果>
【0085】
本実施例の発明により、誘導標識の枠形状に応じた所定の意味付けを一義的・客観的に示すことができる。
【実施例5】
【0086】
<概要>
【0087】
本実施例の構造物は、蓄光材又は蛍光材の発光色に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置した構造物である。また、そのような意味付けを示す表示部を壁面に配置した構造物も本実施例の構造物に含まれる。
【0088】
<構成>
【0089】
本実施例の構造物は、実施例1などで述べたものと基本的に共通するが、本実施例の構造物は、蓄光材又は蛍光材の発光色に応じた所定の意味付けを示す表示部を床面ないし路面、地面またはその近傍に配置したものである。又は、本実施例の構造物は、蓄光材又は蛍光材の発光色に応じた所定の意味付けを示す表示部を壁面に配置したものである。以下、かかる構成について説明する。その余の構成は実施例1などの構造物と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
(表示部)
【0091】
本実施例の「表示部」は、蓄光材等の発光色に応じた所定の意味付けを示すためのものであるが、その意味付けを一義的・客観的に示すことを目的として構造物に配置されるものである点は前実施例における表示部と同様である。この目的から、本実施例における表示部も典型的には意味づけを文字(言語)で表したものが該当する。
【0092】
表示部の配置のしかたは、床面ないし路面、地面またはその近傍への配置、壁面への配置のいずれの場合にあっても前実施例で述べた配置のしかたと同様でよい。なお、本実施例においては、表示部の蓄光材等の発光色と、これに対応する誘導標識の蓄光材等の発光色を統一することも有効であると考えられ、これにより直感的な意味付けの把握が容易となることが期待できる。
【0093】
<効果>
【0094】
本実施例の発明により、誘導標識の蓄光材等の発光色に応じた所定の意味付けを一義的・客観的に示すことができる。